バーボン、ストレート、ノーチェイサー

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カテゴリ:ケンタッキーバーボン > ヘヴンヒル蒸留所

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今宵の映画は1961年製作の『ハスラー』。敢えてのモノクロ映像と全編ジャズの流れる渋い映画です。主演のポール・ニューマンがあまりにもカッコいいんですよね。あらすじや映画史的な位置付け等は映画サイトを参照して頂くとして…。個人的にも「生涯ベスト10ムーヴィー」に入るかも知れません。この映画、バーボン飲みには特別な映画なのです。それは劇中にJTSブラウンが登場するから。ポール・ニューマン演じる主人公のファースト・エディが「ノーアイス、ノーグラス」と言って注文する姿に憧れた人も多いのでは? 少なくとも私は思いっきり影響されました(笑)。いまだにバーボンはノーアイス、もちろんノーウォーター、そしてノーグラス、つまりラッパ飲みで飲むのが一番美味しいと思ってます。
相手のジャッキー・グリーソン演じるミネソタ・ファッツは「ホワイト・タヴァーン・ウィスキー」をグラスとアイスで頼んでいますね。当時実際にホワイト・タヴァーンなるブランドがあったかどうか調べても分からなかったのですが、ヘヴンヒルが商標を持っていたとの情報や、画像検索ではブレンデッドの物とオーエンズボロの記載のある安そうなウィスキーが見つかりました。原作の小説では、ファッツはホワイト・ホース・ウィスキーを注文しているそうです。もしかすると映画で使用する許可がおりなかったのかも知れません。
ところで、この40時間にも及ぶ名勝負の場面、ファッツの注文はプラシーボ効果を狙ったのではないかとの解釈があります。ホワイト・タヴァーン・ウィスキーの「ホワイト」は、日本語で言うところの「空白」のような裏の意味で、実際にはノンアルコールだった、という訳です。いずれにせよ勝負に徹し自制心を失わないファッツのその戦略とインテリジェンスは、ある意味それこそ成功者の哲学ではあるでしょう。けれどもJTSブラウンを調子にのってラッパ飲みし、結局は敗れるエディにこそバーボン飲みは敗残者の美しさを見てしまいますよね。バーボンを飲まずに勝つくらいなら、バーボンを飲んで負けるのを選ぶのがバーボン飲みの正しい在り方なんだ、と浪漫を投影して。…私だけですか?(笑)。

さて、肝心の中身について触れておきましょう。映画当時のJTSブラウンはローレンスバーグで蒸留されていました。それに頭に「Old」の付いたオールドJTSブラウンというブランド名だったと思われます。古いボトルをネットで調べてみると、50年代とか60年代とされる物にはローレンスバーグの記載があり、おそらく中身のジュースは現在で言うところのワイルドターキー蒸留所で造られたものと推測されます。アメリカの或るバーボン研究家はそう断言していました。当時ボブ・グールドが所有していたアンダーソン・カウンティ蒸留所(以前のリピー・ブラザーズ蒸留所、後のブールヴァード蒸留所)は、70年代初頭にオースティン・ニコルズに売却されるまでJTSブラウン蒸留所として運営されていたからです。そうでなければ、オールドプレンティス蒸留所(現フォアローゼズ蒸留所)ではないでしょうか? オールドプレンティス蒸留所にブラウン家は少なからず関与してるので。まあ、少なくとも私の飲んだもの、今回のレビュー対象はエディが飲んだものとはまるっきり別物なのは間違いありません。でもラベルデザインはあまり変わっておらず、古めかしくカッコいいので雰囲気は楽しめました。
現在はヘヴンヒルが製造しており、アメリカではゴールドラベルのボトルドインボンドが人気みたいです。これは日本では一般流通していません。と言うかJTSブラウンというブランド自体、最近では輸入されていないようです。そもそもが現在アメリカ国内でも地域限定のブランドだと思います。日本に輸入され始めたのは、おそらく80年代中頃からではないかと思われますが、当時のバーボン本にJTSブラウンが輸出されるのは日本が初めてなんて書いてありました。
ちなみにJTSと言うのはジョン・トンプソン・ストリートの略です。ラベルの写真の真ん中の人物が一般的に「J.T.S. Brown Jr.」と呼ばれ(※ややこしいことに彼の父親と息子の一人も同名のため「Sr.」と表記されることもある)、オールドフォレスターを造っているブラウン=フォーマン社の創業者ジョージ・ガーヴィン・ブラウンの異母兄弟だと思われます。また日本語でJTSブラウンを検索した時に見つかる紹介文に、JTSをジョンとトンプソンとストリートの三人の略とする説明をよく見かけますが、一人の人物の名前なので気を付けたいところ。写真の他の二人は、左の人物がJTSの息子の一人クリール、右がその息子クリールJr.です。
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JTSブラウンの歴史については日本ではあまり語られることがないので、禁酒法時代以前のウィスキーに詳しい方の調査を基に、ここでざっくり紹介しておきましょう。

「JTSブラウンの物語」はケンタッキーの初期入植者の一人ウィリアム・ブラウンから始まります。1792年、彼は若き妻ハンナ・ストリートと共にヴァージニアからコモンウェルス・オブ・ケンタッキーの中央部の農村地域、おそらく後にハート郡マンフォードヴィルとなる付近に定住しました。ウィリアムはマーチャント兼プランターだったそうです。彼らには8人の子供がいましたが、そのうちの一人としてジョン・トンプソン・ストリート・ブラウン・Sr.(1793-1875年)は生まれました。JTSシニアはマンフォードヴィルで最初の郵便局長であり同地の長老派教会の憲章会員でした。多分、町の顔役のような立場だったのではと想像されます。彼はエライジャとアーミン・クリールの娘エリザベスと結婚し、クリール家の北にレンガ造りの家を1828年に建てました。ジョン・トンプソン・ストリート・ブラウン・Jr.(これ以降この人物をJTSブラウンとします)は1829年にそこで3人目の子供として生まれます。彼の教育環境についての情報は乏しいですが、父についてビジネスを学んだと思われます。

商取引の経験を積んだ26歳の時、JTSはケンタッキーの田舎から、のちの人生の舞台となるルイヴィルへと移り、ジョセフ・アレンという名の学生時代の親友と酒の卸売ビジネスを始めました。また同じ頃、著名な地元のタバコ・ディーラーの娘であるエミリー・グラハムという16歳の少女と出会い恋に落ち、二人は1856年に結婚、今後の13年間で8人の子供(6人の男の子と2人の女の子)を持つことになります。
1857年には、アレンはパートナーシップから撤退し、JTSは会社の全権を引き継ぎました。時代柄、JTSはコンフィデレート・アーミーの将校でもあったようです。彼の会社は南北戦争の間に「喉の渇いた」軍隊に酒を提供することで大いに成長し、1864年までにはかなりの財産を築いたと言います。その間、1863年にはJTSの17歳下の異母兄弟ジョージ・ガーヴィン・ブラウン(1846-1917)は学校に通うためルイヴィルに来ていて会社に招待されました。同社は金融機関の支援を得て市内の中心地ウィスキー・ロウと呼ばれるメイン・ストリートに移転し、ジョージはパートナーになることを求められ、1970年頃、会社の名前は「J.T.S. Brown and Bro.」となりました。
戦争が終わった後、1865年から1874年にかけて、ブラウン兄弟はJMアサートン・カンパニー(アサートンおよびメイフィールド蒸留所)、ルイヴィルのメルウッド蒸留所、マリオン郡セントメアリーのJBマッティングリー蒸留所などから高品質のストレート・バーボンを購入し、独自にブレンドしてシドロック・バーボン、アサートン・バーボン、メルウッド・バーボン等のブランドで販売していたそうです。1874年頃、いまだに理由は不明確ながら、JTSとジョージのパートナーシップは終わりを告げました。一説には、ジョージは自分の好みであるより高品質でより高価格のウィスキーの販売を目指し、JTSはより安価なウィスキーでより幅広い顧客層を生み出すことに関心を示すという、販売するウイスキーの品質に関して意見の相違があったのではないかと伝えられています。ともかくジョージは会社を離れ、後にブラウン=フォーマン社となる自らの会社を組織し、今に至るバーボン王朝を築くことになるのですが、それはまた別の話。

そうこうするうち、JTSの少年たちが成長するにつれて父と共に会社で働き始めました。初めは年長のグレアム(1857-1946)、続いてデイヴィス(1861-1932)とJTSジュニア(1869-?)が入社。そこで会社名は「J.T.S. Brown & Sons」に変更されました。グレアムは後に会社を去りますが、代わりに弟のクリール(1864-1935)とヒュエット(1870-1952)が加わります。やがて1890年代後半には、彼らは倉庫とボトリング施設を近くの105メイン・ストリートに移しました。ビジネスは活況を呈し、需要に追いつくための安定した供給を図る措置として、1894年(1904年という説も)にアンダーソン郡ローレンスバーグ近くソルト・リヴァーに面したマクブレヤーの大きな古い蒸留所を購入。このプラントではJTSの息子たちが主導して、「JTSブラウン」、「オールド・レバノン・クラブ」、「ヴァイン・スプリング・モルト」、「オールド・プレンティス」等のブランドを生産しました。これらの中で主力ブランドはオールド・プレンティスです。このラベルは施設の以前の所有者によって作成されたと推察され、煽動的な社説で知られた新聞編集者であり詩人でもあったジョージ・デニソン・プレンティス(1802-1870)にちなんで名付けられました。トレードマークとなる絵柄のベルもリバティ船「SS George D. Prentice」のシップス・ベルがモチーフなのではないかと思われます。また「JTSブラウン」や「オールド・プレンティス」に見られる1855の数字は、この蒸留所(RD No.8)の創設された年だと思われ、バーボン業界にありがちな起源のサバ読みでしょう。それはともかく、オールド・プレンティスのその象徴的なトレードマークの鐘は人気を博し、ベルのロゴをプリントしたグラスなど特別な顧客へのプレゼントアイテムがありました。

1904年、JTSの妻エミリー・ブラウンが65歳で死去し、ルイヴィルの往年の著名人や富裕層の多くも葬られている歴史的なケイヴ・ヒル・セメタリーに埋葬されました。それから一年足らずのうち、JTSも酒屋での仕事からの帰宅途中ルイヴィルの路面電車にぶつかり、二週間後に76歳で亡くなります。彼はエミリーの隣に埋葬されました。
両親の死後もブラウンの子息たちは非常に成功した会社の名前は変えずに経営を続け、デイヴィスは社長、クリールが副社長、JTSジュニアは秘書、ヒュエットが会計に就任しました。父親の死の年、彼らは旧来の家屋と隣接した107-109ウェスト・メインに新しい本社を開きます。そしてまた1910年には、マクブレヤーに建つ元の蒸留施設からボンズ・ミル・ロードを渡った向こう側に新しい蒸留所を建設しました。この蒸留所こそ後にシーグラムが購入し、現在フォアローゼズ蒸留所となっている施設です。当時全国的に人気があったミッション・リヴァイヴァル様式で建てられ、低い屋根と大きなアーチ型の窓を使用した優美な雰囲気の蒸留所は、今では国家歴史登録財に指定されています。その内部は2つの大きな処理領域を持ち、一方では発酵プロセスを、もう一方では糖化と蒸留プロセスに分けられていました。

禁酒法がやって来ると、他の多くの蒸留所と同じくブラウン一家も事業の中止を余儀なくされます。1932年には社長のデイヴィスが亡くなり、彼の未亡人であるアグネス・フィドラー・サドラー・ブラウンが事業を引き継いだようで、当時ほぼ完全に男性が支配していた業界に於いて、彼女はアメリカの歴史の中で蒸留酒製造所を経営する役割を担った最初の女性であると言われています。彼女は禁酒法解禁後すぐに共同経営者のグラッツ・ホーキンス、ウィルガス・ノーガーらとオールド・プレンティス蒸留所をリノヴェイトし、オールド・ジョー蒸留所(RD No.35とは別)として操業を再開したようです。しかし禁酒法が解禁された時、会社を復活させたのはクリール・ブラウンの息子クリールJr.でした。
クリールJr.は、ジョン・ショーンティ・ファームと倉庫「A」の一部を、ジョンの未亡人とアーリータイムズの創業者ジャック・ビームの相続人から取得し、1934~5年頃、JTSブラウン蒸留所を建設しました。L&N鉄道のバーズタウン・スプリングフィールド支店に面したバーズタウンの北東約4マイルの場所です。そこには36インチのビア・スティルと4つの発酵槽が設置してあり、1935年のクリスマスの日に最初のウイスキーを作りました。この蒸留所は自らケンタッキー州で最も小さい蒸留所と称し、「Old J.T.S. Brown」を生産していたとみられます。第二次世界大戦中は例によって工業用アルコールを産出していたようですが、この蒸留所は精留塔を有していなかったので、それらは約140プルーフで蒸留され、190プルーフに再蒸留するため他の場所に移送されました。理由は分かりませんが、クリールJr.は1955年前後に最終的には事業を完全に売却してしまいます。売却後、蒸留所の購入者は誰も工場をオペレートせず、ウィスキーの生産は1950年が最後だったそうです。ブランドをシェンリーに売却した後に蒸留所は解体され、現在では倉庫もそこには残っていません。

ブランドは幾人かの所有者の変遷を経てアルヴィンとボブ・グールドのもとへ行きました。彼らはブランドをアンダーソン郡へと戻し、タイロンにあるリピーのプラント(RD No.27)をJTSブラウン蒸留所として操業しました。 1972年7月1日に「ワイルドターキー作戦」のためにオースティン・ニコルズにプラントを売るまで、グールドはブランドを使い続けたようです。ブランドは1972年から1991年の間、ヘヴンヒルがユナイテッド・ディスティラーズから他のブランドと一緒に購入するまで休止状態にあった、とサム・K・セシルの本に書いてありますが、日本には80年代後半には確実に輸入されていました。もしかすると上の情報はアメリカ国内のみの話かも知れません。ともかくも、歴史あるケンタッキー・クランのブラウン家のブランドは、こうして今日まで生き残ってきたのでした。
では、そろそろ簡単なレビューへ参りましょう。

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J.T.S. BROWN 6 Year 80 Proof
推定2004年ボトリング。飛び抜けてはいないがバーボンとして普通に美味しい。ただし、6年熟成にしては熟成感がやや足りず物足りない。いや、足りないのは熟成感というよりプルーフなのかも。
Rating:80/100

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J.T.S. BROWN 10 Year 86 Proof
1995年ボトリング。今では貴重な火災前のジュースだし、せっかくの10年熟成なのに薄すぎる。いや、もちろん旨いとは言えるのだが、そこまで風味の強い原酒とは思えない。出来たら最低でも90プルーフで飲みたかった。
Rating:82/100

Thought:映画(または原作の小説は59年発表)に登場するくらいの銘柄ですから、当時は人気があったバーボンだったのではないかと想像します。と言うより「J.T.S. Brown」と云う名前には、ビームズやサミュエルズ、リピーズやワセンズのような、バーボン業界の欲しがる伝統と歴史の重みがあるでしょう。しかし、ヘヴンヒルにブランド権が移行してからはボトムシェルフ・バーボンの地位に甘んじているように見えます。トゥルー・ブルーカラー・バーボンなんて言ってる人もいました。ネームバリューのあるブランドなのに勿体ないですよね。いや、「JTSブラウン物語」で書いたように、そもそもJTSは安くてそこそこ美味しいウィスキーを売りたい大衆志向だった、というのが本当であれば、正にヘヴンヒルの安価なリリースはJTSの意を汲んだものと言えなくもない。
私の飲んだ6年熟成80プルーフの方は2004年ボトリングと思われ、熟成年数をマイナスすると、旧ヘヴンヒル蒸留所が焼失しバーンハイム蒸留所を購入する前年に当たるので、蒸留はブラウン=フォーマンかジムビームなのかも知れません。どちらにしろエントリーレヴェルのちょい上クラスのバーボンには違いないでしょう。これは悪い意味ではなく、そういう立ち位置の製品だと言うことです。それよりも取り上げたいのは10年熟成86プルーフの方です。こちらは90プルーフを下回るロウ・プルーファーとは言え、最低10年熟成というスペックからしたら期待値は高まります。なのに同時期のエヴァンウィリアムス緑ラベル7年熟成86プルーフに風味の強さで負けているのは驚きでした。これはボトルコンディションの差である可能性(*)も高いですが、バッチングに使われているバレルのクオリティに差がある気もしています。エヴァンウィリアムスはヘヴンヒルの看板製品ですから、エヴァンとJTSの相対的地位を考慮し、更に当時の長熟バレルの在庫状況(**)も考え合わせると、エヴァンには年数表記より高齢の原酒、例えば12年物とかを混ぜていてもおかしくはないのでは?と。まあ、憶測ですが…。

Value:おそらく現在の日本でJTSブラウンを店頭で見かけることは少ないと思われます。けれど近年までは流通していたので、オークション等の二次流通市場ではそれほどレアではありません。問題は価格なのですが、上述したローレンスバーグ産のJTSブラウンなら10万を越えても仕方がないと思います。ですが間違っても近年流通品に1万は出さないほうがいいというのが私の意見です。ヘヴンヒル産の物はあくまでキャッツ&ドッグス・ブランドの一つであってプレミアム製品ではないですからね。ただし、80~90年代の物に関してはそこそこ美味しい可能性があるので、MSRPの2~3倍までなら試す価値もあるでしょう。


*私の飲んだエヴァンウィリアムス緑ラベルの95年ボトリングは、腐る寸前の果実を思わせるような、私の好みからすると少々酸化が進み過ぎたと思われる風味でした。

**おそらく当時は火災前でもあり、まだまだ長期熟成古酒が豊富にストックされていたのではないかと推察されます。

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ヘヴンヒル蒸留所の旗艦ブランド、エヴァンウィリアムスの中でもレッドラベルは、バーボン好きは言うに及ばず、スコッチ中心で飲む方にも比較的評価の高い製品です。長らく輸出用の製品(ほぼ日本向け?) でしたが、2015年にアメリカ国内でもヘヴンヒルのギフトショップでは販売されるようになりました。日本人には驚きの120~130ドルぐらいで売られているとか…。日本では一昔前は2000円弱、今でも3000円前後で購入できますから、日本に住んでいながらこれを飲まなきゃバチが当たるってもんですね。

ところでこの赤ラベル12年、一体いつから発売されているのか、よく判りません。80年代後半には確実にありましたが、80年代半ばあたりに日本向けに商品化されたのが始まりなのですかね? 当時のアメリカのバーボンを取り巻く状況からすると、長期熟成原酒はゴロゴロ転がっていた筈です。その輸出先として、バブル経済の勢いに乗り、しかも長熟をありがたがる傾向の強い日本向けにボトリングされたのではないかと想像してるのですが…。誰かご存知の方はコメント頂けると助かります。
さて、今回は発売年代の違う赤ラベルを飲み較べしようという訳でして、画像左が現行、右が90年代の物です。赤の色合いがダークになり、古典的なデザインがモダン・クラシックと言うか、若干ネオいデザインになりましたよね。多分このリニューアルは、上述のギフトショップでの販売開始を契機にされたものかと思います。まあ、ラベルは措いて、バーボンマニアにとっては中身が重要でしょう。言うまでもなく、現行の方はルイヴィルのニュー・バーンハイム蒸留所、90年代の方はバーズタウンの旧ヘヴンヒル蒸留所の原酒となります。

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目視での色の違いは殆ど感じられません。強いて言えば旧の方が艶があるようにも見えますが、気のせいかも。

Evan Williams 12 Years Red label 101 Proof
2016年ボトリング。プリン、焦樽、ヴァニラ、バターピーナッツ、レーズン、莓ジャム、煙、足の裏。ほんのりフルーティなヴァニラ系アロマ。余韻はミディアムショートで、アルコールの辛味と穀物香に僅かなフローラルノート。
Rating:87/100

Evan Williams 12 Years Red Label 101 Proof
95年ボトリング。豪快なキャラメル、香ばしい樽香、プルーン、ナツメグ、チェリーコーク、チョコレート、ローストアーモンド、鉄。クラシックなバーボンノート。スパイシーキャラメルのアロマ。パレートはかなりスパイシー。余韻はロングで、ミントの気配と漢方薬、土。
Rating:87.5/100

Verdict:同じものを飲んでいる感覚もあるにはあるのですが、スパイシーさの加減が良く、風味が複雑なオールドボトルの方を勝ちと判定しました。現行も単品で飲む分には文句ありませんし、パレートではそこまで負けてはないものの、較べてしまうと香りと余韻があまりにも弱い。総論として言うと、現行の方は典型的な現行ヘヴンヒルの長期熟成のうち中程度クオリティの物といった印象。一方の旧ボトルも、バーズタウン・ヘヴンヒルの特徴とされる、海外の方が言うところのユーカリと樟脳が感じやすい典型的な90年代ヘヴンヒルのオールドボトルという印象でした。

Thought:全般的に現行品はクリアな傾向があり、対してオールドボトルは雑味があると感じます。その雑味が複雑さに繋がっていると思いますが、必ずしも雑味=良いものとは言い切れず、人の嗜好によってはなくてもよい香味成分と感じられることもあるでしょう。かく言う私も、実は旧ヘヴンヒルの雑味はそれほど好みではありません。両者の得点にそれほどの開きがない理由はそこです。

Value:エヴァン赤は日本のバーボンファンから絶大な信頼を寄せられている銘柄だと思います。確かに個人的にも、例えばメーカーズマークが2500円なら、もう500円足してエヴァン赤を買いたいです。またジムビームのシグネイチャー12年やノブクリークが同じ価格なら、エヴァン赤を選ぶでしょう。おまけにワイルドターキーのレアブリードよりコスパに優れているし。つまり、安くて旨い安定の一本としてオススメということです。もっとも、たまたま上に挙げたバーボンはどれも味わいの傾向は多少違うので、好みの物を買えばいいだけの話ではあります。参考までに個人的な味の印象を誇張して言うと、腰のソフトさと酸味を求めるならメーカーズマーク、香ばしさだけを追及するならノブクリーク、ドライな味わいが好きならレアブリード、甘味とスパイス感のバランスが良く更に赤い果実感が欲しいならエヴァン赤、と言った感じかと。
問題は旧ラベルと言うか、旧ヘヴンヒル蒸留所産の物のプレミアム価格の処遇です。個人的な感覚としては、上のThoughtで述べた理由から、仮に旧ボトルが現行の倍以上の値段なら、現行を選びます。確かに多くのバーボンマニアが言うように、旧ヘヴンヒル蒸留所産の方が美味しいとは感じますが、あくまで少しの差だと思うのです。それ故、私の金銭感覚では、稀少性への対価となる付加金額を、現行製品の市場価格の倍以上は払いたくないのです。ただし、その少しの差に気付き、その少しの差に拘り、その少しの差に大枚を叩くのがマニアという生き物。あなたがマニアなら、或いはマニアになりたいのなら、割り増し金を支払ってでも買う価値はあるでしょう。

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Evan Williams Green Label 7 Years 86 Proof
エヴァンウィリアムスの緑ラベルは、現在では4年熟成で80プルーフとなってしまっていますが、80年代から90年代にかけて日本に流通していた物は7年熟成で86プルーフでした(*)。黒ラベルにしてもその当時は8年熟成90プルーフでした。現行の黒ラベルはNASの5〜7年熟成で86プルーフですから、昔の緑ラベルは現行の黒ラベルをスペック的に上回っています。そして、なにより蒸留された施設の違いもあります。バーズタウンにあったヘヴンヒル蒸留所は96年の悪夢のような大火災により消失。その後、I.W.ハーパー等を造っていたルイヴィルのバーンハイム蒸留所を購入して蒸留を再開しましたが、この火災前に蒸留された原酒のことを欧米ではプリ・ファイヤー・ジュースと言い、味わいは現行の物より香味成分が強いとされ、失われた蒸留所への憧憬と共にバーボンマニアには珍重されています。

さて、そこで今回のボトルは95年ボトリング、言うまでもなく火災前のジュースという訳です。では、飲んでみましょう。

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濃厚なキャラメル香、湿った木、チェリーコーク、ローストバナナのキャラメルソースがけ、ベーキングスパイス、あんずジャム→プルーン、ブラックコーヒー。口中は酸味が強め。余韻に胃腸薬と僅かなミント。現行製品とは異なるクラシックなバーボンノート。43度にしては余韻も長く濃密な風味。ただし、クリーミーな口当たりではない。見た目は少し濁りがあるが、味はそれほど劣化しておらず、これは当たりの一本。現在のブラックラベルより遥かに複雑な味わいで、90年代のスタンダードバーボンがハイレヴェルだったことを偲ばせる。ラッパ飲みやテイスティング・グラスで飲むよりもショット・グラスで飲むのが最も美味しかった。個人的にはもう少し酸味とえぐみがない方が好みなので点数は抑えめ。
Rating:84.5/100


*他にも6年や5年熟成の物もあったようです(もしかすると販売地域の違いなのかも。私自身、写真で見ただけなので詳細は分かりません)。

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今回は似た者同士をいっぺんにレビューしようと思います。過去に投稿した「安酒を敬いたまえ」というシリーズに編入してもよい2本ですので、旨い安バーボンを探してる方は参考になさって下さい。一つはヘヴンヒル蒸留所の看板製品となっているエヴァンウィリアムスのブラックラベル。もう一つはラクスコが販売するエズラブルックスのブラックラベルです。ともに1500〜2000円前後の販売価格であり、ラベルの雰囲気が似ているだけでなく、ジュースのスペックが似ています。ラクスコは2018年4月に自社のラックス・ロウ蒸留所がケンタッキー州バーズタウンに完成し、稼働し始めましたが、それまではヘヴンヒル蒸留所から原酒を調達していたと見られます。ラクスコの自社蒸留原酒が含まれる物がリリースされるまでは数年かかるでしょう。裏事情はよく分かりませんが、原酒の調達方法がバルク買いなのであれば、この二者は同じ蒸留施設で生産された同じマッシュビルのバーボンと考えるのが妥当だと思います。違いは熟成年数と熟成庫内の場所と度数とボトリング施設といったところかと。

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目視で比べると、エヴァンウィリアムスの方が度数が低い(=濃度が薄い)のに、若干濃い色をしてるように見える。

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エヴァンのブラックラベルは、世界でジムビームに次ぐセールスを記録しているバーボンと言われます。以前は7年熟成、もっと前は8年熟成でしたが、近年の増加する需要に対応するためNASとなりました。現在では5〜7年熟成とされています。

2016年ボトリング。薄いヴァニラ香、穀物臭、麦茶、薄い薄いチェリー、スパイス。余韻にややケミカルなノートと汗っぽさ。甘味と複雑さが足りず、フルーツ感もあまりない。強いて言うならフルーティな麦茶とは言えるし、口の中にとどめておけばスパイシーさと苦味を感じられるが、どうもあっさりして物足りない。昔のエヴァンはもっと芳醇な香りだったのだが…。
Rating:80/100

EZRA BROOKS Black Label 90 Proof
エズラブルックス、及びオールドエズラのシリーズは2016年にリニューアルされ、画像の物は長らく親しまれた旧デザインとなります。熟成年数の表記はありませんが、おそらく4年もしくは長くて5年程度ではないかと思います。

2011年ボトリング。ブラウンシュガー、香ばしい木材、コーンチップス、ブドウ。口当たりがこちらの方がやや滑らか。余韻はうっすらトフィと麦茶。どうも熟成の足りなさが漂う。90プルーフにしては風味が物足りず、すぐ上のクラスのバーボンと比べて香りのボリュームが小さい。端正に整った味わいとも言えるが、個性がなくあっさりした味わいとも言える。
Rating:79.5/100

Thought:正直言って、どちらも期待外れの味わいと思いました。特にテイスティング・グラスで飲むと全然美味しくなく感じます。ラッパ飲みかショットグラスならまあまあです。どうしても上位クラスと比較すると風味の弱さが目立ちますが、あくまで安さが魅力のバーボンですので…。肯定的に言えば、普通に美味しいと言いますか、この程度の値段で現代バーボンのスタンダードな旨さをよく体現しているなとは思います。ちなみにライバルである他のボトムシェルフ・バーボンと比べて言うと、これらが1500円である場合、ジムビームホワイトが1300円前後であればこの二者を買いますが、エンシェントエイジとベンチマークが1000円であればそちらを買うのが私の考え(好み/金銭感覚)です。

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Evan Williams Bottled in Bond White Label 100 Proof
ヘヴンヒルの看板製品と言えるエヴァンウィリアムスのボトルドインボンド。通称ホワイトラベルとも呼ばれ、2012年に市場へ導入されたと言います。でもこれって昔もありましたよね?  一旦終売になってからの再導入という意味でしょうか?  もしくはアメリカ国内では昔は販売されてなかったか、或いは地域限定販売だったのかも知れません。
マッシュビルは当然エヴァンブラックやエライジャクレイグと同じで、コーン/ライ/バーリーがそれぞれ75%/13%/12%(他説では78%/10%/12%)。また、熟成年数は実質5年だそうです。

ボトルドインボンド(またはボンデッド)というのは1897年に制定された主に商標と税収に関わる法律で、単一の蒸留所・単一の年・単一のシーズンに蒸留され、政府管理の連邦保税倉庫で最低4年以上熟成し、100プルーフ(50度)でボトリングされたスピリットのみ、そう称することが許されます。またラベルには蒸留所の連邦許可番号(DSPナンバー)の記載が義務づけられ、ボトリング施設も記載しなければなりません。上の条件を満たした物は緑の証紙で封がされ、謂わばその証紙が消費者にとって品質の目印となっていました。紛い物やラベルの虚偽表示が横行していた時代に、ラベルには真実を書きなさいよというアメリカ初の消費者保護法にあたり、結果的に蒸留酒の品質を政府が保証してしまうという画期的な法案だったのです。現在では廃止された法律ですが、バーボン業界では商売上の慣習と品質基準のイメージを活かして、一部の製品がその名残を使っています。このEW BIB White Labelもその一つ。では、レビュー行きましょう。

本ボトルは2015年ボトリング。一言、キャラメルボム。コーンフレークにキャラメルをかけてほんの少しスパイスを振りかけたような感じ。余韻はリンゴの皮の煮汁。複雑さのない単純で直線的な味わいながらも、それが却って好結果という典型例。開封直後から甘いキャラメル臭全開で美味しかった。ボトル半分の量になると甘い香りが減じてしまい、他の香味成分が開くのかと思いきやそうでもなく、全体的に穀物感の強い少々退屈なものへ。とは言え、相変わらず旨いは旨い。これは100プルーフの成せる業か。
同じヘヴンヒル産で、これより度数が高く熟成年数の長いファイティングコック6年と比べて、キャラメル香の豊富さと甘みで勝ってる(ただし、余韻の複雑さでは負ける)。このブランドによる差異を、熟成庫のロケーションの違いとバレルセレクトでしっかりと造り分け、尚且つどのロットも継続的にこのキャラクターで安定しているのだとしたら大したもの(他年度製品と比べた事がないので判らない)。
Rating:84.5/100

Value:上でファイティングコック6年を持ち出して比較しましたが、本来であれば較べたいのはヘヴンヒル・ボトルドインボンド・ホワイトラベル6年でした。ところがそのHH BIB 6yrはケンタッキー州限定の製品らしく、日本では購入しづらいときてます。そこで同蒸留所産でスペックと価格の似ているのが上述のFC 6yr(*)だったのです。で、それら二つはキャラクターは若干違えど私的には同点です。お好みの方を買えばいいでしょう。
さあ、ここからが問題なのですが、日本に於いて人気の高いエヴァンウィリアムスの一つに赤ラベル12年というのがあります。これは日本限定(**)の製品でして、約3000円で購入できてしまいます。そしてこの白ラベルは2500〜3000円で販売されているのです。赤ラベルのほうがフルーティーさと複雑さで勝りつつ、なおパワーも劣っていない格上のバーボン。アメリカ国内では安くて旨いという評判を誇るボトルドインボンドも、500円の差額、時には同額で格上の赤ラベルが買えてしまう日本の状況下では、正直言ってその存在意義は小さいと言わざるを得ません。かなり美味しいバーボンらしいバーボンだけに、もし2000円だったら大推薦なのですが…。いや、赤ラベルが4000円程度であれば、2500〜3000円の白ラベルも存在意義はあります。あとはお好み次第。


*現行のファイティングコックは熟成年数の表記がなくなりました。6年より若い原酒が入ってる可能性が高いです。例えば6年と4年のブレンドとか。

**アメリカでもヘヴンヒルのギフトショップでは販売されているようです。私が直に目で見た情報ではないのですが、Instagramで$140と言ってる方がいました。日本の恩恵に感謝するしかありませんね…。

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今回から数回に分けて「安酒を敬いたまえ」と題して、700〜750mlあたり1500円までのエントリークラスバーボンの飲み比べとレーティングの一覧を作ってみようと企画しました。正確には1500円を少し越える物も含む、1500円前後までと受け取って下さい。ここはジャックダニエルズもワイルドターキーもメーカーズマークもいないチープな世界。もう最低のラインですよ。ちょっと上物を飲んだ後では満足出来っこない。けれど、これも愛せてこそのバーボンマニアだと思うのです。高級品やレア物を飲むだけがマニアじゃない。あなたの口や脳や臓器がバーボンのために出来ているのなら、これらも愛せるはずだ(笑)。
では、蒸留所別に分けまして、今回はイントロダクションとヘヴンヒル蒸留所編となります。

Heaven Hill Distillery◆ヘヴンヒル蒸留所
ヘヴンヒルの通常のバーボンマッシュビルは、コーン/ライ/バーリーがそれぞれ78%/10%/12%と75%/13%/12%という二つの説があります。どちらが正しいのか判断がつきませんので並記させてもらいました。チャーリングレベルは# 3 と言われており、バレルエントリープルーフは125です。

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Heaven Hill 80 Proof
980〜1200円程度
ヘヴンヒル蒸留所はエヴァンウイリアムス黒ラベルをスタンダードなバーボンとして売り出しているようです。そこから考えるとこちらは、それよりも格下のバーボンと言えます。熟成年数はおそらく4年。或いは3年程度かも知れませんね。アメリカではヘヴンヒルのボトルド・イン・ボンド規格のものが売られているようです。昔は「オールド」のついた熟成年数の長いものもありました。
正直なにもコメントが思い浮かばないほど普通。いや、普通に旨いとは言えるのですが、それ以下でもそれ以上でもないと言うか…。うっすら甘く、さっぱりしていて、フルーティーと言うには果実感が足りない感じ。弱々しいキャラメル香は感じますが、穀物っぽさとケミカルなノートのほうが強く感じられます。と言って、くっさーい酒、クセのある酒とは言い難く、癖のないクリアでライトな如何にも現代の安バーボンです。しかし、値段からしたら十分美味しい。
Rating:77/100

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John Hamilton 80 Proof
980〜1300円程度
ジョン・ハミルトンという人はケンタッキーの初期蒸留家のようです。詳しくは調べてもよく分かりませんでした。もしかすると現行の物はアメリカでは売られてないエクスポートオンリーのブランドかも知れません。
これまた殆どヘヴンヒルと同じ印象です。全てがライト。バーボンらしいオーク臭や甘味や酸味があるけれども弱々しい。けれど値段からしたら満足というやつです。
Rating:77/100

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Old Virginia 6 Year 80 Proof
1300〜1500円程度
ヴァージニアと名付けられてはいるが、ケンタッキーストレートバーボン。ケンタッキー州はもともとヴァージニア州の一部だったので、ヴァージニア州で造られてなくてもこの名前はアリなのかも。日本には流通してませんが他国では同ラベルの8年熟成の物があるようです。原酒は明らかにされてませんが、香りからして典型的なヘヴンヒルのジュースだと思われます。
6年熟成ともなると40度とは言え、上記二つと較べだいぶ香りが豊かになります。スパイシーさも出てきました。しかし芳醇とは言い難く、やはりまだ穀物臭とケミカルな香りが強い。弱いヴァニラにコーン、ビオフェルミン。 フルーツ感も弱いけれど、安いのでけっこうお買い得感はあり。
Rating:79/100

他にもテンガロンハットという、日本にバーボンブームがあった時代に、日本酒類販売とナショナル・ディスティラーズが共同開発したブランドがあります。おそらく当時はND傘下の蒸留所、その後ジムビームの原酒を使っていたと思いますが、現在ではヘヴンヒルの原酒が使われています。なので、ここに並べても良かったのですが、価格的にみてヘヴンヒルやジョンハミルトンと大差ないと判断して割愛しました。値段は1000円ちょいです。是非お試しあれ。
更にはマークトゥエイン、マーチンミルズ、T.W.サミュエルズ等、ヘヴンヒルの若い原酒を使用したとおぼしきバーボンがありますが、同じ理由で割愛させて頂きます。
また、ヘヴンヒル蒸留所を代表する銘柄エヴァンウィリアムスのブラックラベルは1500円以内で購入できることもありますが、一つ上の価格帯と判断してここには載せてません。
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値段が安いのに高いアルコール度数で人気のファイティングコック。エヴァンウィリアムスやエライジャクレイグと同じくヘヴンヒルディスティラリーが造っています。2015年には6年の表記は消え、現在ではNASとなりました。90年代までは6年ではなく8年が流通しており、クラシカルな紙ラベルがカッコよかったです。更に2000年代までは日本限定で15年物も流通していました。

このバーボンのオリジンは何処にあるのか知りたくて調べたのですが、全くその手のソースがヒットせず、ヘヴンヒルがそもそもオリジナルなのか他の蒸留所から取得したのか一向にわかりません(※追記あり)。ただ70年代物と言われるボトルの写真をみるとケンタッキー州ローレンスバーグと記載があります。一体何という蒸留所で造られていたのでしょうね。更に60年代と言われるボトルにはコネチカット州スタンフォードの記載があります。そこに蒸留所があったのか、それともただのボトリング施設の場所なのか判りません。また、ファイティングコックのラベルでメリーランド・ライ・ウイスキーがあるのも見つけまして、それにもコネチカット州スタンフォードと記載があります。こうなるとヘヴンヒルがオリジナルではないと考えていいような気がします。
あと余談ながら、ライ・クーダーがスライドギターで使うスライドバーの一つにファイティングコックの瓶を使っていたそうです。

さて、このバーボン、ネット検索にて日本語で書かれた何らかの情報を見ると、かなりの割合で「小麦バーボン」だと書かれているのを発見します。それは個人やバーのブログだったり、酒販店の商品説明だったりします。小麦バーボンというのは、メーカーズマークのような原料にライ麦を使わず小麦を使うバーボンのことです。海外のサイトで調べてみると、ファイティングコックを小麦バーボンだとしている情報は一つもありません。逆にハイ・ライ・マッシュビルだとしているものは少数ありました。 私が飲んでみた限り、ファイティングコックは小麦バーボンでもなければ、ハイ・ライ・マッシュビルでもなく、ロウ・ライ・マッシュビルのコーン多めのバーボンに感じました。はっきり言えばエヴァンウィリアムス等と同じマッシュビルに感じます。これはどういうことなのでしょうか?
ネットの情報はコピペの連鎖が殆どですから、或る一説がほぼ同じ文言で多く散見されるのは仕方ありません。しかしファイティングコックが小麦バーボンというのはちょっと信じがたい。あるバーのブログでは、6年は小麦バーボンで、15年はライ麦少なめコーン多めのマッシュビルだから味が違うのだという主旨の記述がありました。単発リリースのブランドやファミリーリザーブとかファミリーエステート、またはシングルバレルと言うならいざ知らず、いくら15年が日本限定の製品だとしても、量産されかつ継続性のあるブランドでそれをされたらアイデンティティーに欠ける気がします。そもそも熟成年数が倍も違えば味が違うのは当然でしょう。
また、ある酒販店の商品説明では、ファイティングコックのホームページに「キックを与えるために原料にライ麦ではなく、小麦を使ってるのだ」と書かれている、と述べられているのです。ええ!? 一般的に小麦はソフターな酒質になる特徴があるとされているのに?  普通キックを与えたいならライ麦を使うのでは?  慌ててヘヴンヒルや日本の輸入元のブランド紹介を調べるとそのような記述は現在では見られませんでした。可能性としては、昔は小麦バーボンだったが現在ではそうではない、というのも考えられます。けれど、それを本国のアメリカ人がまるで知らないというのはちょっと解せません。確かにヘブンヒルのバーンハイム蒸留所では小麦バーボンも造っています。それはスティツェル=ウェラーから引き継いだオールドフィッツジェラルド系のどちらかというとマイルドなバーボンに使用されます。常識的に考えて荒々しい闘鶏がモチーフのバーボンにそれを使うのは意味が分からなくないでしょうか?

大事なことなので、もう一度繰り返します。ファイティングコックを小麦バーボンとしているのは日本人だけです。海外では、ファイティングコックはヘヴンヒルのスタンダード・マッシュビル(コーン75%/ライ13%/バーリー12%、また他説では78%/10%/12%)を使用して造られている、というのが一般的認知です。上に述べた60〜70年代のような古いものはどうか判りませんが、少なくとも近年のヘヴンヒル産の物は小麦は使われていないと思ってよいでしょう。では、そろそろレビューへ。

Fighting Cock 6 Years 103 Proof
2013年ボトリング。まずは強めのアルコール臭、弱めのキャラメル香、ややソーピー。クリーミーな口当たり。穀物感とコーンウィスキー感が強い。正直言ってマチュレーションピークの前なのは否めないが、ハイ・プルーフなので満足感は高く、お値段を考えればグッドバーボン。特に開封後しばらくして香りが開くと少しフルーティーになり、かなり美味しい。
Rating:84/100

Fighting Cock 8 Years 103 Proof
94年ボトリング。飲んだのが10年以上前なので細かいことが言えないが、ストロングかつウェルバランスだったように思う。俗に言う思い出補正はあるかも知れない。
Rating:86/100

追記1:その後、アバンテというファイティングコックの輸入元のホームページに「バーボンウイスキーとは一般的にトウモロコシ、ライ麦、大麦麦芽が原料だが、ファイティング・コックはトウモロコシと小麦を使った原酒を選んでいるので、コシの強さがある。」と書かれているのを発見しました。もしかするとこれが、日本での「ファイティングコック小麦バーボン説」の直接的な情報源であるのかも。と言うより、それが輸入元の記述であるからには、そもそも蒸留所から提出された情報に何か誤解を与えるような説明がされていたのではないか、と考えるのが自然な気がしてきました。というのも、有名なバーボン掲示板のファイティングコックのスレッドで見かけたのですが、或る方のコメントによるとファイティングコックのウェブサイトに「殆どのバーボンは小麦を使って造られるが、このバーボンにはキックを与えるためにライ麦を使っている」という主旨のことが記載されている、と言うのです。は? 殆どのバーボンは小麦で造られてませんけど? この投稿は2011年にされています。もしこのコメントが本当なら、少なくともその当時までは、ファイティングコックの公式ウェブサイトで不適切な表現がなされていた可能性があります。そして私が本文で取り上げたように、日本の或る酒販店はファイティングコックのホームページから「キックを与えるために原料にライ麦ではなく、小麦を使ってるのだ」と引用して商品説明をしています。これ、言ってることは反対ですが、文章の言い回しが似ていますよね。実際にはどちらも間違っているのですが、どうやら往年のファイティングコックの公式ウェブサイトに、そんな言い回しがあったのは間違いなさそうです。もしかするとヘヴンヒル蒸留所が当時雇っていたPR会社の担当者がバーボンのことをあまり知らなかったのかも知れません。

追記2:古いファイティングコックについて記事執筆時より少々明らかになった情報があります。こちらを参照下さい。

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Elijah Craig Single Barrel Aged 18 Years 90 Proof
BARRELED ON 2-23-90
BARREL NO. 3755
バーボンの父と称されるエライジャ・クレイグ牧師の名を冠したヘヴンヒルのプレミアムバーボン。12年物とは比較にならないほど複雑な芳香を持っています。様々なドライフルーツのアロマや味わいと、渋味を含んだオークの風味、それをアルコール度数45度でボトリングするバランス感覚は大変面白味があります。ピーチやパイナップルも出てきましたが、キャラメル感はそれほどでもなく、オーバーオークな感じもしません。いわゆるパンチやキックを求める人には向かない、長熟ならではの香味をきくバーボン。日本には殆ど輸入されていない21年や23年も本国ではリリースされており大変人気があります(と言うか18年も最近は日本に入ってこない)。
本ボトルは90年に蒸留されたもので、いわゆる旧ヘヴンヒルのジュース。現行と比較したことはないので味の違いは分かりません。
Rating:87/100

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EVAN WILLIAMS COPPER STILL CERAMIC  7 Years 90 Proof
1981年に発売されたものと言われています。エヴァン・ウィリアムスが当時使っていた蒸留器を再現したものなのでしょうか。とは言え中身のジュースはポットスティルで蒸留したものではないです。甘いキャラメル香と、現行バーボンとは異質の雑味のある風味は、オールドボトルの醍醐味ではあるものの、どうもエグみが強くて苦手な味でした。もしかすると劣化してたのかも知れませんね。飾りに買ったのでいいですけど。
Rating:73/100


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EVAN WILLIAMS Black Label 8 Years 90 Proof
94年ボトリング。なんか松脂っぽい風味のする今ではあまりないタイプのバーボンでした。古いお酒は保管状況により味がだいぶ異なる気がします。劣化とまでは言いませんが、どうも本来の味ではなかったのではないかと思います。
Rating:81/100


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エヴァン赤12年PhotoGrid_1368531685676
EVAN WILLIAMS Red Label 12 Years 101 Proof
2009年ボトリング。逆算するとバーズタウンにあったヘヴンヒル・ディスティラリーが火事で焼失して、ルイヴィルのバーンハイム・ディスティラリーを買い取る間に蒸留された計算になるので、中身はブラウン=フォーマンの所有するアーリータイムズのプラントで蒸留されたものかなと想像します。なんとなくいつものヘヴンヒルより幾分かフルーティな気がするのは気のせいでしょうか。これは旨いです。
Rating:87.5/100


エライジャクレイグ12年DSC_1093
ELIJAH CRAIG 12 Years 94 Proof
95年ボトリング。あっさりしつつコクのあるタイプで、穀物感とフルーツ感、甘味とスパイシーさの加減、度数どれをとってもバランス型かなと思います。2000年代後期から2010年代初頭の物を飲んだ時も、その印象は変わりませんでしたが、僅かに90年代の物の方が美味しかった気がします。
Rating:86.5/100

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