
Maker's Mark VIP Red Wax 90 Proof
スタンダードなメーカーズマークの上位に位置するこのVIPですが、日本で流布している一説に、中身はスタンダードと同じ、という説があります。個人のブログや有名掲示板のみならず、なんなら酒販店の商品説明でそう記載されてるのも見たことがあります。スタンダードは2500円程度で、VIPは当時の定価で10000円近くしました。箱と瓶代だけでこんなに違ったら消費者は怒りますよ。
私は自分が鋭敏な味覚を持ってるとは思いませんが、実際飲んでみたところ、VIPは特別なフィーリングを持ったバーボンだと思いました。スタンダードと同じ度数でありながら、インナーステイブで後熟されなおかつ2度もアルコール度数の高いメーカーズ46を凌駕する芳香と味わいとバランスです。
では、なぜ「中身はスタンダードと同じ」などという言説が出てきてしまったのか? これは私の憶測なのですが、メーカーズマークの販売を促進するためのセミナーにおいて、蒸留所で現に働く人がその製法について語る際、メーカーズマークではレシピ(トウモロコシ70%小麦16%大麦麦芽14%)は一つであり、熟成樽を三年に一度位置を入れ換える(ローテーション方式)から、味はどれも均一に仕上がっていて大差はない、と語ったことに由来するのではないかと思います。流れとしては、セミナーに参加した人がその事を自身のホームページやブログに書く、それを見た人がまた自身のホームページやブログに書く、或いは仲間やお客さんに口頭で伝えていく……こういう連鎖で自然と「中身はスタンダードと同じ」という言説が拡がったのではないかと。確かにメーカーズマーク関係者の語ることに嘘はないでしょう。なぜならメーカーズマークの販売戦略は創業当時から、エントリーレヴェルの安酒~ミドルクラスの定番品~熟成年数の長いプレミアムまで幅広く取り揃えるのではなく、手頃な価格だけど旨い酒1種類を少量生産で売る戦略を取ってきたからです。セミナーではそういう根本的な姿勢こそを強調して伝えるに違いありません。そしてセミナー受講者にも悪意はないでしょう。ただ聴いたことを素直に伝言しただけです。
では、このVIPとは何なのでしょうか? 伝え聞くところでは、そもそもメーカーズの社長がVIPの人への贈答用として造ったものとされ、それをプレミアム商品として売り出したのだと言われています。昔はゴールドワックスで封がされており、ラベルも付いておらず、付属されたハガキをメーカーズマークへ送るとオリジナルのラベルが返送される仕組みになっていました。この「赤VIP」も個人用ラベルがもらえる仕組みがあります。
ここからはまたもや私の想像ですが、スタンダードとの違いがレシピにもなく、度数にもないとしたら、残された可能性は、
①樽に使用する木材の質が特別な物である。メーカーズは自社で樽を造ってるそうなのでそれも可能かと。
②スタンダードの熟成とは別の特別な場所で熟成された。どこの蒸留所もそういう「スイートスポット」を有しているものかと。
③熟成年数がスタンダードより長い。スタンダードは6年とされてますが、V.I.Pは8年はありそうな気配があるかと。
④ノンチルフィルタードである。旨味成分の多さからそれもありかと。
まあ勝手な空想ですが、それらのどれか、もしくは複数ではないでしょうか。或いはシングルバレルなのかも知れません。とにかくスタンダードより遥かに旨いです。
Rating:87.5/100
追記1:その後『ウイスキーの教科書』という本の中で、ゴールドワックスVIPの「MM1983 Vintage Bourbon」というボトルの紹介記事に、19樽を選び通常品とは切り離して貯蔵、と書かれているのを発見しました。それが事実なら赤VIPもそれに近い物である可能性は高いです。つまりスモールバッチで上の②③が正解だったのかも知れません。
スタンダードなメーカーズマークの上位に位置するこのVIPですが、日本で流布している一説に、中身はスタンダードと同じ、という説があります。個人のブログや有名掲示板のみならず、なんなら酒販店の商品説明でそう記載されてるのも見たことがあります。スタンダードは2500円程度で、VIPは当時の定価で10000円近くしました。箱と瓶代だけでこんなに違ったら消費者は怒りますよ。
私は自分が鋭敏な味覚を持ってるとは思いませんが、実際飲んでみたところ、VIPは特別なフィーリングを持ったバーボンだと思いました。スタンダードと同じ度数でありながら、インナーステイブで後熟されなおかつ2度もアルコール度数の高いメーカーズ46を凌駕する芳香と味わいとバランスです。
では、なぜ「中身はスタンダードと同じ」などという言説が出てきてしまったのか? これは私の憶測なのですが、メーカーズマークの販売を促進するためのセミナーにおいて、蒸留所で現に働く人がその製法について語る際、メーカーズマークではレシピ(トウモロコシ70%小麦16%大麦麦芽14%)は一つであり、熟成樽を三年に一度位置を入れ換える(ローテーション方式)から、味はどれも均一に仕上がっていて大差はない、と語ったことに由来するのではないかと思います。流れとしては、セミナーに参加した人がその事を自身のホームページやブログに書く、それを見た人がまた自身のホームページやブログに書く、或いは仲間やお客さんに口頭で伝えていく……こういう連鎖で自然と「中身はスタンダードと同じ」という言説が拡がったのではないかと。確かにメーカーズマーク関係者の語ることに嘘はないでしょう。なぜならメーカーズマークの販売戦略は創業当時から、エントリーレヴェルの安酒~ミドルクラスの定番品~熟成年数の長いプレミアムまで幅広く取り揃えるのではなく、手頃な価格だけど旨い酒1種類を少量生産で売る戦略を取ってきたからです。セミナーではそういう根本的な姿勢こそを強調して伝えるに違いありません。そしてセミナー受講者にも悪意はないでしょう。ただ聴いたことを素直に伝言しただけです。
さて、上に述べたことと少々矛盾しますが、メーカーズにも例外的なリミテッドリリースはありました。それは日本人にはよく知られた、ゴージャスなゴールドのラベルとワックスをもつ通称ゴールドトップと、男っぽいブラックのラベルとワックスをもつ通称ブラックトップです。

ゴールドはスタンダードなレッドと同じジュースながら101プルーフでボトリングされたハイアープルーフ版。元々はケンタッキー州のみで販売されていたものの、バーボンの販売において当時の日本市場はアメリカ本国よりも高い利益率を示したため、1996年頃にアメリカでは廃止となり、輸出専用ボトルになりました。しかし、それも1999年には廃止されたと言います。一方のブラックは熟成年数がスタンダードなレッドよりも2年から2年半ほど長いとされ、なおかつプルーフも僅かに高い95プルーフでのボトリング。もともと日本市場限定の製品で94年に発売され、そしてこちらも2000年頃には販売停止となりました。

ゴールドはスタンダードなレッドと同じジュースながら101プルーフでボトリングされたハイアープルーフ版。元々はケンタッキー州のみで販売されていたものの、バーボンの販売において当時の日本市場はアメリカ本国よりも高い利益率を示したため、1996年頃にアメリカでは廃止となり、輸出専用ボトルになりました。しかし、それも1999年には廃止されたと言います。一方のブラックは熟成年数がスタンダードなレッドよりも2年から2年半ほど長いとされ、なおかつプルーフも僅かに高い95プルーフでのボトリング。もともと日本市場限定の製品で94年に発売され、そしてこちらも2000年頃には販売停止となりました。
では、このVIPとは何なのでしょうか? 伝え聞くところでは、そもそもメーカーズの社長がVIPの人への贈答用として造ったものとされ、それをプレミアム商品として売り出したのだと言われています。昔はゴールドワックスで封がされており、ラベルも付いておらず、付属されたハガキをメーカーズマークへ送るとオリジナルのラベルが返送される仕組みになっていました。この「赤VIP」も個人用ラベルがもらえる仕組みがあります。
ここからはまたもや私の想像ですが、スタンダードとの違いがレシピにもなく、度数にもないとしたら、残された可能性は、
①樽に使用する木材の質が特別な物である。メーカーズは自社で樽を造ってるそうなのでそれも可能かと。
②スタンダードの熟成とは別の特別な場所で熟成された。どこの蒸留所もそういう「スイートスポット」を有しているものかと。
③熟成年数がスタンダードより長い。スタンダードは6年とされてますが、V.I.Pは8年はありそうな気配があるかと。
④ノンチルフィルタードである。旨味成分の多さからそれもありかと。
まあ勝手な空想ですが、それらのどれか、もしくは複数ではないでしょうか。或いはシングルバレルなのかも知れません。とにかくスタンダードより遥かに旨いです。
Rating:87.5/100
追記1:その後『ウイスキーの教科書』という本の中で、ゴールドワックスVIPの「MM1983 Vintage Bourbon」というボトルの紹介記事に、19樽を選び通常品とは切り離して貯蔵、と書かれているのを発見しました。それが事実なら赤VIPもそれに近い物である可能性は高いです。つまりスモールバッチで上の②③が正解だったのかも知れません。
また、このVIPの箱には©️2007と書かれています。そこから察するに、この赤VIPの発売が2007年だとすると、メーカーズ46の発売が2010年と言われてますので、新製品の46発売と同時期もしくは少し前にVIPは廃盤となったのかも知れません。そこで現行と対比してみると、まずスタンダードなレッドトップは不変として、ハイアープルーフであるゴールドの代わりがカスクストレングス、熟成年数の長いブラックの代わりがメーカーズ46、VIPの代わりがプライヴェートセレクトと言ってよいでしょう。と言うことは、ラインナップのヴァリエイションとしては大して変わってない訳で、ここらへんの伝統と革新のバランス感覚にこそメーカーズマークの経営美学の真髄を見る思いですね。
追記2:その更にあと、メーカーズマークVIPについて整理し直しました。興味のある方はこちらをご覧下さい。

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