タグ:フロンティアウィスキー

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バーボンの空き瓶を手軽にオシャレなインテリアにするこの企画、すいませんが、今回はこれまでのプチプラ百均リメイクを離れまして、もう少しお金を掛けました。作り方も、前回までより手間が掛かります。

使用した瓶は若者からバーボン愛好家まで世界中で人気のブレットバーボンです。フロンティアウィスキーとも名乗っており、禁酒法以前の西部開拓時代でも思わせるようなボトルデザインが秀逸で、リメイクDIYにピッタリな素材かと。瓶自体に施されたエンボスの文字が雰囲気出るんですよね。

で、今回はDIY愛好家の定番バターミルクペイントを塗ってアンティーク感のある陶器の花瓶ぽく仕上げようと思いました。ところが、見事なまでに失敗…。バターミルクペイントをただ塗るだけだと面白くないと言うか、単調になるかと思ってクラック加工もやってみたのが失敗の原因です。DIYで塗装をやる人なら見ればわかると思いますが、まともにひび割れが起きてないし、ところどころダマになっちゃいました…。でも、まあ、素人の作業なんだしそれも味ということで公開しておきます。

当ブログはDIYブログではないので細かい技術や材料の特性については省略します。ググればすぐ見つかりますので、専門のサイトを参照下さいね。

先ずはボトルに貼り付いてるラベルを綺麗に剥がす作業から。90年代のボトルと違って最近のバーボンのラベルは比較的剥がしやすいです。ブレットのラベルはゆっくり捲って行けば比較的綺麗に剥がせますが、焦るとノリが残ったりします。そんな時はシール剥がし剤があればそれを使ってもいいんですが、ジッポオイルでも代用できますよ。

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ラベルを剥がし終わり、残った粘着も綺麗にしたら、次はペイントする前に、ペイントを施す素材がガラスなので、定着剤を塗布します。そうしないと、ちょっとぶつけただけで塗装が剥げてしまうんです。ホームセンターで買いやすい染めQ社の「ミッチャクロン」を使いました。これを塗布するとガラスが曇ったような見た目になり、粘り気が出ます。

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ではいよいよ塗装なんですが、クラック加工の場合、下塗りと上塗りは異なる色が必要なので、今回は下塗りの色はボトル本体をオールドビレッジのドレッシング・テーブル・ブルー(レトロな水色)、キャップをブラックにしました。

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塗料が乾いたら今度はクラック加工のキモであるオールドビレッジの「オールクラックアップ」を塗って行きます。この製品はターナー社のクラック剤と違って乾かしてから上塗りをするので注意してください。

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そして最後に上塗りです。上塗りするペイントの色は、ボトル本体をオールドビレッジのオールド・ピクチャー・フレーム、キャップはターナーのゴールデン・レッドにしました。クラック剤を塗った方向とはとは逆方向に一回で塗って行きます。

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先に述べたように想像していたようにはクラック加工がうまく仕上がらなかったのですが、味と言えば味に見えなくもない、いや味だ、そう思おう(笑)。キャップを外して本当に花瓶にも出来ますし、そのままオブジェでもいいかと。

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作り終えてから思ったのですが、クラック剤の上から塗るペイントを一回で仕上げるのが難しかったので、これならターナーのダストメディウムで仕上げた方がよかったかな、なんて。多分そっちのほうが難易度は低いでしょうね。でも、気に入りましたよ、なかなかカッコいい。

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過去投稿のブレット80プルーフのレビューでブランド紹介はしていたのですが、その後明らかになった部分もあるので、ここで再度書き直したいと思います(※追記あり)。

長年法律に携わって来たトーマス・E・ブレットJr.ことトム・ブレットは、1987年にブレット・ディスティリング・カンパニーを立ち上げ、夢の実現へと踏み出しました。それはトムの曾々祖父にあたり、ルイヴィルのタヴァーン店主だったというオーガスタス・ブレットが1830年から1860年の間に造っていたウィスキーの復活です。オーガスタスはフラットボートに樽を一杯に載せ、ケンタッキーからオハイオ川を下りニューオリンズへと売却に向かう輸送中に行方不明となりました。そのレシピはライが3分の2とコーンが3分の1のライウィスキーだったと伝えられています。トムは現代のブレットバーボンを市場の殆どのバーボンより高いライ麦率にすることによってオリジナルのマッシュビルに敬意を表しました。

ブレットバーボンが初めて世に出たのは1995年(※追記あり)です。初期のブレットは現在の物とは全く異なるデザインで、マーケティングに家族の歴史を殊更持ち出さなかったし、フロンティア・ウィスキーとも名乗っていませんでした。代わりにケンタッキーの特産であるサラブレッドを全面に押し出していました。この初期ブレットはエルマー・T・リーやウェラー・センテニアルと同じスクワットボトルに入っており、90プルーフと100プルーフのヴァリエーションがありました。90プルーフの方は日本には輸入されなかったようです。
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NDPとしてスタートしているブレット・ディスティリング・カンパニーは蒸留所を持たないので、当時エンシェントエイジ蒸留所またはジョージ・T・スタッグ蒸留所とも知られていた現バッファロートレース蒸留所(DSP-KY-113)との契約蒸留で製品を生産しました(*)。多分、熟成もフランクフォートの倉庫で間違いないでしょう。私の持っている97年発行のバーボン本ではブレット・サラブレッドの紹介文にこう書かれています。
「委託蒸留した優良原酒を独自の技法で熟成、瓶詰めしているが、その熟成法が独特。通常の半分の期間での熟成を可能にした画期的な方法で~」
云々と。これはおそらく当時トムが4〜6年程度の熟成で10年熟成の味を作る新しいテクニックだとマーケティング上語ったところから来ているのだと思います。実際にはかなり古くからあるテクニックで、寒い冬の間に倉庫を加熱することを意味しました。確かバッファロートレースにはそういう装置が付いた倉庫があったと思います。あと1999年までエンシェントエイジ蒸留所で生産されたという説も見かけました。

転機は比較的早く、1997年に訪れます。当時世界に冠たるシーグラムとのパトナーシップです。おそらくスマートなビジネスマンであったトムはブレットの国際化を望んだでしょうし、シーグラムもまた競争力のあるバーボンブランドを望んだ思惑の一致ではないかと思います。しかしどうやら初めシーグラムの幹部は「Bulleit(Bullet=弾丸と同じ発音)」という名前は好きだったが、古くさいパッケージングは気に入らなかったようです。そこでシーグラムは解決策として新たなブランディングを求め、トムに有名な広告代理店DDB(ドイル・デイン・バーンバック)を辞めたばかりのボブ・マッコールとジャック・マリウッチを組ませました。これは当時の社長エドガー・ブロンフマンJr.の長年に渡る友人であり、広告とメディアのエグゼクティブであり、シーグラムのアドヴァイザーでもあるジョン・バーンバック(多分DDB創業者の1人ウィリアム・バーンバックの息子さん)からの流れではないかと推測します。ともかくボブとジャックの二人は製品コンセプトのアイデアを上手く手助けしてくれたようです。トムは8冊のバーボン図書をボブに送ると、それを読んだ彼はフロンティア・ウィスキーのコンセプトを思いつき、トムの家族の歴史に結びつけました。これは単なるバーボンではない、フロンティア・ウィスキーである、と。現在は見られませんが、強力なスローガンもあったようです。「まだ男が男で、ウィスキーがバーボンだった時代(意訳)」。実にキャッチーでカッコいいコピーですね。こうした新しい製品コンセプトはシーグラムの幹部も気に入り、エドガー・ジュニアの最終的なOKをもらいます。そして新しいブレットのパッケージはオレゴン州ポートランドのサンドストロム・パートナーズによって開発されました。現在我々が知る姿の、アンティークな薬瓶のようなボトル形状、エンボス加工された全面の文字、少し傾いたラベル等、新しいコンセプトを完璧に捉えた卓抜なデザインです。こうして新生ブレットは1999年から米国市場へ導入され、肝心の中身のジュースも、おそらくエンシェントエイジ・バレルが枯渇した後、シーグラム傘下のフォアローゼズ蒸留所産のものに切り替えられました。

2000年になると、また一つの転機が訪れます。90年代にエンターテイメント事業への傾斜を強めていたシーグラムはMCAやポリグラムを買収しますが、巨額の買収費用に対して映画部門でのヒットに恵まれず収益が上がらなかったため、一転して身売り交渉に入り、メディア事業の拡大を進めていたフランスの企業ヴィヴェンディとの合併に合意。合併後、酒類部門の資産はイギリスのディアジオとフランスのペルノ・リカールに分割して売却され、企業としてのシーグラムは終わりを迎えます。ブレット・ブランドはディアジオの元へ行きました。ディアジオはフォアローゼズとの契約をブレットのソースとして残します。
2000年以降、徐々に販売数を増やしていったブレットは今日トップブランドの地位を確立しています。アメリカ全土のバーテンダーやミクソロジストからの人気が高く、特にカリフォルニア州で絶大な人気を誇るとか。また順次世界へも販路を拡げて行きました。ブレットの目覚しい業績は、シーグラム時代のブランドのリニューアル、世界最大規模の酒類企業ディアジオの販売戦略の巧みさ、折からのバーボンブーム、またトム・ブレット本人の知的な努力と人柄の賜物でもあったでしょうが、フォアローゼズの供給するハイ・クオリティな原酒も間違いなくその要因の一つだと思います。
フォアローゼズ蒸留所は2013年までブレットの唯一の供給源だったと考えられていますが、現在の供給元が何処であるかは公開されていません。熟成年数を考慮すると(スタンダードのブレットで約6年)、現在流通しているボトルはまだ殆どがフォアローゼズ蒸留所産だとは思います。ディアジオは長年ブラウン=フォーマンと蒸留契約を結んでいるとも言われ、更にジムビームやバートンもバーボンをディアジオに提供していると噂されています。ブレット側によれば、蒸留パートナーを具体的に明かすことは出来ないが、従来のハイ・ライ・マッシュビルの高品質バーボンを提供するというコミットメントは保証するそうです。

日本に住んでいるとブレットの存在感は、ジムビーム、ワイルドターキー、フォアローゼズ、メーカーズマーク、I.W.ハーパー、アーリータイムズ等のブランドの遥か後塵を拝してるように感じてしまいますが、世界ではそれらトップ・ブランドに肩を並べる成長率を見せています。それ故にでしょう、ディアジオのブレット・ブランドに対する信頼は絶大です。それは2014年にディアジオが所有していたスティツェル=ウェラー蒸留所(オールドフィッツジェラルド蒸留所)の一部を改装してブレット・エクスペリエンスというヴィジター・センターにしたことによく現れています。エヴァンウィリアムスのヴィジター・センターもそうなのですが、これは謂わばバーボンファン版のディズニーランド。昔から蒸留所を巡るツアーは観光ビジネスとしてありましたが、バーボンの人気がアメリカで爆発的再興をする流れの中で、各蒸留所またはその親会社は今まで以上にそこに資金を投入する価値を見出だしています。そして2017年3月には、ルイヴィルから約30マイル西にあるシェルビーヴィルに1億1500万ドルで新しいブレット蒸留所がディアジオによって建設されました。年間180万プルーフガロンを生産可能な施設だそうで、今後のブレットの生産拠点となって行くのでしょう。

さて、ブレットにはスタンダードのオレンジラベル以外にいくつか種類があります。2011年からリリースされているライウィスキーはグリーンラベル。2016年にリリースのバレル・ストレングスはブラックラベル。そして今回レヴューするブレット10年がクリーム色のラベルとなっています。
10年クリームラベルは2013年からブランド展開された数量限定の製品です。マッシュビルはスタンダードなオレンジラベルと同じコーン68%/ライ28%/モルテッドバーリー4%。10年は最も若い原酒の年数であり、11年と12年原酒もブレンドされているとの情報もありました。ラベルにローレンスバーグの記載がありますので、原酒はフォアローゼズ蒸留所産で間違いないと思います。

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BULLEIT BOURBON Aged 10 Years 45.6% alc/vol
2017年ボトリング。熟したプラム、香ばしい樽香、接着剤、タバコ、ライスパイス、ブラウンシュガー、葡萄、蜂蜜、藁半紙、パクチー。やや溶剤臭をともなった焦樽フルーツ系アロマ。口当たりはさっぱりウォータリー。口中では赤い果実感もほんの少し感じれる。余韻は苦味のあるフルーツとスパイス。些かウッディ過ぎる嫌いはあるものの、熟成感とクリアネスが同居する味わいは悪くない(フィルタリングの成果か?)。開封直後は苦味と渋味が目立ち好みのバランスではなかったが、2週間位すると甘味も感じやすくなりバランスが整った。旨味よりはフルーティな香味で攻めるキャラクター。
Rating:86.5/100

Value:スタンダードなオレンジラベルより熟成年数が増えることによって、味わいもそのまま大人になったような印象です。具体的に言うと、フレッシュフルーツだったものが完熟フルーツになり、更に接着剤の香りがつき、苦味と渋味が増したことで味に一本芯が通る感じ。ここら辺をどう評価するかで、買う価値があるかが決まります。ブレット10年は、アメリカ本国ではスタンダードの倍の値札が付き、日本でも概ね2~3倍の値段になります。率直に言うと、私だったらスタンダードの方を購入するか、フォアローゼズのスモールバッチを最安値で買う選択をします。けっして不味い訳ではなく美味しいのですが、個人的嗜好と経済性からの意見です。

追記:その後、情報が入ったので追記します。コメント欄でY.O氏が言及されている「サラブレッド」はブレットの前身でした。その筋の情報では、このサラブレッド・バーボンのラベル(ボトル)は1990年あたりと見られ、1992年に名称が「Bulleit」に変更された、とのこと。なので、私が本文で書いた年数よりもブレットの歴史は遡れるかも知れません。ラベルにはフランクフォートと記載があるので、今で言うところのバッファロートレース蒸留所の原酒を使った86プルーフのバーボンでしょう。悪いラベルではないですが、やはりその後のものよりはインパクトに欠けますね。
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(画像提供Bar FIVE様)

追記2:こちらで紹介していたブレット・バーボンの歴史について、ブレット・バレルストレングスの記事でもう少し補足を加えました。興味のある方は参考になさって下さい。


*この頃は樽買いだった可能性もありますが、真相がわからないので、とりあえず契約蒸留だったという体で書き進めています。

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