2018年06月

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K

KBD
「Kentucky Bourbon Distillers」の略。1936年創業のウィレット蒸留所は、40年代にはオールドバーズタウン、60年代にはジョニードラムといった銘酒を産み出した名蒸留所だったが、70年代後半のエネルギー危機に際して、折からのバーボン需要低迷もあり、ガソホール燃料のための工業用エタノール製造へと同蒸留所を転換。投資家はそのような事業に投資しており、バーボンの蒸留よりも利益が上がると考えられていた。1981年から1983年まで蒸留所を 「Bardstown Fuel Alcohol Inc.」にリースしてエタノールを生産したが、禁輸措置が終わり燃料価格が落ち着くと、使い物にならない装置を残して会社は破産の憂き目にあった。
1972年にウィレット家の娘マーサと結婚していたノルウェージャンのエヴァン・クルスヴィーンは、1984年7月1日、義父のトンプソン・ウィレットから同社と不動産を購入し、蒸留所登録番号DSP-KY-78のケンタッキー・バーボン・ディスティラーズへと改称した。しばらくは蒸留を停止する前の旧ウィレット蒸留所産のバーボンをボトリングし販売していたが、在庫がなくなる前に他の蒸留所からバーボンやライウイスキーを購入しウェアハウスを補充するようになった。その大部分はヘヴンヒル蒸留所から購入していると目されるが、一部の銘柄ではスティッツェル=ウェラー蒸留所やバーンハイム蒸留所産のバーボンとされる物もあり、他にも大手のジムビーム蒸留所やフォアローゼス蒸留所のブランド的にはオフ・フレイヴァーとなった原酒も購入しているらしい。或るバーボンマニアのブログによれば、メーカーズマーク以外の原酒は取り揃っている、との話もある。そして、そういった原酒とブレンド技術を駆使してオリジナル製品のノアーズミル、ローワンズクリーク、ピュアケンタッキーXO、ケンタッキーヴィンテージなどのスモールバッチバーボンをリリースする一方、他社の契約ボトラーとしても活動し、初期のミクターズやジェファーソンズ、オールドポーグやコーナークリーク等をボトリングしていた。またブローカー的な役目も果たし、日本市場限定となるプレミアム製品も数多く手掛けた。それらの中ではヴェリーオールドセントニックやレアパーフェクション等が名高い。
こうした自ら蒸留を行わないNDPとしての活動が実り、数年を要した改装の末、2012年に約30年ぶりとなる蒸留を再開した。ちなみにKBD以外にプレミアム・ブランズLTDという名称もあった。登録上別会社なのかも知れないが私には詳細は判らない。会社の設立年は1983年とされている。

KC
「Knob Creek」の略。ジムビーム社が展開するスモールバッチバーボンコレクションの一つ。禁酒法時代にルーツをもつラベルとボトルデザインは秀逸。ライやシングルバレル、いくつかのアニヴァーサリーモデルもあり、アメリカ本国ではストアピックが人気。
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Kentucky Chew─ケンタッキーチュウ
そのコンセプトはビーム家第6代の故ブッカー・ノー氏によって考案され、7代目のフレッド・ノーが勧めているテイスティング方法。バーボンを口の中全体に行き渡らせ、少しくちゅくちゅして飲み込んだ後、ガムを噛むように「チャッ、チャッ、チャッ、チャッ」と音をたてて味わうこと。こうすることでバーボンの複雑な味を全て味わうことが出来ると云う。

◆Kentucky Hug─ケンタッキーハグ
バーボンを飲み込んだ後に食道や上半身に感じる暖かさを指す言葉。ケンタッキー・チュウと同じくブッカー・ノーからの用語と見られる。

KSBW
「Kentucky Straight Bourbon Whiskey」の略。ケンタッキー州で造られたストレート規格のバーボン。


L

L’Burg
「Lawrenceburg」の略。ワイルドターキーやフォアローゼスの蒸留所があるケンタッキー州ローレンスバーグのこと。またインディアナ州にも同名のローレンスバーグがあり、こちらはMGP(LDI)で有名。

LDI
「Lawrenceburg Distillers Indiana」の略。現在MGP(もしくはMGPI)と呼ばれるプラントの旧名。元シーグラムのメインプラントで、シーグラム解体後、様々なブランドや資産は他の企業によって取得され、ローレンスバーグ蒸留所はペルノ・リカールの所有となった。2006年には蒸留所を閉鎖するとアナウンスされたものの、2007年にトリニダード・トバゴを拠点とするCLフィナンシャル(アンゴスチュラの親会社)が購入し、その際に改称してLDIと呼ばれるようになった。CLフィナンシャルはその後崩壊し、2011年10月にMGPイングリディエンツが蒸留所を購入、それ以後はMGPとして知られるようになった。

LE
「Limited Edition」の略。限定版、つまり数に限りがあるか、継続的なリリースではないため、レアウィスキーであることを含意する。

Leaching(Charcoal Leaching)─リーチング(チャコールリーチング)
濾すこと、濾過、浸すこと、浸出を意味する言葉。テネシーウィスキーの特徴となる熟成前の原酒をサトウカエデの炭で濾過する工程。リンカーン・カウンティ・プロセス、チャコール・メロウイングとも言う。それらの項を参照。

Limestone Water─ライムストーンウォーター
バーボンを語る際かなり頻繁に耳にする用語だが、より一般的に言うと所謂「硬水」。ライムストーンは石灰岩のことで、ケンタッキー州やその周辺の州の地盤は石灰岩層があり、そこを地下水が通って湧き上がる水は、カルシウムやマグネシウムのようなミネラル含有率が高く、発酵を促進する高いpHを有し、なおかつ酒に悪い味を与え色を黒くする不純物の鉄分を濾過する。それ故、バーボン造りに欠かせない、と言われることが多いが、バーボンの製造に使わなければならないという規則はない。また、ライムストーンウォーターを使えるなら使うに越したことはないが、それは最終的なフレイヴァーの一部ではあっても不可欠の要素ではない、とされる。聞くところによると、現代では地下水が汚染され、多くの蒸留所では都市の水道水や川の水に依存し、独自にカーボンフィルターをかけたり逆浸透水を使い、ライムストーンウォーターのみを使うのは一部のメーカーだけだと言う。

Lincoln County Process─リンカーンカウンティプロセス
テネシーウィスキー特有のプロセスで、樽熟成する前のニューメイク(ホワイトドッグ)をシュガーメイプルの炭を敷き詰めた桶で濾過すること。チャコールメロウイングとも知られる。2013年のテネシー州法はそのアイデンティティをさらに洗練させ、テネシーウィスキーを名乗るには熟成前にシュガーメイプルの炭を通さなければならない、とした。
リンカーン・カウンティ・プロセスという用語は、その製法自体は古くからあるものの比較的新しい造語で、1950年代あたりから使われ出したらしい(それまでは単にリーチングまたはチャコール・リーチングと呼ばれていた)。そもそもリンカーン・カウンティ・ウィスキーという言い方が先にあり、そこから派生した言葉と見られる。かつてのリンカーン郡は現在よりも大きく、ジャック・ダニエル蒸留所のあるリンチバーグが含まれていた。今日ジャック・ダニエル蒸留所があるムーア郡は、リンカーンと他の3つの郡の一部から再編され1871年に設立された。1830年代初頭からテネシー州リンカーン郡はアメリカで最も生産的なコーン栽培地区として知られ、その素晴らしいコーンの評判はウイスキーに結び付き、モノンガヒーラ・ライのように、リンカーン郡の名称を用いることはセールスポイントだった。1866年には、蒸留所やブローカーは新聞に「リンカーン・カウンティ・ウィスキー」という広告を掲載し始め、テネシー州の他のウィスキーやケンタッキーバーボン等との差別化を図った。1900年代初頭のジャックダニエルズのラベルには「Jack Daniel’s Pure Lincoln County Corn Whiskey」と記載があると言う。
その製法の創始者や起源には諸説あり、アルフレッド・イートンが1825年頃にサトウカエデの木炭濾過を独自に開発し、後にジャック・ダニエルに教えたとか売ったという説や、少年ジャック・ダニエルを雇ったダン・コールが発案したという説、または黒人奴隷たちが自分たちの飲む酒をこっそりと造るときに行っていた方法に由来しているという説もあれば、アメリカ北東部からの流れ、ひいてはヨーロッパにその源流を求める推察もある。つまりバーボンの創始者と同様に明確な資料がなく、誰がいつ始めたというはっきりした回答はない。しかしその来歴や効能についてはある程度の定見がある。
1800年代前半は殆どのウィスキーはバレルエイジングされていなかった。そのため蒸留されたてのウイスキーから粗いエッジを取り除くのにシュガーメイプルやヒッコリーの木炭で濾過することは、ケンタッキーやテネシー州だけでなく、他の場所でも多くの蒸留所で行われていたと言う。ところがリンカーン郡の蒸留所は、これを極端に行った。炭を敷き詰めた高さ10フィート(約3メートル)以上の桶で。それがリンカーン・カウンティ・プロセスが生まれた経緯であると考えられている。比較的長い時間をかけて原酒を炭に浸出させる行為は、手早く炭で濾しただけのフィルタリングに較べ、ある種の熟成プロセスの飛躍として機能した。樽熟成中に自然とバレル内側の炭化層によって除去される(または化学変化する)望ましくないコンジェナース(フーゼル油など)の一部を、蒸留直後にチャコール・リーチングで取り除き、アンエイジドウィスキーに円やかさとライトなボディを与える。それこそがリンカーン・カウンティ・ウィスキーの評判を高めた要諦だった。後にテネシーウィスキーも樽熟成を行うようになったが、熟成前のメロウイングはその特徴として残されたのだろう。

Lot─ロット
本質的に同じ条件で均一な品質を保持することを意図して製造された製品の生産上や出荷上の単位。主に製造業で使われる言葉で、その職種やその企業によって微妙に意味合いが異なり、バッチとほぼ同じ意味で使われることもあれば、違う概念として使われることもある。「ロット管理」と言うと比較的分かりやすく、商品や製品の仕入れから販売ないし出荷までを製品単位ごとに管理する方法で、簡便的な在庫管理の手法。単位ごとに「ロット番号」を付与して管理する。

Lot B
 「Van Winkle Special Reserve 12 Years Lot B」の略。ヴァン・ウィンクルの製品としては比較的買い易く、昔はそれほどレアな製品ではなかったが、パピー人気につられて入手が困難となり、日本ではすっかり見かけなくなった。バッファロートレースの小麦レシピで造られている。
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L’Ville
「Louisville」の略。多くの蒸留会社が集うバーボンの中心地であり、ケンタッキー州最大の商業都市。ルイビルのダウンタウン、メインストリートは主にオハイオ川沿岸に隣接していたため、多数の企業のオフィス、倉庫、整流施設が密集し、19世紀のケンタッキーウィスキー産業全盛期に「ウィスキーロウ」と呼ばれ、今でも観光スポットとしてバーボン好きには見逃せない。

Low Rye Mash Bill─ロウライマッシュビル
バーボンのマッシュビルで、ライ麦の配合率が低いものを指す用語。明確な規定がある訳ではないが、概ねライ麦が10%もしくは以下ならロウ、15%ならミドル、18%以上ならハイと思っておいていいだろう。

Low Wine─ロウワイン
第一蒸留で出来上がる液体の呼称。概ね25〜35%のabvだと言う。これが第二蒸留へ向かう。

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JIM BEAM BLACK DOUBLE AGED 8years 86 Proof
ジムビームラインナップのホワイトラベルの上位に位置するブラックラベル。現在では「EXTRA-AGED」と書かれ、NAS(No Age Statement)ながら熟成期間は6年程度とされ、日本では80プルーフにてボトリングされています(アメリカでは86proofのようです)。
で、その少し前まで流通していたスタイリッシュなデザインのボトルですが、混乱を招くような表現が使われています。ホワイトの4年熟成に対してブラックは8年熟成だから「DOUBLE AGED」と2倍の意味であるのは話が分かりやすい。ところが同じデザインのボトルで6年熟成のブラックがあるのですが、それには「TRIPLE AGED」と書かれているのです。ダブルの要領でいけば3倍の12年熟成になりそうなのにそうではない。無理矢理解釈すれば、ストレートバーボンと名乗るために必要な最低熟成年数の2年の3倍という意味かな?とは思えますが、どっちかに統一しろよッという突っ込みは免れないでしょう。その声が聞こえたせいなのか、今は上に述べた「EXTRA-AGED」に落ち着いたみたいです。
さて、肝心のお味のほうですが、これは美味しい。ホワイトでは味わえないリッチなフレイヴァーとスイートネス。甘さに振れた味わいながらスパイシーさとフルーティーさとシリアル感のバランスが良く、これが2000円程度ならお買い得だったと言うしかありません。
Rating:84/100

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Four Roses Super Premium 86 Proof
日本限定のフォアローゼズのトップクラス。ケンタッキー州立200年を記念して1992年から発売されました。スーパープレミアムと書かれているものの、なぜだか通称「プラチナ」と呼ばれています。使われるレシピは、おそらくイエローやブラック、スモールバッチとも異なるものと見られますが、公開されていません。しかし、熟成に関しては明確な指標があるようで、前マスターディスティラーのジム・ラトリッジによると、80%は最低8年以上で20%は10年以上の熟成でなければならない、とのこと。

さて、私はフォアローゼズを唯一無二のバーボンとして評価するのに吝かではありません。だから最上級とされるプラチナを飲むのをすごく楽しみにしていました。けれど、いざ飲んでみると少々拍子抜けという印象が拭えません。確かに美味しく、素晴らしい芳香のバーボンです。チェリー、プラム、青リンゴのフルーツ感にクローヴ等のスパイシーさ、オークの力強さもあり、かつスムーズである。でもですよ、どうもスムーズ過ぎる。薄いんですよね、43度では。
プラチナは場合によっては7000円近い値札が付きます。正直な感想を言わせてもらうと、3000円あれば買えるブラックの出来が良すぎて、倍近い値段のプラチナが霞んでいると思います。またフォアローゼズ スモールバッチ45度が3000~4500円程度で買えることを考えると、個人的にはオススメ出来ないバーボンと言わざるを得ませんし、コスパをレーティングに考慮すると、得点を低く見積もらざるを得ません。どうせスーパープレミアムと語るぐらいなら100プルーフでボトリングしてもらいたいです。そうすればもっと旨かったに違いない。いや、せめて94プルーフでもいいのですが…。贅沢な注文なんですかね?
Rating:83/100

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Georgia Moon Corn Whiskey 80 Proof
フルーツ・ジャーに入ったコーン・ウィスキー、ジョージア・ムーン。英語では密造酒のことをムーンシャインと言い、密造酒の造り手をムーンシャイナーと言います。違法な蒸溜は夜陰に乗じて月明かりのもとに行われるところから由来している言葉です。このジョージア・ムーンはちゃんとした蒸溜所で違法行為でも何でもなく造られたお酒ですが、そういうイメージを上手く活用したパッケージとなっています。ネーミングといい、瓶に使われるジャーといい、ペーパーバッグ的質感のラベルといい、密造酒文化へのオマージュとも言えそうな独特のカッコ良さ。ラベルには「Less than 30 days old(30日未満の熟成)」と書かれていますが、これはおそらく未熟成の意ではないかと思います。たかが30日以内に樽の出し入れをしてたら手間ですし、中途半端な中古樽が出来てしまいますから。

偖て、現在ではヘヴンヒル蒸溜所で造られているジョージア・ムーン、そのオリジンや来歴をネットで調べてみたのですが詳しい情報が見つかりませんでした。けれども、ジョージア・ムーン(ジョージアの月光)という名前と、年式の古いボトル(70年代あたり?)のラベルに記載された所在地から判断するに、ジョージア州オーバニーで蒸溜されていたのではないでしょうか。おそらくそこに、現在でもラベルに書かれているジョンソン・ディスティリング社があったものと推測します(追記あり)。そしてそれより年式の新しい物(おそらく70年代終わり頃から80年代)には、ケンタッキー州オーウェンズボロの記載が見られ始めます。これはグレンモア蒸溜所を指していると思われます。80年代後半から90年代前半のバーボン業界を取り巻く買収劇の中で、グレンモアはユナイテッド・ディスティラーズに買収され、その後、90年代中頃にジョージアムーンをその他のブランドと一緒にヘヴンヒルが買い取ったのでしょう。たいして根拠のない推理ですので、話し半分に聞いておいて下さい(ここら辺の事情に詳しい方はコメントから御教示頂けると幸いです)。

で、お味の方はと言いますと、30日以下の熟成なので……お世辞にも美味しいとは言えません。ストレートで飲むには、本当に酔うだけのためと言った感じです。しかも自家製カクテルのベースとしても少々荒削り過ぎる嫌いがあり、純度の高いウォッカのほうが素人には遥かに使いやすい。けれども、その荒々しさこそムーンシャインの真骨頂ですよね。本ボトルは推定06年ボトリング。
Rating:68/100

追記:どうやらジョンソン・ディスティラリーはヴァイキング・ディスティラリーという事業名を持っていたようです。自らアラバマ州で初めての合法的蒸溜所と名乗っていました。ジョージア・ムーンのオリジナルはここで間違いないと思います。他にも海外のオークションでジョージア・ムーンと同じジャーに入ったバスタブ・ジンも見かけました(ヴァイキング・ディスティラリー名義)。また、ジョージア・ムーンで4年熟成100プルーフの画像も見かけました。こちらはマサチューセッツ州ボストンとオーウェンズボロの記載があるやつです。熟成されているので、きっとメロウ・コーンに近い味わいだったろうなと想像しました。

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BASIL HAYDEN'S 8 Years Old 80 Proof
ジムビーム社のスモールバッチ・コレクションの一つベイゼル・ヘイデンズ8年です。1992年から発売されました。現在では8年の表記が消えNAS(ノン・エイジ・ステイトメント)となっています。貯蔵庫の最下段で8年長の熟成と言われ、他のブッカーズ、ノブクリーク、ベイカーズと比べてロープルーフ(80proof)なのと、ライ麦比率の高いハイ・ライ・マッシュビル(コーン63%、ライ麦27%、モルテッドバーリー10%)なのが特徴。
1000円から2000円台のバーボンとは明らかに一線を画す芳香を持っていて、スムース、スパイシー、フルーティ、軽い甘味のバランス感覚はいかにもライ麦多目の味わい。けれど個人的には深みに欠ける味だと思います。ロープルーフなのが原因かと…。これなら同じくハイ・ライ・マッシュビルのオールド・グランダッド・ボンデッドのほうが好みです。ビーム社のスモールバッチコレクションの日本での販売価格が高すぎるんですよね…。そのせいでコストパフォーマンスを重視する私のレーティングでは、どうしても点数が押さえ気味になってしまいます。ただし紙ラベルにbHのメタルベルトのボトルデザインは恐ろしくカッコいい。
Rating:83/100

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I.W.ハーパーは歴史のあるブランドであり、日本ではジムビームやフォアローゼスに並ぶ有名な銘柄ですが、本国アメリカでは20年近く販売されていませんでした。長らくブランドを所有していたシェンリー社が87年にギネス(ユナイテッド・ディスティラーズ)に買収され、90年代半ばにはハーパーを輸出用のブランドにするという戦略がとられたのです。それには日本も少なからず関与しています。当時の日本では、ハーパーと言えばバーボンの代名詞と言っても過言ではないほど人気があり、そのため正規のルートを通さず現地で安く買ったハーパーを日本で高値で売るというグレーマーケットが存在してしまった。その問題を解決する方法が、アメリカ国内でのハーパーの販売を停止し、輸出専用のブランドとすることでした。それが現在ブランドを所有するディアジオによって、アメリカのバーボンブームに後押しされるかたちで2015年に復活を果たしたのです。
日本でお馴染みとなるゴールドメダルと12年のラインナップではなく、グレーのラベルのNAS(No Age Statement)と15年熟成(限定生産)の二本立てです。最近になって日本でも並行輸入でちらほら見かけ初めました。正規販売では従来どおりの物が流通しているようです。ではテイスティングに移りましょう。

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推定2014年ボトリング。キャラメル、ブラウンシュガー、ココナッツオイル、やや接着剤。円やかというよりはライトな酒質。余韻は軽くビターチョコ。フルーティさとスパイシーさのあまりないタイプ。それなりに旨いのだが、正直言って軽いし、特別なフィーリングも感じない。ボトルの華やかさに中身が負けている印象。
Rating:83/100

Thoughts:アメリカ流通の物と日本流通の物を熟成年数の違いやラベルの違いのみと考えると、おそらく蒸留はニューバーンハイム、エイジングは元スティツェル=ウェラーのレンガ造りの熟成庫、ボトリングがディアジオ所有のどこかの施設とみるのが順当だと思います(但し、蒸留所は非公開)。問題はマッシュビルなのですが、私の飲んだ感覚としては、どうも昔の80%を越えるコーン多めのマッシュビルではないような気がします。私にはヘヴンヒルのスタンダード・バーボン・マッシュビルに近い味わいに感じました。とあるバーボンに詳しい方は、ハーパー12年をフォアローゼスで蒸留した可能性が高い、と自身のウェブサイトの記事に書いていました。それはディアジオがフォアローゼスと契約蒸留を結んでいることからの予想ではあるのですが、味もフォアローゼスの特徴と同じ風味プロファイルに感じると言うのです。その方の書く他の記事を読む限り、かなり確かな舌を持っているように思えるので、もし彼の舌も信んじて尚且つ自分の舌も信んじるなら一つの可能性として、ハーパー12年の中身のジュースは年代によって大幅に入れ替わっている、というのも考えられます。飲んだことのある皆さんのご意見を伺いたいところですね。

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WILD TURKEY 80 Proof
日本では通称スタンダードと呼ばれる、ワイルドターキー入門編(?)みたいなやつの旧ラベルです。中身は4年熟成と言われています。このラベルの後にセピアトーンのラベルに変わりますが、その時から81プルーフになり、6・7・8年熟成酒のブレンドとなったようです。

私にとって初めて飲んだワイルドターキーがこれで、当時キッズだった私は、ワイルドターキーは「ワイルドである」というイメージに導かれてこれを購入し、それほどワイルドとは感じなかった思い出があります。「あれ?こんなもんなの?」という印象だったんですね。しかし、後に8年101プルーフを飲んだ時、あまりの旨さとその違いに愕然とし、やっぱりワイルドターキーは「ワイルドだったんだ」と思わせ、同時に私をハイプルーフ信者へと駆り立ててくれたのでした。そういう経緯からこの80プルーフのワイルドターキーは私のルーツの一つと言っていい。
それから色々なバーボンを飲み経験を積んだ後、人生で二本目の80プルーフWTを思い出に釣られて買いました。既に8年101プルーフを飲みなれた口です。正直、侮っていました。ところが飲んでみると、これはこれでアリだと思いました。8年101プルーフと較べればヴァニラの風味は弱々しいけど、樽の焦げた味はちゃんとするし、梨の風味を凄く感じてフルーティーなんです。そこにブラックペッパーが振りかかってるイメージ。ちょっと薄いけど、しっかりワイルドターキーの味です。
Rating:82/100

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【バーボンの語源】

バーボンという言葉は、日本人にはお馴染みのお菓子メーカー「ブルボン」と同じ言葉でして、フランス読みでブルボン、アメリカ読みでバーボンなだけです。アメリカ独立戦争(1775~1783年。イギリス本国とその13植民地との戦い)の際、フランスはアメリカに色々と協力しました。結果、独立を果たしたアメリカはその功績を讃え、各地でフランスにちなむ地名や都市名をつけたのです。例えばウッドフォード郡にあるバーセイルズはフランス読みでベルサイユですし、多くの蒸留所が集うルイヴィルは、そのままルイ16世の「ルイ」に村を意味するフランス語「ヴィル」がついたものです(ちなみにルイジアナ州のルイもルイ14世から由来します)。またパリのアメリカ読みパリスという小さな都市もあります。そのパリスがあるのがバーボン郡であり、フランスのブルボン王朝にちなみ名付けられました。
バーボンの語源はこのバーボン郡発祥の物だから、というのが日本ではよく見かける説明です。しかしバーボン誕生秘話は、実際には確たる証拠の資料はないのが実情で、当時のケンタッキー州がまだ辺境地帯であり、物事を記録するという習慣のあまりない地域であり時代でもあったため、歴史家の推論や蒸留所のマーケティング担当者の想像力に頼るしかないのです。おそらくは「時代の要請」や「やむにやまれぬ事情」から、名もなき農民蒸留家によって自然発生的に各地でバーボンの原型は形造られていったと思われます。ちなみにバーボン郡には禁酒法以後2015年まで1つの蒸留所もありませんでした。

では、バーボン郡が発祥でないのになぜバーボンと呼ばれるようになったかというと、それはライムストーン起源説によって説明されます。ここではケンタッキーの歴史とオールド・バーボンという語がキー・ポイントです。
バーボン郡が1785年に誕生した時、ケンタッキー州は州ではなく、ヴァージニア州の一部でした。その当時のバーボン郡はヴァージニア州ケンタッキー地区の北東部・東部・南東部を占める大きな郡だったのですが、ケンタッキー地区が1792年に州として分離する頃には区画整理によってだいぶ小さくなっていました。1800年までには更に分割されもっと小さくなりました。そこで後に昔の広大なバーボン郡のことを「オールド・バーボン」と呼ぶようになったと言います。また、まだヴァージニア州時代のその広大なバーボン郡には、1784年に開港したライムストーンという港があり、初期ケンタッキーの重要な港湾都市だったそうです(現在のメイズヴィル)。1788年にはバーボン郡の約半分の面積がメイソン郡となり、ライムストーンもメイソン郡に含まれていましたが、それでも20年ほどは昔を懐かしんでか「オールド・バーボン」の愛称で呼ばれたと言います。ライムストーンから出港される大量の貨物の中には当然ウィスキーの樽も入っていました。その樽には「Old Bourbon Whiskey」の焼印(この焼印のことを「ブランド」と言います)が施されていたそうです。この当時アメリカンウィスキーの代表格は東部産のライウィスキーであり、それは地名に由来するモノンガヒーラと呼ばれていました。それとの区別、差別化の意味を込めて西部のウィスキー=オールド・バーボンとしたのではないか、という解釈があります。このバーボンウィスキーが、ケンタッキー州の州境となるオハイオ川を下り、ミシシッピ川を経由してルイジアナ州に至り、当時アメリカ最大の都市の一つであったニューオリンズへと売られていった。この故にケンタッキー産のある種のコーンウィスキーのことをバーボンと呼ぶようになった、と。つまりバーボン郡で造られたからバーボンなのではなく、オールド・バーボンから出港されるからバーボンと呼ぶようになった、これがライムストーン起源説です。

ライムストーン起源説は長年信じられてきた説で、一見なるほどと思ってしまうのですが、近年の歴史家からはこれを裏付ける資料は残ってないとされています。確かに素人目にも、ライムストーンがバーボン郡であった期間が短すぎるし、バーボンという言葉がウィスキーの一般名になったのが南北戦争(1861~1865年)以後のことであると言われれば、年代的に時間の辻褄が合ってない気がします。では、最近の研究ではどう解釈されているかというと、マーケティング説というのが有力になりつつあるようです。
近年の研究では中間業者、つまり蒸留する人とバーで酒を販売する人の間にいる人々に光が当てられました。バーボンを焦がした樽で熟成させるのも、フランス系の中間業者がコニャックの影響を受けてそうしたのではないか、と推察され、バーボンの歴史家マイケル・ヴィーチはそうした例としてタラスコン兄弟の名を挙げています。そして彼らの販売先であるニューオリンズは、フランス革命から逃れてきた王党派が多かったそうです。その人たちにしてみれば「ブルボン」という飲み物が提供されれば悪い気はしないでしょう。また逆に革命派の人たちにはフランスとアメリカの繋がりを説明すればいい、と。そういうマーケティング上完璧なネーミングがバーボンだった、という訳です。

始めに触れた日本のお菓子メーカー「ブルボン」をもう一度思い返して下さい。そもそもは北日本製菓という会社が起こりで、1989年に会社名も人気のブランドと同じブルボンに変更しました。そのブランド名ブルボンは、フランスのブルボン家に由来するともコーヒーのブルボン種に由来するとも言われていますが、まあどちらでも構いません。とにかくブランド誕生の現場を勝手に想像してみましょう。きっと当時の日本人に対して、ブルボンというフランス語がオシャレな響きを持っている、と判断されたのではないでしょうか?  マーケティングとは売りたい相手にどういうイメージを売るか慮ることが大事だと思います。お酒のバーボンもおそらくは同様に、アメリカ生まれのコーンウィスキーをバーボンと呼ぶことで、遠くの異国を想わせ、丸みの帯びた響きを持ち、オシャレで上級な雰囲気を漂わせたのではないでしょうか?  そう考えれば「バーボン」とは正に「ブルボン」だったのです。
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テネシーウィスキーの特徴となるチャコール・メロウイングを、樽熟成の前と後の2回施すことで、通常のOld No.7よりも更にスムースにしたのがウリのジェントルマン・ジャック。一説には熟成後のメロウイングは、熟成前のメロウイングより短時間で行うらしい。個人的にはスムースさを求めてはないのですが、確かにシルキータッチとクリアネスは感じられ、これはこれで美味しいです。アロマや味わいはジャックダニエルズそのものですし。

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2009年ボトリング。開封直後はOld No.7に水を加えたのかと思うほど薄っぺらい風味だったが、時間の経過とともに風味は開いて美味しくなった。そこまで来ると、なぜかOld No.7より旨いように感じられる。仮に熟成年数などのスペックが全く同じで、メロウイングの回数しか違わないのだとしたら、雑味が更に取り除かれて甘味が引き立っているのがGJなのだろう。
Rating:83/100

Gentleman Jack 80 Proof(画像左側)
年式不明。開封直後から美味しかったし、味わいにやや深みがあるように感じた。新旧の比較としては大差ないという印象。味の深み云々は強いて言えばの話に過ぎない。個人的にはラベルのデザインは圧倒的に旧の方が好きで、それを理由に旧に軍配を上げた。
Rating:84/100

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Booker's
BATCH No. C05-A-12
7YRS 5MO
128.5 PROOF
推定2012年6月ボトリング。高濃度なので全てがハイパワーで楽しめる。オーク、キャラメル、レザー等。但しそれほど長期熟成でないせいか、チョコレートやプルーンは出てこない。むしろビームらしいフレッシュフルーツの味わい。旨いと言えば旨いのだが、正直言って「特別」なフィーリングはない気がする。何よりも旨味を増して来たのが残り三分の一を切ってからだったのが痛かった。しかも、それでもブラントンズのSFTBには遠く及ばない。初期のロットやプライベートストックなどはもっと美味しいと聴くのだが…。
Rating:85.5/100

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