

ヘヴンヒル蒸留所の旗艦ブランド、エヴァンウィリアムスの中でもレッドラベルは、バーボン好きは言うに及ばず、スコッチ中心で飲む方にも比較的評価の高い製品です。長らく輸出用の製品(ほぼ日本向け?) でしたが、2015年にアメリカ国内でもヘヴンヒルのギフトショップでは販売されるようになりました。日本人には驚きの120~130ドルぐらいで売られているとか…。日本では一昔前は2000円弱、今でも3000円前後で購入できますから、日本に住んでいながらこれを飲まなきゃバチが当たるってもんですね。
ところでこの赤ラベル12年、一体いつから発売されているのか、よく判りません。80年代後半には確実にありましたが、80年代半ばあたりに日本向けに商品化されたのが始まりなのですかね? 当時のアメリカのバーボンを取り巻く状況からすると、長期熟成原酒はゴロゴロ転がっていた筈です。その輸出先として、バブル経済の勢いに乗り、しかも長熟をありがたがる傾向の強い日本向けにボトリングされたのではないかと想像してるのですが…。誰かご存知の方はコメント頂けると助かります。
さて、今回は発売年代の違う赤ラベルを飲み較べしようという訳でして、画像左が現行、右が90年代の物です。赤の色合いがダークになり、古典的なデザインがモダン・クラシックと言うか、若干ネオいデザインになりましたよね。多分このリニューアルは、上述のギフトショップでの販売開始を契機にされたものかと思います。まあ、ラベルは措いて、バーボンマニアにとっては中身が重要でしょう。言うまでもなく、現行の方はルイヴィルのニュー・バーンハイム蒸留所、90年代の方はバーズタウンの旧ヘヴンヒル蒸留所の原酒となります。

目視での色の違いは殆ど感じられません。強いて言えば旧の方が艶があるようにも見えますが、気のせいかも。
Evan Williams 12 Years Red label 101 Proof
2016年ボトリング。プリン、焦樽、ヴァニラ、バターピーナッツ、レーズン、莓ジャム、煙、足の裏。ほんのりフルーティなヴァニラ系アロマ。余韻はミディアムショートで、アルコールの辛味と穀物香に僅かなフローラルノート。
Rating:87/100
Evan Williams 12 Years Red Label 101 Proof
95年ボトリング。豪快なキャラメル、香ばしい樽香、プルーン、ナツメグ、チェリーコーク、チョコレート、ローストアーモンド、鉄。クラシックなバーボンノート。スパイシーキャラメルのアロマ。パレートはかなりスパイシー。余韻はロングで、ミントの気配と漢方薬、土。
Rating:87.5/100
Verdict:同じものを飲んでいる感覚もあるにはあるのですが、スパイシーさの加減が良く、風味が複雑なオールドボトルの方を勝ちと判定しました。現行も単品で飲む分には文句ありませんし、パレートではそこまで負けてはないものの、較べてしまうと香りと余韻があまりにも弱い。総論として言うと、現行の方は典型的な現行ヘヴンヒルの長期熟成のうち中程度クオリティの物といった印象。一方の旧ボトルも、バーズタウン・ヘヴンヒルの特徴とされる、海外の方が言うところのユーカリと樟脳が感じやすい典型的な90年代ヘヴンヒルのオールドボトルという印象でした。
Thought:全般的に現行品はクリアな傾向があり、対してオールドボトルは雑味があると感じます。その雑味が複雑さに繋がっていると思いますが、必ずしも雑味=良いものとは言い切れず、人の嗜好によってはなくてもよい香味成分と感じられることもあるでしょう。かく言う私も、実は旧ヘヴンヒルの雑味はそれほど好みではありません。両者の得点にそれほどの開きがない理由はそこです。
Value:エヴァン赤は日本のバーボンファンから絶大な信頼を寄せられている銘柄だと思います。確かに個人的にも、例えばメーカーズマークが2500円なら、もう500円足してエヴァン赤を買いたいです。またジムビームのシグネイチャー12年やノブクリークが同じ価格なら、エヴァン赤を選ぶでしょう。おまけにワイルドターキーのレアブリードよりコスパに優れているし。つまり、安くて旨い安定の一本としてオススメということです。もっとも、たまたま上に挙げたバーボンはどれも味わいの傾向は多少違うので、好みの物を買えばいいだけの話ではあります。参考までに個人的な味の印象を誇張して言うと、腰のソフトさと酸味を求めるならメーカーズマーク、香ばしさだけを追及するならノブクリーク、ドライな味わいが好きならレアブリード、甘味とスパイス感のバランスが良く更に赤い果実感が欲しいならエヴァン赤、と言った感じかと。
問題は旧ラベルと言うか、旧ヘヴンヒル蒸留所産の物のプレミアム価格の処遇です。個人的な感覚としては、上のThoughtで述べた理由から、仮に旧ボトルが現行の倍以上の値段なら、現行を選びます。確かに多くのバーボンマニアが言うように、旧ヘヴンヒル蒸留所産の方が美味しいとは感じますが、あくまで少しの差だと思うのです。それ故、私の金銭感覚では、稀少性への対価となる付加金額を、現行製品の市場価格の倍以上は払いたくないのです。ただし、その少しの差に気付き、その少しの差に拘り、その少しの差に大枚を叩くのがマニアという生き物。あなたがマニアなら、或いはマニアになりたいのなら、割り増し金を支払ってでも買う価値はあるでしょう。

コメント
コメント一覧 (10)
海外のサイトでも輸出専用だった様な事が書いてあったので、やっぱりバブルの日本向けに作られた銘柄だった可能性は高いんじゃないでしょうか。
オークションとかでも丸紅食料の正規輸入品しか私は見た事ありませんし…。
やはりそう考えるのが妥当な気がしますよね。情報ありがとうございます!
(ストレート)
艶のある赤みあるアンバーカラー、香りはドライ、ネガティブでない溶剤系、焦げ樽、僅かにメープル・キャラメル。粗くはなく熟成は感じられる。
口に含んだアタックは度数の割には穏やか。
味はフローラルで中庸的、ドライ、やはり若さはない。舌に重ねていくと段々とコクを感じ、甘みも感じてくる。鼻抜けに良い穀物感。余韻長くはないが、口の中に残る心地よいコーンと木材屋の香り。
(オンザロック)
氷が溶け、香りが解けてくるとストレートの時は感じない甘さのある、花のような華やかな香り。
冷えたことでアルコール感は抑えられて、香りは穏やかになるが、加水で甘さを感じやすくなる。しかし余韻は単調になった。やはり、香りがいい。
これまでずっとロックで飲んでましたが、ストレートの方がおいしいかも、、と今更思い始めましたw
こちらもバッファローT同様、試飲して値段の割においしいな〜と思った銘柄で買っていました。
BSNCさんのこの記事で飲み比べされていたので、気になりまして自分も旧ラベルを試したのですが、全く別物に感じました。(経年要素もあるとは思いますが穏やかで、複雑さを感じ、好みでいえば旧ラベルが好きでした)
ラベルが赤いせいか、なぜか液体も赤く見えるのは気のせいでしょうか??最近ラベルチェンジしたことを知り、もうこの旧現行もなくなるのかと思いつつ、早速新しいラベルも買って違いを試したいなと思っています。。
スコッチマンさん、お久しぶりです。わー、詳細なテイスティングノートありがとうございます!
EW12はお好みに合っていたようですね。昔の物はマッシュビルや水、蒸溜施設も違うと推測されるので、どうしたって違いはあるのでしょうね、経年も含めて。近年の物はEW12に限らずドライな傾向が強いと感じてますが、それでもやはり美味しいバーボンだと思っています。
ストレートの方が美味しいかも…という感想は個人的には嬉しいです。自分はジュースとかでも選択できる場合(ドリンクバーなど)は、液体が冷えて欲しくないので氷を入れない派なのです。ビールでも冷えてなくても平気で飲めます。ようこそストレート一択の世界へ(笑)。
ラベルが赤いと液体も赤く見える心理的な効果はありそうw
最近、EW12は急速に買いにくくなってるような気がします。うちの近所の酒屋でも、そのうち買えばいいやと思っていた現地のギフトショップで販売されているEW12と同様なゴールドワックスで封された新しいラベルデザインのやつは、先日行った時にはもう売り切れてました…。
ストレート一択はまさに、「ようこそ男の世界へ‥」いう感じですね!
私はてっきりBSNCさんがストレート派なのは、シングルモルトをニートで飲むイメージで「液体そのもの」の持つ味わいを損なわずに楽しむために・・なのかと思っておりましたが、
まさかの他のドリンク全般もストレートとの話にはビックリしましたw
最近、年齢のせいもあってか少し度数落ち気味の40度台や加水アイテムの方がストレスなく飲めるような感じもあるにはあるのですが、
やはり樽出しかそれに近しい度数の液体の魅力には抗えないものがありますね・・w
(そんな訳もあり、旧ボトルの方がおいしく感じたのかもなぁと)
最近、同じ蒸留所縛りで
オールド〜現行の色々なものを並べて比較しながらの飲み方(もはやテイスティング?)にハマっており、ついつい飲みすぎてしまいます(苦笑
EW12の旧ラベルは残念ながら手持ちがないので、このやり方で楽しむために頑張って買っちゃおうかな〜、、などと思い悩む今日この頃です(^_^;)
いつかアップされるであろう?新しいラベルのEW12の記事も楽しみにお待ちしてます!!
私は飲み方は人それぞれでいいと思ってます。水割りでもロックでもハイボールでも、好きに飲んだらいい、と。たまたま自分が美味しく感じるのが常温ストレートなだけの話でしかないですからね。
比較飲みは楽しいですよね。特にバーボンは比較しながらでないと違いが分かりにくいですし。
オールドボトルって当たり外れもありますし、私も購入に迷います。思い切りが必要なんですよね、いいや、えいっ!みたいな(笑)。
残念ながら私は、新しいEW12は確保してないんですよねえ…、何処かで買える機会があればいいのですが…。
エヴァン12旧ボトルは何度もバーでは飲んでいたのですが
安定してうまいのでネットで複数本購入してはみたところ、
現行の金ロウが届きました。他のノンエイジ等と比べると
やはりうまいのですが、赤ボトルよりは若くて辛い印象です。
味の軸は同じなので開封すぐのせいかやはり原酒のせいかもしれません。
8月頭にバーで赤と金を比べてみたいと思います。
価格的には現行のターキーレアブリードよりかなりマシでした。
マッシュビルの風味差はあれど辛さの差はきっちりあったので。
バーではオールドのバーボンを飲むので、おそらく最終的には
有象無象と化してしまうのですが(笑) 現行品ではマシかと思いました。
たくさんコメントありがたいです(笑)。
仰ることはよくわかります。私はゴールドワックスを飲んだことはありませんが、なんとなく予想はついてます。ちよっと前の赤を飲んだときも、もっと前の赤よりは、やっぱり辛い感じが出てましたから。昨今のバーボン高需要で樽材が若かったり、バレルピックのクオリティが下がってるのが原因ではないかと思うのです。オールドボトルを飲み慣れていると、どうしてもそうなっちゃいますよねえ…。
現行ターキーよりはエヴァンというのも、飲む前からなんとなくそんな気がしてました。
スコッチも飲んでて「現行品はなぁ…」とよく思ってますが
バーボンも昨今のラベルと従来のラベルを比べるとなんとも寂しいですね…。
私はバーボンを本格的に飲み始めて日が浅いので、
家には手頃な価格で買えたような昔のボトルは無いです。
バーボンはバーで飲むのがメインになってますが
出遅れた感のある今となっては札束を持ってうまいバーボン探しの道を
歩いて行かなくてはなりません(笑)
バーボンも通常品の値上げやオークション市場の高騰など、なかなか厳しいですよね。私も最近はあまり買ってないです、安くて旨いのがバーボンの魅力の一つだったので…。