バーボン、ストレート、ノーチェイサー

バーボンの情報をシェアするブログ。

2024年08月

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ミルウォーキーズ・クラブさんでの始めの一杯は軽めのライにしました。マーティン・ミルズ・ライです。マーティン・ミルズと言うと24年物のプレミアム・バーボンが有名ですが、それは例外的であって、基本的にこのブランドはボト厶シェルファーのカテゴリーに入ります。ブランドの起源は良く分かりません。かろうじて、初期ヴァージョンは1959年に初めて発売され、ヘヴンヒルはその数年後に国内および輸出品として販売をした、と云う情報はありました。私はその初期の物は画像でも見たことがないです。画像検索で見つけられた比較的古い物では、上述の1999年にボトリングされた24年熟成の物以前、90年代と思しき輸出品の80プルーフでボトリングされたNASの物がありました。既にこの頃にはアメリカ国内では販売されておらず、輸出専用になっていたのではないかと思います。2000年以降でも小売価格の安い最下位のボトルは引き続き販売されていました。また、2010年頃にはアーティストのSHAGがデザインしたオリジナル・ラベルの物があり、ミッドセンチュリーのカルチャーが好きな人には好評でした。これは普通のラベルのマーティン・ミルズより100円ほど高かったらしいです。
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で、このライですが、おそらく2000年代半ば頃に流通していたものと思われます。これまた画像検索しても海外物が発見できなかったところからすると、日本への輸出のみなのかも知れません。と言うか、(24年物を除外した)マーティン・ミルズというブランド自体、酒販店のやまやの専売なのかも? 仔細ご存知の方はコメントよりご教示下さい。偖て、次に中身に関してですが…、こういったマイナーなブランドと言うか最下層製品は、宣伝費用を掛けてもらえないため、バックストーリーは語られませんし、製品情報も朧げです。勝手に憶測するに、まだライ・ウィスキーの人気が爆発する前ですから、ヘヴンヒルが年に1日だけライを蒸溜していた当時の少量生産で、地域限定販売だったリッテンハウス・ライの80プルーフやパイクスヴィル・スプリームと大差ないのではないかと思われます。或いはそれらに選ばれなかった樽から造られてるのかも知れない。多分、熟成年数は3〜4年程度でしょう。ヘヴンヒルによると現在の彼らのスタンダードなライ・マッシュビルは51%ライ、35%コーン、14%モルテッドバーリーとのことですが、少し前の情報源だと51/39/10や51/37/12としているものもあるので、もしかすると時代による変遷があった可能性はあります。また、2000年代半ばのボトリングで熟成年数が3〜4年なのが正しいのならば、蒸溜時期は2000年代の初め頃となります。バーボニアンにはよく知られるように、1996年11月9日、アメリカン・ウィスキー史上最大最悪の火災が発生し、バーズタウンのヘヴンヒル蒸溜所は焼失しました。そこでヘヴンヒルは暫くの間、他の蒸溜会社を頼り、ジムビームやブラウン=フォーマンに契約蒸溜をしてもらいました。ヘヴンヒルは1999年にルイヴィルのバーンハイム蒸溜所をディアジオから購入して蒸溜を再開するのですが、生産調整のためかこの契約蒸溜は2008年まで続き、この間ヘヴンヒルのライ・ウィスキーは全てブラウン=フォーマンの元アーリータイムズ・プラントで製造されていたとされます。なので、このマーティン・ミルズ・ライもブラウン=フォーマンが蒸溜したものなのかも知れません。マッシュビルはヘヴンヒルが指定したものと思われるので、上記の何れかでしょう。
そして、なかなかに目立つイエローのラベル、個人的には好きですね。今ではライと言えばグリーンを使ったラベルが一般的となっていますが、マーティン・ミルズ・ライがリリースされた時分はまだそうではありませんでした。おそらく昔のジムビーム・ライのイエロー・ラベルに倣ったのではないでしょうか。そう言えばライに限らず、フォアローゼズも従来象徴的だったイエロー・ラベルが何時の間にかベージュに変化し、アーリータイムズのイエロー・ラベルは消滅しています。新しいアメリカン・ウィスキーが続々と誕生している昨今、イエローのラベルと言うとストラナハンズくらいしかパッとは思い付きません。現代のアメリカン・ウィスキー業界では何故こんなにもイエローの人気がないのでしょうか? 現代アメリカ人には古臭いか安っぽい印象を与える色なのかしら…。まあ、それは扨て措き、最後に飲んだ感想を少しばかり。


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Martin Mills Rye 80 Proof
推定2007年ボトリング(瓶底)。ややミンティな香り。しかし、キャラウェイやフェンネルのようなハーブは感じることが出来ない。ドライな味わい。若くて穀物っぽいところが荒々しい印象を残す。新樽由来のバーボンに近しい香味の方が優勢な感じ。全体的にライ・フレイヴァーは希薄で口当たりも軽いが、それは始めの一杯としてこちらの意図通りなので不満はない。また、ハイボールには向いていそう。
Rating:78/100

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(画像提供MILWAUKEE'S CLUB様)

先日、久々にバーボン遠征に行ってきました。今回お邪魔したのは、バーボン・マニアには言わずと知れた埼玉県は川口の名店ミルウォーキーズ・クラブさん。バーボン600種を含む1000種類を超えるウィスキーを取り扱うその品揃えは圧巻で、バーボンに関しては関東随一と昔から目されています。実際に目にしてみると、80年代後半から90年代初頭に日本へ輸入され、現在ではユニコーンとされるバーボンの品揃えは特に凄まじいです。また、お店オリジナルのメモリアル・ボトルや蒸溜所とコラボしたスペシャル・ボトル、独自にピックされたシングルバレルのボトル等も、当然ながら豊富にあり、それらを目当てに伺うお客さんも多いようです。しかし、このお店の魅力は、希少なバーボンが飲めるだけに留まらず、オウナーの白井慎一さんその人にもあるでしょう。白井さんは、リード・ミテンビューラーの名著『Bourbon Empire : The Past and Future of America's Whiskey(バーボン帝国─アメリカのウィスキーの過去と未来)』を翻訳した我々にお馴染みの日本版『バーボンの歴史』(原書房)の監訳[※出版翻訳や学術論文などで、監修の役割で全体を査読し、内容や翻訳に間違いがないかを最終的にチェックすること]を担当し、これまた我々にはお馴染みの『ザ・ベスト・バーボン』と『バーボン最新カタログ』(共に永岡書店)に関わっていたり、ウィスキーのコンペティションの審査員を務めたり、ウィスキー雑誌に執筆したりと、日本に於けるバーボン業界の重鎮です。現地の蒸溜所を訪れた際のエピソードや業界の裏話を交えたトークはここに通う楽しみの一つとなっており、売り上げも白井さんが店にいるかいないかで大きく変わるのだとか。貴重なバーボンを求めて海外のマニアが訪れることも多く、MILWAUKEE'S CLUBから始まって、FIVEさん、GEMORさん、ANKIさん、ROGIN'S TAVERNさん等を巡る日本バーボン・バー・ツアーをする強者もいると聞き及びます。

マスターの白井さんは、ご実家が代々飲食店を経営しており、甘味処しらゆり(耳で聴いたので表記は不明)は有名だったそう。お父さんは洋食屋を営み、自身もフレンチの修行へ出ていました。それまで安酒ばかり飲んでいたところにフォアローゼズを飲んで衝撃を受けバーボンに開眼したと言うマスターは、琥珀の世界とアメリカへの憧れを一気に強くし、2階のレストランの上にバー「ビア&バーボン・ミルウォーキーズクラブ」を1990年に開店。店名はアメリカのビール「オールド・ミルウォーキー」から。もしバーボンから店名を取るなら「テンガロンハット」になってただろうね、そうなると西部劇のサルーンみたいな雰囲気の店にしなくちゃならなかった、とマスターは笑っていました。今年で34年目を迎える老舗のミルウォーキーズ・クラブさんですが、現在では川口駅東口の再開発により2023年春にオープンした「樹モールプラザ」の2Fへ移転して営業しています。モールの中の一店舗ということもあってか、店内は比較的明るめで、素人が入りにくい雰囲気はありません。上掲の画像のようにテラス席もあったりします。整然と並んだウィスキーの数々は、図書館を意識した陳列らしく、銘柄が見やすいのも特筆すべき点。レアなバーボンのオールド・ボトルが最大の魅力ではありますが、アメリカンだけでなくスコッチやジャパニーズ・ウィスキーの品揃えもなかなかの粒揃いなので、決してバーボン・マニア専門の敷居が高いバーではないですから、ウィスキーに興味を持ちたての方でも、近隣遠方問わず是非立ち寄ってみて下さい。

あと、これはかなり個人的な感想ですが、チェイサー用の水がかなり大きめのグラスで提供されるのはとても有り難かったです。私はお酒に弱いので、出先のバーで飲む時は大量の水を必要とし、チェイサー用グラスが空になる度に店員さんを呼ばなければなりません。だからグラスが大きいと呼ぶ回数が減って助かるのです。なんなら途中からは大きめのウォーター・ピッチャーを用意してくれたので、自分で好きな時に水を注げるようになりました。これは凄く嬉しい気遣いでした。勿論、水がなくなったり少なくなるとマスター及び店員さんが先に気付いて注いでくれることも多いですが、その場合、こちらとしては何度も注がせてしまって申し訳なく感じるので、やはり自分で勝手に注げるのは気が楽なものです。ちなみに、当ブログのタイトルが「バーボン、ストレート、ノーチェイサー」であるところから、これをお酒の注文方法や飲み方のことと勘違いして、私のことをチェイサーも飲まずにバーボンをストレートでガブ飲みするとんでもない酒豪のようにイメージする方が偶にいるのですが、このタイトルは単に私の敬愛するバーボン作家チャールズ・カウダリーの名著「Bourbon, Straight」と、ユニークなジャズ・ピアニストであるセロニアス・モンクの名曲「Straight, No Chaser」を、響きが良いかなと思い合体させて名付けただけであって、私自身はバーではチェイサーに水は必須です。まあ、自宅では殆どの場合、1回にショットグラス1杯しか飲まないので、確かにチェイサーを飲んではいませんから、全く酒の飲み方を表していないとは言い切れませんけれども…。


〒332-0017
埼玉県川口市栄町3丁目13-1
樹モールプラザ2F
区画209

営業時間 17:00-23:30
定休日 : 火曜日
Tel : 048-253-0280(営業時間内)

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