カテゴリ: コラム

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【バーボンの語源】

バーボンという言葉は、日本人にはお馴染みのお菓子メーカー「ブルボン」と同じ言葉でして、フランス読みでブルボン、アメリカ読みでバーボンなだけです。アメリカ独立戦争(1775~1783年。イギリス本国とその13植民地との戦い)の際、フランスはアメリカに色々と協力しました。結果、独立を果たしたアメリカはその功績を讃え、各地でフランスにちなむ地名や都市名をつけたのです。例えばウッドフォード郡にあるバーセイルズはフランス読みでベルサイユですし、多くの蒸留所が集うルイヴィルは、そのままルイ16世の「ルイ」に村を意味するフランス語「ヴィル」がついたものです(ちなみにルイジアナ州のルイもルイ14世から由来します)。またパリのアメリカ読みパリスという小さな都市もあります。そのパリスがあるのがバーボン郡であり、フランスのブルボン王朝にちなみ名付けられました。
バーボンの語源はこのバーボン郡発祥の物だから、というのが日本ではよく見かける説明です。しかしバーボン誕生秘話は、実際には確たる証拠の資料はないのが実情で、当時のケンタッキー州がまだ辺境地帯であり、物事を記録するという習慣のあまりない地域であり時代でもあったため、歴史家の推論や蒸留所のマーケティング担当者の想像力に頼るしかないのです。おそらくは「時代の要請」や「やむにやまれぬ事情」から、名もなき農民蒸留家によって自然発生的に各地でバーボンの原型は形造られていったと思われます。ちなみにバーボン郡には禁酒法以後2015年まで1つの蒸留所もありませんでした。

では、バーボン郡が発祥でないのになぜバーボンと呼ばれるようになったかというと、それはライムストーン起源説によって説明されます。ここではケンタッキーの歴史とオールド・バーボンという語がキー・ポイントです。
バーボン郡が1785年に誕生した時、ケンタッキー州は州ではなく、ヴァージニア州の一部でした。その当時のバーボン郡はヴァージニア州ケンタッキー地区の北東部・東部・南東部を占める大きな郡だったのですが、ケンタッキー地区が1792年に州として分離する頃には区画整理によってだいぶ小さくなっていました。1800年までには更に分割されもっと小さくなりました。そこで後に昔の広大なバーボン郡のことを「オールド・バーボン」と呼ぶようになったと言います。また、まだヴァージニア州時代のその広大なバーボン郡には、1784年に開港したライムストーンという港があり、初期ケンタッキーの重要な港湾都市だったそうです(現在のメイズヴィル)。1788年にはバーボン郡の約半分の面積がメイソン郡となり、ライムストーンもメイソン郡に含まれていましたが、それでも20年ほどは昔を懐かしんでか「オールド・バーボン」の愛称で呼ばれたと言います。ライムストーンから出港される大量の貨物の中には当然ウィスキーの樽も入っていました。その樽には「Old Bourbon Whiskey」の焼印(この焼印のことを「ブランド」と言います)が施されていたそうです。この当時アメリカンウィスキーの代表格は東部産のライウィスキーであり、それは地名に由来するモノンガヒーラと呼ばれていました。それとの区別、差別化の意味を込めて西部のウィスキー=オールド・バーボンとしたのではないか、という解釈があります。このバーボンウィスキーが、ケンタッキー州の州境となるオハイオ川を下り、ミシシッピ川を経由してルイジアナ州に至り、当時アメリカ最大の都市の一つであったニューオリンズへと売られていった。この故にケンタッキー産のある種のコーンウィスキーのことをバーボンと呼ぶようになった、と。つまりバーボン郡で造られたからバーボンなのではなく、オールド・バーボンから出港されるからバーボンと呼ぶようになった、これがライムストーン起源説です。

ライムストーン起源説は長年信じられてきた説で、一見なるほどと思ってしまうのですが、近年の歴史家からはこれを裏付ける資料は残ってないとされています。確かに素人目にも、ライムストーンがバーボン郡であった期間が短すぎるし、バーボンという言葉がウィスキーの一般名になったのが南北戦争(1861~1865年)以後のことであると言われれば、年代的に時間の辻褄が合ってない気がします。では、最近の研究ではどう解釈されているかというと、マーケティング説というのが有力になりつつあるようです。
近年の研究では中間業者、つまり蒸留する人とバーで酒を販売する人の間にいる人々に光が当てられました。バーボンを焦がした樽で熟成させるのも、フランス系の中間業者がコニャックの影響を受けてそうしたのではないか、と推察され、バーボンの歴史家マイケル・ヴィーチはそうした例としてタラスコン兄弟の名を挙げています。そして彼らの販売先であるニューオリンズは、フランス革命から逃れてきた王党派が多かったそうです。その人たちにしてみれば「ブルボン」という飲み物が提供されれば悪い気はしないでしょう。また逆に革命派の人たちにはフランスとアメリカの繋がりを説明すればいい、と。そういうマーケティング上完璧なネーミングがバーボンだった、という訳です。

始めに触れた日本のお菓子メーカー「ブルボン」をもう一度思い返して下さい。そもそもは北日本製菓という会社が起こりで、1989年に会社名も人気のブランドと同じブルボンに変更しました。そのブランド名ブルボンは、フランスのブルボン家に由来するともコーヒーのブルボン種に由来するとも言われていますが、まあどちらでも構いません。とにかくブランド誕生の現場を勝手に想像してみましょう。きっと当時の日本人に対して、ブルボンというフランス語がオシャレな響きを持っている、と判断されたのではないでしょうか?  マーケティングとは売りたい相手にどういうイメージを売るか慮ることが大事だと思います。お酒のバーボンもおそらくは同様に、アメリカ生まれのコーンウィスキーをバーボンと呼ぶことで、遠くの異国を想わせ、丸みの帯びた響きを持ち、オシャレで上級な雰囲気を漂わせたのではないでしょうか?  そう考えれば「バーボン」とは正に「ブルボン」だったのです。


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【バーボンとは?】

バーボンとは簡単に言うと、以下の要件を満たす蒸留酒のことです。

①アメリカで造られていること。
②原材料(マッシュ)に51%以上コーンが使われていること。
③160プルーフ(80度)以下で蒸留すること。
④内側を焦がしたオークの新樽(ニュー・チャード・オーク)で熟成させること。
⑤樽入れの度数(エントリープルーフ)が125プルーフ(62.5度)以下であること。
⑥80プルーフ(40度)以上でボトリングすること。

更に「ストレート」と名乗るためには、
⑦2年以上の熟成期間が必要。
⑧水以外の着色料やフレイヴァー等の添加物を加えてはならない。

と、まあこんなところですけど、少しだけ補足すると、バーボンの定義について語ってるものの中に「ケンタッキー州でつくられたもの」と書かれているのをたまに見かけますが、これは全バーボンの九割以上がケンタッキー州産なことからくる誤解です。①の定義によりアメリカ国内で造られていればバーボンと名乗ることは出来ます。ただし「ケンタッキー・ストレート・バーボン」と名乗るためにはケンタッキー州で造られていなければなりません。

また、似たような誤解の例に「厳密にいうとジャック・ダニエルズはテネシー・ウィスキーであってバーボンではない」という言い回しが挙げられます。実はジャック・ダニエルズはバーボンの要件を全て満たしています。つまりバーボンなのです。テネシー州の規定により、同地で製造され、かつチャコール・メロウイングを施してあるものがテネシー・ウィスキーを名乗れるため、テネシー人の誇りをもってそう言っているだけで、レギュレーション上バーボンでない訳ではありません。アメリカ南北戦争当時、南軍のテネシー州と中立から北軍に転じたケンタッキー州とでは隣接する州ながら仲が悪く、それがウィスキーの呼称にまで影響を及ぼしているのでは?との説があります。日本でも隣接する県同士のライバル視などがあるではないですか、そのようなものかと。まあ、実際にはマーケティング戦略におけるバーボン一般との差別化でしょう(※)。

あと注意しておく点は⑦です。「バーボン」には熟成年数の規定はありません。三ヶ月熟成でもバーボンと名乗れます。ただし「ストレート・バーボン」と名乗るには最低2年の熟成が必要となるのです。また「ケンタッキー・バーボン」を名乗るには最低1年の熟成が必要となります。

上に述べた定義は1909年に出されたウィリアム・ハワード・タフト大統領の有名な「タフト・デシジョン」のストレート・ウィスキーに関する規定を核とし、後の1938年(新樽の使用)と1964年(アメリカ国内製造)に加えられた条項をベースにしたものです。それを私が解りやすいと思われる日本語に整理し直しました。詳しく知りたい方は、現在ラベル表示とマーケティングに関する規制を取り仕切るTTB(Alcohol and Tobacco Tax and Trade Bureau)のサイトをご参照下さい。

少しでも日本にバーボン(大きく言ってアメリカンウィスキー)が根付けばいいなと願い、ブログを始めることにしました。ネットで検索すれば即座に出てくることではありますが、先ずはバーボンとは何かを説明することで「はじめの挨拶」に代えさせて頂きます。ご意見ご感想、見解の相違や間違いの指摘等はコメントからどしどしお寄せください。レッツ・バーボン・トーク!

※日本でもアメリカでも「ジャックダニエル論争」というものがあります。つまりジャックはバーボンなのかそうではないのか、という議論です。正直言って退屈な議論なのですが、熱を帯びやすいファン心理に基づくところが多分にあり、異様に盛り上がったりします。今はバーボン一般について語っているので、ジャックにこれ以上は立ち入ることはしません。論争については本ブログでスタンダードなJACK DANIEL'S Old No.7を取り上げる時少しだけ言及する予定です。

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