カテゴリ:ケンタッキーバーボン > ヘヴンヒル蒸留所

2018-07-31-08-54-31

今回から数回に分けて「安酒を敬いたまえ」と題して、700〜750mlあたり1500円までのエントリークラスバーボンの飲み比べとレーティングの一覧を作ってみようと企画しました。正確には1500円を少し越える物も含む、1500円前後までと受け取って下さい。ここはジャックダニエルズもワイルドターキーもメーカーズマークもいないチープな世界。もう最低のラインですよ。ちょっと上物を飲んだ後では満足出来っこない。けれど、これも愛せてこそのバーボンマニアだと思うのです。高級品やレア物を飲むだけがマニアじゃない。あなたの口や脳や臓器がバーボンのために出来ているのなら、これらも愛せるはずだ(笑)。

では、蒸留所別に分けまして、今回はイントロダクションとヘヴンヒル蒸留所編となります。

Heaven Hill Distillery◆ヘヴンヒル蒸留所
ヘヴンヒルの通常のバーボンマッシュビルは、コーン/ライ/バーリーがそれぞれ78%/10%/12%と75%/13%/12%という二つの説があります。どちらが正しいのか判断がつきませんので並記させてもらいました。チャーリングレベルは# 3 と言われており、バレルエントリープルーフは125です。

2018-07-31-08-54-56
Heaven Hill 80 Proof
980〜1200円程度
ヘヴンヒル蒸留所はエヴァンウイリアムス黒ラベルをスタンダードなバーボンとして売り出しているようです。そこから考えるとこちらは、それよりも格下のバーボンと言えます。熟成年数はおそらく4年。或いは3年程度かも知れませんね。アメリカではヘヴンヒルのボトルド・イン・ボンド規格のものが売られているようです。昔は「オールド」のついた熟成年数の長いものもありました。
正直なにもコメントが思い浮かばないほど普通。いや、普通に旨いとは言えるのですが、それ以下でもそれ以上でもないと言うか…。うっすら甘く、さっぱりしていて、フルーティーと言うには果実感が足りない感じ。弱々しいキャラメル香は感じますが、穀物っぽさとケミカルなノートのほうが強く感じられます。と言って、くっさーい酒、クセのある酒とは言い難く、癖のないクリアでライトな如何にも現代の安バーボンです。しかし、値段からしたら十分美味しい。
Rating:77/100

2018-07-31-08-55-27
John Hamilton 80 Proof
980〜1300円程度
ジョン・ハミルトンという人はケンタッキーの初期蒸留家のようです。詳しくは調べてもよく分かりませんでした。もしかすると現行の物はアメリカでは売られてないエクスポートオンリーのブランドかも知れません。
これまた殆どヘヴンヒルと同じ印象です。全てがライト。バーボンらしいオーク臭や甘味や酸味があるけれども弱々しい。けれど値段からしたら満足というやつです。
Rating:77/100

2018-07-31-08-56-06
OLD VIRGINIA 6 Year 80 Proof
1300〜1500円程度
ヴァージニアと名付けられてはいるが、ケンタッキーストレートバーボン。ケンタッキー州はもともとヴァージニア州の一部だったので、ヴァージニア州で造られてなくてもこの名前はアリなのかも。日本には流通してませんが他国では同ラベルの8年熟成の物があるようです。原酒は明らかにされてませんが、香りからして典型的なヘヴンヒルのジュースだと思われます。
6年熟成ともなると40度とは言え、上記二つと較べだいぶ香りが豊かになります。スパイシーさも出てきました。しかし芳醇とは言い難く、やはりまだ穀物臭とケミカルな香りが強い。弱いヴァニラにコーン、ビオスリー。 フルーツ感も弱いけれど、安いのでけっこうお買い得感はあり。
Rating:79/100

他にもテンガロンハットという、日本にバーボンブームがあった時代に、日本酒類販売とナショナル・ディスティラーズが共同開発したブランドがあります。おそらく当時はND傘下の蒸留所、その後ジムビームの原酒を使っていたと思いますが、現在ではヘヴンヒルの原酒が使われています。なので、ここに並べても良かったのですが、価格的にみてヘヴンヒルやジョンハミルトンと大差ないと判断して割愛しました。値段は1000円ちょいです。是非お試しあれ。
更にはマークトゥエイン、マーチンミルズ、T.W.サミュエルズ等、ヘヴンヒルの若い原酒を使用したとおぼしきバーボンがありますが、同じ理由で割愛させて頂きます。
また、ヘヴンヒル蒸留所を代表する銘柄エヴァンウィリアムスのブラックラベルは1500円以内で購入できることもありますが、一つ上の価格帯と判断してここには載せてません。
PhotoGrid_1533600108679

IMG_20180710_051019_736

値段が安いのに高いアルコール度数で人気のファイティングコック。エヴァンウィリアムスやエライジャクレイグと同じくヘヴンヒルディスティラリーが造っています。2015年には6年の表記は消え、現在ではNASとなりました。90年代までは6年ではなく8年が流通しており、クラシカルな紙ラベルがカッコよかったです。更に2000年代までは日本限定で15年物も流通していました。

このバーボンのオリジンは何処にあるのか知りたくて調べたのですが、全くその手のソースがヒットせず、ヘヴンヒルがそもそもオリジナルなのか他の蒸留所から取得したのか一向にわかりません(※追記あり)。ただ70年代物と言われるボトルの写真をみるとケンタッキー州ローレンスバーグと記載があります。一体何という蒸留所で造られていたのでしょうね。更に60年代と言われるボトルにはコネチカット州スタンフォードの記載があります。そこに蒸留所があったのか、それともただのボトリング施設の場所なのか判りません。また、ファイティングコックのラベルでメリーランド・ライ・ウイスキーがあるのも見つけまして、それにもコネチカット州スタンフォードと記載があります。こうなるとヘヴンヒルがオリジナルではないと考えていいような気がします。
あと余談ながら、ライ・クーダーがスライドギターで使うスライドバーの一つにファイティングコックの瓶を使っていたそうです。

さて、このバーボン、ネット検索にて日本語で書かれた何らかの情報を見ると、かなりの割合で「小麦バーボン」だと書かれているのを発見します。それは個人やバーのブログだったり、酒販店の商品説明だったりします。小麦バーボンというのは、メーカーズマークのような原料にライ麦を使わず小麦を使うバーボンのことです。海外のサイトで調べてみると、ファイティングコックを小麦バーボンだとしている情報は一つもありません。逆にハイ・ライ・マッシュビルだとしているものは少数ありました。 私が飲んでみた限り、ファイティングコックは小麦バーボンでもなければ、ハイ・ライ・マッシュビルでもなく、ロウ・ライ・マッシュビルのコーン多めのバーボンに感じました。はっきり言えばエヴァンウィリアムス等と同じマッシュビルに感じます。これはどういうことなのでしょうか?
ネットの情報はコピペの連鎖が殆どですから、或る一説がほぼ同じ文言で多く散見されるのは仕方ありません。しかしファイティングコックが小麦バーボンというのはちょっと信じがたい。あるバーのブログでは、6年は小麦バーボンで、15年はライ麦少なめコーン多めのマッシュビルだから味が違うのだという主旨の記述がありました。単発リリースのブランドやファミリーリザーブとかファミリーエステート、またはシングルバレルと言うならいざ知らず、いくら15年が日本限定の製品だとしても、量産されかつ継続性のあるブランドでそれをされたらアイデンティティーに欠ける気がします。そもそも熟成年数が倍も違えば味が違うのは当然でしょう。
また、ある酒販店の商品説明では、ファイティングコックのホームページに「キックを与えるために原料にライ麦ではなく、小麦を使ってるのだ」と書かれている、と述べられているのです。ええ!? 一般的に小麦はソフターな酒質になる特徴があるとされているのに?  普通キックを与えたいならライ麦を使うのでは?  慌ててヘヴンヒルや日本の輸入元のブランド紹介を調べるとそのような記述は現在では見られませんでした。可能性としては、昔は小麦バーボンだったが現在ではそうではない、というのも考えられます。けれど、それを本国のアメリカ人がまるで知らないというのはちょっと解せません。確かにヘヴンヒルのバーンハイム蒸留所では小麦バーボンも造っています。それはスティツェル=ウェラーから引き継いだオールドフィッツジェラルド系のどちらかというとマイルドなバーボンに使用されます。常識的に考えて荒々しい闘鶏がモチーフのバーボンにそれを使うのは意味が分からなくないでしょうか?

大事なことなので、もう一度繰り返します。ファイティングコックを小麦バーボンとしているのは日本人だけです。海外では、ファイティングコックはヘヴンヒルのスタンダード・マッシュビル(コーン75%/ライ13%/バーリー12%、また他説では78%/10%/12%)を使用して造られている、というのが一般的認知です。上に述べた60〜70年代のような古いものはどうか判りませんが、少なくとも近年のヘヴンヒル産の物は小麦は使われていないと思ってよいでしょう。では、そろそろテイスティングへ。

Fighting Cock 6 Years 103 Proof
2013年ボトリング。まずは強めのアルコール臭、弱めのキャラメル香、ややソーピー。クリーミーな口当たり。穀物感とコーンウィスキー感が強い。正直言ってマチュレーションピークの前なのは否めないが、ハイ・プルーフなので満足感は高く、お値段を考えればグッドバーボン。特に開封後しばらくして香りが開くと少しフルーティーになり、かなり美味しい。
Rating:84/100

Fighting Cock 8 Years 103 Proof
94年ボトリング。飲んだのが10年以上前なので細かいことが言えないが、ストロングかつウェルバランスだったように思う。俗に言う思い出補正はあるかも知れない。
Rating:86/100

追記1:その後、アバンテというファイティングコックの輸入元のホームページに「バーボンウイスキーとは一般的にトウモロコシ、ライ麦、大麦麦芽が原料だが、ファイティング・コックはトウモロコシと小麦を使った原酒を選んでいるので、コシの強さがある。」と書かれているのを発見しました。もしかするとこれが、日本での「ファイティングコック小麦バーボン説」の直接的な情報源であるのかも。と言うより、それが輸入元の記述であるからには、そもそも蒸留所から提出された情報に何か誤解を与えるような説明がされていたのではないか、と考えるのが自然な気がしてきました。というのも、有名なバーボン掲示板のファイティングコックのスレッドで見かけたのですが、或る方のコメントによるとファイティングコックのウェブサイトに「殆どのバーボンは小麦を使って造られるが、このバーボンにはキックを与えるためにライ麦を使っている」という主旨のことが記載されている、と言うのです。は? 殆どのバーボンは小麦で造られてませんけど? この投稿は2011年にされています。もしこのコメントが本当なら、少なくともその当時までは、ファイティングコックの公式ウェブサイトで不適切な表現がなされていた可能性があります。そして私が本文で取り上げたように、日本の或る酒販店はファイティングコックのホームページから「キックを与えるために原料にライ麦ではなく、小麦を使ってるのだ」と引用して商品説明をしています。これ、言ってることは反対ですが、文章の言い回しが似ていますよね。実際にはどちらも間違っているのですが、どうやら往年のファイティングコックの公式ウェブサイトに、そんな言い回しがあったのは間違いなさそうです。もしかするとヘヴンヒル蒸留所が当時雇っていたPR会社の担当者がバーボンのことをあまり知らなかったのかも知れません。

追記2:古いファイティングコックについて記事執筆時より少々明らかになった情報があります。こちらを参照下さい。

IMG_20180622_153000_869
エライジャクレイグ18年3DSC_0182
IMG_20180702_145040

Elijah Craig Single Barrel Aged 18 Years 90 Proof
BARRELED ON 2-23-90
BARREL NO. 3755
バーボンの父と称されるエライジャ・クレイグ牧師の名を冠したヘヴンヒルのプレミアムバーボン。12年物とは比較にならないほど複雑な芳香を持っています。様々なドライフルーツのアロマや味わいと、渋味を含んだオークの風味、それをアルコール度数45度でボトリングするバランス感覚は大変面白味があります。ピーチやパイナップルも出てきましたが、キャラメル感はそれほどでもなく、オーバーオークな感じもしません。いわゆるパンチやキックを求める人には向かない、長熟ならではの香味をきくバーボン。日本には殆ど輸入されていない21年や23年も本国ではリリースされており大変人気があります(と言うか18年も最近は日本に入ってこない)。
本ボトルは90年に蒸留されたもので、いわゆる旧ヘヴンヒルのジュース。現行と比較したことはないので味の違いは分かりません。
Rating:87/100

DSC_0727

エヴァンカッパースティルDSC_0965
エヴァンカッパースティルDSC_0963
エヴァンカッパースティルDSC_0964
EVAN WILLIAMS COPPER STILL CERAMIC  7 Years 90 Proof
1981年に発売されたものと言われています。エヴァン・ウィリアムスが当時使っていた蒸留器を再現したものなのでしょうか。とは言え中身のジュースはポットスティルで蒸留したものではないです。甘いキャラメル香と、現行バーボンとは異質の雑味のある風味は、オールドボトルの醍醐味ではあるものの、どうもエグみが強くて苦手な味でした。もしかすると劣化してたのかも知れませんね。飾りに買ったのでいいですけど。
Rating:73/100


エヴァン黒8年DSC_0823
エヴァン黒8年PhotoGrid_1368531601859
エヴァンウィリアムズ黒3PhotoGrid_1368531016917
EVAN WILLIAMS Black Label 8 Years 90 Proof
94年ボトリング。なんか松脂っぽい風味のする今ではあまりないタイプのバーボンでした。古いお酒は保管状況により味がだいぶ異なる気がします。劣化とまでは言いませんが、どうも本来の味ではなかったのではないかと思います。
Rating:81/100


エヴァン赤12年DSC_0832
エヴァン赤12年PhotoGrid_1368531830434
エヴァン赤12年PhotoGrid_1368531685676
EVAN WILLIAMS Red Label 12 Years 101 Proof
2009年ボトリング。逆算するとバーズタウンにあったヘヴンヒル・ディスティラリーが火事で焼失して、ルイヴィルのバーンハイム・ディスティラリーを買い取る間に蒸留された計算になるので、中身はブラウン=フォーマンの所有するアーリータイムズのプラントで蒸留されたものかなと想像します。なんとなくいつものヘヴンヒルより幾分かフルーティな気がするのは気のせいでしょうか。これは旨いです。
Rating:87.5/100


エライジャクレイグ12年DSC_1093
ELIJAH CRAIG 12 Years 94 Proof
95年ボトリング。あっさりしつつコクのあるタイプで、穀物感とフルーツ感、甘味とスパイシーさの加減、度数どれをとってもバランス型かなと思います。2000年代後期から2010年代初頭の物を飲んだ時も、その印象は変わりませんでしたが、僅かに90年代の物の方が美味しかった気がします。
Rating:86.5/100

↑このページのトップヘ