
「安酒を敬いたまえ」ヘヴンヒル蒸留所編

ジョーやエルヴィスのような白人シンガーにはない重厚な歌声と節回し、南部流儀のホーンアレンジとリズム隊が織り成すサウンド、歌詞のメッセージ、楽曲のキャッチーさ、全てを兼ね備えていると言っても過言ではないでしょう。
ウィリーはサム・クックに最も影響を受けたシンガーですが、持ち味はサムよりもう少しディープ。サムがシルクやビロードと形容されたなめらかな歌声なのに対し、ウィリーは少々ザラついたテイストがあり、喩えると麻?ですかね(笑)。そこがまたいいのですが。
で、上に述べた歌詞のメッセージと言うのは、一言で言えば「その人の事を判断(批判)する前に相手の立場に身を置いてみようよ」と言うこと。
"Walk a Mile in My Shoes"
『俺の靴で1マイル歩いてみろよ』
If I could be you and you could be me
もし俺がお前でお前が俺なら
For just one hour
たった1時間でも
If we could find a way to get inside
俺らの内側に潜り込むやり方が見つかれば
Each other's mind
互いの心に
If you could see you through my eyes
もしお前が俺の目を通して自分を見れたら
Instead of your ego
お前自身の代わりに
I believe you'd be, surprised to see
お前は見て驚くだろう
That you've been blind
今まで盲目だったって
Walk a mile in my shoes
俺の靴で1マイル歩いてみろよ
Walk a mile in my shoes
俺の靴で1マイル歩いてみろよ
Before you abuse, criticize, and accuse
誹謗中傷ばかり言って非難する前に
Walk a mile in my shoes
俺の靴で1マイル歩いてみろよ
さて、合わせたバーボンはジムビームブラック8年のちょっと古いやつです。やっぱりジムビームはこのラベルデザインがしっくりきますね。まだマスターディスティラーがブッカー・ノーの時代の物で、ラベルのサイドの肖像画にフレッド・ノーが描かれてません。現行のブラック、エクストラエイジよりも少し長い熟成期間の贅沢な(?)仕様は、まだバーボンブームがアメリカで巻き起こる前だから出来たのでしょう。
アメリカ南部産のケンタッキーバーボンと極上のサザンソウルの組合せは無敵ですよね。では、今宵はこれにて。
ブラントンズは現在のプレミアムバーボンの魁として当時まだ珍しかったシングルバレルという形式で1984年から発売されました。当時のマスターディスティラー エルマー・T・リーが、先達のアルバート・B・ブラントンが特別に出来の良い樽を他の樽と混ぜずに招待客に振る舞っていたのをヒントに製品化したという伝説があります。
バッファロートレース蒸留所は、以前の名称をエンシェントエイジ蒸留所と言い、更に前はブラントン蒸留所とも知られていました。往年の親会社であるシェンリー社が同蒸留所に55年勤務したアルバートに敬意を表し蒸留所の名称をブラントン蒸留所としたと言います。ルーツを辿れば最初期はアルバートの父親ベンジャミン・H・ブラントンが建てたリーズタウン蒸留所に行き着き、エドモンド・H・テイラーJr.やジョージ・T・スタッグが辣腕を振るった時代がありました。バッファロートレース蒸留所のリリースするバーボンは同蒸留所のリーダーたる偉人の名前を冠したブランドが多いのです。
ブラントンズにはライ麦15%程度と言われる# 2 マッシュビルが使用されます。熟成年数の表記はありませんが、約8年とされ、全てウェアハウスHにて熟成されます。バッファロートレース蒸留所の熟成庫は殆どか煉瓦造りなのですが、H倉庫は唯一メタルの被覆で造られており、熟成が速く進むそうです。一説には4年ほど熟成した段階でマスターディスティラーを含む検査官がテイスティングをし、これは良い出来の樽だと判断されたものをH倉庫へと移して、更に3〜6年寝かせて熟成のピークに達したものをボトリングするのだとか。
またブラントンズと言えば特徴的なのは多面体のボトル形状とケンタッキーダービーのジョッキーを模したキャップでしょう。このデザインは秀逸という他ありません。キャップにはB・L・A・N・T・O・N2・Sのどれかの印があり、ゲートに佇む姿〜馬を疾駆する姿〜ガッツポーズで勝利する姿までの八種類があって、キャップを集めている人もいます。他のヴァリエーションとしては、度数の低いブラック、度数の高いゴールド、樽出し原酒のストレート・フロム・ザ・バレルなどがあります。この中でストレート・フロム・ザ・バレルだけがアンチルフィルタードで、他のはチルフィルタードとなっています。度数にせよフィルトレーションにせよ、かなりの違いを産み出しますよね。
Blanton's Single Barrel Bourbon Whiskey 93 Proof
Dumped 6-15-12
Barrel No. 21
Warehouse H
Rick No. 24
こちらは並行輸入品です。並行輸入品は茶色っぽい紙の色で、正規輸入品はもっとクリームぽい紙の色をしています。で、どういう訳か並行輸入品よりも正規輸入品のほうが味が優れてるように感じるのです。このボトルに関しても、キャラメル香とスパイシーさの加減もよく、美味しいは美味しいのですが、そこまでの深みは感じれず…。シングルバレルという性格上、並行か正規かの違いに拘わらず、そもそも一樽一樽が違うのは当然なので、たまたまなのかも知れませんが、昔から「正規の方が味が良い」説は根強くあります。私の思い込みなのでしょうか?
また、もっと言えば90年代の物のほうが遥かに深みがあり美味しいと感じます。なので残念ながら得点は抑え気味になりました。
Rating:85/100