バーボン、ストレート、ノーチェイサー

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カテゴリ:ケンタッキーバーボン > ディアジオ

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過去投稿のブレット80プルーフのレビューでブランド紹介はしていたのですが、その後明らかになった部分もあるので、ここで再度書き直したいと思います。

長年法律に携わって来たトーマス・E・ブレットJr.ことトム・ブレットは、1987年にブレット・ディスティリング・カンパニーを立ち上げ、夢の実現へと踏み出しました。それはトムの曾々祖父にあたり、ルイヴィルのタヴァーン店主だったというオーガスタス・ブレットが1830年から1860年の間に造っていたウィスキーの復活です。オーガスタスはフラットボートに樽を一杯に載せ、ケンタッキーからオハイオ川を下りニューオリンズへと売却に向かう輸送中に行方不明となりました。そのレシピはライが3分の2とコーンが3分の1のライウィスキーだったと伝えられています。トムは現代のブレットバーボンを市場の殆どのバーボンより高いライ麦率にすることによってオリジナルのマッシュビルに敬意を表しました。

ブレットバーボンが初めて世に出たのは1995年です。初期のブレットは現在の物とは全く異なるデザインで、マーケティングに家族の歴史を殊更持ち出さなかったし、フロンティア・ウィスキーとも名乗っていませんでした。代わりにケンタッキーの特産であるサラブレッドを全面に押し出していました。
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この初期ブレットはエルマー・T・リーやウェラー・センテニアルと同じスクワットボトルに入っており、90プルーフと100プルーフ「サラブレッド」のヴァリエーションがあったようです(90プルーフの方は上掲の画像からサラブレッドの絵と文字を抜いた同一デザイン)。NDPとしてスタートしているブレット・ディスティリング・カンパニーは蒸留所を持たないので、当時エンシェントエイジ蒸留所またはジョージ・T・スタッグ蒸留所とも知られていた現バッファロートレース蒸留所(DSP-KY-113)との契約蒸留で製品を生産しました(*)。多分、熟成もフランクフォートの倉庫で間違いないでしょう。私の持っている97年発行のバーボン本ではブレット・サラブレッドの紹介文にこう書かれています。
「委託蒸留した優良原酒を独自の技法で熟成、瓶詰めしているが、その熟成法が独特。通常の半分の期間での熟成を可能にした画期的な方法で~」
云々と。これはおそらく当時トムが4〜6年程度の熟成で10年熟成の味を作る新しいテクニックだとマーケティング上語ったところから来ているのだと思います。実際にはかなり古くからあるテクニックで、寒い冬の間に倉庫を加熱することを意味しました。確かバッファロートレースにはそういう装置が付いた倉庫があったと思います。あと1999年までエンシェントエイジ蒸留所で生産されたという説も見かけました。

転機は比較的早く、1997年に訪れます。当時世界に冠たるシーグラムとのパトナーシップです。おそらくスマートなビジネスマンであったトムはブレットの国際化を望んだでしょうし、シーグラムもまた競争力のあるバーボンブランドを望んだ思惑の一致ではないかと思います。しかしどうやら初めシーグラムの幹部は「Bulleit(Bullet=弾丸と同じ発音)」という名前は好きだったが、古くさいパッケージングは気に入らなかったようです。そこでシーグラムはブランドを購入する前に解決策として新たなブランディングを求め、トムに有名な広告代理店DDB(ドイル・デーン・バーンバック)を辞めたばかりのボブ・マッコールとジャック・マリウッチを組ませました。これは当時の社長エドガー・ブロンフマンJr.の長年に渡る友人であり、広告とメディアのエグゼクティブであり、シーグラムのアドヴァイザーでもあるジョン・バーンバック(多分DDB創業者の1人ウィリアム・バーンバックの息子さん)からの流れではないかと推測します。ともかくボブとジャックの二人は製品コンセプトのアイデアを上手く手助けしてくれたようです。トムは8冊のバーボン図書をボブに送ると、それを読んだ彼はフロンティア・ウィスキーのコンセプトを思いつき、トムの家族の歴史に結びつけました。これは単なるバーボンではない、フロンティア・ウィスキーである、と。現在は見られませんが、強力なスローガンもあったようです。「まだ男が男で、ウィスキーがバーボンだった時代(意訳)」。実にキャッチーでカッコいいコピーですね。こうした新しい製品コンセプトはシーグラムの幹部も気に入り、エドガー・ジュニアの最終的なOKをもらいます。そして新しいブレットのパッケージはオレゴン州ポートランドのサンドストロム・パートナーズによって開発されました。現在我々が知る姿の、アンティークな薬瓶のようなボトル形状、エンボス加工された全面の文字、少し傾いたラベル等、新しいコンセプトを完璧に捉えた卓抜なデザインです。こうして新生ブレットは1999年から米国市場へ導入され、肝心の中身のジュースも、おそらくエンシェントエイジ・バレルが枯渇した後、シーグラム傘下のフォアローゼズ蒸留所産のものに切り替えられました。

2000年になると、また一つの転機が訪れます。90年代にエンターテイメント事業への傾斜を強めていたシーグラムはMCAやポリグラムを買収しますが、巨額の買収費用に対して映画部門でのヒットに恵まれず収益が上がらなかったため、一転して身売り交渉に入り、メディア事業の拡大を進めていたフランスの企業ヴィヴェンディとの合併に合意。合併後、酒類部門の資産はイギリスのディアジオとフランスのペルノ・リカールに分割して売却され、企業としてのシーグラムは終わりを迎えます。ブレット・ブランドはディアジオの元へ行きました。ディアジオはフォアローゼズとの契約をブレットのソースとして残します。
2000年以降、徐々に販売数を増やしていったブレットは今日トップブランドの地位を確立しています。アメリカ全土のバーテンダーやミクソロジストからの人気が高く、特にカリフォルニア州で絶大な人気を誇るとか。また順次世界へも販路を拡げて行きました。ブレットの目覚しい業績は、シーグラム時代のブランドのリニューアル、世界最大規模の酒類企業ディアジオの販売戦略の巧みさ、折からのバーボンブーム、またトム・ブレット本人の知的な努力と人柄の賜物でもあったでしょうが、フォアローゼズの供給するハイ・クオリティな原酒も間違いなくその要因の一つだと思います。
フォアローゼズ蒸留所は2013年までブレットの唯一の供給源だったと考えられていますが、現在の供給元が何処であるかは公開されていません。熟成年数を考慮すると(スタンダードのブレットで約6年)、現在流通しているボトルはまだ殆どがフォアローゼズ蒸留所産だとは思います。ディアジオは長年ブラウン=フォーマンと蒸留契約を結んでいるとも言われ、更にジムビームやバートンもバーボンをディアジョに提供していると噂されています。ブレット側によれば、蒸留パートナーを具体的に明かすことは出来ないが、従来のハイ・ライ・マッシュビルの高品質バーボンを提供するというコミットメントは保証するそうです(**)。

日本に住んでいるとブレットの存在感は、ジムビーム、ワイルドターキー、フォアローゼズ、メーカーズマーク、I.W.ハーパー、アーリータイムズ等のブランドの遥か後塵を拝してるように感じてしまいますが、世界ではそれらトップ・ブランドに肩を並べる成長率を見せています。それ故にでしょう、ディアジオのブレット・ブランドに対する信頼は絶大です。それは2014年にディアジオが所有していたスティツェル=ウェラー蒸留所(オールドフィッツジェラルド蒸留所)の一部を改装してブレット・エクスペリエンスというビジター・センターにしたことによく現れています。エヴァンウィリアムスのビジター・センターもそうなのですが、これは謂わばバーボンファン版のディズニーランド。昔から蒸留所を巡るツアーは観光ビジネスとしてありましたが、バーボンの人気がアメリカで爆発的再興をする流れの中で、各蒸留所またはその親会社は今まで以上にそこに資金を投入する価値を見出だしています。そして2017年3月には、ルイヴィルから約30マイル西にあるシェルビーヴィルに1億1500万ドルで新しいブレット蒸留所がディアジオによって建設されました。年間180万プルーフガロンを生産可能な施設だそうで、今後のブレットの生産拠点となって行くのでしょう。

さて、ブレットにはスタンダードのオレンジラベル以外にいくつか種類があります。2011年からリリースされているライウィスキーはグリーンラベル。2016年にリリースのバレル・ストレングスはブラックラベル。そして今回レビューするブレット10年がクリーム色のラベルとなっています。
10年クリームラベルは2013年からブランド展開された数量限定の製品です。マッシュビルはスタンダードなオレンジラベルと同じコーン68%/ライ28%/モルテッドバーリー4%。10年は最も若い原酒の年数であり、11年と12年原酒もブレンドされているとの情報もありました。ラベルにローレンスバーグの記載がありますので、原酒はフォアローゼズ蒸留所産で間違いないと思います。

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BULLEIT BOURBON Aged 10 Years 45.6% alc/vol
2017年ボトリング。熟したプラム、香ばしい樽香、接着剤、タバコ、ライスパイス、ブラウンシュガー、葡萄、蜂蜜、藁半紙、パクチー。やや溶剤臭をともなった焦樽フルーツ系アロマ。口当たりはさっぱりウォータリー。口中では赤い果実感もほんの少し感じれる。余韻は苦味のあるフルーツとスパイス。些かウッディ過ぎる嫌いはあるものの、熟成感とクリアネスが同居する味わいは悪くない(フィルタリングの成果か?)。開封直後は苦味と渋味が目立ち好みのバランスではなかったが、2週間位すると甘味も感じやすくなりバランスが整った。旨味よりはフルーティな香味で攻めるキャラクター。
Rating:86.5/100

Value:スタンダードなオレンジラベルより熟成年数が増えることによって、味わいもそのまま大人になったような印象です。具体的に言うと、フレッシュフルーツだったものが完熟フルーツになり、更に接着剤の香りがつき、苦味と渋味が増したことで味に一本芯が通る感じ。ここら辺をどう評価するかで、買う価値があるかが決まります。ブレット10年は、アメリカ本国ではスタンダードの倍の値札が付き、日本でも概ね2~3倍の値段になります。率直に言うと、私だったらスタンダードの方を購入するか、フォアローゼズのスモールバッチを最安値で買う選択をします。けっして不味い訳ではなく美味しいのですが、個人的嗜好と経済性からの意見です。


*この頃は樽買いだった可能性もありますが、真相がわからないので、とりあえず契約蒸留だったという体で書き進めています。

**どうやらジムビーム産である可能性が高いようです。その場合、味はOGDに近いかも知れませんね。

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BULLEIT BOURBON FRONTIER WHISKEY 80 Proof
今や世界的人気のブランドとなっているブレットバーボン。その大元のルーツは伝説によれば、1830年からオーガスタス・ブレットが造っていた、3分の2がライで3分の1がコーンのウイスキーだと言います。そのウイスキーは1860年にオーガスタスの死亡とともに生産を終了したとか。それを曾々孫のトム・ブレットが1987年に会社を設立して復活させたのが現ブレットの直接的なルーツです。その時に、ライ麦が3分の2ではバーボンにならないため、出来るだけオリジナルのレシピに近づけようと、ハイ・ライ・マッシュビルのバーボンにしたそうです。日本に紹介され初めの頃は現在のボトルデザインとは全く違う物で、フロンティアウイスキーと称してもなく、ケンタッキーらしい「サラブレッド」の絵と呼称が目立つラベルデザインでした。
ブレット・ディスティリング社はそもそもNDP(非蒸留業者)としてスタートしています。そのため原酒の供給元の変化を把握しにくいのですが、上に述べたサラブレッドラベルの物をフランクフォートで蒸留されているとしている情報を目にしました。
また、現在のように人気の出る以前については、どうも情報が少なく分かり辛いのですが、ブレットブランドは97年にシーグラムに買収され、99年にアメリカ市場に導入・紹介されたという記事を見つけました。この「アメリカに導入」というのは、おそらくアメリカ国内で一般流通されるようになった、というほどの意味でしょう。と言うのも、日本で97年に出版されたバーボンの本によると、ブレット・サラブレッドは「牧場主のプライヴェートバーボンとして親しまれ、アメリカでもなかなか手に入りにく」く「海外では、日本とフランスのコンコルドホテルでしか味わえない」と書かれているのです。これが本当なら、ブレットはブランド誕生当時は海外向け(輸出用)製品だったということになります。そして、2000年になるとシーグラムの酒類部門はディアジオとペルノ・リカールに買収され、この時ブレットブランドは現オーナーのディアジオの元へ移行しました。現在のボトルデザインになったのが何時なのか、明確には分かりません。ここら辺の事情に詳しい方はコメントより教えて下さい(追記あり)。

さて、現在のブレット人気はディアジオによるマーケティングの巧みさが一因ではあるでしょうが、なによりも酒の味自体が美味しいからだと思います。開拓時代を思わせるボトルデザインからは想像もつかないほど、荒々しさとは無縁の、むしろ繊細でフルーティーな味わい。それもそのはず、今後は供給元の変更や自社蒸留の開始などでどうなるか判りませんが、このボトルのジュースはフォアローゼス蒸留所産です。マッシュビルはコーン68%/ライ28%/モルテッドバーリー4%で、熟成年数の表記はないものの6年とされています。エイジングもボトルの表記に従えばフォアローゼスの平屋の熟成庫で間違いないでしょう。このフォアローゼス蒸留所産がいつから始まりいつ終わったのか、これが定かではないのですが、現在では契約蒸留の期間は終わっていると聞いています。
最近の日本では90プルーフの物が流通しているようですが、本ボトルは80プルーフです。並行輸入なので、輸出国によってプルーフに違いがあるのでしょう(*)。80プルーフのせいもあると思いますが、日本ではお馴染みのフォアローゼスブラックとかなり近い味わいでした。キャラメルよりは蜂蜜の風味であり、フラワー感のある華やかな香り、フルーツで言えばプラム、スパイシーではあっても甘味は強くエグみもない。とにかく出来がいいです。
Rating:85/100

追記:ここら辺の事情について新しい情報を得たので、ブレットのブランド紹介を書き直しました。こちらをご参照下さい。


*2008年から英国市場で販売されているブレットバーボンが40%ABVでボトリングされているそうです。2014年後半には英国市場にも45%ABVバージョンが導入されたとか。

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