カテゴリ:ケンタッキーバーボン > ジムビーム蒸溜所

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今回は日本でのバーボン輸入がまだ華やかりし頃のジムビーム・ホワイトラベルを開栓してみました。個人的には今の物より古めかしいこのラベルの方が好みです。こちらはオークションで購入したもので、液体はグラスに注ぐとクリアに見えますが、ボトルのままだとほんの少し曇りがあるように見えます。

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JIM BEAM White Label 80 Proof
推定92年ボトリング。鉛筆の削りカス、キャラメル、オールドボトルファンク、チリパウダー、フルーティな接着剤、鰹節、クエン酸、タバコ、ドライクランベリー。口当たりは円やか。余韻はミディアムでスパイシー、あとちょっと薬草感。
Rating:72→82/100

Thought:開封したては、ただただ香りも味わいも余韻も鉛筆の削りカスそのものでした。単なる木屑ではなく、鉛筆の芯の香りもするんですよね(笑)。正直、飲むのが辛かったです。そのため、極く少量づつ飲みながら様子を見ていたのですが、半年くらいしたら不快な香りは上手いこと消えてくれました。そうなってみると、味わいには僅かにオールドファンクがあるものの不愉快なほどではなく、普通に美味しいと感じられました(*)。熟したアロマと深みのあるスパイスが現れる余韻は、これがオールドボトル故の経年変化もあるのでしょうが、現行のホワイトラベルとは全く別物な印象です。オールドボトル愛好家の方が昔のビームは優れていた、という意味合いのことを言っているのを耳にしたことがあります。オークションでそれほど高値がつくバーボンでもないので、多少のギャンブル性を覚悟の上なら購入するのもまた一興かと。


*但し、グレンケアンで飲むとオールドファンクが強く感じられて、余り美味しくはありませんでした。ショットグラスだと良い感じにオールド臭が薄らいだように思いました。また、夏場より冬場のほうが美味しく感じたので、私は試していませんが、もしかするとロックで冷やして飲むとより良いのかも知れません。

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今回はジムビーム・ブラックラベルの前身、ビームズ・ブラックラベルです。もともとビームの黒いラベルは「ジム・ビーム」ではなく「ビームズ」を名乗っていました。嘗ては白ラベルのフラッグシップ製品だけが「ジム・ビーム」の名を冠することが出来るという方針だったそうで、緑ラベルでお馴染みの「チョイス」なんかも昔は「ビームズ」でした。大手のビームからの製品であり、長期間販売されている割に、ブラック・ラベルの初登場がいつだったのかは、調べても分かりませんでした。有名なウィスキー・ブロガーのくりりんさんがビームの黒ラベルをレヴューしているのですが、それは75年ボトリングと推定され、なんとラベルは「チョイス」名義。これからするとブラック・ラベルというコンセプトが70年代半ばには既にあったのは間違いなさそうです。そして、それよりもボトルやラベルが古そうに見え、推定70年代ボトリングとされるビームズ・ブラックラベルがありました(参考)。ここら辺がオリジナルなのでしょうか。仔細ご存知の方はコメントよりお知らせ頂けると助かります。その起源は兎も角、ビームズ・ブラックラベルは、70年代後半から80年代半ば頃には広告にも力を入れられていたようです。
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上の画像のように、ビームズ・ブラックと言えば101ヶ月熟成の表記が印象的です。つまり8年5ヶ月熟成ですね。何時の頃からか一般的な8年熟成表記に変わりましたが、少なくとも70年代後半から80年代半ばまでは101ヶ月表記だと思われます。ところで、何故わざわざイヤー表記ではなくマンス表記なのでしょうか? もしかすると、わざとマンス表記にすることで、ワイルドターキーの象徴的な数字「101」を意識しているのではないか、と私は邪推しています。また、黒を基調としたラベルと「サワーマッシュ」や「チャコール・フィルタード」の記載はジャックダニエルズを意識してるようにも思えます。多分ライヴァルの二つのブランドへのあからさまな対抗心がある気が…。まあ、上で言及したビームズ・チョイス・ブラックラベルは100ヶ月熟成でしたし、これは何の根拠もない私の想像です。

現在ジムビーム・ブラックラベルと呼ばれるこのブランドは、長年に渡って名称もプルーフも熟成年数もボトル形状もころころ変わりました(2000年代以降の変遷は過去に投稿した記事に書きましたので参考にして下さい)。そのせいか、マーケティング戦略の犠牲者のように見えなくもないブラック・ラベルですが、そもそもはスタンダードなジムビーム・ホワイトの倍の熟成年数を誇るプレミアムな製品だった筈です。ブッカーズを筆頭とするスモールバッチ・コレクションが誕生する以前は間違いなくそうでしょう。今回、開封したボトルは推定82年ボトリングです。ボトリング年からすると、まだスモールバッチ・コレクション開始前なので、相当ハイクオリティなバレルがバッチングに使用されていてもおかしくはないのでは?という淡い期待があります。逆に年代からすると過剰供給時代なので、単なる過熟バレルが使われてる可能性も否定出来ませんが…。では、試してみましょう。

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BEAM'S BLACK LABEL 101 Months 90 Proof
推定82年ボトリング。やや赤みを帯びた濃いめのダークブラウン。黒蜜、キャラメル、レーズン、マスティオーク、湿った土、タバコ、胃腸薬。ノーズは濃密な甘い香りにウッド、チェリー、スパイスが交じり合う。アルコール刺激のないとても滑らかな舌ざわり。味わいは甘みもあるがそれ以上にウッディかつスパイシー。余韻はミディアムロングでほろ苦い。
Rating:85.5/100

Thought:前回まで開けていた99年ボトリングのジムビーム・ブラックラベルと較べると、焦樽フルーツ系統の方向性は一緒なのですが、こちらの方がよりスパイシーに感じました。また、単体だと熟したフルーツ感と思っていた99年ブラックラベルが案外とフレッシュなフルーツ感に感じてしまうほど、こちらの方がもっと濃いフルーツを感じます。そして強いスイートな香りも素晴らしく、ここら辺はオールドボトルの魅力と思います。多分、現行のノブクリークあたりと比較してすら、こちらの方がリッチなフレイヴァーが認められるかと。ただ一方で、このボトルは経年もあってか、開封から飲み切るまで常にオールドなファンキネスがありました。それは強過ぎるように感じる時もあったし、特に気にならない時もありました。そこで何か法則性があるのかと、例えば飲む前に何分も放置してみたり、飲む直前に食べる物を変えてみたり色々試したのですが、一貫した法則は見つけられませんでした。これって自分側の体調次第なのですかね? 同様な体験をしたことがある方は是非コメント頂けると幸いです。おそらく、私が感じているオールド臭と言うのか、古びた風味は、経年だけでなく、そもそもの熟成バレルからも由来していると思われます。だから評価が難しいのですが、私にとって過剰なオールドファンクはなくていいものなので、それが点数を抑える結果になっています。それさえもう少しだけ感じることがなければ、あと1点は高かったでしょう。オールドボトル・エフェクトを軽々とクリア出来るオールドボトル愛好家の方なら、もっと評価は高いのかも知れませんね。

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今回はジムビーム・ブラックがまだ8年熟成だった頃の物を取り上げます。ラベルに描かれた歴代のビーム家マスター・ディスティラーの中に、現在のフレッド・ノーがいません。まだブッカー・ノー存命中の物です。ブラック・ラベルのブランド紹介は過去投稿のこちらを、ブッカー・ノーについてはこちらを参照ください。

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JIM BEAM BLACK 8 Years 86 Proof
推定1999年ボトリング。濃密なキャラメル、香ばしい焦げ樽、コーン、サワークリーム、オールドファンク、サイダー、ビターヌガー、タバコ、レーズン。アロマは強いキャラメルと甘酸っぱいフルーツと地下室っぽいオールド臭が主、開封から暫くするとヒネ臭は消えフローラルが出てきた。口当たりは度数の割にはとろみがありつつサラッともしている。舌では甘味を、口蓋全体では甘酸っぱいベリー系の旨味を感じ易い。余韻は比較的さっぱりめだが、コーンの気配とビタネスは長続きする。
Rating:85/100

Thought:開封した途端、ああ懐かしい匂い…って思いました。90年代のジムビームやヘヴンヒルやエンシェントエイジのような安バーボンの「らしい」感じを想い起させたのです。2000年代後期や2010年代前期のブラック・ラベルと較べると、フレイヴァーの密度が高い?気がしました。オールド臭も過剰でなければ崇高性を高めてくれますから、このボトルに関しては全然アリな程度で美味しかったです。ボトリング・プルーフは低いので、それが余韻の物足りなさにも繋がっているのかなとは思いますが、まあジムビームのライト感と思えば…。

Value:現行のエクストラ・エイジドより遥かに旨いのは間違いありません。オークション等の二次流通市場で高騰している銘柄でもないので、案外狙い目かも?

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先日、Kazue Asaiさんの個展が開催されている「お酒の美術館」中野店へ行ってきました。只今絶賛開催中な訳ですが、早くも行った方々はだいたい写真付きで各種SNSにて紹介されています。そこで私も、距離的時間的に行きづらい人もいるかと思いますので、こちらでイラストの紹介をしておきます。お店については以前に投稿したこちらを参照下さい。

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これらのうち何点かは既に売約済みとなっています。欲しいものがある方はなるべく早めに行って即断することをオススメします。個人的にはアーリータイムズやオールドクロウのガールなんかイチ推し。

私が行ったのが平日でないこともあったでしょうか、或いは営業時間短縮の都合で人の出入りが集約したのか、お店は思っていた以上に大盛況でした。オープンからひっきりなしにお客さんが来店して、時間帯によってはお店に入れず「待ち」の人もいるほど。駅近の繁華街ど真ん中、しかも提供価格が安価、そこに来てアーティストさん目当ての方も来るとあっては当然なのかも知れませんね。

今回、私はkazueさんご本人に同行してもらっています。そのお陰で、彼女のお祝いに駆けつけた、私個人では普段出会うことのない作家さんたちお三方と同席することにもなり、刺激的なお話しや楽しい会話を聴くことが出来ました。出会った皆さん、そしてKazueさん、ありがとうございました!

そう言えば、Kazueさんが完成したイラストを手渡しているところや、新たに似顔絵イラスト作成の依頼をされている現場を直に目の当たりにしたりもしました。お酒の美術館にちなんで、そこに飾られているような人とお酒のイラスト、具体的には依頼者本人(もしくは写真があれば他人でも可)と指定の銘柄のお酒(好きなお酒、例えばアードベッグでも山崎でも)を描いてもらえるのです。誕生日プレゼントにするという方もいました。いくつか拝見させてもらいましたが、完全にKazueさんのタッチでありながらちゃんとご本人の特徴をよく捉えたイラストになっており、これは買って嬉しいもらって嬉しいイラストだと思います。とてつもなく薄いハイボールを飲んでいる方を見かけたら、それがKazueさん本人かも知れません(作家が自らの個展に在廊するように、開催期間中はKazueさんもよくお店に出没します)。もしお店に行かれることがあり、Kazueさんを見かけたら、貴方もイラストを依頼してみるのも一興ではないでしょうか?

さて、言うまでもなくここはバーでもありますから当然お酒を注文します。私としても何かしらオールドバーボンを飲むことは目的の一つでもありました。しかし、実は当日の私は湿気にやられたのか体調が思わしくなく、残念ながら結果的に一杯しか飲めませんでした。始まりの一杯が終わりの一杯となったのです…。あとはジンジャーエールだけ飲みました。軽いものから始めようと思い選んだのは、トップ画像で分かる通りビームズ・チョイス。では、飲んだ感想を少しばかり。

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BEAM'S CHOICE Green Label 86 Proof
店員さんによると88年ボトリングとのこと。ネックに「ウイスキー特級」の表記がありますね。ラベルに「8」とありますが、「Year」はないのでNAS扱いとなります。おそらく、この頃の物は熟成年数は5年くらいなのではないでしょうか。先ず、現行ビームの特徴とされるピーナッツ(またはダンボール風味)は全く感じません。また、現在自宅で開けている90年代のブラックラベル8年と比較してもかなり異なり、熟成年数の違いにもかかわらず、こちらの方がメロウかつ濃いダークフルーツを感じました。あまり酸味もなく、好ましい要素ばかりで、86プルーフにしてはフレイヴァーも強い。ここら辺に、特級表記に拘るウィスキー通の方や、或いは88年〜92年あたりのバーボンを至高と考えるマニアの方の、好ましいと感じる点がわかり易く現れているのかも知れません。状態も良かったのだと思います。これはオススメ。
Rating:86/100

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ジムビームのラインナップ中、長きに渡り最高の価値があると評されたブラック・ラベル。しかし、ここ十年ちょっとで最も弄くり回されたブランドかも知れません。
おそらく、もともとブラック・ラベルは101ヶ月(約8年半)熟成90プルーフで始まり、次第に8年熟成90プルーフ、7年熟成90プルーフ、8年熟成86プルーフへと時代に順応して変化したと思われます。多分、86プルーフに下がったのは90年代かと。ビームは大きな酒類会社なので、販売される国でボトリングするためにウィスキーをバルクにて輸出している可能性があり、バッチが異なるのは当然として、パッケージが少し異なったり、ボトリング・プルーフの異なるヴァージョンがあるようです。日本でも、今回レヴューするエクストラ・エイジドの前に流通していた正規輸入品は確か6年熟成80プルーフだったと思います。

基本的に2000年代のアメリカ国内流通品は8年熟成86プルーフでした。2007年から2008年頃、オーストラリアとカナダでジムビーム・ブラックは8年のエイジ・ステイトメントを失い、代わりに「AGED TO PERFECTION」と表ラベルに表記されます。ビームによれば、これは米国以外の市場でのブラック・ラベルの売上が予測を上回ったためだそうで、熟成樽の不足からラベルの変更を余儀なくされ、おそらく中身の原酒の熟成年数も変更されたのでしょう(6年へ?)。エイジド・トゥ・パーフェクションのラベルはアメリカ以外の市場(ヨーロッパとか)にも流通したと思いますが、アメリカ本国で販売された製品はラベルに年数表記があり、8年熟成は維持されました。
おそらくその後(2010年前後?)に、スタイリッシュなラベル・デザインのブラック・ラベルが登場したと思われ、ホワイト・ラベルの4年熟成に対して倍であるため「ダブル・エイジド」と表記されたアメリカ国内向けの8年熟成、ストレート・バーボン規格の最低熟成年数である2年の3倍であるため「トリプル・エイジド」と名付けられた国外向け6年熟成の物がありました。
2015年になると、アメリカ国内のブラック・ラベルからもエイジ・ステイトメントは削除され、ラベルには「XA Extra Aged」の文字が現れます。きっとこれは6年熟成なのでしょう。一般的に、生産者は以前よりも若い原酒を使用することを意図せずに、熟成年数の表示を取りやめることはありません。従来通りなら熟成年数を削除する必要がないからです。そして2016年半ば、ビーム社はジムビーム・ブランドのラベルとボトルのデザインを刷新しました。そこでブラック・ラベルは再び微調整が施され、「XA」を削除し、ハイフンを追加して「Extra-Aged」となります。これが現在販売されているブラックであり、トップ画像のデザインです。
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2000年以降、特に2010年代、アメリカのバーボン業界は劇的な変化を遂げました。あらゆるアメリカン・ウィスキーに対する記録的な需要は、新しいクラフト蒸留所の前例のない「爆誕」を齎し、また旧来の由緒正しき蒸留所からも新しい革新と実験が行われました。その他にもバーボンの高需要は、大手蒸留所が比較的「高齢」でありながらも大変お買い得だった銘柄を次々とNAS(No Age Statement)へと変更せざるを得ないか、或いはエイジ・ステイトメントを維持するなら値上げするしかない状況を与えました。ヘヴンヒルのエライジャ・クレイグ12年がNASになったのはその最たる例でしょう。以前は8年熟成だったジムビーム・ブラックがNASに切り替えられたのも、そうした一例な訳です。NASへの移行は既存のエイジ・ステイトメントを維持するのに十分な熟成原酒のストックがないのが主な理由ですが、一方でプレミアムな長熟製品のために一部の樽が抑制されているという噂は常にあり、それが真実である場合アメリカン・ウィスキーの基盤と言える「日常バーボン」の熟成年数やプルーフ(≒品質)を犠牲にしてまで金儲けに走るなよというバーボン愛好家の嘆きを生みます。まあ、それは偖て措き、現行のエクストラ・エイジドです。

この約6年熟成とされるブラックラベル・エクストラ・エイジドは、アメリカ流通の物は86プルーフ、日本市場の物は80プルーフでのボトリング。マッシュビルは77%コーン、13%ライ、10%モルテッドバーリーであろうと推定されています。ビームはクレアモントとボストンに大きな蒸留所を所有し、彼らはそこでメーカーズマークを除くあらゆるウィスキーを造ります。ボストン(通称ブッカー・ノー・プラント)は専らジムビーム・ホワイトラベルを製造し、クレアモントはホワイト・ラベルも含むその他の全てを製造するとされます。なのでブラックはクレアモント産ですかね。ビーム社の最高峰ブッカーズが中層階のバレルを主に使用するところから、ビーム倉庫のスイートスポットは中層階と考えられるので、おそらくブラック・ラベルに使用するバレルは上層階から来てるのかも知れません。上層階のバレルは他の場所のバレルよりも早く熟成することはよく知られています。そこで、若くても熟成感のある樽をピックアップすることで、8年に近いフレイヴァー・プロファイルをNASでも保つことが出来るだろうと推測している人がいました。

8年熟成のブラック・ラベルは割と長い期間販売され続け、味が良く安価、しかもどこでも労なく入手できるため非常に人気がありました。しかし、8年熟成も今は昔の話。個人的には現行のエクストラ・エイジドは飲む必要がないかなと思っていたのですが…。ジムビームが2019年に発表したPRニュースによると、アメリカン・ウィスキーを飲む人は世界で最も高価でレアなバーボンよりもジムビーム・ブラックを好むことを示す調査結果が出た、と言うのです。調査は独立した第三者機関のアルコール飲料研究会社であるビヴァレッジ・テイスティング・インスティテュート(BTI)が行いました。BTIはアメリカで最も古いアルコール飲料研究会社で、1981年以来、専門家によるテストや独自のデータや消費者調査を使用して、飲料会社が賢明な生産とマーケティング決定を下すのを支援しています。彼らはアメリカ全土の複数の市場でブラインド・テイスト・テストを実施。参加者には二つのサンプルが提供され、一つはジムビーム・ブラック(23ドル)で、もう一つは名前の伏せられた約3000ドルの限定生産の象徴的なバーボンとのこと。結果は、54%が超高額なバーボンよりもジムビーム・ブラックを好み、55%がジムビーム・ブラックの方が滑らかだと答えたそうな。ごく僅かではあってもテイスターの過半数が高価なスーパー・プレミアム・バーボンより安価なボトム・シェルファーを選んだと? おいおい、マジか…。この名前の伏せられたバーボンは価格から考えると、希望小売価格に上乗せ金が付いたパピー・ヴァン・ウィンクル20年でなければならないでしょう(ミクターズ・セレブレーション・サワーマッシュだともっと高いですし)。或いはパピーの23年の方かも知れませんが、どっちでも構いません。言うまでもなく、良いウイスキーは熟成年数が何年であろうとプルーフが幾つであろうと良いウイスキーだし、味わいの優劣なんて飲み手の好みに左右されるもの。熟成年数の長いバーボンはウッドの風味が強くなり過ぎるので、却って短熟の方が好みの人が半分近くを占めたっておかしくはない。実際、私にもその傾向はあります。…にしても、NASのジムビーム・ブラックラベルがパピーに勝った? これは是非とも確認のため現行のブラック・ラベルも飲んでみなければならない、という訳で、そろそろ注ぐ時間です。

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JIM BEAM BLACK EXTRA-AGED 80 Proof
推定2019年ボトリング。焦樽、プリンのカラメルソース、グレイン、ちょっとトロピカルフルーツ、胡椒、藁半紙。アロマは時間が経つとナッティ。水っぽい口当たり。軽くて飲み易い割に少しアルコールの刺激を感じる。余韻はあっさりして短く、穀物とスモークが主に出るが辛味もあって深みがない。
Rating:79/100

Thought:昔の6年とか8年とエイジ・ステイトメントがあったブラックと較べると、どうしても美味しくなくは感じてしまいました。なんか6年よりも熟成してなさそうな若い味わいと言うか、いや、アルコール感が目立ち過ぎると言うか。とは言え、現行ホワイト・ラベルよりは格段に甘さ、フルーツ、スパイス等の熟成感はあって悪くはなかったです。
それと、上で言及した「調査」の件ですが、そのブラインド・テストでテイスターが試したのは86プルーフであり、私が試したのは80プルーフ、この差はかなり大きいと思います。ただ、これが86プルーフだったとしても、いくら想像を膨らませてみても流石に「パピー」を打ち倒す程の物とは到底思えませんが…。

Pairing:軽めのテクスチャーにライトなフレイヴァーなので肉料理や濃厚な味付けの料理を欲しなかったです。しかし、逆にあっさりとした冷奴に合わせるとピッタリ。これは料理を引き立てる酒という視点ではなく、バーボンを引き立てる料理という視点です。

Value:アメリカでは大体18〜25ドルで販売されており、最安値なら所謂アンダー$20バーボン。日本でも1800〜2500円が相場で、概ね本場と感覚的に変わりはないでしょう。但し、上述のように日本版は80プルーフなので本国版に較べ割高ではあります。ロウワー・プルーフはコンテンツに水が多いことに他なりませんから。
ジムビーム・ブラック・エクストラ・エイジドは基本的に美味しいバーボンです。バーボンを飲むことの喜びは甘い炭の風味にありますが、これにはちゃんとそれがあります。しかし、安価なバーボンなので奇跡を期待してはいけません。3000円以上するバーボンと比べたら不味く感じるし、1000円のバーボンと較べたら遥かに美味しく感じる、ただそれだけ。ジムビームの意図通り、ホワイトには物足らず、デヴィルズ・カットやダブル・オークには少々割高さを感じる人向けには良い製品でしょう。私の個人的な嗜好では、現在のジムビームの安価なラインナップの中ならダブル・オーク一択。また、酒屋の棚で並行輸入の86プルーフ版ブラック・ラベルか熟成年数表記ありの売れ残りを発見し、それが数百円の違いしかなかったら、必ずそちらを購入するべきです。

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2016年、ビーム社は彼らのフラッグシップ・ラインであるジムビーム・ブランドを新しいラベルとボトル・デザインに変更しました。ちょうどその年から発売され始めたのがジムビーム・ダブルオーク・トゥワイス・バレルドです。
その製品名にある言葉に注目すると、先ず「トゥワイス・バレルド」と言うのはダブル・マチュアードの言い換えだと思います。ダブル・バレルドと言っても同じで、要は語義的に見て2回樽で熟成させていると言うこと。一回目の樽熟成の後に追加でもう一回樽熟成させる手順を指しています。総称として「フィニッシング」と知られるこの熟成技法は、バーボン・ウィスキーの中で近年最も成長したカテゴリーかも知れません。日本では二段熟成とか後熟とか追熟と呼ばれます。スコッチ・ウィスキーではもっと前から定着しており、ウィスキー愛好家には説明不要でしょう。このバーボンで寧ろ注目すべきは「ダブル・オーク」の方です。バーボンのフィニッシングは、一般的にスタンダードなアメリカン・オーク樽で熟成させた後に別の種類の樽、概ねシェリー、ポート、ラム、もしくはビール樽などで熟成させることで、バーボンのフレイヴァー・プロファイルに複雑なレイヤーを加える手法ですが、このダブル・オークは同じ種類の樽でもう一度熟成させることで既に在るフレイヴァーを増幅させるのです。

バーボンは焦がしたホワイト・オークの新しい樽で熟成することで、少なくとも50%から多ければ70%程度の風味を獲得すると見られています。熟成中のウィスキーが木材から引き出すフレイヴァーは、樽の内部をどのようにトースティングしたりチャーリングするかである程度は決まるとされ、樽の調達先であるクーパレッジではマイルドなトーストからヘヴィなチャーまで加熱具合を制御して、顧客の蒸留所の望むフレイヴァーに微調整することが出来ます。それゆえチャー・レヴェルは蒸留所の特定のフレイヴァーに於ける特徴的な要素の一つとなるでしょう(但し、殆どのバーボンは#3〜#4のチャー・レヴェルであり、それ以上は限られた実験的なバレル・エイジングでしか使用されていない)。そこで誰かが考えつきました。新しい焦がしたオーク樽での熟成を2回行うのはどうだろうか、と。これはなかなか目新しい発想だったと思われます。
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アメリカで初めて公に新樽を2回使用したのはテネシー州のプリチャーズ・ディスティラリーではないかと見られています。この小さな蒸留所はクラフト・ウィスキーのブームが沸き起こる何年も前の1997年に開業し、早くも2002年頃にはダブル・バレルド・バーボンを限定発売していたようなのです。この手法のメジャーで継続的なリリースは、10年後の2012年に発売され始めたウッドフォード・リザーヴのダブル・オークドでした。このバーボンには、通常よりも時間を掛けてトースティングし、逆にチャーリングはごく軽くした特別に準備されたバレルが使用されています。また、ウッドフォード・リザーヴは2015年から、ディスティラリー・シリーズという蒸留所のギフト・ショップとケンタッキー州の一部小売店限定のダブル・ダブル・オークドまでリリースしています。こちらは名前の通りダブル・オークドを更にもう一度ヘヴィなトーストとライトなチャーを施した新樽で仕上げる製品。2014年にはミクターズからもウッドフォード・リザーヴに似たトーステッド・バレル・フィニッシュ・バーボンがリリースされました。これは限定版で、毎年リリースされるとは限らないようです。同年には、ヴァージニア州のA.スミス・ボウマン蒸留所からも限定版のエイブラハム・ボウマン・ダブル・バレル・バーボンがリリースされていました。考えようによっては、メーカーズマーク蒸留所によって2010年から発売されているメーカーズ46もバレル全体かその一部のステイヴかの違いはあっても、使い古しではない焦がした木材でフレイヴァーをアンプリファイドするという点に於いて発想の根幹は同じでしょう。とにかくこの10年、特に2015年以降にはマイクロ・ディスティラリーからも続々とこうしたウッド・フィニッシュのバーボンが追いきれないほど多く製造されています。で、冒頭に述べたように2016年からジム・ビームもこの潮流に乗り遅れないように参入した、と。日本では殆ど話題にならないか極端に流通量の少ないマイクロ・ディスティラリーの製品や、もう少し知名度はあってもセミ・レギュラーの限定品と違い、ウッドフォード・リザーヴのダブル・オークドと同様に大会社のビームからレギュラー・リリースされるダブルオークは店頭でお目にかかり易く、尚且お手頃価格で提供されるバーボン。このことは諸手を上げて歓迎です。

ジムビーム・ダブルオーク・トゥワイス・バレルドは、焦がしたアメリカン・オークの新樽で4年間熟成させた通常のジムビーム・ケンタッキー・ストレート・バーボン・ウィスキーを取り出し、それを再び焦がしたアメリカン・オークの新樽に移して仕上げます。こうすることで液体は更に深いレヴェルのスパイスの効いたオーキネスと濃厚なキャラメルを発達させ、通常よりもリッチでウッディなフレイヴァーを生み出すとされます。二度目の樽による熟成期間は公表されていませんが、倉庫の温度や味わいの熟成度に応じて、凡そ3〜6ヶ月程度と目されています。ちなみにジムビームのマッシュビルは現在の公式ホームページにはアナウンスがなく、バーボン系ウェブサイトを調べてみるとコーン77%/ライ13%/モルテッドバーリー10%とコーン75%/ライ13%/モルテッドバーリー12%の二説が見つかります。私にはどちらが新しい情報か判断がつきません。時代による変遷が考えられるので、お詳しい方はコメントよりご一報ください。では、ダブルオークがその名の通り「二倍」良いのかどうか試してみましょう。

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JIM BEAM DOUBLE OAK TWICE BARRELED 86 Proof
推定2018年ボトリング。色は度数の割に濃いめのブラウン。炭、カラメライズドシュガー、グレイン、胡椒、あんず、シナモン、絵の具。アロマは完全に焦樽アロマが主だが、酸を伴ったビーム・ファンクも。マイルドで水っぽい口当たり。パレートは名状しがたいダークなフルーツ感と接着剤。余韻はややビターと言うかドライで、焦がしたオークの香ばしさとナッティな風味が香る。
Rating:82.5/100

Thought:名前や製法からして、もっとオーキーなバーボンかと思いきや、意外とフルーティな仕上がりで美味しかったです。ジムビームの比較的安価なラインナップの中では一番好みでした。ダブルオークで気になるのはそのラインナップとの比較、特に同じ瓶形状であり色違いラベルとなるブラック・ラベル・エクストラ・エイジドとデヴィルズ・カットと、どのように異るのかですよね。
前回まで開けていたデヴィルズ・カットと較べると、製法の違いからかダブルオークの方が焦げた風味が強いものの、シャープなウッド・フレイヴァーやスパイス感は少なく、もう少し円やかでフルーティな印象です。エクストラ・エイジドと比較すると、樽に入っていた期間の総計はエクストラ・エイジドの方が長いようですが、やはりと言うかダブルオークの方がウッド・フレイヴァーは強く、甘みも苦味もフルーツ感も増している印象。ホワイト・ラベルとは違いすぎて比較の対象にし辛いのですが、セカンダリー・マチュレーションの効果は著しく、確かに「二倍」くらいは美味しいと思います。同社の上位ブランドであるノブクリークやベイカーズと較べると、同じ位に焦げ樽風味が効きながらもプルーフィングが低い分、軽くて飲みやすいのが利点でしょうか。ダブルオークに手放しで称賛できない点があるとすれば、2回も新樽で熟成してる割にヤンガー・ウィスキーの荒々しさがかなりあるところ。昔の8年表記のあったブラック・ラベルだと、もうちょっとメロウでバランスが良かった気がします。とは言え、ダブルオークの只のギミックに終わらない面白みとビーム原酒の個性の融合は楽しめました。

Value:アメリカでは大体20〜23ドル程度、日本での小売価格は大体2500〜3000円です。上に述べたように、個人的にはジムビーム・ブランドの比較的安価なシリーズの中でダブルオークはイチ推し。同社内で比べれば、これより価格の安い物よりは確実に旨く、価格の高い物よりは満足度が低いという適正価格でしょう。素晴らしいとまでは言わないけれど、ダブルオークはグッドなバーボンであり、価格に見合う価値はあると思います。

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ジムビーム・デヴィルズ・カットは2011年に発売されました。2〜4年程度で廃止されるブランドも多い中で、今でもラインナップに残っているところを見ると人気があるか少なくとも利益率の悪くないバーボンと思われます。現在、日本で入手し易いジムビームの比較的廉価な物にはデヴィルズ・カット以外では、白のスタンダード、黒のエクストラ・エイジド、紺のダブルオーク、緑のライとありますが、この中では上から二番目に小売価格が高い。市場に出回っている殆どのバーボンウィスキーには、消費者の注意を引くためのラベルやギミック、関心を喚起するためのストーリーといったマーケティングの業があります。では、この「悪魔」までをも引き合いに出したブランディングのバーボンは一体どのようなものなのでしょうか?

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ウィスキーについて多少なりとも学んだことのある人は「エンジェルズ・シェア」という言葉を聞いたことがある筈です。これはスピリッツやワインを樽熟成する過程で蒸発によって失われる水分やアルコールに付けられた用語。お洒落な言い回しですよね。ウィスキーが閉じ込められているオーク樽はしっかりと密封されていますが、木材は多孔質のため蒸発が起こります。ウィスキーの熟成過程では毎年数%の液体がバレルから蒸発するのです。数%ならそれほど多くはないように思えますが、熟成期間が長ければ長いほど失われる量は多くなります。20年超の熟成ウィスキーは蒸発により内容物の半分以上が失われる可能性もあり、これが長期熟成酒の価格を押し上げる主な要因。熟成年数が長ければそれだけ美味しくなるとは限りませんが、熟成の過程に蒸発は付き物であり、謂わば蒸発なくしては木材から甘美なフレイヴァーを得れない、少なくとも古典的な製法では。そこで、ウィスキーを美味しくするために年会費を請求する天使への供物であると解釈するのが「エンジェルズ・シェア」という訳です。これは日本語では「天使の分け前」とか「天使の取り分」と翻訳されています。
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(AWZ作。天使はウィスキーがお好き)

ウィスキーを樽で熟成する過程で中身の液体が失われる理由は主に三つあり、一つが上のエンジェルズ・シェアでした。もう一つは味を確認するための定期的な試飲。そして、残るもう一つが樽の木材自体に染み込み吸収される分です。日々の、或いは年間を通しての高い温度と低い温度のサイクルによってウィスキーが樽の木材に押し込まれ、そして再び戻って来ることでそのフレイヴァーは増幅します。木材に入り込んだウィスキーの一部は、そこに残ったまま基本的には戻って来ません。そこでビーム社はこれを「エンジェルズ・シェア」の巧みな言葉遊びとして、天使に捧げたものに対する悪魔に奪われたもの、即ち「デヴィルズ・カット」と名付けました。
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(TP作。あくまでイメージですw)

中身をダンプして空になった樽には、かなりの量のバーボンが木材に染み込んだまま残っています。その量は約2ガロンとも、他説では約7ガロンともする情報がありました。ビームはこれを独自のプロセスを使って抽出すると言います。そのプロセスは完全には公開されていませんが、どうやら空になったバレルに水を入れ、それを高速で撹拌するだけらしい。ジムビームのマスターディスディラー、フレッド・ノーはペイント・シェイカーのように樽を振ると説明しています。また、もしかすると熱(蒸気)も加えているかも知れません。ともかく、そうして抽出した樽材の奥深くに閉じ込められていたタンニンやヴァニラやシャープなウッド・フレイヴァーを多く含むとされる液体を、6年熟成のバーボンとバランスを整えてブレンドし、90プルーフでボトリングしたら「ジムビーム・デヴィルズ・カット」の出来上りです。ちなみに抽出されたウィスキー残滓を含む液体と通常バーボンのブレンド比率については明かされていません。

ところで、スピリットが熟成されている樽に吸収されることをデヴィルズ・カットという用語で呼ぶのを「ジムビーム・デヴィルズ・カット」登場以前に聞いたことがある人は殆どいないでしょう。おそらくこの用語はビーム社によって発明された巧妙なマーケティング用語です。彼らは「独自のプロセス」と言いますが、実際には使用済みの樽からウィスキーを抽出する作業は古くから知られていました。ヒルビリーやムーンシャイナー、或いは嘗ての蒸留所の労働者達は、使用済みのウィスキーやラムのバレルに一定量の水(またはお湯)を注ぎ、その樽を横に置いて数日(または数ヶ月)おきに少しづつ回転させ、俗に「スウィッシュ」と呼ばれる非公式な使用のための酒を造ったと言います。それにはかなりのアルコールが含まれており、一部の人々はスウィッシュを「本物」と同じくらい優れていると考えたとか。ジムビームがしているのは基本的に同じことのように見えます。つまりジムビーム・デヴィルズ・カットは言葉を換えれば、6年熟成のバーボンをスウィッシュでカット(希釈)したバーボンだ、と。
ビーム家の現当主フレッド・ノーにしても、ケンタッキー州バーズタウンで蒸留一家の下に生まれ育ったからには「スウェッティング」として知られる地元の通過儀礼を経験していたと思われます。子供たちは地元の蒸留所から中身が投棄されたばかりの樽に数ガロンの水を入れ、バングホールをしっかり塞ぎ、暑い太陽の下で退屈するまで樽を転がしました。そうすると軽く酔うのに十分なアルコールが得られるのでした。これが製品化のヒントになったのでしょうか。「樽の発汗」は何も飲料用のみとも限りません。パブリカー/コンチネンタルの創始者ハリー・パブリカーは創業当初、フィラデルフィアのあらゆる小規模蒸留所に行き使用済みウィスキー・バレルを手に入れ、スウェッティングの技法を用いてウィスキー残滓を抽出し、工業用アルコールとして販売することで業界に参入しました。

「デヴィルズ・カット」はビームによって商標登録されていますが、一般的にダンプしたばかりの樽に数ガロンの水を入れ軽くリンスして残滓の一部を抽出することは多くのウィスキー蒸留所で行われていると聞きます。バレル・リンシングというプロセスです。他の大手酒類会社であるブラウン=フォーマンは、標準的な53ガロンの樽の1/3から1/2の間まで水を満たし、少なくとも三週間放置することで樽内部の木質繊維からより多くのウィスキーを抽出する独自のリンス・プロセスのパテントを持っているそう。ビームは攪拌を使用しますが、ブラウン=フォーマンは撹拌を使用しません。デヴィルズ・カットの発売より数年前、ジャックダニエルズはそうしたプログラムを開始しました。その手法はただのリンシングよりもアルコール含有量で測定すると約五倍多くのウィスキーを回収できるそうです。
ビームのプロセスがどれほど独創的であるかは偖て措き、ジムビーム・デヴィルズ・カットはバレル・リンシング・テクニックをブランディングに用い、主要製品の一つとして大衆市場へ向けて導入された初めてのバーボンだったと言ってよいでしょう。ビーム傘下にあるメーカーズマークは、供給不足解消のため2013年にそれまでの90プルーフから86プルーフにプルーフィング・ダウンする計画を発表したところ、ファンから猛反発を受けて瞬く間に前言を撤回し、その後、バレル・リンシングを導入することにより供給の問題に対応すると発表しました。これはデヴィルズ・カットの成功から来ているとみて間違いないように思います。この発表の後、新しいオーク樽で熟成されるバーボンとは異なり主に使用済みのバーボン樽で熟成させるスコッチの生産者、またバーボン・バレル熟成を行うクラフト・ビールの製造者やバーボン・バレル・フーズのような周辺産業の一部の関係者は懸念を表明しました。ビームやブラウン=フォーマンが行うようなディープ・バレル・リンシングは、自分達が使う中古樽から木材のフレイヴァーを奪い取ってしまうのではないか、という訳です。この問題がその後どうなったかは寡聞にして知りません。あくまでバーボンそのものではない数ガロンのスウィッシュを増産するに過ぎないことを考えると、全ての生産者がディープ・バレル・リンシングを行うとも思えませんし、2015年以降も増え続けるクラフト蒸留所や熟成倉庫を増設する大手蒸留所の存在もあります。どこかで需要と供給のバランスは上手く取れたのでしょうか? 少なくとも、大手企業にとってはバレルの再販とリンシングのどちらがより収益が大きいかは鍵になったのではないかとは思いますが…。ここら辺の事情に詳しい方はコメントよりご教示頂けると助かります。
ちなみに味わい的には、バレル・リンシングによって抽出されるウィスキーは非常に強いウッド・プロファイルを有し、それをブレンドすると実際よりも熟成年数の高い物に感じられるとされますが、同じような結果を齎す方法にスモール・バレル・エイジングがあります。小さい樽はウィスキーと木材の接触する表面積が増えるため、熟成が早く進むと言うか木材のフレイヴァーを取り込み易くなるのです。伝統を持たない小さなクラフト・ディスティラリーでは多く採用されています。リンシング対スモール・バレルの戦い?も興味深いですね。では、そろそろ悪魔のエキスが入ったバーボンを注ぐとしましょう。

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JIM BEAM DEVIL'S CUT 90 Proof
推定2015年ボトリング。石鹸、フローラル、生木、バターピーナッツ、ヴァニラ、ドライフルーツ入りクッキー、胡椒、煙、サイダー、僅かにプルーン。水っぽい中に少しだけとろみのあるテクスチャー、ピリリと刺激も。口の中ではビーム特有のフルーツ感もあるが、あまり甘くなくスパイシー。余韻はグレイン&スパイス中心でドライながら木炭の風味が尾を引く。液体を飲み込んだ直後がハイライト。
Rating:81/100 

Thought:少々キワモノ的なブランディングが好みではないので今まで敬遠していたデヴィルズ・カットなのですが、今回やっとこさ飲んでみました。悪くないですね。普通のジムビーム・ホワイトやブラックとは少し異なるキャラクターはあるように感じました。事前の予想通り、確かにスパイシネスと木材感が強まっています。開けたてはソーピーなアロマとアルコールの尖りを感じましたが、飲み進めて残量3分の1くらいになる頃にはビームらしいフルーツも顔を出して美味しくなりました。
現行のデヴィルズ・カットはラベルの字体が少し変わり、ボトル形状もその他のジムビームに合わせて変更されました。なので今回私の飲んだのは旧デザインということになります。私は現行を試してないので何とも言えませんが、日本の有名なウィスキーブロガーさんでデヴィルズ・カットの新旧比較を行っている方がいて、その記事には「旧」の方を高く評価する趣旨の発言が見られます。「新」の方が小売価格自体が下がっており、バーボン原酒の熟成年数も下がっているのではないか?と邪推できなくもありません。だって現行(新の方)はブラックと小売価格が殆ど変わらないですから。飲み比べたことのある方はどう思われたでしょうか? どしどしコメントよりご意見お寄せ下さい。

Pairing:敢えてスパイシー系ソース焼きそばに合わせると美味しかったです。私は食前酒にも食中酒にも食後酒にもバーボンを飲みますが、個人的にはデヴィルズ・カットは食後酒ではなく食中酒に適してるように思われました。食後にはより滑らかなバーボンか、もっと甘みのあるハイ・プルーファーが望ましく感じます。

Value:現行のデヴィルズ・カットは概ね1800〜2400円の間くらいが相場のようです。ホワイトが1200〜1500円、ブラックが1800〜2200円、ダブルオークが2500〜3000円なので、随分と狭い価格帯でのブランド展開となっています。上に述べたように、私は現行のデヴィルズ・カットを飲んでいないので、あくまで品質が今回飲んだ物とほぼ同等であると見做しての話になりますが、もしブラックと同じ価格かプラス数百円の違いなら個人的にはデヴィルズ・カットがオススメです。よりハイアー・プルーフですから確実にお得。しかし、バランスを重視するならライトなブラックの方がいいでしょう。おそらくブラックの方が甘さは感じ易いと思います。

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ジムビームのスモールバッチ・コレクションのうち筆頭とも言えるブッカーズ。その名の由来となっているのはビーム家第六世代マスターディスティラーであるフレデリック・ブッカー・ノー2世、通称ブッカー・ノーです(*)。
ブッカーは1929年12月に生まれました。ジム・ビームことジェイムス・ボーリガード・ビームの孫に当たります。母親であるジムの娘マーガレットがノー家へ嫁いでいるのでビーム姓を名乗っていません。蒸留一家の家系に生まれた常か、10代の頃から蒸留所周辺の手伝いをしていたようです。恵まれた体躯の持ち主だったブッカーはフットボールをやっていて、後にアラバマ大学で勇名を馳せるカレッジ・フットボール界の伝説的名コーチ、ベア・ブライアントがケンタッキー大学で指導していた頃の彼のチームに所属していました。しかしやがてチームを辞め、大学も中退してしまい、アンクル・ジェリー(ジムの息子ジェレマイアのこと)やカズンのカール(ジムの弟の息子)らの心配を引き起こします。彼らはブッカーが蒸留所の家族との繋がりを損なわないことを望んでいたのです。チームや大学を辞めた理由については定かではありませんが、ブッカーはワイルドな男だったので若き人生を楽しみたかったのかも知れません。
ブッカーは子供の頃から有名な祖父ジムと親密だったそうで、ジムもアンクル・ジェリーも彼のポテンシャルを認めていました。また、家族がブッカーの処遇にまごついている間に、ウィレット蒸留所のトンプソン・ウィレット氏もブッカーを狙って(スカウト?)いたなんて話もあったようです。もしブッカーがウィレット蒸留所に行っていたとしたら、ブッカー・ノーがプロデュースするノアーズミル発売!、息子のフレッド・ノーがウィレット蒸留所のマスターディスティラーを継ぐ!、なんていう歴史の書き換えが行われていたかも…と妄想するのはバーボンマニアの密やかな楽しみでもあるでしょう。しかし、歴史はそうはなりませんでした。
ブッカーの母は、息子へもっと巧くファミリービジネスの魅力を紹介するよう、アンクル・ジェリーに持ち掛けたようです。それが効を奏した分かりませんが、1950年頃にアシスタント・ディスティラーとして家業に入り、おそらく名ディスティラーだったカールに蒸留業の一から十を叩き込まれたものと想像します。ブッカーは主にケンタッキー州ボストンのジムビーム蒸留所でバーボンの製造と熟成を管理し、後に隣接するクレアモントでもそうしました。ジムビームはブリット郡クレアモントとネルソン郡ボストンに蒸留所を持ちますが(**)、そのボストンの蒸留所は五代目当主のジェレマイアが操業を停止していた古いチャーチル・ダウンズ蒸留所を買い取り、数百万ドルを投資して最先端の施設へと転換、1954年に2番目の蒸留所として開設し、通称ボストン・プラントと呼ばれていました。ブッカーはそこを長らく監督していたので、今ではジムビーム蒸留所ブッカー・ノー・プラントと命名されています。
ブッカーは1965年にマスターディスティラーに選ばれました。1960年代及び70年代、ジンや特にウォッカのような「ホワイトスピリッツ」の躍進に悩まされてきたバーボン業界にあっても、ジムビーム自体は当時から世界で最も売れ行きの良いバーボンでした。ブッカー一人の力でもなかったのでしょうが、彼が1992年に「名誉マスターディスティラー」として実務から引退するまでの在任中、ジムビーム・バーボンの生産量は12倍に増えたと言います。引退した後も会社のアンバサダーとして働き続け、ビームのバーボンを宣伝するため世界を旅したり、バーボン・テイスティング会ではホストとして家族の物語や歴史を織り混ぜた会話で観客を楽しませました。1995年に会社はジムビームのラベルに、ブッカーに先行していた5人のビーム・ディスティラー、ジェイコブ、デイヴッド、デイビッドM、ジム、Tジェレマイアの肖像画のスケッチと並べて彼を加えます。そしてブッカーは2001年にバーボンの殿堂入りを果たし、2004年に亡くなりました。
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ブッカーは愛すべきキャラクターとカリズマを備え、ロックスターのように扱われた初めてのマスターディスティラーでした。今日、伝説として扱われる彼の功績は、蒸留技師としてよりも、むしろ自身の名を冠した「ブッカーズ」と「スモールバッチ・バーボン」を広めたことに帰着するでしょう。その役割は現在、息子のフレッド・ノーがビーム家七代目マスターディスティラーとなって継承しています。

伝説の語り部やマーケティング部門の天才的なライターは、時に余りにもフィクショナルな言辞を誇示します。それ故、ブッカーズ誕生秘話の真相もどこまで本当かよく分かりません。一説には、ブッカーズはブッカーがシングルモルト・スコッチに匹敵するバーボンを製造するよう頼まれたのが契機となったと言います。定説では、ブッカーが時々蒸留所の倉庫から特別に選んだバレルを瓶詰めし、親しい友人や家族へのホリデーギフトとしたり、ビーム家主催のバーベキューパーティーで振る舞われたそのバーボンはやがて評判を呼び、インスピレーションとなってビームが量産を開始した時、ブッカーズは誕生したと言います。ビーム社が公式に発表しているところによれば1988年のことでした。僅かな違いですが、87年としているサイトも多いです。初め高品質のバーボンが売れるかどうかについて疑問の声は内部からもあったそう。その希望小売価格は約40ドルとも50ドルとも言われ、当時のバーボンとしては破格の値段でした。しかし、それは杞憂に終わり、ブッカーズはカルト的な人気を得、今でもビーム・バーボンの最高峰として君臨しています。

ブッカーズの品質は何千何万もの樽の中から「ハニーバレル」と呼ばれるものを見つけることによって達成されます。気温の変動や倉庫内のバレルを置く位置により、バーボンは様々な品質で熟成し、風味は一定しません。業界で育ったブッカーは最高の樽を探す方法を知っていました。
かつて一部の蒸留所のラックハウス作業員は「ミュールス」と呼ばれるプラスチック製のチューブを自分の作業着の前面に付けて持ち歩き、熟成したバレルから直接ウィスキーの味見をするために使用したそうです。 彼らはおおむね立派な体格(太ってた?)をしており、味見をするとき彼らの出っ張った腹は樽の側面を擦り、埃を取り除いてバレルを輝かせました。「バレルがより明るいと、ウィスキーはより甘い」なんて格言?を言う人もいたそうな。
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ブッカーは見習いの作業員をラックハウスへわざと送り込んでおいて、後から悠々とシャイニーバレルを見つけ出したのでしょう。そして自らの名前を付けることになるバーボンの最初の準備が出来た時、シャイニーバレルがあった場所に新しい樽を置いた、と。そこは大抵の場合、温度と湿度と日当たりがちょうど良いラックハウスの中央部分に当たりました。具体的に言うと、ジムビームの熟成倉庫は主に9階建てですが、上層階でも下層階でもない真ん中の4~6階のことです。これがブッカー自身がしばしば「センターカット」という用語を使った理由でした。ジムビームではラックハウスの中層階こそが「スイートスポット」であり「ハニーバレル」を産出する場所だという訳です。

以上のような特別な樽を一つ選ぶだけではブッカーズにはなりません。ブッカーズはシングルバレルではなくスモールバッチですから、選ばれた樽はサンプリングされて、バランスを見ながらブレンドし、一つのバッチを形成します。このプロセスをバッチングといい、バーボンの味をクリエイトする重要な要素。現在のブッカーズもバッチングに使用される樽は殆どが中層階から来ています(少しだけ2階や8階等別のフロアの樽が選ばれることもある)。バッチ・サイズは概ね350~360樽とされます。また、ブッカーズの熟成年数は常に6~8年であり、ラベル記載の熟成年数はバッチの中で最も若い原酒の物です。ラベルと言えば、あのブッカーズの象徴的な筆記体によるデザインは、自分のバーボンのストーリーを説明したブッカー・ノー本人の手書きのメモを複製したものだそう。

そして更にブッカーズをブッカーズたらしめる特徴が、アンカットとアンフィルタード。つまり水で希釈せず濾過もしないことです。加水調整しないため、アルコール度数はそのバッチ毎に異なり、およそ120~130プルーフの間を行き来する所謂バレルプルーフ・バーボンで、フィルタリングに関してはゴミ(炭化したバレルの木屑)取りレヴェルの濾過はしていると思いますが、大々的なフィルターはかけていないでしょう。ブッカー本人の台詞で言えば「バレルからストレートに、かつてのバーボンがそうだったように」。

さて、今回レヴューするブッカーズなのですが、購入した時からバッチナンバーを示すシールが欠損していました。初めから付いてなかったのか、取れちゃったのかよく判りませんが、ともかくブッカーズと言えばバッチナンバーは欠かせません。それがあるから有り難みが増し、マニア心を擽るというもの。そこで、せっかくなのでテイスティングの前にブッカーズのバッチナンバーの読み方を、この機会に紹介しておきましょう。

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ブッカーズのバッチのコードには大きく分けて3タイプあります。
発売開始から94年途中までは「バッチ」と書かれてなく「ロット」と書かれ、例を挙げると「C-B-16-79」や「B-K-28-84」のようなコーディングです。最初のアルファベットは蒸留プラントの別を表し、クレアモントの「C」かボストンの「B」です。二番目のアルファベットは月を表し、A=1月、B=2月と読み替えます。次の数字は1から31までの蒸留日、最後の数字は蒸留年に対応しています。
続いて、94年途中からフォーマットに若干の変更がなされました。例としては「C87-B-19」や「B95-C-31」のような感じです。以前と同様の方法論に従いますが、順序が違います。先頭のアルファベットは蒸留プラントの区別、そこからハイフンがなく蒸留年が来て、月を示すアルファベット、日にちの順です。
そして2014年になると、従来方式と単純化されたバッチナンバーが混在し始めます。「C07-A-12」と「2014-07」のような例です。前者は従来通りですが、後者は蒸留年ではなくバッチングされた年とリリース番号です。この混在はおそらく過渡期だからでしょう。2015年になるとアメリカ国内仕様のバッチナンバーの書かれたタグは大幅にリニューアルされたからです。2015年からのものはバッチ番号を単純化した以外に、各バッチにブッカーと関連する何かを表すシンボルと名前が付けられるようになりました。犬とか椅子とか魚とか肉とか色々なものです。ご丁寧にそれらに付随するストーリーもあります。これらは限定リリースや特別リリースではありませんが、ファンからしたら親しみやすく見ていて楽しい新機能です。

それでは、海外のバーボンマニアが作成してくれているデータをベースに、バッチの仕様を以下に纏めておきます。ブッカーズはかなりの年月継続して発売されてますし、特定の業者向けのボトリングもあり、または輸出国でその仕様も異なるかも知れず、全てを網羅するのは難易度が高いです。また私自身はコレクターでもマニアでもありません。それゆえ不完全だと思うので、ここに挙げられていないバッチをご存知の方はコメントよりお知らせ頂けると助かります。表記は左から順に、バッチ番号、名称があるものはその名称、括弧は蒸留年に熟成年数を足したことで得られる推定バッチング時期≒ボトリング時期≒リリース時期(後年の「2015-01」のような番号には付けていません)、熟成年数、プルーフ、特記事項、分かるものに関してはバレルの出自です。また、不確定要素には「?」を付しました。


【Booker's Batches ~Work-in-Progress~】

C-B-16-79 (Feb. 1986?) / 7YEARS OLD / 120.9 PROOF / Brown Wax / Individually Numbered
C-B-16-79 (Feb. 1987?) / 8YEARS OLD / 121.4 PROOF / Brown Wax
C-E-19-81 (May 1988) / 7YEARS OLD / 121.6 PROOF / Brown Wax
C-B-04-82 "Booker Noe's" (Feb. 1989) / 7YEARS OLD / 125.2 PROOF / Brown Wax 
C-C-16-82 "Booker Noe's" (Mar. 1989) / 7YEARS OLD / 126.0 PROOF / Brown Wax
C-I-27-82 "Booker Noe's" (Sep. 1989) / 7YEARS OLD / 125.3 PROOF
C-K-03-82 (Nov. 1989) / 7YEARS OLD / 124.2 PROOF
B-H-01-83 "Booker Noe's" (Aug. 1991) / 8YEARS OLD / 124.6 PROOF / Brown Wax
B-H-01-83 "PRIVATE STOCK" (Aug. 1991) / 8YEARS OLD / 125.4 PROOF / For Japanese Market
C-E-15-84 (Dec. 1990) / 6YRS 7MO / 124.6 PROOF
C-E-15-84 "Booker Noe's" (???. 1991) / 6YRS ?MO / 125.2 PROOF / For Japanese Connoisseur
C-E-15-84 (Oct. 1991) / 7YRS 5MO / 124.6 PROOF / Brown Wax
B-K-28-84 "Booker Noe's" (Jan. 1993) / 8YRS 2MO / 124.6 PROOF / Brown Wax
B-K-28-84 (Jan. 1993) / 8YRS 2MO / 124.6 PROOF
C-J-06-86 "Booker Noe's" (Oct. 1993) / 7YEARS OLD / 124.9 PROOF / Brown Wax
B-C-19-87 "Booker Noe's" (Apr. 1994) / 7YRS 1MO / 126.5 PROOF
C87-B-19 "PRIVATE STOCK" (Feb. 1994?) / 7YEARS OLD / 126.5 PROOF / For Japanese Market
C87-B-19 (May 1994) / 7YRS 3MO / 126.5 PROOF
C87-D-14 (Dec. 1994) / 7YRS 8MO / 126.1 PROOF / Japan Export?
C87-D-21 (Apr. 1995) / 8YEARS OLD / 125.3 PROOF
C-E-15-89 (May 1996) / 7YEARS OLD / 124.6 PROOF / Mimi
C88-J-17 (Oct. 1996) / 8YEARS OLD / 125.5 PROOF / Booker's Club 3 Sticker on Top
C89-E-26 (Mar. 1997) / 7YRS 10MO / 125.6 PROOF
C89-L-13 (May 1996) / 6YRS 5MO / 126.6 PROOF
C90-B-8 "10th Anniversary" (Feb. 1998) /  8YRS / 126.3 PROOF / Gold Wax
C90-D-11 (Aug. 1997) / 7YRS 4MO / 126.5 PROOF
C90-E-11 (Sep. 1997) / 7YRS 4MO / 126.5 PROOF / Booker's Club 3 Sticker on Top
C90-E-14 (Feb. 1998) / 7YRS 9MO / 126.7 PROOF
C90-K-28 (Sep. 1998) / 7YRS 10MO / 126.3 PROOF
C91-L-20 (May 1999) / 7YRS 5MO / 126.6 PROOF
C92-I-15 (Dec. 1999) / 7YRS 3MO / 126.5 PROOF
C92-K-05 (Aug. 2000) / 7YRS 9MO / 125.4 PROOF
B93-L-16 (Jan. 2001) / 7YRS 1MO / 126.3 PROOF
B94-E-13 (Jun. 2001) / 7YRS 1MO / 126.0 PROOF
B94-E-13 (Jan. 2002) / 7YRS 8MO / 126.4 PROOF
B95-C-31 (Jun. 2002) / 7YRS 3MO / 126.6 PROOF
B95-C-31 (Dec. 2002) / 7YRS 9MO / 126.7 PROOF
B95-C-31 (Mar. 2003) / 8YRS 0MO / 126.7 PROOF / Japan Export?
B95-C-31 (Aug. 2003) / 8YRS 5MO / 126.8 PROOF
B95-C-31 (Dec. 2003) / 8YRS 9MO / 126 PROOF
B96-C-15 "Booker Noe 1929-2004" (Jun. 2004) / 8YRS 3MO / 125.3 PROOF / Commemorative Label, Release Size : 3000
B96-L-23 (Nov. 2004) / 7YRS 11MO / 126.8 PROOF
C97-A-31 (Mar. 2005) / 8YRS 2MO / 126.6 PROOF
C97-B-07 (Aug. 2005) / 8YRS 6MO / 126.9 PROOF
C99-B-22 (Jan. 2006) / 6YRS 11MO / 124.7 PROOF
C00-A-20 (May 2006) / 6YRS 4MO / 124 PROOF
C00-A-20 (Aug. 2006) / 6YRS 7MO / 127 PROOF
C00-A-20 (Oct. 2006) / 6YRS 9MO / 127 PROOF
C00-K-15 (Jun. 2007) / 6YRS 7MO / 126.4 PROOF
C01-A-18 (Aug. 2007) / 6YRS 7MO / 124.9 PROOF
C01-A-18 (Jan. 2008) / 7YRS 0MO / 125.7 PROOF
C01-A-18 (Apr. 2008) / 7YRS 3MO / 125.4 PROOF
C01-A-18 (Apr. 2008) / 7YRS 3MO / 125.7 PROOF
C01-K-07 (Sep. 2008) / 6YRS 10MO / 126 PROOF
C02-A-18 (Dec. 2008) / 6YRS 11MO / 126.9 PROOF
C02-A-18 (Mar. 2009) / 7YRS 2MO / 130.1 PROOF
"FRED NOE SELECT FOR SEIJO ISHII" NO. 1 / 6YRS 10MO / 125.0 PROOF / Release Size : 1000, Special Box
"FRED NOE SELECT FOR SEIJO ISHII" NO. 2 / 6YRS 10MO / 122.0 PROOF / Release Size : 700, Special Box
"FRED NOE SELECT FOR SEIJO ISHII" NO. 3 /6YRS 10MO / 122.0 PROOF / Release Size : 300, Special Box
C02-I-24 (Sep. 2009) / 7YRS 0MO / 128.4 PROOF
C03-A-29 (Jan. 2010) / 7YRS 0MO / 127.9 PROOF
C03-A-29 (May 2010) / 7YRS 4MO / 128.6 PROOF / Japan Export?
C03-I-16 (Sep. 2010) / 7YRS 0MO  / 127.4 PROOF
C03-I-17 (Jan. 2011) / 7YRS 4MO / 128.0 PROOF
C04-A-28 (May 2011) / 7YRS 4MO / 129.1 PROOF
C04-A-28 (Aug. 2011) / 7YRS 7MO / 128.6 PROOF
C04-J-19 (Nov. 2011) / 7YRS 1MO / 129.2 PROOF
C05-A-12 (Feb. 2012) / 7YRS 1MO / 130.0 PROOF
C05-A-12 (Jun. 2012) / 7YRS 5MO / 128.5 PROOF
C06-B-15 (Mar. 2013) / 7YRS 1MO / 127.1 PROOF
C06-B-15 (Mar. 2013) / 7YRS 1MO / 128.9 PROOF
C06-B-15 (May 2013) / 7YRS 3MO / 127.1 PROOF
C06-K-08 (Nov. 2012) / 6YR 0MO / 130.4 PROOF
C06-K-08 (Jan. 2013) / 6YR 2MO / 128.5 PROOF / Kentucky Derby Festival 2013
2013-06 / 7YRS 6MO / 125.9 PROOF / Roundtable Selection
2013-07 / 7YRS 0MO / 128.0 PROOF
2014-01 "25th Anniversary Edition" / 10YRS 3MO / 130.8 PROOF / Gold Wax
2014-02 / 7YRS 0MO / 126.8 PROOF / Japan Export
C07-A-12 (Jan. 2014) / 7YRS 0MO / 130.6 PROOF
C07-B-7 (Apr. 2014) / 7YRS 2MO / 130.8 PROOF / Roundtable Selection
C2014-05 / 7YRS 5MO / 127.9 PROOF
2014-06 / 7YRS 2MO 14DAYS / 127.7 PROOF / Roundtable Selection
2014-07 / 7YRS 7MO 13DAYS / 128.9 PROOF
2015-01 "Big Man, Small Batch" / 7YRS 2MO 16DAYS / 128.7 PROOF
2015-02 "Dot's Batch" / 7YRS 0MO 18DAYS / 127.9 PROOF
2015-03 “The Center Cut” / 7YRS 2MO 28DAYS / 127.2 PROOF / Roundtable Selection
2015-04 "Oven Buster Batch" / 6YRS 5MO 20DAYS / 127.0 PROOF / Roundtable Selection
2015-05 "Maw Maw's Batch" / 6YRS 7MO 3DAYS / 128 PROOF
2015-05 (No Batch Name) / 6YRS 7MO / 128.0 PROOF / Export
2015-06 "Noe Secret" / 6YRS 8MO 7DAYS / 128.1 PROOF / Roundtable Selection
2016-01 "Booker's Bluegrass" / 6YRS 11MO  0DAYS / 127.9 PROOF
The first batch of Bookers for 2016 is made up of barrels that were stored in 7 different rack houses. 61% of the barrels were stored in 9 story houses, 34% were stored in 7 story houses, and remaining 5% were stored in a 5 story rack house. The ages of the barrels in the batch range from 6 years 11 months old to 7 years 11 months old.
2016-01E (No Batch Name) / 6YRS 1MO / 127.7 PROOF / Export
2016-02 "Annis' Answer" / 6YRS 2MO 1DAYS / 126.7 PROOF
The batch is made up of barrels from four different production dates stored in 5 different storage areas. The oldest barrels in the batch were 7 years, 1 month old and the youngest barrels were 6 years, 2 month old.
2016-LE "Big Time Batch" Booker's Rye / 13YRS 1MO 12DAYS / 136.2 PROOF / Green Wax and Label
2016-03 “Toogie's Invitation” / 6YRS 4MO 4DAYS / 129.0 PROOF / Roundtable Selection
"Toogie’s Invitation" is culled from barrels located in six different rack houses.
2016-04 “Bluegill Creek” / 6YRS 5MO 28DAYS / 128 PROOF
"Bluegill Creek" is made up of barrels from four different rack houses and five different production dates.
2016-05 “Off Your Rocker” / 6YRS 7MO 23DAYS / 129.7 PROOF
"Off Your Rocker" is made up of barrels located in four different rack houses with four different production dates.
2016-06 “Noe Hard Times” / 6YRS 10MO 1DAYS / 127.8 PROOF
"Noe Hard Times" is made up of barrels from 6 different rack houses with six different production dates.
2017-01 “Tommy’s Batch” / 6YRS 4MO 6DAYS / 128.5 PROOF / Roundtable Selection
41% came from the 6th floor of 9-story warehouse E
13% came from the 6th floor of 9-story warehouse H
46% came from the 7th floor of 9-story warehouse D
2017-01E (No Batch Name) / 6YRS 1MO 0DAYS / 125.4 PROOF / Export
2017-02 "Blue Knights Batch" / 6YRS 3MO 3DAYS / 127.4 PROOF
2% came from the 4th floor of 7-story warehouse ONE 
38% came from the 7th floor of 9-story warehouse D
33% came from the 4th floor of 9-story warehouse F
27% came from the 6th floor of 9-story warehouse J
2017-03 “Front Porch Batch” / 6YRS 5MO 25DAYS / 125.9 PROOF
8% came from the 5th floor of 9-story warehouse D
14% came from the 7th floor of 9-story warehouse D
37% came from the 4th floor of 9-story warehouse E
5% came from the 5th floor of 9-story warehouse E
16% came from the 6th floor of 9-story warehouse E
20% came from the 4th floor of 9-story warehouse F
2017-04 “Sip Awhile” / 6YRS 8MO 14DAYS / 128.1 PROOF
4% came from the 6th floor of 9-story warehouse F
4% came from the 7th floor of 9-story warehouse F
8% came from the 4th floor of 9-story warehouse E
39% came from the 5th floor of 9-story warehouse E
45% came from the 7th floor of 9-story warehouse H
2018-01 “Kathleen's Batch” / 6YRS 3MO 14DAYS / 127.4 PROOF / Roundtable Selection
4% came from the 5th floor of 7-story warehouse ONE
6% came from the 4th floor of 9-story warehouse F
3% came from the 7th floor of 9-story warehouse F
19% came from the 4th floor of 9-story warehouse H
30% came from the 5th floor of 9-story warehouse H
13% came from the 6th floor of 9-story warehouse H
25% came from the 7th floor of 9-story warehouse H
2018-01E (No Batch Name) / 6YRS 3MO / 127.4 PROOF / Export
2018-02 “Backyard BBQ” / 6YRS 2MO 10DAYS / 128.8 PROOF
4% came from the 4th floor of 9-story warehouse E
29% came from the 5th floor of 9-story warehouse E
10% came from the 7th floor of 9-story warehouse E
8% came from the 5th floor of 9-story warehouse J
32% came from the 6th floor of 9-story warehouse I
17% came from the 7th floor of 9-story warehouse I
2018-03 “Kentucky Chew” / 6YRS 4MO 12DAYS / 126.7 PROOF
29% came from the 4th floor of 9-story warehouse D
42% came from the 6th floor of 9-story warehouse D
8% came from the 4th floor of 9-story warehouse I
8% came from the 7th floor of 9-story warehouse I
6% came from the 6th floor of 9-story warehouse J
2% came from the 7th floor of 9-story warehouse J
5% came from the 5th floor of 7-story warehouse N
2018-04 “Kitchen Table” / 6YRS 8MO 7DAYS / 128.0 PROOF
7% came from the 4th floor of 9-story warehouse E
14% came from the 5th floor of 9-story warehouse E
4% came from the 6th floor of 9-story warehouse E
24% came from the 5th floor of 9-story warehouse J
44% came from the 6th floor of 9-story warehouse J
7% came from the 6th floor of 9-story warehouse D
"30th Anniversary Limited Edition" / 30% 16 Year and 70% 9 Year / 125.8 PROOF / Silver Wax
2019-01 "Teresa's Batch" / 6YRS 3MO 1DAYS / 125.9 PROOF
2% came from the 2nd floor of 7-story warehouse 5
1% came from the 4th floor of 7-story warehouse 5
10% came from the 6th floor of 9-story warehouse D
3% came from the 4th floor of 9-story warehouse E
25% came from the 5th floor of 9-story warehouse E
25% came from the 6th floor of 9-story warehouse E
28% came from the 5th floor of 9-story warehouse J
3% came from the 6th floor of 9-story warehouse J
3% came from the 8th floor of 9-story warehouse J
2019-01E (No Batch Name) / 6YRS 3MO / 125.9 PROOF / Export
2019-02 "Shiny Barrel Batch" / 6YRS 5MO 1DAYS / 124.0 PROOF
18% came from the 6th floor of 9-story warehouse D
39% came from the 4th floor of 9-story warehouse E
43% came from the 4th floor of 9-story warehouse J
2019-03 "Booker's Country Ham" / 6YRS 4MO 2DAYS / 124.7 PROOF
51% came from the 7th floor of 9-story warehouse H
5% came from the 3rd floor of 7-story warehouse P
44% came from the 4th floor of 7-story warehouse P
2019-04 "Beaten Biscuits" / 6YRS 6MO 19DAYS / 126.1 PROOF
47% came from the 6th floor of 9-story warehouse H
11% came from the 4th floor of 7-story warehouse P
42% came from the 5th floor of 7-story warehouse P
2020-01 "Granny's Batch"  / 6YRS 4MO 21DAYS / 126.4 PROOF
24% came from the 6th floor of 9-story warehouse G
22% came from the 4th floor of 9-story warehouse H
16% came from the 4th floor of 7-story warehouse L
24% came from the 5th floor of 7-story warehouse L
10% came from the 6th floor of 7-story warehouse L
4% came from the 5th floor of 7-story warehouse P
2020-01E (No Batch Name) / 6YRS 4MO / 126.4 PROOF / Export
2020-02 "Boston Batch" / 6YRS 3MO 10DAYS / 126.5 PROOF
11% came from the 3rd floor of 7-story warehouse 5
33% came from the 5th floor of 9-story warehouse G
27% came from the 6th floor of 9-story warehouse H
29% came from the 5th floor of 7-story warehouse Z
2020-03 "Pigskin Batch" / 6YRS 7MO 7DAYS / 127.3 PROOF
14% came from the 6th floor of 7-story warehouse L
15% came from the 6th floor of 9-story warehouse H
27% came from the 5th floor of 7-story warehouse M
32% came from the 4th floor of 7-story warehouse X
12% came from the 5th floor of 7-story warehouse Z
2021-01 "Donohoe's Batch" / 6YRS 11MO 4DAYS / 125.3 PROOF
16% came from the 2nd floor of 9-story warehouse H
8% came from the 6th floor of 9-story warehouse H
4% came from the 6th floor of 7-story warehouse L
16% came from the 4th floor of 7-story warehouse X
9% came from the 5th floor of 7-story warehouse X
47% came from the 5th floor of 7-story warehouse Z
2021-01E (No Batch Name) / 6YRS 11MO / 125.3 PROOF / Export
2021-02 "Tagalong Batch" / 6YRS 5MO 0DAYS / 127.9 PROOF
4% came from the 3rd floor of 7-story warehouse 5
3% came from the 4th floor of 7-story warehouse X
13% came from the 5th floor of 9-story warehouse D
33% came from the 6th floor of 9-story warehouse H
40% came from the 7th floor of 9-story warehouse H
7% came from the 5th floor of 7-story warehouse Z
2021-03 "Bardstown Batch" / 6YRS 7MO 7DAYS / 127.3 PROOF
8% came from the 2nd floor of 9-story rackhouse H
27% came from the 5th floor of 9-story rackhouse H
24% came from the 6th floor of 9-story rackhouse D
11% came from the 5th floor of 7-story rackhouse Z
19% came from the 5th floor of 7-story rackhouse 1
11% came from the 8th floor of 9-story rackhouse J
2021-04 "Noe Strangers Batch" / 6YRS 6MO 12DAYS / 124.4 PROOF
3% came from the 2nd floor of 9-story warehouse H
27% came from the 5th floor of 9-story warehouse D
39% came from the 6th floor of 9-story warehouse J
31% came from the 5th floor of 7-story warehouse Q
2022-01 "Ronnie's Batch" / 6YRS 11MO 22DAYS / 124.3 PROOF
4% came from the 3rd floor of 7-story warehouse 5
7% came from the 4th floor of 9-story warehouse D
15% came from the 5th floor of 7-story warehouse 1
26% came from the 5th floor of 7-story warehouse Q
48% came from the 5th floor of 7-story warehouse Z
2022-01E (No Batch Name) / 6YRS 11MO / 124.3 PROOF / Export
2022-02 "The Lumberyard Batch" / 7YRS 1MO 7DAYS / 124.8 PROOF
2% came from the 4th floor of 7-story warehouse X
3% came from the 3rd floor of 7-story warehouse 5
3% came from the 4th floor of 9-story warehouse D
17% came from the 4th floor of 7-story warehouse Z
19% came from the 5th floor of 7-story warehouse Q
28% came from the 4th floor of 7-story warehouse 1
28% came from the 6th floor of 7-story warehouse Z
2022-03 "Kentucky Tea Batch" / 7YRS 4MO 14DAYS / 126.5 PROOF
2% came from the 3rd floor of 7-story warehouse 5
1% came from the 4th floor of 7-story warehouse X
1% came from the 4th floor of 9-story warehouse D
12% came from the 4th floor of 7-story warehouse 1
24% came from the 5th floor of 7-story warehouse Q
14% came from the 6th floor of 7-story warehouse Q
46% came from the 6th floor of 7-story warehouse Z
2022-04 "Pinkie's Batch" / 6YRS 10MO 10DAYS / 122.4 PROOF
47% came from the 3rd floor of 7-story warehouse Z
36% came from the 4th floor of 7-story warehouse 1
11% came from the 4th floor of 7-story warehouse X
6% came from the 5th floor of 7-story warehouse Q
SINGLE BARREL "Second Chance Batch" / 7yrs 6mo 17days / 123.6 PROOF / WAREHOUSE D / FLOOR 4 / Blue Label, Blue Wax, For Medicinal Whiskey Charity
2023-01 "Charlie's Batch" / 7YRS 1MO 8DAYS / 126.6 PROOF
3% came from the 5th floor of 7-story warehouse Q
17% came from the 4th floor of 7-story warehouse G
24% came from the 4th floor of 7-story warehouse Z
27% came from the 5th floor of 7-story warehouse Z
29% came from the 5th floor of 7-story warehouse 1
2023-02 "Apprentice Batch" / 7YRS 1MO 2DAYS / 125.5 PROOF
7% came from the 7th floor of 9-story warehouse H
9% came from the 4th floor of 7-story warehouse W
11% came from the 4th floor of 7-story warehouse 1
18% came from the 4th floor of 7-story warehouse O
19% came from the 4th floor of 9-story warehouse G
36% came from the 4th floor of 7-story warehouse Z
2023-03 "Mighty Fine Batch" / 7YRS 1MO 10DAYS / 126.6 PROOF
2% came from the 5th floor of 7-story warehouse Q
3% came from the 6th floor of 7-story warehouse Z
8% came from the 5th floor of 9-story warehouse G
10% came from the 6th floor of 7-story warehouse I
10% came from the 5th floor of 9-story warehouse H
12% came from the 5th floor of 9-story warehouse G
55% came from the 5th floor of 7-story warehouse 3
2023-04 "The Storyteller Batch" / 7YRS 2MO 29DAYS / 127.8 PROOF
26% came from the 6th floor of 7-story warehouse Z
14% came from the 6th floor of 9-story warehouse H
25% came from the 5th floor of 9-story warehouse G
35% came from the 5th floor of 7-story warehouse 3
2024-01 "Springfield Batch"
2024-02 "The Beam House Batch"
2024-03 "Jerry's Batch"
2024-04 "Master Distillers Batch"


少し補足しておくと、特記事項に出てくるラウンドテーブル・セレクションというのは、円卓会議を意味する言葉です。基本的にブッカーズ・バーボンは、蒸留所で働く選ばれた人々にテイスティングしてもらい意見を伺うらしいのですが、このラウンドテーブルとしてリリースされているブッカーズは、蒸留所の関係者ではないけれどバーボンを愛するライターや著名人、所謂インフルエンサーにブッカーズのバッチ選択を手伝ってもらったものを指します。大体3つのサンプルの中からどれがブッカーズに相応しいか投票形式で決めて行くのだとか。
また、前半の方に「ブッカー・ノーズ」と名付けられたブッカーズがあります。これは聞くところによると、日本のバーボンマニアの間で「ブッカーズ/ブッカー・ノーズ問題」と呼ばれているようで、つまりはこの二つの違いは何なんだ?と云うことなのですが、日本の或る高名なウィスキーブロガーの方は他方はシングルカスク(シングルバレル)なのではないかと想像してみたり、なかなか尽きないホットなトピックみたいです。なので私もここで自分の想像を披瀝してみたいと思います。
PhotoGrid_1564900361275

先ず、最初の発売時はブッカー・ノーズで、ある時からブッカーズに名称変更された、というなら話は簡単だったのですが、これは確実に違います。上のリストの始めの三つは「Booker's」だからです。次に、ブッカーズが初期の段階では国内仕様をブッカーズ、日本輸出仕様をブッカー・ノーズにしていた、これはその可能性もあるし、そうでもなさそうな気もするし、明確に判らないので取りあえず放置。続いて、一方の質が高い説、例えばブッカーズはスモールバッチでブッカー・ノーズはシングルバレルとか、他方は熟成年数が長いとか、蒸留時点で造り分けてるなど中身に明瞭なスペックの違いがあると考える説は、個人的には賛同できません。おそらくブッカーズにはシングルバレルはなく、ブッカー・ノーズも含めて常にスモールバッチだったのではないかと思います。明確な根拠がある訳ではないのですが、ブッカー・ノーはシングルバレル・バーボンのファンではなかったと聞きます。シングルバレルはその性質上、一貫性がなく、当該のブランドにシングルバレルに相応しいベスト・バレルを使用してしまうと、ブランド全体のフレイヴァー・プロファイルが弱くなることを彼は知っていました。それがスモールバッチのコンセプトに拘った所以でしょう。それに、既に84年の時点でブラントンズというシングルバレル・バーボンが発売されているのですから、もしシングルバレルのブッカーズを造ったのだったら、あれほど似たようなラベルにせず、もっと高級感を演出するとか、或いはその事をもっと押し出したのではないでしょうか?  ロット「79」までの物が極端に小さい規模のスモールバッチだった、というなら理解は出来るのですが…。また、私には当時の価格が分からないのでこれまた憶測ですが、ブッカーズとブッカー・ノーズに品質の区別があったのなら販売価格は大いに違ったのではないでしょうか? 誰か知ってる方はいらっしゃいませんか?
じゃあ一体ブッカーズとブッカー・ノーズは何が違うんだと問われたら、両者は保証される品質に違いはなく、単なるラベルのヴァリエーションに過ぎないのではないか、というのが私の意見です。仮に、初期のブッカーズとブッカー・ノーズを全部取り揃えて飲み比べをし、その結果、例えば全てのブッカー・ノーズが全てのブッカーズより美味しく感じたとしても、やはりそれらは同じものと見做せると思います。何故なら、そもそもブッカーズはバッチ毎に味の変動があるとされるバーボンですし、少なくともラベルや公表されている情報から判断するに、ブッカー・ノーズはブッカーズの定義(ブッカーズたる条件的なスペック)を満たしているからです。何よりブッカーズとブッカー・ノーズですよ? これ日本語にしたら「ブッカーの」と「ブッカー・ノーの」ですから、どちらも指し示すものが一緒じゃないですか。極端な差があったら消費者は混乱してしまいます。それに、多分海外のバーボンマニアはこの名称の違いをそれほど気にしてないような気がします。ボトルのラベルはブッカーズでありながら、紙箱にはブッカー・ノーズと書かれているパターンの販売もよくありましたが、この件に関してツッコミを入れてる海外の方を見たことがないのです。
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箱に関しては上の画像のように、ブッカーズ・トゥルーバレル・バーボンとかブッカー・ノーズ・スペシャルバレル・バーボン等と書かれており、初期ラベル同様一定の文句で統一されていません。これはどう考えても両者が認識として同じもの、同じ事柄の別表現なのを暗示しているように思えてならないのです。おそらく二種類の名称が生まれた原因はブッカー自身にあったのではないか、と私は勘繰っています。ブッカーズ誕生の場面を思いっきり妄想してみましょう。


伝説によれば、ブッカーは親しい友人や家族や蒸留所で働く人々に、特別に選んだ樽から出来たバーボンを振る舞ったと云う…

ゴクゴク

A氏「いやぁ、旨めえなぁ、このバーボン」

B氏「ほんとだ、こいつぁ旨めぇ、こりゃ明日ブッカーさんにお礼を言わなきゃだな」

翌日

A氏「なぁ、ブッカーさんよ、昨日くれたあのバーボン、すげぇ旨かったよ、ありがとうな。ありゃいったいなんてバーボンなんだい?」

B氏「そうだそうだ、俺もそれが聞きてぇ、これからも飲みてえんだよ」

ブッカー氏「名前なんてねぇよ、…そうだなぁ、強いて言うなら、俺んだ」

A氏「ブッカーズってわけかい?」

B氏「へへぇ、そいつはいいや、カッコいいじゃねーか」

と、まあこんな感じの会話があったとかなかったとか…



私の推測では、ブッカーにとっては「ブッカーズ」でも「ブッカー・ノーズ」でも、どっちでもよかったし、それらは同じ意味だった。しかし、消費者もしくはブランディングやデザインに携わる担当者には違った。「ブッカーズ」の方が断然クールな響きだった。それ故「ブッカー・ノーズ」はいつしか淘汰され、「ブッカーズ」が生き残った。或いはブッカー本人が「ブッカーズ」の方を気に入ったのかも知れない。

…えー、はい、空想話はこれくらいにして、そろそろテイスティングへ…。

先に述べたように、今回飲んだブッカーズにはバッチナンバーのシールがありません。なので熟成年数も不明、インポーターのシールも見当たらないので度数すら分からないのです。が、瓶底に辛うじて15という数字が読み取れるので、おそらく2015年のエクスポートではないかと思われます。木箱が以前のナチュラル・カラーの物から、ロッキンチェアに座るブッカーがプリントされた濃い茶色の物に代わったのも2015年だし、私の購入した時期も考え合わせると、多分間違いないかと。

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Booker's ? Proof
Batch No. ?
推定2015年ボトリング、6年7カ月熟成、128プルーフ。糖蜜とハーブ、シナモンアップルパイ、線香、僅かなカラメル、きな粉。どこか植物を思わせるアロマと木香。オイリーな口当たり。パレートはオレンジ(後にメロンに変化)を感じる。アルコール感は穏やか。余韻はややウッディなビター感が始めに来て、それが消えるとビーム・バーボンに共通するフルーツが微かに揺蕩う。ナッティさはあまり感じない。香りがハイライト。
Rating:88/100

Thought:先日まで飲んでいたノブクリークのシングルバレルとは全然キャラクターが違う仕上がりなのは流石でした。また、このブッカーズの前に飲んだブッカーズ(2012年のバッチ)が凡庸だったのに比べると、特別なフィーリングは感じました。うんうん、ブッカーズはこうでなくっちゃね、と。但し、加水し過ぎたりロックで飲むと酷く平凡なのは気になりました。加水して60度くらいに下げるなら、端からノブクリーク・シングルバレルを飲んだ方が美味しいと思います。

Value:一昔前までブッカーズは日本では5000円程度で買えていました。アメリカでも安いと40ドル~大体50ドル程度で買えていたようです。しかし、2016年になるとビームはブッカーズの価格を約二倍にする計画を立てました。ビーム広報が出した2016年暮れのアナウンスによれば、「希少性と高品質、そして生産基準を犠牲にすることなく供給を維持する必要」から価格を引き上げることにした、と言うのです。と同時に年間6〜7バッチから4バッチに減産し、バッチサイズは従来通り約350バレルのままです。それは利用可能なボトルの数が約3分の1に縮小することを意味します。これにより日本への割り当ても少なくなり、例の「終売騒動」に繋がったのでしょう。今後はどうなるか判りませんが、値上げは時間をかけて段階的に実行されるようで、今のところアメリカ国内では約70~75ドル程度、日本でも希望小売価格はその程度の値段付けとなっています。
現在の産業全体のバーボン高需要からすれば、確かにビーム広報の言葉も本当ではあるでしょう。しかし、穿った見方をすると、NDPのややもするといかがわしいバーボンがブッカーズの2倍の希望小売価格だったり、他のスーパー・プレミアム・クラス・バーボンがその価格帯で販売されている状況に、ビームの上層部はイライラしていたのではないでしょうか。言うなれば、ヴァン・ウィンクルやバッファロートレース・アンティーク・コレクションのような存在にブッカーズをするべきと考えたのではないかと。2016年発売のブッカーズ・ライが300ドルでも即座に売り切れたという事実が彼らにアイデアを与えた可能性があると、バーボン・ライターからも示唆されています。
当たり前の話、どんな企業も停滞より成長を望みます。熟成期間を経なければ販売できないウィスキービジネスにとって、急な需要増は対応に苦慮する危機であると同時にチャンスでもあり、賢明なプレイヤーなら、価格を上昇させて需要を少し抑えながらも利益を増やすことでしょう。できれば、更なる需要の成長と顧客のロイヤルティを損なわずに。それは理解できるにしても小売価格を2倍はクレイジーです…。
日本の状況を見て下さい。2019年バッチが7月に発売されると、おそらく適正価格で販売する店舗や通販サイトからは瞬く間に消えたと思われます。しかし、どうも転売ヤーなる「職業」があるらしく、オークションにはそれなりに豊富なタマ数で出品はされています。落札相場は概ね10000~12000円程度で、図らずもビームの希望通りの金額と言っていいでしょう。また、メーカー希望小売価格より強気の価格設定をする店舗も、概ね10000円程度での販売価格のようです。仮に定価が7500円とするならば、手に入りにくい物への対価としては、まあ妥当な落札価格や販売価格なのかも知れません。しかし、味や品質面から言ったらノブクリーク・シングルバレルが5000円の時、ブッカーズを倍額で買う価値があるかと問われたら、個人的には「No」ですね。私なら迷わずノブクリーク・シングルバレルを2本買います。もちろんフレイヴァー・プロファイルは違いますし、ブッカーズの方が美味しいかも知れません。いや、美味しい。それに、有り難みもある。しかし、それでも5000円VS10000円は検討に値するエコノミクスです(***)。


*日本語ではブッカー・ノーの「Noe」を「ノォ」または「ノウ」あるいは「ノエ」と表記する習慣が見られます。実際の発音は「イエス、ノー」の「No」と同じなのですが、おそらく女優のユマ・サーマンの実際の発音が「ウマ・サーマン」に近いのに、日本語で「馬」を連想させるため「ユマ」と表記するようになったのと同じ発想で、拒否の「No」を連想させないような配慮からそう表記しているのだと思われます。しかし、当ブログでは「ノー」を採用しています。これでも特に問題ないと思うので。

**他にもビームはフランクフォートにナショナル・ディスティラーズから引き継いだ元々オールドグランダッドを造っていた蒸留所を所有していますが、ここでは現在蒸留は行われていません(熟成庫とボトリング施設はあります)。またクレアモント・プラントとボストン・プラントのDSPナンバーは同じ230です。施設が違うのに同じ番号なのは、おそらくDSPナンバーは施設や土地に付けられるのではなく蒸留器に付けられる番号だからだと思います。そこから察するに、クレアモントとボストンは、規模は違ったとしてもほぼ同じ生産設備を備えている、つまり蒸留される物は同じものだと仮定されているでしょう。それでも多少の造り分けはされているようで、一説にはボストンでは殆どがジムビーム・ホワイトラベルになる物を生産し、その他のブランドの原酒はクレアモントでの生産だと言われています。ちなみにボストンにはボトリング施設はなく、そのせいかジムビーム系バーボンのラベルには大概クレアモント(もしくはフランクフォート)の記載しかありません。

***私を含む大概の消費者は、価格は品質に等しいと信じる「価格の心理学」に囚われがちです。そのことは忘れずにいたいもの。

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ノブクリークは92年の発売以来ジムビームのスモールバッチ・コレクションの中でも人気が高く、クラフト・スピリッツ市場が大きく成長するのに適応して、現在では様々なヴァリエーションを提供しています。オリジナルのストレート・バーボン以外に、近年著しい復活を遂げたカテゴリーのライウィスキーや、フレイヴァーを加えたスモークド・メープル、その他に限定リリース等もあります。そして今回レビューするシングルバレル・リザーヴは2010年から発売されました。

シングルバレルとスタンダードとの違いはいくつかあります。先ず名前の通りシングルバレルであること。おそらくスタンダードのノブクリークはスモールバッチとは言っても、大規模蒸留所のスモールバッチなので、だいたい300バレル程度でのバッチングではないかと予想されます。対してシングルバレルは1つの樽のみですから、そもそもバレルピックの段階で多少なりともクオリティの高い樽を選択している可能性はあるでしょう。また、オリジナルのノブクリークはエイジ・ステイトメントが消えてしまいましたが、シングルバレルは今のところは9年熟成を守っています。そして個人的に一番重要と思うのは、スタンダードより10度もアルコール度数が高いことです。ジムビーム蒸留所のエントリー・プルーフは125プルーフとされていますので、シングルバレルの120プルーフというのは、限りなくバレルプルーフに近い数値です。これはハイアー・プルーフ愛好家には嬉しいスペック。その他のレシピや蒸留プルーフ、樽材やチャーリング・レヴェルなどに特別な違いはない筈です。では飲んでみましょう。

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KNOB CREEK SINGLE BARREL RESERVE 120 Proof

推定2016年ボトリング。香ばしい焦樽、スモーク、カシス、ブラックベリー、シナモンパウダー、煮詰めたリンゴジュース、僅かに焼きトウモロコシ、微かに爪の垢、ココア。思いの外キャラメル系の甘い香りがせず、焦樽フルーツ系のアロマ。オイリーな口当たり。後味にメープルシロップのような甘さが残り、余韻は豊かなナッツと絵の具。
Rating:87/100

Thought:スタンダードなノブクリークよりも度数のせいかシングルバレルだからか、少し複雑さはあります。個人的にはもう少し甘味があって欲しかったのですが、一滴加水すると甘味とフルーティさをより感じ易くなり、樽香が一瞬香水のようにも感じられました。シングルバレルゆえの個体差もあるでしょうが、もしかすると現行の買いやすいジムビーム製品では一番美味しいかも知れない。

Value:日本だと販売店によっては店頭価格にスタンダードなノブクリークとの差があまりないことがあります。その場合にはシングルバレルを選ぶほうが確実にお得でしょう。 アメリカでは40ドル前後、日本では5000円前後が相場で安いと4000円代前半。仮にスタンダードが4000円、シングルバレルが5500円としても、単体で見ると少し高い気もしますが、同じジムビームのスモールバッチの他製品と較べるとお買い得感はあり、差額1500円分の価値はあるような気がします。

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ベイカーズは、ジムビームの誇るスモールバッチ・コレクションの一つで、92年からコレクションの三番目として発売されました。その名はベイカー・ビームにちなんで付けられています。彼は、同じくスモールバッチ・コレクションの筆頭とも言えるブッカーズの名の由来であるブッカー・ノーのカズン(はとこ?)であり、ジム・ビームことジェイムス・ボーリガード・ビームの弟であるパーク・ビームの孫に当たります。父親はビーム蒸留所の伝説的マスターディスティラー、カール・"シャックス"・ビームです。
蒸留一家に生まれたベイカーは弟のデイヴィッドと共に、蒸留所の上の丘に建つ、現在ではジェレマイア・ハウスと呼ばれる「大きな白い家」で育ちました。子供の頃、彼らは後にヘヴンヒル蒸留所のマスターディスティラーとなるいとこのパーカー・ビームと一緒に、蒸留所の向かい側のバーンハイム・フォレストで自転車に乗って遊んでいたそうです。ビーム家の他の殆どの人と同じように、兄弟は自然と蒸留所で働くようになり、長年に渡りクレアモントで蒸留所の職務を分担しました。ベイカーが最初に蒸留所で働き始めたときは夜間警備員だったと云います。その後、整備から蒸留まで蒸留所の様々な仕事をこなし、最終的にクレアモント・プラントでヘッドディスティラーに登り詰めました。同じ頃、ブッカーはビーム・ファミリー第六世代マスターディスティラーになる前にボストン・プラントを監督していました。
バーボン史的に言うと、1980年代半ばから90年代初頭にかけてのシングルバレルやスモールバッチと言われるプレミアム・バーボンの誕生が、現在のバーボン人気の礎を築いたと見られています。当時、消費者(海外市場、特に日本市場の)はスコッチのシングルモルトのようなもう少し高級なバーボンを求めました。或いは逆に、酒類販売会社のPRが消費者をそのように育てた側面もあったでしょう。ブッカーはブランド・アンバサダーとして「スター性」を持った最初のマスターディスティラーでした。スモールバッチ・バーボンを世に広めた功績は計り知れません。しかし、ベイカーは知名度こそブッカーに劣るものの、ビーム蒸留所のメイン・ファシリティであるクレアモントでディスティラーをしていた人物です。ビームの二つの工場では、ベイカー、デイヴィッド、ブッカーが同時にディスティラーでした。ベイカーはクレアモントでデイ・シフトを、デイビッドはナイト・シフトを担当しました。ブッカーはボストンです。二つのプラントの相対的なステータスを考えると、ベイカーは蒸留技術者としては寧ろブッカーより重要だったと思われます。ベイカー・ビームとはそれほどの男なのです。では、そのバーボンはどのようなものなのでしょうか?

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(手前がベイカー、奥がブッカー)

ベイカーズはベイカーの個人的嗜好にインスパイアされたバーボンだと言います。マッシュビルは通常のジムビームと同じ77%コーン/13%ライ/10%モルテッドバーリーで、酵母も同じ。そして最低7年熟成、107プルーフ(*)でのボトリング。ビームのスモールバッチ・シリーズは、一説によると通常のジムビーム・ラインより蒸留プルーフが低いともされていますが、公表されてはいないので真相は判りません。また、ベイカーズをクリエイトするためのバレルは、ラックハウスの上層フロアからのみ選ばれると伝えられることがあり、サントリーの公式サイトでもフレッド・ノーの言葉を引用する形で「ベイカーズは上段の8~9段(**)で7年超の熟成を経たもの。樽香の芳しい、最もパンチのあるフルボディタイプ」と書かれていますが、ベイカー本人によれば最上階を含む倉庫のあらゆるところから樽を引き出して、力強いフレイヴァーとベイカーズ自慢の絹のように滑らかなフィニッシュを持ったバランスの良いミディアムボディのバーボンを造る、とのこと。
余談ながら、ベイカーはベイカーズ以外のバーボンだったら何が好きですかという質問には、同じスモールバッチ・コレクションのベイゼル・ヘイデンズと答えています。

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ベイカーズは発売当初は上画像左のデザインでした。「B」の大きい現行のデザインになったのは97年頃と思われます。バッチナンバーの数字に熟成年数の7を足した推測です。ラベルにはバッチナンバーの記載はありますが、 手書きではないですし、ダミーというか、それっぽく見せただけのような気がします。おそらくラベルデザインの違いによる二種類しかないのではないでしょうか?  ご存知の方はご教示ください。
さて、今回は新旧対決と行きたかったんですが、旧ラベルのほうは数年前に飲み終えてしまい、サイド・バイ・サイドでの比較ではないのでオマケです。

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BAKER'S Aged 7 Years 107 Proof
batch no. B-90-001
ボトリング年不明、推定2017年。キャラメルマキアート、アーモンド、フルーツガム、焦げ樽、トーストブレッド、エナジードリンク、トマト。スイートなアロマ。イースト由来とされるビーム・ファンクも。ほんの少しバタリーな口当たりで、度数のわりにするりとした喉越し。余韻はハイプルーフから期待されるほど長くはない。基本的にはオーク、ナッツ、フルーツ、スパイスのどれもが突出しないバランスだが、残量が半分くらいになってからはキャラメル系の甘い香りがやや減じ、オレンジでもリンゴでも洋梨でもチェリーでもメロンでもない、あのビーム・フルーツとしか言い様のない独特のフルーティさが強く顔を覗かせた。また、一二滴の加水だとストレートとあまり変わらないが、四滴ほど加水すると味わい的には薄めたブッカーズに近いものを感じるようになった。
Rating:85/100

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BAKER'S SEVEN YEARS OLD 107 Proof
batch no. B-85-001
ボトリング年不明、推定90年代。飲んだのが数年前なので細かいことが言えないが、現行のものほど甘味がなかった気がする。ロット間、もしくはボトルコンディションの差なのだろうか? それなりに濃くはあるものの、あまり旨味も感じられなかった。そこがビームらしいと言えばらしいのだが…。
Rating:84.5/100

Thought:ジムビームのスモールバッチ・コレクションの中で、おそらく一番売れてないのがベイカーズだと思われます。他のコレクションのバーボンにはヴァリエーションや限定リリースがあるのに、ベイカーズだけないからです。人気がない理由は主に3つ思い付きます。
①製品仕様のキャラ立ち
ベイゼル・ヘイデンズは唯一マッシュビルが違い、尚且つ低プルーフ、そして独特の意匠のラベルデザイン。ノブクリークのボトルデザインも独特です。ブッカーズはバレルプルーフでアンフィルター。どれも個性が際立っています。それに比べてベイカーズは、ボトル形状はブッカーズと似ているし、プルーフもノブクリークとブッカーズの中間です。これではどうも中途半端な立ち位置の印象を与えかねません。
②人物の知名度
スモールバッチ・コレクションを創始したブッカー・ノーと較べると、どうしたってベイカー・ビームの知名度は劣ります。これは対外的なディスティラーと対内的なディスティラーという役割違いに由来するのでどうしようもないです。ベイゼル・ヘイデンにしてもオールド・グランダッド関連で名前が挙がる人だけに、知名度の差は埋めようもないでしょう。ノブクリークのみ小川の名前ですが、その説明の際にリンカーン大統領が持ち出されたりしては勝負になりません。
③ラベルのデザイン
そして①の延長線上の話ですが、個人的には何よりベイカーズのラベルデザインが一際悪いと思っています。他の3つと比較して余りに手抜き感が否めない。いや、そもそもなぜベイカーズだけがラベルのリニューアルをしたのかが不明です。ノブクリークとベイゼル・ヘイデンズは発売当初と殆ど変わらず、ブッカーズはマイナーチェンジぐらいに留まっている。なのにベイカーズだけ大幅にデザインが変更されているではないですか。個人的にはリニューアル前の方がよほどカッコいいと思います。
それとラベルではないですが、特に駄目なのはワックストップです。これでは、ただでさえボトル形状がブッカーズと似ているのに、ワックスシールドしたら余計に似て、安易なブッカーズの廉価版に見えてしまいます。そこに来て大きな「B」ですよ? ブッカーズだって頭文字はBですからね? そろそろデザインの刷新を図るべき時期が来ているのではないでしょうか。せっかく美味しいバーボンなのに勿体ないです。まあ、こんなところで文句を言ってもしょうがないのですが…。


*オールド・ウェラーなどにも見られる107というきりの悪い数字は、バーボン業界では伝統的な数値です。1962年以前、110プルーフがバレル・エントリー・プルーフだった時代には、107プルーフでのボトリングこそが今日言うところの「バレルプルーフ」に相当しました。

**括弧で囲った引用文はいわゆる「原文ママ」なので、ちょっと誤解を与えかねない表現になっています。解る人には解るかもしれませんが、「上段の8~9段」と云うのは「上層階の8~9階」という意味です。ジムビームのラックハウスは九階建てで、一つのフロアーに樽を三段積みが基本だからです。上段の8~9段」と表現されると、何だか一階建ての熟成庫にバレルが九段積み重なってるようなイメージがしませんか? そのため個人的には使いたくない表現なのですが、引用なのでそのままにしてます。

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