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ジョージディッケル・バーボン8年は継続的な全国リリースの製品として2021年夏にディッケルのコア・ラインナップへ追加されました。同年のナショナル・バーボン・デイに発表されたこの製品がユニークな理由は二つあります。一つは、言うまでもなくバーボンである点です。これはジョージ・ディッケル蒸溜所にとってラベルに「バーボン」の文字がある初めての製品でした。
ジョージディッケルとジャックダニエルズは共に、テネシー・ウィスキーとバーボンが同じものではないことを消費者に強調して来ました。彼らは「ストレート・バーボン」と商品ラインナップの大半に書いておしまいの大手バーボン蒸溜所とは違うのです。この二つのアメリカン・ウィスキーの違いは長年議論され、テネシー・ウィスキーは独自のカテゴリーだと強硬に主張する人もいれば、それは単にバーボンという大きなカテゴリーの一部だと穏和に主張する人もいます。ここでそうした議論を始める積りはありませんが、それまで自らの製品をテネシー・ウィスキーと呼んで来たディアジオ傘下のジョージ・ディッケル蒸溜所がバーボンをリリースしたのは何かしら示唆的でしょう。
そもそもテネシー・ウィスキーはバーボンとラベル付けするための法的要件を全て満たしています。つまり、ジョージディッケル・テネシーウィスキーはバーボンと表示されていませんが、しようと思えばいつでもバーボンとラベルに表示することは可能だった訳です。そして実際のところ、このジョージディッケル8年バーボンとNo.8テネシー・ウィスキーには、エイジ・ステイトメント以外に製法上の差はありません。どちらもコーン84%、ライ8%、モルテッドバーリー8%という同蒸溜所の古典的なマッシュビルで造られている上、バーボンとテネシー・ウィスキーを分けるポイントとして名高いチャコール・メロウイング製法、即ちリンカーン・カウンティ・プロセスも行われています。
では、なぜ著名なテネシー・ウィスキーのメーカーは、突如として自社リリースの一つをバーボンと呼び始めたのでしょう? シニカルな見方をするならば、これはただのマーケティングであって今バーボンが流行っているからバーボンのラベルを貼ってその恩恵に与かろうとしているだけだ、となります。しかし、ブランド側の回答としては、そのフレイヴァー・プロファイルに基づいてのことだと言います。近年そのブレンディングと樽選びの能力でアメリカン・ウィスキー界でスターとなっているカスケイド・ホロウ・ディスティリングのディスティラー兼ジェネラル・マネージャーのニコール・オースティンは、同蒸溜所から産出される特定のバレルは「より伝統的なバーボンの香りに傾いており、ジョージ・ディッケルの他の製品に見られるテネシー・ウィスキーのテイスティング特性を表現していない」と述べました。おそらくディッケル・バーボン8年の核となるアイデアは、古典的なテネシー・ウィスキーと言うかジョージディッケルのプロファイルが現れていないバレルは少なからずあり、寧ろバーボンに近いプロファイルになってしまったそれらに適切な居場所を与えることだったのでしょう。現在市場にはテネシー州で蒸溜された長熟バーボンが沢山あることが知られています。アメリカ以外の国も含む多くのボトラーがそれらをボトリングしているからです。そして、それらは殆どディッケルから供給されていると見られます。このディッケル・バーボン8年は、謂わばそれらの若年ヴァージョンと見ることも出来るかも知れませんね。まあ、それは措いて、オースティンは「バーボンはより親しみやすくバランスの取れたものであり、ディッケル・バーボンは私たちのポートフォリオ全体への素晴らしい入口です」と語っていました。

このディッケル・バーボンがユニークな理由の二つめは、ラベルに大きくあしらわれた「8」がレシピ番号ではなく、文字通りの熟成年数であることです。ジョージ・ディッケル蒸溜所の創業以来、彼らの代表的な銘柄と言えば、ブラック・ラベルの「オールドNo.8ブランド」とホワイト・ラベルの「オールドNo.12ブランド」でした。これらはここ10数年の間に、ラベルのデザインが段階的に少し変化したり、ラベルの色みが変わったり、微妙な名称の変更が施され、それぞれ「クラシックNo.8レシピ」、「スーペリアNo.12レシピ」となっていました。ディッケル・バーボン8年の発売以降のことだと思われますが、紛らわしかったその数字が削除され、これらは現在では単に「クラシック・レシピ」と「シグネチャー・レシピ」となったようです。
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その紛らわしい数字のせいで誤解している人も多いのですが、一部の熟成年数が明記されたジョージディッケル製品を除き、No.8と12は発売当初から現在に至るまで全てNAS(熟成年数表記なし)のウィスキーでした。それ故、ディッケル・バーボンはそのラインナップの中でエイジ・ステイトメントという際立つ特徴があるプロダクトになっています。では、そろそろこのテネシー産のバーボンを注いでみるとしましょう。

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George Dickel Bourbon Whisky Aged 8 Years 90 Proof
ボトリング年不明、レーザーコードはL1146R60011553。色は中庸なブラウン。焼いた木材、シリアル、シナモン、どら焼きの皮、ベリーソースをかけた杏仁豆腐、微かにグレープ味のガム。ノーズはトースティで清涼感のある香りから、ローストしたアーモンドも僅かに顔を出す。口当たりはサラッとしつつ円やか。パレートはややフルーティでグレイニー。余韻はドライながら香ばしい樽香とナッツが少々。全体的にスパイス感は弱め。
Rating:80→81.5→83.5/100

Thoughts:開封直後の第一印象は8年より若そうというものでした。焦がした樽の深みが感じられず、彼らにとって重要な筈のテネシー・ウィスキーとしてリリースするにはイマイチだったバレルをバーボンとしてリリースしてるのではないか、と邪推するほど薄っぺらい香りと味わいでした。しかもそれは暫く続きました。しかし、開封から3ヶ月くらいすると、アルコールの尖りが落ち着いたのか、香りは甘さを増し、味も甘みを感じ易くなりました。とは言え、フルーツのフレイヴァーは相変わらずそれほどでもなく、またディッケルらしさもさほど感じられず、悪いところも良いところもない無難なバーボンという印象はまだ拭えませんでした。ところが開封から10ヶ月経って残り3分の1くらいになった頃、ぐっとフルーツ・フレイヴァーが増し、アーシーなフィーリングも出て来て美味しくなりました。レーティングの矢印はそのことを指しています。但し、総評としては、主にオークと甘いお菓子が原動力になっていて、フルーツとスパイスは弱く、余韻は少しドライなバランスのミディアム・ボディのバーボンと言ったところかと。
で、件のテネシー・ウィスキーとバーボンがどれほど違うのかに就いては、強いて言うと他のテネシー・ウィスキーを名乗る製品より酸味と苦味が弱く、甘みが感じ易いような気はしました。ですが、飽くまでその程度であり、残念ながらこのジョージディッケル・バーボンは味わいに大きな独自性を発揮しているとは言い難いです。海外のレヴュワーさんのテイスティング・ノートを眺めてみると、ジョージ・ディッケル蒸溜所のウィスキーの特徴としてミネラルとかフリントストーンズ・チュアブル・ヴァイタミンと表現されるフレイヴァーを、このバーボンでもディッケルだと分かる位にあるとする人もいれば、確かに存在するが圧倒的ではないとする人もいます。個人的には後者に賛同です。また、甘さの側面についても意見が別れ、「フィニッシュは歯が痛くなりそうな甘さ」と表現している人もいれば、その感想に「ディッケル・バーボンが甘いのは認めるが、バーボンの平均以上の甘さとは言い難い」と反対している人もいました。私の感想はこれまた後者の方と同じでした。「ディッケル・バーボンは、8年間熟成させ、完璧にブレンドされた手作りのスモールバッチ・バーボン」とされているので、正確なバッチ・サイズまでは判りませんが、もしかするとスモールバッチ故のバッチ間での味わいの変動はあるのかも知れません。

Value:基本的にジョージディッケル・ブランドは「お買い得」で知られ、カスケイド・ホロウ・ディスティリングは比較的安価な価格帯への拘りを強くもっているように見えます。彼らの販売戦略なのでしょうか、旧来のNo.8は約20ドル前後、旧来のNo.12は約25ドル前後と、ほぼ同じ価格帯にフラッグシップ・ブランドが二つあります。そして、それらより上位のバレル・セレクトが45ドル前後、ボトルド・イン・ボンドが40〜50ドル。そこに30〜35ドルのジョージディッケル・バーボンが加わったのです。既に確立されたブランドの中に新たなミドル・クラス品が加わったことで、そのラインナップはますます細分化されました。No.8の20ドルからBiBの50ドルまで僅か30ドル内の間に幾つものウィスキーが犇めき合っている、と。これらの中にあってジョージディッケル・バーボンは、上で述べたように最終的に美味しくはなったものの、テネシー・ウィスキーとバーボンを棲み分けするだけの個性には聊か欠けているように思います。それに、どうせディッケルを飲むならテネシー・ウィスキーの方が良くないか?と思ってしまうのは私だけではないでしょう。日本での販売価格は8000円前後が相場です。味わいからするとちょっと高いなとは思うのですが、昔はもっと安かったNo.12も現在では7000円程度なので、順当なプライシングかな。「バーボン」という魔法の言葉に価値を感じる人、典型的なジョージ・ディッケルの風味に飽き飽きした人、テネシーだがバーボンという一風変わった物を嗜みたい人にはオススメです。

そう言えば、今年のホリデイ・シーズンにはディッケルからテネシー・"バーボン"の特別な18年物がリリースされるようですね。日本で飲めるのでしょうか…。

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オールド・オーヴァーホルトは数あるアメリカン・ウィスキーの中でも特別な位置を占める由緒あるブランドです。その長い歴史や家族の物語は以前の投稿で紹介しているので興味があれば覗いてみて下さい。ここではビームにブランドが移ってからの事柄のみ取り扱います。

1987年、アメリカン・ブランズ(後のフォーチュン・ブランズ)の子会社ジェームズ・B・ビーム・ディスティリング・カンパニーは、それまで長きに渡りオールド・オーヴァーホルトを所有して来たナショナル・ディスティラーズからブランドを購入しました。新しいオウナーは生産を統合するため、買収後すぐに同ブランドが製造されていたオールド・グランダッド蒸溜所での蒸溜を停止し、自社のメイン・ファシリティであるクレアモント(またはボストン)の蒸溜所での製造に切り替えました。こうした買収が行われた場合はウィスキーのストックも買い取るのが通例のため、買収後数年間はNDジュースを使用したかも知れませんが、少なくともそれがなくなると彼らは既にジムビーム・ライのために生産していたハイ・コーンなライ・ウィスキーを使ってオーヴァーホルトのブランドを作成しました。つまり、オールド・オーヴァーホルトとジムビーム・ライはラベルが違うだけで似たり寄ったりの製品になったのです。香りや味わいに違いを感じるとしたら、それはバレル・ピックやバッチングによる差と考えられます。ビームはブランドを買収してからの長い間、1990年までにオールド・オーヴァーホルトのプルーフを80に下げたことを除き、殆ど何もしませんでした。当時ライ・ウィスキーの人気は最底辺であり、まだ一部に残る消費者の需要に応えるために辛うじてブランドを存続させただけでした。2010年に迎えたオーヴァーホルト社の創立200周年の時でさえアニヴァーサリー・エディションの発売はありませんでした。しかし、ライ・リヴァイヴァルの到来によってそうした状況は徐々に変わって行きます。

クラフト・カクテルのバーテンダーを筆頭とする消費者は、その大胆でスパイシーなキャラクターを再発見し、2010年からの数年間でライ・ウィスキーの人気は急増しました。オールド・オーヴァーホルトの需要も増えたことで在庫は圧迫され、ビームは熟成年数を4年から3年に引き下げました。これは味わいの点ではマイナスでしたが、人気の再興による変化なのでプラスの面も齎しました。ビームがブランドを所有するようになってからの26年間、殆ど何も宣伝されなかったオールド・オーヴァーホルトは、2013年頃、同じくナショナル・ディスティラーズから引き継いでいたオールド・グランダッドとオールド・クロウを並べて「ザ・オールズ(THE OLDS)」としてウェブサイトでアピールされ出したのです。当時のビームのシニアPRマネージャーは「三つの象徴的なウィスキー・ブランドをまだ経験したことがない人に紹介することを目的としています」と述べていました。これはそれほど効果的な宣伝だったとは思えませんが、オールド・オーヴァーホルト復活の予兆ではありました。

2017年末もしくは2018年初め、長年に渡りブランドの生産を80プルーフに限定していたビームは、嘗てオーヴァーホルト社の主要製品だった100プルーフの「ボンデッド」を市場に再導入しました。これはライの売上が急落し続けたため1964年に製造中止になってから50年以上ぶりとなる復活でした。80プルーフのヴァージョンよりも確実に豊かなフレイヴァーを有する象徴的なオーヴァーホルトを再び楽しむことが出来ると飲み手が喜んでいると、2020年にはもっとエキサイティングなことが起こりました。先ずパッケージのアップグレードです。ボトルのプラスチック・キャップは黒色から昔のような赤色に戻り、「Since」と「1810」の文字が「BORN in PA」と「MADE in KY」に書き換えられ、「ボンデッド」ヴァージョンの名称は「ボトルド・イン・ボンド」に変更されました。そして何より、バーボン飲みにはブッカーズのバッチ・ステッカーの挿絵やオールド・グランダッドのベイゼル・ヘイデンの肖像、イエローストーンやレッドウッド・エンパイアのイラストを手掛けたことでお馴染みのアーティスト、スティーヴン・ノーブルによる緻密な筆致によって、オールド・エイブのポートレイトが初期さながらの不機嫌そうな表情に生まれ変ったのです。
更に重要なのは、スタンダードなヴァージョンが86プルーフに引き上げられた上に、BiBと共にノンチルフィルタードの仕様になったことでした。これで以前は失われていたエステルと脂肪酸の一部が残ることが期待されるでしょう。この変更の理由をビーム・サントリーのライ・ウィスキー担当者ブラッドフォード・ローレンスは「歴史的な理由もありますが、バーテンダーがカクテルを創造する際に、より良いリキッドを作るためです」と述べていました。そして、変化の波はこれだけに終わりません。
2020年の後半には、ペンシルヴェニア州とオハイオ州のみの限定販売ながら、バレルプルーフに近い114プルーフで4年物のライと、長期熟成ライとなる11年物で92.6プルーフの2種類がリリースされました。11年物は1回限りのリリースでしたが、114プルーフのヴァージョンは2021年半ばから全国展開されるようになりました。2022年夏には、スタンダードな86プルーフの3年熟成が廃止され、新たに4年熟成に引き上げられました。この変更はオーヴァーホルトの1942年のオリジナル・エイジ・ステイトメントに敬意を表したもので、同社によれば歴史的なルーツへの回帰を示すものだと言います。「ホーム・バーのお気に入りでありバーテンダーの定番でもあるオールド・オーヴァーホルトは、常に酒好きやライ愛好家達に信頼性の高い高品質のライを提供してきました」、「熟成年数表記を4年に戻すことで、私たちが知り、そして愛してもいるオーヴァーホルトをより忠実な姿で提供することが出来ます」と、ビーム・サントリーのアメリカン・ウィスキー・アンバサダーであるティム・ヒューイスラーは述べていました。
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更に今年(2023年4月)には驚きの情報が齎されます。オーヴァーホルト・ライウィスキーの新ラベルがTTBウェブ・サイトに掲載されたのですが、そこにはビームがオーヴァーホルト・ブランドを所有して以来使用している標準的なケンタッキー・スタイルのコーン多めのマッシュビルとは異なる、往年のペンシルヴェニア・スタイルに特徴的なコーンを使用しない80%ライ、20%モルテッドバーリーの全く新しいマッシュビルであることが示されていました。しかもペンシルヴェニアで栽培されたモノンガヒーラ・ライを調達しているらしいのです。ラベルには「モノンガヒーラ・マッシュ」とありますね。
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ライ・ウィスキーの市場がここ10年で飛躍的な成長を遂げたことで愛好家達の製品に対する本物志向の要求は高まりました。ライの本拠地とも言えるペンシルヴェニア州では地元の有名なスピリッツを復活させるために日々努力を重ねるクラフト・ディスティラリーが数多くあり(*)、彼らはポット・スティルを用いてより伝統的な蒸溜方法を行ったりします。また、伝統的なライ麦品種を繁殖させ、時の流れの中で失われてしまった風味を取り戻そうとしているメーカーもあると聞きます。ペンシルヴェニア州ではないものの(コロラド州)、リオポルド・ブラザーズのように嘗てライ・ウィスキー造りの主流だったスリー・チェンバー・スティルを復活させる蒸溜所まであります。こうしたライ・ウィスキー本来の味と香りを愛好家のために取り戻したいという真剣な思いに呼応するかのように、ビームもオーヴァーホルト・ブランドをペンシルヴェニアのルーツに立ち返らせるべく改革に乗り出した、と。現時点では、現行のオーヴァーホルトが廃止されてこの新しいオーヴァーホルトになるのか、はたまた現在のラベルを存続させつつその上位互換としてこのモノンガヒーラ・スタイルも並行して販売されるのかは定かではありません。おそらくこのラベルのリリースはもう少し先でしょう。ライ・ウィスキーは近年のルネッサンス以前は辛うじて生命を維持されているに過ぎない存在に見えましたが、それはもう過去の話となりました。今、ライ・ウィスキーの歴史そのものと謂えそうなオーヴァーホルトという偉大なブランドは、嘗ての栄光を再び浴びる好機を得ています。今後が楽しみですね。

偖て、今回飲むのは4年熟成になる前段階の3年熟成のノンチル物です。ちなみにビームのライ・マッシュビルは非公開ですが、51%ライ、35%コーン、14%モルテッドバーリーと推測されています。他の説としては、日本ではライを59%としていることが多く見られます。これの出典が何処からなのか定かではありませんが、日本のバーボン・ファンにはお馴染みの91年発行の『オール・ザット・バーボン』や97年発行の『ザ・ベスト・バーボン』ではそう断言されていました。また、ライ61%と云う説もあり、これはどうやらジム・マレイの著書『The Complete Guide to Whisky』(1997)に由来するようです。これらの説のうち、どれを信頼していいのか私には判断がつきません。詳細ご存知の方はコメント欄よりご教示下さい。では、そろそろ伝統あるブランドを注ぐとしましょう。

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OLD OVERHOLT STRAIGHT RYE WHISKEY NON-CHILL FILTERED 3 Years Old 86 Proof
推定2021年ボトリング。ゴールド寄りのアンバー。グリーングラス、ライスパイス、微かなヴァニラ、胡椒、薄っすら林檎、トーストブレッド。草っぽく少しフローラルなトップノート。中庸な口当たり。パレートはほんのり甘く、かつスパイシー&ドライ。余韻はあっさりと退けて行くが、ほろ苦さが心地良い。液体を飲み込んだ直後のキックがハイライト。
Rating:80/100

Thought:立ちのぼる香りはやや弱く、ボディも軽く、後味も特別なものではないものの、若い原酒のため渋みが殆どないので飲み易いし、僅かにオイリーなところは気に入りました。個人的にはもっと甘いかフルーティな方が好みではありますが、おそらく甘いのが苦手ですっきり飲みたい人には向いていると思います。カクテルベースには言わずもがなでしょう。
ところで、一つ気になることがあります。ジムビーム・ライのラベルが或る時リューアルしましたよね。黄色から緑色のラベルに変わり、プリプロヒビション・スタイルという名称が付きました。それを数年前に飲んだ時、私は従来よりフルーティで美味しくなったと思いました。きっと何かが改良されたのだろう、と。ビームのライ・マッシュは一種類と聞いているので、それならオーヴァーホルトも美味しくなっているに違いないと思って今回飲み始めた訳です。ところが、このオーヴァーホルトはそのジムビーム・ライとは随分とキャラクターが異なる印象を受けました。私にはジムビーム・ライはフォアローゼズ(特にブラックより上位の物)に近しいフルーティさを感じ、オーヴァーホルトはオーヴァーホルトのままと言うか、多少の違いはあれども下で言及する以前の黒キャップの物と同傾向のスパイシーでドライな特徴を維持しています。付け加えると、短命に終わったビームのプレミアム・ラインのライに(rī)¹[※ライワンと発音]というのがありましたが、それもジムビーム・ライ緑ラベルと同系統のフルーツ・フレイヴァーを有していました。これって、ジムビームのライとオーヴァーホルトのライとをバレル・セレクトによって造り分けてるのですかね? まさか、マッシュビルが複数あるのでしょうか? はたまたイーストを変えているのでしょうか? 仔細ご存知の方は是非コメント頂けると助かります。

Value:現行のオールド・オーヴァーホルト4年のMSRPは750mlボトルで約20ドル。日本では大体2200〜2800円くらいが相場のようです。熟成年数から見ると品質は同価格帯のバーボンと殆ど同じか少し低いくらいなのですが、80プルーフという最低限のボトリングでもないし、ノンチルフィルタードは通常は高級品の仕様と見ることも可能ですから、コストパフォーマンスは高いと言えるかも知れません。現行のオールド・オーヴァーホルトは、入手のし易さといい、比較的安価な値段といい、ライらしさの一面を味わえる点といい、ライ・ウィスキーへの初めての入り口としてはオススメです。

あと、かなり昔に飲んだボトルが取ってあったので、おまけでその感想も添えておきます。

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OLD OVERHOLT STRAIGHT RYE WHISKEY 4 Years Old 80 Proof
推定2003年ボトリング(瓶底)。確か2013年頃に当時販売されていた黒キャップのオーヴァーホルト(3年熟成)を飲み終えた直後に開封して味比べをしました。その2013年あたりのオーヴァーホルトは風味が薄くてあまりピンとこなかったんですよね。点数にすると78点くらいがいいとこです。多分、2013年より少し前から2018年頃までのボトルはオーヴァーホルト史上、最も低レヴェルな味わいかも知れません。それに較べるとこちらはよりミンティさがある上に円やかで全体的に風味がもう少し強く美味しかった記憶があります。この頃のラベルは後の物より黄色っぽく、キャップの色も赤というより小豆色でした。
Rating:80/100
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*ペンシルヴェニア州のクラフト蒸溜所
1675 Spirits (Bucks County)
Altered State Distillery (Erie County)
Barley Creek (Monroe County)
Barrel 21 Distillery (Centre County)
BlueBird Distilling (Chester County)
Boardroom Spirits (Montgomery County)
Brandywine Branch Distillery (Chester County)
Chicken Hill Distillery (Elk County)
CJ Spirits (McKean County)
Cooper Spirits (Philadelphia)
County Seat Spirits (Lehigh County)
Crostwater Distilled Spirits (York County)
Dad’s Hat Rye (Bucks County)
Dead Lightning Distilled Spirits (Cumberland County)
Disobedient Spirits (Indiana County)
Eight Oaks Distillery (Lehigh County)
Five Saints Distilling (Montgomery County)
Hazard’s Distillery (Juniata County)
Hewn Spirits (Bucks County)
Hidden Still Spirits  (Dauphin County)
Hughes Bros Distilling (Bedford County)
Hungry Run Distillery (Mifflin County)
Lakehouse Distilling (Franklin County)
Liberty Pole Spirits (Washington County)
Lucky Sign Spirits (Allegheny County)
Midstate Distillery (Dauphin County)
Nomad Distilling (Lycoming County)
New Liberty Distillery (Philadelphia)
Manatawny Still Works (Montgomery County)
Mason Dixon (Adams County)
Pennsylvania Distilling (Chester County)
Red Brick Distillery (Philadelphia)
Silverback Distillery (Monroe County)
Stoll and Wolfe (Lancaster County)
Strivers’ Row Distillery (Philadelphia)
Thistle Finch Distillery (Lancaster County)
Wigle Whiskey (Pittsburgh)

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今夜は年末年始に向けてロカビリーやロックンロールな映画を集めてみました。どれも自分がティーンの時に影響を受け、今だに大好きな映画たち。

若きチカーノロッカーを完璧な青春映画として描いた「ラ・バンバ」、デニス・クエイドのキレた演技もさることながらウィノナ・ライダーが可愛すぎる「グレート・ボール・オブ・ファイヤー」、ジョニー・デップ他出演者みなが濃ゆいロカビリー版ミュージカル「クライ・ベイビー」、まだ有名になる前のブラッド・ピッドのリーゼントとファッションだけでノックアウトの「ジョニー・スエード」、お揃いのジャケットに憧れる「ザ・ワンダラーズ」、レザーとモーターサイクルが野郎を魅了する「ラブレス」、どれもカッコよくてクラクラしちゃいます。







これらに合わせるバーボンはもちろんレベルイェール。そもそもは、かの有名なスティッツェル=ウェラー蒸留所が南部限定でリリースしていた小麦バーボンで、現在はラクスコ(旧デイヴィド・シャーマン社)が販売しています。昔の物はラベルに南軍の兵士が刀を片手に馬を疾駆する姿が描かれていましたし、「ディープ・サウス専用」なんて文言も書かれていました。またロカビリアンのアイコンとも言えるレベル・フラッグがフィーチャーされた海外向けのラベルの物まであり、サザーン・カルチャーという共通項からロカビリーや初期ロックンロールとは相性がいいのです。
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そしてレベルイェールというブランド名ですが、日本ではよく「反逆の叫び」と訳されてるのを見かけます。別に間違いではないですし、それがロックなイメージを加速させるの役立っているのですが、実際には上に述べたラベルの件で分かるように、ここでの「レベル(Rebel)」は北軍に「反逆・反抗」した者の意となり、「イェール(Yell)」は日本語で「エールを送る」と言う時のエールと同じ英語の「怒鳴る・喚く・気合いを入れる掛け声」などを意味する言葉で、南北戦争における南軍の兵士が戦闘の時にあげる甲高い遠吠えのようなものを「レベル・イェール」と言います。だから日本語なら「南軍の雄叫び」とでも言うと分りやすいですかね。狼や犬の遠吠えを思わせる奇声で、多人数でやるとけっこう耳障り。

(元南部軍人によるレベル・イェールの再現)

レベルイェールと聞いてこの音声が頭に再生されるようになれば立派な南部愛好家バーボン飲みです。とは言え、現在のラベルは南部色は完全に払拭され、ただ名前にその名残があるのみ。それ故にレベルイェール本来の意味が忘れ去られ、「反逆の叫び」という一般化がなされてしまったのも仕方のないことかも知れません。ある時にレベルイェールを所有していた会社が全国展開を決定したことで、そういう方針になったのです(RYの歴史は別の機会に紹介します)。ロカビリー好きとしては残念ですが、時代の流れもありますし、販売戦略として南部色の撤廃は間違ってはいないでしょう。ただし、ロックに話を限るのではなく過去に戦争の歴史があったことや、オールド・サウスへの郷愁や南部人の心意気を喚起するラベルだったことは忘れたくないところです。ちなみに日本では「レベルイエール」とか、私も「レベルイェール」と綴ってますが、実際の英語発音に合わせるなら「レベルイェル」とした方が近いです。

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また、このバーボンはローリング・ストーンズのキース・リチャーズが愛飲したバーボンとして知られています。確かにキースがレベルイェールを手に持つ写真が残されているものの、どう考えても飲んだ量からしたらジャックダニエルズのほうが多い気がしません? キースはジャックダニエルズとレベルイェールのどちらが好みだったんでしょう? キースに詳しい方がいたら教えて頂きたいです。
そして更にはキース経由らしいですが、レベルイェールはビリー・アイドルのソング・タイトルにもなっています。ビリー本人が語るところによると、彼は或るイベントに出席した時、ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、ロン・ウッドらのローリングストーンズの面々が、レベルイェールと云うバーボンウィスキーをボトルからがぶ飲みしてるのを見て、よく知らないブランドだったけれど、その名前が妙に気に入って「Rebel Yell」の曲を書くことにしたのだとか。


そんな訳でとにかくロックな酒として語られるバーボンですが、どちらかというとソフトな傾向とされる小麦バーボンであり、味わい的には荒々しい闘鶏がモチーフのファイティングコックでもラッパ飲みしてくれたほうがよっぽどロックじゃないかなという気がします(笑)。まあ、完全に個人的偏見ですけれど…。

さて、今回レヴューするレベルイェール・スモールバッチ・リザーヴは、2008年から導入されていた「レベル・リザーヴ」の後継として、2015年にパッケージと名前をリニューアルして発売された製品です。
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近年、ラクスコはレベルイェールを大きなブランドへ成長させる努力をしているように見えます。それは大幅なラインナップの拡大や、僅か数年でパッケージをマイナーチェンジする施策に見て取れました。製品の種類が増えるのは構わないのですが、ラベルのデザインをコロコロ変えるのは個人的には好ましいと感じません。何か腰の座ってないブランドとの印象を持ってしまいます。このスモールバッチ・リザーヴにしても、現在終売なのかどうかもよく判らないのです。2019年の4月にも新デザインとなり、それに合わせて100プルーフのヴァージョンが登場しました。もしかすると、そちらがスモールバッチ・リザーヴの後継なのかも知れませんね。
全てではないですが、一応ざっくりここ数年のレベルイェールを紹介しておくと、先ずエントリークラスのスタンダードの他、ハイプルーフ版となるスモールバッチ・リザーヴ、スモールバッチ・ライ(MGPソース)、ハニーとチェリーのフレイヴァーの物、バーボンとライのブレンドであるアメリカンウィスキー、10年熟成のシングルバレル等がありました。下画像の上段が旧ラベル、下段がリニューアル後のラベルです(シングルバレルは別枠)。
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話をスモールバッチ・リザーヴに戻しましょう。長い間NDPだったラクスコは、2018年4月に自社のラックス・ロウ蒸留所を完成させましたが、それまではヘヴンヒルから原酒を調達していた(販売数の確保のため今でも調達してると思われます)ので、この製品の中身はヘヴンヒルのバーンハイム蒸留所で造られた小麦レシピのバーボンです。つまり、元ネタとしてはヘヴンヒルのオールドフィッツジェラルドやラーセニーと同じな訳です。マッシュビルは68%コーン/20%ウィート/12%モルテッドバーリー、樽の焦がし具合は#3チャーとされ、熟成年数はNASですがスタンダードなレベルイェールの4年よりも少し熟成年数が長いのではないかと考えられています。では、そろそろレベルイェール・スモールバッチ・リザーヴを注ぐとしましょう。

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REBEL YELL Small Batch Reserve 90.6 Proof
推定2017年前後ボトリング。グレイン、ウッド、少ないキャラメル、チェリー、ペッパー、微かなシナモン。かなりサイレントなアロマ。香りから想像するよりは濃い味。水っぽい口当たり。余韻はあっさり短く、地味なスパイス感と辛み。パレートがハイライト。
Rating:80/100

Thought:典型的なバーボンの香りはしますが、正直言って物足りない味わいでした。スタンダードより2年程度熟成年数が長いのではないかと予想していたのですが、どうかなあ、もっと若そうな…。もしくは、かなり質の低い樽から引き出されたと言うか、適切な熟成がなされていない小麦バーボンのような気がします。これを飲んだ個人的感想としては、若い小麦バーボンを飲むならコーン比率の高い普通のバーボンを飲むほうが甘さを感じられて美味しいと思ってしまいました。

Value:レベルイェール・スモールバッチ・リザーヴは、スモールバッチを名乗るとは言え、アメリカでの小売価格は25ドル前後だったので、所謂「ボトムシェルフ」バーボンです。そう割りきれば味のマイナス点は気にならないでしょう。つまり「スモールバッチ」と言う言葉から過度な期待をしなければ十分美味しいのです。しかし、日本での販売価格は概ね3000円代。それなら個人的には、同じ小麦バーボン縛りで言えばメーカーズマークの方が余韻に宜しくない辛さを感じないのでオススメです。よっぽどレベルイェールの名前やロックなイメージが気に入っているのならば話は別ですが…。

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今宵の映画は1961年製作の『ハスラー』。敢えてのモノクロ映像と全編ジャズの流れる渋い映画です。主演のポール・ニューマンがあまりにもカッコいいんですよね。あらすじや映画史的な位置付け等は映画サイトを参照して頂くとして…。個人的にも「生涯ベスト10ムーヴィー」に入るかも知れません。この映画、バーボン飲みには特別な映画なのです。それは劇中にJTSブラウンが登場するから。ポール・ニューマン演じる主人公のファースト・エディが「ノーアイス、ノーグラス」と言って注文する姿に憧れた人も多いのでは? 少なくとも私は思いっきり影響されました(笑)。いまだにバーボンはノーアイス、もちろんノーウォーター、そしてノーグラス、つまりラッパ飲みで飲むのが一番美味しいと思ってます。

相手のジャッキー・グリーソン演じるミネソタ・ファッツは「ホワイト・タヴァーン・ウィスキー」をグラスとアイスで頼んでいますね。当時実際にホワイト・タヴァーンなるブランドがあったかどうか調べても分からなかったのですが、ヘヴンヒルが商標を持っていたとの情報や、画像検索ではブレンデッドの物とオーウェンズボロの記載のある安そうなウィスキーが見つかりました。原作の小説では、ファッツはホワイト・ホース・ウィスキーを注文しているそうです。もしかすると映画で使用する許可がおりなかったのかも知れません。
ところで、この40時間にも及ぶ名勝負の場面、ファッツの注文はプラシーボ効果を狙ったのではないかとの解釈があります。ホワイト・タヴァーン・ウィスキーの「ホワイト」は、日本語で言うところの「空白」のような裏の意味で、実際にはノンアルコールだった、という訳です。いずれにせよ勝負に徹し自制心を失わないファッツのその戦略とインテリジェンスは、ある意味それこそ成功者の哲学ではあるでしょう。けれどもJTSブラウンを調子にのってラッパ飲みし、結局は敗れるエディにこそバーボン飲みは敗残者の美しさを見てしまいますよね。バーボンを飲まずに勝つくらいなら、バーボンを飲んで負けるのを選ぶのがバーボン飲みの正しい在り方なんだ、と浪漫を投影して。…私だけですか?(笑)。

さて、肝心の中身について触れておきましょう。映画当時のJTSブラウンはローレンスバーグで蒸留されていました。それに頭に「Old」の付いたオールドJTSブラウンというブランド名だったと思われます。古いボトルをネットで調べてみると、50年代とか60年代とされる物にはローレンスバーグの記載があり、おそらく中身のジュースは現在で言うところのワイルドターキー蒸留所で造られたものと推測されます。アメリカの或るバーボン研究家はそう断言していました。当時ボブ・グールドが所有していたアンダーソン・カウンティ蒸留所(以前のリピー・ブラザーズ蒸留所、後のブールヴァード蒸留所)は、70年代初頭にオースティン・ニコルズに売却されるまでJTSブラウン蒸留所として運営されていたからです。そうでなければ、オールドプレンティス蒸留所(現フォアローゼズ蒸留所)ではないでしょうか? オールドプレンティス蒸留所にブラウン家は少なからず関与してるので。まあ、少なくとも私の飲んだもの、今回のレビュー対象はエディが飲んだものとはまるっきり別物なのは間違いありません。でもラベルデザインはあまり変わっておらず、古めかしくカッコいいので雰囲気は楽しめました。
現在はヘヴンヒルが製造しており、アメリカではゴールドラベルのボトルドインボンドが人気みたいです。これは日本では一般流通していません。と言うかJTSブラウンというブランド自体、最近では輸入されていないようです。そもそもが現在アメリカ国内でも地域限定のブランドだと思います。日本に輸入され始めたのは、おそらく80年代中頃からではないかと思われますが、当時のバーボン本にJTSブラウンが輸出されるのは日本が初めてなんて書いてありました。
ちなみにJTSと言うのはジョン・トンプソン・ストリートの略です。ラベルの写真の真ん中の人物が一般的に「J.T.S. Brown Jr.」と呼ばれ(※ややこしいことに彼の父親と息子の一人も同名のため「Sr.」と表記されることもある)、オールドフォレスターを造っているブラウン=フォーマン社の創業者ジョージ・ガーヴィン・ブラウンの異母兄弟だと思われます。また日本語でJTSブラウンを検索した時に見つかる紹介文に、JTSをジョンとトンプソンとストリートの三人の略とする説明をよく見かけますが、一人の人物の名前なので気を付けたいところ。写真の他の二人は、左の人物がJTSの息子の一人クリール、右がその息子クリールJr.です。
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JTSブラウンの歴史については日本ではあまり語られることがないので、禁酒法時代以前のウィスキーに詳しい方の調査を基に、ここでざっくり紹介しておきましょう。

「JTSブラウンの物語」はケンタッキーの初期入植者の一人ウィリアム・ブラウンから始まります。1792年、彼は若き妻ハンナ・ストリートと共にヴァージニアからコモンウェルス・オブ・ケンタッキーの中央部の農村地域、おそらく後にハート郡マンフォードヴィルとなる付近に定住しました。ウィリアムはマーチャント兼プランターだったそうです。彼らには8人の子供がいましたが、そのうちの一人としてジョン・トンプソン・ストリート・ブラウン・Sr.(1793-1875年)は生まれました。JTSシニアはマンフォードヴィルで最初の郵便局長であり同地の長老派教会の憲章会員でした。多分、町の顔役のような立場だったのではと想像されます。彼はエライジャとアーミン・クリールの娘エリザベスと結婚し、クリール家の北にレンガ造りの家を1828年に建てました。ジョン・トンプソン・ストリート・ブラウン・Jr.(これ以降この人物をJTSブラウンとします)は1829年にそこで3人目の子供として生まれます。彼の教育環境についての情報は乏しいですが、父についてビジネスを学んだと思われます。

商取引の経験を積んだ26歳の時、JTSはケンタッキーの田舎から、のちの人生の舞台となるルイヴィルへと移り、ジョセフ・アレンという名の学生時代の親友と酒の卸売ビジネスを始めました。また同じ頃、著名な地元のタバコ・ディーラーの娘であるエミリー・グラハムという16歳の少女と出会い恋に落ち、二人は1856年に結婚、今後の13年間で8人の子供(6人の男の子と2人の女の子)を持つことになります。
1857年には、アレンはパートナーシップから撤退し、JTSは会社の全権を引き継ぎました。時代柄、JTSはコンフィデレート・アーミーの将校でもあったようです。彼の会社は南北戦争の間に「喉の渇いた」軍隊に酒を提供することで大いに成長し、1864年までにはかなりの財産を築いたと言います。その間、1863年にはJTSの17歳下の異母兄弟ジョージ・ガーヴィン・ブラウン(1846-1917)は学校に通うためルイヴィルに来ていて会社に招待されました。同社は金融機関の支援を得て市内の中心地ウィスキー・ロウと呼ばれるメイン・ストリートに移転し、ジョージはパートナーになることを求められ、1970年頃、会社の名前は「J.T.S. Brown and Bro.」となりました。
戦争が終わった後、1865年から1874年にかけて、ブラウン兄弟はJMアサートン・カンパニー(アサートンおよびメイフィールド蒸留所)、ルイヴィルのメルウッド蒸留所、マリオン郡セントメアリーのJBマッティングリー蒸留所などから高品質のストレート・バーボンを購入し、独自にブレンドしてシドロック・バーボン、アサートン・バーボン、メルウッド・バーボン等のブランドで販売していたそうです。1874年頃、いまだに理由は不明確ながら、JTSとジョージのパートナーシップは終わりを告げました。一説には、ジョージは自分の好みであるより高品質でより高価格のウィスキーの販売を目指し、JTSはより安価なウィスキーでより幅広い顧客層を生み出すことに関心を示すという、販売するウイスキーの品質に関して意見の相違があったのではないかと伝えられています。ともかくジョージは会社を離れ、後にブラウン=フォーマン社となる自らの会社を組織し、今に至るバーボン王朝を築くことになるのですが、それはまた別の話。

そうこうするうち、JTSの少年たちが成長するにつれて父と共に会社で働き始めました。初めは年長のグレアム(1857 - 1946)、続いてデイヴィス(1861 - 1932)とJTSジュニア(1869 - ?)が入社。そこで会社名は「J.T.S. Brown & Sons」に変更されました。グレアムは後に会社を去りますが、代わりに弟のクリール(1864 - 1935)とヒュエット(1870 - 1952)が加わります。やがて1890年代後半には、彼らは倉庫とボトリング施設を近くの105メイン・ストリートに移しました。ビジネスは活況を呈し、需要に追いつくための安定した供給を図る措置として、1894年(1904年という説も)にアンダーソン郡ローレンスバーグ近くソルト・リヴァーに面したマクブレヤーの大きな古い蒸留所を購入。このプラントではJTSの息子たちが主導して、「JTSブラウン」、「オールド・レバノン・クラブ」、「ヴァイン・スプリング・モルト」、「オールド・プレンティス」等のブランドを生産しました。これらの中で主力ブランドはオールド・プレンティスです。このラベルは施設の以前の所有者によって作成されたと推察され、煽動的な社説で知られた新聞編集者であり詩人でもあったジョージ・デニソン・プレンティス(1802-1870)にちなんで名付けられました。トレードマークとなる絵柄のベルもリバティ船「SS George D. Prentice」のシップス・ベルがモチーフなのではないかと思われます。また「JTSブラウン」や「オールド・プレンティス」に見られる1855の数字は、この蒸留所(RD No.8)の創設された年だと思われ、バーボン業界にありがちな起源のサバ読みでしょう。それはともかく、オールド・プレンティスのその象徴的なトレードマークの鐘は人気を博し、ベルのロゴをプリントしたグラスなど特別な顧客へのプレゼントアイテムがありました。
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1904年、JTSの妻エミリー・ブラウンが65歳で死去し、ルイヴィルの往年の著名人や富裕層の多くも葬られている歴史的なケイヴ・ヒル・セメテリーに埋葬されました。それから一年足らずのうち、JTSも酒屋での仕事からの帰宅途中ルイヴィルの路面電車にぶつかり、二週間後に76歳で亡くなります。彼はエミリーの隣に埋葬されました。
両親の死後もブラウンの子息たちは非常に成功した会社の名前は変えずに経営を続け、デイヴィスは社長、クリールが副社長、JTSジュニアは秘書、ヒュエットが会計に就任しました。父親の死の年、彼らは旧来の家屋と隣接した107-109ウェスト・メインに新しい本社を開きます。そしてまた1910年には、マクブレヤーに建つ元の蒸留施設からボンズ・ミル・ロードを渡った向こう側に新しい蒸留所を建設しました。この蒸留所こそ後にシーグラムが購入し、現在フォアローゼズ蒸留所となっている施設です。当時全国的に人気があったミッション・リヴァイヴァル様式で建てられ、低い屋根と大きなアーチ型の窓を使用した優美な雰囲気の蒸留所は、今では国家歴史登録財に指定されています。その内部は2つの大きな処理領域を持ち、一方では発酵プロセスを、もう一方では糖化と蒸留プロセスに分けられていました。

禁酒法がやって来ると、他の多くの蒸留所と同じくブラウン一家も事業の中止を余儀なくされます。1932年には社長のデイヴィスが亡くなり、彼の未亡人であるアグネス・フィドラー・サドラー・ブラウンが事業を引き継いだようで、当時ほぼ完全に男性が支配していた業界に於いて、彼女はアメリカの歴史の中で蒸留酒製造所を経営する役割を担った最初の女性であると言われています。彼女は禁酒法解禁後すぐに共同経営者のグラッツ・ホーキンス、ウィルガス・ノーガーらとオールド・プレンティス蒸留所をリノヴェイトし、オールド・ジョー蒸留所(RD No.35とは別)として操業を再開したようです。しかし禁酒法が解禁された時、会社を復活させたのはクリール・ブラウンの息子クリールJr.でした。
クリールJr.は、ジョン・ショーンティ・ファームと倉庫「A」の一部を、ジョンの未亡人とアーリータイムズの創業者ジャック・ビームの相続人から取得し、1934~5年頃、JTSブラウン蒸留所を建設しました。L&N鉄道のバーズタウン・スプリングフィールド支店に面したバーズタウンの北東約4マイルの場所です。そこには36インチのビア・スティルと4つの発酵槽が設置してあり、1935年のクリスマスの日に最初のウイスキーを作りました。この蒸留所は自らケンタッキー州で最も小さい蒸留所と称し、「Old J.T.S. Brown」を生産していたとみられます。第二次世界大戦中は例によって工業用アルコールを産出していたようですが、この蒸留所は精留塔を有していなかったので、それらは約140プルーフで蒸留され、190プルーフに再蒸留するため他の場所に移送されました。理由は分かりませんが、クリールJr.は1955年前後に最終的には事業を完全に売却してしまいます。売却後、蒸留所の購入者は誰も工場をオペレートせず、ウィスキーの生産は1950年が最後だったそうです。ブランドをシェンリーに売却した後に蒸留所は解体され、現在では倉庫もそこには残っていません。

ブランドは幾人かの所有者の変遷を経てアルヴィンとボブ・グールドのもとへ行きました。彼らはブランドをアンダーソン郡へと戻し、タイロンにあるリピーのプラント(RD No.27)をJTSブラウン蒸留所として操業しました。 1972年7月1日に「ワイルドターキー作戦」のためにオースティン・ニコルスにプラントを売るまで、グールドはブランドを使い続けたようです。ブランドは1972年から1991年の間、ヘヴンヒルがユナイテッド・ディスティラーズから他のブランドと一緒に購入するまで休止状態にあった、とサム・K・セシルの本に書いてありますが、日本には80年代後半には確実に輸入されていました。もしかすると上の情報はアメリカ国内のみの話かも知れません。ともかくも、歴史あるケンタッキー・クランのブラウン家のブランドは、こうして今日まで生き残ってきたのでした。
では、そろそろ簡単な感想を。

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J.T.S. BROWN 6 Year 80 Proof
推定2004年ボトリング。飛び抜けてはいないがバーボンとして普通に美味しい。ただし、6年熟成にしては熟成感がやや足りず物足りない。いや、足りないのは熟成感というよりプルーフなのかも。
Rating:80/100

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J.T.S. BROWN 10 Year 86 Proof
1995年ボトリング。今では貴重な火災前のジュースだし、せっかくの10年熟成なのに薄すぎる。いや、もちろん旨いとは言えるのだが、そこまで風味の強い原酒とは思えない。出来たら最低でも90プルーフで飲みたかった。
Rating:82/100

Thought:映画(または原作の小説は59年発表)に登場するくらいの銘柄ですから、当時は人気があったバーボンだったのではないかと想像します。と言うより「J.T.S. Brown」と云う名前には、ビームズやサミュエルズ、リピーズやワセンズのような、バーボン業界の欲しがる伝統と歴史の重みがあるでしょう。しかし、ヘヴンヒルにブランド権が移行してからはボトムシェルフ・バーボンの地位に甘んじているように見えます。トゥルー・ブルーカラー・バーボンなんて言ってる人もいました。ネームバリューのあるブランドなのに勿体ないですよね。いや、「JTSブラウン物語」で書いたように、そもそもJTSは安くてそこそこ美味しいウィスキーを売りたい大衆志向だった、というのが本当であれば、正にヘヴンヒルの安価なリリースはJTSの意を汲んだものと言えなくもない。
私の飲んだ6年熟成80プルーフの方は2004年ボトリングと思われ、熟成年数をマイナスすると、旧ヘヴンヒル蒸留所が焼失しバーンハイム蒸留所を購入する前年に当たるので、蒸留はブラウン=フォーマンかジムビームなのかも知れません。どちらにしろエントリーレヴェルのちょい上クラスのバーボンには違いないでしょう。これは悪い意味ではなく、そういう立ち位置の製品だと言うことです。それよりも取り上げたいのは10年熟成86プルーフの方です。こちらは90プルーフを下回るロウ・プルーファーとは言え、最低10年熟成というスペックからしたら期待値は高まります。なのに同時期のエヴァンウィリアムス緑ラベル7年熟成86プルーフに風味の強さで負けているのは驚きでした。これはボトルコンディションの差である可能性(*)も高いですが、バッチングに使われているバレルのクオリティに差がある気もしています。エヴァンウィリアムスはヘヴンヒルの看板製品ですから、エヴァンとJTSの相対的地位を考慮し、更に当時の長熟バレルの在庫状況(**)も考え合わせると、エヴァンには年数表記より高齢の原酒、例えば12年物とかを混ぜていてもおかしくはないのでは?と。まあ、憶測ですが…。

Value:おそらく現在の日本でJTSブラウンを店頭で見かけることは少ないと思われます。けれど近年までは流通していたので、オークション等の二次流通市場ではそれほどレアではありません。問題は価格なのですが、上述したローレンスバーグ産のJTSブラウンなら10万を越えても仕方がないと思います。ですが間違っても近年流通品に1万は出さないほうがいいというのが私の意見です。ヘヴンヒル産の物はあくまでキャッツ&ドッグス・ブランドの一つであってプレミアム製品ではないですからね。ただし、80~90年代の物に関してはそこそこ美味しい可能性があるので、MSRPの2~3倍までなら試す価値もあるでしょう。


*私の飲んだエヴァンウィリアムス緑ラベルの95年ボトリングは、腐る寸前の果実を思わせるような、私の好みからすると少々酸化が進み過ぎたと思われる風味でした。

**おそらく当時は火災前でもあり、まだまだ長期熟成古酒が豊富にストックされていたのではないかと推察されます。

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今回は似た者同士をいっぺんにレビューしようと思います。過去に投稿した「安酒を敬いたまえ」というシリーズに編入してもよい2本ですので、旨い安バーボンを探してる方は参考になさって下さい。一つはヘヴンヒル蒸留所の看板製品となっているエヴァンウィリアムスのブラックラベル。もう一つはラクスコが販売するエズラブルックスのブラックラベルです。ともに1500〜2000円前後の販売価格であり、ラベルの雰囲気が似ているだけでなく、ジュースのスペックが似ています。ラクスコは2018年4月に自社のラックス・ロウ蒸留所がケンタッキー州バーズタウンに完成し、稼働し始めましたが、それまではヘヴンヒル蒸留所から原酒を調達していたと見られます。ラクスコの自社蒸留原酒が含まれる物がリリースされるまでは数年かかるでしょう。裏事情はよく分かりませんが、原酒の調達方法がバルク買いなのであれば、この二者は同じ蒸留施設で生産された同じマッシュビルのバーボンと考えるのが妥当だと思います。違いは熟成年数と熟成庫内の場所と度数とボトリング施設といったところかと。

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目視で比べると、エヴァンウィリアムスの方が度数が低い(=濃度が薄い)のに、若干濃い色をしてるように見える。

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エヴァンのブラックラベルは、世界でジムビームに次ぐセールスを記録しているバーボンと言われます。以前は7年熟成、もっと前は8年熟成でしたが、近年の増加する需要に対応するためNASとなりました。現在では5〜7年熟成とされています。

2016年ボトリング。薄いヴァニラ香、穀物臭、麦茶、薄い薄いチェリー、スパイス。余韻にややケミカルなノートと汗っぽさ。甘味と複雑さが足りず、フルーツ感もあまりない。強いて言うならフルーティな麦茶とは言えるし、口の中にとどめておけばスパイシーさと苦味を感じられるが、どうもあっさりして物足りない。昔のエヴァンはもっと芳醇な香りだったのだが…。
Rating:80/100

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エズラブルックス、及びオールドエズラのシリーズは2016年にリニューアルされ、画像の物は長らく親しまれた旧デザインとなります。熟成年数の表記はありませんが、おそらく4年もしくは長くて5年程度ではないかと思います。

2011年ボトリング。ブラウンシュガー、香ばしい木材、コーンチップス、ブドウ。口当たりがこちらの方がやや滑らか。余韻はうっすらトフィと麦茶。どうも熟成の足りなさが漂う。90プルーフにしては風味が物足りず、すぐ上のクラスのバーボンと比べて香りのボリュームが小さい。端正に整った味わいとも言えるが、個性がなくあっさりした味わいとも言える。
Rating:79.5/100

Thought:正直言って、どちらも期待外れの味わいと思いました。特にテイスティング・グラスで飲むと全然美味しくなく感じます。ラッパ飲みかショットグラスならまあまあです。どうしても上位クラスと比較すると風味の弱さが目立ちますが、あくまで安さが魅力のバーボンですので…。肯定的に言えば、普通に美味しいと言いますか、この程度の値段で現代バーボンのスタンダードな旨さをよく体現しているなとは思います。ちなみにライバルである他のボトムシェルフ・バーボンと比べて言うと、これらが1500円である場合、ジムビームホワイトが1300円前後であればこの二者を買いますが、エンシェントエイジとベンチマークが1000円であればそちらを買うのが私の考え(好み/金銭感覚)です。

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「安酒を敬いたまえ」シリーズ第五弾、今回はフォアローゼズ蒸留所編です。

Four Roses Distillery◆フォアローゼス蒸留所
フォアローゼズのマッシュビルに関しては過去投稿のFRシングルバレルにて紹介してるのでこちらをご参照下さい。チャーリングレベルは# 3.5 、バレルエントリープルーフは120とされています。

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1300〜1500円
イエローラベルは2つのマッシュビルと5つのイーストから造られる10種類の原酒のブレンドと言われますが、厳密には、フローラルアロマをもつQイーストで造られた原酒(OESQ, OBSQ)は、既にイエローラベルの風味プロファイルが実現している場合、どちらか一方あるいは両方とも、バッチによっては使用されないことがあるそうです。つまりイエローラベルはバッチ毎に8〜10種のブレンドの何れかな訳ですが、マスターディスティラーのお墨付きで安定した味わいになっているのでしょう。熟成年数は4〜12年で平均5年半との情報がありました。
さて、2017年4月からイエローラベルは、イエローというより薄茶に近い色のラベルになってしまい、尚且つアクセントになっていた緑色のラインもブラウンに変更されました。個人的にはこのカラーリングが好みではなく、見た目で買うことを敬遠していたのですが、当企画のため仕方なく購入しました。
ところがです、これめっちゃくちゃ旨いですね。もしかすると90年代や2000年代よりレベル上がってませんか? まあバッチ違いの個体差なのかも知れませんが、私がこれまで飲んできたイエローラベルに較べて、ブラックラベルのアロマに近づいたと思いました。また、最も甘く感じたイエローラベルでもあります。しかも開封直後から旨い。そういえば色も濃い気がする。まさかブレンドされてる原酒の熟成年数が少し上がったのでしょうか? マスターディスティラーの交替だけではちょっと説明できないほど美味しくなってるように思います(*)。余韻の洋梨感やフローラルノートなどは従来のイエローラベルを凌駕しているではありませんか。もっとも、流石にブラックと較べると安ウィスキーらしい穀物感も少なからずありますし、厚みのある芳香とも言えません。とは言えブラックとは価格が倍近く違うので、これは文句ではなく、財布と相談したうえ好みの選択をすればよいだけ。お買得の一本です。
Rating:83/100

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参考までに旧ボトルのイエローラベルにも言及しておきます。現行と同じボトル形状でラベルが黄色く、現マスターディスティラーのブレント・エリオット(2015年から)のサインがない物は、比較的短命で2014〜2017年流通のようです。私はこの時からボトルデザインが好みでなく、購入を見送っていましたので、実は飲んだことがありません。もしかしたらキリンやジム・ラトリッジの尽力でこの頃からレベルが上がっていたのかも知れませんね。そのうち探して飲んでみようと思います。
そしてその前が画像左の物で、上記のリニューアル時のキリンのインフォメーションによると、12年ぶりのリニューアルと書かれていたので、計算上2002〜2014年流通の物となります。これは80点でした。
更にその前のラベルの物は画像右のやつで、今の目から見ると華やかさに欠ける、いい意味でひなびた印象のデザインが私の好みです。おそらく90年代半ばから2000年代初頭流通の物になるでしょうか。こちらは過去投稿があります。これも同じく80点。つまり私の中ではイエローラベルは常に80点の安定したエントリークラスバーボンだったのです。それだけに新ラベルの試飲に驚いたのでした。


*もしくは勘繰ってみると、マスターディスティラーの好みが反映されている可能性もあるかも知れません。前任のジム・ラトリッジはドライな傾向を好み、現任のブレント・エリオットはスイートな傾向を好む、という具合に。まあ、憶測ですが。

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Four Roses Yellow Label 80 Proof
昔のフォアローゼズ・イエローラベル。多分90年代後期流通の物かと思います。所謂オールドボトルとして購入したので、匂いはカビっぽさが少々しますけど、口の中では気になりません。スパイシー、ドライな感じで現行の物より甘味が少ない印象を受けました。なにより自分にとってはこのラベルこそフォアローゼスって感じがします。
Rating:80/100

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