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フォアローゼズは2種類のマッシュビルと5種類のイーストを使う10のバーボンレシピを持っています。そして、それらをブレンドして(シングルバレルは除く)各ブランドを作り出します。そのうちOBSK、OESK、OBSO、OESOの4つをブレンドして作成するのがスモールバッチです。この独特の略号については以前のシングルバレルの投稿で解説してますので、そちらを参照下さい。一応簡単に説明しておきますと、最初の文字は常に「O」で生産施設であるフォアローゼズ蒸留所を表し、2番目の文字は「E」(75%コーン/20%ライ/5%モルテッドバーリー)か「B」(60%コーン/35%ライ/5%モルテッドバーリー)でマッシュビルを指します。3番目の文字は常に「S」でストレートウィスキーの意、4番目の文字はイーストの種類を表し、「V」(繊細な果実)、「K」(僅かなスパイス)、「O」(濃い果実)、「Q」(フローラルエッセンス)、「F」(ハーブの香り)の何れかで示されます。スモールバッチは2006年から導入されました。

現マスターディスティラーのブレント・エリオットによると、正確な数はバッチにより異なるものの、平均バッチサイズは約250樽だそうです。熟成年数はNASですが概ね6年と7年で、6年以下の原酒は入れず、時には8年物の樽が含まれる場合もあり、バッチあたりの平均年数は通常6年半とされます。フォアローゼズでは45秒のチャーリング(#3と#4の中間のチャー・レヴェル)を施した樽を、コックス・クリークにある平屋のリックハウスで熟成。4つのレシピのバーボンは各バッチを構成するために常に使用され、要求されるフレイヴァー・プロファイルと容量のため、樽は複数の倉庫から引き出し、ダンピングの前に各レシピの代表的なサンプルを取り出してブレンドし、ラボでテストするのだとか。

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Four Roses Small Batch 90 Proof
年式不明、購入は2019年。並行輸入。香ばしい焦げ樽、熟したプラム、ホワイトペッパー、ラズベリー、ジンジャー、タバコ。さらりとした口当たり。余韻には香ばしさとペッパー感が残りやすい。一二滴の加水でフルーツをたっぷりと添えたパンケーキを思わせる香りへ。
Rating:85/100

Thought:以前飲んだジム・ラトリッジがマスターディスティラーの時代(2015年以前)の物より、やや甘味がなくフルーティさに欠けるように感じました。何と言うか、焦樽感が強くメロウさが足りない印象。少し昔の情報でスモールバッチの熟成年数を平均7~8年としているのを見かけたことがあるので、もしかするとここ数年のバーボン高需要によって平均熟成年数が下がっているなんてこともあるのかも。また同じ理由からバッチサイズも昔はもっと少ない樽数だった可能性もあるかも知れませんね。ブレントは前マスターディスティラーで伝説とも言えるジム・ラトリッジのもとで十年くらい共にフォアローゼズをクリエイトして来た人なので、マスターディスティラーの交代によって味が落ちたとは考えにくく、疑うなら高需要による熟成年数の変化ではないかと思った次第です。まあ、私の味覚の方が当てにはなりませんけど…。スモールバッチのバッチ毎の味の違いについて皆さんはどう思われるでしょうか? どしどしコメントお待ちしております。

Value:アメリカでは30ドルの価格帯、日本では安いところで3000~3500円で買えるフォアローゼズ・スモールバッチは、ブラックラベルが3000円、シングルバレルが5000円とすると、私にとっては味と価格のバランスに於いて「これ一択」の製品でした。ところが今回飲んだバッチの物はどうもイマイチに感じてしまい、これだったらブラックラベルの方を選ぶほうが…。上にも述べた昔(2013年あたり)飲んだスモールバッチを当ブログでレビューしてないのですが、点数を付けるなら86.5点でした。とは言え、こちらも現行の流通が広範囲の製品としては今だに高いレヴェルにあるとは思っています。特にブラックラベルと較べてハイプルーフなのは価値が大きい。
幸いフォアローゼズの製品ラインナップはなかなかバランスよく揃っているので、安さを求める方ならイエローラベル、それより質の高い物の中でライト志向の方ならブラックラベル、強さを求める方ならシングルバレル、そしてスペック的に中間のバランス型を志向する方ならスモールバッチと言ったところでしょう。プラチナは高額なので、別枠でプレゼント用ですかね。それぞれオーキー感の強さと風味に若干の違いはありますが、味わいはどれもフォアローゼズらしいフルーティで美味しいバーボンだと思います。


補足:「スモールバッチ」と云う用語はバーボンでは頻繁に使われますが、法律で定まった規格ではなく単なるマーケティング用語なのでちょっと注意が必要です。と言うのも、バッチは生産単位、スモールは少数、そこから一般的にスモールバッチは「少量生産の意」と説明されることが多く、あながち間違いではないし私だってそう説明することもあるのですが、実際のところスモールバッチ製品をリリースする蒸留所によってそのバッチサイズには余りにも大きな違いがあり、誤ったイメージを持ってしまうと言うか、人によってイメージする数に差が出てしまうでしょう。「少量」がどれくらいの量なのか定かではないのですから。具体的な数字を言うと、業界では2樽から300樽程度までのバッチングでボトリングした製品をスモールバッチと呼び慣わしています。小さな蒸留所では10樽前後をスモールバッチと表記し、大手蒸留所では300樽でもスモールバッチと表記するのです。例えばメーカーズマークのスタンダードは150樽程度のバッチングと言われますが、ラベルにスモールバッチとは書かれていません。メーカーズでは伝統的に19樽程度をスモールバッチとしているらしいです。逆にジムビームのスモールバッチ・コレクション(ノブクリーク等)は300樽前後、ワイルドターキーのレアブリードは200樽前後のバッチングと見られます。その一方でジョージディッケルのバレルセレクトは10樽前後、ウィレットのスモールバッチ・シリーズは最大で12樽とされている時期がありました。「は? 差あり過ぎじゃね?」ってなりますよね。個人的には紛らわしさの回避のため、2~30樽はヴェリー・スモールバッチと言ったほうが良いのではないかと思ってます。余談ですが。
「クラフト」や「ハンドメイド」と云う言葉も同じように、あまり意味をなさないマーケティング用語です。どこかしら「ぬくもり」や「こだわり」を感じさせ、小さいながらも一生懸命に仕事に打ち込んでいる姿をイメージさせます。スモールバッチ=少量生産のイメージもこれらと被るでしょう。ある意味、大手蒸留所からしたら都合のいい響きをもった言葉だからこそマーケティングに用いられるのが「スモールバッチ」と云う言葉なのです。こう言うと、何だか大手蒸留所が悪者のように聞こえてしまいますが、別にそういう訳でもありません。そもそもスモールバッチという言葉は、大昔に使われたこともあったかも知れませんが、現在の流行り言葉としてのルーツはジムビームにあります。ジムビームがスモールバッチ・コレクションを発売した当時、彼らはジムビーム・ホワイトラベルのために700〜800樽をバッチングしており、だからこそノブクリーク、ベイゼルヘイデンズ、ブッカーズ、ベイカーズの200〜350樽は比較的「小さく」見えました。それ故の「スモールバッチ」。ここに嘘はなく、単純な事実を表明しただけ、悪意があった訳ではないのです。

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周知のようにフォアローゼスは他の蒸留所では見られない独自の方法でそのバーボンを造り出します。それは二つのマッシュビルとキャラクターの違う五つのイースト菌を使って10種類の原酒を造り、平屋のウェアハウスで熟成させ、それらをブレンドすることで品質と味を安定させるという方法です。フォアローゼスは1943年にシーグラムの傘下に入りましたが、その当時からシーグラムは酵母の研究をしていて、その影響を受けた造り方なのでしょう。またコックスクリークにある平屋の熟成庫も、元々はシーグラムが熟成の本拠地としていた歴史があるそうです。シーグラムという会社はなくなりましたが、フォアローゼスはその魂を受け継いでいると言ってもいいかも知れません。

10種類の原酒は4文字のアルファベットによって「O■S◆」というように表記され、「O」はフォアローゼス蒸留所で造られていることを意味し、「S」は「Straight whiskey」もしくは「distilled Spirit」を意味します。「S」の略は分かりやすいですが、なぜ「O」がフォアローゼズ蒸留所を表すかと言うと、それは昔フォアローゼズ蒸留所はオールドプレンティス蒸留所という名称だったからです。いくつもの蒸留所を抱えていたシーグラムは原酒の産出される蒸留所のバレルに各略号を与えており、その名残から「Old Prentice」の頭文字「O」でフォアローゼズ蒸留所を表すのです。
そして「■」の部分にはマッシュビルの種類を表す「E」もしくは「B」が入ります。「E」マッシュビルはコーン75%/ライ20%/モルテッドバーリー5%でライ麦少なめのレシピ、「B」マッシュビルはコーン60%/ライ35%/モルテッドバーリー5%でライ麦多めのレシピです。注意してほしいのはライ麦少なめのEマッシュビルでも、他社で言うとハイ・ライ・マッシュビルと呼ばれるライ麦含有率なところです。つまりフォアローゼスはライ麦率が凄く高いバーボンなのです。
そして末尾の「◆」にはイーストの種類を表す「V・K・O・Q・F」の何れかが入ります。左から順に、デリケート・フルーツ・クリーミー、ライト・スパイス・フルボディー、リッチ・フルーツ・フルボディー、フローラル・エッセンス、ハーバル・エッセンスというキャラクターを持っているとされ、それぞれに熟成のピークが違うそうです。この5種類のイーストは、上に述べたようにイーストの研究に余念のなかったシーグラムが、往時ケンタッキー州で所有していた五つの蒸留所にルーツがあるとの説がありました。どれがどの蒸留所のイーストなのか判りませんが、その五つの蒸留所とは、ルイヴィルのカルヴァート蒸留所、シンシアナのオールド・ルイス・ハンター蒸留所、ラルー郡のアサートンヴィル蒸留所、ネルソン郡のヘンリー・マッケンナ蒸留所、そして現在フォアローゼズの本拠地となっているローレンスバーグのオールド・プレンティス蒸留所です。
これら2×5の10種類のそれぞれの特徴は下記のようになるとのこと。

OESV─デリケートフルーティ、フレッシュ、クリーミー
OESK─スパイシー、フルボディ
OESO─フルーティ(レッドベリーズ)、ミディアムボディ
OESQ─フローラル(ローズ、アカシア)、バナナ、ミディアムボディ
OESF─ミント、フルーティ、フルボディ
OBSV─デリケートフルーティ(洋梨、アンズ)、スパイシー、クリーミー
OBSK─リッチスパイスネス、フルボディ
OBSO─ライトフルーティ、スパイシー、ミディアムボディ
OBSQ─フローラル(ローズ)、スパイシー、ミディアムボディ
OBSF─ミント、フルーティ、スパイシー、フルボディ

イエローラベルはこれらを全てブレンドしたもので
OESV+OESK+OESO+OESQ+OESF+OBSV+OBSK+OBSO+OBSQ+OBSF

スモールバッチは4種類のブレンドで
OESK+OESO+OBSK+OBSO

シングルバレルは当然1種類で
OBSV

と、されています。ちなみにリミテッドリリースの物はその都度、最も熟成の良いものが選ばれているようで、例として

2016年リミテッドリリース・スモールバッチは
OESK(16yr)+OBSV(12yr)+OESO(12yr)

エリオッツ・セレクトは
OESK

が、選ばれています。その他に現地では、プライベート・セレクションという或るお店や団体のためのシングルバレルがあり、それは任意の樽を選ぶことが出来るみたいで、お店の名前と「O■S◆の○年▲ヶ月熟成」というように記載されたシールがボトルの横に貼ってあります。それらはめちゃくちゃ旨いらしいです、バレルストレングスだし…。まあ、それは措いて、そろそろ通常品のシングルバレルの感想を。

Four Roses SINGLE BARREL 100 Proof
Warehouse No. RS
Barrel No. 80-6F
イエローやブラック、スモールバッチと比べると、ハイプルーフのせいか、だいぶオーキーな香り。飲むと、あぁフォアローゼスだなぁというフルーティさだし、濃いし、スウィーティーかつスパイシーで勿論おいしいのですが、どうも奥行に欠ける気がする。リッチではあるがコンプレックスではない印象を受けました。正直、スモールバッチの方が好みです。私とOBSVの愛称が悪いのか、ブレンドでないからそう感じるのか、他の樽だったらよかったのか、どうもわかりませんが、このボトルに関しては特別なフィーリングは感じませんでした。
Rating:86/100

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