
ノアーズ・ミルはケンタッキー州バーズタウンのウィレット蒸溜所(KBD)で製造されているスモールバッチ・ブティック・バーボン・コレクションの四つのうちの一つです。その他の三つはローワンズ・クリーク、ピュア・ケンタッキーXO、ケンタッキー・ヴィンテージとなっています。価格から言うとノアーズ・ミルはこの中で最も上位の位置付け。コレクションの成立は90年代半ば(一説には94年)とされます。当時の業界ではプレミアムなバーボンが胎動し始め、ジムビームもスモールバッチ・コレクションを開始するなど、そのコンセプトは軌を一にしていました。

(画像提供K氏)
このバーボンのブランドの名前は、シンプルに地元のグリスト・ミルに由来するとか、蒸溜所の敷地内を流れる川に嘗て在った、ノアなる人物が所有もしくは彼にちなんでそう呼ばれた水車小屋に由来すると言われていますが、詳しくは分かりません。絵を見る限り、開拓時代にまで遡りそうな古めかしいミルですね。スモールバッチ・ブティック・バーボン・コレクションのうちノアーズ・ミルとローワンズ・クリークは、手描き風のラベルの雰囲気やワイン・タイプのボトルといった共通点から、姉妹品のような扱いをされていました。個人的にはオールド・タイミーな雰囲気のラベルや中身が見え難い色の付いたガラスは好きなデザインなのですが、昨今のアメリカン・ウィスキーの隆盛を経た現在のアメリカのウィスキー愛好家の中には古くさいラベルだからアップデートが必要との意見もあるようです。全てのノアーズ・ミルは114.3プルーフでのボトリングとなっています。スモールバッチ製品なのでシングルバレルではないのですが、小数点まで使ったボトリング・プルーフはハンドメイド感の演出なのでしょうか? まあ、それは措いて、このノアーズ・ミル、初登場から今に至るまで外観はそれほど大きく変化しませんでしたが、中身はかなり変化しました。ここからはその変遷を辿ってみたいと思います。但し、ノアーズ・ミルに限らず、KBDことケンタッキー・バーボン・ディスティラーズがリリースしていたソースド・バーボンの中身は明確には判りません。周知のように、ウィレット蒸溜所は2012年から自家蒸溜を再開しましたが、それまではKBDとして社長のエヴァン・クルスヴィーンは他の蒸溜所から優れたウィスキーを調達して自社倉庫に貯蔵し、それらを自社ブランドとしてボトリングするか、または蒸溜所を持たない業者向けにバレルの選定からバッチングとボトリングまでのサーヴィスを提供していました。従ってノアーズ・ミルも他の製品も、発売からある時点までは実際には別の生産者によって蒸溜され、KBDによってブレンド及びボトリングされたものでした。彼らは自らの製品に就いて明瞭に語ることは殆どなく、どこで蒸溜されたウィスキーなのかは推測の域を出ません。軈て、自社の蒸溜原酒が熟成するにつれ、それらはボトリングされるようになり、2020年頃には殆ど全ての製品がバーズタウンにある自社製に切り替わっていると見られています。ここら辺の近年のノアーズ・ミルもバーボン愛好家からバッチによって味わいにバラつきがあると指摘され、もしかすると生産年によってマッシュビルを変更している可能性があるし、熟成年数は正式には公開されていないので他ブランドとどういった造り分けをしているのかイマイチ解かり難いです。これらを念頭に置いて見て下さい。

発売されてから暫くのノアーズ・ミルには15年熟成の表記がありました(ローワンズ・クリークは12年)。熟成年数はメイン・ラベルの上に斜めに貼られた細いラベルに余り目立たない感じで記載されていました。これらはボトルの横に貼られたバッチ・ラベルに、蒸溜年とボトリング年が手書きで記されています。但し、初期の物は蒸溜年のみが記されていたようです。「C-30-79」や「H-17-84」のような感じです。これは一説には、バッチングに使われたバレルの中で最も古い物の年数と解釈されています。おそらく90年代半ばから後半に掛けてはそういう仕様だと思います。私は実物を看たことがないですが、おそらく初期ノアーズ・ミルは瓶底に生産年の刻印がないタイプのボトルなのでしょう。だからこそ、ボトリング年を発売年とほぼ等しいと見做した場合に、この生産年が記載されていないことが、発売年の明確化を阻む要因となっているのかも知れません。2000年代に入ると、上の画像のような蒸溜年とボトリング年とバッチ番号が書かれる仕様となったと思われます。その後は或る時から「13-71」のようにボトリングした年とバッチ・ナンバーのみの単純な仕様になりました。
ノアーズ・ミルの初期のバッチの多くは、15年以上熟成された古いバレルを使用していたと言われています。ネット上で見かけた最も古いバッチは「C-7-74」でした。74年に蒸溜でノアーズ・ミルの初発売が90年代半ばとされているので、仮に94〜96年だとすると、中身の原酒は15年を遥かに上回る熟成年数になります。ボトリングが「6-21-01」と記載された2001年ボトリングの「01-42」バッチでも、蒸溜は「3-22-83」とあり、中身に使われたバーボンは最低でも18年熟成となるでしょう。おそらく発売当初は豊富にあった長期熟成バレルはバーボン需要の増加に伴って少なくなり、ノアーズ・ミルとローワンズ・クリークの両ボトルともエイジ・ステイトメントを失いました。細いラベルにあった文言が「aged in wooden barrels for Fifteen years」から「aged in wooden barrels until fully Mature(完全に成熟するまで熟成)」という表記に変わったのです。

切り替わりの正確な時期が特定できないのですが、2006年頃からではないかとの憶測があります。しかし、2007年バッチの15年物があるとの証言もありました。なので2007年途中か2008年あたりから切替わっているのかも知れません。そして、NASとなってからは若いバレルも混和するようになり、4〜20年熟成のバレルをブレンドしているとされています(2年から20年という説もあった)。2013年後半頃には、これまたローワンズ・クリークとノアーズ・ミルともに、ワックス・トップだったものがフォイル・トップへと変更されました。バッチナンバーが14のワックストップがあったという情報を見かけたので、2014年から15年に掛けて段階的にフォイルトップへと変わったのかも知れません。これらのワックス・トップとフォイル・トップにはテイスティング・プロファイルに違いがないと考える人もいれば、あると信じる人もいました。あると信じる人達はより若くなったと感じたようです。まあ、ワックスかフォイルの違い以前に、ノアーズ・ミルにはバッチ間の差もかなりあると言われています。そして、ウィレットの製品は現在では100%自家蒸溜物に移行したと考えられています。しかし、一体いつノアーズ・ミルが自身の蒸溜物に切り替わったかはよく判りません。某バーボン掲示板に「今は全てウィレット製」と蒸溜所の人に聞いたという2019年11月の時点での書込みはありました。
偖て、では自家蒸溜原酒に切替わる前のノアーズ・ミルの中身は何なのか? これから幾つかの推測を紹介します。諸説あるうち、KBDのバーボン全般に就いて昔から最も言われていたのは、すぐお隣にあるヘヴンヒルから余剰在庫だったバルク・ウィスキーを購入し、それをボトリングしているだけ、と云うものです。嘗て蒸溜所が余剰バレルを売りに出す際は、それらを20個、50個、100個、200個といった単位で纏めて出品し、ロット単位で入札を受け付けていたため、購入者であるNDP(非蒸溜業者)は優良品と不良品が混ぜ合わせになったバレルを購入することになり、それがためにNDPのリリースするバーボンはバッチ毎の味のクオリティに差があるとまことしやかに囁かれたりしていました。しかし、KBDは長年に渡ってほぼ全ての主要な蒸溜所(メーカーズマーク以外とされる)のウィスキーを入手しており、彼らは個性的なフレイヴァー・プロファイルを得るために異なる蒸溜所のバレルを混ぜ合わせていたとも言われています。何でも2つかそれ以上(3つか4つ)の蒸溜所のウィスキーをマリッジしていた、と。KBDの社長エヴァン・クルスヴィーンは手持ちのウィスキーから素晴らしい風味を生み出す達人であり、様々な業者から入手可能になる度にバレルを調達していた結果、彼とブレンディング・チームは少量のウィスキーをブレンドして各ブランドに合う風味を造り出すことに熟練するようになった、と。
また、上に述べた4年から20年のブレンドとされるNASのノアーズ・ミルには少しウィーデッド・バーボンが含まれていたと云う噂があります。と言うか、ライ麦比率の高い物と低い物、ウィーテッド・バーボンなど、様々なマッシュビルをブレンドしているという憶測がよく見られます。これらは従来の物と較べると、やや若い味がするとか、若いアルコールのキツさがあるとの指摘が見られ、使用原酒の構成は主に若い熟成のバーボンに少し長熟バーボンが混じっている配分なのではないかと考えられています。そしてNASのノアーズ・ミルは次第に4〜15年のブレンドになったという話も何処かで見かけました。ブレンドの割合はともかく、それらに使用されたと目されるウィーテッド・バーボンはユナイテッド・ディスティラーズ(UD)から購入したのではないかと推測されています。同社が結成された後、彼らは1987年から1992年に掛けて、当時の2大ブランドだったジャック・ダニエルズやジムビームに対抗するブランドとして、元々は南部限定だったレベル・イェールを世界展開する戦略を推進しました。ユナイテッド・ディスティラーズはウィーテッド・バーボンの生産量を4倍に増やし、新しい蒸溜所の建設を計画し、それが後のニュー・バーンハイム蒸溜所となりました。加えて、1991年にはオーウェンズボロにあるグレンモア蒸溜所を1億6100万ドルで買収しています(グレンモアはメドリー蒸溜所を数年前に買収していた)。これによってユナイテッド・ディスティラーズの海外市場に向けた戦略のためのアメリカン・ウィスキーの在庫は充実しました。1992年には傘下のオールド・フィッツジェラルド蒸溜所での蒸溜を停止し、生産を新設されたバーンハイム蒸溜所に移管します。そこでもウィーテッド・バーボンは生産されたでしょう。しかし、急に方向転換したUDは1990年代を通じてアメリカで所有する施設やブランドや在庫を競合他社に売却しだします。彼らのウィーテッド・バーボンの在庫は膨大でした。聞くところによると、UDはウィーテッド・バーボンをシェンリー系譜のブランドだったオールド・チャーターやグレンモア系譜のブランドだったケンタッキー・タヴァーンの一部に使用したとされます。更なる余剰在庫は売りに出され、1994年当時、新興のウィスキー・ボトラーはスティッツェル=ウェラーのウィーテッド・バーボンを1バレル200ドルで購入することが出来たと言います。それらはおそらく、ジェファソンズの一部の製品や、ジュリアン3世のパピー・ヴァン・ウィンクル、バッファロー・トレースのウェラー、マーシィ・パラテラのヴェリー・オールド・セントニックなど多くのブランドの基となったと思われます。そして、後にウィレット・ファミリー・エステートのブランドで旧バーンハイム蒸溜所のクリーム・オブ・ケンタッキー・ライが長熟ライとしてリリースされ、ウィレット蒸溜所の名声を高めたのは周知のところ。こうした背景を考えると、KBDがUDからウィーテッド・バーボンをそれなりの量購入していたとしても不思議ではなく、それらをノアーズ・ミルに使っていたという憶測も強ち的外れではなさそうに感じます。と言うより、1987年以降のKBDのバーボンの主な供給源の一つがUDだった可能性も指摘されています。
それともう一つ取り上げたい事柄があります。以前投稿したローワンズ・クリーク12年のレヴューの時には敢えて書かなかったのですが、その初期の物もかなり古いバレルが使われていると考えられており、旧ウィレット蒸溜所産のオリジナルのバレルがブレンドに使われているのではないかという噂がありました。某有名バーボン掲示板に於いて常連の投稿者は、ローワンズ・クリーク12年を或る時に飲んで大変驚いたと言います。それはヘヴンヒル製品の特徴であるキャラメル、スモーク、シリアルのような風味が欠けており、もっと濃厚でフルーティーな味わいだったとのこと。そして、彼が手に入れた「スピリット・オブ・ケンタッキー」という薄い雑誌には1960年代の記事が再録されており、それは旧ウィレット蒸溜所のディスティラーだったチャールズ・トマソンが昔乍らのバーボンに就いて回想するものでした。その記事でトマソンは、伝統的なバーボンにはブーケがあって、穀物を豊富に使用したマッシュビルから来るしっかりとしたボディを持ち、フルーティーな香りを放つ味わいが不可欠だと述べ、それを「熟したリンゴ」に例えつつ他に類を見ない独特な香りだと表現していたらしい。件の投稿者が飲んだローワンズ・クリーク12年は正にそのような味であり、繊細でありながら力強く、ブランディのような後味が残ったそう。そこで投稿者は、ローワンズ・クリーク12年はラベルに記載された年数より遥かに古い1970年代に蒸溜された旧ウィレット蒸溜所の今は失われたウィスキーであると信じたい、と書き込んでいました。その真偽は扨措き、ローワンズ・クリーク12年に旧ウィレットの蒸溜物が入ってる可能性があるなら、より長い15年という熟成表記をもつノアーズ・ミルの方が旧ウィレット産の蒸溜物を使っている可能性は高くないですか? 先に例に出した70年代蒸溜表記のある初期のノアーズ・ミルであれば、旧ウィレット蒸溜所産のバレルだけ使ってたなんてこともあり得えなくはないのでは?
あ、あともう一つ触れておきたいことがありました。ノアーズ・ミルのラベルには「genuine BOURBON whiskey」と書かれています。多くのバーボンがケンタッキー州で製造され、「ストレート」として造られ、これぞ「本物」と言いたげに「ケンタッキー・ストレート・バーボン・ウィスキー(KSBW)」と名乗る中、ここには「ストレート」と「ケンタッキー」という用語がありません。とは言え、現在のウィレット蒸溜所のウェブサイトでは「ストレート・バーボン」と明記しています。しかし、この表記が一般的ではないところに着目してノアーズ・ミルの中身を推理する人もいます。「ケンタッキー」という表記がないのは、例えばインディアナ州原産のバーボンがブレンドされているからそう名乗らないのではないか、と。また「ストレート」を名乗るには、着色料や香料が不使用で少なくとも2年間は新樽で熟成させなければなりません。では如何なる理由でラベルに「ストレート」の表記がないかと言うと、KBDは調達したウィスキーを倉庫に入れ熟成させている、つまり再熟成を行っており、その際に必ずしも新樽を使うとは限らないから、との説明を見かけました。この件に関しての真偽もこれまたはっきりしませんが、ノアーズ・ミルに限らず、KBDがマーシィ・パラテラのためにボトリングした諸作にはストレート表記のない物(ジャズクラブやアウトローなど)が多く、昔から何故だろうという疑問はあったので一応書いておきました。ちなみに自家蒸溜の物はKSBWで間違いないと思います。
ここまで縷々書き連ねたことを総合して考えると、もしかしたら旧ヘヴンヒル、旧バーンハイム、新バーンハイム、ヘヴンヒル・バーンハイム、或いはウィレットだけのように単一の蒸溜所のバレルのみのバッチもあったのかも知れないし、またはヘヴンヒルをメインとして必ずその他の複数の蒸溜所のバレル、特にウィーデッド・バーボンを混ぜていたのかも知れない。まあ、何を言っても、残念ながらエヴァンが既にこの世を去ってしまった今(2025年9月24日に死去)、バッチ毎の詳細は永久に謎に包まれたままではあります。我々としては実際に飲んでみて、ヘヴンヒルぽいのかヘヴンヒルぽくないのか、小麦みを感じるのか感じないのか、そうした事を仲間と共に討論してみたりするのが謎のウィスキーに対する楽しみ方なのではないでしょうか。では、続いて新ウィレット蒸溜所の原酒が使われたノアーズ・ミルに移りましょう。
現在のウィレット蒸溜所には以下のような4つの異なるバーボン・マッシュビルがあります。
①オリジナル・マッシュビル
72%コーン/13%ライ/15%モルテッドバーリー
②ハイ・コーン・マッシュビル
79%コーン/7%ライ/14%モルテッドバーリー
③ハイ・ライ・マッシュビル
52%コーン/38%ライ/10%モルテッドバーリー
④ウィーテッド・マッシュビル
65%コーン/20%ウィート/15%モルテッドバーリー
このうちノアーズ・ミルは①のオリジナル・マッシュビルで、バレル・エントリー・プルーフは125とされています。比較のためウィレット蒸溜所のその他の日本で展開されている通常ラインナップのバーボンのマッシュビルも紹介しておきます。

◆ローワンズ・クリークはオリジナル・マッシュビルで125バレル・エントリー・プルーフ。
◆ピュア・ケンタッキーXOはオリジナル・マッシュビルのバーボンを85%にハイ・ライ・マッシュビルのバーボンを15%で、どちらも125バレル・エントリー・プルーフ。
◆ケンタッキー・ヴィンテージは125バレル・エントリー・プルーフのオリジナル・マッシュビルのバーボンを85%に107バレル・エントリー・プルーフのハイ・コーン・マッシュビルのバーボンを15%。
◆ジョニー・ドラム・プライヴェート・ストックはオリジナル・マッシュビルのバーボンを65%にハイ・ライ・マッシュビルのバーボンを35%で、どちらも125バレル・エントリー・プルーフ。
◆オールド・バーズタウンはオリジナル・マッシュビルで125バレル・エントリー・プルーフ。
◆オールド・バーズタウン・エステート・ボトルドはオリジナル・マッシュビルで125バレル・エントリー・プルーフ。
◆ウィレット・ポットスティル・リザーヴはウィーテッド・マッシュビルで115バレル・エントリー・プルーフ。
ピュア・ケンタッキーXO、ケンタッキー・ヴィンテージ、ジョニー・ドラム・プライヴェート・ストックの3つは別々のマッシュビルのバーボンをそれぞれの割合で配合し、ウィレット・ポットスティル・リザーヴは1つだけ小麦バーボンと造り分けが判り易いですが、ノアーズ・ミルとローワンズ・クリークとオールド・バーズタウンは同じマッシュビルなので、どういう造り分けか判りません。おそらく熟成年数と倉庫のロケーションの違い、またはフレイヴァー・プロファイルに基づいた選択、或いはバッチングに使用する樽の数やクオリティに差があるのかも知れませんね。ノアーズ・ミルの熟成年数に関しては、2019年頃は4~7年、2021年頃は通常は4~8年という情報を見かけました。これは自社蒸溜原酒が熟成期を迎える時期を考慮すると、納得できそうなリアルな熟成年数ではあります。で、上記のマッシュビルがウェブサイトに記載されるようになったのはここ数年(2024年後半〜25年前半あたり?)のことで、もう少し前はよく判らない状況でした。現在は上のマッシュビルで間違いないとは思うのですが、その公にされる前に噂で聞いていたマッシュビルとは異なるので、もしかすると2020年前後でレシピを変更してる可能性もあるのかなと個人的には思いました。2016〜17年あたりと2020年以降ではフレイヴァー・プロファイルに随分と差があるような気がしたのです。また、よく分からないのが他の蒸溜所産のウィスキー、つまり何処かから調達した旧来のストックと、自前の蒸溜所産の新しいウィスキーを混合していたのかどうかです。私は味わい的に混ぜてないような気がしていたのですが、海外のバーボン・レヴュワーの中には2017年以降にウィレット自社製バーボンの比率は年々劇的に増加したと言ってる方もいました。皆さんはどう思われますか? バッチ毎の味わいの違いに関する情報などと合わせて、仔細に精通している方は是非ともコメント欄より情報提供下さい。では、そろそろ注ぐ時間です。今回は自分の手持ちの15年表記のある2006年のバッチと、NASの2016年および2023年のバッチを開封しました。この3本に加え、埼玉のBar Fiveさんの協力で15年の2つのバッチ違いを提供頂く機会がありまして、お陰で15年が3種類、全体で5種類のノアーズ・ミルの飲み比べが出来ました。ファイヴさん、ありがとうございます、バーボン繋がりに乾杯!

家の3本を較べると、古い方がより色は濃い。古いノアーズ・ミルはラベルの質感と色味も少し違いがあります。個人的には古いラベルの方が好きですね、新しいものはなんかボヤケてる。

NOAH'S MILL 15 Years 114.3 Proof
BATCH QBC № 06-37
Distilled 3-25-91
Bottled 4-10-06
2006年ボトリング。濃いブラウン。糖蜜、ベーキングスパイス、オールドファンク、ハニーバターピーナッツ、サンダルウッド、レーズン。少しカビっぽく僅かに花の香り。アルコール刺激の少ないシルキーな口当り。深く甘い、ドライフルーツの味わい。余韻は思ったよりは短いものの、奥行のあるオーク香が心地良い。
Rating:88.5/100

(画像提供Bar FIVE様)
NOAH'S MILL 15 Years 114.3 Proof
BATCH QBC № 06-89
Distilled 4-30-91
Bottled 10-11-06
2006年ボトリング。香りは僅かにフルーティ。クローヴ、シナモン、アーモンドチョコレート、ヨモギ、樟脳、枯木。余韻は頗るハービー。
Rating:84.5/100

(画像提供Bar FIVE様)
NOAH'S MILL 15 Years 114.3 Proof
BATCH QBC № 07-41
Distilled 2-21-92
Bottled 3-30-07
2007年ボトリング。上の2つのバッチより薄い色。香ばしい樽香。蜂蜜、フェンネル、黒糖、ブラッドオレンジ、僅かな林檎。上記2つより爽やかな柑橘があった。甘さとビターさのバランスが良い味わい。余韻はややドライでナッツが揺蕩う。
Rating:88/100

NOAH'S MILL NAS 114.3 Proof
BATCH QBC № 16-25
2016年ボトリング。カラメル、銅、ナッツ、醤油、オレンジ、チョコレート、オールスパイス、僅かなチェリー、ミルクコーヒー。香ばしく甘い香り。こってりとした口当り。穀物の旨みとミルキーな味わい。余韻は期待より短いがナッティで芳しい。
Rating:88/100

NOAH'S MILL NAS 114.3 Proof
BATCH QBC № 23-26
2023年ボトリング。スイカの青いところ、グレープ、鰹節、ビターチョコ→ブラウニー、僅かな紅茶、シナモン、ピンクペッパー、コーンキャンディ。ほんのりフローラルな香り。オイリーな口当り。穀物の旨みとややビターな味わい。林檎の蜜の余韻。
Rating:83→86.5→88/100
Thought:06-37は旨いとしか言えない。しっかりと甘みがありつつ、深みのあるオークの香りにドライフルーツ感、そこに枯木や土っぽさがあって長熟バーボン愛好家には堪らないやつだと思います。
06-89は、同じ年だからもっと似ているのかと想定していたのですが、06-37とは全然違う味わいでした。こちらはスパイス&ハーブが効いていて、もっと言うとクローヴ爆弾といった感じかな。最も複雑な木材の風味がありました。
07-41は、これまた上の2つとも違っていて、爽やかな柑橘類の風味も効いていて、樽感も幾分ブライトな印象。全体としてフライヴァーのバランスが良い良質のバーボンかと。
16-25は、エイジ・ステイトメントがなく現行ウィレットでもないという意味で、以前ローワンズクリークのバッチ違い比較を行った時に飲んだ12年ボトリングのバッチを引き合いに出して言うと、そちらが凡庸に感じたのに比べてこちらはかなり美味しかったです。また、以前レヴューしたポット・スティル・リザーヴのシングルバレルと共通の風味があって興味深かったです。ヘヴンヒルぽい?
23-26は、開けたばかりの時は香りのヴォリュームが小さく、味わいも眠っている感じでした。そして、香りが開くのに凄く時間が掛かり、半年掛けてチビチビ飲んでいたら漸く美味しくなりました。但しその段階では、基本的に長熟感はなく、若々しいプロファイルの中で美味しいという程度であり、フレイヴァーが芳醇とは感じませんでした。だから、これはハズレのバッチなのかと思っていました。ところが、その後、更に美味しく変化しまして、なんなら16-25に近いミルキー感が現れ、尚且つフルーティにもなったのでした。レーティングの矢印はそのことを指しています。16-25との比較で言うと、こちらの方がフルーティさはありました。
これら全てに何かしらの共通項を強いて探るならチョコレート感とかココア感、また何かしらのナッツの風味になるでしょうか。で、件の昔のバッチに小麦バーボンが含まれてるかどうかなのですが、正直、私には判りません。入ってると思えば入ってるような気もするし、入ってないと思えば入ってないような気もするのです。このチョコレート感やココア感やナッツが必ずしも小麦バーボン由来のものとも思えないし…。皆さんの意見を伺いたいたころです。
総評として。15年表記のあるものとNASを較べた時、私が長熟バーボンをそれほど好む人間ではないためだとは思うのですが、15年物の方を圧倒的に評価したりNASを思いっ切り下位に位置付ける結果にはなりませんでした。少なくとも自分が飲んだバッチに関しては、全体的にどれもクオリティが高く、味わいはそれぞれ違いつつも点数を付けてみると僅差でした。
Value:「15年」表記のあるノアーズ・ミルは、古い物なのでオークション等である程度の価格は覚悟しなければならないでしょう。おそらく古いバッチであればあるだけ、値段は高騰すると思います。もし貴方が古典的な熟成バーボンを好むなら素晴らしい価値のある製品です。現行のノアーズ・ミルは、アメリカでは地域差がありますが大体60ドル程度、日本では9000円前後で売られています。もし貴方が近年のウィレット蒸溜所のウィスキーのフレイヴァーを愛するなら、バッチ毎の違いはあっても概ねオススメ出来る製品だと思います。これらの中間に当たる時代のノアーズ・ミルもかなり美味しい可能性があるので、価格が高騰していなければ特にオススメです。












































