バーボン、ストレート、ノーチェイサー

◆◆FOR BOURBON LOVERS ONLY◆◆ バーボンの紹介やレビュー、レーティングなど。

カテゴリ: コラム

2019-02-11-22-14-15

当ブログでは烏滸がましくもレーティングなるものをやってますので、一応それについての注意点や私の見解をここに述べておきたいと思います。

先ずレーティングには大きく二つの考えがあるでしょう。一つは、とにかくその対象を飲み物としての味だけに焦点を絞り点数を付ける立場。こちらはテイスティングノートの延長線上の格付けであり、グルメ志向なノリであり、ストイックに味そのものを探知しようとする求道精神が感じられます。もう一つは、味以外の事柄も考慮し、その対象を飲み物という商品として捉える立場。こちらは味そのものもさることながら、市場に於ける製品の立ち位置やデザインやマーケティングを勘案し、ブランディングや歴史的な物語が味に影響を与える可能性を考慮する批評精神が感じられます。私はどちらかと言うと後者寄りの考えに基づいてレーティングしています。自分自身の経験から人間の味覚にとって思い込みは重要なファクターではないかと思うからです(*)。

点数は100点満点で0.5点刻みを基本とし、希にどうしても差を付けたい場合にのみ0.25点まで採点します。そして点数の付け方は、
香り30点
味わい30点
余韻30点
デザイン性とブランディング3点
コストパフォーマンス3点
稀少性3点
Xファクター1点
のような明確な内訳や枠組があって、その中で対象Aは「香り25点…コスパ2点…」などとやっている訳ではありません。上のような項目は全て考慮しはしますが、何と言うかもっとゆるやかな、伸び縮みのする、私の感覚に根差した得点となっています。そして当たり前ですが、それは私の好みの反映でしかありません。極端な話、点の付け手が異なれば全く逆の評価になることだってあるかも知れない。「レーティング」だ「格付け」だと大袈裟に言っても、一人のバーボン飲みの個人的嗜好を数値化する試みなだけで大した意味はないのです。

それと、点数は飲んだ「そのブランド」に付けたものではなく、あくまで私が飲んだ「そのボトル」に対する評価となります(**)。また申し訳ないのですが、点数はたまに変動します。と言うのも、点数は他との比較に於いて付けられていますので、「他」が増え、なお整合性がないと判断した場合には点数の見直しを図るからです。そのため、私が生きてバーボンを飲み続け、ブログを更新できる限りは、点数の微調整が行われると思って下さい。

考えようによっては、人が丹精を込めて造り上げた物に対し、人が点数を与え格付けすることは不遜な態度と言えるかもしれません。そう考える人はテイスティングノートや感想のみ採り、点数やら星やらABCやらのグレード評価を付けないレビューをすることでしょう。私も本来それでいいのだと思います。「男は黙って飲め」、それが一番格好いい。「酒なんて楽しく飲めればいいじゃん」、その通り。しかし、人間は何であれ上下関係に過敏な生き物でもあり、多くの消費者にとって最も気になることは、「で、それとあれ、どっちが美味しいの? どっちが上でどっちが下なの?」という情報だと思います。そこのところを端的に数値や等級で表すのがレーティングと云うものかと。だからと言って私は別に消費者の味方を気取るつもりは毛頭なく、単純に他人のレビューやレーティングを見るのが面白いと思うから自分もやってみてるだけです。或る一人のレビュワーのテイスティングノートとレーティングの全貌を追って行くと、そのレビュワーの嗜好や癖が何となく分かってきます。と同時に、知りたいバーボンについて様々なレビュワーのレーティングも見てみます。そうすることで自分が感じている風味を他人は何と表現し、どう評価しているのか、または随分異なる風味を感じてはいないか、そこから中身のジュースが違う可能性はないのか、そしてそのバーボンは世の中でどのようなポジションにあるのか、そういったことが朧気ながら立ち昇って来ます。私のレーティングもそうしたデータの一つとしてなら利用価値はなくはないでしょう。

以上、私のレーティングを参考にされる場合の注意点と見解でした。


*高級そうな箱やボトルに入っているとありがたみが増し美味しく感じる、高い金を払うと美味しくなければならないと心理的に追い込まれる、ブランドのイメージが好きだと味も美味しく感じる等。

**これは、ブランド権が売買され、そのブランドを製造する蒸留所が変わった場合や、ラベルまたはボトルデザインの変更(リニューアル)があった場合は勿論のこと、それだけでなく同じ蒸留所が製造しラベルが一緒のロット違いでも、なお何かが異なる可能性を考えてのことです。この点に関しては少し説明しておきたいと思います。
バーボンは焦がした樽で熟成させることでフレイヴァーの大部分を得る飲み物です。それは言うなれば天然由来の風味であり、化学的に調合された飲み物ほどには、個々のバレルの風味は一定していません。ある程度はディスティラーがコントロール出来ても、最終的にどんな風味が実現されるかは「神に委ねられている」。もっと言うと熟成庫の立地場所や熟成庫内のバレルを置く位置によって風味に違いが出て来るのがバーボンなのです。そのため、シングルバレル(1樽)やヴェリー・スモールバッチ(10樽前後)のような味の一貫性を問われない製品は別として、大型蒸留所の旗艦ブランドは大抵まばらにピックした3桁から4桁の数のバレルを混ぜ合わせることで、味わいに一貫性を待たせています。例えば2015年のAロットとBロットを比較した時、おそらく私を含めた素人には両者の差は殆どないように感じられるでしょう。そして2~3年の生産ロット違いにしても、差は感じれないことが殆どだと思います。大きな蒸留所には各ロットのサンプルが保管され、マスターディスティラー以下テイスターやブレンダーの仕事により、同一線上の風味になるよう製品化されていますから。ある意味マスターディスティラーの一番の仕事はブランドの味を変えないことにあるのです。それがブランドにとって消費者のロイヤルティを獲得する主な道だからです。しかし、厳密に言ったらそれらは全く同じものではない。現に私の経験談ですが、ほぼ同時期流通品のブランドを別々の販売店から購入し飲み較べてみると、概ね同じだし点数としたら変わらないけれども、僅かに何かが違うと感じたことがありました。
では、同一ブランドの2015年と2005年の製品を較べたらどうでしょうか。十年一日何1つ仕様が変わらないのはビジネスとして稀です。ボトリングプルーフやバレルセレクトの基準が変更されたりでもしたら風味の変化率は大きい筈。高性能なフィルターや高速ボトリング設備が導入されたり、 施設が清潔になったことで何らかの細菌類がいなくなり味わいに変化をもたらすこともありそうな気がします。いや、仮に原材料の穀物を同じ農家から購入し、樽も同じクーパレッジから購入し、その他マッシュビルも酵母も仕込み水も同じ、蒸留器も当然同じ、熟成場所すらも全く同じだったとしても、おそらく微細な風味の変化があるのは容易に予想されます。それは微生物の数だったり、水質の変化だったり、完全同一の気候条件がないことだったり、色々な可能性は考えられますが、とにかく微妙に何かが違うのが当たり前だと思うのです。ブランドにとって守られているのはあくまで品質の同等性であって風味の同一性ではありません。そのため風味の僅かな異なりが点数に反映することを考慮して、レーティングはそのブランドに対するものではないとしておきたいのです。
また、上に縷々述べてきたこと以上に重大と思われるのはボトルコンディションです。ボトリングから10年以上を経過したオールドボトルに関しては、同一ロットかつ未開封であっても、保管状況で中身のコンディションはかなり違うような気がしています。或る店では直射日光や蛍光灯にさらされているかも知れない。或る店では湿度が高い場所に保管していたかも知れない。また何らかの理由でコルクやプラキャップの気密性に差があったかも知れない。テイスティングでスワリングしたり5分放置してから飲み始めるのは、酸化させることで香味を開かせる意味合いがあると思いますが、未開封のボトルも物凄く微妙ではあっても徐々に酸化している可能性はあると個人的には思っています。蒸留酒はワインほど繊細ではないかも知れませんが、それでも多少の風味変化はあるのではないでしょうか。それ故レーティングは、当の私が飲んだそのボトルに対する評価としておくのが無難だとの判断です。
更に付け加えると、開栓後の風味や香味の変化も考えるなら、バー飲みでのレーティングは「そのボトル」どころか「その一杯」ということにしておくのが順当でしょう。

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【バーボンの語源】

バーボンという言葉は、日本人にはお馴染みのお菓子メーカー「ブルボン」と同じ言葉でして、フランス読みでブルボン、アメリカ読みでバーボンなだけです。アメリカ独立戦争(1775~1783年。イギリス本国とその13植民地との戦い。)の際、フランスはアメリカに色々と協力しました。結果、独立を果たしたアメリカはその功績を讃え、各地でフランスにちなむ地名や都市名をつけたのです。例えばウッドフォード郡にあるバーセイルズはフランス読みでベルサイユですし、多くの蒸留所が集うルイヴィルは、そのままルイ16世の「ルイ」に村を意味するフランス語「ヴィル」がついたものです(ちなみにルイジアナ州のルイもルイ14世から由来します)。またパリのアメリカ読みパリスという小さな都市もあります。そのパリスがあるのがバーボン郡であり、フランスのブルボン王朝にちなみ名付けられました。
バーボンの語源はこのバーボン郡発祥の物だから、というのが日本ではよく見かける説明です。しかしバーボン誕生秘話は、実際には確たる証拠の資料はないのが実情で、当時のケンタッキー州がまだ辺境地帯であり、物事を記録するという習慣のあまりない地域であり時代でもあったため、歴史家の推論や蒸留所のマーケティング担当者の想像力に頼るしかないのです。おそらくは「時代の要請」や「やむにやまれぬ事情」から、名もなき農民蒸留家によって自然発生的に各地でバーボンの原型は形造られていったと思われます。ちなみにバーボン郡には禁酒法以後2015年まで1つの蒸留所もありませんでした。

では、バーボン郡が発祥でないのになぜバーボンと呼ばれるようになったかというと、それはライムストーン起源説によって説明されます。ここではケンタッキーの歴史とオールド・バーボンという語がキー・ポイントです。
バーボン郡が1785年に誕生した時、ケンタッキー州は州ではなく、ヴァージニア州の一部でした。その当時のバーボン郡はヴァージニア州ケンタッキー地区の北東部・東部・南東部を占める大きな郡だったのですが、ケンタッキー地区が1792年に州として分離する頃には区画整理によってだいぶ小さくなっていました。1800年までには更に分割されもっと小さくなりました。そこで後に昔の広大なバーボン郡のことを「オールド・バーボン」と呼ぶようになったと言います。また、まだヴァージニア州時代のその広大なバーボン郡には、1784年に開港したライムストーンという港があり、初期ケンタッキーの重要な港湾都市だったそうです(現在のメイズヴィル)。1788年にはバーボン郡の約半分の面積がメイソン郡となり、ライムストーンもメイソン郡に含まれていましたが、それでも20年ほどは昔を懐かしんでか「オールド・バーボン」の愛称で呼ばれたと言います。ライムストーンから出港される大量の貨物の中には当然ウィスキーの樽も入っていました。その樽には「Old Bourbon Whiskey」の焼印(この焼印のことを「ブランド」と言います)が施されていたそうです。この当時アメリカンウィスキーの代表格は東部産のライウィスキーであり、それは地名に由来するモノンガヒーラと呼ばれていました。それとの区別、差別化の意味を込めて西部のウィスキー=オールド・バーボンとしたのではないか、という解釈があります。このバーボンウィスキーが、ケンタッキー州の州境となるオハイオ川を下り、ミシシッピ川を経由してルイジアナ州に至り、当時アメリカ最大の都市の一つであったニューオリンズへと売られていった。この故にケンタッキー産のある種のコーンウィスキーのことをバーボンと呼ぶようになった、と。つまりバーボン郡で造られたからバーボンなのではなく、オールド・バーボンから出港されるからバーボンと呼ぶようになった、これがライムストーン起源説です。

ライムストーン起源説は長年信じられてきた説で、一見なるほどと思ってしまうのですが、近年の歴史家からはこれを裏付ける資料は残ってないとされています。確かに素人目にも、ライムストーンがバーボン郡であった期間が短すぎるし、バーボンという言葉がウィスキーの一般名になったのが南北戦争(1861~1865年)以後のことであると言われれば、年代的に時間の辻褄が合ってない気がします。では、最近の研究ではどう解釈されているかというと、マーケティング説というのが有力になりつつあるようです。
近年の研究では中間業者、つまり蒸留する人とバーで酒を販売する人の間にいる人々に光が当てられました。バーボンを焦がした樽で熟成させるのも、フランス系の中間業者がコニャックの影響を受けてそうしたのではないか、と推察され、バーボンの歴史家マイケル・ヴィーチはそうした例としてタラスコン兄弟の名を挙げています。そして彼らの販売先であるニューオリンズは、フランス革命から逃れてきた王党派が多かったそうです。その人たちにしてみれば「ブルボン」という飲み物が提供されれば悪い気はしないでしょう。また逆に革命派の人たちにはフランスとアメリカの繋がりを説明すればいい、と。そういうマーケティング上完璧なネーミングがバーボンだった、という訳です。

始めに触れた日本のお菓子メーカー「ブルボン」をもう一度思い返して下さい。そもそもは北日本製菓という会社が起こりで、1989年に会社名も人気のブランドと同じブルボンに変更しました。そのブランド名ブルボンは、フランスのブルボン家に由来するともコーヒーのブルボン種に由来するとも言われていますが、まあどちらでも構いません。とにかくブランド誕生の現場を勝手に想像してみましょう。きっと当時の日本人に対して、ブルボンというフランス語がオシャレな響きを持っている、と判断されたのではないでしょうか?  マーケティングとは売りたい相手にどういうイメージを売るか慮ることが大事だと思います。お酒のバーボンもおそらくは同様に、アメリカ生まれのコーンウィスキーをバーボンと呼ぶことで、遠くの異国を想わせ、丸みの帯びた響きを持ち、オシャレで上級な雰囲気を漂わせたのではないでしょうか?  そう考えれば「バーボン」とは正に「ブルボン」だったのです。

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【バーボンとは?】

バーボンとは簡単に言うと、以下の要件を満たす蒸留酒のことです。

①アメリカで造られていること。
②原材料(マッシュ)に51%以上コーンが使われていること。
③80度以下で蒸留すること。
④内側を焦がしたオークの新樽(ニュー・チャード・オーク)で熟成させること。
⑤樽入れの度数(エントリープルーフ)が62.5度以下であること。
⑥40度以上でボトリングすること。

更に「ストレート」と名乗るためには、
⑦2年以上の熟成期間が必要。
⑧水以外の着色料やフレイヴァー等の添加物を加えてはならない。

と、まあこんなところですけど、少しだけ補足すると、バーボンの定義について語ってるものの中に「ケンタッキー州でつくられたもの」と書かれているのをたまに見かけますが、これは全バーボンの九割以上がケンタッキー州産なことからくる誤解です。①の定義によりアメリカ国内で造られていればバーボンと名乗ることは出来ます。ただし「ケンタッキー・ストレート・バーボン」と名乗るためにはケンタッキー州で造られていなければなりません。

また、似たような誤解の例に「厳密にいうとジャック・ダニエルズはテネシー・ウィスキーであってバーボンではない」という言い回しが挙げられます。実はジャック・ダニエルズはバーボンの要件を全て満たしています。つまりバーボンなのです。テネシー州の規定により、同地で製造され、かつチャコール・メローイングを施してあるものがテネシー・ウィスキーを名乗れるため、テネシー人の誇りをもってそう言っているだけで、レギュレーション上バーボンでない訳ではありません。アメリカ南北戦争当時、南軍のテネシー州と中立から北軍に転じたケンタッキー州とでは隣接する州ながら仲が悪く、それがウィスキーの呼称にまで影響を及ぼしているのでは?との説があります。日本でも隣接する県同士のライバル視などがあるではないですか、そのようなものかと。まあ、実際にはマーケティング戦略におけるバーボン一般との差別化でしょう(※)。

あと注意しておく点は⑦です。「バーボン」には熟成年数の規定はありません。三ヶ月熟成でもバーボンと名乗れます。ただし「ストレート・バーボン」と名乗るには最低2年の熟成が必要となるのです。また「ケンタッキー・バーボン」を名乗るには最低1年の熟成が必要となります。

上に述べた定義は1909年に出されたウィリアム・ハワード・タフト大統領の有名な「タフト・デシジョン」のストレート・ウィスキーに関する規定を核とし、後の1938年(新樽の使用)と1964年(アメリカ国内製造)に加えられた条項をベースにしたものです。それを私が解りやすいと思われる日本語に整理し直しました。詳しく知りたい方は、現在ラベル表示とマーケティングに関する規制を取り仕切るTTB(Alcohol and Tobacco Tax and Trade Bureau)のサイトをご参照下さい。

少しでも日本にバーボン(大きく言ってアメリカンウィスキー)が根付けばいいなと願い、ブログを始めることにしました。ネットで検索すれば即座に出てくることではありますが、先ずはバーボンとは何かを説明することで「はじめの挨拶」に代えさせて頂きます。ご意見ご感想、見解の相違や間違いの指摘等はコメントからどしどしお寄せください。レッツ・バーボン・トーク!


※日本でもアメリカでも「ジャックダニエル論争」というものがあります。つまりジャックはバーボンなのかそうではないのか、という議論です。正直言って退屈な議論なのですが、熱を帯びやすいファン心理に基づくところが多分にあり、異様に盛り上がったりします。今はバーボン一般について語っているので、ジャックにこれ以上は立ち入ることはしません。論争については本ブログでスタンダードなJACK DANIEL'S Old No.7を取り上げる時少しだけ言及する予定です。

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