バーボン、ストレート、ノーチェイサー

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カテゴリ: ライウィスキー

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ジャックダニエルズと並ぶテネシーウィスキーの雄ジョージディッケルのライウィスキーです。と言っても中身のジュースはテネシー州で蒸留されたものではなく、MGPの95%ライ・マッシュがソース。2012年から発売されました。熟成年数は5年程度と言われています。
当時マスター・ディスティラーだったジョン・ランによると、熟成したウィスキーはインディアナ州からシカゴ近郊のイリノイ州プレインフィールドにあるディアジオのボトリング施設に運ばれ、そこでジョージディッケルの特徴となるチルド・メイプル・メロウイング(原酒を0℃近くまで冷却してからサトウカエデの炭で濾過する方法)が施されているようです。木炭はテネシー州タラホーマ近くのディッケル蒸留所から送られ、同じ方法で行われるのだとか。ただし、テネシーウィスキーは本来熟成前にメロウイングされますが、ライはMGPから熟成後のウィスキーを調達してるためそう出来ないので、一般的なウィスキーと同様ボトリング前になされています。

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George Dickel Rye 90 Proof
推定2017年前後ボトリング、並行輸入。ラムネ菓子、香ばしい樽、キャラメル、ピクルス、ライチ、メロン、洋梨、鉄。開封直後は、口当たりは円やかと言うよりはウォータリーだったが、次第に円やかさを増した。パレートはやや単調な青リンゴ。余韻に豊かなスパイスと僅かに苦味を伴った爽やかなハーブ。液体を飲み込んだ瞬間がハイライト。
Rating:85.5/100

Thought:海外では、所有している親会社も同じ、原酒も度数も同じ、更に熟成年数まで近いブレット・ライとの比較レビューが散見されます。私も真似っこしてブレットとディッケルを同時期に開封して飲み較べました。そうすることでチルド・メイプル・メロウイングの効果のほどを知りたかったのですが、個人的な印象としてはチルフィルタード云々よりも、そもそもブレットよりディッケルのほうが熟成年数が長い味に感じます。少なくとも私の飲んだボトルに関しては、色合いもディッケルの方が濃い色でしたし。そのため、その効果のほどはよく判りませんでした。ただ、ノンチルフィルタードが持て囃される昨今、ディッケルのチルド・メイプル・メロウイングって風味を失うだけじゃね?との疑念もあったのですが、特に風味が減じている印象は受けません。やはり、ジャックダニエルズにしろジョージディッケルにしろ、チャコール・メロウイングにはウィスキーのクラスを変えるほどの力はないと私には思われます。

Value:同じ親会社ながら、今のところ日本ではディッケルよりブレットのほうが流通量が多く入手しやすいと思いますが、上に述べたように大体同じスペックの両者が、仮に同価格だとしたら私はディッケルを選びます。ただし、海外の比較レビューでは、私と逆の評価が見られました。すなわち、私にはディッケルの方がより角のとれたまろみと甘味を感じ、ブレットのほうに爽やかさを感じやすかったのですが、或る方はディッケルのほうがドライで、ブレットのほうが甘いという趣旨の発言をしていたのです。もしかするとロット間の差があるかも知れません。

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世界で人気のブランド、ブレットのライウィスキーです。ブレット・ブランド自体の紹介はこちらを参照下さい。ブレット・ライは2011年3月から発売されました。バーテンダーからの要望が多かったため製品化されたと聞き及びます。ラベルの緑色はブレット・ディスティリング・カンパニーの創業者トム・ブレット自ら拘って選び抜いた絶妙なグリーンなのだとか。ジュースはお馴染みMGPの95%ライ。熟成年数は4~6年とも5~7年とも言われており、おそらく値段から考えて4年熟成酒をメインに使っているのではないかと想像します。

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BULLEIT RYE 90 Proof
推定2016年あたりボトリング、購入は2018年。色はやや薄めでオレンジがかったゴールデン・ブラウン。焦がした木、ライスパイス、青リンゴ→マスカット、ミント、蜂蜜、洋梨、穀物臭、竹林。爽やかなフルーツとスパイシーなアロマ。ウォータリーな口当たり。口中はマイルドな甘味と豊かなスパイスが感じられる。余韻はややハービーな苦味が強い。開封からしばらくは香りのボリュームが低く、味わいも平坦だった。残量が半分を切ってから幾分か濃密になり美味しくなった(開封から3ヶ月以上経過してやっと)。同じMGPソースで熟成年数の若いリデンプションと較べると、円やかなテクスチャー、かつ甘味を感じやすい。ブレットと同じくディアジオの所有するブランドであり、同じMGP95ライをソースとしたジョージディッケル・ライと比べると、なぜか全体的に薄口の印象だった。
Rating:85/100

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テンプルトン・ライは日本でも酒販店やバーで取り扱う店が多く、ライウィスキーの中では比較的有名なブランドかと思います。ラベルに使われている写真は禁酒法下のスピークイージーでの一葉でしょうか? とても雰囲気あるラベルでカッコいいですよね。
伝説によればテンプルトン・ライは、元々はアイオワ州キャロル郡の小さな町テンプルトン(人口は2010年の国勢調査で362人だった)の農家の人々が収入を補う方法として禁酒法期間中に造られ、それが高品質であったことから「ザ・グッド・スタッフ」と知られるようになり、シカゴ、オマハ、カンザスシティのスピークイージーで人気があったと伝えられています。しかも、あの伝説的ギャングスター アル・カポーンのお気に入りであったと言われ、晩年アルカトラズ刑務所に投獄されたカポーンは刑務所の中にあの手この手でテンプルトンを持ち込ませ、独房(AZ-85)からはボトルが発見されているのだとか。まあ、この手の話はマーケティング上のバックストーリーなので、正直どこまで本当か判りません。

現代のテンプルトン・ライは、2001年頃(または02年とか05年という説もあった)、アイオワンのスコット・ブッシュがテンプルトンの復活を思い付き、禁酒法時代のレシピを知る人を探して、メリルとキースのカーコフ親子とパートナーシップを組み、テンプルトン・ライ・スピリッツLLCを立ち上げたのが始まりで、2006年に初めての製品が市場にリリースされました。アイオワ州以外での流通は2007年8月に開始され、2013年には全国的に流通するようになったと言います。日本語でテンプルトン・ライを検索すると、古い記事で2008年の日付が見られ、かなり早い時期から日本にも輸入されていたのが伺えます。

さて、トップ画像の物、つまり今回のレビュー対象は、現行製品とは若干異なる旧いラベルの物です。このラベルの変更には、単なるリニューアルではない困った理由があります。テンプルトン・ライは2014年にラベルの虚偽表示に対する集団訴訟の対象としてシカゴの法律事務所から訴えられ、仕方なくラベル表記の変更をすることになったのです。おそらく訴えられていなければラベルはそのままだったのではないでしょうか。2015年には集団訴訟和解案に基づき、2006年以来製品を購入した顧客への払い戻しをするとも発表されました(*)。なぜこんなことになったかと言うと、テンプルトン・ライは発売当初から実際には違うにも拘わらず、禁酒法時代のレシピを再現してアイオワ州で少量生産されているかの如き体裁をとり、消費者のミスリーディングを誘発しかねないマーケティングを行っていたからです。そしてそれはラベルの表記にも端的に現れていました。
実際のテンプルトン・ライは、インディアナ州ローレンスバーグにある元シーグラムの大型蒸留所(現MGP)で蒸留され熟成されたバレル(95%ライ/5%バーリーのライウィスキー)を購入し、それをアイオワ州へと運んだ後、ケンタッキー州ルイヴィルにあるクラレンドン・フレイヴァーズ社のアルコール・フレイヴァリング・フォーミュレーションを添加してからボトリングして販売されています。訴えた人の主張は意訳して言えば「こっちはアイオワ州の手作りのウィスキーと思って買ってんだ、違うなら金返せ!」ということでしょう。そしてその根拠としてラベルの虚偽表示を突いた、と。
ウィスキー業界に精通してる人なら周知のように、創業したてのクラフト蒸留所は熟成されたウィスキーを持たないため、アンエイジドで売れるウォッカやジンやムーンシャインなどを生産し販売する一方で、大手の蒸留所から熟成したウィスキーを仕入れ、それを独自のブランド名のもとに販売したりします。また創業時には蒸留器を所有せず、すなわち自ら蒸留を行わず、お金を稼いでから蒸留所を建設し、自社蒸留を開始するNDP(非蒸留業者)の存在もあります。こうしたNDPの中にはウェブサイト上に蒸留器の写真を掲載し、恰かも現実に蒸留してるかのように見せかけるところもあったりしました。テンプルトン・ライ・スピリッツもご多分に漏れず、こうしたNDPの一つでした。他所から原酒を調達し、オリジナルのラベルを貼りつけてボトリングするウィスキーのことを「ソースド・ウィスキー」とか「ソーシング・ウィスキー」と言いますが、これ自体は悪いことではありません。テンプルトン・ライが問題だったのは、ウィスキーのソースを意図的に難読化し、ラベルの真実性を歪めてしまったことです。アメリカの連邦規則ではラベルには真実を書かねばなりません。ラベルの変更点は主に3つです。
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先ずバックラベルに「インディアナ州で蒸留」という言葉が追加されました。ウィスキーが当該ブランドの場所とは異なる州で蒸留された場合、蒸留された州をラベルに記載しなければならないという規定があるからです。そして「SMALL BATCH」が「THE GOOD STUFF」に。スモールバッチというのは、厳密に言わなければ少量生産のことと思っていい用語です。MGPは大きな蒸留施設ですから、当然少量生産ではないのでこれを変更しました。あと「PROHIBITION ERA RECIPE」が熟成年数表記へ。プロヒビション・エラ・レシピと言うのは「禁酒法時代のレシピ」の意です。これはテンプルトン・ライ・スピリッツの共同設立者メリルの父でありキースの祖父であるアルフォンス・カーコフのレシピを指します。そのレシピは公にはされていませんが、おそらく砂糖黍90%/ライ麦10%のような典型的なムーンシャインのレシピであった可能性が高いとされ(**)、ライウィスキーではありませんでした。つまり禁酒法時代のレシピとは違うのでこれも変更したのです。バックラベルの文言も段階的に変化しており、「produced from~」から「based on~」になり、最終的には「Kerkhoff」の名前も出てきました。
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「~から造ってる」と言い切っていたのが「~に基づいて」とやんわりした表現になっていますが、基づいてすらいないのでは?という疑問もなくはありません。有り体に言えば、MGPの95%ライウィスキーが買い付け易い材料だったからソースとしただけで、禁酒法時代のレシピとは何の関係もないでしょう。テンプルトン・ライには、ライウィスキー人気が爆発的成長を見せる前に先鞭をつけた先見の明はあったにしても、少々誇大宣伝が過ぎてしまった感があります。
とは言え、悪い話ばかりでもありません。2018年夏には、ついに蒸留所が完成し稼働し始めました。アイオワ産のテンプルトン・ライは計算上2022年あたりにリリースされると予想されます。テンプルトン・ライ・スピリッツの会長ヴァーン・アンダーウッド氏によると、従来のMGPウィスキーを出来るだけ複製するつもりだ、とのことです。どのようなものが出来上がるか楽しみですね。

さて、ラベルの件は現在では手直しされていますし、誇張表現はアメリカンウィスキー業界の宿痾とも言え、遠く日本に住む我々にはアメリカの消費者保護問題に深く立ち入る必要性はあまりないでしょう。まあ、そういうこともあったということです。寧ろウィスキー飲みにとって興味をそそられるのは、ラベルよりも中身、先に少し触れたフレイヴァリング製剤の添加の方です。アメリカの有名なウィスキーレビュワーは、フレイヴァーの添加(とキース・カーコフの顧客へのメッセージビデオの釈明)に怒り、彼のウェブサイトのレーティング史上初の00点をテンプルトン・ライに付けています。
もう一度だけ、ラベルをよく見て下さい。どこにも「ストレート」の文字がないでしょう。テンプルトン・ライはストレート・ライウィスキーではありません。TTBの規定では、ストレートを名乗るためにはフレイヴァーを加えてはならないからです。また容積の2.5%を越えるフレイヴァーを加えてしまってはライウィスキーすら名乗れなくなります。そして最も重要なのが、加えられるフレイヴァーはそのクラスまたはタイプの構成必須要素でなければならないという規定なのですが、ここまでくると素人に判断できるレヴェルを越えています。判ることは、もしテンプルトン・ライが規定を遵守しているのならば、必須成分をもつ香料を2.5%以内含んだライウィスキーである、と言うことだけです。
上に挙げたレビュワーは、これではどの香味成分がMGP由来のものかケミカル・フレイヴァー由来のものか分からないという主旨のことを述べていますが、確かにその通りです。そもそもMGPの95%ライウィスキーはそれ自体で豊かなアロマとフレイヴァーを持っています。果たしてフレイヴァリング製剤を添加する必要があったのかどうか? テンプルトン側の公表している理由としては、創業者の先祖によって造られた禁酒法時代のオリジナル・レシピの風味プロファイルに近づけるため、だと言いますが…。とにかく飲んでみましょう。

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TEMPLETON RYE 80 Proof
BATCH:4
BARREL:239
BOTTLE:167
BOTTLED IN 02-11-2011
ライチ、バタースコッチ、ミント、トーストした木、洋梨のシャーベット、香草、ライスパイス、青リンゴ、若草、パセリ、漢方薬。40度にしては物凄く香りが強く、45度以上の物やもう少し熟成を経た物と同等かそれ以上。口の中では仄かな甘味と爽やかさ、苦味とスパイスが同居する。中身が残り三分の一くらいになってから、かなり余韻に苦味が目立つようになったが、ビターチョコ系の苦味ではなく、香草やスパイス系の苦味。飲んでも旨いが、香りがハイライトといった印象。
Rating:86(84.5)/100

Thought:私が初めてテンプルトン・ライを飲んだ時は衝撃を受けました。それまで飲んできたライ麦率51%程度と見られるライウィスキー(ジムビーム・ライやワイルドターキー・ライ等)とはまるで比べ物にならないフルーティさと香草の風味を感じたからです。こんな美味しいウィスキーがあったのか、と感動すら覚えました。以来MGP95ライのファンとなり、同じソースではあっても違うブランドのライウィスキーをいくつか飲みました。しかし、確かに同系統の風味を感じるものの、なぜかそこまでの感動はありませんでした。味であれ何であれ「初体験の衝撃」は脳裏に深く刻まれ、忘れ難く、時に誇大化するものです。また「慣れ」は脳への刺激を緩慢化するものでしょう。それがため、感動がなくなってしまったのかなと思っていたのですが、今回改めてテンプルトン・ライを飲んでみたところ、他のMGP95ライと較べて、やはり圧倒的に強いアロマ(ライチとバタースコッチ)を持っていると感じました。特にそれはテイスティング・グラスではなくボトルの口から直接匂いを嗅いだ時に顕著です(テイスティング・グラスだと他の香味成分を拾い易いようで、トースティなウッドと穀物感の方が前面に出ます)。もしかするとこの強いアロマの要因こそがフレイヴァリング製剤にあるのではないでしょうか? 実を言うと、テンプルトン・ライと並行して同じくMGP95ライであるブレット・ライとジョージディッケル・ライも比較のため開封して試飲していたのですが、テンプルトン・ライは80プルーフというロウワー・プルーフにしては強すぎるアロマが少し奇妙に感じなくもありませんでした。これは思ったより添加フレイヴァーが効いているような気がします。飲んだことのある皆さんのご意見を伺いたいところですね。
なお、上のレーティングで括弧をした点数は、フレイヴァーが入っていない状態を仮定した想像上の得点です。

Value:テンプルトン・ライの日本での販売価格は概ね4000~5000円です。他のMGP95%ライをソースとしたブランドに較べ、80プルーフであることを考慮すると、やや割高感は否めませんが一飲する価値は十二分にあると思います。もし安さを優先事項とするならブレット・ライという選択がベストでしょう。なによりブレットは流通量が多い=入手しやすいというメリットがあります。


*レシートがなくても一瓶につき3ドル、一人6本分まで。レシートがある場合は倍の6ドルが払い戻されたとか。

**2006年にテンプルトン・ライ・スピリッツがTTBに最初のラベル承認証明書を申請した折り、その1つは「Templeton Rye Kerkhoff Recipe」と呼ばれるものだったと言います。それは他の分類の対象とならない製品を包括する「特殊蒸留スピリット」に分類され、ラベルには「ケイン90%ライ10%から蒸留されたスピリッツ」と書かれていたそうな。これはホワイト・ラムのようなニュートラル・スピリッツとフレイヴァーに寄与するライ麦の蒸留物を少し混ぜたものと予想され、その製品がこれまでに製造されたのか判りませんが、唯一記録に残っているカーコフ・レシピがこれだそうです。

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Ezra Brooks Rye 90 Proof
現在ではラクスコが販売するブランド、エズラブルックスのライウィスキーです。アメリカでのライウィスキー人気の潮流を受けて2017年から発売されました。中身のジュースはお馴染みMGPの95%ライ・マッシュ、熟成年数は2年、しかもノンチルフィルタードだとか。おそらく日本で流通しているMGPライを使用した製品の中で最も安価かつ入手の容易なのがこのエズラ・ライでしょう。販売価格の割にはラベルがカッコいい。

本ボトルは2017年ボトリング。プリンのカラメルソース、焦がした木、シリアル、ナツメグ、ジンジャー、ケチャップ。口当たりは円やか。味わいや余韻にミントよりも穀物感のほうが強く感じられる。芳香成分のボリュームが少なく、けっして不味いわけではないのだが、どうにも物足りない。ノンチルフィルタードなのが信じられないほどだし、いくら若い原酒とは言え90プルーフにしては風味が軽すぎる。と言うより、我々がMGP95%ライに期待する風味が欠如しているからそう感じる。
Rating:81/100

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Thought:殆ど同じスペックのリデンプション・ライと較べて、どうしてここまでMGP95%ライの風味がしないのか解りませんでした。ファーストインプレッションでは、多分チャコールフィルターのかけ過ぎとチルフィルタードが施されているからだろうと単純に考えました。ところが調べてみるとノンチルフィルタードだと言います。ふうん、じゃあ樽の違いと少しの熟成年数の違いだけでここまで違うのか、と思い直しました。で、記事を書くにあたり更にエズラ・ライの海外でのレビューを追及していたところ、驚きの情報に行き着いたのです。
一般的にはエズラブルックス・ライの製品情報としては、MGPの95%ライ・マッシュをソースとし、熟成期間は2年でノンチルフィルタードとされているのは始めに述べた通り。多くのウイスキーサイトやブログでそう書かれているのは、おそらくラクスコ側からそうアナウンスされているからでしょう。しかし、あるバーボンマニアがエズラ・ライを飲んだとき、MGPの95%ライ・マッシュと感じなかったらしく、エズラブルックスのPR会社に確認の連絡をしてみると、担当者はマッシュビルの開示を渋ったものの、コーンが含まれていることを認めたと言うのです。
そうなると可能性として出てくるのが、MGPの95%ライではない他のライ・マッシュビル。MGPは2013年に顧客のためにマッシュビルの数を大幅に増やしたのですが、その時に二種類のライ・マッシュビルが追加されました。これによりMGPには三種のライウィスキーが存在することになります。そのマッシュビルの内訳は、
①95%ライ/5%バーリー
②51%ライ/45%コーン/4%バーリー
③51%ライ/49%バーリー
となります。上述の情報源によれば②か、もしくは①〜③のミックスなのではないか、とのこと。私の飲んだ印象としては②という気がしました。飲んだことのある皆さんの意見を伺いたいところです。

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REDEMPTION RYE 92 Proof
Batch No:241
Bottle No:7099
アメリカで見事にライ人気が復活を遂げるなか、リデンプション・ライは確固たる地位を築いたブランドの一つです。名前のリデンプション(償還、救済、贖う、買い戻し)というのは、禁酒法以前にアメリカンウィスキーの主流だったライウィスキーの復権が製品コンセプトだから。と言っても、バーボンもリリースされてます。また、製品意図としてマンハッタンやオールドファッションドのベースとして提供されているようです。
現在では親会社がDeutsch Family Wine & Spiritsとなり、ボトルとラベルがリニューアルされてまして(おそらく2017年あたりから?)、画像の印象的なトールボトルは廃止となりました。中身のジュースは変わらずMGPの95%ライで、ケンタッキー州バーズタウンにあるDave SchmierとMichael Kanbarが運営するバーズタウン・バレル・セレクションズによってボトルリングされています。熟成年数は平均2.5年と言われていますが、ラベルにストレートライと書かれてないのと、裏ラベルに「Rye whiskey is less than one years」と書かれているところを見ると、おそらく1年熟成の原酒がかなり入っているのでしょう。では、テイスティングへ。

焦がした木、青リンゴ味のかき氷、芹、蜂蜜、洋梨、ライスパイス。全体に若草及びハーバルなアンダートーンが感じられる。余韻にはスパイス感と共に土っぽさも。口に含むと若い原酒のせいかピリピリするし、喉越しはかなりスパイシーだが、その刺激が心地よく、味わい的にも未熟感が却って好結果という印象。しかもビッグ・フレイヴァー。同じMGPの95%ライを使用し、似たようなスペックのエズラブルックス・ライ(※)と較べてアロマ/フレイヴァー/フィニッシュ全てに於いて強い。液体を光に透かして見ると、細かい粒子のような浮遊物がかなり見える。これはもしかするとフィルターをあまりかけていないのかも知れない。思うにアルコール度数もパーフェクト。

海外での評を見ると、ストレートで味わうには若すぎ、カクテルのベースにはオススメとする意見もありましたが、個人的にはガンガンとストレートで飲みたい味わいです。比較的安価にライ・フレイヴァーを楽しめるイチオシの一品。現行品と較べたことはありませんし、バッチ間の味の変動はあるでしょうが、少なくとも私の飲んだボトルはそうでした。
Rating:84.5/100


※ネットで調べるとエズラブルックス・ライはMGPの95%ライをソースとしているとの説明が多いのですが、当記事を書いた後にそうでない可能性が発覚しました。ですが、記録として記事内容を変更せず投稿しています。 

今回は謎めいた古いウィスキーを二本まとめて。

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一方は表ラベルが完全に剥がれていて、しかも剥がれたラベルが手元にもないそうで、もはや何が何だか判らない状態なのですが、マスターによるとファイン・オールド・バーボンというありきたりの名前だったそうです。これはブランド名と言うよりは、俗にいうノーブランド、だけど「良質のバーボンですよ」くらいの意味合いだと思います。バーのブログより画像をお借りしまして、右がラベルが貼り付いてた当時の姿だそうです(左は前回ポストのドハティーズ)。
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Fine Old Bourbon?
まだ残っている裏ラベルから概ね4年熟成と推察されます。アルコール度数は50度でしょうか。ボトリングは禁酒法が終わった直後の1934年。と言うことは蒸留は禁酒法時代になされていますね。会社はマーヴィン&スニードとあります。マスターの話では、ニューヨークの42ndストリートにあったワイン商を通じて英国に輸入されたものが60年ほど経ってオークションに大量出品された時に入手したもので、表のラベルにも何処の蒸留所で蒸留された等の情報は書いてなかったそうです。
飲んでみた感想としては…、う〜ん、正直言って今回のバー遠征で飲んだなかで一番美味しくなかったです。なんというかピントのボケた味に感じました。現行製品にはない深みは感じられるものの、一言で言うと濁った味です。濁ってるのにコクがないとでも言うのでしょうか。オールドボトル愛好家ならいいのかも知れませんが、個人的にはこれだったら現代バーボンのフレッシュな味わいの方が好み。
Rating:78/100

そしてもう一方はJフライデイのライウィスキーです。こちらもネットで検索しても殆ど情報を得れないのですが、わかる範囲で書くと、ペンシルベニア州ピッツバーグのスミスフィールド・ストリートにあった、蒸留酒やワインまたシガーなどを取り扱うマーチャントもしくはウィスキー・ホールセラーで、当時の広告を見るとグッケンハイマーやオーヴァーホルト、ブリッジポートやマウント・ヴァーノンなど名だたる銘酒をストックしていたようですから、なかなか活気のある会社だったのかも知れません。会社の活動期間は1889ー1918とされ、自社ブランドには「1852 X X X Old Private Stock」、「Friday's」、「Gibson」、「Number 1870 Brand」、 「Number 1882 Apple Brandy」、「Old Cabinet Rye」などがあったそうです。

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WM J. FRIDAY FINE OLD RYE WHISKEY XXXX
そして本ボトルについてですが、これまた何処で蒸留されたかの記載もなく、熟成年数表記もなく、なんならプルーフ表記すらありません。逆にラベルの下の方に小さく、有害な薬物や毒を含んでいません、とは書かれています。ボトルド・イン・ボンド法(1897年)やピュア・フード&ドラッグ法(*1906年)施行後でも、まだ横行していた粗悪ウイスキーに対抗して書かれた文言なのでしょう。上に述べた会社の活動期間からするとボトリングは禁酒法以前となり、当然、蒸留もそうな訳で、おそらく同郷ペンシルベニアの有力なライウィスキー製造所から原酒を調達しているのではないでしょうか。画像検索でもあまりお目にかかれないラベルの物でかなりレアだと思います。
飲んでみた感想としては、かなり軽いウイスキーという印象。度数は40度くらいしかないと思います。あまりフルーティでもなく、甘み全開系でもなく、どちらかと言うとハービーで、何というか植物っぽいテイストの味わいでした。柔らかいニュアンスや風味など、現行ライウイスキーとの差は実感できましたが、正直好みではなかったです。思うに当時のエントリークラスのライウィスキーなのではないかと…。
Rating:83.5/100


*純正食品薬事法、純粋食品及び薬物法と訳される。有害または不当表示された食品や薬品を市場から排除し,州間取引される食品や薬品の製造・販売を規制することを目的とした法案で、アメリカンウィスキーの歴史にも多大な影響を与えた。


それと、今回は予算や飲酒量の都合で飲まなかったレアなバーボンを写真だけ撮らせてもらいました。やっぱりアンティークなボトルはカッコいいっすよね。
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禁酒法時代のウィスキーとしては比較的有名な銘柄ドハティーズ。そのプライヴェート・ストック名でのピュア・ライ・ウィスキー18年物です。ネットの画像検索で調べる限り、このプライヴェート・ストックのラベルの物は、他に13、14、15、17年がありました。16年もあるんですかね? それと、このドハティーズの禁酒法時代の物は大抵ボトリング名義がDougherty Distillery Warehouse Co.なのですが、このボトルではJ.A. Dougherty's Sonsという禁酒法前に近い名義になっています。なぜなんでしょうね? まあ、それは措いて、このDougherty Distillery Warehouse Co.というのは、既にドハティ家の家族経営ではなくなっていて、禁酒法時代の1920年代初頭に処方箋でのみ入手可能な薬用ウィスキーのボトラーとしてライセンスを受け設立された会社です。同社はニュー・へレム蒸留所やハイスパイヤー蒸留所、それと史上名高いオーヴァーホルト蒸留所などから禁酒法以前に蒸留されたウィスキーをドハティ・ブランドでボトリングして販売していました。

さて、話は前後してしまいますが、日本語で読めるドハティ・ウィスキーの情報は殆どないので、せっかくだからその来歴を、海外の禁酒法以前のウィスキーに詳しい人のブログを基にざっくり紹介しておきましょう。

創業者ジョン・アレクサンダー・ドハティはアイルランドに1788年6月10日に生まれました。26歳の時、1814年1月ノバスコシア州ハリファックス経由でフィラデルフィアへやって来たそうです。アメリカでのキャリアをパン職人として始めたものの、すぐにウイスキー事業に関与するようになりました。この間、彼は英国ブリストル出身のエライザ・シャーボーンと結婚し、1825年にはウィリアム、1827年にはチャールズが産まれました。
ウィリアムは年頃になると酒の貿易で父親としばらく働いていましたが、流行しつつあった新しい技術、電信に魅了され、1847年にオペレーターとなり、後にボルティモアからワシントンに至るベイン・ケミカル・テレグラフの補佐官に就任。一方の息子チャールズは父ジョンの蒸留事業に参加します。1849年あたりにJohn A. Dougherty&Sonが創設され、同社の蒸留所(ペンシルバニア州第1地区、蒸留所登録番号2番)は1850年に建設されました。1851年にはウィリアムもテレグラフの仕事を辞めて父と兄弟に協力することになり、会社名はJohn A. Dougherty&Sonsに変更されます。
ドハティーズ・ピュア・ライ・ウィスキーはすぐに成功を収め、フィラデルフィアだけでなくその周辺の市場も獲得しました。1866年10月21日、ジョン・ドハティは78歳で死亡し、息子のウィリアムが上級管理職に就任、会社名はJ.A. Dougherty's Sonsに再度変更されましたが、数年間で3つの新しい倉庫が建設され、ビジネスは成長を続けます。
ウィリアムはビジネスマンとしてのみならず、芸術の守護者としても知られ、アートクラブのメンバーであり、芸術アカデミーと自然科学アカデミーの著名なメンバーでもありました。彼のメゾチント、エッチング、彫刻のコレクションはフィラデルフィア随一だったと言われ、更には植物学、ガーデニング、冶金学、化学、そしてラテン語、ギリシア語、フランス語、スペイン語にまで精通していたとか。その芸術感覚はドハティ・ウィスキーの洗練されたラベルデザインに活かされていたようです。ウィリアムは1892年に67歳でこの世を去り、残ったチャールズが会社の経営を引き継ぎます。
会社は更なる成功を続けましたが、1898年には母親のエライザが死亡し、同じ年チャールズも71歳で死亡。事業を継承した家族は大きな蒸留所を管理することに関心がなく、1904年頃に蒸留所を売却してしまいます。新しいオーナーは名前と伝統の効力を認識し、ドハティの名の下で業務を続けますが、オールド・オーヴァーホルト蒸留所を含む他の蒸留所からウィスキーの供給を受けました。そして1919年、会社は禁酒法によって閉鎖。この後、冒頭に述べたDougherty Distillery Warehouse Co.が設立され、集中倉庫から薬用ウィスキーを販売するようになったのでした。
では、最後に飲んだ感想を少しばかり。

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Dougherty's PRIVATE STOCK PURE RYE WHISKEY 18 SUMMER YEARS OLD 100 Proof
蒸留はニュー・へレム蒸留所(ペンシルベニア州第1地区、蒸留所登録番号26番)。タックス・ストリップを撮り忘れてしまったので、蒸留年とボトリング年が定かではないのですが、ネットで同じ18年物のボトルを調べると1913年蒸留1931年ボトリングなので、多分これも同じではないかと思います。ラベル類は自然と剥離してしまったようです。
現代のライウィスキーとは異質の物という印象。強烈にミンティ。スパイシーよりハービーな感じ。例えて言うと、ウィスキーにモンダミンとリカルデントを一滴づつ垂らし、ハーブティーを混ぜてキャラメライズドシュガーを入れたような味。一瞬不味いのだが、これはこれで旨い。
ところで、このプライヴェート・ストックのラベルデザインは禁酒法時代のウィスキーで最高峰ではないでしょうか? なんというか現代のネオ・ヴィンテージに通ずるモダンな感覚があるように思えます。カッコいいですよね。
Rating:88/100

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ファイティングコックというブランドは強烈なインパクトがあります。日本語で「闘鶏」。戦う姿が如何にも荒々しく男らしいではないですか。バーボン・ドリンカーがワイルドさを演出したい時に、ワイルドターキーだとメジャー過ぎるからファイティングコックを選びたい気持ち、私にはよく理解できます。しかしターキーよりメジャーでないぶん、情報量もまた少ないのは必然的なことです。私はファイティングコックの起源を知りたくてネットで情報を収集していました。そのことはファイティグコック6年と8年のレビュー投稿に書きました。一説にはイーグルレアと同じくワイルドターキーを打倒するために創造されたブランドと言われますが、真偽のほどは定かではありません。なぜなら、現行製品の情報はいくらでも見つかる割りに、起源に関しては確信を得れる情報が見つからないからです。まず初めて発売された時期が明らかでなく、何処の蒸留所が産み出したかも判らないのです。ちなみにFCブランドのもとに、バーボン以外にもウォッカやジン、バーベキューソースまであったりします。

そんな折りに出会ったのがこちらのメリーランド・ストレート・ライをボトリングしたファイティングコックでした。まさかこんな物まであるとは衝撃でした。こちらに触れる前に、過去投稿時には知らなかった情報を得たので、繰り返しの部分もありますが再度ファイティングコックについて整理しておきます。私の推測も含みますので注意して下さい。

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現行のファイティングコックは2015年あたりにNASとなりました。それまでは6年熟成が比較的長く流通していて、それはおそらく90年代の終わり頃か2000年あたりに8年熟成にとって替わり、紙ラベルが廃止となった現行と同じクリアシールのボトルデザインです。90年代を通して発売されていたのは紙ラベルの8年熟成。その他に日本限定で15年熟成がありました。

さあ、ここからがちょっとややこしいのですが、ついて来て下さい。ネットでファイティングコックの写真を探していると、新たにバーズタウン産の7年熟成の写真を発見しました。そしてヘヴンヒルがファイティングコックのブランドを購入したのは78年という情報もやっと見つけました。これはボトルの写真とボトリング年の情報から察するに真実味のある年数に思われます。おそらく80年代には7年もしくは8年熟成のバーズタウン産が出回っていたのでしょう。では、その前は?

70年代中期とみられるファイティングコックのボトルにはケンタッキー州ローレンスバーグで瓶詰めと記載されています。いったい何という蒸留所だろうと、わくわくしながら想像していました。まさかフォアローゼズ(オールドプレンティス)蒸留所やワイルドターキー蒸留所なんてことは絶対ないよな、だって鳥ラベルのライバル同士のイーグルレアとワイルドターキーを造ってる蒸留所だよ?なんて。そうしたらサム・K・セシルの本によれば、70年代中頃にホフマン蒸留所はベン・リピー(よく知りませんが有名な蒸留一家リピー・ファミリーの一人でしょう)によってボトリング施設として運営されており、ファイティングコックをボトリングしていたというのです。しかも、それだけでなく、ジュリアン・P・ヴァン・ウィンクル三世のためのプライヴェート・ブランドまでボトリングしていた、と書かれています。ホフマン蒸留所といえば、エズラブルックス・ブランドがメドレー蒸留所に移行する前にそれを造っていた蒸留所であり、後の83年にはジュリアンが買い取りオールド・コモンウェルス蒸留所という名称でボトリング施設として使用した蒸留所です。まさかそこでファイティングコックがボトリングされていたとは…。で、68年当時のホフマン蒸留所はどうやらエズラブルックスとして運営され、まだ新しいウイスキーを生産していたと言います。ということは、70年代中頃のファイティングコックを6〜8年熟成のバーボンと仮定し、熟成年数を遡ると、そのウィスキーこそがファイティングコックである可能性が高いのではないか?という訳です。

ところで、ヴァン・ウィンクルと言えば小麦バーボンで有名です。上に述べたジュリアンのためのプライヴェート・ブランドと言うのが、仮に小麦バーボンだったとしたら、ファイティングコックもある時期だけ小麦バーボンであった可能性は高まります。私は過去投稿のレビューで、日本に広く流布している「ファイティグコック小麦バーボン説」は間違いではないかと提起し、その原因はファイティグコックの公式ウェブサイトにあったのではないかと勘繰ったのですが、このエズラブルックスが造っていたウィスキー、つまりローレンスバーグ産のファイティングコックが小麦バーボンだったのならば、そのことを昔の人は知っていて、それが現行品の説明に誤って転用された、という説が急浮上して来ます。まあ、これは珍説だし、仮定の話です。ヴァン・ウィンクルの全てのバーボンが小麦バーボンではないですし、ホフマン蒸留所が小麦バーボンを製造していたという話も聞いたことがありませんから。

ええ、話題が逸れたし、だいぶ話も長くなりました。でも、もう少し前の時代も見てみましょう。60年代ボトリングとされるファイティングコック6年を写真で眺めてみると、それにはコネチカット州スタンフォードにて瓶詰めと書かれています。そして今回のファイティグコック・ライウィスキーにも、裏ラベルには「Bottled by ESBECO DISTILLING CORP., Stamford, Ct.」とあります。このEsbeco Distilling Corporationというのは、1933年初頭にEsbeco Beverage Companyという名称で発足し、ウィスキー製造が合法となる憲章改正に伴い名称変更されたようで、本社はデラウェア州らしいですが、事務所がコネチカット州スタンフォードのジェファーソン・ストリートにあったそうな。おそらく自らは蒸留を行わないレクティファイヤー(整流業者)だと思われます。今で言うボトラーとかNDPのことです。ネットで調べられる限りでは、オールド・ウェストバリー・クラブ、マクラフリンズ、ケンタッキー・ブルー・ブラッド、リンブルック、サニーリッジ等のブランドを所有していたようです。他にオークション画像で、V.O.S クラブ(ブレンデッド)やバルトランド(メリーランド・ライ)というブランドもありました。始めに述べたように、この会社がファイティングコックを創造したのかどうか判りません。ですが、今のところ得れる情報では一番古いファイティグコックがESBECOのボトリングなのです(誰か詳細ご存じの方は情報提供お願いします)。

で、件のファイティングコック・メリーランド・ライなのですが、肝心のボトリング年がこれまたはっきりしません。ラベルが60年代とされるファイティグコックと少し異なるので50年代製でしょうか? 50年代製とされるワイルドターキーのメリーランド・ライをネットで見かけたことがあるので、ファイティングコックがワイルドターキーを打倒するために産まれたブランドという説が本当なら、これは直接対決と言える訳で、あながちない推測ではないと思います。または上記のバルトランドが40年代の物とされており、本ファイティングコックとそれが同じメリーランド・ストレート・ライであるところからすると40年代製の可能性もあるのかも。それに細かいことを言えば、60年代初頭と後期でラベルやボトルデザインが切り替わってることだって考えられます。マスターの話によると、昔イギリスのオークションで禁酒法時代の物という触れ込みで購入した物だそうですが、見たところ禁酒法時代のウィスキーに見えず、いい加減な鑑定をしていたのじゃないか、とのことでした。私も見たところ禁酒法時代より新しい印象を受けます。

さて、今回のボトルはネットの画像検索ではなく実際に手に取れたので裏ラベルもガッツリ写真に撮っておきました。これです。

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こいつはボトルド・イン・ボンドじゃない、だけど殆どのボトルド・イン・ボンド・ウィスキーより3プルーフ高くボトリングされている。それ故に、特徴的な風味、キャラクター、滑らかさがある。無双クオリティのウィスキーは、個人的満足に気前よく分け前を与える。

ファイティングコックのファイティングコックたる所以は、やはりボトルド・イン・ボンド規格を上回る「3」プルーフに込められているのでしょう。ライバルと目されるワイルドターキーを必ず何かで上回る必要があった。それが101プルーフならぬ103プルーフだった、と。103プルーフじゃなければファイティングコックはファイティングコックじゃない!
はい、そろそろ飲んだ感想へ。

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Fighting Cock Maryland Straight Rye Whiskey 6 Years 103 Proof
推定40〜60年代ボトリング(ごめんなさい、確信が持てないので期間を長めに取りました)。ペンシルべニアと並びライウィスキーの産地として名高いメリーランド産です。
キャラメル様のスイートネス。スパイシーさよりも甘味のほうが目立つ。薬品や薬草ぽさもあまり感じないが、僅かに子供用風邪薬の味。比較的厚みのあるテクスチャー。余韻はアールグレイ・ティー。飲んだ感じ、穀物比率で言うと51〜95%のちょうど中間、65〜75%ぐらいのライ麦率かなという印象。ロマンが含まれてる分レーティングは甘めかも。
Rating:89/100

追記:その後、新しく情報を入手したので追記しておきます。US特許商標局によるとファイティングコックは少なくとも1954年以来継続しているブランドとのこと。この年にファイティングコックが創造されたのだとしたら、本文に取り上げたEsbecoがオリジナルである可能性は大いにありそうです。また、1975年5月の段階ではファイティングコック・ブランドはJ.T.S. Brown & Sonsが所有していたなんていうちょっと「?」な情報も見かけました。もしそうなると、おそらくファイティングコックはJTSブラウンと一緒にヘヴンヒルに購入されたのではないでしょうか。更に73年ボトリングとされるファイティングコック7年スタンフォード産の物もネットで発見しました。こうなると70年代にブランドが転々としていた歴史が見えて来ますね。

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(ri)1  92 Proof
記号のような表記の名前は「ライワン」と発音します。2008年10月にビームグローバルから発売されたという情報を目にしました。熟成年数の異なるいくつかの原酒のブレンドで、最低でも4年半の熟成とされ、原酒構成はおそらく4.5〜6年程度ではないかと思われます。新世代のバーテンダーやミクソロジスト向けの製品企図があるようですが、ストレートで飲んでも美味しかったです。ジムビームらしいバーボン寄りのライウィスキーで、フルーティーなバーボンみたいな感じです。軽やかな口当たりに、ややスパイシーなトーンを維持しつつ甘味もあり、強いて言うと赤リンゴのフルーツ感を感じました。ジムビームライと較べると度数が高いので当たり前ですが味わいと余韻は強いです。ノブクリークライと較べるとスモーキーさやダスティなフィーリングに欠けていると言えます。
現在では終売になっているものの、プリプロヒビション・スタイルと銘打たれリニューアル(2015)したジムビーム・ライのアメリカ仕様?は90プルーフのようなので、そちらで代用する感じでしょうか。ましてやノブクリーク・ライもあっては終売も仕方なしかと。ちなみに上記のプリプロヒビション・スタイルは日本にも90プルーフの物が並行輸入で入って来てます。日本正規品とはボトル形状とラベルが少し違うやつを酒屋で見かけました。私は試していませんが、500円程度の違いでアルコール度数が5度も上がるのはお買い得な気がします。
Rating:84/100

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KNOB CREEK RYE 100 Proof
ジムビームのスモールバッチコレクションの一つノブクリークのライウィスキーです。2012年から発売されました。熟成年数の表記はなく「patiently aged(辛抱強く熟成された)」と書かれ、ネットで調べてみると、おそらく4~5年ではないかと言ってる人もいれば、5~9年のブレンドと言ってる人もいました。私の飲んでみた感想としては4~5年よりはもう少し熟成感があるようにも感じましたが、こればかりはビームから公表されていないので正確なところは判りません。
マッシュビルに関しても公にはされてないと思うのですが、上の「5~9年」と同じ情報源によるとライ麦55%・トウモロコシ35%・大麦麦芽10%だとビームアンバサダーが語っていたそうです。本当かどうか判りませんが、なんとなくジムビームのライウィスキーは51~59%のライ麦率かなという予測はありますので、現実的な数値ではありますね。皆さんはどう思うでしょうか?   では、テイスティングに行きます。

アロマは土埃っぽいややアーシーな香り。アップルパイのシナモンがけ。カスタードプリン。口当たりは比較的軽やか。ごくりと飲み込むとナツメグとホワイトペッパーが一気に喉から口蓋に広がって、さーっと引き上がった後にはミントの気配が感じられます。余韻はショート~ミディアム。焦げたオーク香がスモーキーさを忍ばせて終了。個人的にはノブクリークバーボンより好きです。
Rating:86/100

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