カテゴリ: バーボン用語集

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【W】

◆W12

◆W19

WFE
「Willett Family Estate」の略。ウィレット蒸留所からリリースされるスーパープレミアムなバーボン。非常に人気があり、そうそう買えない。

Wheated Bourbon─ウィーテッドバーボン
ライ麦の代わりに小麦をフレイヴァー・グレインとして用いるマッシュビルから造られたバーボン。日本では小麦バーボンと言う。ライ由来のキックやスパイシーさがない分、コーンの甘みを引き立て、より親しみ易いウィスキーになるとされる。メーカーズマークやウェラーなどが代表的。

Wheater─ウィーター
「ウィーテッド・バーボン」のこと。セカンダリー・グレインにライ麦ではなく小麦を使用したマッシュビルで造られたバーボン。

◆Whiskey(or Whisky)

◆Whiskey Rebellion

◆Whiskey Thief

◆Whiskey Trust

◆White Dog

◆WLW

◆WR

◆WSR

◆WT


【X】

該当なし。


【Y】

◆Yeast

◆YO


【Z】

該当なし。

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【S】

◆SA

◆Saz

◆SB

◆SFTB

◆Shot Glass

◆Single Barrel

◆Small Batch

◆SmB

◆Snifter

◆Sourced Whiskey

◆Sour Mash

◆Spiritus Frumenti

◆Still

◆Store Pick

◆Straight Whiskey

◆SW(S-W)

◆Sweet Mash


【T】

◆Tails

◆Tennessee Whiskey

◆THH

◆Thumper

◆Toast

◆TTB


【U】

Unicorn─ユニコーン
非常に希少なボトルの意。コレクターはその希少性からヴァン・ウィンクルやBTACのようなバーボンを酒屋の棚で見かけることがないため、それを発見すると唖然とすることから。空前のバーボン・ブームにより多くのユニコーンが絶滅し、嘗てそうではなかったブランドがその地位に昇格することもあるとか。


【V】

◆V17 / V21 / V23

◆Vertical Tasting

◆VOB
「Very Old Barton」の略。嘗てはバートン1792蒸溜所の主力なプレミアム・ブランドだったが、現在ではボトム・シェルファーの地位に甘んじている。
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◆VOF

◆Volstead Act

◆VOSN

◆VSOF

◆VWFRR

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【P】

◆Pf
「Proof」の略。「プルーフ」の項を参照。

PHC
「Parker’s Heritage Collection」の略。50年以上の蒸留経験を持つヘヴンヒル蒸留所の第6代マスターディスティラー、パーカー・ビームへのオマージュとして限定リリースされる同社のスーパー・プレミアム・アメリカン・ウィスキーのシリーズ。その名が付けられたパーカー・ビームは、2010年に筋萎縮性側索硬化症(ALSまたはルーゲーリック病とも)と診断され、後の2013年に引退、2017年に亡くなった。パーカーズ・ヘリテッジ・コレクションの収益の一部は患者のケアと研究を専門とするALS慈善団体に寄付される。2007年から年次リリースされた同コレクションは以下のようになっている。

2007 1st Edition「Cask Strength」Proof: 122.6, 127.4, 129.6
2008 2nd Edition「Aged 27 Years」96 Proof
2009 3rd Edition「Golden Anniversary」100 Proof
2010 4th Edition「Wheated Mashbill Aged 10 Years」Proof: 127.8, 124.2
2011 5th Edition「Cognac Barrel Finished」100 Proof
2012 6th Edition「Master Distiller's Blend of Mashbills」Proof: 131.6, 133.2, 137.9, 139.4
2013 7th Edition「Promise of Hope Aged 10 Years」96 Proof
2014 8th Edition「Original Batch Cask Strength Wheat Whiskey」Proof: 127.4, 126.8
2015 9th Edition「Malt Whiskey Aged 8 Years」108 Proof
2016 10th Edition「Aged 24 Years Bottled-in-Bond Bourbon」100 Proof
2017 11th Edition「Aged 11 Years Single Barrel Bourbon」122 Proof
2018 12th Edition「Orange Curaçao Barrel Finished」110 Proof
2019 13th Edition「Heavy Char Barrels Rye Whiskey Aged 8 Years」105 Proof
2020 14th Edition「Heavy Char Barrels Bourbon Aged 10 Years」120 Proof
2021 15th Edition「Heavy Char Wheat Whiskey」122 Proof
2022 16th Edition「Double Barreled Blend Bourbon」132.2 Proof
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◆Potstill

◆Private Barrel

◆Prohibition

◆Proof

◆PVW


【Q】

該当なし。


【R】

◆Rackhouse

◆Rectifier

◆RHF

◆Rick(Ricks)

◆Rickhouse

◆Ritt

◆RR

◆RY

◆Rye Whiskey

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N

NAS
「No(n) Age Statement」の略。ラベル上に熟成年数の提示がないこと。熟成期間による味わいの変化が大きいウィスキーにとって熟成年数はある程度の味わいの指標となるため、誇らしげに熟成年数を掲げるブランドは多いが、逆に初めから熟成年数表記のないブランドも少なくない。これには任意の風味プロファイルになりさえすれば熟成年数に拘らないという意図がある。と同時に、バッチングのためのバレル選択に於いて熟成年数の制約がないことは即ち選択肢が多くなることを意味し、そのブランドの目指す風味プロファイルをクリエイトしやすいというメリットもある。
2010年前後からのバーボン高需要によって、従来まで6年とか12年とか明示されていた熟成年数がなくなる銘柄が増えた。それは善かれ悪しかれ、その年数以下の熟成年数の原酒をブレンドしていることが殆どだと思われる。少なくとも12年以上だったものが8年~12年のブレンドになる等。これには造り手からすると将来の安定した供給を確保する狙いがある。反面、あったものがなくなるという年数表記の欠落は、当該ブランドのファンには否定的な印象を与えかねない。また、単純に熟成年数を引き下げただけの場合もあって、その場合は劇的な風味プロファイルの変化を伴う可能性が高い。悪どいことに「aged ○ years」の数字だけをラベルに残し、あたかも熟成年数の数字であるかの如く見せ、購買者のミスリーディングを誘うブランドもある。「エイジステイトメント」の項も参照。

National Bourbon Day─ナショナルバーボンデイ
6月14日。アメリカの特産品であるバーボンを飲んで祝う日。ケンタッキー州では「毎日がバーボンデイ」とも言う。

National Heritage Bourbon Month─ナショナルヘリテッジバーボンマンス
9月。2007年に米国上院によって作成されたもので、1964年に宣言された「米国特有の製品」としてのバーボンを祝うための歴史遺産月間。この法案はケンタッキー州の上院議員Jim Bunningによって提案され、全会一致で可決された。それは初期入植者やケンタッキー州の農業コミュニティ、ケンタッキー・バーボンを今日のフラッグシップカテゴリーにした多くのファミリーの貢献を認識し、伝統や歴史や文化遺産を讃え、バーボンを責任をもって適度に楽しむためのアイデア。ケンタッキー州バーズタウンで開催される国際バーボンフェスティバルは、毎年9月の3週目に開催されるため、バーボンを祝うには最適な月だった。

NCF
「Non Chill Filtered」の略。「ノンチルフィルタード」を参照のこと。

ND
「National Distillers」の略。ナショナル・ディスティラーズは複合企業体なので、バーボン用語としてはその酒類部門であり創業企業である「National Distillers Products Corporation(NDPC)」を指している。禁酒法解禁後にアメリカンウィスキー業界を支配したビッグ・フォーの一つで、何百とも言われるブランドを所有した。そうした中でもオールド・グランダッド、オールド・テイラー、オールド・クロウ、オールド・オーヴァーホルト、サニー・ブルックス、バーボンデラックス等は傑出した歴史あるブランドだが、1987年にナショナル・ディスティラーズはアメリカン・ブランズ(当時のジムビームの親会社)に売却され、それらのブランドはジムビームが製造を引き継いだ。こうした経緯によりナショナル・ディスティラーズが製造していた時代の物を欧米では「NDジュース」と呼び、バーボンマニアに珍重されている。

NDP
「Non Distilling Producer」の略。非蒸留業者と訳される。自らは蒸留施設を持たず、どこかの蒸留所からウィスキーを購入し、独自のブランドで販売する業者や会社のこと。ボトリングを専門とする所謂ボトラーも蒸留施設を所有していないという意味ではNDPと呼べる。しかし、ボトリング施設を持たず、ボトラーや蒸留所にボトリングを依頼する会社もNDPなので、ボトラーとNDPはイコールではない。供給元の選定やブランド構築の巧みさが成功の鍵。現在、大きくなっている会社でも大元を辿ればこれだったりする。

Neat─ニート
所謂ストレート。氷もいれず、水やミキサーで希釈もしないで飲む方法。語源的にはラテン語の「nitere(ニテーレ)」から由来するとされ、それは煌めく/輝かすといった意味をもち、英語に転じて綺麗(清潔)、清楚、純粋、濁りのない、混じり気のない等の意味に派生していった。ウィスキー用語としては、スコッチウィスキー界で先に使われ出したと思われるが、今ではバーボン飲みも使う。

Nest Egg─ネストエッグ
温水とドライイーストを混ぜたもの。マッシュへの添加前に酵母を活性化する「目覚め」のために使用される。

New Make─ニューメイク
蒸溜を終え、出来たばかりの無色透明の蒸溜液。これを樽で熟成することで琥珀色に色付き、ウィスキーとなる。バーボン業界ではホワイトドッグとも言う。

Non Chillfiltered─ノンチルフィルタード
冷却濾過されていないの意。ウィスキーの原材料や蒸留プロセス及び樽熟成期間に自然発生する香味成分の中には、脂肪酸・タンパク質・エステル等の低温になると析出してウイスキーを白濁させたり澱を発生させる成分が含まれており、それらの成分をボトリング前に予め-4℃~0℃に冷却しながら濾過して除去するのが冷却濾過。これによって失われる成分には、香りや風味の基となるものが含まれているとされ、より豊かな風味を求めるウィスキーマニアはノンチルチィルタードの製品を欲する傾向にある。「チルフィルトレーション」の項も参照。

Nose─ノーズ
ウィスキーの香り、匂い、アロマ。テイスティング・ノートなどでノーズとあれば、舌や口蓋を関与させず、鼻のみで感知した記述。


O

OC
「Old Charter」の略。現在ではバッファロートレース蒸留所で造られる下層バーボンとなってしまったが、一昔前はI.W.ハーパーと同じくバーンハイム蒸留所で造られていた歴史のあるブランド。「OCPR」は「Old Charter Proprietor’s Reserve」の略。
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OF
①「Old Fitzgerald」の略。小麦レシピで造られるスティッツェル=ウェラーの代表的な銘柄。同蒸留所が閉鎖後はヘヴンヒルがブランドを取得した。
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②「Old Forester」の略。ブラウン=フォーマン社の旗艦ブランド。「OFBB」は限定リリースの「Old Forester Birthday Bourbon」の略。ボンデッド規格のものは「OFBIB」と略す。
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OGD
「Old Grand-Dad」の略。現在ではジムビームで製造されるハイ・ライ・レシピのバーボン。同シリーズには、ロウワー・プルーフの物とボンデッドと114の種類がある。一昔前はナショナル・ディスティラーズを代表的する銘柄であり、その時代の物はバタースコッチ・ボムの味わいをもつとされ、オールドボトル愛好家に人気が高い。
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On the Rocks─オンザロックス
水やその他のミキサーを追加せずに、氷を入れたグラスに酒のみを注ぐ飲み方。日本では単に「ロック」と呼ばれることが多い。氷とグラスの奏でる音を愉しむことが出来る。

OO
「Old Overholt」の略。ライウィスキーの代名詞とも言えるほど古くから有名なブランド。元々はモノンガヒーラ・スタイルのライを代表したが、現在ではジムビームが製造するケンタッキー・スタイルのライとなっている。
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エイブラハム・オーヴァーホルトの肖像、WIKIMEDIAより

ORVW
「Old Rip Van Winkle」の略。2010年代になってからの急速なバーボン高需要の中、大人気のため入手困難となっている銘柄のひとつ。アメリカでも抽選に当たらないと買えなかったり、希望小売価格を大幅に上回る値段で販売されたりする。そのため現行品は日本での流通は皆無となった。
元々は禁酒法時代前後に販売されていたブランドをジュリアン・ヴァン・ウィンクル三世の父(パピー・ヴァン・ウィンクルの息子)が70年代に復活させ、イエローストーンやスティツェル=ウェラーのストックを用いて主にポーセリン・デカンター(一部はガラス瓶)に容れ販売していた。それをジュリアン三世も引き継いで販売し現在に至る。基本は10年熟成、107プルーフ(90プルーフのヴァリエーションもあった)。昔は15年熟成もあったが、現在ではパピー・ヴァン・ウィンクル・ファミリー・リザーヴ15年に置き換えられている。
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ブランドの名前とラベルは、アメリカの小説家ワシントン・アーヴィングが1820年に発表した短編集『スケッチ・ブック』中の一編「リップ・ヴァン・ウィンクル」に掛けたものとなっている。この話の筋は、アーヴィングがオランダ人移民の伝説を基にして書き上げたとされ、アメリカ版「浦島太郎」と紹介されることが多い。アメリカでは「時代遅れの人」や「眠ってばかりいる人」を意味する慣用句にもなっているのだとか。物語は大略以下のようになっている。

時はアメリカ独立戦争前後。ニューヨークのハドソン川近く、キャッツキル山地の麓の村で暮らすオランダ系アメリカ人のリップ・ヴァン・ウィンクルは、金儲けが嫌いで、あくせく働くのをよしとせず、のんびり過ごすのがモットーで、家の仕事はしないけれど、人からの頼まれごとは何でも引き受け、皆から好かれる気のいい男。がみがみ口喧しい女房と、まだ小さい息子と娘との貧乏な生活をしている。
ある秋晴れの日、リップはいつものように口煩い妻から逃れるため、鉄砲を肩に担ぎ、ウルフという名の愛犬と一緒に猟へ出て、山々をさ迷いました。猟を楽しんだあと、小高い丘でちょっと休憩しているうちに辺りは暗くなってきます。「いかん、また妻にどやされるぞ」と、彼は急いで帰ろうとしますが、その時「おーい、リップや」と自分の名前が呼ばれたような気がして足を止めます。錯覚かなと思っていると、また声が聴こえて来ました。「リップ・ヴァン・ウィンクル…、リップ・ヴァン・ウィンクル…」。その声は、どうやら谷間から聴こえるようで、谷を見下ろしてみると、なにやら重そうな物を運んでいます。声の主は白いあごひげを蓄えた見ず知らずの老人で奇妙な古めかしい服を着ていました。老人が運んでいたのは酒樽で、見るからに大変そう。リップは老人と一緒に酒樽を運んであげることにしました。しばらくすると、あたりにゴロゴロゴロゴロと雷鳴が響き渡ります。やがて高い崖に囲まれた広場のようなところに辿り着くと、そこでは多くの小人たちがナインピンズ(9本ピンのボウリング)に興じていました。雷鳴と思われた音はボールを転がす音だったのです。小人たちは一様に厳めしい顔つきをし、奇抜で華やかだが古臭い服を着て、腰には小刀をさしていました。そして不思議なことにゲームをしていても楽しそうな様子もなく、黙ったままでした。一緒に来た老人は酒をついで回る様にとリップに合図し、酒盛りが始まりました。リップも彼らが自分に興味がないのをいいことに、こっそり御相伴に預かると、その酒の美味しい事、たちまち杯を重ね酔っぱらい、すぐに眠りに落ちてしまいます。
朝、リップが目覚めると、老人と初めてあったあの丘の上で寝ていました。「しまった、寝てしまったのか、妻になんと言い訳すればいいのだ」。足元には鉄砲が転がっていましたが、手入れの行き届いていた筈の鉄砲は錆びて腐食し、銃床は虫に食われてさえいました。また、愛犬の姿も見えませんでした。「ウルフ!ウルフ!」。犬の名を呼んでも、どこからも出て来ません。
「あのジジイどもにしてやられたか」。リップは彼らを山賊だったのだと勘繰り、もう一度あの広場へ行って犬と鉄砲を返してもらうしかないと考え、立ち上がろうとしますが、関節がこわばっていつもの調子ではありません。「うう…、山で寝るのは性に合わねえな」。難儀しながらもやっとのことで広場へ通じる場所へ辿り着くと、その通路は跡形もなく消えていました。リップは途方にくれますが、仕方がないので村へと帰ることにします。
村が近づくにつれ、行き交う人々の顔を見ると、知り合いは一人もいませんでした。「おかしいな、村人は全員知ってるはずなのに…」。それに見たこともない格好をしているし、リップを見ると皆、自分の顎をさするのでした。訝ったリップは自分の顎を触ってみます。すると髭が1フット(約30㎝)も伸びていたのでした。そして村へ入っても、自分の家がどこにあるのか皆目見当も付きません。たった一晩で町並みはすっかり様変わりしていたからです。ようやく我が家を見つけると、なんと廃屋になっているではありませんか。当然、妻も子供たちもそこにはいませんでした。リップは慌てて家を飛び出し、馴染みの宿屋へ向かいます。見慣れた筈の宿屋の見た目も名前も変わっていました。壁に掛けられたキング・ジョージ三世の肖像画もジョージ・ワシントンに取り換えられています。リップが寝てる間にアメリカは既にイギリスから独立していたからです。
折しもその日は選挙の当日でした。宿屋に集まった村人のうち国士をきどった男が、共和党と民主党どちらに投票したのかと彼にこっそり話しかけます。リップは自分の人生で投票などしたことは一度もなく、「私は国王に忠誠を誓っております、国王陛下万歳!」とキング・ジョージ3世の忠実な臣民であることを宣言したものだから、「こいつイギリスのスパイだ!」と大騒ぎになってしまいました。そこに顔役らしい男が現れて事態を収拾し、リップに「爺さん、お前は銃なんかもって何がしたいんだ? 誰を探してるんだ?」と聞いてくれました。リップは友人たちの名を次々と挙げ、彼らはどこにいるのか尋ねます。ある者はとっくの昔に亡くなり、ある者はアメリカ独立戦争で殺害されていました。「そ、そんな…、誰か、誰かリップ・ヴァン・ウィンクルを知ってる人はいませんか?」。「そいつならあそこにいるやつだよ」。見ると自分にそっくりな男が木に凭れ掛かっていました。リップは混乱していましたが、その時、赤ん坊を抱いた若い女が進み出て来ました。声の調子からして若い頃の妻にそっくりでした。「君の父親は?」。「父はリップ・ヴァン・ウィンクルと言い、二十年前、山へ行ったきり帰って来ませんでした」。「母親は?」。「母も少し前に亡くなりました。牧師相手に癇癪を起こして血管が破裂したのです」。リップは「私が君の父親だよ! 誰か、誰かこの哀れな男を知ってる人はいませんか?!」と叫びます。すると群衆の中から一人の老婦人が出で、彼の顔を覗き込み、しばらくして言いました。「間違いない、この男はリップ・ヴァン・ウィンクルだよ、お帰んなさい、しかし一体あんたはこの20年どこに行ってたんだい?」。リップは人々に昨日の出来事をあっという間に話し終えます。それを聴いた村一番の古株で物識りの長老が言いました。「お前さんが出会ったのは、昔このあたりを探検した偉大なるヘンリー・ハドソン船長(ハドソン川の名の由来)と乗組員たちの亡霊に違いない。二十年ごとに巡回に来るという言い伝えがあるんじゃ」。
その後リップは、妻の死を悲しむこともなく、立派な男と結婚していた娘に引き取られ、のんびりと余生を送る。自分の物語を近所の子供や宿屋に来た見知らぬ旅人に聞かせたりして。それを信じない者もいたが、古くからのオランダの入植者は概ねそれを信用したと云う。もしかすると恐妻家の願望かもしれないが。

OS
「Old Scout」の略。ウェストヴァージニア州のスムーズ・アンブラー社が販売するソースドウィスキーのライン。Smooth Amblerを省略せずに「SAOS」とされることも多い。オールドスカウトの名は樽をスカウト(見出だす)することに由来する。それまでレギュラーラインナップだったオールドスカウト7年と10年は、2015年の急速な予期せぬ販売成長率のため無期限に中断されるとアナウンスされた。シングルバレルとプライベートセレクトは継続して販売されている。主にMGPから調達(60%コーン/36%ライ/4%バーリーモルトや75%コーン/21%ライ/4%バーリーモルトのバーボンなど)。
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Oscar Getz Museum of Whiskey History─オスカーゲッツミュージアムオブウィスキーヒストリー
バーズタウンのノース・フィフス・ストリートに面して建つ歴史的なスポルディング・ホールは、今日オスカー・ゲッツ・ウィスキー歴史博物館とバーズタウン歴史博物館として使われている。ホールはもともと1826年にケンタッキー州で最初のカトリック大学、セント・ジョセフ・カレッジの一部として建てられたが、長年に渡って様々な役割を果たし、南北戦争中は大学は閉鎖され一時的に南北両軍の病院として機能、その後は神学校や孤児院、1911年頃から1968年まではプレパラトリー・スクールとして使われた。名前はマーティン・ジョン・スポルディング司教にちなむらしい。現在の建物は、火事で破壊された以前の建物の代わりとして1839年に建て直されたもので、1973年に国立歴史登録財に指定された。
3階建てホールの1階大部分を占めるオスカー・ゲッツ博物館には、植民地時代から禁酒法解禁後の時代に至るアメリカン・ウイスキー業界の貴重な遺物や文書のコレクションが展示されている。蒸留と熟成に関するディスプレイから、ジョージ・ワシントンのスティル、エイブ・リンカーンの居酒屋のレプリカ、密造酒に関する物、禁酒法時代の資料やキャリー・ネイションの手斧、多くのアンティークボトルとジャグ、中身の入った薬用ウィスキー、古いサインやラベルに広告、斬新さを競ったノベルティ・デカンターまで、バーボンの豊かな歴史を物語る品々は、ジョージアン様式の風格ある建造物と相俟って愛好家必見。学識豊かなキュレーターとの出会いも楽しみの一つで、先代のフラゲット・ナリーとメアリー・ハイト、現在のメアリー・エレン・ハミルトンら博物館の維持運営を務め、バーボンの遺産を公衆に利用可能にする彼女たちは、バーボン産業の影の英雄と言ってよい。
入館見学は無料だが募金箱が設置され、寄付は大歓迎。博物館の運営費はケンタッキー・バーボン・フェスティヴァルの期間中に建物のチャペルで毎年開催されるマスターディスティラーズ・オークションによっても賄われる。オークションはヴァン・ウィンクル氏が後援し、出品されるアイテムにはバーボンのオールドボトル、歴史的なアーティファクト、特別リリースのサイン入りボトル、ギフトバスケットなどがあり、それらは地域の蒸留所からの寄付が殆ど。その他に2階3階のスペースを結婚式やレセプションに貸し出したりもするが、博物館には人件費、公共料金、セキュリティシステム費用、保険料が掛かる他、200年近い古さの建物は当然維持費が嵩むだろう。展示を楽しんだ後は寄付を弾みたいところ。
博物館の名になっているオスカー・ゲッツは1897年11月にイリノイ州シカゴで生まれた。禁酒法施行前はウィスキーの仲介業に携わっており、その多彩な性格は最高のセールスマンと評された。1920年にはエマ・エイブルソンと結婚。1933年に禁酒法が終了した後、ゲッツと義理の兄弟レスター・エイブルソンは自らの名でウィスキービジネスに取り掛かる。数年で彼の会社は成功、100人以上の従業員を雇用し、ケンタッキー州バーズタウンにあるトム・ムーア蒸留所の最大代理店となった。トム・ムーア蒸留所によって供給されるバーボンは「オールドバートン」というオリジナルのブランドで販売され、1940年までにゲッツは業界の大手プレーヤーとなる。ウィスキービジネスに変化が見え始めると、彼らは自らのブランドの安定した供給を保証するため、1944年にトムの息子のコン・ムーアからトム・ムーア蒸留所を購入し、プラントの名称をブランドの名前と同じバートン蒸留所に変更した。その名はいくつかの選択肢のうち「ハットから選んだ」名前だったと云う。オスカーは蒸留業界で大きな評判を確立し、酒類産業の「マン・オブ・ザ・イヤー」と名付けられたこともあったらしい。
またオスカーはウィスキーの蒸留プロセスと業界全体にも興味を持っており、しかも歴史の大好きなコレクターでもあった。趣味として収集し始めたアーティファクトや小さなディスプレイ、文書やラベルに広告、ボトルを含む記念品等は膨大な量で、それこそ強迫観念に憑かれたかのような集めぶりだった。彼の妻エマは「もうこれ以上、私の家に古い物は欲しくないの!」と、オスカーに収集物の片付けを要求。そこで彼は渋々、自らのコレクションを展示するため、1957年から蒸留所のオフィスで小さな博物館「バートン・ミュージアム・オブ・ウィスキー・ヒストリー」を始める。この私的博物館は一般公開され、今で言うところの蒸留所ツアーのビジターセンターの魁だった。そしてオスカー自身が学芸員であり歴史家であり講師だった。実際、1978年には彼の著書「Whiskey:American Pictorial History」が出版され、その後何十年に渡り参考ガイドとなる。
オスカーのコレクションは雪だるま式に増え続け、いつしか小さな「ビジターセンター」の枠を超えた。年代がはっきりしないが、ある時エッジウッドにあるフェデラル・スタイルの大きな家に博物館を移転したらしい。オスカーはビジネスを引退し、70年代後半もしくは80年代前半に蒸留所を売って、このコレクションを引き取る。彼は自らの収集物の適切な家を求め、新しい博物館として機能させるべく、古いカトリック神学校を修繕するためバーズタウン市にお金を支払った。残念ながら、彼のヴィジョンが現実のものとなるのを見ることなく、1983年にオスカーは亡くなる。残された妻と息子は、オスカーが過去数十年に渡って蓄積してきたコレクションをみんなに見て欲しいと思い、それを市に寄贈することにした。しかも博物館を支援するために毎年寄付をするとも言ったようだ。一年後の1984年7月、新たに復元されたスポルディング・ホールにコレクションは設置され、オスカー・ゲッツ・ウィスキー歴史博物館が生まれた。オスカーの博物館はいつもでも無料だった。 彼の情熱とコレクションに対する愛情に、全てのバーボンマニアは歓喜し感動を覚え、感謝の念を抱かずにはいられないだろう。

OT
「Old Taylor」の略。バーボン業界の発展に寄与したエドモンド・ヘインズ・テイラーJr.の名を冠したバーボン。一昔前はジムビームが、その前はナショナル・ディスティラーズが製造していた。現在ではバッファロートレースが製造し、同社のプレミアムラインの製品には「コロネル・EH・テイラー」があるため、歴史あるブランドの「オールド・テイラー」はすっかり影を潜めた。
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OWA
「Old Weller Antique」の略。昔はスティッツェル=ウェラー蒸留所、今はバッファロートレース蒸留所で造られている小麦バーボン。ハイプルーフなのが魅力。
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OWO
「Old Weller Original」の略。現在オールドウェラー・アンティークと知られるブランド名は、90年代初頭にラベルに「Antique」の文字が挿入され、そう呼ばれるようになった。それ故、OWOはそれ以前の物を指している。2018-12-22-06-51-26

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M

Malt Whiskey─モルトウィスキー
51%以上のモルテッドバーリーをマッシュに含み、160プルーフ以下で蒸留し、125プルーフ以下でチャーした新しいオークコンテナーに入れたウィスキーのこと。

Malted Barley─モルテッドバーリー
麦芽大麦。部分的に発芽され、加熱または焙煎された大麦。麦芽大麦には澱粉を発酵性糖に変換する酵素が含まれている。バーボンのマッシュビルでは概ね5〜15%程度の割合で使われる。酵素は麦芽でないと存在しない。

Mariage(Marriage)─マリアージュ(マリッジ)
マリアージュはフランス読み、マリッジは英語読み。通常の意味としては結婚のこと。「幸福な巡り合わせ」のようなニュアンスを秘めて使い、ワイン業界に於て、ワインと料理の組み合わせや相性が希にみるほど良く、1+1が2にならず、それ以上になる場合に用いると云う。今ではワインに限らず、ウィスキーや日本酒等でも使われている。例、「ウィスキーとおつまみのマリアージュ」。上記の文脈でないウィスキー用語としては、ブレンドした原酒を調和させるために一定期間寝かせることを指す。
バーボン用語としてあまり使われないこの言葉を当用語集で取り上げた理由はただ一つ。フォアローゼズ蒸留所が毎年リリースし、現在スモールバッチ・リミテッドエディションとして知られるシリーズの最初期の二年間だけこの名称が使われていたから。スタンダードなスモールバッチでは10レシピのうち4つのレシピ(OESK, OESO, OBSK, OBSO)を使用するが、リミテッドエディションのレシピはその都度若干違う。ファーストリリースとなる「Four Roses Mariage 2008」は13年熟成と10年熟成のブレンドで、レシピはその時点では公開されていないものの、おそらくはEとBのマッシュビルを「マリアージュ」したものと思われる。そしてセカンドリリースの「Four Roses Mariage 2009」は、イーストの種類は定かではないものの、35%ライのBマッシュビル10年熟成と20%ライのEマッシュビル19年熟成のバーボンが選ばれていると言う。この後の2010年以降のリリースから3〜4種のブレンドとなり「Mariage」の名称はなくなった。
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Maryland Rye─メリーランドライ
ライウィスキーはアメリカンウィスキーの元祖と考えられ、メリーランド州は近隣のペンシルヴェニア州と並びその産地として名高い。同州は禁酒法に先立つ19世紀の大部分に渡って、ペンシルヴェニア州とケンタッキー州に次ぐ存在感を示していた。南北戦争でメリーランドにやって来た外部人が、ワシントンDCを保護するために駐屯している間、このスタイルを嗜んだ何千人ものユニオン・ソルジャーズによって内戦中に有名になり、彼らが故郷へ戻るとメリーランド・ライの評判は北部の州全体に広まった。メリーランドはウィスキーをスコットランドにまで輸出していたと言う。クラシックなメリーランド・ライのブランドとしては、ハンター・ピュア・ライ、メルヴェール、B. P. R.、マウント・ヴァーノン、パイクスヴィル等が比較的有名。このスタイルのマッシュビルの基準について明確な規定はないものの、強くスパイシーなペンシルヴェニア・ライ(モノンガヒーラ)よりも甘くて柔らかく、滑らかでバランスの取れた味わいは、マッシュビルにコーンが多く含まれていたと見られている。メリーランド・ライのボトラーの中には、1906年のPure Food and Drug Actが終止符を打つまで、ライウィスキーにフルーツジュースや他の甘味料や着色料を加えて高度に「整流」するものも多かったらしい。
ご多分に漏れず、禁酒法により同地の蒸留所は衰退した。「高貴なる実験」が終わりを告げてもケンタッキー・バーボンのように復活しなかった原因の一つとして、メリーランド州の蒸留所の多くが都市部にあったから、と言われる。これらのプロパティは貴重な場所にあり、禁酒法期間中に不動産を売却する必要に迫られた。それでも再開された蒸留所の多くは、禁酒法以前に運営していた人物とは異なる人物に経営された。メリーランド州のウィスキーの評判ですぐにお金を稼ぐことに興味を持った人々によって。その多くは10年以内に失敗に終わったと言う。また、第二次世界大戦の折り、非常に多くの蒸留所が戦争のためのエタノール製造に切り替えたことも衰退の要因と考えられている。最後まで生き残ったパイクスヴィル・ブランドも1972年には生産終了。1982年にヘヴンヒルに売却されるまで既存のウィスキーストックで生き残ったものの、メリーランド産のライウィスキーは一旦その歴史に幕を下ろし、それ以降はケンタッキー産のメリーランド・スタイル・ライが生産された。
ところが近年、クラフト蒸留所の勃興や、新世代バーテンダーやミクソロジストからの支持によりライウィスキー人気が復活し、メリーランド・ライの名声が戻って来た。ボルチモアのサガモア・スピリットやリヨン・ディスティリングを筆頭に地元のクラフト蒸留所は活況を呈し、他地域からもフィラデルフィアのニュー・リバティ蒸留所やコロラド州デンバーのレオポルド・ブラザース社がメリーランド・ライの伝統を受け継いだ独自のヴァージョンを産み出している。再びメリーランド・ライの黄金時代を目の当たりに出来るかもしれない。

Mash─マッシュ
粉砕した穀物とお湯の混合物。粥に似てとろりとしている。マッシュポテトの「マッシュ」と同じ言葉で、一般的にはすり潰してどろどろにすること、またそうした物の意。

Mash Bill─マッシュビル
マッシュに含まれる穀物の配合比率を指す用語。例えば、コーン72%/ライ18%/モルテッドバーリー10%、のような感じ。レシピ、またグレインレシピとも言う。伝統的には上記3種の穀物がバーボンの殆どを占めるが、近年では4種の穀物を使った「フォーグレイン」や、アメリカンウィスキー製造ではマイナーだった穀物もマッシュビルに使用されるようになってきた。

Mash Tub─マッシュタブ
穀物を水と混ぜてマッシュを調理し、ファーメンターに移す前に、澱粉を単糖に分解する糖化作業に用いる大型の桶。「バスタブ(浴槽)」と言うときの「タブ」で、つまりマッシュ用の槽のこと。クッカーとも言う。「Cooker」の項を参照。

Mashing─マッシング
マッシュを調理するプロセスのこと。糖化作業。イーストを加えるファーメンテーションの前に、イーストが穀物の澱粉を利用できるように、先ず麦芽の分解酵素(アミラーゼ)を働かせ、澱粉を発酵可能な糖に分解する工程。原料のグレインを粉砕したものに麦芽と共に湯に混ぜ、加熱することで糖化が行われる。バーボンの糖化で使用する大麦麦芽は酵素力の強い六条大麦だと聞く。また麦芽だけの力に頼らず商用酵素剤と併用する場合もあるとか。
ミルで別々に挽かれた材料はクッカーにトウモロコシ、ライ麦、麦芽の順で3段階に分けて投入。それぞれの投入温度は概ね100℃、84℃、65℃とされる(加圧するかしないかで温度は変わる)。この時、仕込水と共にバックセット(スティレージ)を加え、マッシュを酵素の働きやすいpHに整えるのがサワーマッシュ製法。麦芽の酵素はpH5.4~5.6程度の酸性下でよく働くため、ライムストーンウォーターのようなpH7程度の中性水では酵素が働き難いことから、pH4前後のバックセットを加える事でマッシュを適度な酸性にする。サワーマッシュはマッシングとファーメンテーションどちらにも適用するのが一般的だと言う。

Master Distiller─マスターディスティラー
蒸留酒のレシピを決定したり、熟成具合や製品品質をチェックしたり、酵母の増殖を含む生産工程の全てを監督するトップの人。どのような製品が造られ、どのようなものが瓶の中に入るのかに関する最終的な権限を持っている。ブランド・アンバサダーとして製品を広める役割も担ったりする。

Master Taster─マスターテイスター
マスターディスティラーの助手として生産の監督をし、バレルの味見や、バッチングのためのバレル選択を助ける人。

Maturation─マチュレーション
熟成。エイジング。

Maturation Peak─マチュレーションピーク
熟成の頂点。マスターディスティラーが最高の熟成度と見極めるポイント。

MGP(MGPI)
「Midwest Grain Products」の略。「MGPI」の場合は「MGP of Indiana」もしくは「MGP Ingredients」の略。MGPはカンザス州アッチソンに本社を置く、蒸留酒および小麦プロテインと澱粉の大手サプライヤー。スピリットはインディアナ州ローレンスバーグにある同社の施設で蒸留され熟成している。ウィスキーやバーボン以外にジンやウォッカ、GNSや工業用アルコールも生産される。この蒸留施設の歴史は古く、そもそもは1847年創業のロスヴィル・ユニオン蒸留所に端を発する。1933年、シーグラムは蒸留所を禁酒法期間中に購入し、廃止後に再建した。以来、蒸留所はシーグラムス・ローレンスバーグ・プラントとしてシーグラム帝国の一翼を担い、シーグラムス・セヴン・クラウンやシーグラムス・ジン等の様々な製品の製造に使用されていた。シーグラム解体によって2000年に酒類部門はディアジオとペルノ・リカールに分けて売却され、ローレンスバーグ蒸留所とシーグラムス・ジンはペルノ・リカールの所有となった。ペルノ・リカールは施設を望んでいなかったため、2008年までに売却できなかった場合、工場は閉鎖されると2006年4月にアナウンスされたが、2007年にはトリニダード・トバゴを拠点とするCLフィナンシャル(アンゴスチュラの親会社)が購入した。その際に改称して「LDI(Lawrenceburg Distillers Indiana)」と呼ばれるようになったものの、CLフィナンシャルはその後崩壊し、2011年10月にMGPイングリディエンツが蒸留所を購入し現在に至る。MGPが蒸留所を取得した折りにボトリング施設は購入されず、ボトリング施設とパッケージング事業はプロキシモ・スピリッツが2012年にCLフィナンシャルから取得した。
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アメリカ国内でも屈指の歴史と生産能力を誇る蒸留所を有しながら、MGPはオリジナル・ブランドを殆ど持っていない。伝説のブートレッガーの名にちなむジョージ・リーマス・バーボン、蒸留所の創業当時の名を冠したロスヴィル・ユニオン・ライウィスキー、時のマスターディスティラー グレッグ・メッツが選択した限定バーボンなど数えるほどしかなく、彼らのウィスキービジネスの大部分は他の会社(NDP、ボトラー)への販売にある。 2013年4月、MGPは顧客のためにウィスキーのマッシュビルを追加し、インディアナ施設の製品提供範囲を拡大すると発表した。そうして現在では以下のような種類のウィスキーレシピがある。

Bourbon - 75% Corn / 21% Rye / 4% Barley Malt
Bourbon - 60% Corn / 36% Rye / 4% Barley Malt
Bourbon - 51% Corn / 45% Wheat/ 4% Barley Malt
Bourbon - 51% Corn / 49% Barley Malt
Bourbon - 99% Corn / 1% Barley Malt
Rye Whiskey - 95% Rye / 5% Barley Malt
Rye Whiskey - 51% Rye / 49% Barley Malt
Rye Whiskey - 51% Rye / 45% corn / 4% Barley Malt
Corn Whiskey - 81% Corn / 15% Rye / 4% Barley Malt
Wheat Whiskey - 95% Wheat / 5% Barley Malt
Malt Whiskey - 100% Barley Malt

この中で著しく人気があり、MGPの主要製品となっているのが95%ライ・マッシュのストレート・ライウィスキー。大手酒類会社からクラフト蒸留所までこぞって買い求め、独自のブレンドやフィルタリング、時には後熟などを施し、様々なブランド名の下にボトリングして販売されている。有名どころを挙げると、ブレット、ジョージ・ディッケル、エンジェルズ・エンヴィ、ジェームズ・E・ペッパー、リデンプション、スムーズ・アンブラー、ハイ・ウェスト、テンプルトンなど枚挙に暇がない。
この95%ライ/5%バーリーモルトのレシピは、元々セヴン・クラウンのようなブレンデッド・ウィスキーのフレイヴァー成分を意図して開発され、1990年代に当時のマスターディスティラー、ラリー・エバソルドによって造られた。当初は51%のライとコーンとモルトの標準的なライウィスキーを造ったと云う。しかし、もっとライ麦のフレイヴァーが欲しかったので、今度は80%のライと20%のモルテッドライのレシピで実験した。テイスター皆がその結果を気に入ったものの、モルテッドライは高価なため会社の会計士はいい顔をしなかった。そこで次に比率を95%ライとわずか5%モルテッドライに変更したが、それでもまだ高いと会計士は言い、結局ライモルトを標準的なバーリーモルトに取り替えることで、今日のレシピが出来上がる。そのレシピは豊かなスパイスとフルーティさに満ち、会社の上層部もとても気に入り、クラウンロイヤルや他のカナディアン・ウィスキーで使用するためにマニトバ州のギムリ蒸留所で造ることを決めた。しかし、インディアナ原産の菌株はより厳しいカナダの気候の中で一世代を超えて生き残ることができず、最終的にローレンバーグで造るようになった。約10年の間にシーグラムからペルノ・リカール、LDI、MGPと激動の変遷を重ねたが、アメリカンウィスキーに於けるライ人気復権の震源地はインディアナ州ローレンスバーグのプラントだったと言っても過言ではないだろう。

Micro Distillery─マイクロディスティラリー
法的定義のない言葉なので、イメージとして大規模な蒸留所の対極にある小規模生産の蒸留所のことと思っておいてよい。クラフト蒸留所とほぼ同義でも使われる。

Milling─ミリング
製粉。マッシングの前に原材料の穀物を砕く(挽く)工程。

Mingling─ミングリング
混ぜること。ブレンド、またはバッチングとほぼ同じ意味で使われるあまり一般的ではない言葉。

Mint Julep─ミントジュレップ
ケンタッキーバーボン、シロップもしくは砂糖、水または炭酸水、新鮮なミントの葉、クラッシュドアイスで作られるカクテルで、ケンタッキーダービーの公式飲料。

MM
「Maker’s Mark」の略。赤い封蝋が目印の小麦バーボン。
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Monongahela─モノンガヒーラ
かつてペンシルヴェニア州に多くあったライウィスキー蒸溜所がモノンガヒーラ川を水源としていたことから、ライウィスキーのことを単にモノンガヒーラと言い、最高のライウィスキーはモノンガヒーラ産だとして尊ばれていた。ライウィスキーの歴史はバーボンよりも古く、モノンガヒーラ・ライはアメリカ国内で幅広い認知度を獲得した最初のウィスキース​​タイルだった。モノンガヒーラ川はウェストバージニア州からピッツバーグへ流れ、アレゲーニー川と合流してオハイオ川となる。その名称はこの地方の原住民の言葉で「急峻な河岸」から取られたそうな。
研究家によればモノンガヒーラ・ライのスタイルには5つの歴史的因子があると云う。
①ロケーション
モノンガヒーラ川及びその支流からの水源と気候条件。
②グレイン
コーンはその地域で豊富な作物ではなく、モノンガヒーラ・ライの一般的なマッシュビルはライ麦と大麦の2種類しか含んでおらず、概ね4対1の割合だった。もしかすると一部の蒸留所では麦芽ライ麦を使ったかも知れない。
③スウィートマッシュ
サワーマッシュ発酵はペンシルヴェニア州の商業蒸留所に知られていたが、前回からのスペント・スティレージの一部を含めるのではなく、発酵ごとに新鮮な酵母のみを使用するスウィートマッシュが全般的に受け入れられていた。
④スリー・チェンバー・スティル
19世紀後半、この地域の蒸留所はスリー・チェンバー・スティルと呼ばれるポットスティルとコラムスティルの中間様式のハイブリッド・スティルを広く採用していた。それはポットスティルを垂直に3つ配置し、一部の動作に人の手はかかるが、半連続式蒸留器と言える構造だった。このスティルで蒸留されたスピリットは、コラムスティルに較べオイリーで重いボディだったと言う。
⑤熟成
この地域のほぼ全ての大きなウィスキー倉庫は石造りまたはレンガ造り、或いは両者の組み合わせで造られていた。寒い時期にはスチームによる温度制御を実践し、庫内は常夏に保たれた。この環境は絶えずウィスキーを樽の内部に押し込み、木との相互作用を増やす。自然のダイナミクスに委ねるケンタッキーの哲学と違い、ペンシルヴェニア州の蒸留所はより高価なプラクティスに固執した。甘くて美味しい赤色の樽熟成バージョン「Old Monongahela」に造り手と顧客は誇りを持っていたのだろう。
このスタイルのライウィスキーは禁酒法によってほぼ絶滅し、禁酒法解禁後もケンタッキー・バーボンのようには復活しなかった。しかし、現在アメリカでのライウィスキー人気は著しく、大手蒸留所もマイクロ蒸留所もこぞってライウィスキーをリリースし、その流れの中からモノンガヒーラ・スタイル再生の動きがある。ユタ州のハイウェスト蒸留所が造る「OMG(Old MononGahela) Pure Rye」や、フィラデルフィア近郊のマウンテン・ローレル・スピリッツの「Dad’s Hat Pennsylvania Rye」、ピッツバーグのウィグル・ウィスキーの「Organic Monongahela Rye」等は、オールド・モノンガヒーラのピュア・ライ・スタイルに敬意を表した代表例。またコロラド州デンバーのレオポルド・ブラザース社は、ヴェンドーム・カッパー・アンド・ブラスにスリー・チェンバー・スティルの製作を依頼したとも聞く。モノンガヒーラ・ライはTTBによって定義されたスタイルではないものの、アメリカンウィスキーの歴史の一時代を築いた。クラフト蒸留ムーヴメントの中で、アメリカンウィスキーの伝説再生は近いのかも知れない。

Moonshine─ムーンシャイン
密造酒。税金を払わず不法に生産された蒸留酒。違法な蒸留は夜陰に乗じて月明かりのもとで行われたことから。または昔の英国で月夜に紛れて船で運ばれたことからとも。概ねマッシュはコーンがメイン。ホワイトリカー、ホワイトライトニング、マウンテンデュー等とも言われる。現代のマーケティング用語としては違法な蒸留でなくても、それっぽい雰囲気のボトルやラベルで一般流通している未熟成(ないしはそれに準ずる僅かな熟成期間)の無色透明のコーンウィスキーを指してそう呼ばれる。

Moonshiner─ムーンシャイナー
密造酒の造り手。

MSRP
「Manufacturer's Suggested Retail Price」の略。メーカー希望小売価格のこと。Mなしで「SRP」とされることもある。

MWND
「A Midwinter Night's Dram(Mid Winter Night's Dram)」の略。ユタ州パークシティのハイウェスト蒸留所がリリースするランデヴー・ライのスペシャル・エディション。ストレート・ライ・ウィスキーのブレンドをポートワインとフレンチオークの樽で後熟したもの。配合率はシークレットながら、ソースはMGPのライ95%/バーリーモルト5%、ハイウエスト蒸留所のライ80%/モルテッドライ20%、 バートン蒸留所のライ53%/コーン37%/バーリーモルト10%とライ80%/コーン10%/バーリーモルト10%だとアナウンスされている(初期リリースの物はMGPとバートンのみ)。その名前はウィリアム・シェイクスピアの著作「真夏の夜の夢(A Midsummer Night's Dream)」をもじって名付けられ、それに準えてラベルも普通ならバッチナンバーやボトルナンバーのところが「Act」と「Scene」になっている。真冬の雪景色を見ながら飲んだり、クリスマスにお誂え向きのウィスキー。
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K

KBD
「Kentucky Bourbon Distillers」の略。1936年創業のウィレット蒸留所は、40年代にはオールドバーズタウン、60年代にはジョニードラムといった銘酒を産み出した名蒸留所だったが、70年代後半のエネルギー危機に際して、折からのバーボン需要低迷もあり、ガソホール燃料のための工業用エタノール製造へと同蒸留所を転換。投資家はそのような事業に投資しており、バーボンの蒸留よりも利益が上がると考えられていた。1981年から1983年まで蒸留所を 「Bardstown Fuel Alcohol Inc.」にリースしてエタノールを生産したが、禁輸措置が終わり燃料価格が落ち着くと、使い物にならない装置を残して会社は破産の憂き目にあった。
1972年にウィレット家の娘マーサと結婚していたノルウェージャンのエヴァン・クルスヴィーンは、1984年7月1日、義父のトンプソン・ウィレットから同社と不動産を購入し、蒸留所登録番号DSP-KY-78のケンタッキー・バーボン・ディスティラーズへと改称した。しばらくは蒸留を停止する前の旧ウィレット蒸留所産のバーボンをボトリングし販売していたが、在庫がなくなる前に他の蒸留所からバーボンやライウイスキーを購入しウェアハウスを補充するようになった。その大部分はヘヴンヒル蒸留所から購入していると目されるが、一部の銘柄ではスティッツェル=ウェラー蒸留所やバーンハイム蒸留所産のバーボンとされる物もあり、他にも大手のジムビーム蒸留所やフォアローゼス蒸留所のブランド的にはオフ・フレイヴァーとなった原酒も購入しているらしい。或るバーボンマニアのブログによれば、メーカーズマーク以外の原酒は取り揃っている、との話もある。そして、そういった原酒とブレンド技術を駆使してオリジナル製品のノアーズミル、ローワンズクリーク、ピュアケンタッキーXO、ケンタッキーヴィンテージなどのスモールバッチバーボンをリリースする一方、他社の契約ボトラーとしても活動し、初期のミクターズやジェファーソンズ、オールドポーグやコーナークリーク等をボトリングしていた。またブローカー的な役目も果たし、日本市場限定となるプレミアム製品も数多く手掛けた。それらの中ではヴェリーオールドセントニックやレアパーフェクション等が名高い。
こうした自ら蒸留を行わないNDPとしての活動が実り、数年を要した改装の末、2012年に約30年ぶりとなる蒸留を再開した。ちなみにKBD以外にプレミアム・ブランズLTDという名称もあった。登録上別会社なのかも知れないが私には詳細は判らない。会社の設立年は1983年とされている。

KC
「Knob Creek」の略。ジムビーム社が展開するスモールバッチバーボンコレクションの一つ。禁酒法時代にルーツをもつラベルとボトルデザインは秀逸。ライやシングルバレル、いくつかのアニヴァーサリーモデルもあり、アメリカ本国ではストアピックが人気。
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Kentucky Chew─ケンタッキーチュウ
そのコンセプトはビーム家第6代の故ブッカー・ノー氏によって考案され、7代目のフレッド・ノーが勧めているテイスティング方法。バーボンを口の中全体に行き渡らせ、少しくちゅくちゅして飲み込んだ後、ガムを噛むように「チャッ、チャッ、チャッ、チャッ」と音をたてて味わうこと。こうすることでバーボンの複雑な味を全て味わうことが出来ると云う。

◆Kentucky Hug─ケンタッキーハグ
バーボンを飲み込んだ後に食道や上半身に感じる暖かさを指す言葉。ケンタッキー・チュウと同じくブッカー・ノーからの用語と見られる。

KSBW
「Kentucky Straight Bourbon Whiskey」の略。ケンタッキー州で造られたストレート規格のバーボン。


L

L’Burg
「Lawrenceburg」の略。ワイルドターキーやフォアローゼスの蒸留所があるケンタッキー州ローレンスバーグのこと。またインディアナ州にも同名のローレンスバーグがあり、こちらはMGP(LDI)で有名。

LDI
「Lawrenceburg Distillers Indiana」の略。現在MGP(もしくはMGPI)と呼ばれるプラントの旧名。元シーグラムのメインプラントで、シーグラム解体後、様々なブランドや資産は他の企業によって取得され、ローレンスバーグ蒸留所はペルノ・リカールの所有となった。2006年には蒸留所を閉鎖するとアナウンスされたものの、2007年にトリニダード・トバゴを拠点とするCLフィナンシャル(アンゴスチュラの親会社)が購入し、その際に改称してLDIと呼ばれるようになった。CLフィナンシャルはその後崩壊し、2011年10月にMGPイングリディエンツが蒸留所を購入、それ以後はMGPとして知られるようになった。

LE
「Limited Edition」の略。限定版、つまり数に限りがあるか、継続的なリリースではないため、レアウィスキーであることを含意する。

Leaching(Charcoal Leaching)─リーチング(チャコールリーチング)
濾すこと、濾過、浸すこと、浸出を意味する言葉。テネシーウィスキーの特徴となる熟成前の原酒をサトウカエデの炭で濾過する工程。リンカーン・カウンティ・プロセス、チャコール・メロウイングとも言う。それらの項を参照。

Limestone Water─ライムストーンウォーター
バーボンを語る際かなり頻繁に耳にする用語だが、より一般的に言うと所謂「硬水」。ライムストーンは石灰岩のことで、ケンタッキー州やその周辺の州の地盤は石灰岩層があり、そこを地下水が通って湧き上がる水は、カルシウムやマグネシウムのようなミネラル含有率が高く、発酵を促進する高いpHを有し、なおかつ酒に悪い味を与え色を黒くする不純物の鉄分を濾過する。それ故、バーボン造りに欠かせない、と言われることが多いが、バーボンの製造に使わなければならないという規則はない。また、ライムストーンウォーターを使えるなら使うに越したことはないが、それは最終的なフレイヴァーの一部ではあっても不可欠の要素ではない、とされる。聞くところによると、現代では地下水が汚染され、多くの蒸留所では都市の水道水や川の水に依存し、独自にカーボンフィルターをかけたり逆浸透水を使い、ライムストーンウォーターのみを使うのは一部のメーカーだけだと言う。

Lincoln County Process─リンカーンカウンティプロセス
テネシーウィスキー特有のプロセスで、樽熟成する前のニューメイク(ホワイトドッグ)をシュガーメイプルの炭を敷き詰めた桶で濾過すること。チャコールメロウイングとも知られる。2013年のテネシー州法はそのアイデンティティをさらに洗練させ、テネシーウィスキーを名乗るには熟成前にシュガーメイプルの炭を通さなければならない、とした。
リンカーン・カウンティ・プロセスという用語は、その製法自体は古くからあるものの比較的新しい造語で、1950年代あたりから使われ出したらしい(それまでは単にリーチングまたはチャコール・リーチングと呼ばれていた)。そもそもリンカーン・カウンティ・ウィスキーという言い方が先にあり、そこから派生した言葉と見られる。かつてのリンカーン郡は現在よりも大きく、ジャック・ダニエル蒸留所のあるリンチバーグが含まれていた。今日ジャック・ダニエル蒸留所があるムーア郡は、リンカーンと他の3つの郡の一部から再編され1871年に設立された。1830年代初頭からテネシー州リンカーン郡はアメリカで最も生産的なコーン栽培地区として知られ、その素晴らしいコーンの評判はウイスキーに結び付き、モノンガヒーラ・ライのように、リンカーン郡の名称を用いることはセールスポイントだった。1866年には、蒸留所やブローカーは新聞に「リンカーン・カウンティ・ウィスキー」という広告を掲載し始め、テネシー州の他のウィスキーやケンタッキーバーボン等との差別化を図った。1900年代初頭のジャックダニエルズのラベルには「Jack Daniel’s Pure Lincoln County Corn Whiskey」と記載があると言う。
その製法の創始者や起源には諸説あり、アルフレッド・イートンが1825年頃にサトウカエデの木炭濾過を独自に開発し、後にジャック・ダニエルに教えたとか売ったという説や、少年ジャック・ダニエルを雇ったダン・コールが発案したという説、または黒人奴隷たちが自分たちの飲む酒をこっそりと造るときに行っていた方法に由来しているという説もあれば、アメリカ北東部からの流れ、ひいてはヨーロッパにその源流を求める推察もある。つまりバーボンの創始者と同様に明確な資料がなく、誰がいつ始めたというはっきりした回答はない。しかしその来歴や効能についてはある程度の定見がある。
1800年代前半は殆どのウィスキーはバレルエイジングされていなかった。そのため蒸留されたてのウイスキーから粗いエッジを取り除くのにシュガーメイプルやヒッコリーの木炭で濾過することは、ケンタッキーやテネシー州だけでなく、他の場所でも多くの蒸留所で行われていたと言う。ところがリンカーン郡の蒸留所は、これを極端に行った。炭を敷き詰めた高さ10フィート(約3メートル)以上の桶で。それがリンカーン・カウンティ・プロセスが生まれた経緯であると考えられている。比較的長い時間をかけて原酒を炭に浸出させる行為は、手早く炭で濾しただけのフィルタリングに較べ、ある種の熟成プロセスの飛躍として機能した。樽熟成中に自然とバレル内側の炭化層によって除去される(または化学変化する)望ましくないコンジェナース(フーゼル油など)の一部を、蒸留直後にチャコール・リーチングで取り除き、アンエイジドウィスキーに円やかさとライトなボディを与える。それこそがリンカーン・カウンティ・ウィスキーの評判を高めた要諦だった。後にテネシーウィスキーも樽熟成を行うようになったが、熟成前のメロウイングはその特徴として残されたのだろう。

Lot─ロット
本質的に同じ条件で均一な品質を保持することを意図して製造された製品の生産上や出荷上の単位。主に製造業で使われる言葉で、その職種やその企業によって微妙に意味合いが異なり、バッチとほぼ同じ意味で使われることもあれば、違う概念として使われることもある。「ロット管理」と言うと比較的分かりやすく、商品や製品の仕入れから販売ないし出荷までを製品単位ごとに管理する方法で、簡便的な在庫管理の手法。単位ごとに「ロット番号」を付与して管理する。

Lot B
 「Van Winkle Special Reserve 12 Years Lot B」の略。ヴァン・ウィンクルの製品としては比較的買い易く、昔はそれほどレアな製品ではなかったが、パピー人気につられて入手が困難となり、日本ではすっかり見かけなくなった。バッファロートレースの小麦レシピで造られている。
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L’Ville
「Louisville」の略。多くの蒸留会社が集うバーボンの中心地であり、ケンタッキー州最大の商業都市。ルイビルのダウンタウン、メインストリートは主にオハイオ川沿岸に隣接していたため、多数の企業のオフィス、倉庫、整流施設が密集し、19世紀のケンタッキーウィスキー産業全盛期に「ウィスキーロウ」と呼ばれ、今でも観光スポットとしてバーボン好きには見逃せない。

Low Rye Mash Bill─ロウライマッシュビル
バーボンのマッシュビルで、ライ麦の配合率が低いものを指す用語。明確な規定がある訳ではないが、概ねライ麦が10%もしくは以下ならロウ、15%ならミドル、18%以上ならハイと思っておいていいだろう。

Low Wine─ロウワイン
第一蒸留で出来上がる液体の呼称。概ね25〜35%のabvだと言う。これが第二蒸留へ向かう。

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H

HAZMAT─ハズマット
「hazardous material」の略語で危険物の意。バーボンオタクの間では140プルーフ(70度)以上のウィスキーのことを指す。飛行機に持ち込んではいけない。バーボンではジョージTスタッグやエライジャクレイグバレルプルーフなどの一部がそれに当たる。

Heads─ヘッズ
ダブラーまたはサンパーから出て来る蒸留液(ハイ・ワイン)の最初の部分。このスピリットは不純物が多く、再蒸留のためにスティルに送り返される。

HH
「Heaven Hill」の略。ヘヴンヒル蒸留所、ま
たはその名を冠したバーボン。昔は長期熟成を含む色々な熟成年数のものがあったが、近年ではヴァリエーションは少なく、同社のメインブランドはエヴァン・ウィリアムスとエライジャ・クレイグに絞られた感がある。ヘヴンヒル・セレクトストック(Heaven Hill Select Stock)は「HHSS」と略す。 
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High Rye Mash Bill─ハイライマッシュビル
バーボンのマッシュビルで、ライ麦の配合率が多いものを指す用語。明確な規定がある訳ではないが、概ねライ麦が10%ならロウ、15%ならミドル、18%以上ならハイと思っておいていいだろう。

High Wines─ハイワイン
第二蒸留(ダブラーやサンパー)によって生成されるスピリット。

Highball─ハイボール
バーボンなどを炭酸水で割った飲料。

Honey Barrel─ハニーバレル
熟成において特に出来の良い樽(及び中身)のこと。シュガーバレルとも言う。

Horizontal Tasting─ホリゾンタルテイスティング
水平方向に選び出されたボトル群による試飲方法。テイスティングを行う際に選抜する銘柄を、例えば同じ価格帯に属するが、異なる蒸留所の物を各一本づつ揃えるようなやり方のこと。例……ジムビームブラック、メーカーズマーク、フォアローゼスブラック、ワイルドターキー、ジャックダニエルズ等。或いは価格帯は違っても、熟成年数のみを共通項にして、異なる蒸留所の物(またはブランド)を選ぶとかも考えられる。例……エライジャクレイグ12年、エヴァンウィリアムス12年、ワイルドターキー12年、ウェラー12年、ヴァンウィンクル12年ロットB、ジムビームシグネイチャークラフト12年など。または蒸留所は同じでも原料の違いに焦点を合わせて、スタンダード・バーボン・マッシュビル、ウィーテッド、ライウィスキー、コーンウィスキー、ウィートウィスキーを各一本づつ揃えるとか。例……エヴァンウィリアムス、ラーセニー、リッテンハウスライ、メロウコーン、バーンハイムオリジナル等。要するに垂直方向でなければ何でもあり。

HW
「High West」の略。2007年、ユタ州パークシティに設立されたクラフトディスティラリー、またそのウイスキーに付けられた名前。禁酒法解禁以来、ユタで最初の蒸留所。多くのマイクロディスティラリーと同じく、設立当初はソーシングウィスキーを使用して自らのウィスキーを造ったが、他の多くのマイクロディスティラリーと違い、供給源を明らかにする姿勢は消費者から好感を得た。他所から得た原酒(MGPやバートン、フォアローゼス等)を使うにせよ、自家蒸留酒を使うにせよ、そのブレンド技術には定評がある。またアメリカンプレイリーやキャプファイヤー、ランデブーライにダブルライなど独創的な世界観を体現するラベルデザインやネーミングセンスはブランディングの巧みさも物語っているだろう。
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Hybrid Still─ハイブリッドスティル
ポットスティルとコラムスティルのどちらでも実行できる現代的なスティルデザイン。ポットの上方にそのままフルートのような見た目のコラムが付いたものや、ポットの横に小さめのコラムが設置されたもの等がある。クラフトディスティラリーのような比較的小規模な蒸留所でよく使われ、ウィスキー以外にウォッカやジン等も作る場合に利便性が高いのだとか。


I

In the Wild─インザワイルド
酒屋の棚にある状態、またはメーカー希望小売価格に近い価格で酒屋の棚に置かれている状況を指すスラング。リミテッド・リリースや割り当て配給のレアなウィスキーは、上客のために取って置かれたり、抽選会に使われたりするため、レジの後ろや奥に隠されて店頭に並ばないことが多くのでこう言われる。野生の状態、つまり小賢しい人間の手が掛かってない状態を譬えているものと思われる。
例「OMG I can’t believe I found a PVW20 "in the wild."」。

Infinity Bottle─インフィニティボトル
フラクショナル・ボトル、ソレラ・ボトル、リヴィング・ボトルとも言われ、現在飲んでいるバーボン(やウィスキー)が残り僅かになった段階で、何かしら飲み終えた空き瓶や用意したデカンター等にそれを移し、また何度もそれを繰り返し、永久になくならない自家製ブレンドを造ること。そして追加する度に変化する風味プロファイルを自ら楽しみ、家族や友人に提供して共に楽しむウィスキーオタクの娯楽。
方法論としては、ウィスキーのカテゴリーを同一にする場合と、カテゴリーを越境する場合とがある。前者はバーボンならバーボンのみをブレンドし、後者はスコッチにバーボンとジャパニーズをブレンドするようなことを指す。概ね前者の方が風味の統一感を取りやすく無難に仕上がる。

IWH
「I. W. Harper」の略。大変歴史のあるブランドで、1879年にアイザックとバーナードのバーンハイム兄弟によって立ち上げられた。ブランド名は兄のIssac Wolfeの頭文字から。アイザックはユダヤ系ドイツ人である自分の本当のラストネームを使用することを躊躇い、代わりに安全なアングロサクソン風のHarperを用いたと言われる。兄弟は退職時に会社を売却し、禁酒法解禁後の1937年からはシェンリーの傘下となり、長らくトップセリングバーボンの座にあった。その後1987年には、今日ディアジオとして知られる巨大酒類企業を形成するギネス(ユナイテッド・ディスティラーズ社)に買収され、グレーマーケットの問題から90年代半ばには輸出専用の製品となり、約20年間に渡ってアメリカでは販売を停止されていたが、2015年久方ぶりに本国復帰を果たした。
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アイザック・ウォルフ・バーンハイム氏


J

JB
「Jim Beam」の略。世界一売れてるケンタッキーストレートバーボンウィスキー。
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ビーム家7世代

JD
「Jack Daniels」の略。世界一有名なテネシーウィスキー。
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ジャスパー・ニュートン・ダニエル氏

Jigger─ジガー
1.5オンス(約45ml)の容量。またカクテル用の計量器。

JPS
「Jefferson’s Presidential Select」の略。キャッスルブランズが販売するジェファーソンズバーボンの中でも長期熟成酒を使用したより上位のシリーズ。初期リリースのものにはスティツェル=ウェラーの原酒が使われた17年や18年物があり有名。蒸留された蒸留所が非公開の25年や30年といった超長期熟成古酒のリリースもある。
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【E】

EC
「Elijah Craig」の略。エヴァンウィリアムスと並ぶヘヴンヒル蒸留所のツートップの一角。両者はともにバーボンの始祖と言われる人物の名を冠している。2013年秋からバレルプルーフも発売された。そちらは「ECBP」と略される。
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エライジャ・クレイグ牧師、Wikipediaより

EHT
「E.H. Taylor」の略。バッファロートレース蒸留所で造られるプレミアムラインのバーボンのこと。エドモンド・ヘインズ・テイラー・ジュニアは、同蒸留所の礎を築いたのみならず業界全体への影響力も有した「現代バーボン産業の父」と称される偉人。カーネル(colonel)を省かず「CEHT」と略されることもある。
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Enzymes─エンザイムス
酵素。ウィスキー製造の行程で、穀物に含まれる澱粉質を糖に転換することを糖化(マッシング)と言い、その際に重要な役割を果たす触媒。発芽した大麦には酵素が豊富なためアルコール造りに欠かせない。
殆どのバーボンのマッシュビルには、概ね5〜15%程度のモルテッドバーリー(麦芽大麦)が含まれているが、これはビスケッティなフレーヴァーを与える以上に、酵素を提供するのが主な役割とされる。現代の主要なバーボン生産者はマッシュビルに酵素を加え、行程を能率化しているらしい。希に見られる100%ライ麦や100%小麦ウィスキーなどは、おそらく業務用酵素を使用していると思われる。スコットランドでは使用が禁止されているが、アメリカでは禁止されていない。業務用酵素の導入により、麦芽を含まないマッシュビルからもウィスキーを作ることが出来、麦芽を含むマッシュからもより良い転化率を得ることが出来るという(つまり、より多くの澱粉をより多くの糖に変えてより多くのアルコール収率を得る)。逆に、殆どの蒸留所では業務用酵素を使用せず、大麦麦芽のみであるという説もある。ここら辺の裏事情は殆どの蒸留所が公開していないため、素人には判らない。

ER
「Eagle Rare」の略。バッファロートレース蒸留所のロウ・ライ・マッシュビル・バーボン。元々はシーグラムが発売したブランド。
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ET
「Early Times」の略。ブラウン=フォーマン社の所有するブランドで、アメリカ本国より海外市場で人気が高い。特に日本おいては抜群の知名度と人気を誇る。
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ETL
「Elmer T. Lee」の略。バッファロートレース蒸留所のハイ・ライ・マッシュビルを使ったバーボンのこと。同社に長年勤務し、シングルバレルバーボンの魁となったブラントンを商品化した伝説の職人の名。バーボンのブランドにその名を刻める数少ない人物の一人。
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Evaporation Loss─エヴァポレーションロス
蒸発により失われた酒量。「Angel's Shere」を参照。

EW
「Evan Williams」の略。ヘヴンヒル社の旗艦ブランドだけあって様々なヴァリエーションがある。ラベルの色で言うと、黒がスタンダードで、緑は黒より格下、白と赤は黒より格上。スモールバッチとシングルバレルもあり、他にもリミテッドリリースのデカンターやジャグ、長期熟成の23年などがある。
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F

FC
「Fighting Cock」の略。ヘヴンヒル蒸留所で造られる闘鶏がモチーフのバーボン。103プルーフでありながら比較的安価なのが魅力。
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Fermentation─ファーメンテーション
発酵。マッシュをビアに変える行程。約25〜30℃に冷ましたマッシュを酵母と共に発酵槽に入れると、酵母は糖分をアルコールと二酸化炭素に変換し、同時に熱を発生させる。発酵には数日を要し、発酵完了後には約8〜9.5%のアルコールを含む液体が出来る。これをビアまたはディスティラーズビアと呼ぶ。

Fermenter─ファーメンター
発酵槽。発酵を行うための金属や木製の巨大な桶。ステンレスは清掃のしやすさと衛生面に優れるとされ、サイプレス(イトスギ)は乳酸菌の増殖に適し最終的なフレイヴァーに好影響を与えるとされる。また、どちらでも最終的にはそれほど変わらない、という説もあった。蒸溜所によっては両方備える場合もある。酵母は熱に弱いため槽内には水冷装置が付いているという。

Filling─フィリング
バレルにバーボンを充填すること。

Finish─フィニッシュ
①テイスティング用語で余韻のこと。「余韻/アフター/フィニッシュ」は同じ事を指している。
②一旦出来上がったバーボンを他の樽で「仕上げ」ること。後熟やダブル・マチュアードと見做してもいいかも知れない。ポートワイン樽で仕上げたポート・フィニッシュや、シェリー樽で仕上げたシェリー・カスク・フィニッシュ、トーストしたバレルで仕上げたトーステッド・バレル・フィニッシュなどが代表例。

Five─ファイブ
埼玉県大宮にあるバー。震災で多くの希少なバーボンを失ったものの、オールドボトルの品揃えはまだまだ関東屈指。LINEスタンプまである強面マスターの手作り餃子や、若いお兄さんの作るオリジナル料理など、バーボン云々は抜きにしてもバーの魅力に溢れている。

Flavor Grain─フレイヴァーグレイン
バーボンのマッシュビルの中でフレイヴァーを担う穀物のこと。概ねライかウィート。伝統的なバーボンの原材料は3つの穀物から構成される。まずベースとなるコーン、酵素を提供する役割のモルテッド・バーリー、そして残るもう一つの穀物がフレイヴァーのキャラクターを大きく左右するのでこう呼ばれる。他の穀物がフレイヴァーに寄与しないという意味ではない。配合比率で言うと2番目に高いことからセカンドグレイン、セカンダリーグレインとも言う。

For Medicinal Purposes Only─フォーメディシナルパーパセズオンリー
医薬目的のためだけに、の意。禁酒法時代に医師の処方箋があれば購入できた薬用ウィスキーのラベルや箱には大概この文句が書かれていた。または「For Medicinal Use Only」とも。

FR
「Four Roses」の略。または「4R」と略される。イエローラベルは「FRYL」、シングルバレルは「FRSB」または「FRSiB」、スモールバッチなら「FRSmB」のように略す。
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F’Fort
「Frankfort」の略。バッファロートレース蒸留所などかあるケンタッキー州フランクフォートのこと。


G

GD
「George Dickel」の略。ディアジオが所有するテネシーウィスキーのブランド。コーン比率が多いのと、チャコール・メローイングの際に原酒を冷却する製法で有名。
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ジョージ・アダム・ディッケル氏

Gemor─ゲモー
愛知県豊橋にあるプレミアムバーボン専門のバー。日本のバーボンマニアの聖地の一つであり、海外のバーボンマニアにも評価が高く、惑星一のバーと謳われる。特にオールド・フィッツジェラルドやスティツェル=ウェラーの小麦バーボン、ヴァン・ウィンクルやウィレット蒸留所のプレミアム製品の品揃えは圧巻。我々をバーボン狂人の世界へ誘う天国への階段。

GJ
「Gentleman Jack」の略。ジャックダニエルズOld No.7のアップグレード・ヴァージョンで、チャコール・メロウイングを樽入れの前と瓶詰めの前に二回行うことで、よりシルキーなタッチの口触りにした製品。
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GNS
「Grain Neutral Spirits」の略。「グレインニュートラルスピリッツ」の項を参照。

Grain─グレイン
トウモロコシ、ライ麦、小麦、大麦などの穀物の総称。日本語では「グレーン」と表記されることも多い。

Grain Neutral Spirits─グレインニュートラルスピリッツ
穀物を原料にして190プルーフ(95度)以上で蒸留された無色透明の顕著なアロマやフレーバーまたはキャラクターを含まないアルコール。「ニュートラル・グレイン・スピリッツ(NGS)」、「ピュア・グレイン・アルコール(PGA)」、また単に「中性スピリッツ」とも呼ばれるが、アメリカンウィスキー界ではGNSが最も一般的に使われる。ニュートラルという語は、より低いプルーフで蒸留された場合に存在するマッシュ由来の風味がないことを含意する。イメージしづらければ、ウォッカまたはボタニカルで香り付けしてないジンを想像すると分かり易い。

GTS
「George T. Stagg」の略。バッファロートレース蒸留所が限定リリースするアンティークコレクションの中でも筆頭と言える存在のブランド。2002年から発売された。長期熟成かつノンフィルターで、時に70度を越えるアルコール度数はモンスターとか巨人と評される。その名はバッファロートレース蒸留所の礎を築いた過去の偉人の一人から。
1835年にケンタッキー州ギャラード郡で生まれたジョージ・T・スタッグは、その名を冠したバーボンがあるにも拘わらず、傑出したディスティラーでもバーボンのイノベーターでもなく、代わりに素晴らしいセールスマンと管理者として知られる。つまりバーボンの製造知識より、ビジネスの洞察力に優れた人物だった。南北戦争でのなかなかの活躍の後、30代のスタッグはミズーリ州セントルイスでウィスキーセールスマンとして頭角を現し、ウィスキーリング暴露の告発者の一人として名声を得た。1878年には、エドモンド・ヘインズ・テイラー・ジュニアが最新設備に改築したオールド・ファイヤー・カッパー蒸留所とその隣のカーライル蒸留所を購入し、後に喧嘩別れしたものの暫くは共同で切り盛りした。死後の1904年にはジョージ・T・スタッグ蒸留所と再命名され、1999年にバッファロートレース蒸留所とリニューアルされるまでの約1世紀に渡りその名は残っていたという。
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ジョージ・T・スタッグ、バッファロートレース蒸留所公式ホームページより


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【D】

Destiny─デスティニー
神奈川県上大岡にあるショットバー。知識の豊富なマスターと、禁酒法時代の物を含むレアバーボンが迎えてくれる日本で十指に入る名店。

Distillation(Distilled, Distilling)─ディスティレーション(ディスティルド、ディスティリング)
蒸留。酒における蒸留は、水とアルコールの沸点の違いを利用して、原料を発酵させた低アルコールの液体(醪=モロミ)を加熱し、出来た蒸気を冷やして再度液体に戻すことで、より濃度の高いアルコールを回収するのが基本的な仕組み。バーボンでは概ねビアスティル(コンティニュアス・スティル)で第一蒸留を行い、ダブラーもしくはサンパーで第二蒸留を行う。

Distiller─ディスティラー
蒸留する人。または蒸留を生業とする業者。

Distillers Beer─ディスティラーズビア
または単に「Beer」とも言う。ビアの項を参照。

Distillery─ディスティラリー
蒸留所。蒸留酒を製造する工場、施設。

Donut─ドーナツ
90年代後半に発売されたスペシャルリリースのワイルドターキー・ケンタッキー・レジェンド・バレルプルーフのこと。その独特のボトル形状から愛好家にそう呼ばれる。
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Doubler─ダブラー
第二蒸留に用いられるポットスティルの一種。見た目は大きな銅釜だったり、味気ないタンクのようだったりする。アルコールを更に濃縮し、不純物を除去して、スピリッツに磨きをかける役割をもつ。ロウワインが入りハイワインが出てくる。一説には銅の使われていないコラムスティルはどこかで銅の触媒を必要とするため、銅製のダブラーがその効果を担うとされる。

Drain pour─ドレインポア
飲めないほど不味いウィスキーのこと。グラスや人間の口に注ぐよりも、キッチンの排水管に流してしまいたい、或いは実際に流してしまうことから。

Dram─ドラム
スコットランドの伝統でグラス一杯のウィスキーを指す言葉だったが、今ではバーボンでも使われる。

Dry County─ドライカウンティ
アメリカ合衆国では州の下の行政単位を郡(カウンティ)と言い、ドライは「乾いた=酒のない状態」を表す。つまりドライカウンティとは、地方行政当局が酒類販売を禁止もしくは制約している郡のこと。禁酒郡と訳される。反対に酒の販売を規制してない郡を「ウェット・カウンティ」と言い、その中間として一部では酒の販売が認められているような郡を「モイスト・カウンティ」と言う。下はWikipediaから引用。
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赤がドライ、青がウェット、黄がモイストを示す。

DSP(D.S.P. Number)
「Distilled Spirits Producer」または「Plant」の略。蒸留酒を製造する者は政府から認可を得なければならないが、その際に番号が付与される。「DSP-KY-○○○」のように書かれ、DSPの次に州の略がきて、その後ろに数字がくる。参考資料として以下に代表的なものをリストアップしてみるが、ネットで集めた情報なのと私の知識不足で完璧性は期待できない。

Kentucky
DSP-KY-1 Heaven Hill Bernheim, A.K.A. New Bernheim, Louisville
DSP-KY-2 Bernheim, J.G. Mattingly, Louisville
DSP-KY-3 Seagram, Louisville?
DSP-KY-4 Hermitage, Frankfort
DSP-KY-5 James E. Pepper Distillery, Lexington
DSP-KY-7 Early Times Distillery Co, Paducah
DSP-KY-8 Four Roses, Lawrenceburg
DSP-KY-9 Bernheim, Louisville
DSP-KY-10 Medley, Owensboro
DSP-KY-11 Boone Bros, Bardstown
DSP-KY-12 Barton(Tom Moore), Bardstown
DSP-KY-14 Old Grand-Dad, Frankfort
DSP-KY-15 C.L. Applegate, Bardstown
DSP-KY-16 Stitzel-Weller Shively/Louisville(Diageo)
DSP-KY-17 M.V. Monarch, Owensboro
DSP-KY-18 Rock Springs Distilling(Defunct), Owensboro
DSP-KY-18 Castle & Key, Frankfort
DSP-KY-19 Old Taylor(defunct), Frankfort
DSP-KY-20 Seagram, Athertonville
DSP-KY-24 Glenmore, Owensboro
DSP-KY-25 Old Crow, Frankfort
DSP-KY-31 Heaven Hill Distillery(Bottling Facility), Bardstown
DSP-KY-34 Mellwood, Louisville
DSP-KY-35 Old Joe, Lawrenceburg
DSP-KY-37 J. Kessler, Louisville
DSP-KY-39 J.P. Dant, Louisville
DSP-KY-43 Willett, Bardstown
DSP-KY-44 Maker's Mark, Loretto
DSP-KY-45 Kentucky River, Camp Nelson
DSP-KY-47 Orene Parker, Gethsemane
DSP-KY-49 Medley, Owensboro
DSP-KY-50 Peerless, Louisville (Formerly Henderson)
DSP-KY-52 Woodford Reserve, Versailles
DSP-KY-53 Old Taylor(Stone Castle), Frankfort
DSP-KY-62 Four Roses, Cox’s Creek
DSP-KY-63 John B. Thompson, Harrodsburg
DSP-KY-67 Wild Turkey, Lawrenceburg
DSP-KY-71 Wild Turkey, Lawrenceburg
DSP-KY-78 Kentucky Bourbon Distillers, Willett, Bardstown
DSP-KY-97 Anderson Distilling, Newport
DSP-KY-106 W.A. Gaines, Frankfort
DSP-KY-112 Old Commonwealth, Lawrenceburg
DSP-KY-113 Buffalo Trace, Frankfort
DSP-KY-145 T.W. Samuels, Deatsville
DSP-KY-230 Jim Beam, Clermont
DSP-KY-240 Taylor & Williams, Gethsemane
DSP-KY-354 Early Times, Brown-Foreman, Shively
DSP-KY-368 American Medicinal Spirits, Louisville
DSP-KY-414 Brown-Forman, Louisville
DSP-KY-418 T. B. Ripy, Lawrenceburg
DSP-KY-422 Old Boone, Bardstown
DSP-KY-15004 Alltech’s Lexington Distilling Co, Town Branch, Lexington
DSP-KY-15005 Barrel House Distilling Company, Lexington
DSP-KY-15006 Corsair, Bowling Green
DSP-KY-15007 Strong Spirits, Bardstown
DSP-KY-15010 MB Roland, Pembroke
DSP-KY-15012 Old Pogue, Maysville
DSP-KY-15014 Limestone Branch, Lebanon
DSP-KY-20003 Michter's, Shively/Louisville
DSP-KY-20005 Wilderness Trail, Danville
DSP-KY-20014 Copper & Kings, Butchertown, Louisville
DSP-KY-20016 New Riff Distilling, Newport
DSP-KY-20022 Angel's Envy(Louisville Distilling Co.), Louisville
DSP-KY-20026 Bulleit, Shelbyville
DSP-KY-20044 Lux Row, Bardstown

Indiana
DSP-IN-31 Starlight Distillery, Huber’s, Borden
DSP-IN-15016 MGP Ingrediants, Lawrenceburg

Illinois
DSP-IL-15005 Koval Distillery, Chicago
DSP-IL-15018 FEW Spirits, Evanston

Ohio
DSP-OH-20028 Cleveland Distillery, Cleveland

Tennessee
DSP-TN-4 Jack Daniel Distillery, Lynchburg
DSP-TN-2 Cascade Hollow(Dickel), Tullahoma
DSP-TN-5 Nelson's Green Brier Distillery, Nashville
DSP-TN-15006 Corsair, Nashville

Virginia
DSP-VA-25 A. Smith Bowman, Fredricksburg
DSP-VA-1797 George Washington Mt. Vernon historical

Dump(Dumping, Dumped)─ダンプ(ダンピング、ダンプト)
樽から中身を放出すること。樽出し。

Dusty(Dusties)─ダスティ(ダスティーズ)
日本で言うところのオールドボトルとほぼ同じ概念。ダスト(埃や塵)から由来した言葉で、例えば酒屋で長期間売れ残ったボトルや、地下室に眠っていたお祖父ちゃんのお酒などが「出土」すると、ボトルには埃が積もっていることから。
日本でも何をもってオールドボトルと言うか明瞭な基準がないように、海外でも何をもってダスティと言うかは使用者の感覚に依存するため明確な定義は出来ないが、一定の見解やイメージは存在する。それは概ね次の三つ。一つには原義に遡って埃が積もっていればダスティと言えるとするもの。一つにはレアリティを考慮し、ラベルやボトルのデザインがチェンジした時点や、中身のジュースの製造元が変化した時点、また製造中止になってしまった時点でダスティ(オールドボトル)とするもの。一つには発売からだいたい10年以上経っていればオールドボトル(ダスティ)と言えるとするもの。ダスティ・ハンティングの項も参照。

Dusty Hunting─ダスティハンティング
例えば地方の小さな酒屋などを巡り、店頭で売れ残っている埃の積もった古いバーボンを探し求めること。ただし、必ずしも埃を被っていなければならない訳ではない。何処にでも売っている現行製品ではない物=レア物をターゲットとした狩猟ゲーム。どのボトルが希少価値があるかといった豊富な知識と、酒屋を隈無く探す忍耐力や、ありそうな雰囲気を察する直感が必要な大人の娯楽。

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【C】

Cask─カスク
樽のこと。キャスクと表記したほうが発音記号に近い。バーボンにはバレルが用いられることが殆ど。希にクォーターカスクというバレルの4分の1容量の小さい樽が製品意図として用いられることも。

Cask Strength─カスクストレングス
バーボン用語ではバレル・プルーフ、もしくはバレル・ストレングスの方がより普及した言い方。メーカーズマークのバレル・プルーフ・バーボンはカスク・ストレングスを名乗っている。意味は「Barrel Proof」の項を参照。

Cats and Dogs─キャッツアンドドッグス
成長の可能性が殆どなく、小口で低利益率の非プレミアムでマイナーなブランドを指す業界​​用語。

CEHT
「Colonel E. H. Taylor」の略。「EHT」の項を参照。

CGF
「Cheesy Gold Foil」の略。日本においてワイルドターキー12年ゴールドラベルと言われる物を欧米ではこう呼ぶ。WT12年の中でも人気があり、セカンダリーマーケットで価格が高騰している。チーズィーとは「安っぽい、陳腐な」の意。
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Char(Charred, Charring)─チャー(チャード、チャーリング)
樽の内側を高温で焦がし炭化させること。
チャコール(Charcoal=木炭)の「チャ」に当たる。チャーの加減には時間によって4段階のレベルがあり、以下のようになる。
No.1:15秒
No.2:30秒
No.3:45秒
No.4:55秒
このうちNo.4のみ、焦がし終えた木の質感がワニの表皮を想わせることから、別名アリゲーターチャーと呼ばれる。バーボン業界でNo.1とNo.2が選ばれることは殆どない。焼き時間を調整してNo.3〜No.4の中間にすることも。また、実験的ながら最強レヴェルのNo.7もあるらしい。

Charcoal Filtered─チャコールフィルタード
活性炭濾過されているの意。バーボンのラベルにはこう明記されていることが多い。 そう記載されてなくても一般的なバーボンは殆どされていると思われる。テネシー・ウィスキーのチャコール・メロウイングとは違い、熟成の後、ボトリングの前に行われる。

Charcoal Mellowing─チャコールメロウイング
テネシー・ウィスキーの特徴的な行程の一つで、樽熟成の前にスピリットをサトウカエデの木炭で濾過すること。不要な油脂分や雑味を取り除き、テクスチャーを滑らかにし、甘味などの何かしらの風味を加えると言われる。「リンカーン・カウンティ・プロセス」とも知られる。また単に「リーチング」とも言う。それらの項も参照。
テネシー・ウィスキーの代表格に挙げられるジャック・ダニエル蒸溜所の場合、以下のような感じ。まずテネシー産のサトウカエデ(シュガーメープル)の丸太を2インチ×2インチに切断し、出来た角材を井桁に組んで積み上げ、約2〜3週間かけて乾燥させる。それに蒸溜したての140プルーフの原酒を撒き、火の粉を防ぐため大型フードの下で点火。およそ二時間かけて焼き、完全燃焼を防ぐため水が噴霧される。次に出来上がった木炭を粉砕機に通して細かく砕き、底にウールを敷いた深さ10フィート(約3m)のヴァットに詰める。そこへパイプから一滴一滴ジャックダニエルズの原酒が垂らされ、濾過は数日かけて行われると言う(現在では一滴一滴ではなくシャワーという説もあった)。この後、125プルーフに希釈されエイジング・プロセスを経てジャックダニエルズの完成。

Chaser─チェイサー
後を追うものの意で、一旦ストレートでウィスキーを飲んだ後から、追跡するように飲む水や炭酸水などのこと。ウィスキーよりアルコール度数が低ければチェイサーとして成立するため、ワインやビールをチェイサーにする強者も居るという。

Chill Filtration(Chill Filtering, Chill Filtered)─チルフィルトレーション(チルフィルタリング、チルフィルタード)
冷却濾過。ウィスキーの原材料や蒸溜プロセス及び樽熟成期間に自然発生する香味成分の中には、脂肪酸・タンパク質・エステル等の低温になると析出してウイスキーを白濁させたり澱を発生させる成分が含まれている。それらの成分をボトリング前に予め-4℃~0℃に冷却しながら濾過して除去する操作のこと。ロックや加水して飲む際に見た目が濁ってしまったり、内容物に澱があると見た目が悪く、消費者に悪い印象を与えかねないというのが主な理由。
聞くところによるとその行程は、一旦冷却された原酒を一連のしっかりしたニットや金属メッシュまたは紙フィルターに圧力をかけて通過させるらしい。収集される残留物の量は、フィルターの数、使用される圧力、及び速度に依存するという。このプロセス中に沈殿物や樽からの不純物も除去される。
冷却濾過で失われる成分には、香りや風味の基となるものが含まれているとされ、自然で有機的な製品を求める消費者やウィスキーマニアはノンチルチィルタード(非冷却濾過)の商品を珍重する。一方で、全ての濾過が悪い訳ではなく、外観の明瞭さを増し、いくつかの不快な味を取り除き、他の味を輝かせるとの主張もあり、現実には同一条件下の原酒のチルフィルタードとノンチルフィルタードがリリースされないと比較するのは難しい。

Christmas Rye(Xmas Rye)─クリスマスライ
古いワイルドターキー・ライは赤と緑のラベルのため、クリスマスを連想させることからこう呼ばれる。
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CoK
「Cream of Kentucky」の略。オリジナルは1888年にまで遡り、禁酒法後にシェンリーの主要なバーボン・ブランドの一つとなった。バーボンの売上低迷期に消滅していたが、近年、元フォアローゼズ蒸溜所のマスター・ディスティラーであるジム・ラトリッジがブランドを復活させた。

Column Still─コラムスティル
連続式蒸溜機のこと。「カラム」と表記されることも多い。英語の発音が「カ」と「コ」の中間の音だからだろう。コラムは円柱や列を意味する言葉で、その形状を指しての名称。蒸溜塔とも。コンティニュアス・スティルの項を参照。

Condenser─コンデンサー
蒸溜工程で出来た蒸気を冷やして液体に戻す装置。冷却装置とか凝縮器と訳される。外観は太い円筒状の形が一般的で、中には冷水が流れる細長いパイプを大量に備えている。多くは銅製。

Congeners─コンジェナース
化学的専門的に使わない限り、一般的にはアルコール飲料に含まれるアルコールと水以外の諸成分、との意味で使われる。ラテン語の「共に」を意味する「con-」と 「血統」や「種族」を意味する「genus, gener-」に由来するため、日本語では(あまり馴染んではいないが)同族体と訳される。発酵と蒸溜および熟成中に生ずる化学物質で、何百種類とあるうちの一部は毒性を持つか酷い味がする一方、スピリッツの香りを左右する芳香成分でもある。
低いプルーフで蒸溜されたスピリッツは、コンジェナースをより多く保存するとされ、逆に高いプルーフで蒸溜された場合はマッシュのコンジェナースを殆ど取り除き、純粋なエタノールに非常に近い製品を作り出す(ニュートラル・スピリッツやウォッカ)。バーボンは最高のコンジェナース含有量を有​​するウィスキーであり、シングルモルト・スコッチが後に続き、カナディアンやスコッチのグレイン・ウィスキーは同族体の含有量が少ない傾向があるとされる。エステル(Ester)、アシッド(Acids)、サルファー(Sulphur) 、アルデヒド(Aldehydes)、ジアセチル(Diacetyl)、高級アルコールおよびフューゼル油(High alcohols and fusel oils)等。

Continuous Still─コンティニュアススティル
連続式蒸溜機と訳される。従来のどこか牧歌的なイメージのする古典的な単式ポットスティルと違い、工業的なイメージの漂う蒸溜装置。蒸溜の行程を連続的に行えることからの、つまり機能面からの名称。パテント・スティル、コフィー・スティル、コラム・スティル、ビア・スティルとも言われ、厳密には違うのかも知れないが大概同じ物を指していることが多い。バーボン業界ではビア・スティルかコラム・スティルの名称が頻繁に使われている。スコットランド人のロバート・スタインが開発し、アイルランド人のイーニアス・コフィーが完成させたと言う。パワフルな連続的蒸溜により、調整次第で、ほぼ純粋なエタノールである190プルーフ以上のスピリットを産出できるが、バーボンではフレイヴァーを残すため160プルーフ以下で蒸溜しなければならないし、多くの蒸溜所ではよりフレイヴァーを残すため更に低いプルーフで蒸溜する。

Cooker─クッカー
粉砕した穀物と水を混ぜてマッシュを造り、糖化作業をするための金属製の大きな桶/鍋。グレイン・クッカー、またマッシュタブとも言う。日本語では糖化槽。内部には加熱用のスチームパイプと冷却用のクーリング・パイプがあり、加熱と冷却が出来るようになっている。
ミルで別々に挽かれた穀物は、クッカーにコーン、ライ、モルテッド・バーリーの順に分けて入れる。各穀物を投入する際の温度は異なり、一例を挙げるとコーン…220°F(114°C)、ライ…170°F(77°C)、モルテッド・バーリー…150°F(66°C)のような感じ。過圧の具合や温度で前後するが、通常約30分程度かかる。この工程にバックセットを入れ、pHを安定させるのがサワーマッシュ製法。調理が終わると発酵槽へ移されるが、その前にマッシュは冷まされる。

Cooper(Cooperage)─クーパー(クーパレッジ)
樽を造ったり、樽を修理したりする職人。クーパレッジは樽を製造する施設、またはその仕事。

Copper─カッパー
銅。蒸溜装置のどこかしらに銅が使われる理由は、蒸溜されたスピリッツと反応して硫黄化合物を銅が吸収し、硫黄臭やゴム臭、腐った野菜のような不快臭を取り除くためだと言う。

Corn─コーン
トウモロコシ。バーボンでは主に「イエロー・デント No.2」という品種が使われる。他の品種に比べて優れたフレイヴァーと多くのアルコールを産生するのだとか。コーンの殆どはケンタッキーやノースダコタから供給され、二次的にはサウスダコタやインディアナの物も使われていると言う。

Corn Patch and Cabin Rights Act─コーンパッチアンドキャビンライツアクト
ケンタッキーがまだヴァージニア州の一部だった頃、ヴァージニア州議会は西部の土地を秩序立てようと1776年に「コーンパッチおよびキャビン権利法」と知られる法律を発行した。それは1778年1月1日以前にケンタッキー区域にキャビンを建て、トウモロコシを植えた場合、入植者は400エーカー(約160ヘクタール)の土地を請求することが出来るというもの。これが功を奏し、大量のトウモロコシが収穫されるようになると、酒造家たちはトウモロコシをベースとしたウィスキーのレシピを用いるようになり、後のケンタッキー・バーボンの誕生を促したと言う。しかし、この法律はキャビンの大きさや構造、またはコーンパッチの大きさについて何も言及しなかった。そこで入植者は3〜4種のトウモロコシの種を植え、土地を受け取ることを期待して、数枚の木材で小さなキャビンを造った。このような手際の悪く機能しない法律のため、少数の蒸溜一家の助けにはなったかも知れないが、バーボンに殆ど影響を与えなかった可能性が高いとも言われる。

Corn Whiskey─コーンウィスキー
コーン・ウィスキーは、少なくとも80%のコーンが含まれたマッシュから造られ、160プルーフを越えずに蒸溜し、未成熟でもよいが、 樽に入れる場合は125プルーフ以下で入れ、なおかつ樽は古樽もしくはチャーされてない新しいオークの樽を使わねばならない。コーン・リカー、ホワイト・ライトニングと呼ばれることもある。 

CS
「Cask Strength」の略。カスク・ストレングスの項を参照。

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