カテゴリ:企画シリーズ > 今宵の一曲


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今宵の映画は1948年公開、MGMの傑作ミュージカル『イースター・パレード』。よく語られる映画なので、詳しくは映画サイトやマニアさんのブログでチェックを。楽曲は多くのスタンダード・ナンバーを産み出した稀代の作曲家アーヴィング・バーリンが手掛けています。ジュディ・ガーランドとフレッド・アステアという当代スターの共演は、始めから終わりまで見所満載。タップはリズム楽器だと魅せてくれる「Drum Crazy」、二人の芸達者ぶりが発揮されたコミカルな「A Couple of Swells」、共演者アン・ミラーの一世一代の名演に魅了される「Shakin' The Blues Away」等は私のお気に入りです。


けれども『イースター・パレード』で一曲だけ選ぶとしたら、どうしたってこれしかありません。今宵の一曲として取り上げる「ステッピン・アウト・ウィズ・マイ・ベイビー」。のっけから高揚感を煽るホーンに心を掴まれ、アステア至芸のタップと特殊効果のスローモーションは勿論、ファッションも最高でして、ボーターハットに白×茶コンビのスペクテイターシューズとか、もう堪りません。言うまでもなくアステアはシンガーではなくダンサーな訳ですが、気張りすぎないナチュラルな歌は常に好感を持てます。

"Steppin' Out With My Baby"
「マイベイビーとお出掛け」

If I seem to scintillate it's because I've got a date.
もし僕がきらめいて見えるなら、それはデートがあるから
A date with a package of the good things that come with love.
デートは良いことづくめ、恋の花咲こともある
You don't have to ask me. I won't waste your time.
僕に聞かないくていい、君らの時間を無駄にしたくない
But if you should ask me why I feel sublime.
でも敢えて聞くなら、なぜ僕が崇高な気分か(教えよう)

I'm steppin' out with my baby, can't go wrong, 'cause I'm in right.
僕はマイベイビーとお出掛け、間違いなし、だって僕(のやり方)は正しい
It's for sure, not for maybe that I'm all dressed up tonight.
確かだ、多分じゃない、今夜は全身めかし込んだ
Steppin' out with my honey, can't be bad to feel so good.
マイハニーとお出かけ、悪いはずない気分上々
Never felt quite so sunny and I keep on knockin' wood.
こんな晴れやかさ感じたことない、続け幸運ノッキンウッド
There'll be smooth sailin' 'cause I'm trimmin' my sails.
順風満帆、得手に帆を揚げてるから
With a bright shine on my shoes and on my nails.
僕の靴も爪もキラリと輝いてる
Steppin' out with my baby, can't go wrong, 'cause I'm in right.
マイベイビーとお出かけ、間違いなし、だって僕(のやり方)は正しい
Ask me when will the day be. The big day may be tonight.
その日はいつかって? ビッグデイは今夜かも


この曲はドリス・デイ版も有名です。近年ではトニー・ベネットも取り上げていますね。個人的にはトニーのソロよりクリスティーナ・アギレラとデュエットしたやつの方が好きです。やっぱりこの曲でアギレラちゃんの節回しが聴けるのは嬉しい。

さて、合わせたのはバーボンではなくライウィスキーのサゼラック・ライです。クラシックなロゴデザインとボトル形状がカッコいい。正直、好きな映画を観ながら飲むなら銘柄は何でもいいですよね(笑)。では今宵はこれにて。

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今宵の一曲は、ジェイムス・コットン・バンド名義で74年にブッダレコードから発売されたファンクブルースの名盤として名高い『100%コットン』より、敢えてインスト曲の「バーナー」を。初めて聴いた時はあまりのカッコ良さに仰け反りましたよね。

ジェイムスのハープのブロウは勿論、バンドの織り成すサウンドがソリッドで凄くモダンというか、今聴いても古びない躍動感に満ち、正にファンクでもありブルースでもあり、アグレッシブな感じが堪りません。

合わせたバーボンはヘンリーマッケンナです。ボトルの下の方にローレンスバーグと書いてあるのが判るでしょうか。現行のアメリカ国内向けの製品はヘヴンヒル蒸留所が造ってますが、これは輸出市場向けのフォアローゼズ蒸留所で造られた製品です。

個人的にはブルースとバーボンの組み合わせって王道だと勝手に思っております。自分が二十歳ぐらいの頃はブルースを聴きながらバーボンをラッパ飲みするのが鬼カッコいいと本気で思ってましたので(笑)。では今宵はこれにて。


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今宵の一曲はブッカー・リトルの「マイナー・スイート」です。TIME盤と言えばリトルがワンホーンで臨んだ名盤であり、彼お得意のマイナー調の曲が多い作品として知られますが、この作品の人気はもうひとりの夭折の天才、ベーシストのスコット・ラファロの存在にある、と言っても過言ではないでしょう。グイグイと強靭なベースを聴かせてくれてます。その他のバックも鉄壁の面子。さて、合わせたバーボンは、

JIM BEAM SIGNATURE CRAFT 12 YEARS 86 Proof
2013年にリリースされたシグネチャー・クラフト・シリーズの12年熟成物。ビームの製品はブッカーズで6〜7年、ノブクリークで9年程度と、長期熟成をあまりしない中で異例とも言える12年熟成なのがウリでしょうか。当然ながらマッシュビルはジムビームと同じ77%コーンのロウ・ライ・レシピ。そしてスモール・バッチでのボトリングです。では、飲んでみましょう。

焦がしたオーク、フレッシュフルーツ、ヴァニラビーンズ、ピーナッツ、ビターチョコ、紫蘇。思いの外、キャラメル系の甘い香りが薄め。飲み口はすっきり。余韻はやや苦めでナッティかつビール様、更にヨモギ。海外の有名なバーボンレビュワーの評価がなかなか良かったので期待しすぎたのか、少々拍子抜け。確かにジムビームらしい焦樽系のアロマは豊富なのだがテクスチャーが滑らか過ぎる。出来ればもう少し引っ掛かるものが欲しい。47度でボトリングしてもらいたかった。
Rating:84/100

Thought:これは単に私の好みなだけかも知れませんが、どうも現行のジムビームは音で喩えると、低音域と高音域が効いているのに中音域がすっぽりと抜けた音のようなバーボンに感じます。勿論、その音が好きな人もいるでしょう。けれども個人的には好きな音ではありません。またビームのスモールバッチシリーズのバーボンたちと比べると余韻が好みでなかったこともあり、値段を考慮するならもう一度購入したいお酒ではなく、同程度の価格ならばハイアープルーフのノブクリークを選びます。

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今宵の一曲はミルドレッド・ベイリーの歌う「ラヴァー・カムバック・トゥ・ミー」です。彼女自身そのキャリアの中で何度も吹き込んでいて思い入れのある一曲なのでしょう。

1930~40年代に人気を誇り、ヒット曲にあやかって「ロッキンチェア・レディ」と渾名され、また「スウィングの女王」とも言われたミルドレッド・ベイリー。元祖ぽちゃカワ?とでも言えそうな風貌です。 彼女はブルースを歌ってもブラックフィーリングのある歌い手さんでした。

オスカー・ハマースタイン二世とシグムンド・ロンバーグの名コンビによる「Lover, Come Back To Me」は、邦題を「恋人よ我に帰れ」と訳され、元々は「朝日の如く爽やかに」も歌われるオペレッタ『ニュー・ムーン(18世紀ルイジアナの農園を舞台とした、お嬢様マリアンヌと奴隷ロベールの恋の物語)』からのナンバーです。
名曲は時代を越えて歌い継がれて行くもの。数多のジャズ・シンガーが歌い、大変ポピュラーなジャズ・スタンダードとなっています。一番有名なのはビリー・ホリデイのヴァージョンでしょうか。しかし私はなぜか、この曲はミルドレッドの歌唱が好きなのです。理由はまったく分からないのですが(笑)。

※通常「恋人よ我に帰れ」とされるタイトルを訳詞に合わせて変更してます。


"Lover, Come back to me"
『恋人よ戻って来て』

The sky was blue
空は青かった
And high above
そして高かった
The moon was new
月は新しかったし
And so was love
愛もそうだった
This eager heart of mine was singing
この切望する私の心は歌ってた
Lover where can you be
恋人はどこにいるの?と

You came at last
あなたはついに現れ
Love had its day
愛の日を過ごした
That day is past
それは過去
You've gone away
あなたは去ってしまった
This aching heart of mine is singing
この痛む私の心は歌ってる
Lover come back to me
恋人よ戻って来てと

I remember every little thing
私は思い出す、全ての些細なこと
You used to do
あなたがかつてしていた
I'm so lonely
私はとても寂しい
Every road I walked along
どの道を歩くにも
I walked along with you
私はあなたと一緒に歩いた
No wonder I am lonely
当然ね、私が寂しいのも

The sky is blue
空は青い
The night is cold
夜は寒い
The moon is new
月は新しい
But love is old
でも愛は古いまま
And while I'm waiting here
そして私がここで待つあいだ
This heart of mine is singing
この私の心は歌ってる
Lover come back to me
恋人よ戻って来てと


さて、合わせたバーボンはオールド・テイラーです。メロー・イエローと親しまれた歴史あるブランドなのですが、現在では「コロネル・E・H・テイラー」というプレミアムラインの別製品があり、こちらは最下層の安バーボンとなってしまいました。それだけならまだしも、ビーム社からサゼラックにブランドが移行してある時期から、熟成年数表記の「6 years」から「years」だけ外して、6年熟成ではなくするという荒業?というか殆ど悪意とも取れる手法を使うのは如何なものかと。同社のオールドチャーター8年にも同様の手口がみられるので、数字イコール熟成年数と勘違いしないように注意が必要ですね。では今宵はこれにて。

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今宵の一曲はウィリー・ハイタワーの「ウォーク・ア・マイル・イン・マイ・シューズ」。ジョー・サウス作曲の名曲で、エルヴィス・プレスリーの歌唱も有名ですが、私にとってはウィリーのヴァージョンこそがこの楽曲の最高傑作だと思ってます。もともとポップソウルぽいフィーリングのサザンロックと言えそうなオリジナルを、リック・ホールのフェイムスタジオが完璧なサザンソウルに仕立て上げてますね。

ジョーやエルヴィスのような白人シンガーにはない重厚な歌声と節回し、南部流儀のホーンアレンジとリズム隊が織り成すサウンド、歌詞のメッセージ、楽曲のキャッチーさ、全てを兼ね備えていると言っても過言ではないでしょう。

ウィリーはサム・クックに最も影響を受けたシンガーですが、持ち味はサムよりもう少しディープ。サムがシルクやビロードと形容されたなめらかな歌声なのに対し、ウィリーは少々ザラついたテイストがあり、喩えると麻?ですかね(笑)。そこがまたいいのですが。

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で、上に述べた歌詞のメッセージと言うのは、一言で言えば「その人の事を判断(批判)する前に相手の立場に身を置いてみようよ」と言うこと。


"Walk a Mile in My Shoes"
『俺の靴で1マイル歩いてみろよ』

If I could be you and you could be me
もし俺がお前でお前が俺なら
For just one hour
たった1時間でも
If we could find a way to get inside
俺らの内側に潜り込むやり方が見つかれば
Each other's mind
互いの心に

If you could see you through my eyes
もしお前が俺の目を通して自分を見れたら
Instead of your ego
お前自身の代わりに
I believe you'd be, surprised to see
お前は見て驚くだろう
That you've been blind
今まで盲目だったって

Walk a mile in my shoes
俺の靴で1マイル歩いてみろよ
Walk a mile in my shoes
俺の靴で1マイル歩いてみろよ
Before you abuse, criticize, and accuse
誹謗中傷ばかり言って非難する前に
Walk a mile in my shoes
俺の靴で1マイル歩いてみろよ


さて、合わせたバーボンはジムビームブラック8年のちょっと古いやつです。やっぱりジムビームはこのラベルデザインがしっくりきますね。まだマスターディスティラーがブッカー・ノーの時代の物で、ラベルのサイドの肖像画にフレッド・ノーが描かれてません。現行のブラック、エクストラエイジよりも少し長い熟成期間の贅沢な(?)仕様は、まだバーボンブームがアメリカで巻き起こる前だから出来たのでしょう。

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アメリカ南部産のケンタッキーバーボンと極上のサザンソウルの組合せは無敵ですよね。では、今宵はこれにて。

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