2023年04月

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今回はジムビーム・ブラックラベルの前身、ビームズ・ブラックラベルです。もともとビームの黒いラベルは「ジム・ビーム」ではなく「ビームズ」を名乗っていました。嘗ては白ラベルのフラッグシップ製品だけが「ジム・ビーム」の名を冠することが出来るという方針だったそうで、緑ラベルでお馴染みの「チョイス」なんかも昔は「ビームズ」でした。大手のビームからの製品であり、長期間販売されている割に、ブラック・ラベルの初登場がいつだったのかは、調べても分かりませんでした。有名なウィスキー・ブロガーのくりりんさんがビームの黒ラベルをレヴューしているのですが、それは75年ボトリングと推定され、なんとラベルは「チョイス」名義。これからするとブラック・ラベルというコンセプトが70年代半ばには既にあったのは間違いなさそうです。そして、それよりもボトルやラベルが古そうに見え、推定70年代ボトリングとされるビームズ・ブラックラベルがありました(参考)。ここら辺がオリジナルなのでしょうか。仔細ご存知の方はコメントよりお知らせ頂けると助かります。その起源は兎も角、ビームズ・ブラックラベルは、70年代後半から80年代半ば頃には広告にも力を入れられていたようです。
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上の画像のように、ビームズ・ブラックと言えば101ヶ月熟成の表記が印象的です。つまり8年5ヶ月熟成ですね。何時の頃からか一般的な8年熟成表記に変わりましたが、少なくとも70年代後半から80年代半ばまでは101ヶ月表記だと思われます。ところで、何故わざわざイヤー表記ではなくマンス表記なのでしょうか? もしかすると、わざとマンス表記にすることで、ワイルドターキーの象徴的な数字「101」を意識しているのではないか、と私は邪推しています。また、黒を基調としたラベルと「サワーマッシュ」や「チャコール・フィルタード」の記載はジャックダニエルズを意識してるようにも思えます。多分ライヴァルの二つのブランドへのあからさまな対抗心がある気が…。まあ、上で言及したビームズ・チョイス・ブラックラベルは100ヶ月熟成でしたし、これは何の根拠もない私の想像です。

現在ジムビーム・ブラックラベルと呼ばれるこのブランドは、長年に渡って名称もプルーフも熟成年数もボトル形状もころころ変わりました(2000年代以降の変遷は過去に投稿した記事に書きましたので参考にして下さい)。そのせいか、マーケティング戦略の犠牲者のように見えなくもないブラック・ラベルですが、そもそもはスタンダードなジムビーム・ホワイトの倍の熟成年数を誇るプレミアムな製品だった筈です。ブッカーズを筆頭とするスモールバッチ・コレクションが誕生する以前は間違いなくそうでしょう。今回、開封したボトルは推定82年ボトリングです。ボトリング年からすると、まだスモールバッチ・コレクション開始前なので、相当ハイクオリティなバレルがバッチングに使用されていてもおかしくはないのでは?という淡い期待があります。逆に年代からすると過剰供給時代なので、単なる過熟バレルが使われてる可能性も否定出来ませんが…。では、試してみましょう。

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BEAM'S BLACK LABEL 101 Months 90 Proof
推定82年ボトリング。やや赤みを帯びた濃いめのダークブラウン。黒蜜、キャラメル、レーズン、マスティオーク、湿った土、タバコ、胃腸薬。ノーズは濃密な甘い香りにウッド、チェリー、スパイスが交じり合う。アルコール刺激のないとても滑らかな舌ざわり。味わいは甘みもあるがそれ以上にウッディかつスパイシー。余韻はミディアムロングでほろ苦い。
Rating:85.5/100

Thought:前回まで開けていた99年ボトリングのジムビーム・ブラックラベルと較べると、焦樽フルーツ系統の方向性は一緒なのですが、こちらの方がよりスパイシーに感じました。また、単体だと熟したフルーツ感と思っていた99年ブラックラベルが案外とフレッシュなフルーツ感に感じてしまうほど、こちらの方がもっと濃いフルーツを感じます。そして強いスイートな香りも素晴らしく、ここら辺はオールドボトルの魅力と思います。多分、現行のノブクリークあたりと比較してすら、こちらの方がリッチなフレイヴァーが認められるかと。ただ一方で、このボトルは経年もあってか、開封から飲み切るまで常にオールドなファンキネスがありました。それは強過ぎるように感じる時もあったし、特に気にならない時もありました。そこで何か法則性があるのかと、例えば飲む前に何分も放置してみたり、飲む直前に食べる物を変えてみたり色々試したのですが、一貫した法則は見つけられませんでした。これって自分側の体調次第なのですかね? 同様な体験をしたことがある方は是非コメント頂けると幸いです。おそらく、私が感じているオールド臭と言うのか、古びた風味は、経年だけでなく、そもそもの熟成バレルからも由来していると思われます。だから評価が難しいのですが、私にとって過剰なオールドファンクはなくていいものなので、それが点数を抑える結果になっています。それさえもう少しだけ感じることがなければ、あと1点は高かったでしょう。オールドボトル・エフェクトを軽々とクリア出来るオールドボトル愛好家の方なら、もっと評価は高いのかも知れませんね。

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アウトロー・ケンタッキー・バーボンはカリフォルニア州バーリンゲイムにオフィス(と言うか社長の自宅?)を置くアライド・ロマー/インターナショナル・ビヴァレッジのブランドです。同社は特定のブランド名の下に異なる人物の写真を使用するコレクターズ・シリーズを数多く展開しており、このアウトローと同時代の偉人を揃えた「レジェンズ・オブ・ザ・ワイルド・ウェスト」を筆頭に、名前そのままにギャングやマフィアをフィーチャーした「ギャングスター」、黒人ミュージシャンを取り上げた「ジャズ・クラブ」や「ブルース・クラブ」、「R&B」や「YO! HiP HOP」、他にも「ロックンロール」や「U.S.A.ベースボール」等がありました。これら各ブランドの中身の品質は様々でしたが、ボトリングはKBD(一時のウィレット蒸溜所)が担っており、基本的により古いリリースや長期熟成でハイ・プルーフの物はバーボン・マニアから評価が高いです。
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アウトロー・コレクターズ・シリーズでは、西部劇映画に登場するような列車強盗、馬泥棒、牛泥棒、ガンマン、冷酷な殺人鬼、お尋ね者などの西部開拓時代の最も悪名高い無法者たちがラベルを飾っています。実際のところ彼らも「ワイルド・ウェストの伝説」と呼ばれる人達です。多くの場合、彼らの物語は小説やハリウッド映画などで逞しい個人主義や大胆な開拓者精神といったアーリー・アメリカンの理想に合うように形作られ、長い間ロマンチックに描かれて来ました。アメリカ人は暴政に立ち向かうアンダードッグが大好きで、反骨精神を体現する反逆者に対してロマンを投影して見たりします。我々日本人もこういうカリズマティックな無法者には惹かれてしますよね。特にアメリカへの憧れを強く抱いた人にとってはそうでしょう。ラベルに採用された悪のヒーローには以下の12人がいました。

DEAD OR ALIVE! ― KID CURRY
BEWARE OF STARR ― BELLE STARR
$18,000 REWARD ― BUTCH CASSIDY
$5000 REWARD ― WILD BILL
DESPERADO! ― JAQUIN MURIETA
DESPERATE OUTLAW ― HARRY LONGBAUGH
$7,000 REWARD ― FRANK & JESSE JAMES
$2500 REWARD ― BILLY THE KID
COLD BLOODED KILLER ― JOHN WESLEY HARDIN
BE ON THE LOOK OUT ― MYSTERIOUS DAVE
ARMED & DANGEROUS ― HARRY TRACY
$2500 REWARD ― RED RIVER WILSON
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初めの頃のリリースでは全11種類と聞き及びますので、それが確かなら、多分レッド・リヴァー・ウィルソンが後から追加されたのではないかと思います。と言うか、この件に限らずアウトローに関する情報はネット上に殆どなく、私にはその全貌が分かりません。よって、以下は憶測でしかないことを注意して下さい。また、間違いの訂正や何かしらの情報をお持ちの方は是非ともコメントよりお知らせ頂けると助かります。
おそらく初めのアウトローは日本市場向けに80年代末か90年代初頭に発売されました。インポーター・ラベル(河内屋酒販)にはウイスキー特級と記載がありますが、これは俗に言う偽特級と言うのか、ラベルを使い切るまで貼られたものではないかと推測されます。この時の物は12年熟成101プルーフと15年熟成101プルーフで、キャップが後のものよりやや短いものだったようです。その後アウトローは、ラベルの醸す雰囲気が頗るクールで人気があったのか、何度かボトリングされました。アウトローは上で紹介した他のコレクターズ・シリーズよりヴァリエーションが多く、私が実物および画像で見たことのある範囲で言うと、先の2種類の他に後から、8年熟成80プルーフ、11年熟成80プルーフ、12年熟成80プルーフ、15年熟成86プルーフ、20年熟成101プルーフ等が発売されています。初期の物と後から出された物とでは、ラベルに使われる写真にも変化があったりしました。これらの正確なリリース時期は判りませんが、確認できたところでは90年代後半と2000年代前半の物がありました。アライド・ロマー/インターナショナル・ビヴァレッジは小規模な会社であり、現在のプリザヴェーション蒸溜所の製品を見ても分かる通り、ヴェリー・スモールバッチ(同社の言葉ではマイクロ・バッチ?)に拘りをもっており、またボトリングを担当したKBDの生産規模からしても、その流通量の少なさからしても、アウトローの全ての製品は少量生産の筈です。そのせいもあってか、2010年代前半頃には手に入れ難い状況になっていたようです。ところが2017頃、突如としてアウトローは復刻されました。その時の物は1000mlの規格、NASの80プルーフ、ブラック・ワックス・トップで、ラベルは何故か全6種類だったらしい(キッド・カリー、ホアキン・ムリエタ、ジョン・ウェスリー・ハーディン、ハリー・ロングボー、ビリー・ザ・キッド、ミステリアス・デイヴ)。この最も新しいアウトローは、おそらくウィレットがボトリングしてないのではないかと思われます。プリザヴェーション蒸溜所での自家ボトリング? もしそうでないのならストロング・スピリッツあたり? ラベルに所在地表記のヒントがないので全く判りません。判らないと言えば、中身のジュースのソースも全く謎です。現行ヘヴンヒルぽいという推測はありました。私は飲んだことがありませんが、旧来のアウトローとは丸っきり違うものとは聞き及び、どうやら著しくクオリティが下がっているようです。アライド・ロマーは、バーズタウンにプリザヴェーション蒸溜所を開設するまで自前の蒸溜所を所有しないNDP(非蒸溜業者)だったので、何処かから原酒を調達しなければならない訳ですから、その時々で中身に差があるのはまあ仕方のないこと。過剰生産とバーボン人気の低迷期には長期熟成原酒が安く買えましたが、2017年の段階ではそうは行かないでしょう。この最新のアウトローに限らず、歴代のアウトローもファースト・ロットと以降の物、そして8年や11年のようにボトリング・プルーフが低いものは、味も全くの別物と言われたりしています。
KBDがボトリングした旧い物に関しては、日本語でアウトロー・バーボンを検索した時に出てくる情報ではヘヴンヒル原酒と言い切られている場合もありますが、KBDはボトラーとして契約上の守秘義務を守り、中身のジュースについての詳細は一般に明かしていません。一説には複数の蒸溜所の原酒をブレンドする製法で造られているとも聞いたことがあります。つまり、ヘヴンヒルのみのバレルを使っていたのかも知れないし、或いはヘヴンヒルを中心として他のバーンハイムやフォアローゼズのバレルを混ぜていたのかも知れないし、それは永遠に謎だと言うこと。KBDの社長だったエヴァン・クルスヴィーンに訊ねても、覚えていない可能性すらあります。いや、明確に記憶していたとしても、どうだったかな?と空惚けされるだけでしょう。何処の蒸溜所の原酒であれ、KBDのストックから10〜20バレル程度選んでバッチングしているのであれば、エヴァンがブレンドしたのは間違いないと思います。逆に3〜4樽程度のバッチングなのであれば、アライド・ロマーの社長マーシィ・パラテラがシングルバレル・プログラムのような形式で選んでいる可能性もあるのかも。または両者の共同作業なのでしょうか? 或いはマーシィが持ち込んだバレル(UDから購入したS-Wとか)を単にボトリングしただけなのか? まあ、こうして謎めいたところもアウトロー・バーボンの魅力の一つ。分からないことは措いて、実際に飲んでみるしかありません。今回、私が飲んだボトルは90年代終わり頃にボトリングされた、ラベルにホアキン・ムリエタが使われた物です。

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西部のロビン・フッド、メキシカン・ロビン・フッド、エルドラドのロビン・フッドとも呼ばれるホアキン・ムリエタは、ゾロからバットマンまでインスピレーションを与えたとされる神話的存在。彼については冷徹な殺人者、虐げられた人々のために戦う義賊、民族的英雄など様々に語られていますが、その生涯に関する事実は殆ど判らず、広く知られていることの多くは伝説に由来しています。何なら一人の人物ではなく、1850年代のカリフォルニアのゴールド・ラッシュでアングロ系の人々による差別の犠牲になった多くの人々の合成物であると見る人もいたり…。ホアキン・ムリエタは1829年か1830年頃にメキシコのソノラもしくはチリのキヨタに生まれ、1853年頃にカリフォルニアで死去したとされます。彼の死後、チェロキー族の作家ジョン・ロリン・リッジが書き、1854年に出版された『ホアキン・ムリエタの生涯と冒険』という小説からロマンティックな描写は始まったようです。
おそらくは歴史的事実と民間伝承と神話が複雑に交差する物語によると、ムリエタは10代の時に結婚し、ゴールド・ラッシュでお金を稼ぐという夢をもって、1848〜50年頃、18歳の時に妻と共にメキシコを離れてカリフォルニアに移住しました。所謂フォーティナイナーズ、またはフォーティーエイターズなのでしょう。しかし、この若いメキシコ人は富を得るどころか、入国直後に人種差別的な不当な扱いを受け、早々に社会的不公正を知ることになります。ムリエタの物語の根底には、1850年代のカリフォルニアの人種差別的緊張がありました。
1848年2月2日のグァダルーペ・ヒダルゴ条約によって米墨戦争は終結し、アメリカはカリフォルニアをはじめコロラド、ネヴァダ、ニューメキシコ、テキサス、ユタ、ワイオミングを獲得しました。金が発見された当時(1848年1月24日)のカリフォルニアはまだメキシコの一部でしたが、アメリカが占領していました。正式にカリフォルニアが州となったのは1850年9月9日です。採掘事業が個人主義的で、移民が最も急速だった1849〜1850年初頭に掛けて移民排斥主義が生まれました。ヨーロッパ系アメリカ人はメキシコから奪ったばかりの地域で利益を維持するために、法と経済のシステムを熱心に構築し始め、自警団とマイノリティ・グループに対する法的差別の両方が促進されます。その一つ、1850年のフォーレン・マイナーズ・タックス・アクト(外来鉱山労働者税法)は、全ての非ヨーロッパ人鉱夫が鉱山で働くために月20ドル(現在の数百ドル)の税金を支払うことを求めたものでした。これにより事実上ヒスパニック系の人々はゴールドラッシュから締め出されました。多くの所謂カリフォルニオス(カリフォルニアにいたスペイン語を話す人々)は、経済的に疎外された結果として盗賊になった人もいたと言います。ゴールド・ラッシュは国内外から人々を引き付け、カリフォルニアの人口は爆発的に増加しましたが、それは白人とその他のメキシコ人やインディアンや中国人の間で暴力が頻繁に発生する状況を齎したのです。
或る時、金鉱労働者でありヴァクェロ(スペイン版カウボーイ)であったムリエタは、兄弟と自分がロバを盗んだという濡れ衣を着せられ、兄弟(または義理の兄弟)は絞首刑になり、ムリエタもこっぴどく殴られ鞭で打たれました。更に彼の若い妻は集団強姦されてしまいます(彼女はムリエタの腕の中で死んだという説まであるそう)。彼は今後、復讐のために生き続けることを誓いました。鉱区を強制退去させられたムリエタは、仕事を見つけることが出来ず、怒りに任せて犯罪に手を染め、他の外国人鉱夫たちと共に、自分たちの権利を奪った者たちを食い物にするようになります。軈てムリエタはファイヴ・ホアキンズと呼ばれる荒くれ者集団のリーダーとなり、彼の右腕で「スリー・フィンガード・ジャック(3本指のジャック)」の異名をもつマニュアル・ガルシアも含むバンドは、サン・ホアキンやサクラメント・ヴァリーを荒らし回り、牛や馬を盗み、サルーンを略奪し、19人を殺害したとか。しかし、彼らはメキシコの同胞に対する多くの不正を正すためにのみ犯罪を犯し、不正に得た利益の多くを貧しい人々に与え、その助けられた人々は彼らを法から匿うことさえしたと伝えられます。そうした協力者のお陰か、或いはムリエタは変装の名人だったとの説もあり、ともかく数年間は法から逃れることが出来、その過程で3人の法執行官を殺害したらしい。
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(チャールズ・クリスチャン・ナールによる1868年の絵画)
1850年には早くも「ホアキン」という名前の無法者がカリフォルニアを恐怖に陥れているという新聞報道があったそうです。カリフォルニアで大規模な犯罪が発生する度にホアキンが容疑者になりました。そしてホアキンが本当に存在するのかについての議論まで出ました。謎のホアキンに対する恐怖感がカリフォルニアを席巻し、人々は無法者を裁判にかけるよう要求しました。カリフォルニア州は生死を問わず厶リエタに5000ドルを上限とする懸賞金を提示します。同州の無法状態を漸く理解したジョン・ビグラー州知事は、1853年5月に元テキサス・レンジャーのキャプテン・ハリー・ラブ率いるカリフォルニア・レンジャーズを創設し、ムリエタとその一団を追い詰めるよう命じました。1853年7月25日の早朝、レンジャー達はサン・ベニート郡のパノーチェ・パス付近でメキシコ人の集団と遭遇します。銃撃戦となり、彼らは八人の男性を殺害しました。レンジャー達は、うち二人はムリエタとスリー・フィンガード・ジャックだと主張し、その死の証拠としてガルシアの手とムリエタの頭を切り落とし、ブランディの入った瓶に保存して持ち帰りました。神父を含む17人がその頭部はムリエタのものであるとする宣誓書に署名し、関与したレンジャーズは5000ドルの報奨金を受け取りました。
その後、厶リエタの身の毛もよだつ遺物はカリフォルニア中を旅することになり、サンフランシスコのストックトンやマリポサ郡のマイニング・キャンプ等に展示され、1ドル払えば盗賊の首が見られるというので好奇心旺盛な観客は興味本位で見物しました。しかし、ホアキン・ムリエタの伝説はそう簡単には治まりませんでした。彼が殺されてから間もなく、彼の妹と名乗る若い女性が頭部を見て、兄にあった特徴的な傷跡がないと言ったことから、殺されたのは厶リエタではなかったという憶測が流れ始めます。また、カリフォルニアのあちこちで厶リエタが目撃されたという報告も出始めました。ムリエタの首は最終的にサン・フランシスコのゴールデン・ナゲット・サルーンのバーの後ろに置かれ、1906年の地震で建物が破壊されるまで放置されました。この首はムリエタの亡霊という別の伝説と言うかホラー話となり、今でもムリエタの首なし幽霊が昔の金鉱地帯を走り回り「俺の首を返せ」と啜り泣いているとかいないとか…。
ホアキン・ムリエタの話の大部分はフィクションと思われますが、その物語は苦しみと人種的不公平の中でゴールデン・ステイトが創造されたことの証でした。長い年月を経て伝説はどんどん大きくなり、カリフォルニアのアングロ=サクソン支配に対するメキシコ人の抵抗の象徴のような存在になりました。そしてゴールド・カントリーの至る所で、彼がこのホテルやあのホテルに泊まったとか、様々な酒場で飲んだとか、実際に会ったとか強盗にあったとかいう話が語られるようになったと言います。歴史上のムリエタの実態がどうであれ、彼の人気は高まり続け、文学や映画に影響を与えただけでなく、メキシコのバラードやコリードによって歴史的な社会的アイコンとして確固たるものとなり、彼の自由と闘争の戦士としてのイメージはチカーノの活動家達にとって抵抗の強力なシンボルとなりました。
そう言えば、ホアキン・ムリエタの伝説を下敷きにしたAmazonオリジナルの西部劇ドラマ『ホアキン・ムリエタの首』が2023年2月17日から配信されています。興味のある方は是非とも視聴してみて下さい。では、そろそろこの何とも言えず魅力たっぷりなラベルのバーボンを注ぐとしましょう。

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OUTLAW KENTUCKY BOURBON 15 Years 101 Proof
DESPERADO!
JAQUIN MURIETA
推定1999年ボトリング(瓶底)。艷やかな濃いめのブラウン。微粒子感のある液体。メープルシロップ、シトラス、胡桃、蜂蜜のど飴、ネイルポリッシュ、オールスパイス、葡萄の皮、炭、レモンジンジャー、ミルクココア。濃密でスイートかつ円熟を感じさせるアロマ。口当たりはソフト。パレートでも甘く味が濃ゆい。余韻はミディアムながら仄かなプラムと爽やかなスパイシーさが揺蕩う。
Rating:93/100

Thought:はい、激ウマです。長期熟成のコクがありつつ過剰な熟成感のない、とてもバランスの良いバーボンでした。基本スイートでドライさや苦味はなく、しかもハービー過ぎず、スパイスは適度なのです。特筆すべきは、飲むと意外にも暗い色のフルーツよりも明るい色のフルーツを感じさせるところ。何なら新ウィレットの4〜6年熟成原酒的なフルーティさすら感じました。ここら辺が私の好みに適合しています。また時々モルティさを感じる瞬間もあり、香りから余韻まで全て素晴らしい。原酒に関しては、よく分かりませんでした。トップノートにヘヴンヒルぽさを感じた瞬間もありましたが、飲んでみると平均的なヘヴンヒルとは異なるように感じました。液体を飲み込んだ直後のキックや余韻にはライ麦15〜18%はありそうな印象。まさかバートン? それともやはり複数蒸溜所原酒のブレンドなのでしょうか…。個人的には少なくともスティッツェル=ウェラーではないように感じました。飲んだことのある皆さんはどう思われましたか? コメントより感想をどしどしお寄せ下さい。

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嘗てアメリカのウィスキーに使用される有力な穀物だったライを本来の高みへ戻すためにリデンプション・ブランドは始まりました。ライは長い間、アメリカン・ウィスキーの世界に於いてコーンに匹敵するかそれを上回る穀物の地位に君臨していましたが、禁酒法の影響から廃れてしまい、他の蒸溜酒のようには回復することが出来ませんでした。しかし、ここ10数年で様相は一変しました。ライ・ウィスキーの売上は大きく伸び、今、復権を謳歌しています。そうした過程の中で「リデンプション」は急速に評価を築いたブランドです。ブランド自体の紹介は、過去に投稿した記事でしていますので、そちらを参照して下さい。

リデンプション・ウィスキーには、リデンプション・ライ、リデンプション・バーボン、リデンプション・ハイライ・バーボンという3つの主要なセレクションがあります。リデンプションの特徴として4年未満のスピリッツにも力を入れていることが挙げられ、これらはどれも平均2.5年熟成とされる若いウィスキーです。他にも長熟や追加熟成を施したもの、或いはウィーテッド・レシピのものなど様々な製品展開がありますが、スタンダードなのはこの三つと見てよいでしょう。リデンプションの名声は確実にライ・ウィスキーによって齎されましたが、現在の薬瓶スタイルのボトル(*)になる前のスタイリッシュなトールボトルの頃からバーボンもリリースしていました。そこで今回はマッシュビルの少し異なる二つのバーボンを取り上げます。

ライと同様、バーボンもインディアナ州ローレンスバーグの有名なMGP(現在ロス&スクィブ蒸溜所とも名乗る)から調達して造られています。MGPはアメリカのライ市場の80%以上を生産していると目される元シーグラムの蒸溜所。数多のNDPやクラフト・ディスティラリーにも最高級のウィスキーを提供するこの蒸溜所には多くのレシピがあり、有名なのはライ麦が95%のレシピですが、それだけに留まらずバーボン・レシピも当然ながらある訳です。
幸いなことに判り易くマッシュビルの情報はラベルに記載されています。「バーボン」はコーン75%、ライ21%、バーリーモルト4%です。別に「ライ」と「ハイ・ライ」があるのだから、通常のバーボンには対照的にライ麦を控えたロウ・ライのレシピを使用しているのではないかと思ってしまいそうですが、リデンプション・バーボンのライ麦の含有量は業界水準より高めです。実のところ"ハイ・ライ"という用語は法律で定められていないため明確な基準がありません。ロウ・ライ(またはハイ・コーン)のレシピはライが10%以下であることが多いため、15〜18%のライ麦率でもハイ・ライと言われる場合もあったりします。従って、この通常のバーボンをハイ・ライとして販売することも可能なのですが、リデンプションはライを前面に押し出したブランドのため、21%でもハイ・ライを名乗らないのです。
一方の「ハイライ・バーボン」はと言うと、コーン60%、ライ36%、バーリーモルト4%のマッシュビルを使用しています。アメリカン・ウィスキー愛好家は、これらの原料の構成を見てすぐにフォアローゼズの二つのマッシュビルとの類似に気づくでしょう。フォアローゼズのEマッシュビル(75%コーン/20%ライ/5%モルテッドバーリー)及びBマッシュビル(60%コーン/35%ライ/5%モルテッドバーリー)とはライとモルトが1%づつしか変わりません。マッシュビルは使用されるモルトの量によって僅かに変動する可能性があるので、実質的にMGPとフォアローゼスは同じマッシュビルを使っていることになります。実際、リデンプション初期のトールボトルのラベルには、バーボン(旧名テンプテーション)では「20%プレミアム・ライ、5%バーリーモルト、75%コーン」と書かれてフォアローゼズのEマッシュビルと一致し、ハイライ・バーボンでは「38.2%プレミアム・ライ、1.8%バーリーモルト、60%コーン」とマッシュの変動が細かく記されていました。
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インディアナ州ローレンスバーグのジョセフEシーグラム蒸溜所(現MGPプラント)とケンタッキー州ローレンスバーグのオールド・プレンティス蒸溜所(現フォアローゼズ蒸溜所)は共に嘗てシーグラムが所有していた歴史があります。二つの蒸溜所は、シーグラムの品質管理チームが互いのイースト・ストレインをテストしたり、またそれらを共有していました。基本的にフォアローゼズが使用しているイーストはインディアナの蒸溜所でも大体使用できるらしく、フォアローゼズのイーストは「V、K、O、Q、F」、MGPのイーストは「V、K、O 、Q、S(ライト・ウィスキーに使われる)」とされます。シーグラム時代に考案されたレシピの略語は今でも使われ、例えばフォアローゼズで「OESV」と呼ばれるレシピは、インディアナ州の蒸溜所では「LESV」と呼ばるそう。一文字目の「O」はフォローゼズの旧称オールド・プレンティスを表し、「L」はインディアナ州ローレンスバーグの施設を示します。二文字目はマッシュビルを意味し、フォアローゼズで「E」や「B」と呼ばれるものはMGPでも「E」や「B」な訳です。ちなみに、MGPの95%ライ/5%バーリーモルトのライ・ウィスキーは「Q」、 80%コーン/15%ライ/5%バーリーモルトのコーン・ウィスキーは「C」、99%コーン/1%バーリーモルトのマッシュビルは「D」の略号が与えられています。MGPには他にも以下のような6種類のマッシュビルがあります。
◆バーボン(51%コーン/45%ウィート/4%バーリーモルト)
◆バーボン(51%コーン/49%バーリーモルト)
◆ライ・ウィスキー(51%ライ/49%バーリーモルト)
◆ライ・ウィスキー(51%ライ/45%コーン/4%バーリーモルト)
◆ウィート・ウィスキー(95%ウィート/5%バーリーモルト)
◆モルト・ウィスキー(100%バーリーモルト)

奇しくも同名であるローレンスバーグの二つの蒸溜所の類似点は他にもあり、両者は原料のライ麦を主にドイツの同じ生産者から仕入れているだろうと推測されています。シーグラムの科学者達は最高のスピリッツを造るために常にテストを繰り返し、北米産のライ麦に較べてドイツで栽培される特定のライ麦種が自分達のイーストにとってベストなマッシュを生むと確信しました。また彼らは、一貫して豊かなフレイヴァー・プロファイルを実現するために、120のバレル・エントリー・プルーフを採用しました。現在でもフォアローゼズとMGPはそうしています。そして、フォアローゼズの熟成倉庫は温度差の少ない平屋建てで知られていますが、MGPの熟成倉庫も亦、平屋造りではないものの壁面が煉瓦造りで各フロアはコンクリートの床と天井で区切られており、多くのケンタッキー州のリックハウスと較べると各階は一定の温度と湿度が維持され、庫内の場所に関係なく各バレルを同じように熟成させる哲学で設計されています。

偖て、話が若干逸れたのでリデンプションに戻すと…今回私が飲んだ「バーボン」は84プルーフで瓶詰めされています。リデンプション・バーボンをネットで調べると、88プルーフの物がけっこうな割合で見つかりました。販売地域によりプルーフに差を付けているのか、もしくは或る時からボトリングするプルーフを上げたのかも知れません。もし後者なら、そのうち日本に入って来る物も88プルーフになるのかも?
先述のように、リデンプションのスタンダードな物は熟成年数の短いウィスキーです。ブランド・アンバサダーのジョー・リッグスは、より少ない熟成で成熟した風味を生み出す「全く新しいディスティリング・プロセス」に取り組んでいると述べていましたが、一体どのようなものなのか具体的には良く分かりません。取り敢えず、これらの若いバーボンを味わってみましょう。

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REDEMPTION BOURBON 84 Proof
Batch No. 026
推定2020年ボトリング。淡いブラウン。焦がした木材、穀物、ペッパー、ライスパイス、薄いキャラメル、ミント、よく言ってアップル、ピーナッツ、エタノール、鉛筆。ノーズは甘さのあまりない爽やかな穀物と木材の香り。ややとろみのある口当り。パレートでは、ほんのり甘いがピリピリ感も。余韻は短く、ドライさの中にライっぽさが少し顔を覗かせる。
Rating:79/100

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REDENPTION High Rye Bourbon 92 Proof
BATCH No. 120
推定2020年もしくは2021年ボトリング。淡いブラウン。トーストした木材、グレイン、ライスパイス、シュガー、ペッパー、種のお菓子、僅かなドライフルーツ、グリーンアップル、若草。アロマはスパイシー。ややとろみのある口当り。パレートは青い果実とスパイスが感じ易い。余韻はややドライであまり甘くない穀物とライの爽やかな苦味が残る。
Rating:82.5/100

Thought:バーボンの方は、流石にもうちょっと熟成したほうがいいなぁという感想でした。円みも僅かに出て来ているのですが、味わいも余韻もちょっと平坦で、もう4年熟成させたら凄く美味しくなりそうな予感で終わります。海外の方でメロウコーンを思い出すと言ってる方がいましたが、個人的にはそこまで「メロウ」とは思いませんでした。ライ麦21%はバーボンとしては多い方ですが、私には香りからライやベーキングスパイスの存在を見つけるのは難しく、味わいも「ライ」にあったシトラスやグリーンリーフのフレイヴァーはあまり感じられません。基本的にグレイン・フォワードなバーボンで、よく言えば甘いシリアルのような味わいとは言えます。
ハイライ・バーボンの方は、スパイスと甘さのバランスがちょうど良く、だいぶ美味しく感じました。なんか嘘みたいにリデンプションのバーボンとライ・ウィスキーを混ぜたような中間の風味がします。ただ、何故か甘いアロマは最も弱く感じました。以前に飲んだライ・ウィスキーを含めて三つのラインナップで見た時に、私個人の趣味としては見事なまでにライ麦含有量が高い順に旨く感じます。ライ、ハイライ・バーボン、バーボンの順に自分好みのシトラスやディルの風味が感じ易いのです。「結局、お前がライ・ウィスキー好きなだけやろ」と言うツッコミには、はい、その通りですと言うしかありません。けれどもバーボンよりライの方が短期の熟成で美味しくなるというコンセンサスはある程度はあり、それがこの結果となっている気もします。
両者を比較して、キャラを強調して言うと、バーボンはナッティ寄り、ハイ・ライはフルーティ寄りでしょうか。余談ですが、これらのウィスキーはテイスティング・グラスで飲むとちっとも美味しくなく、ショットグラスかラッパ飲みだとなかなか美味しかったです。これは若いウィスキーによく見られる傾向かなと個人的には思っています。最後に、以前レヴューしたライを含めた3つのクラシックなリデンプション・ウイスキーのセレクションを総評すると、基本的にカクテルに使用するために造られてる気はしますが、どれも若い割には粘度が高く、ニートで飲んでも十分美味しいです(特にライとハイ・ライ)。但し、もう少し樽熟成が長ければ、もっと素晴らしいものになるでしょう。そして問題は価格…。

Value:販売地域によって変わりますが、バーボンもハイライ・バーボンもアメリカでは25〜30ドル程度の場合が多いようです。ところが日本ではバーボンは3000円程度なのですが、ハイ・ライ及びライ・ウィスキーは何故か5000円程度します。熟成年数の短さを考慮すると、これは痛い。正直、コスパは良くないです。「バーボン」なら大手の蒸溜所がリリースしてるスタンダードな製品の方が安い上に旨く感じてしまうし、「ライ」ならテンプルトンの4年熟成の方が安いのです。「ハイ・ライ」に関しては、MGPのハイライ・レシピ原酒の中で日本では比較的入手し易いという利点はあるかも知れません。ブランドのイメージやボトルのデザインが好きとか、敢えてヤンガー・ウィスキーを好む方にはオススメします。ですが、私はこの値段なら再度の購入はしないかな…ごめんなさい。


*2023年3月にニューボトルになることが発表されました。なので本文中で「現在の〜」と言っているボトルは、新しいボトルにリニューアル後は一つ前のものとなります。ディアジオからブレットのボトルに似ていると訴えられたのが理由で変更したのかも知れませんね。


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