カテゴリ: ケンタッキーバーボン

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ワイルドターキー12年101は1980年代初頭に発売され始め、1999年にアメリカ国内での流通が停止されると以降は輸出市場のみでリリースされることになりました。そのお陰で日本では長いこと入手し易かったワイルドターキー12年も2013年には終売となり、それに代わって一部の市場でリリースされ始めたのがワイルドターキー13年ディスティラーズ・リザーヴ91プルーフでした。そして、永遠に続くと思われた沈黙を破り、2022年、遂にワイルドターキー12年101が帰って来ました。但し、これまた輸出専用となっており、オーストラリア、韓国、日本などの市場のみの限定的なリリースのようです。日本では2022年9月に発売されました。アメリカ本国のワイルド・ターキー愛好家には申し訳ない気持ちにもなりますが、彼らにはこちらで手に入り難い様々な製品(例えばラッセルズ・リザーヴ13年や様々なプライヴェート・ピック)があるのでお互い様ですかね。

この12年101は8年101と同様、デザインを一新したエンボス・ターキー・ボトルに入っています。新しいボトルは鳥やラベルよりも液体に焦点を合わせることで、ワイルドターキーの特徴の一つである長期間の熟成をウィスキー自身の色味で視覚的に理解してもらう意図があるそうです。鳥の大きく描かれた古めかしい紙ラベルを廃止し、ボトル表面に浮き出たターキーとシンプルな小型のラベルにすることによって、モダンで都会的でスタイリッシュなイメージへと刷新する狙いなのでしょう。特筆すべきは付属のギフト・ボックスです。外側はバレルの木目が施されたインディゴ色のしっとりした手触りの厚紙で、蓋の内側にはアリゲーター・チャーを施されたバレルの内部を模したパターンがプリントされ、ボトルはこれまたインディゴ色のヴェルヴェットのようなクッションに収められています。マットな質感と落ち着いた色合いは高級感溢れるものとなっており、知人へのプレゼントにも自らの享楽にも適した仕上がり。蓋の裏面にはジミー・ラッセルからのメッセージもあります。
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我が息子エディと私は本物のケンタッキー・バーボンを蒸溜することに人生を捧げて来ました。それは私たちの血管を流れるものだと言えるでしょう。
 
私たちは100年以上続く伝統と工程に忠実に、初まりの日から正しい方法で物事を進めて来ました。なぜなら良いものには時間が掛る、この12年物のバーボンも例外ではありません。
 
このバーボンは、長く熟成させてより個性を増したところが、私に似ていると言われます。汎ゆるボトルに物語があると思いたい。なだらかな丘陵地帯、荒々しい荒野、力強い色彩などと共に、ケンタッキーのスピリットを感じて下さい。可能な限り最高レヴェルのチャーで熟成されたバーボンからのみ得られるリッチで芳醇なフレイヴァーを味わって下さい。
 
さあ、目を瞑って。先ずはバーボンの香りを嗅ぎ、それからフレイヴァーを口の中で転がして。それがこの12年物のワイルドターキー・ケンタッキー・バーボンの真の個性を味わう本当の方法なのです。
 
ジミー・ラッセル

これが本当にジミーの言葉なのかコピーライターの仕事なのか判りませんが、我々の魂に訴えてくる質の高いマーケティングの言葉であるのは確かです。では、この待ち望まれたバーボンをさっそく味わってみるとしましょう。
と、その前に少しだけ基本情報を。マッシュビルは75%コーン、13%ライ、12%モルテッドバーリー。バレル・エントリー・プルーフは115。熟成年数を考慮すると、2011年に新しい蒸溜施設へと転換する以前の原酒を使用していると思われます。そして、12年101はシングルバレルではなく、そのエイジ・ステイトメントも最低熟成年数なので、12年よりも古いバーボンがブレンドされている可能性はあるかも知れません。また、発売当初の13年ディスティラーズ・リザーヴのようには、どのウェアハウスのどこら辺に置かれていたバレルかの記載もありません。従ってタイロンかキャンプ・ネルソンどちらの熟成庫かも不明です。

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WILD TURKEY AGED 12 YEARS 101 Proof
推定2021or2022年ボトリング(瓶底に21とあった)。ロットLL/JL020936。赤みを帯びた濃いブラウン。強烈な焦げ樽香、セメダイン、ココアウエハース、チェリーコーク、ヴァニラ、キャラメル、湿った木材、ミント、クローヴ、杏、チョコレート、ハニーローストピーナッツ、杉。アロマは香ばしく甘くスパイシー。滑らかでややとろみのある口当り。パレートはややドライで、ブラッドオレンジとグレインが感じ易く、ドクターペッパーぽい風味も。余韻は長めながらハービーなメディシナル・ノートとスモークが漂う。
Rating:87.5/100

Thought:開封直後に一口飲んだ時は、なにこれ薬?、渋いし、不味っ、と思いました。寧ろロウワー・プルーフの13年の方が水のお陰でフルーティさが引き出されたり樽の渋みが軽減していて良かったのかも知れないとまで考えました。ところが、妙な薬っぽさはすぐに消え味わい易くなり、徐々に渋みも落ち着いて美味しくなって行きました。そうなってみると、甘い香り、ダークなフルーツ感と複雑なスパイシネス、強靭なウッディネスと古びたファンキネスなどが渾然一体となった長熟バーボンの醍醐味を味わえます。
試しに今回の新しい12年と、とっておいた12の文字が青色の旧ワイルドターキー(即ち最も現行に近い物)をサイド・バイ・サイドで飲み較べてみると、旧の方がアルコールの刺激が少なく、やや味が濃いように感じました。これは開封からの経年でしょう。そうしたアルコールの力強いフレッシュ感を除くと、フレイヴァーの方向性は概ね同じに思いました。両者はかなり似ています。強いて言うと、青12年の方が枯れたニュアンスがやや強く、新12年の方がグレイン感が強めですかね。
地域限定販売となるこの12年101をなんとか手に入れた海外のバーボン・レヴュワーの評価は頗る良く、私のレーティングに換算すると大体92〜95点くらいを付けているイメージなのですが、率直に言うと私としては大好きなワイルドターキーではありません。その理由は、マスターズキープ・シリーズの長熟物やファザー&サン等に共通の「何か」のせいです。その何かとは、おそらくワイルドターキーの大家であるデイヴィッド・ジェニングス氏がこの12年101のテイスティング・ノートで「強烈なメディシナル・チェリー」と記述したものだと思われます。彼の仔細なテイスティング・ノートを見ると明らかに同じ物を飲んでいると感じる(表現は雲泥の差だとしても…)ので間違いないかと。この風味、私はバーボンに欲してないんですよね。
チェリーついでに言うと、これは喩えですが、(青12年よりもっと前の)大昔のターキー12年が「チェリー」そのものだとしたら、近年の長熟ターキーは「チェリーコーク」と感じます。つまり大昔の物も近年の物もどちらも同じチェリーを感じながらも、どことなく何となく違い、昔の方が美味しかったように感じる、と。勿論、大昔の12年のようなプロファイルがどこのメーカーであれ現代のバーボンにないのは当然の話であり、較べる脳でいることが駄目なのかも知れません。それに、味の違いを分かる大人のように書いておいて、ブラインドで飲んだら全くトンチンカンな答えを言う可能性も大いにあります(笑)。
そうそう、もう一つ苦手な点を挙げるとすれば、オレンジの存在感です。バーボンの長熟物でオレンジっぽい柑橘風味が現れることが多いと思うのですが、私はオレンジよりアップルやグレープに喩えられる風味が現れる方が好きなのです。どうも近年の長熟ターキーはオレンジが感じ易い気がして…。皆さんはこのワイルドターキー12年について、或いは新旧の違いについてどう思われます? コメントよりどしどし感想をお寄せ下さい。

Value:上で文句と受け取られかねないことを言ってしまってますが、このワイルドターキーを評して日本の或るバーテンダーさんが言っていた「現行としては良いよね」と云う言葉に私も賛同します。日本では7000円前後で購入出来ます。どうもその他の市場より割安みたいですし、昨今の長熟ウィスキーの高騰から考えると、特にアメリカ人からしたら信じ難いほどのお買い得な価格です。我々は「日本人の特権」を行使しましょう。

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スタッグ・ジュニアはバッファロー・トレース蒸溜所で造られるバレル・プルーフのバーボンです。同蒸溜所の誇るアンティーク・コレクション(BTAC)の筆頭ジョージTスタッグの弟分として2013年の秋から導入されました。その名前はセントルイスのウィスキー・セールスマンからバーボン・バロンへと伸し上がったジョージ・トーマス・スタッグにちなんでいます。年少を表す「JR」は、BTACの兄貴分が15~19年熟成のレンジに対して、約半分のエイジングであるところから付けられました。余りにも人気があって殆どの人の口に入らないBTACスタッグの代りに、より若い製品をリリースすることで、消費者へ親しみ易い価格帯のボトルを提供するバッファロー・トレースなりの方策だったのでしょう。その強力なフレイヴァー・プロファイルによってバーボン愛好家に評価されるバレル・プルーフのボトルは現在各社より発売されており、大手メーカーで言うとスペック的にヘヴンヒルのエライジャクレイグ・バレル・プルーフやジムビームのブッカーズなどが市場でのスタッグJRの直接的な競合相手となります。

スタッグ・ジュニアとジョージTスタッグの公にされている唯一の違いはバレルの中で過ごした時間です。スタッグJRはNASですが、現在のバッファロー・トレースの公式ウェブサイトでは10年近い熟成期間としています。2013年にリリースされた最初のバッチは8年と9年物のバーボンのヴァッティングとの説がありました。その他のネット情報では、常に8年以上とするもの、5〜9年または7〜9年熟成を示唆するものもありました。兎に角、どうやら2桁の熟成年数になることはないようです。熟成年数以外の特徴は、ジョージTスタッグと同様にアンカット(希釈なし)、アンフィルタードとされ、バレルからそのままのバーボンの豊かで複雑なフレイヴァーを楽しむことが出来る仕様。フィルタリングされていないと言うことは、ノンチルフィルタードであることも含みます(おそらくバレルの木屑などのゴミ取りはしてると思われる)。バッファロー・トレース蒸溜所のマスター・ディスティラーであるハーレン・ウィートリーはその味わいを「リッチでスウィートなチョコレートとブラウン・シュガーの風味が大胆なライ・スパイシネスと完璧なバランスで混ざり合う。果てしなく続くフィニッシュはチェリーやクローヴとスモーキネスのヒントを漂わせる」と表現していました。マッシュビルは、ジョージTスタッグは勿論、同蒸溜所の名を冠したバッファロートレース・バーボン、イーグル・レア、EHテイラー等と同じロウ・ライ(推定ライ10%未満)のBTマッシュビル#1となっています。

スタッグJRは最初の発売以来、毎年2バッチをリリースして来ました。一回のバッチングに幾つのバレルを使うかは明かされていませんが、スモールバッチで間違いないでしょう。スタッグJRはバレル・プルーフが故、バッチ毎に異なるプルーフでボトリングされ、大体120台後半〜130台前半のプルーフ・ポイントを示します(これはバレル・セレクションの厳しさの結果か?)。バッチには特有の個性があり、その味わいは多少変動するので、海外のバーボン系ウェブサイトではバッチ別にスタッグJRのレヴューが存在し、各々のスコアが場合によっては大幅に異なる可能性があります。なのでスタッグJRのボトル内の味について知りたい時は、バッチを特定してそのバッチのレヴューを探して下さい。プルーフの細かい数値からバッチを識別することになるので、以下にバッチ情報をリストしておきます。スタッグ・ジュニアの名称はバッチ17までで、それ以降は名前から「JR」がなくなることになりました。この変更は2022年のバッチが18に達し、ジュニアが小僧から一人前の大人に成長したという冗談のような嘘みたいな理由だそうです(アメリカでは州によって異るものの、概ね18歳で成人)。ちなみにこの発表は、BTACにジョージTスタッグのリリースがなかった2021年にされました。個人的には「JR」が付いたネーミングは、ずんぐりしたボトルと相俟って何となく可愛らしい感じがして好きだったんですがね…。


STAGG JR
Batch 1(Fall, 2013)ー134.4 Proof
Batch 2(Spring, 2014)ー128.7 Proof
Batch 3(Fall, 2014)ー132.1 Proof
Batch 4(Spring, 2015)ー132.2 Proof
Batch 5(Fall, 2015)ー129.7 Proof
Batch 6(Spring, 2016)ー132.5 Proof
Batch 7(Fall, 2016)ー130.0 Proof
Batch 8(Spring, 2017)ー129.5 Proof
Batch 9(Fall, 2017)ー131.9 Proof
Batch 10(Spring, 2018)ー126.4 Proof
Batch 11(Winter, 2018)ー127.9 Proof
Batch 12(Summer, 2019)ー132.3 Proof
Batch 13(Fall, 2019)ー128.4 Proof
Batch 14(Spring, 2020)ー130.2 Proof
Batch 15(Winter, 2020)ー131.1 Proof
Batch 16(Summer, 2021)ー130.9 Proof
Batch 17(Winter, 2021)ー128.7 Proof

STAGG
Batch 18(Winter, 2022)ー1XX.X proof


スタッグ・ジュニアが初めて発売された時、多くのレヴュアーがアルコール・フォワード過ぎるという印象を持ちました。初期の幾つかのバッチのレヴューでは、ホットでバランスを欠いていると考えられ、スタッグJRをジョージTスタッグの失敗版と見倣す人までいました。バッファロー・トレースは迅速に改善に取り組み、後続バッチのフレイヴァーと全体的なプロファイルを調整したようです。バーボンの専門家や愛好家の多くはバッチ4以降、このバーボンが遥かにバランスを取り始めたことに気付き、スタッグJRを出来の良いバレルプルーフであると考えるように変わったとか。以来スタッグJRは、多くの人の欲しい物リストに載り、兄貴分のジョージTスタッグの派生物ではない独自の人生を歩んで来ました。現時点でスタッグ・ジュニアはかなり人気があります。買いたくても買うことの出来ないパピー・ヴァン・ウィンクルに代わってヴァリュー・プライスのウィーテッド・バーボンだったウェラー・ブランドが入手困難になったように、スタッグJRは高価なバッファロー・トレース製バーボンの次善の策として急速に広まりました。そもそもがスタッグJRは年に2回だけの限定生産のためデフォルトでやや希少な製品でしたが、バッファロー・トレース蒸溜所のプレミアム製品全般の人気高騰によって同蒸溜所で製造される多くの製品と同様に今では割り当て配給になっているようで…。これは殆どのバーボン・ドリンカーが年中利用できないことを意味します。そうしたバーボンは殆どの店舗で値上げされます。多くの酒類小売店は利益率を大きく上げるチャンスとばかりにスタッグJRをかなりの高値で販売するようになりました。MSRPが概ね50〜60ドルのボトルが90〜100ドル、評価の高いバッチや古いバッチだと110〜130ドル近くとなり、更に最近では250~300ドル(或いはもっと)の価格を付けるショップもあるようです。本来、名前の由来であるBTACのジョージTスタッグよりは遥かに安く入手もし易かったスタッグJRも、現在では高過ぎる値付けの物を除いてほぼ実店舗で流通しておらず、400%の値上げで販売しようと目論む日本で言うところの転売ヤーみたいなトレーダーによって買い占められるのが一般的だと聞きます。一時は日本でも容易に買えたスタッグJRですが、この状況では並行輸入で入って来ることもないのでしょうね…。では、貴重になってしまったバーボンをゆっくりと飲んでみます。

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STAGG JR 132.5 Proof (Batch 6)
2016年春ボトリング。色はややオレンジがかったディープアンバー。ダークチョコレート、スモーク、プラリネ、出汁、接着剤、ブラックベリー、コーン、タバコ、塩。甘くナッティな香り。とてもオイリーな口当たり。パレートは意外とダークフルーツより明るめのフルーツ感が強め(柑橘)。余韻は長くバタリーで重厚、ビターチョコとナッツからのとんがりコーンで終わる。
Rating:89/100

Thought:開封直後はサイレントなアロマでしたが、暫くすると甘いお菓子の香りがして来ました。流石に130プルーフを超えるので、アルコールによる鼻での刺激も舌での辛味も感じます。数滴の加水をしたほうが刺激を弱めて甘さやフルーツ感を引き出せますが、あまり加水しすぎると折角のバレルプルーフが持つ強烈さとオイリーさを台無しにするので、手加減することをオススメします。あと、バレルプルーフにしてはスパイス感が弱めなのは意外で、寧ろ樽の香ばしさやお菓子ぽさとフルーティさの方を強く感じるバランスに思いました。液量が半分を過ぎた頃から、ほんの少しアーシーな雰囲気も出ましたが、飽くまでほんの少しです。ブログなんて始めるとは思ってない頃に飲んだが故に写真を撮っておらずバッチ不明のスタッグJRの記憶と較べて、何となく若そうな印象のバッチでした。色々なバッチを飲み比べたことのある方は是非コメントより感想をお寄せ下さい。

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ウィレット・ポットスティル・リザーヴは名前の通り見栄えのするポットスティル型のボトルが特徴的なバーボン。ウィレット蒸溜所に設置されている銅製のポットスティルを模したデザインになっています。2008年から導入されました。同蒸溜所がリリースしているスモールバッチ・ブティック・バーボン・コレクションの四つ(ノアーズ・ミル、ローワンズ・クリーク、ピュア・ケンタッキーXO、ケンタッキー・ヴィンテージ)がジムビームのスモールバッチ・コレクション(ブッカーズ、ベイカーズ、ノブ・クリーク、ベイゼル・ヘイデン)に相当するならば、このポットスティル・リザーヴはバッファロートレース製造のブラントンズやワイルドターキーのケンタッキー・スピリットに相当すると言えるでしょうか。おそらくは現在市場に出回っているバーボンのガラス・ボトルの中で最も派手な部類に属し、酒屋の棚では一際目立つ存在です。但し、そのボトル形状のせいでグラスへ注ぎにくいとか、ボトムの面積が広いためコレクション棚への収納が難しい等の声も聞かれたります。それでもやはり、このボトル形状にはウィスキー飲みが惹かれてしまう魅力がありますね。
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この製品は元々はシングルバレルとしてリリースされていましたが、2015年からひっそりとスモールバッチに変更されました。そもそものシングルバレル版では、キャップを封するストリップにバレル番号とボトル番号が手書きで記載されていました。「Bottle No. ○○○ of ○○○ from Single Barrel ○○○」という具合で○には数字が入ります。スモールバッチになるとストリップにはボトル番号は記載されなくなり、バッチ番号のみとなりました。明確な時期を特定できませんが、帯の色は初期から現在にかけてオレンジ、黒、紺と変わって行ったと思います。ただ、画像検索で幾つかのWPSRSmBを探ってみると、より新しいバッチであっても紺ではなく黒の場合もあるように見え、輸出国の違いとかバッチの違いによってパッケージングが異なっている可能性も考えられます。ボトル前面に貼られたワックスシールのエレガントなメダリオンの文言も何時からか段階的に変化しており、「SINGLE BARREL ESTATE RESERVE」から「POT STILL RESERVE」へ、また「WILLETT」の文字はブロック・レターからスクリプトへ変更されました。
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(画像提供K氏)

おそらくはバーボン需要の高まりに応じるかたちで2015年頃からスモールバッチになったポットスティル・リザーヴですが、このブランドを際立たせていたのがバーボンの味わいではなくボトル・デザインであったせいなのか、ノアーズ・ミルやローワンズ・クリークがエイジ・ステイトメントを失いNASへと変化した時のように残念がる声を上げる消費者は殆どいませんでした。このブランドの成功の大部分はウィレット蒸溜所のポットスティルを模したガラス製デキャンターのデザインにあったに違いありません。実際、2008年のサンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティションのパッケージング・デザイン部門でダブル・ゴールドを受賞しています。しかし、その外見の良さは諸刃の剣でもありました。外見の良さは中身を伴わないと非難と嘲笑の対象になるからです。或るリカー・ショップの商品レヴューでは、約50ドルの小売価格のうち20ドルがバーボンで30ドルがボトルだ、と言うような趣旨の皮肉めいた見出しの評がありました。とは言え、この発言はそのショップのレヴューでは少数意見ではあります。ところが、TikTok界隈ではそうではありません。バーボン系ティックトッカー達によるウィレット・ポットスティル・リザーヴのレヴューは、ライター/ジャーナリストのアーロン・ゴールドファーブによると、「一部にプロフェッショナルな者もいるが大部分はアマチュア、少数の真面目なものもあるが多くはコミカル、殆どが容赦のないもの。まるでこのウィスキーを非難することが、この人気の高いプラットフォームでバーボン・レヴュアーになるための通過儀礼であるかのようにほぼ全て否定的です」。TikTokのポットスティル・リザーヴのレヴューは殆どの場合、ボトルの形が如何にクールでどれほど見栄えがし、評者自身が気に入っていると述べるところから始まります。しかし、次にグラスに注いだ液体を口にした瞬間、様相は一変します。滑稽な調子で咳き込んで窒息しそうになってみたり、「わーーー、これはホットだ」と叫んで最終的にウィレット・ポットスティル・リザーヴを「ゴミ」と呼んだり、「今まで飲んだバーボンの中で一番不味いかも知れない」と述べる人もいたりします。このようにポットスティル・リザーヴへのバッシングの多くは、そのボトルの豪華さに比べて中身が如何に酷いものであるかを笑いものにしている訳ですが、これらはTikTok特有のユーモアを多分に含んだオーヴァー・リアクションと言うのか、短い時間内で一発芸的に笑いを取るショート動画にありがちな或る種のジョークであって真に受ける必要はないと個人的には思います。けれども気になるのは、僅かながら存在するもっと真摯なTikTokレヴュワーや他のバーボン系ウェブサイトに於いてもウィレット・ポットスティル・リザーヴがそれほど高評価を得てはいないところです。ゴールドファーブ自身も「ポットスティル・リザーヴは確かに美味しくない(私は決してこのボトルを家に置かないだろう)が、TikTokが信じ込ませているほど悪くはない」と微妙な評価。まあ、それらは全て「スモールバッチ」への言及であり、「シングルバレル」についてではありません。

ウィレット・ポットスティル・リザーヴはシングルバレルであれスモールバッチであれ、94プルーフでのボトリングとNAS(Non-Age Statement=熟成年数表記なし)での提供は共通しています。ウィレット蒸溜所は中身の原酒に関して明らかにしないことが多いので、飽くまで噂と憶測になりますが、ここからはポットスティル・リザーヴの中身の変遷について整理して行きたいと思います。と、その前に少しだけ歴史の復習を。
禁酒法撤廃後、ケンタッキー州バーズタウン郊外にランバートとトンプソンのウィレット父子によって設立されたウィレット・ディスティリング・カンパニーは、訳あって1980年代初頭に蒸溜を停止しました。1984年、会社はトンプソンの娘マーサと結婚したエヴァン・クルスヴィーンに引き継がれ、以後ケンタッキー・バーボン・ディスティラーズ(KBD)というボトラーとして活動することになります。同社は倉庫で何年ものあいだ寝ていた熟成ウィスキーをボトリングして販売を続けましたが、自社の在庫が枯渇する前に他の蒸溜所からウィスキーを購入しました。それらを効果的に使用して、オールド・バーズタウンやジョニー・ドラム、ノアーズ・ミルやローワンズ・クリーク等の自社ブランドを販売する傍ら、自らが所有していない他の多くのブランドのための契約ボトラーとしても働きました。エヴァンのKBDは蒸溜はしなかったものの、その代わりに名高いバーンハイムやスティッツェル=ウェラー、ヘヴンヒルやジムビームやフォアローゼズ等の近隣の蒸溜所から不要な在庫を調達し、それらの一部を巧みにブレンドすることで自らのフレイヴァー・プロファイルをクリエイトしました。そしてエヴァンとその息子ドリューは、現代のアメリカン・ウィスキー・ブームに先駆けて、ウィレット・ファミリー・エステートの名の下にバレルプルーフでノンチルフィルタードのシングルバレルとして最も上質のバーボンとライのストックをリリースし、好事家からの称賛を受けました。そうした全ての活動が実り、蒸溜所は復活、2012年1月21日に蒸溜を再開することが出来たのです。今、アメリカン・ウィスキー愛好家にとってウィレットの名は神聖とも言える特別な位置を占めています。
ここから分かる通り、ウィレット蒸溜所は1980年代初頭から2012年まで蒸溜を停止していたため、このポットスティル・リザーヴの発売から暫くの間は別のディスティラリーで蒸溜されたものを使用している筈です。現在ポットスティル・リザーヴと呼ばれている製品のシングルバレル(もしかすると初期の正式名称はウィレット・シングルバレル・エステート・リザーヴだったのかも知れない。上掲のワックスシールの画像参照)は、リリースされた当初は多くのウェブサイト上の情報源によると8〜10年の熟成であるとされていました。そして、ボトル内のバーボンは彼らの他の製品と同様に、すぐ隣のヘヴンヒル蒸溜所から来ていると推測されています。シングルバレルはその特性上、風味の一貫性を問われませんから、もしかすると他の蒸溜所産のバレルも使用していた可能性もありますが、こればかりは公開されてないので謎のままです。いずれにせよ、何処の蒸溜所の原酒であれ、ポットスチルを模したボトルの形状やその製品の名称にも拘らず、このバーボンは一般的なコラムスティル+ダブラーを使用して製造されているのは間違いないでしょう。ちなみにウィレット蒸溜所の自家蒸溜でも、おそらく最初の蒸溜をコラムスティル、2回目の蒸溜で銅製ポットスティルをダブラーとして使用していると見られています。

2015年頃、前述のようにポットスティル・リザーヴはシングルバレルからスモールバッチに置き換えられました。ウィレット蒸溜所はバーボン界での世界的な人気の高まりがあっても、所謂クラフト蒸溜所に近い規模の操業を維持しています。そのため「スモールバッチ」と名付けられていなくても実際には全ての製品がスモールバッチのようです。スモールバッチという用語は政府によって規制されていないため、ただのマーケティング・フレーズに過ぎませんが、大規模蒸溜所のスモールバッチが100〜200樽、中には300樽にまで及ぶこともあるなか、ウィレットのバッチ・サイズは、おそらく2000年代は12樽程度、現在でも20樽ちょいとされていますので、ウィレット製品のスモールバッチ表現は我々消費者が抱く「スモールバッチ」のイメージと一致しているでしょう。このバッチ数量は時間の経過と共に変化する可能性はありますが、少なくとも今のところヴェリー・スモールバッチと呼んだほうが誤解がなく適切な気がします。ヴェリー・スモールバッチの弱点は、ごく少数のバレルからバッチを形成するため、バッチ毎に味わいの一貫性が低下するところです。ポットスティル・リザーヴの評価が定まらないのは、もしかするとこのせいもあるのかも。
最終的にウィレットの製品は100%自家蒸溜に移行する(した?)と思われますが、彼らは自身の蒸溜物がいつポットスティル・リザーヴに組み込まれたかについて明らかにしていません。有名なバーボン・ウェブサイトの2017年時点のレヴューでは、ケンタッキー州の他の蒸溜所から供給されたバーボンの可能性が高い、と言われていました。一説には、帯が紺色の物は新ウィレット原酒と聞いたこともあります。今回、私がおまけとして試飲できた推定2016年ボトリングのスモールバッチの帯は紺色なのですが、ボトルの裏面(メダリオンのない側)には下画像のようにプリントされています。
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(画像提供K氏)
この「Distilled, Aged and Bottled in Kentucky」という記述の仕方は、ウィレット・ファミリー・エステートのラベルでもそうなのですが、基本的に自家蒸溜原酒ではない他から調達されたウィスキーの場合の書かれ方です。しかし、旧来のボトルを使い切るか、或いはボトル会社(プリント会社?)に文言の変更を依頼するまで?は、中身がウィレット原酒であっても上のままの記述である可能性があります。逆に「Distilled, Aged, and Bottled by Willett Distillery」と記載があれば確実にウィレットの自家蒸溜原酒でしょう。私自身は直に見ていないのですが、おそらく近年のボトルにはそうプリントされていると思われます。2020年のレヴューでは、或る時点で100%自社蒸溜に移行したと考えられる、とされていました。仮にポットスティル・リザーヴ・スモールバッチのウィレット蒸溜原酒の熟成年数が4〜6年程度であるならば、2012年から蒸溜を再開したことを考慮すると、早くて2016年から新ウィレット原酒を使用することは可能です。海外のレヴューを読み漁ってみると、多くのレヴュアーが共通して指摘しているバターポップコーンやレモンや蜂蜜のヒントが感じられる場合、新ウィレット原酒である可能性は高そうです。
現在、ウィレットにはバーボン4種類とライ2種類のマッシュビルがあり、そのうちバーボンは以下のようになります。

①オリジナル・レシピ
72%コーン / 13%ライ / 15%モルテッドバーリー / 125バレルエントリープルーフ

②ハイ・コーン・レシピ
79%コーン / 7%ライ / 14%モルテッドバーリー / 103 & 125バレルエントリープルーフ

③ハイ・ライ・レシピ
52%コーン / 38%ライ / 10%モルテッドバーリー / 125バレルエントリープルーフ

④ウィーテッド・レシピ
65%コーン / 20%ウィート / 15%モルテッドバーリー / 115バレルエントリープルーフ

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(こちらはライも含むウィレットのマッシュビル表。これは私が作成したものなので、勝手にダウンロードして転載して構いません)

ポットスティル・リザーヴにどのマッシュビルが使われているかは正式には公開されていません。しかし、或る情報筋からの話によると①②③のブレンドと聞きました。ところが、2021年や2022年に執筆されたバーボン系ウェブサイトの記事ではマッシュビルは④のウィーテッド・マッシュとされています。どちらかが正しいのか、或いは時代によるマッシュビルの変更があったのか? はたまた両者の情報を掛け合せて④を含むミックスなのか? 蒸溜所からの公式の発表はないので謎です。まあ、このミステリアスなところもウィレットの魅力の一つではあるのですが、真相をご存知の方は是非ともコメントよりご教示下さい。また、バッチ情報と共に味わいの感想などもコメントより共有して頂けると助かります。では、そろそろバーボンを注ぐとしましょう。

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WILLETT POT STILL RESERVE Single Barrel 94 Proof
Bottle No. 145 of 233
Barrel No. 1581
ボトリング年不明(購入は2013年頃なのでそれ以前は確実)。黒蜜、甘醤油、キャラメル、アニス、湿った木材、ドライピーチ、バナナ、ナッツ、ウッド・ニス、銅、プルーン。途轍もなく甘く、樹液のような香り。ややとろみのある口当たり。パレートでも甘く、更にハーブぽい風味が濃厚。余韻はミディアムで豊かな穀物とレザー、最後はビター。アロマがハイライト。
Rating:86.5/100

Thought:先ず、いにしえのシュガーバレルを想起させるアロマが印象的。味わいも独特で、これぞシングルバレルという感じ。口当たりや濃厚な風味は、確かに8〜10年くらいの熟成感と思いました。ボトリング年は不明ながら、シングルバレルでリリースされた時期であるところからすると、原酒はヘヴンヒルだろうと思われるのですが、いざ飲んでみると香りも味わいも一般的なヘヴンヒルとは全然違う印象を受けました。だからと言って他の蒸溜所、バートンとかワイルドターキーとかフォアローゼズに似てる訳でもなく、ウィレットの風味と言うしかないと感じます。ヘヴンヒルからの購入とするなら、ホワイトドッグを購入してウィレット蒸溜所の倉庫で熟成させてるのか、もしくはヘヴンヒルが自分たちの味ではないと判断したオフ・フレイヴァーのバレルを購入しているかのどちらかなのかな? 或いは出来損ない(笑)のブラウン=フォーマンとか? まあ、それは兎も角、ウィレットにはウィレット・ファミリー・エステートという最高峰のシングルバレル・ブランドがあるので、普通に考えて最も優れたシングルバレルはそちらにまわされるでしょう。それ故、このシングルバレルのポットスティル・リザーヴは飽くまで「次点」のシングルバレルの筈。味わいがアロマほど良くないところが、このボトルのらしさなのかも知れない。アロマをそのまま味わいにも感じれたら、もしくは微妙なオフ・フレイヴァーがなければ、点数は88点を付けてました。ぶっちゃけ、上のレーティングのうち1点はボトルに対してです。

偖て、今回は私の手持ちのシングルバレル版ポットスティル・リザーヴをメインに飲んだ訳ですが、そこに加えて先述のようにスモールバッチ版のサンプルを頂けたので、おまけで少しだけ比較が出来ます。サンプルは例によってInstagramで繋がっているバーボン仲間のKさんから。ウィレッ党のKさん、本当にいつも貴重な情報やバーボンをありがとうございます! 

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(画像提供K氏)
WILLETT POT STILL RESERVE Small Batch 94 Proof
Batch No. 16D1
推定2016年ボトリング。シングルバレルより薄いブラウン。香ばしい穀物、キャンディ、シリアル、砂糖、新鮮な木材。ウッディなスパイス香。ややとろみのある口当たりながら、尖りも感じさせるテクスチャー。口の中でもスパイシーでメタリック?でドライ。余韻はやや甘みも。

バーボンらしさを象徴する風味は全てあるのですが、それ以上に若々しく、荒く、何と言うかギラついた金属感のようなものを感じました。多分、ウィレット原酒だと思います。もしヘヴンヒルなら4年以下の熟成物でももう少しこなれた感があると思うのです。不思議なのは、新ウィレット原酒を使ったオールド・バーズタウンやケンタッキー・ヴィンテージやピュア・ケンタッキーXOの良さの片鱗を感じれなかったこと。単純に熟成年数の短さに由来するのか、それともマッシュビルに由来するのか…。いや、そもそもウィレット蒸溜ではないのか? 謎が謎を呼びますが、バーボン・ティックトッカーが怒りの声を上げているのは、おそらくこのレヴェルの物なのでしょう。そうであるならば、まあ確かに頷けるかな、と。とは言え、ウィレット自家蒸溜のスモールバッチは、これより後の物はもう少し味わいが改善している可能性はあるかも知れません。2020年以降のボトルを飲んでみたいですね。
Rating:81/100

Value:現行ウィレット・ポットスティル・リザーヴ・スモールバッチのアメリカでの750mlの小売価格は地域差が大きく、40ドル未満の場合もあれば60ドル近い場合もあるようです。日本でもそれに準じて5000円台後半から7500円の間が相場でしょうか。この価格には華麗なボトルの代金も含まれるので、同じウィレットのスモールバッチ・ブティック・コレクションやオールド・バーズタウンのエステート・ボトルドの価格を考えると、中身にのみお金を払っているという意識の方には少し高く感じられるかも知れません。購入検討している方は、外観を含めてお金を払う意識でいた方が良いと思います。
シングルバレル版に関しては、もし7500円程度で購入できるチャンスがあるなら、買う価値は間違いなくあると思います。たとえ当たり外れがあったとしても…。

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カークランド・シグネチャーは、1983年に創業した会員制ウェアハウス型店舗コストコのプライヴェート・ブランドです。お酒に限らず食物から日用品まであり、高品質かつ低価格が自慢。その名称はワシントン州カークランドから由来しています。コストコの創業者ジム・シネガルは自社ブランドを立ち上げる際、創業の地であり拠点としていたワシントン州シアトルへの感謝の気持ちを込めて「Seattle's Signature」と名付けることを希望していましたが、法的に承認されなかったため、1987年から1996年までの約9年間に渡って本社があったカークランドをブランド名として採用したのだそう。ブランドのスタートは1995年から。
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コストコはアルコール飲料の世界最大の小売業者の 一つと目され、2020年には約55億ドルのアルコール飲料を販売しました。その売上高の40〜50%をワインが占め、残りがスピリッツとビールでほぼ均等に分けられる内訳のようです。自社ブランドのカークランド・シグネチャーは、2003年に最初にワインから始まり、2007年にスピリッツへと拡大したという情報がありました。平均してコストコには約150種類のワインがあり、そのうち30種類がカークランド・シグネチャー・ブランドとされ、スピリッツのセレクションは年間を通じて大きく変動する傾向があるものの平均して約50種類あり、そのうち約20種類が同ブランドとされます。ウィスキーはスピリッツの一部門なのでその数はワインには遥かに及ばないとは言え、識者からはコストコは北米最大のウィスキー小売業者である可能性が高いとの指摘もありました。現在、カークランド・シグネチャーのブランドでスコッチ、アイリッシュ、カナディアン、バーボンなど様々なウィスキーがあります。コストコのオリジナルのバーボンでは、今回紹介するバートンに至る以前に「プレミアム・スモールバッチ・バーボン」というのがありました。それらは生産者名を明確に開示してはいませんでしたが、ラベルにはケンタッキーやテネシーと記載があり、ほぼ間違いなくジム・ビームやジョージ・ディッケルから供給された原酒であろうと見られています。
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そして来たる2021年、コストコは再びバーボンの調達先を変更し、バーボンのメッカであるケンタッキー州バーズタウンで「最も古いフル稼働している蒸溜所」として宣伝され、現在サゼラック社が所有するバートン1792蒸溜所と提携、バートン・マスター・ディスティラーズの名の下にそれぞれが異なるプルーフでボトリングされるスモールバッチ、ボトルド・イン・ボンド、シングルバレルと三つのヴァージョンを発売しました(全て1L規格のボトル)。ラベルには蒸溜所やウェアハウスが描かれ、そのパッケージングはかなりカッコいいですね。これらのボトルはアメリカでは2021年半ばからリリースされましたが、日本のコストコには2022年になって入って来たようです。シングルバレルは、一つの樽からのバッチングのためボトリング本数が少ないせいか、日本には入って来ていないと云う情報もありました。本当かどうか私には判りません。皆さんのお住まいの地域のコストコではどうなのでしょう? 見たことがある/ないの情報を是非コメントよりお知らせ下さい(この件に関してコメント頂けました。日本にも入って来てました。詳しくはコメント欄を参照下さい)。
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(コストコより)

偖て、今回はそんなコストコとバートンのコラボレーションによるカークランド・シグネチャーの中から「ボトルド・イン・ボンド」を取り上げます。ボトルド・イン・ボンド(またはボンデッド)は、そもそも蒸溜所と連邦政府がスピリッツの信頼性と純度を保証するために使用したラベル。1897年に制定されたボトルド・イン・ボンド・アクトは、主に商標と税収に関わる法律で、単一の蒸溜所にて、単一の年、単一のシーズンに蒸溜され、政府管理下のボンデッド・ウェアハウスで最低4年以上熟成し、100プルーフでボトリングされたスピリットのみ、そう称することが許される法律でした。ラベルには蒸溜所の連邦許可番号(DSPナンバー)の記載が義務づけられ、ボトリング施設も記載しなければなりません。上の条件を満たした物は緑の証紙で封がされ、謂わばその証紙が消費者にとって品質の目印となりました。紛い物やラベルの虚偽表示が横行していた時代に、ラベルには真実を書かねばならないというアメリカ初の消費者保護法に当たり、結果的にスピリットの品質を政府が保証してしまう画期的な法案だったのです。現在では廃止された法律ですが、バーボン業界では商売上の慣習と品質基準のイメージを活かし、一部の製品がその名を冠して販売されています。
カークランド・シグネチャーのバートン・バーボンのマッシュビルは非公開ですが、おそらくはバートン1792蒸溜所のスタンダード・マッシュビルであるコーン74%、ライ18%、モルテッドバーリー8%であろうと思われます。その他のスペックは「Bottled-In-Bond」を名乗りますので、BIBアクトに大筋で従っているでしょう。同じ季節に蒸溜され、少なくとも4年以上の熟成を経て、100プルーフでのボトリングです。海外の或るバーボン愛好家の方は、三つのエクスプレッションは全て一貫したバートン1792のDNAを示すが、バートンの通常のボトリングとは微妙な違いがあるようだ、と言っていました。日本で比較的買い易いバートンのバーボンと言うと、安価なケンタッキー・ジェントルマンやケンタッキー・タヴァーンやザッカリア・ハリス、もう少し高価なプレミアム・ラインの1792スモールバッチが挙げられます。それらと比べてコストコのバートン原酒バーボンがどう異なるのか気になりますね。ちなみに、私はコストコ会員ではないので、今回のレヴューするボトルは友人に頼んで買ってもらいました。ありがとう、Aさん! では、そろそろバーボンを注ぐ時間です。

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KIRKLAND SIGNATURE BOTTLED-IN-BOND (BARTON 1792) 100 Proof
推定2021年ボトリング。ややオレンジがかったブラウン。香ばしい穀物、花火、ヴァニラ、ドライアプリコット、苺ジャム、フルーツキャンディ、シリアル、胡桃、ちょっと塩、一瞬チョコレート。あまり甘く感じないアロマでフルーティ。ややオイリーな口当たり。パレートはなかなかフルーティな甘さもありつつ、フレッシュなアルコール感とウッディなスパイスが引き締める。余韻もウッディでほんの少しシナモンと苦味も。
Rating:85.5/100

Thought:樽感と穀物感と果物感のバランス、甘さと辛さのバランス、ガツンと来る感じ等が凄く自分好みでした。コストコとバートン1792蒸溜所は手頃な価格と高品質の両立という素晴らしい仕事をしたと思います。強いて欠点を探すと、バートンの旗艦ブランドである1792スモールバッチに比べればやや若さがあるところなのですが、その点は個人的にはプルーフが上がっている分で帳消しになっていますし、寧ろグレインの旨味や甘酸っぱいフルーツの風味が味わえて好印象ですらあるかも知れない。サイド・バイ・サイドで較べてはいないものの、1792スモールバッチはおそらくもう少し熟成年数は長いと思います。そして「若い」とは言え、同じバートンのより若い原酒を使ったケンタッキー・ジェントルマンやケンタッキー・タヴァーンやザッカリア・ハリスからは著しい伸長が感じられます。やはりボトルド・イン・ボンドは偉かった(笑)。

Value:アメリカでの価格は約25ドル程度のようです。日本だと3500円程度でしょうか。バートンの代表的銘柄であったヴェリー・オールド・バートンが現在はあまり力を入れられてない現状(流通量が少ない)もあって、ちょうどその代替製品となるのはこのコストコのオリジナル製品なのかも知れません。そして、コストコのソースは長年に渡って変化していますし、バートンとの契約が単発での生産なのか、ある程度の期間持続するものなのか、今のところよく分からないので、時間の経過と共に同じものを手に入れることが出来ない可能性があります。他の汎ゆるものでもそうですが、あるうちに買っておくことをオススメします。

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今回は同じ蒸溜所で造られ、同じプルーフでのボトリング、そしてほぼ同じ価格である二つを飲み比べる企画です。一つがヘンリーマッケンナの(並行輸入品ではない)キリン正規品、もう一つがフォアローゼズのブラックラベル。どちらも現在酒販店に流通している所謂「現行品」です。この比較対決は、以前このブログへコメントしてくれた方からヒントを得て企画されました。

フォアローゼズ・ブラックがフォアローゼズ蒸溜所で造られているのは名前の通りなので判り易いですが、ヘンリーマッケンナについてはヘヴンヒル製造の物もあるので少し説明が必要でしょう。
アイルランド移民のヘンリー・マッケンナは、1855年、ケンタッキー州フェアフィールドにて蒸溜を開始しました。量よりも質を重視し、1日1バレル程度の規模で操業していたと言われています。1880年頃までにマッケンナのブランドは人気が高まり、上質なケンタッキー・バーボンとして評判を得、1883年には新しいレンガ造りの蒸溜所を建設し、1日3バレルに生産量を増やしたそうです。1893年にヘンリーが亡くなると、息子達が事業を引き継ぎ、ビジネスを更に成長させました。しかしご多分に漏れず禁酒法の訪れにより蒸溜所は閉鎖を余儀なくされます。マッケンナ家の所有する熟成ウィスキーは、A.Ph.スティッツェル蒸溜所の集中倉庫に保管され、薬用ライセンスを取得していた彼らに手数料を支払うことでボトリングしてもらいメディシナル・ウィスキーとして販売されました。禁酒法が撤廃されるとマッケンナ家はフェアフィールドで蒸溜所を再開。新しい蒸溜所の生産能力は1日20バレル程度だったようです。大恐慌とそれに続く第二次世界大戦の到来によって会社は継続するのに苦労し、ヘンリーの息子の死により残された一族は1941年にブランドと蒸溜所をシーグラムに売却しました。シーグラムはヘンリーマッケンナ・バーボンの販売を続けますが、フェアフィールド蒸溜所で製造されたウィスキーの殆どはセヴン・クラウンやフォアローゼズ等のブレンデッド用に回されたと言います。その後、1960〜80年代に掛けてのストレート・バーボンの売上減少は、多くのケンタッキー蒸溜所の閉鎖を招きました。フェアフィールドのヘンリー・マッケンナ蒸溜所もその例外ではなく、1974年、遂に閉鎖されてしまいます。生産はルイヴィルのシーグラム工場に移り、そこも閉鎖されるまでの短期間はそちらで造られていた可能性も示唆されています。そして1980年代初頭にシーグラムはヘンリーマッケンナのアメリカ国内でのブランド権をヘヴンヒルに売却しますが、海外市場向けのブランド権は保持しました。これにより、海外向けの生産はローレンスバーグのオールド・プレンティス蒸溜所(現フォアローゼズ蒸溜所)、アメリカ国内向けの生産はバーズタウンのヘヴンヒル蒸溜所と、マッシュビルや酵母を共有しないニ種類のヘンリーマッケンナが産出されることになります。
21世紀初頭、長年に渡りスピリッツ業界の頂点にあったシーグラムも、飲料ブランドの名前としては一部残ったものの企業としては終りを迎えました。サミュエル・ブロンフマンとその息子エドガーが運営していた頃には業界を支配していたシーグラムですが、1994年にエドガーの息子エドガー・ジュニアに経営がバトンタッチされると、残念なことにスピリッツ事業に関心がなかった彼が率いる会社は急速にエンターテインメント事業への傾斜を強めます。しかし、巨額の買収費用に対して映画部門ではヒット作に恵まれず収益も上がらなかったため、2000年にフランスのヴィヴェンディと合併するに至りました。メディア事業の拡大を進めるヴィヴェンディにはアルコール飲料会社の所有権は必要なかったので、短期間所有した後、酒類部門はイギリスの新生ディアジオとフランスのペルノ・リカールに分割して売却されます。嘗て世界最大級の酒類会社であったシーグラム帝国は、エドガー・ジュニアが会社を継承して僅か8年で消滅した訳です。シーグラムの酒類部門が売却されたのに伴い、2002年2月、最終的に日本のキリンがフォアローゼズのブランドとローレンスバーグの蒸溜所を所有することになりました。キリンとシーグラムは1972年に合弁会社キリン・シーグラムを設立して事業を展開して来ましたし、キリンは以前からフォアローゼズのアジアでの販売業者となっておりブランドとの繋がりがありました。キリン・シーグラムはシーグラムの酒類事業売却により社名をキリン・ディスティラリーに変更しています。取引の詳細は分かりませんが、おそらくフォアローゼズの全事業権を取得した時にヘンリーマッケンナの海外事業権もキリンが取得したものと思われます。2006年にオーストラリアとニュージーランドで大手の飲料会社であるライオン・ネイサン(現ライオン)はキリンからマッケンナ・バーボンの権利を取得しているようなので。ともかく、こうして現在の日本では、ヘヴンヒルが製造するアメリカ国内版の並行輸入品と、フォアローゼズが製造するキリン正規品とが同時に市場に流通しているのでした。ただ、どちらかと言えば並行品の方が多くの酒販店で取り扱われ、正規品を取り扱っている店舗は少なそうな印象がありますね。

※重要な追記:記事を投稿後にキリンのヘンリーマッケンナのホームページを調べたら、最上部に「『ヘンリー マッケンナ』は2022年10月7日をもって出荷を終了させていただきました」との告知がありました。せっかく現行製品同士での対決という企画だったのですが、残念ながらキリン版のフォアローゼズ製ヘンリーマッケンナは終売になったようです。私が下調べのためにキリンのホームページを見た時は確かそんな事は書かれてなかったと思うのですが…。いや、タイミング悪っ。一応、私が記事を書いた時点でこれは分ってなかったので、タイトルや記事内容は修整しません。皆さんの頭の中で修整よろしくお願いします。

今回は同じヘンリーマッケンナという名を持つヘヴンヒル産とフォアローゼズ産の二つの違いを較べるのではありません。それも蒸溜所の個性の違いが味わえて面白いでしょうが、私にとってもっと興味深いのは同じ蒸溜所で造られながらどこまで違うのか、或いはどこまで同じなのかという方だったからです。周知のようにフォアローゼズ蒸溜所では2種類のマッシュビルとキャラクターの異なる5つのイーストを使って10種類の原酒を造り、それらをブレンドすることで品質と味を安定させたり、その組み合わせにより異なるフォアローゼズ・ブランドを作成しています(FRの10レシピについての仔細は過去に投稿したこちらを参照ください)。それならば、ヘンリーマッケンナとフォアローゼズ・ブラックで造り分けもし易いのではないか、と。いや、逆に手抜きしてブランドは違うが中身はほぼ一緒なんてことだってあるかも知れないぞ、と。冒頭に述べたように、幸いにもこの二つは同一のプルーフで市場価格もほぼ同じ、これは対決するしかないでしょ!?という訳で、そろそろバーボンを注ぐ時間です。

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目視での色の濃さは殆ど差を感じません。

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HENRY McKENNA 80 Proof
ボトリング年不明(購入は2022年)。明るめのブラウン。ライスパイス、薄っすらキャラメル、ウエハース、洋梨、ペッパー、青りんご、コーンフレーク。ややフルーティでトースティな木の香り。僅かにとろみのあるテクスチャー。口全体に甘みを感じつつもピリリとスパイシーな味わい。余韻はグレイニーでほろ苦くドライ気味。
Rating:81→82.5/100

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FOUR ROSES Black Label 80 Proof
ボトリング年不明(購入は2022年)。薄めのブラウン。熟したプラム、トーストした木、蜂蜜、ヴァニラウエハース、ホワイトペッパー、リンゴの皮。熟したフルーツを内包したややフローラルな香り。水っぽい口当たり。口中では甘くもありスパイシーでもありフルーツの存在感も。余韻はあっさりめながら豊かな穀物が現れ、最後に苦味が少し。
Rating:86/100

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Thought:両者は思ったより違いました。値段が殆ど同じなのでもっと味わいも近いのではないかと予想していたのですが、意図的にブレンド構成を変えている可能性はありそうなくらいに違いはあります。レシピ(マッシュビルとイーストの組合せ)が違うのか、熟成年数が違うのか、バレル・セレクトの基準が違うのか、或いはそれら全てなのか判りませんけれども。
私は昔からフォアローゼズ・ブラックを買い求め易い80プルーフのバーボンでは最も美味しいと非常に高く評価しています。90年代から現在のボトルまで一貫してリッチな熟したフルーツの風味があり、品質が安定しているからでした。その風味はフォアローゼズ蒸溜所で造られていた時代のブレット・バーボンでも感じ易かったです(特にブレット10年)。ところがこのヘンリーマッケンナにはそれが欠落しています。両者の違いをやや誇張して言うと、ヘンリーマッケンナは基本的にライトなフルーツ感をもつスパイシーなグレイン・フォワード・バーボンで、出てくるフルーツは洋梨や青りんごのようなフレッシュ・フルーツであるのに対し、フォアローゼズ・ブラックは基本的にスパイシーなフルーツ・フォワード・バーボンで、HMよりもう少し熟したフルーツ感があり、樽感も幾分かダークに感じます。仮に両者でバッチングに使用されるバレルの平均熟成年数が異なるのであれば、ヘンリーマッケンナは4〜5年熟成程度、フォアローゼズ・ブラックは6年熟成以上と言ったイメージかな、と。
二つのバーボンの似た部分は、どちらも液体を飲み込んだ直後のライ・キックが強いところでしょうか。とは言え、フォアローゼズ蒸溜所の2種類のマッシュビル「E」と「B」のどちらなのかの判断は難しいです。「B」マッシュビルの方がライ35%とライ麦多めのレシピではありますが、「E」マッシュビルであってもライ20%と他の蒸溜所ではハイ・ライと言ってもよいライ麦含有率ですし、フォアローゼズ・ブラックはOESKとOBSKの50/50のブレンドとどこかで見かけたことがあるので、ヘンリーマッケンナだって両マッシュビルを使ったレシピのブレンドの可能性も大いにありますから。
ところで、フォアローゼズのレシピに使用される5つのイースト「V・K・O・Q・F」は、イーストの研究に余念のなかったシーグラムが往時ケンタッキー州で所有していた五つの蒸溜所にルーツをもつと聞きます。どれがどの蒸溜所のものなのか私には判りませんが、その五つはルイヴィルのカルヴァート蒸溜所、シンシアナのオールド・ルイス・ハンター蒸溜所、ラルーのアサートンヴィル蒸溜所、ローレンスバーグのオールド・プレンティス蒸溜所、そしてネルソンのヘンリー・マッケンナ蒸溜所とされます。となると、ヘンリーマッケンナ・バーボンにはヘンリー・マッケンナ蒸溜所に由来するイーストが使われているのでしょうか? もしそうだとするならば、ヘヴンヒル製造の物よりも「血統」というロマンがあると思うのですが…。ここらへんの秘密を知ってる方は是非ともコメントよりご教示お願いします。
※ヘンリーマッケンナは開封直後はサイレントなアロマで味わいもパッとしなかったのですが、液量が半分以下になる頃には甘い香りが増して美味しくなりました。これが上記のレーティングの矢印の理由です。

Verdict:フォアローゼズ・ブラックに軍配を上げました。単に好みの問題かも知れませんが、個人的にはこちらの方が高いウィスキーの味がするような気がするので。ヘンリーマッケンナに関しては、もしかするとスタンダードなフォアローゼズ・イエローの現行品(ラベルがベージュになったやつ)にすら自分の好みとしては負けるかも知れません。全体的に少し単調な印象なのです。まあ、フォアローゼズ蒸溜所産だけに安心の美味しさですし、ライ麦の効いた味わいは私の好みでもあり、飽くまで高いレヴェルの中での些細な話ですがね。

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ワイルドターキー13年ファーザー&サンは、トラヴェル・リテイル専用として2020年に限定リリースされた製品です。86プルーフで、1リットル瓶に入っています。日本では長期熟成のワイルドターキーというとWT12年101に取って代わった同じ13年熟成のディスティラーズ・リザーヴがある(あった)ので、あまり購買意欲をそそられないかも知れません。特に、そのボトリング・プルーフがディスティラーズ・リザーヴより低いのは懸念点でしょう。熟成年数が同じでプルーフが類似している二つを飲み比べた海外のレヴュアーの方々の感想を見ると、ディスティラーズ・リザーヴの方が良いとするものとファーザー&サンの方が良いとするものの両方があります。自分がどっちに転ぶかは実際飲んでみるしかない。と言う訳で、さっそく。

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WILD TURKEY 13 Years Father & Son 86 Proof
推定2020年ボトリング。色はオレンジ寄りのブラウン。アップルサイダー、ヴァニラ、焦げ樽、ライスパイス、ビオフェルミン、アーモンドトフィー、パイナップル、タバコ、杏仁豆腐、チョコレート。アロマはフルーツをコアにお菓子のような甘い焦樽香とスパイス。口当たりは水っぽい。パレートはフルーティだがメディシナルノートも。余韻はミディアムショート、クローヴが強めに現れチャードオークのビター感と僅かにバターが残る。
Rating:86.5→84.5/100

Thought:アロマは凄く良いです。香りだけなら日本で流通しているディスティラーズ・リザーヴ13年よりファーザー&サンの方が良いと思います。ただ味わいはディスティラーズ・リザーヴ13年の方が旨味があった気がします。よって同点と言いたいところなのですが、こちらは開封してから暫くすると妙に渋みが強くなったのが個人的にマイナスでした。これが上記のレーティングの矢印の理由です。もしこの変化がなければ、ディスティラーズ・リザーヴ13年よりプルーフが低いのを考慮すると、こちらの方がリッチなフレイヴァーだったのかも知れない。とは言え、両者はかなり似ています。何ならダイアモンド・アニヴァーサリーから一連のマスターズ・キープに至る近年の長熟ワイルドターキーに共通の風味があります(いや、もっと昔のターキーでも少しはあったりするのですが…)。それは薬っぽいハーブ感とでも言うかクセのあるスパイス香とでも言うのか、とにかく私としてはバーボンに求める風味ではありません。それが少し香る程度なら崇高性を高めるのでアリなものの、他のフレイヴァーを圧倒するほどになると話は変わって来ます。これが私個人が近年の長熟ターキーをあまり評価しない理由です。アロマ以外でファーザー&サンの良い点としては、飲み終えた今にして思うと、飲む以前に気になっていたプルーフィングの低さ、即ち加水量の多さは、却ってフルーティさを引き出していたのかも知れず、飲み易さの一点に関しては功を奏していたように思います。また、ラベルの豪奢な雰囲気はなかなか良いのでは?

Value:メーカー希望小売価格は約70ドル程度のようです。日本での流通価格もそれに準じているでしょうか。13年物のワイルドターキー・バーボンが1リットルも入っているのだから、長期熟成酒の価格が高騰している現状を考慮すると、その値段に見合うだけの価値はあると思います。但し、8年101よりディスティラーズ・リザーヴ13年を好む方にのみオススメです。

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現在、ワイルドターキーからはエディ・ラッセルが主導するマスターズ・キープという限定生産で概ね長熟の特別リリースがありますが、それがスタートする2015年以前からジミー・ラッセルの主導する限定版の長熟バーボンがありました。ワイルドターキー・トリビュート15年はそうしたリリースの一つで、2004年に発売され、アメリカ国内版と日本輸出版のニ種類があります。アメリカ流通の物は101プルーフでのボトリングで5500本(6本入り800ケースの合計4800本という説も)、日本流通の物は110プルーフでのボトリングで9000本の数量とされています。各々はボトルの形状やパッケージングも異なり、アメリカ版は今のラッセルズ・リザーヴに似たボトルを採用してスクロール式のボックスに、日本版は旧来のケンタッキー・スピリットで使用されたフェザーテール・ボトルを採用して紙箱に入っていました。中身に関しては、ジミー・ラッセルも語っているらしいのですが、両トリビュートは同一バッチのウィスキーで、ボトリング・プルーフだけの違いのようです。それら二つを比較すると、一般的なコンセンサスは輸出用トリビュートの方が僅かにベターとされています。ハイアープルーフだからでしょうね。
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(WT "Tribute" 15yr USドメスティック版のラベル)

このバーボンには次のような逸話が伝わっています。2004年の或る日、マスター・ディスティラーのジミー・ラッセルはワイルドターキーの親会社であるペルノ・リカールから、記念品としてリリースするためのバレルの選定を依頼されました。彼はその意図を、きっと2005年に訪れるオースティン, ニコルズ&カンパニー設立150周年記念のためだろうと思いました。ところが実際には、経営陣の計画はジミーが蒸溜所に勤務し始めて50周年を迎えることを「トリビュート」する記念ボトルの作成でした。つまり、工場で行われていることの殆どを知り尽くした男に、サプライズのため?秘密裏に依頼していたのです。
ジミーが選んだのは、ある段階からバレルをリックハウスの低層階へと移し、ゆっくりと熟成させ特別に育ったバレルでした。ケンタッキー州の蒸し暑い夏にチャード・オークの新樽で寝かせたバーボンは、スコットランドの寒冷な気候や使用済みの樽で寝かせるよりも遥かに早く熟成し、ケンタッキーでの熟成はスコットランドでの熟成の3倍に匹敵すると表現される場合もあります。ワイルドターキー蒸溜所では、もっと熟成するに値しそうだと判断されたか、或いは単純に熟成の進んだバレルを倉庫の涼しい場所に移すなどして慎重な管理を行います。そのため、通常バーボンには不適切とされる熟成期間を経ていたにも拘らず、そしてジミーの哲学に於いても8〜10年の熟成がバーボンに最適とされているにも拘らず、それらは当時のワイルドターキーのストックの中で最も上質と見做せるものでした。「ホワイト・オークのスティックをチューイングしているような味わい」ではない「シュガーバレル」です。ジミーによれば、これほど古く、それでいて絶妙なバーボンになるのはほんの一握りのバレルだけだと言います。上品なメープルシロップを思わせる華やかな香り、ビターチョコのような重く奥深いコク、大胆なスパイス、レザーのような複雑な風味が鼻に抜けるダークなウィスキー。ちなみに、このバーボンの熟成年数を考えると、まだバレル・エントリー・プルーフが変更される前なので(*)、日本版の110プルーフはバレルプルーフに近いボトリングでしょう。

US版トリビュートのスクロール式の箱には次のような賛辞が記載されていました。
ジミー・ラッセルのワイルドターキー・バーボンへの50年に渡る貢献を記念して、限定版の15年熟成のスモールバッチ・バーボン「トリビュート」を提供できることを誇りに思います。この「ザ・マスター・ディスティラー」へのオマージュは、ワイルドターキー・ケンタッキー・ストレート・バーボン・ウィスキーを世界最高のバーボンとするための彼の半世紀に渡る情熱と献身を真に反映したものです。

偖て、こちらは今回のバー遠征に共に行った友人の注文品を一口だけ頂いたものです。その友人は、他にはワイルドターキー8年新旧(スケッチと横向きフルカラー・ラベル)やラッセルズ・リザーヴ・シングルバレル・ライ、ジャックダニエルズのシングルバレル三種の飲み比べ等をしていました。では、最後にトリビュート15年の感想を少しだけ。

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WILD TURKEY TRIBUTE Aged 15 Years 110 Proof
BATCH # JR-8904
BOTTLE # 8605
その熟成期間の割に、確かに口蓋で凄く甘味を感じました。余韻はややビターで、甘さに流されず引き締める感じでしょうか。オークの存在感は支配的ですが、ワイルドターキーの近年の長熟プレミアムに見られたキツさや苦味や渋さはなく、全体的にバランスの良い熟成加減に思います。多少は経年により柔らかさが出てるのかも知れませんが、それ以前に最近の物とは風味の深みが違う次元にあるような気がしますね。
このバーボンは近年オークションでは高騰の一途を辿る銘柄の一つで、大体10万を超えて来ます。あぁ、もう買えないんだなと寂しくなります…。皆さんもバーで見かけたら飲んでみて下さい。
Rating:91.5/100


*ワイルドターキー蒸溜所のバレル・エントリー・プルーフは、2004年に107から110 に、2006年に110から115へと変更されました。

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ウィリアム・ラルー・ウェラーは、ジョージ・T・スタッグ、イーグルレア17年、サゼラック・ライ18年、トーマス・H・ハンディ・ライと共に、バッファロートレース・アンティーク・コレクション(BTAC)の一つです。この限定版ウィスキーのコレクションは2000年にリリースされた当初、90プルーフでボトリングされた超長熟のバーボン、ウィーテッド・バーボン、ライの三種で構成されていましたが、その後ラインナップを増やしたり、熟成年数やプルーフの変更などがあり、最終的に三つのバーボンと二つのライに落ち着き今に至っています。
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BTACはバッファロー・トレース蒸溜所の最高のバーボンとライを代表する存在として、毎年秋に限られた数量でリリースされ、世界のウィスキー愛好家に待ち望まれています。そのためパピー・ヴァン・ウィンクルやウィレット・ファミリー・エステートと並んで入手困難なユニコーン・ボトルでもあります。五つのウィスキーのそれぞれは、使用されるマッシュビル、熟成期間の長さ、プルーフなど異なるものの、各ボトルの希望小売価格は99ドルと、昨今のスーパープレミアムなボトルのリリースと比べると可愛らしい価格ではあります。しかし、抽選会などで当選しないとその価格で購入することは叶わず、通常パピーほど高価にはなりませんが、セカンダリー・マーケットでは一本のボトルに数百ドルから場合によっては数千ドルを費やすことになるでしょう。親会社サゼラックの賢明な舵取りと卓越したウィスキーの組み合わせによってバッファロー・トレース蒸溜所はアメリカン・ウィスキー愛好家が何よりも追い求める蒸溜所となり、BTACは言うに及ばず、ブラントンズ、カーネルEHテイラーJr.やエルマーTリー等も希望小売価格を上回る価格で取引されています。
全てのバッファロー・トレースのバーボンは、濁度のチェックやガスクロマトグラフィーによるサンプル・テストなど様々な品質テストが行われるそうですが、最も厳しいテストは人の味覚によるものだと言います。官能分析のトレーニングを受けた何人かのテイスターは、ラボに持ち込まれたバレルのサンプルを全て試飲すると、各バレルがブランドの基準に合致しているかどうかを確認し、テイスターのうち一人でも反対すればそのバレルは送り返され更に熟成されるのだとか。そうした厳しい基準の最たる例は、2021年のBTACのラインナップからジョージTスタッグが外れた件に顕著でしょう。品質担当でありマスター・ブレンダーのドリュー・メイヴィルは、「私たちの製品は、常に品質が最重要で」あり、「もし味が私たちの期待にそぐわなければ、お客さまにお出しすることはありません」と言っていました。

ウィリアム・ラルー・ウェラーは、他のウェラー・ブランドのラインナップやヴァン・ウィンクル・ブランドのバーボンと同じくライ麦を含まないマッシュビルを使用するウィーテッド・バーボンです。2005年のアンティーク・コレクションから導入されました。それ以前は、2000年から2002年に掛けて、超長熟で90プルーフの「W.L.ウェラー19年」がリリースされていました。小麦レシピなのは同じながら、それらは純粋なスティッツェル=ウェラー・ジュースと目されており、全く別の製品です。近年続々と拡張されたヴァリエーションを別にすると、ウェラー・ブランドには「スペシャル・リザーヴ 」、「アンティーク」、及び「12年」が定番としてありました。ウィリアム・ラルー・ウェラーは概ね約12年間熟成されているところから考えると、バレル・ピックの基準の厳しさを除けば、謂わば「12年」のノンチルフィルタードかつバレルプルーフにてボトリングされたヴァージョンと言って差し支えないでしょう。
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(W.L.ウェラー19年のラベル)

酒名となっているウィリアム・ラルー・ウェラーという人物は「小麦」と密接に関係づけられて語られますが、実はウィーテッド・バーボンを開発したのでもなく販売すらしたことはなかったかも知れません。所謂ウィーテッド・バーボンはスティッツェル兄弟が開発し、ウィリアムの死後30年近く経ってから禁酒法後にパピー・ヴァン・ウィンクルらが広めたレシピだったと見られています。その代わり彼はスティッツェル兄弟からウィスキーを購入したり、自身の会社に若きパピー・ヴァン・ウィンクルを雇った人でした。彼はウィスキー・レクティファイアーではありましたが、なんなら皮肉にも酒を飲まない人だったとも言われています。若い頃はザッカリー・テイラーと共にメキシコ戦争に参戦した軍人でもありました。またウィリアムは自身の成功を還元することも忘れず、ルイヴィルの街に大きな貢献をしたそうです。なんでもバプティスト孤児院の創設メンバーの一人であり、人生のかなりの期間その理事を務め、子供達が良い家庭に行くことが出来るよう養親の面接を行った人物だったとか。ウィリアム・ラルー・ウェラーその人やウェラー・ブランドについては過去に投稿したこちらでも少し触れていますので良ければ参照下さい。

バッファロー・トレース蒸溜所はBTACに関しては詳細を公表しているので、下にウィリアム・ラルー・ウェラーの全てのリリースをリスティングしておきます。W. L.ウェラー19年に関しては、幾つかのウェブサイトや写真を参考にリストを作成しましたが、後のBTACほど詳細は分かりません。おそらく年2回のペースで販売されたと思われます。左からボトリング年、蒸溜年、プルーフの順です。2003年と2004年はリリースがなく、2005年から名称をウィリアム・ラルー・ウェラーと改め、中身の仕様も変更され、詳細が明かされるようになりました。しかし、2019年からはバッチ・サイズに関する情報は非公開になっています。リストは左から順にリリース年、蒸溜年、熟成年数 、ボトリング・プルーフ、熟成されていた倉庫、選ばれたバレルが置かれていたフロアー、熟成中の蒸発率、使用されたバレルの数と推定ボトリング本数、となります。


W. L. Weller 19 YEARS OLD
Summer 2000|Fall 1980|90 Proof
Spring 2001|Fall 1980|90 Proof
Summer 2001|Spring 1982|90 Proof
Fall 2001|Spring 1982|90 Proof
Spring 2002|Spring 1983|90 Proof
Fall 2002|Spring 1983|90 Proof

2003|No release
2004|No release

William Larue Weller
2005|Fall of 1993|12 years, 2 months|121.9 proof|Warehouse Q|5th floor|58.04%|41 barrels, 4602 bottles
2006|Spring of 1991|15 years, 3 months|129.9 proof|Warehouse M |5th floor|50.64%|22 barrels, 2905 bottles
2007|Spring of 1997|10 years, 3 months|117.9 proof|Warehouse I|9th floor|53.27%|34 barrels, 4250 bottles
2008|Spring of 1997|11 years, 2 months|125.3 proof|Warehouse I|9th floor|52.05%|40 barrels, 5131 bottles
2009|Fall of 1998|11 years|134.8 proof|Warehouse N, O|5th floor|57.20%|41 barrels, 4694 bottles
2010|Summer of 1998|12 years, 3 months|126.6 proof|Warehouse I, P|4th and 9th floors|55.50%|55 barrels, 6547 bottles
2011|Fall of 1998|12 years, 11 months|133.5 proof|Warehouse N, O, P|4th and 5th floors|57.20%|45 barrels, 5152 bottles
2012|Spring of 2000|12 years, 4 months|123.4 proof|Warehouse P, I|2nd and 4th floors|56.60%|49 barrels, 5689 bottles
2013|Spring of 2001|12 years, 1 month|136.2 proof|Warehouse M, P|3rd and 4th floors|55.30%|39 barrels, 3468 bottles
2014|Spring of 2002|12 years, 3 months|140.2 proof|Warehouse D, K, L|2nd, 3rd, 4th, and 6th floors|62.30%|39 barrels, 3933 bottles
2015|Spring of 2003|12 years, 3 months|134.6 proof|Warehouse I, K, L|2nd and 6th floors|72.30%|105 barrels, 7780 bottles
2016|Winter of 2003|12 years, 7 months|135.4 proof|Warehouse D, K, L|3rd and 6th floors|65.40%|145 barrels, 13421 bottles
2017|Winter of 2005|12 years, 6 months|128.2 proof|Warehouse D, I, P|1st〜6th floors|54.08%|155 barrels, 19040 bottles
2018|Winter of 2006|12 years, 6 months|125.7 proof|Warehouse C, I, K, L, M, Q|2nd〜5th floors|56.90%|149 Barrels, 17179 Bottles
2019|Winter of 2007|12 years, 6 months|128.0 proof|Warehouse I|2nd and 3rd floors|57.00%|N/A
2020|Winter of 2008|12 years, 6 months|134.5 proof|Warehouse I, C|3rd, 5th and 6th floors|73.0%|N/A
2021|Winter of 2009|12 years, 6 months|125.3 proof|Warehouse K, L, D, Q, C|1st, 2nd and 3rd floors|64.0%|N/A


偖て、今回バーで飲んだのは2005年と2007年です。現地でも入手が困難になったせいか、日本で現行品のBTACを見かけることは殆どなくなりました。それもあるし、年代違いがあるのなら、この機会に並べて飲み較べてみようという意図で注文した次第です。では、感想を少しばかり。

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William Larue Weller 117.9 Proof
2007年ボトリング。重厚な焦げ樽香とレーズンを中心としたアロマ。味わいは濃厚で、甘酸っぱさとスパイシネスの波が押し寄せる。バターとビターチョコの余韻。テクスチャーに刺々しさはなく、円やかです。
Rating:92.5

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William Larue Weller 121.9 Proof
2005年ボトリング。スモーキーな樽香や豊富なドライフルーツは2007年と共通しますが、こちらの方がアロマにマスティオークを感じました。口当たりは思ったよりあっさりめ。味わいは柑橘ぽいフルーティさが強いかな。
Rating:92

飲んだ瞬間に「あ、違う」と思うほど両者に違いはあるのですが、どちらが上か下かは甲乙つけ難く、共に長熟ウィーテッド・バーボンの魅力に溢れていると思います。点数の差は個人的なちょっとした嗜好に過ぎません(もしかすると普通の人は逆かも…)。どちらも一言で表現するなら、飲むドライフルーツの宝石って感じです。おそらくバーボン飲みだけに限らず、シェリー樽で長期熟成されたスコッチが好みの方にもウケるのではないでしょうか? 皆さんも見かけたら是非飲んでみて下さい。最後に、上のリストと重複する部分もありますが、せっかくなのでこの二つのWLWの詳細を引用しておきますね。

Distiller
Buffalo Trace Distillery, Franklin County, Kentucky
Age Profile
Year of Distillation : Fall of 1993 
Release : Fall of 2005
Release Brand name : William Larue Weller Kentucky Straight Bourbon Whiskey
Proof for release : 121.9 proof
Recipe
Large Grain : Kentucky Corn; Distillers Grade #1 and #2
Small Grain : North Dakota Wheat
Finish Grain : North Dakota Malted Barley
Cooking / Fermentation
Milling screen : #10
Cook Temperature : 240 degrees Fahrenheit
Water : Kentucky Limestone with Reverse Osmosis
Fermentation : Carbon Steel / Black Iron fermenter
Mash : Sour
Distillation & Aging
Distillation : Double Distilled; beer still and doubler 
Proof off still : 130 Proof
Barrel : New, White Oak; #4 Char; Charred for 55 seconds
Barrel maker : Independent Stave; Lebanon KY
Barrel entry proof : 114 proof
Barrel size : 53 liquid gallons; 66.25 Original Proof Gallons
Warehouse : Warehouse Q
Floor : 5th
Evaporation loss : 58.04% of the original whiskey lost to evaporation
Bottling
Barrel selection : 41 hand picked barrels
Filtration : None
Product Age : 12 years and 2 months old at bottling
Tasting comment : "Big & Sweet"

Distiller
Buffalo Trace Distillery, Franklin County, Kentucky
Age Profile
Year of Distillation : Spring of 1997
Release : Fall of 2007
Release Brand name : William Larue Weller Kentucky Straight Bourbon Whiskey
Proof for release : 117.9 proof
Recipe
Large Grain : Kentucky Corn; Distillers Grade #1 and #2
Small Grain : North Dakota Wheat
Finish Grain : North Dakota Malted Barley
Cooking / Fermentation
Milling screen : #10
Cook Temperature : 240 degrees Fahrenheit
Water : Kentucky Limestone with Reverse Osmosis
Fermentation : Carbon Steel Black Iron fermenter
Mash : Sour
Distillation & Aging
Distillation : Double Distilled; beer still and doubler
Proof off still : 130 Proof
Barrel : New, White Oak; 4 Char, Charred for 55 seconds
Barrel maker : Independent Stave; Lebanon KY
Barrel entry proof : 114 proof
Barrel size : 55 liquid gallons; 66.25 Original Proof Gallons
Warehouse : Warehouse I
Floor : 9th
Evaporation loss : 53.27% of the original whiskey lost to evaporation
Bottling
Barrel selection : 34 hand picked barrels
Filtration : None
Product Age : 10 years and 3 months old at bottling
Tasting comment : "Sweet molasses with a hint of cinnamon"

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今回もバー飲みの投稿です。5杯目は、昔から飲みたかったけれど飲んだことのない銘柄だったオールド・ウィリアムズバーグにしました。

このバーボンはロイヤル・ワイン・コーポレーションが所有するブランドで、同社は名前が示すようにワインの取り扱いがメインの会社ですが、蒸溜酒も少数扱っており、そのうちの一つがオールド・ウィリアムズバーグです。彼らは現在、バーボン部門では「ブーンドックス」というブランドに力を入れています。ブーンドックスはプレミアムなレンジのブランドなので様々な別樽での後熟(追加熟成)もの等ありますが、それに比べるとオールド・ウィリアムズバーグは価格の安いバジェット・バーボンに位置付けられた製品。ブランドの名前を聴くと、ヴァージニア州の歴史的ランドマークであるコロニアル・ウィリアムズバーグを連想してしまうかも知れません。しかし、このブランドはそちらの「生きた博物館」とは何の関係もなく、ニューヨーク州ブルックリンのウィリアムズバーグ地区から命名されました。ロイヤル・ワインはニューヨークの会社ですし、限定的な地区の名前からしても、そもそもはローカリーな製品なのでしょう。ラベルにブルックリン橋が描かれているあたり如何にもな感じです。但し、ブルックリン橋はウィリアムズバーグに接続してはおらず、少し離れています。実際にウィリアムズバーグに接続しているのはその名もウィリアムズバーグ橋で、同ブランドのウォッカのラベルではウィリアムズバーグ橋が描かれているのに、何故かバーボンの方はブルックリン橋なのですよね…。何となく見栄えがするからか、より知名度が高いから採用されたのでしょうか? いっそのことラムでもリリースしてマンハッタン橋を採用すれば、近隣の三つの橋が揃う「橋シリーズ」とも呼べそうなラベルが完成するのに…。
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ウィリアムズバーグと言うと、今ではブルックリンのトレンディな地域としても知られていますが、ユダヤ教正統派のコミュニティの存在も有名です。ブランドの発売は1994年とされ、当時は唯一のコーシャ・バーボンでした。コーシャとは「適正」を意味するヘブライ語で、ユダヤ教徒が口にしてもいい食品の規定です。コーシャ認定制度は、スーパーマーケットに代表される消費市場が拡大した第二次世界大戦前後にアメリカを中心として始まったそうです。大量生産によって販売される商品数も膨大になるにつれ、商品の生産過程や含有物が複雑になり、粗悪な食品の流通が増えたことを懸念して、ユダヤ教徒が清浄な食品を安心して手に入れるための認定の需要が高まったらしい。現在ではウォルマートやコストコなどアメリカの大手スーパーマーケット・チェーンでも多数のコーシャ認定商品が見られます。ロイヤル・ワイン・コーポレーションはコーシャ・ワインを多数取り扱い、その分野での明確なリーダーとして認められているそうなので、その流れからスピリッツでもコーシャ認証の物をリリースする運びとなったのでしょう。オールド・ウィリアムズバーグのラベルにはマルKやマルU、或いはヘブライ語の文字が書かれたスタンプといったコーシャ認定を示すマークが印刷されています。よく見ないと見過ごしそうですけれども。
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裏ラベルには「昔の」ウィリアムズバーグについて書かれています。19世紀後半、イースト・リヴァー沿いにはビア・バロンズ(ビール造りで財を成した人々)の醸造所が立ち並び、その成功したオウナー達の建築的に優れた邸宅が建てられていた、バーボンはそんな彼ら特権階級のために、プライヴェートなスティルで手造りされ、特別に瓶詰めされ、選ばれた酒であった、と。彼らがバーボンを飲んだのが本当なのか、単なるマーケティングの文言なのかはちょっと判りませんが、醸造所が並ぶノース11thストリートがブリュワーズ・ロウと呼ばれているのは確かでした。

偖て、次にオールド・ウィリアムズバーグの幾つかのヴァリエーションについて言及しておきましょう。先ず、現在は3年熟成80プルーフのバーボンとウォッカのみが販売されているようです。その他に昔は「No.20」という101プルーフの物と「バレル・プルーフ」と銘打たれた121.5プルーフの物がありました。そして、ややこしいのはここからです。95年出版のゲイリー・リーガン著『THE BOOK OF BOURBON』には、オールド・ウィリアムズバーグ No.20のテイスティング・ノートが載っており、そこには熟成年数が36ヶ月と書かれています。で、その文末には「情報筋によると、オールド・ウィリアムズバーグに、より熟成させたバーボンがもうじき発売される予定とのこと。熟成年数や36ヶ月以上熟成との記載がないボトルを探そう。それが最低4年熟成のウィスキーであることを示すから。(意訳)」との記述がありました。つまり、私が見た現物および写真、資料によって把握するにオールド・ウィリアムズバーグ・バーボンのヴァリエーションには、
①No.20、101プルーフ、36ヶ月熟成表記
②No.20、101プルーフ、NAS
③バレル・プルーフ、121.5プルーフ、NAS
④後のスタンダード、80プルーフ、3年熟成表記
の四つが確認できる訳です。残念ながらリーガンのテイスティング・ノートは文章だけで写真が載せられていないので、①と②でボトル形状が異なるのか、ほぼ同じ見た目なのかは分かりません。この件や、これに限らずその他の物があるのをご存知の方はコメントよりどしどしお知らせ下さい。ちなみに今回、私が飲んだ物は、おそらく②と推測しています、エイジ・ステイトメントがないので。

続いてオールド・ウィリアムズバーグ・バーボンの中身(原酒)について語りたいところなのですが、これまたよく分かりません。ロイヤル・ワイン・コーポレーションは酒類販売会社およびインポーターであってディスティラーではないので、それがソーシング・ウィスキーなのは明らかとは言え、調達先に関する情報開示はしていないのです。明確なのはケンタッキーの何処かの蒸溜所からのものであること。また、初期のボトルは所在地表記がミネソタ州プリンストンであるところから、ボトリングしたのはユナイテッド・ステイツ・ディスティルド・プロダクツ(USDP)で間違いないでしょう。
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USDPは1981年に中西部の市場向けに地域ブランドを生産することを目的に小規模なボトリング事業としてスタートしました。おそらくプラント・ナンバーはDSP-MN-22だと思います。この施設では蒸溜は一切行なわれず、代わりにアルコール、甘味料、フレイヴァリング製剤やその他の成分を購入し、顧客の処方仕様に従って調合するブレンダーの役割とボトリング及び製品のパッケージングが主要な業務です。設立以来、信頼される企業として徐々に成長し、2005年頃の情報では、245000平方フィートの施設で年間200万ケースのスピリッツやコーディアルを中心としたリカーを生産しているとされています。また、2013年頃の情報では、約300人ほどの従業員が働いており、1日3シフト、24時間体制で7つの生産ラインを稼働させているとありました。2012年には186181平方フィートの倉庫の増設したそう。画期的だったのは、2001年にフィリップス・ディスティリングを買収して子会社としたことだったかも知れません。これにより自社ブランドの製造開発に拍車が掛かり、販売にも箔が付いたのではないでしょうか。プリンストン工場の生産ラインでは、フィリップスのUVウォッカ・ブランド、フレイヴァー・ウィスキーのレヴェル・ストークなど全米で人気のあるスピリッツ飲料を生産しています。
オールド・ウィリアムズバーグは常にUSDPが生産してるのではなく、現行の3年熟成80プルーフの物は、裏ラベルによるとニュージャージー州スコービーヴィルでボトリングとあります。スコービーヴィルというと、アップルジャックおよびアップル・ブランディで有名なレアード&カンパニーのボトリング施設があるので、そこで生産していると考えるのが妥当だと思います。いつ頃切り替わっているかは全く判りません。詳しい方はコメントよりご教示頂けると幸いです。では、最後に飲んだ感想を少々。

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OLD WILLIAMSBURG №20 101 Proof
推定95年ボトリング。焦げ樽香とスパイシーなアロマ。口に含むとブライトな樽感が味わえる。薫り高い穀物の風味と軽ろやかなフルーティさ、甘さとスパイスのバランスが良い。余韻はミディアム程度の長さ。
Rating:87.5/100

Thought:このバーボンは今となっては知名度が高いとは言い難く、余程のバーボン好きか、90年代から2000年代初等頃にバーで見かけたことがあるという人以外は知らない銘柄かも知れません。実は、日本語でオールド・ウィリアムズバーグをグーグル検索すると、まともにヒットするのはBAR BREADLINEのマスターさんのブログ「BAR ABSINTHE」の投稿くらいしかないのです。で、彼のテイスティング・ノートには原酒について少なくともヘヴンヒル系ではないとの感想が書かれており、更に私が飲んだバー・デスティニーのマスターに原酒について訊ねたところ同様にヘヴンヒルの味ではないと思うがそれ以上は全く分からないとの返答をもらいました。確かに私も一口飲んですぐヘヴンヒルではないと思いました。ヘヴンヒルのスタンダード・マッシュビルより、もっとライ麦多めのバーボンという印象があり、とても自分好みの味わいだったのです。マッシュのライ麦率は20〜30%くらいありそうな気が…。例えて言うとフォアローゼズから濃厚な熟成フルーツの風味を抜き取ったような味わいですかね。熟成年数に関しては、やはり3年熟成とは思えない味わいで、少なくとも4年〜6年程度のテクスチャーと風味に感じました。このNo.20の裏ラベルには、現行製品では削除されている次のような一文があります。
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「Only the top 20% of the barrels are used for this flavorful smooth bourbon. Enjoy!(上位20%のバレルだけを使用したこの味わい深く滑らかなバーボン。楽しんで!)」
ここで言われてる20%が「No.20」の由来なのでしょうかね? まあ、それは措いても、私の味覚には、この一文は本当にそうなのかもと思わせるだけの美味しさをこのバーボンから感じました。そして、何処の原酒かという件ですが、自分的にはフォアローゼズか、でなければバートンのハイ・ライかなぁ…と。飲んだことのある皆さんはどう思われましたか? コメントよりご意見ご感想どしどしお寄せ下さい。
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そう言えばこのバーボン、ボトルのサイドがエンボス加工されていて、なかなかカッコいいですよね。これと同時期かもう少し後かにボトリングされたと思われるミスティ・ヒルズとかブラック・イーグルというブランドのバーボンも瓶形状が同じに見え、ボトリングはUSDPが行っていると思われます。ミスティ・ヒルズとブラック・イーグルは、フィリップスやロイヤル・ワインのポートフォリオに(少なくとも現在は見られ)ないので、おそらく何処か別の販売会社がボトリング契約してパッケージングまでしてもらっているのではないでしょうか。まあ、憶測ですし、蛇足の情報です。

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(画像提供K氏)

ウィレット・ファミリー・エステート・シングルバレルのバーボンとライのリリースは、アメリカン・ウィスキー市場で最もカルト的な人気があり、「ユニコーン」と呼ばれるウィスキーの代名詞的存在です。パピー・ヴァン・ウィンクルやバッファロー・トレース・アンティーク・コレクションと同じか、或いはマニア筋にはそれ以上に評価されています。WFEはプライヴェート・バレル・セレクション・プログラムのラベルであるため、それぞれのストアや様々なウィスキー・ソサエティのピック、輸出のみのオファリング、チャリティー・ボトル、蒸溜所のギフト・ショップでのリリース等がありますが、当該のコミュニティに属しているか小売業者または個人とのコネがないと、法外な価格を支払わずにボトルを購入することは難しいです。一部のスモールバッチのWFEを除いて、シングル・バレルに関しては常に需要が供給を遥かに上回っており、今後もその傾向は続くと予想されます。
当のアメリカ、また世界的にそのような状況の中、日本でも一部の輸入業者や酒販店のストアピックが入荷され即完売となる現状に於いて、日本で最も数多くのウィレット・ファミリー・エステートが飲める場所と言えば、ウィレット蒸溜所と親交のある豊橋のバーボン・バー、ゲモーを措いて他にありません。ゲモーと言えばウィレット、ウィレットと言えばゲモーなのです。
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(画像提供K氏)

今回取り上げるのはお店の25周年を記念している「GEMOR 2021」です。ゲモーさんセレクトのWFEと言えば、名高いのは以前20周年記念の時にリリースした「C70A」でした。そちらはバーンハイム・ウィーターの20年熟成でしたが、こちらのバレル・ナンバー「2103」はウィレット蒸溜所の代表銘柄オールド・バーズタウンのシリーズで使用されるハイ・コーン・バーボン・マッシュビル(79%コーン、7%ライ、14%モルテッドバーリー)を使った自社蒸溜原酒となっています。バレル・エントリーは125プルーフだそう(「19xx-21xx(125p)」)。
WFEは導入された当初、全て調達されたバレルからボトリングされていました。1980〜90年代のアメリカン・ウィスキー低迷期には、オープン・マーケットへの需要は殆どなく、ハイ・クオリティなウィスキーが安く手に入りました。それらを購入するNDPは競争相手があまりいないので、基本的にどんな年数のバレルでも選ぶことが出来たと言います。このブランドの初期の評価を伝説的なものにした要因は、そうした優れたバレル(特に長熟の)を惜しげもなくバレルプルーフ、アンチルフィルタードにてボトリングしたことにあったでしょう。バーンハイム蒸溜所のウィーテッド・バーボンはそのうちの一つだった訳です。2012年からウィレット蒸溜所は再び蒸溜を再開し、彼らのオリジナル蒸溜液で満たされたバレルは熟成を続け、今日ではそれらを使った様々なレシピの4〜8年熟成のWFEシングルバレルが市場に出回って来ました。
この大変貴重なWFEを飲めるのは、例によってバーボン仲間のK氏よりサンプルを提供頂けたお陰。画像提供も含めてこの場でお礼申し上げます。こちらからは大したお返しも出来ないにも拘らず、本当にいつもありがとうございます、感謝の極みです! では、飲んだ感想を少しばかり。

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(画像提供K氏)
WILLETT FAMILY ESTATE BOTTLED SINGLE BARREL BOURBON "GEMOR 2021" 25th ANNIVERSARY 8 Years 122.6 Proof
GEMOR 零号樽
Barrel No. 2103
2021年ボトリング。ややオレンジがかったアンバー。グレープ、マヌカハニー、スイートグレイン、蜂蜜レモン、柑橘、木質の酸、ローストコーン、バターを塗ったトーストしたパン。バレルプルーフにしては刺激が少なく滑らかな口当たり。味わいはフレッシュフルーツ。余韻は豊かな穀物とビターチョコ。

オールド・バーズタウンのスタンダードやボトルド・イン・ボンド、エステート・ボトルドと同系統の頗るフルーティなアロマや味わいを感じました。それらと較べてプルーフィングや熟成年数の違いから、こちらの方がもっとダークな味わいかと予想していたのですが、むしろ溌剌としたブライトな樽感が印象的でした。おそらく開封からさほど時間が経ってない状態での試飲なので、今後もう少しフレイヴァーに変化はありそうな気はしますね。
Rating:89/100

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