バーボン、ストレート、ノーチェイサー

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タグ:カスクストレングス

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メーカーズマーク・プライヴェートセレクトは、メーカーズマーク・カスクストレングスのヴァリエーションとも、メーカーズ46のアップグレード・カスタム・ヴァージョンとも言える製品です。現在、アメリカの多くの蒸留所ではプライヴェート・バレル・プログラムが実施され人気を博していますが、それらはストア・ピックやバレル・ピックとも呼ばれ、酒類販売店、バーやレストラン、或いはバーボン・ソサエティ等が蒸留所の公式リリースとは違った独自の味わいのシングルバレルを顧客に販売することを可能にします。様々な味比べが出来るこの種の試みはバーボン人気を後押しするものと言えるでしょう。メーカーズのプライヴェートセレクトもそういった試みの一つ。しかしメーカーズはシングルバレル・プログラムに関しては他の蒸留所に遅れをとっていました。なぜならメーカーズマークでは熟成中に樽のローテーションを行うため、他の蒸留所のようには熟成庫のロケーションによる味の違いが明確ではないので、単純にシングルバレルを提供するだけではちょっと面白味に欠けるから。そこでメーカーズ46で培った技法を採り入れてバイヤーへ提供することになったのがプライヴェートセレクトです(※メーカーズ46についてはこちらの過去投稿をご参照下さい)。2016年に発表されるや瞬く間に人気となり、多くの小売店が独自のボトルを販売しています。

プライヴェートセレクトのプログラムは、ビル・サミュエルズJrの息子であるロブ・サミュエルズとディレクターであるジェイン・ボウイによって実現されました。先ずはテイスティング・チームを組織すると、メーカーズマーク・カスクストレングスのフレイヴァーをマッピングし、どのフレイヴァーを強調したいのかを決め、それからインディペンデント・ステイヴ・カンパニーに行き、46のようにメーカーズマークに存在する異なったキー・フレイヴァーを増幅するステイヴ作成の協力を仰ぎました。メーカーズマーク蒸留所はメーカーズ46の開発に費やした2年間で自社製品をコントロールする方法についてはかなりの量の知識を得ています。おそらく46での経験を活かし比較的短時間で完成に漕ぎ着けたでしょう。ボウイによると、もともとは8種類の風味増強ステイヴを用意していたそうですが、フレイヴァー・プロファイルの冗長性を最小限に抑えるために、最終的にそれらを五つに戻しました。これらのステイヴは既存のフレイヴァーを増幅すると同時に新しい何かを追加することになっています。プライヴェートセレクト・バレルの購入者は、メーカーズ46に使われているものを含む5種類のステイヴを自由に10枚選択して、1,001の可能な組み合わせの中から好みのフレイヴァー・プロファイルを作成、独自に大胆な味へとカスタマイズすることが出来ます。しかし、それでもその味わいは紛れもなくメーカーズマークに他ならないのでした。

プライヴェートセレクト・バレルを購入するバイヤーは、メーカーズ46の話が説明された後、オークについて、そしてフレイヴァーが木材のどこにあるのかについてレクチャーを受けます。ステイヴに施された加熱の時間や温度に基づいて、どのフレイヴァーを放出するかの概要が示され、オークの生理学的な細胞構造と熱が加えられるとどのような化学変化が起こるのか学ぶのだそう。それが終了したらテイスティングの時間です。
参加者の目前には、ベースラインとして味わうためのスタンダードなメーカーズマーク・カスクストレングスと共に、それぞれ異なるステイヴで仕上げられた五つのサンプルが置かれます。最終製品もバレルプルーフになるので、サンプルも全てバレルプルーフです。グラスの横には「Maker's Mark Private Select」というレクチャーを纏めたような小冊子もあり、有益な情報が後からでも確認出来るのでしょう。このバレルプログラムのために特別に開発された五つのステイヴは互いに非常に異なる香りと味がするとされ、その特徴は以下のようになっています。

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P2(Baked American Pure 2の略)
ベイクド・アメリカン・ピュア2は、五つのうち唯一アメリカン・オークで造られたクラシック・カットのステイヴ。ゆっくり時間をかけて低温にてコンヴェクション・オーヴンで焼かれています。このトリートメントは甘いブラウンシュガー、ヴァニラ、キャラメルなどの甘いノートを引き出すとされ、またシナモンやクローヴなどのスパイスの風味も高め、フィニッシュにドライなオークが現れるとも言います。

Cu(Seared French Cuvéeの略)
シアード・フレンチ・キュヴェは46と同じく赤外線オーヴンで焼かれたフレンチ・オークですが、カットが異なり、ステイヴには溝が切り込まれているためクラシック・カットより22%大きい表面積を持っています。それはジュースと木材の相互作用がより多いことを意味するでしょう。また、溝があるということは、上部(表面)と下部(谷間)では同じ量の熱変換を受けないため、焦がし具合の違いから風味のブレンドが期待されています。この特別なトリートメントはバタースコッチやキャラメル、ローストナッツやバター、若干の渋みを引き出すとされます。

46(Maker's 46の略)
メーカーズ46はもはやお馴染みとなった同ブランドの製造に使用されるステイヴです。Cuと同じく赤外線オーヴンで調理されますが、こちらは更に数分間長く加熱され、溝はありません。これらの違いがCuと46の味を全く異なるものにします。Cuはスイートなのに対し46はスパイシーさを追加するよう設計されました。このトリートメントはクリーミーな感触はなく、ヴァニラやスパイス、強いオーク、ドライフルーツ、若干の苦味を引き出すとされます。

Mo(Roasted French Mochaの略)
ローステッド・フレンチ・モカは、クラシック・カットのフレンチ・オークです。P2と同じくコンヴェクション・オーヴンで調理されますが、P2のような低い温度ではなく高い温度にてトーストされます。通常、華氏500度を超える高温に曝され、クーパーの観点からすると、これはオークが燃え始める前に処理できる最高温度なのだとか。
このトリートメントはダーク・チョコレート、焙煎されたコーヒー、メープル・シロップ、重いチャー・フレイヴァーを高めるとされます。また、通常のカスクストレングスと比較してドライになるが、非常に長いフィニッシュを有し、切れ上がりの味は甘いと言います。

Sp(Toasted French Spiceの略)
トーステッド・フレンチ・スパイスは、コンヴェクション・オーブンで高温と低温の両方で調理された(*)フレンチ・オークのクラシック・カット・ステイヴ。このトリートメントは、スモーク、シナモンやナツメグ、クマリンの風味を高め、味わいはフルーティかつスパイシーで少々渋いとされます。

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バイヤーはこれら五つのサンプルを慎重に試飲して、独自のカスタム・ブレンドを作成するよう奨励されます。例えば、チョコレートの風味が目立つメーカーズを欲するならMoを多く使用するとか、焦樽感がもっと欲しくスパイシーにしたいならSpを多くを使うとか、或いはバランスよく全てのステイヴを使うのも自由自在。とは言え、ヘンテコな物が出来上がらないように?脇には担当者の方がいて、味の方向性が決まれば適切なアドヴァイスをくれるようです。
視覚的に分かり易いようにテーブルにはステイヴの記号が描かれたチップも置かれており、それを並べてどのステイヴが何枚と決めて行きます。チップは一枚につき10mlを表し、選び抜いた十枚で100mlのカスタム・ブレンドのサンプルを造ってもらいます。こうすることで最終的なプライヴェートセレクトの仕上がりと想定されるものを試すことが出来るのでした。ロブ・サミュエルズによれば「皆さんは、最終製品が実験環境で行ったのと同じような味がするかどうかを尋ねますが、それはほぼ正確」で「マウスフィールは少し異なることがあっても、風味の特性は全く同じ」だと言います。
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ステイヴの組み合わせが決まったら、次はメーカーズマークの原酒をステイヴの挿入された樽へと満たす工程です。追加される10枚のステイヴは、バーボンと接触する木材の表面積を約33%増加させるとされ、実験を通じて最適な数として決定されました。典型的なバーボン樽は概ね32のステイヴで構成されていますが、プライヴェートセレクトの追加ステイヴはバレル・ステイヴよりは短くとも両面がトーストされているため、ジムビームの「ダブルオーク(トゥワイス・バレルド)」やウッドフォード・リザーヴの「ダブル・オークド」のような新樽で二度熟成させる製品と同じ位の効果があるのかも知れません。約6年ほど熟成した原酒でいっぱいに満たされた樽は、メーカーズ46の需要増への対応とプライヴェートセレクトのバレルを熟成させるために特別に設計されたライムストーン・セラーで、およそ9週間ほど眠りにつきます。そして熟成が終わると、通常のカスクストレングスと同じように、主にバレルのチャー残渣を除去する軽い濾過を経てボトリングされ完成です。言うまでもなく、カスクストレングスでのボトリングなので樽ごとに違いが出ますが、概ね55%前後のABVになります。各バレルは750mlのボトルをおよそ240本ほど産出し、同社は一本あたり約70ドルでの小売価格を提案。プライヴェートセレクト・バレルの費用は約13000ドルだとか。

蒸留所では自らのプライヴェートセレクトのボトリングもしています。代表的なそれは「Bill Samuels Jr.」と呼ばれ、メーカーズ46を産み出した当の本人でありメーカーズマークの前社長にちなんで名付けられました。故にそのシグネチャー・フレイヴァーを増幅するためステイヴのセレクトは46を10枚使用しています。つまりメーカーズ46のカスクストレングス・ヴァージョンという訳です。
また、メーカーズのウッド・フィニッシュ・シリーズはプライヴェートセレクト・プログラムだけに留まりません。2018年には「Maker's Seared Bu 1-3」というより実験的な「第二世代」のステイヴを使った製品が蒸留所限定で販売されました。これは375mlボトルで約40ドル、僅か1400本だけの提供です。そのステイヴは「virgin seared & Sous-Vide French oak」だと言います。「Sous-Vide(スゥヴィド)」はフランス語で「真空」の意。近年、料理の世界で真空調理法というのが注目されているようですが、木材を真空調理?って一体どんなことをしているのか、私には想像も付きません。実験の結果、このステイヴは美味しいバーボンを産み出したものの、プライヴェートセレクト・プログラムの他のステイヴを完全には補完しないため、蒸留所はこれを生産するプランはないけれど、メーカーズのDNAから生まれた愛するウィスキーを共有したいと考えて販売したそうです。
2019年9月からは、メーカーズマーク初となるアメリカ国内で全国配給される限定リリースのウッド・フィニッシング・シリーズが発売され始めました。第一段は「ステイヴ・プロファイル RC6」となっています。RCは「Research Center」の略で、そこの6番目のステイヴという意味です。リサーチ・センターというのは、メーカーズと共同して木材の実験を執り行うインディペンデント・ステイヴ・カンパニーの研究機関?か何かだと思います。RC6は屋外で一年半ほど乾燥させたアメリカン・オークをコンヴェクション・オーヴンでトーストしたステイヴで、主にスタンダードなメーカーズマークに存在するフルーツを引き立て、ベーキングスパイスやクラシックな甘さを向上させ、ブライトなフィニッシュになるそうな。正確なカウントではないらしいですが、だいたい255樽のスモール・クオンティティでの生産だそうです。おそらくこのシリーズは今後も、ワイルドターキーのマスターズキープのように年次リリースされて行くのでしょう。小売価格は約60ドルです。
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では、そろそろ今回レヴューするプライヴェートセレクトの出番です。こちらは「うきうきワインの玉手箱」という酒販店のセレクト。「玉手箱」という響きが気に入って買ってみました。スパイシーさを強調したセレクトになっているようです。

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Maker's Mark Private Select Stave Selection by Tamatebako 111.3 Proof
46 × 2
Mo × 4
Sp × 4
香ばしい焦げ樽、オールスパイス、タバコ、ドライクランベリー、レーズン、焦がし砂糖→プリンのカラメルソースの濃ゆいやつ、コーヒー、タバコ。焦樽の香りに僅かに酸っぱい香りが混じる。ややオイリーなマウスフィール、もしくはミルキー。パレートはメーカーズらしい酸味が感じられる。飲み込んだあとのスパイシーさはかなり強め。余韻には昆布も。テイスティング・グラスよりショット・グラスで飲むほうが美味しかった。
Rating:86.25/100

Thought:通常の46やカスクストレングスと較べて、よりねっとりとした舌触りであり、フレイヴァーが濃密な印象で、取り立ててオーヴァーオークな感じもせず、香ばしさが引き立てられていると思いました。パレートで感じる香味は確実に複雑ですが、反面、全体的にドライな傾向も強いのが個人的にはマイナス。口蓋で感じる強いスパイシーさや、余韻の苦味が退けた後にほんのり甘さが現れるあたりが、「大人な」メーカーズマークを目指したであろう本品の良さと言えます。ただ、もう少し分かりやすい甘味が余韻にあるほうが自分には好みなので、この評価でした。

Value:プライヴェートセレクトと言うか、ウッド・フィニッシュ・シリーズは、メーカーズ原酒の持つフレイヴァーをアンプリファイドした製品なので、例えば通常のカスクストレングスが6500円、プライヴートセレクトが7500円とすると、1000円が増幅代(手間賃)な訳です。ここに価値を見出だすかどうかが評価の分かれ道だと思います。もっと言うと、実際に飲んでみるまで通常のカスクストレングスより美味しいのか美味しくないのかが判らないギャンブル要素があるのに、少しだけ高い値段となるのがポイントなのです。1000円のギャンブルを安いと思うか高いと思うかはその人次第。結局のところ自分で飲むしか購入価値の判断が出来ないことがプライヴェートセレクトの欠点でもあり面白味でもあるでしょう。とは言え、概ね美味しくはなっていると思いますし、また幾つかのプライヴェートセレクトを飲んでみてステイヴ・セレクションが自分の好みに合ったリカー・ストアを見つけてしまえば、1000~1500円程度でのアップグレードは安いと言わざるを得ない「大きな価値」になります。


*一部の情報では、このステイヴのみ二つのトリートメントを組み合わせており、最初に高温の赤外線オーヴンで焼き、そして次にコンヴェクション・オーヴンへ移して低い温度で調理される、と説明されていました。真偽が判らなかったので、ここではメーカーズの公式ホームページでの説明がコンヴェクション・オーヴンの高温と低温とされていたため、そちらの説を採用しています。

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Maker's Mark CASK STRENGTH 111.4 Proof
BATCH NO. 15-03
メーカーズマークのカスクストレングスは2014年秋から蒸留所のみで375ml瓶が販売され、2015年春から販路を拡大していった製品です。カスクストレングスというのは、バーボン用語でより一般的なバレルプルーフと同じで、加水調整せず樽から出したままのアルコール強度という意味です。そのためバッチ毎にだいたい54〜57度の違いが出ます。バレルプルーフでありながら55度前後の低いアルコール度数なのは、他の多くの蒸留所のバレル・エントリー・プルーフ(樽入れ時の度数)が125なのに対し、メーカーズマークは110というかなり低めのエントリープルーフのため。それと、バッチごとに度数が違うからといっても、この製品はシングルバレルではなく、19樽のスモールバッチと言われています。またレシピ(70%コーン、16%ウィート、14%バーリー)と熟成年数(約6年)もスタンダードなメーカーズと同じだそうです。では、レヴューいきましょう。

キャラメル、焦がした木、ヨーグルト、干し柿、バナナ、あんずジャム。パレートはスパイスとチェリー、渋柿。余韻はややバタリー。当然ながらスタンダードなメーカーズと較べると全てが強く美味しい。強力な甘味よりもしっとりとした甘味に、酸味と苦味がバランスよく合わさる。きっとメーカーズマークがもつ本質が味わいやすいと思うが、反面、人によっては度数が高いぶん辛口にも感じるかも知れない。一、二滴の水を加えるとアルコールが弱まって甘味を感じやすくなる。正直言うと、開けたては美味しくなく、バレルプルーフでなくてもいいかなという印象をもった。なんなら45〜50度のほうがバランスがいいのでは?と思ったほどだったが、半分ほどに減ってからは、やや酸味が強くなったものの柿系のフルーティーさが増して美味しくなった。
Rating:87/100


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【C】

Cask─カスク
樽のこと。キャスクと表記したほうが発音記号に近い。バーボンにはバレルが用いられることが殆ど。希にクォーターカスクというバレルの4分の1容量の小さい樽が製品意図として用いられることも。

Cask Strength─カスクストレングス
バーボン用語ではバレルプルーフ、もしくはバレルストレングスの方がより普及した言い方。メーカーズマークのバレルプルーフバーボンはカスクストレングスを名乗っている。意味は「Barrel Proof」の項を参照。

Cats and Dogs─キャッツアンドドッグス
成長の可能性が殆どなく、小口で低利益率の非プレミアムでマイナーなブランドを指す業界​​用語。

CEHT
「Colonel E. H. Taylor」の略。「EHT」の項を参照。

CGF
「Cheesy Gold Foil」の略。日本においてワイルドターキー12年ゴールドラベルと言われる物を欧米ではこう呼ぶ。WT12年の中でも人気があり、セカンダリーマーケットで価格が高騰している。チーズィーとは「安っぽい、陳腐な」の意。
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Char(Charred, Charring)─チャー(チャード、チャーリング)
樽の内側を高温で焦がし炭化させること。
チャコール(Charcoal=木炭)の「チャ」に当たる。チャーの加減には時間によって4段階のレベルがあり、以下のようになる。
No.1:15秒
No.2:30秒
No.3:45秒
No.4:55秒
このうちNo.4のみ、焦がし終えた木の質感がワニの表皮を想わせることから、別名アリゲーターチャーと呼ばれる。バーボン業界でNo.1とNo.2が選ばれることは殆どない。焼き時間を調整してNo.3〜No.4の中間にすることも。また、実験的ながら最強レヴェルのNo.7もあるらしい。

Charcoal Filtered─チャコールフィルタード
活性炭濾過されているの意。バーボンのラベルにはこう明記されていることが多い。 そう記載されてなくても一般的なバーボンは殆どされていると思われる。テネシーウィスキーのチャコール・メローイングとは違い、熟成の後、ボトリングの前に行われる。

Charcoal Mellowing─チャコールメロウイング
テネシーウィスキーの特徴的な行程の一つで、樽熟成の前にスピリットをサトウカエデの木炭で濾過すること。不要な油脂分や雑味を取り除き、テクスチャーを滑らかにし、甘味などの何かしらの風味を加えると言われる。「リンカーン・カウンティ・プロセス」とも知られる。また単に「リーチング」とも言う。それらの項も参照。
テネシーウィスキーの代表格に挙げられるジャックダニエル蒸留所の場合、以下のような感じ。まずテネシー産のサトウカエデ(シュガーメープル)の丸太を2インチ×2インチに切断し、出来た角材を井桁に組んで積み上げ、約2〜3週間かけて乾燥させる。それに蒸留したての140プルーフの原酒を撒き、火の粉を防ぐため大型フードの下で点火。およそ二時間かけて焼き、完全燃焼を防ぐため水が噴霧される。次に出来上がった木炭を粉砕機に通して細かく砕き、底にウールを敷いた深さ10フィート(約3m)のヴァットに詰める。そこへパイプから一滴一滴ジャックダニエルズの原酒が垂らされ、濾過は数日かけて行われると言う(現在では一滴一滴ではなくシャワーという説もあった)。この後、125プルーフに希釈されエイジングプロセスを経てJDの完成。

Chaser─チェイサー
後を追うものの意で、一旦ストレートでウィスキーを飲んだ後から、追跡するように飲む水や炭酸水などのこと。ウィスキーよりアルコール度数が低ければチェイサーとして成立するため、ワインやビールをチェイサーにする強者も居るという。

Chill Filtration(Chill Filtering, Chill Filtered)─チルフィルトレーション(チルフィルタリング、チルフィルタード)
冷却濾過。ウィスキーの原材料や蒸留プロセス及び樽熟成期間に自然発生する香味成分の中には、脂肪酸・タンパク質・エステル等の低温になると析出してウイスキーを白濁させたり澱を発生させる成分が含まれている。それらの成分をボトリング前に予め-4℃~0℃に冷却しながら濾過して除去する操作のこと。ロックや加水して飲む際に見た目が濁ってしまったり、内容物に澱があると見た目が悪く、消費者に悪い印象を与えかねないというのが主な理由。
聞くところによるとその行程は、一旦冷却された原酒を一連のしっかりしたニットや金属メッシュまたは紙フィルターに圧力をかけて通過させるらしい。収集される残留物の量は、フィルターの数、使用される圧力、及び速度に依存するという。このプロセス中に沈殿物や樽からの不純物も除去される。
冷却濾過で失われる成分には、香りや風味の基となるものが含まれているとされ、自然で有機的な製品を求める消費者やウィスキーマニアはノンチルチィルタード(非冷却濾過)の商品を珍重する。一方で、全ての濾過が悪い訳ではなく、外観の明瞭さを増し、いくつかの不快な味を取り除き、他の味を輝かせるとの主張もあり、現実には同一条件下の原酒のチルフィルタードとノンチルフィルタードがリリースされないと比較するのは難しい。

Christmas Rye(Xmas Rye)─クリスマスライ
古いワイルドターキー・ライは赤と緑のラベルのため、クリスマスを連想させることからこう呼ばれる。
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Column Still─コラムスティル
連続式蒸留機のこと。「カラム」と表記されることも多い。英語の発音が「カ」と「コ」の中間の音だからだろう。コラムは円柱や列を意味する言葉で、その形状を指しての名称。蒸留塔とも。コンティニュアス・スティルの項を参照。

Condenser─コンデンサー
蒸溜工程で出来た蒸気を冷やして液体に戻す装置。冷却装置とか凝縮器と訳される。外観は太い円筒状の形が一般的で、中には冷水が流れる細長いパイプを大量に備えている。多くは銅製。

Congeners─コンジェナース
化学的専門的に使わない限り、一般的にはアルコール飲料に含まれるアルコールと水以外の諸成分、との意味で使われる。ラテン語の「共に」を意味する「con-」と 「血統」や「種族」を意味する「genus, gener-」に由来するため、日本語では(あまり馴染んではいないが)同族体と訳される。発酵・蒸留・および熟成中に生ずる化学物質で、何百種類とあるうちの一部は毒性を持つか酷い味がする一方、スピリッツの香りを左右する芳香成分でもある。
低いプルーフで蒸留されたスピリッツは、コンジェナースをより多く保存するとされ、逆に高いプルーフで蒸留された場合はマッシュのコンジェナースを殆ど取り除き、純粋なエタノールに非常に近い製品を作り出す(ニュートラル・スピリッツやウォッカ)。バーボンは最高のコンジェナース含有量を有​​するウィスキーであり、シングルモルトスコッチが後に続き、カナディアンやスコッチのグレインウィスキーは同族体の含有量が少ない傾向があるとされる。エステル(Ester)、アシッド(Acids)、サルファー(Sulphur) 、アルデヒド(Aldehydes)、ジアセチル(Diacetyl)、高級アルコールおよびフューゼル油(High alcohols and fusel oils)等。

Continuous Still─コンティニュアススティル
連続式蒸留機と訳される。従来のどこか牧歌的なイメージのする古典的な単式ポットスティルと違い、工業的なイメージの漂う蒸留装置。蒸留の行程を連続的に行えることからの、つまり機能面からの名称。パテントスティル、コフィスティル、コラムスティル、ビアスティルとも言われ、厳密には違うのかも知れないが大概同じ物を指していることが多い。バーボン業界ではビアスティルかコラムスティルの名称が頻繁に使われている。スコットランド人のロバート・スタインが開発し、アイルランド人のイーニアス・コフィーが完成させたと言う。パワフルな連続的蒸留により、調整次第で、ほぼ純粋なエタノールである190プルーフ以上のスピリットを産出できるが、バーボンではフレイヴァーを残すため160プルーフ以下で蒸留しなければならないし、多くの蒸留所ではよりフレイヴァーを残すため更に低いプルーフで蒸留する。

Cooker─クッカー
粉砕した穀物と水を混ぜてマッシュを造り、糖化作業をするための金属製の大きな桶・鍋。グレインクッカー、またマッシュタブとも言う。日本語では糖化槽。内部には加熱用のスチームパイプと冷却用のクーリングパイプがあり、加熱と冷却が出来るようになっている。
ミルで別々に挽かれた穀物は、クッカーにコーン、ライ、モルテッドバーリーの順に分けて入れる。各穀物を投入する際の温度は異なり、一例を挙げるとコーン…220°F(114°C)・ライ…170°F(77°C)・モルテッドバーリー…150°F(66°C)のような感じ。過圧の具合や温度で前後するが、通常約30分程度かかる。この工程にバックセットを入れ、pHを安定させるのがサワーマッシュ製法。調理が終わると発酵槽へ移されるが、その前にマッシュは冷まされる。

Cooper(Cooperage)─クーパー(クーパレッジ)
樽を造ったり、樽を修理したりする職人。クーパレッジは樽を製造する施設、またはその仕事。

Copper─カッパー
銅。蒸留装置のどこかしらに銅が使われる理由は、蒸溜されたスピリッツと反応して硫黄化合物を銅が吸収し、硫黄臭やゴム臭、腐った野菜のような不快臭を取り除くためだと言う。

Corn─コーン
トウモロコシ。バーボンでは主に「イエロー・デント No.2」という品種が使われる。他の品種に比べて優れたフレーバーと多くのアルコールを産生するのだとか。コーンの殆どはケンタッキーやノースダコタから供給され、二次的にはサウスダコタやインディアナの物も使われていると言う。

Corn Patch and Cabin Rights Act─コーンパッチアンドキャビンライツアクト
ケンタッキーがまだバージニア州の一部だった頃、バージニア州議会は西部の土地を秩序立てようと1776年に「コーンパッチおよびキャビン権利法」と知られる法律を発行した。それは1778年1月1日以前にケンタッキー区域にキャビンを建て、トウモロコシを植えた場合、入植者は400エーカー(約160ヘクタール)の土地を請求することが出来るというもの。これが功を奏し、大量のトウモロコシが収穫されるようになると、酒造家たちはトウモロコシをベースとしたウィスキーのレシピを用いるようになり、後のケンタッキーバーボンの誕生を促したと言う。しかし、この法律はキャビンの大きさや構造、またはコーンパッチの大きさについて何も言及しなかった。そこで入植者は3〜4種のトウモロコシの種を植え、土地を受け取ることを期待して、数枚の木材で小さなキャビンを造った。このような手際の悪く機能しない法律のため、少数の蒸留一家の助けにはなったかも知れないが、バーボンに殆ど影響を与えなかった可能性が高いとも言われる。

Corn Whiskey─コーンウィスキー
コーンウィスキーは、少なくとも80%のコーンが含まれたマッシュから造られ、160プルーフを越えずに蒸留し、未成熟でもよいが、 樽に入れる場合は125プルーフ以下で入れ、なおかつ樽は古樽もしくはチャーされてない新しいオークの樽を使わねばならない。コーンリカー、ホワイトライトニングと呼ばれることもある。 

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「Cask Strength」の略。カスクストレングスを参照。

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