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今回は、アメリカン・ブレンデッド・ウィスキーである「アーリータイムズ・ホワイト」に続き、2023年9月に新しくリリースされたケンタッキー・ストレート・バーボン規格の「アーリータイムズ・ゴールド」を飲んでみます。アーリータイムズのブランドがブラウン=フォーマンからサゼラックに移行し、ホワイト・ラベルがリリースされるまでの経緯は過去に投稿した記事を参照ください。

SNSや某社の商品レヴュー等を眺めてみると、アーリータイムズ・ホワイトは一部の人々、特にハイボールとして飲む人などからは美味しいという評価もあったものの、多くのバーボン愛好家からは少なからず不評を買ったように見えます。新しい飲酒者層は別として、流石に旧来のイエロー・ラベルを飲み、それを愛して来た人々がブレンデッド・ウィスキーに対して諸手を挙げて歓迎する筈はありませんでした。それ故にホワイトの発売直後からストレート・バーボンのアーリータイムズの復活を望む声は直ぐに上がりました。そうした声がメーカーに届いたからなのか、或いは最初からの計画通りだったのかは判りませんが、僅か一年でバーボンのアーリータイムズは販売されるようになりました。それがこのゴールドです。

では、その中身は一体なんなのでしょう? サゼラックと総代理店契約を締結している明治屋のプレス・リリースにはその中身について具体的な説明はありません。ですが、サゼラックのマスター・ブレンダーであるドリュー・メイヴィルが来日したのを機に明治屋が今年の2月28日に都内で開催した試飲セミナーのレポート記事によると、アーリータイムズのマッシュビルは従来通りコーン79%、ライ11%、モルテッドバーリー10%、そして独自酵母で発酵と書いてありました。サゼラックが2021年4月8日に発表したアーリータイムズ・ウィスキーの計画では、同年夏からケンタッキー州バーズタウンのバートン1792蒸溜所で蒸溜、熟成、ボトリングを開始、オリジナルのレシピとマッシュビルを使用して消費者に愛された同じ味わいの製品を提供し続ける、としていたので一致していますね。この独自の酵母というのが、ブラウン=フォーマンがアーリータイムズで使用していたイーストを購入しているのか、それとも単にバートン蒸溜所の他のバーボンに使用されていないイーストを指しているだけなのかは、よく判りません。まあ、そこはどちらでもいいとして、問題はゴールドに使われているバレルの熟成年数でしょう。バートンがアーリータイムズの蒸溜を始めたのが2021年夏からとすると、2023年秋にリリースされ始めたこのゴールドは、おそらく「ストレート」を名乗れる最低2年熟成と見るのが妥当だと思われます。私は上掲のホワイトに就いての記事で、2025年あたりにイエロー・ラベルのストレート・バーボンがリリースされるのではないかと「希望的観測」を書きました。そうしたら、ラベルの色が少し違ったものの、一応はストレート・バーボン規格の物がちゃんとリリースされた、と。しかし、私が希望していたのは4年熟成程度のバーボンでした。なので私としては「えっ、早いよサゼラックさん…」となりました。6年から8年、または8年から10年への熟成期間の2年間と違い、2年から4年への2年間はもっと重要な熟成期間だと個人的には思うが故に、がっかりした次第です。まあ、取り敢えず注いでみるとしましょう。

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EARLY TIMES Gold label 80 Proof
推定2023年ボトリング。ダーク・オレンジぽさのあるブラウン。清涼感を伴ったヴァニラ→キャラメル、ドライオーク、一瞬レーズン、薄っすら蜂蜜、みかん。香りはフルーティな接着剤からの洋菓子。水っぽい口当たり。味わいはグレインウィスキー然とした仄かな甘みもあるものの基本ドライで、ホワイトドッグぽさが残る。余韻はとても短くこれまたドライだが、穀物の旨味を感じる瞬間もなくはない。
Rating:74/100

Thoughts:開封直後は「なにこれ? 酷いな…」という感想でした。未熟成のスピリットにほんの少し焦げた樽の香りを付けただけのように感じたのです。もう少し時間が経つと、甘い香りも出て来てマシにはなりましたし、ホワイトドッグぼいテイストも薄らぎました。ですが、口の中や余韻では相変わらずドライな傾向が支配的で、相当注意深く探らないとフルーティさを発見することは困難でした。正直言って誉めるところが見つかりません。飲み易いと言えば飲み易いですが、それを言うなら旧来のイエローラベルはもっと飲み易かったですし、他の安いバーボンも同じくらいには飲み易いです。敢えて誉めるなら、さっぱりとした後口、すっきりとした余韻、とでもなるでしょうか。しかし、その言い方は聞こえは良いですが、換言すれば余韻に芳醇な香りが残らないと言っているに等しいです。擁護すると、最近の通常のバーボンの殆どがドライな傾向にあるとは言えますけれども。
ブラウン=フォーマン時代のアーリータイムズ・イエローラベルと比較すると、イエローの方がよりコーンの旨味とキャラメルの風味が感じられたし、もっと円やかでミルキーでした。旧来のアーリータイムズとの決定的な違いは、ブラウン=フォーマンの自社製樽由来と思われるバナナ・ノートを欠いている点かも知れません。これに関しては製造する蒸溜所が違うのですから別に文句はありませんが、問題なのは同じバートンで製造される安価なバーボンのケンタッキー・ジェントルマンやザッカリア・ハリスよりフレイヴァーの強度が劣るところです。日本人の大多数はハイボール民だからこの程度でいいだろ、とでも思われたのでしょうか? だとしたら馬鹿にし過ぎです。ホワイトがリリースされた当初、アーリータイムズを名乗るべきではない、という趣旨の意見をよく聞きました(見ました)。或るブランドのヴァリエーションにブレンデッドがあること自体は悪いことではありません。ホワイトはバーボンではないのだから、バーボンより味が劣っていて当たり前、それだけの話でしょう。しかし、この金色を使いスタイリッシュで豪華そうに見せたゴールド・ラベルは違います。曲がりなりにもストレート・バーボンですから、こんなものアーリータイムズと名乗るべきではない、と叫ぶのなら今でしょう。少なくとも私には、このゴールドが旧来のアーリータイムズ・ファンを納得させるものとは到底思えませんでした。
ゴールドの発売は、エントリー・クラスの買い求め易い価格でありながら十分に旨かった、我々日本人が長年に渡って享受して来た、あのアーリータイムズの完全な終わりを告げたのかも知れない。アメリカ国内流通のアーリータイムズで主流となっているのは、もともとブラウン=フォーマンが2017年に導入した青いラベルの「ボトルド・イン・ボンド」です。これは当初は限定生産の予定でしたが、手頃な価格(1リットル25ドル)でクラシック・バーボンの風味を味わえると評判となってすぐにヒットしてレギュラーでリリースされる人気商品となり、サゼラックも買収後にこれを継続して販売しました。これが日本で普通に買えるように正規販売されるのなら、別にゴールドはこのままで構わないのですが、そうでないなら改善を求めたいですね。
そう言えば、ホワイト・ラベルが発売された時、世界に先駆けて日本先行発売とか言われていましたが、もう1年経つというのに世界で発売されている様子はありません。一体どうなっているのでしょうか? 我々は騙されていたのですか? まさか試験的に日本に投下され、ハイボール大国ニッポンですら不評だったために世界販売が取り止めとなり、慌ててストレート・バーボンを導入したとでも? もしそうなら、このゴールドも不買運動を繰り広げれば、ワンチャン、4年熟成の物に変化することもあるのですか? ここらへんの事情をお知りの方はコメントより是非ご教示ください。

Pairing:ウィスキーは直前に食べた物で感じる味わいに違いが出ます。私はバーボンを食中酒としても飲むので、この少々イマイチなゴールドを何とか美味しく楽しめないかと色々な料理とのペアリングを探っていたら、スパイシーな味付けの唐揚げとはなかなか相性が良かったように思います。逆に最悪なのはサラダでした。まあ、これは私の味覚なので皆さんが同じように感じるかは分かりませんが…。

Value:2000円程度で購入できるため、コスパが良いと言う人もいます。コスト・パフォーマンスとは費用対効果と訳され、支払った費用(コスト)とそれにより得られた能力(パフォーマンス)を比較したもので、低い費用で高い効果が得られればコスパが「高い」とか「良い」とか「優れている」等と表現されます。ウィスキーに於いてパフォーマンスは「味わい」です。私なら3500円出して2倍旨い別のバーボン、例えばフォアローゼズ・ブラック等を買うほうがコスパが良いと信じます。どうしてもアーリータイムズ・ブランドに拘りたいのであれば、ブレンデッドであるホワイトよりゴールドは格段に美味しいのは間違いないので、ホワイトが1500円程度なら、もう500円上乗せしてゴールドを買う選択は支持できます。しかし、ただそれだけです。

…と、ここまでは、ゴールドはなかなか旨いという評判を聞いていた私の期待が大き過ぎ、それが外れたことから勢いに任せて辛辣な評価を下してしまいました。これを見てちょっとした勘違いをする方もいるかも知れないので、最後に蛇足ながら私の趣味嗜好を書いておきます。
私はウィスキー全般の愛好家ではありません。飽くまでウィスキーの中の一つのジャンルに過ぎないバーボンを愛飲する者です(より正確に言うならアメリカン・ウィスキー愛好家)。そんな私の舌と脳は基本的にバーボン特化型であって、その他のスコッチやジャパニーズ・ウィスキー、或いは蒸溜酒であれ醸造酒であれ他のアルコール飲料を美味しいとは感じません。ここで見られるゴールドに対しての少々厳しい意見は他のバーボンと較べてのことであり、例えば山崎12年と較べるなら私にとってはアーリータイムズ・ゴールドの方が遥かに飲み易いのです。つまり「山崎が買えないならアーリータイムズ・ゴールドを買えばいいじゃない」と思う程には、数あるウィスキー全体の中に於いてこのゴールドは正に光輝いています。それだけは念頭に置いてこのブログを読んで頂けると幸いです。

追記:事情通の方より製造に関して追加情報を頂けたのでコメント欄をご確認ください。

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過日、所用があって浦和まで出たので、帰りがけに少し足の伸ばして大宮のバーFIVEさんまで行きました。実際に店舗に伺うのはまだ2回目であるにも拘わらず、とても温かく迎えて頂き、まるでホームに戻って来たような安心感を与えてくれたマスターとNさんのホスピタリティに感謝です。私は下戸であり、あまり時間もなかったため、それほど杯を重ねられませんでしたが、楽しい時間を過ごせましたし、珠玉のバーボンを飲むことも出来ました。先ず一杯目に選んだのは特別なアーリータイムズ。その昔、オークションで購入しようと思ったことはあったのですが、タイミングが合わず買い逃しており、飲んだことがなかったのです。こちら、私が伺ったタイミングで口開けして頂きました。

このヘリテッジ・エディションは、アーリータイムズの創業を1860年から数えて120年の伝統を祝し、1980年に限定数量にてリリースされました。ブラウン=フォーマン社はこのバーボンを特別なものとするため、創業者ジョン・ヘンリー・"ジャック"・ビームの時代の古いアーリータイムズのラベルを再現し、これまた前時代を反映した手吹きガラスの本格的なボトルに90.4プルーフのアーリータイムズ・バーボンを入れ、大事に保管できるよう専用の魅力的な木製ボックスに収めました。
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(古い時代のアーリータイムズのラベル)

ところで、気になるのはラベルに「バーボン」とない「ストレート・ウィスキー」の表記ですよね。
アメリカでバーボンの売上が激減していた1980年代初頭、税金やその他の様々なコストも上がる中、ブラウン=フォーマンはアーリータイムズにコスト削減の決断を下しました。酒類企業は、宣伝ではロマンティックな言辞を鏤めますが、実際には合理的なビジネスマンの集まりであり、所有するブランドから利益を上げれるように管理することについては冷酷だったりします。アーリータイムズは何より労働者のバーボンでした。彼らはそれが安いことを望みます。コスト削減は低価格を維持しつつ、なお利益も上げるための方策だったでしょう。アーリータイムズに使う樽の20%を中古樽で代用し熟成年数を短くすることで、値上げをしなくても利益を据え置くことが出来たのです。使用済みのバレルで熟成することは「バーボン」と名乗れなくなることを意味します。これにより、アメリカ国内向けのアーリータイムズはバーボンから「ケンタッキー・ウィスキー」となりました。アーリータイムズがバーボンでなくなったことで製品の品質は著しく低下します。往時、アーリータイムズの販売量はジムビームより僅かに少ないくらいだったと思われますが、ケンタッキー・ウィスキーへの転換以降、シェアは徐々に失われ、その差は広がって行きました。長年のアーリータイムズの忠誠者たちは年をとって亡くなってしまい、若い飲酒者にアピールしようにも既にブランドの個性は軽やかなウィスキーであるという後付の理由くらいしかありませんでした。低価格のブランドが販売量を失い始めると利益を維持するのは難しくなります。そこでブラウン=フォーマンは、アーリータイムズの再活性に多額の投資をする代わりに、ウッドフォード・リザーヴというプレミアムなブランドを立ち上げる訳ですが、これは別の話です。
で、ヘリテッジ・エディションのラベルにはバーボンと記載がないため、まさか中古樽熟成を含むケンタッキー・ウィスキーなのか?と一瞬疑ってしまいそうになりますが、ラベルにはしっかりと「ストレート・ウィスキー」と記載されています。ストレート規格は新樽で2年熟成の要件があるので、これはケンタッキー・ウィスキーではありません。それにアーリータイムズのバーボンからケンタッキー・ウィスキーへの切り替えは1983年とされているので、ヘリテッジの発売年から考えてもまだバーボンな筈です。そして当時の広告を見ると、実は小さく「ストレート・バーボン・ウィスキー」と書かれていました。
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(アウトドア専門誌『Field & Stream』1980年11月号に掲載された広告より)
おそらく、バーボンを名乗らずストレート・ウィスキーを名乗ったのは昔のラベルに倣ったのだと思います。しかし、その昔のアーリータイムズが何故バーボンを名乗らなかったのかは解りません。事情をお知りの方は是非コメントよりご教示下さい。それは扨て措き、中身に関しても具体的な情報がないので、これまた憶測になりますが、多分スタンダードなアーリータイムズとマッシュビル等は同じながら、かなり出来の良いバレルを選んでバッチングしているのではないでしょうか。これだけ外観のパッケージに拘っているのですから、きっと中身も…。では、最後に飲んだ感想を少しばかり。

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EARLY TIMES STRAIGHT WHISKY Heritage Edition 90.4 Proof
推定1980年ボトリング。上で述べたように、開封直後の試飲となります。嫌なオールド臭はなく状態は良好でした。アロマはフルーティな香り立ちで、パレートでも引き続きドライフルーツや僅かにシトラスが感じられます。また苦味のないスパイシーさもいいです。余韻はややドライでしょうか。グラスの残り香は甘いお菓子のよう。以前飲んだ150周年アニヴァーサリーの方がプルーフは高いのですが、ちょっと比べ物にならないくらいこちらの方がフレイヴァーフルでした。ヘヴィなウッディさもなく、キャラメル様のスイートさとフルーツ感のバランスに優れ、頗る美味しいです。中庸なボトリング・プルーフが功を奏しているのかも知れませんね。
Rating:87/100

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2020年6月、アーリータイムズを長年所有していたブラウン=フォーマン社はブランドと在庫をサゼラック社に売却すると発表しました。このニュースは日本のアメリカン・ウィスキー愛好家の間でも驚きをもって迎えられました。日本に於いてアーリータイムズは、ジムビームやI.W.ハーパー、フォアローゼズやワイルドターキーと並ぶバーボンの超々有名銘柄であり、ブラウン=フォーマン時代のイエロー及びブラウンのラベルは確実に日本に根付いていたからです。この売却により、先ずは2021年5月末で日本限定の製品であったブラウンラベルが終売となり、ファンからは悲しみの声が上がりました。同年4月にはサゼラックから今後アーリータイムズは傘下のバートン1792蒸溜所にて消費者が愛好していたのと同じオリジナルのレシピとマッシュビルを使用して製造すると発表されていました。2021年の末頃になると、ラベルのデザインはほぼ同じながら従来のボトルと少しだけ形状が異なりキャップが金属製のサゼラックが詰めた新しいボトルが市場に出たようです。私はその新しいボトルを直接見たことがないのですが、当ブログへのコメントで知り、またYouTubeで投稿されているのも見かけました。なんでもイエローラベルが澱のせいで全回収されたという情報もネット上で見かけ、そのせいなのか分かりませんが、確かにサゼラック版のイエローラベルは市場にそれほど出回ってない印象があります。だから私が実物を見たことがないのかも知れません。日本での販売元だったアサヒビールは2021年12月8日に、イエローラベルの全4規格のボトル(1750ml、1000ml、700ml、200ml)は商品供給が追い付かないため一時休売とし、再発売の日程に関しては現時点で未定、決まり次第、当社ホームページにてお知らせします、と既にアナウンスしていた模様。2022年2月頃になるとソーシャル・メディアでイエローラベルが自宅の近くの酒屋にないと報告されていました。実際、私も同じ頃、遠方の友人から「自分の住んでる地域だと長年愛飲してるイエローラベルが入荷しないみたいで今エヴァンウィリアムスのブラック飲んでるんですけど何か他にオススメのバーボンありませんか?」とLINEで直接相談されました。もともとタマ数の多かったイエローラベルは、あるところにはあり、ないところにはたまたまない、といった状況だったのでしょう(これは今現在でもそうかも知れません)。戦争やコロナの影響もあって輸入が滞っているのだろうと思っていたら、数カ月後の6月22日、アサヒビールは公式にアーリータイムズの取り扱いが終了したことを発表します。えっ!?と驚いたのも束の間、翌23日には明治屋がサゼラック・カンパニーと日本市場に於けるアーリータイムズやバッファロートレース等の総代理店契約締結に向け合意に至り、上記ブランドを含む7ブランドの取り扱いを開始すると発表しました。へー、正規代理店が変わるのか、まあバートン産のアーリータイムズが安定して輸入されるならオッケーだよね、と思いつつ待つこと更に数カ月。明治屋は9月14日に、アーリータイムズ・ホワイトというアメリカン・ブレンデッド・ウィスキーを9月20日から順次全国の小売店へ出荷開始し、世界に先駆けて日本で先行発売するとのプレス・リリースを出しました。は?、ブレンデッド・ウィスキー!? よく知られるようにアメリカ国内流通のアーリータイムズのエントリー・クラスは、ウィスキーの一部を中古樽で熟成させているためバーボンを名乗れない「ケンタッキー・ウィスキー」です。それですらストレート・バーボンのアーリータイムズを飲み慣れた我々日本人にはおそらく不満足だろうと思われるのに、更にスペック的に劣るブレンデッド・ウィスキーになるだと? ウソ、やだ、もう何も信じられないわ!と驚いたのは私だけではなく、日本全土のバーボン好きがそうだったのではないでしょうか?

アメリカで「Blended whiskey」または「Whiskey a blend」と呼ばれるのは、少なくとも20%のストレート・ウィスキーを含み、残りはウィスキーまたはニュートラル・スピリッツで構成された製品のことです。その「残り」の部分(概ね75〜80%)には、ごく一部のケースではハイプルーフのライト・ウィスキーである場合もありますが、一般的にはグレイン・ニュートラル・スピリッツ(GNS)が使われることが殆ど。GNSはざっくり言うとウォッカのようなものです。そしてブレンデッド・ウィスキーは無害な着色料、香味料、またはブレンド材料を含むことが出来ます。
アメリカに於けるブレンデッド・ウィスキーの歴史はレクティファイアーが築きました。その起源はカラム・スティルの発明によってニュートラル・スピリッツの生産が可能になった19世紀初頭に遡ります。当時ウィスキーの品質は、蒸溜所間だけでなく、一つの蒸溜所内でもその操業毎に大きく異なっていました。品質は蒸溜所の職人のスキル、天候、その他多くの要因に左右され、おそらく最も重要なのは運だったとすら言われています。一貫性と品質の問題は、ジェイムズ・クロウ博士がサワーマッシュ・プロセスを標準化した後でも、まだ解決されずに残っていました。当時、蒸溜所で蒸溜されたウィスキーは直接消費者に届けられることはなく、先ずは流通業者に販売されました。彼らは自分達が購入した少し良いウィスキーとちょっと悪いウィスキーの品質を均一にするためにレクティファイアーになりました。「レクティファイ」は「修正する」という意味です。彼らには不出来な造りのウィスキーをレクティファイすることを通して市場価値のあるものに変化させる意図がありました。レクティファイアーの多くは1種か2種またはそれ以上のウィスキーを混合して自ら望むフレイヴァー・プロファイルを作成する一方で、出来の良くないウィスキーは再蒸溜してニュートラル・スピリッツに調整し、その後、熟成された良質のウィスキーと様々な割合で混ぜ、そこにカラメルや砂糖、シェリーやプルーンジュース等の雑多なフレイヴァーを加え、木炭または骨粉でフィルタリングを施したりして独自のブレンデッド・ブランドをクリエイトしました。これが今ブレンデッド・ウィスキーと呼ばれるもののルーツです。彼らの加えた着色料や香料の一部には身体に有害で危険なものも使用されていました。また、嘘の熟成年数の主張を含む汎ゆる種類の虚偽の主張を製品に対して行っていました。この慣習は今日のようなラベルには真実を記載しなければならないという法律がなかったため違法ではなかったのです。これらの問題が1897年のボトルド・イン・ボンド・アクトと1906年のピュア・フード・アンド・ドラッグ・アクト、そしてストレート・ウィスキーやブレンデッド・ウィスキーを規定する1909年のタフト・デシジョンへと繋がって行ったのは歴史の知るところでしょう。
後のブレンデッド・ウィスキーであるレクティファイド・ウィスキーの風味は一般にストレート・ウィスキーよりも軽くてキツくなく、上質なストレート・ウィスキーを除いてバッチ毎の一貫性が高いのも特徴で、何より典型的なブレンドには熟成ウィスキーが殆ど含まれていないか使用率が僅かだったためストレート・ウィスキーに較べ遥かに安価でした。1831年以前には殆ど知られていなかったレクティファイド・ウィスキーはカラム・スティルが業界に導入されると徐々に増え始め、アメリカでの内戦後の1870年代にウィスキー業界が飛躍的に成長するとレクティファイアーも同じく成長し、その人気は着実に高まりました。禁酒法前の数十年間、アメリカで消費される全てのスピリッツの75〜90%がレクティファイド・ウィスキーだったと言います。禁酒法と第二次世界大戦の直後には、ブレンデッド・ウィスキーは人気がありました。どちらの場合もストレート規格の熟成したウィスキーが不足し、限られた供給量を確保する方法としてブレンデッド・ウィスキーの販売促進に努めたので売り上げが大幅に伸びたのです。しかし、この売れ行きは長くは続きませんでした。ストレート・ウィスキーが利用可能になると、販売比率はそちらに有利にシフトしましたし、更に後にはバーボンやライのストレート・ウィスキーを愛飲する消費者からはブレンデッドは淡泊過ぎて詰まらないと思われ、逆に軽めのスピリッツを好む消費者は中途半端なブレンデッドよりはウォッカに移行したのです。古典的なブレンデッド・ウィスキー全般のここ数十年に渡る売上は減少傾向にあります。しかし、シーグラムズ・セヴンクラウンなどはベスト・セリングのブランドであり続けています。殆どのブレンデッドは非常に安価で酒屋の棚の最下段を飾りますが、優秀なものには数十種類のストレート・ウィスキーが使用され一貫した風味が保証されており悪い商品ではありません。そして近年では、現在のウィスキー・ブームの恩恵を受け、GNSを含まない新しいブレンデッド・ウィスキーをクリエイトする動きがあり、今後は注目に値するカテゴリーとなっています。

偖て、そろそろアーリータイムズ・ホワイトとはどんなものか見て行きましょう。明治屋のプレスリリースを引用します。
近年、健康意識の高まりに後押しされたハイボールの定着、家飲みでの需要増加により世帯毎のウイスキー消費支出は上昇傾向にあります。
 
日本だけでなく世界的に見ても、ウイスキーやその原料となるモルトまでもが不足するなど注目を集め続けるウイスキー市場に、「アーリー・タイムズ」が新たな歴史を刻みます。
 
【商品特徴】
 
1.際立つ “なめらかさ”
最大の特徴は、その“なめらか”な味わいです。レモンピールが爽やかに香るトップノーズ。柑橘系の花から集めたハチミツのような潤いのある旨味。穏やかで角のない魅力的な余韻が長く続きます。ソーダで割ってハイボールにした時でも繊細なバランスは崩れることなく、お食事と共に日々楽しむウイスキーとしておすすめです。
 
2.規定の枠にとらわれない新たなチャレンジ
飲みやすさ、親しみやすさの追求によるアルコール類の淡麗辛口化傾向は、ビールや日本酒等でも見受けられますが、ついにウイスキーにもその流れがやってきます。「アーリー・タイムズ」は親しみやすい味わいをもつウイスキーとして“なめらかさ”の追求にチャレンジし、これまでの枠を超えた「アメリカン・ブレンデッド・ウイスキー」として『ホワイト』をリリースします。

更には、おそらくサゼラックから何らかの資料を受け取って書かれているのでしょうが、バートン1792蒸溜所のマスター・ディスティラーであるダニー・カーンに「今までウイスキーを飲まれなかったお客様や新たなウイスキーを求めるお客様にもきっと満足頂ける味わいです」とか、サゼラックのマスター・ブレンダーであるドリュー・メイヴィルに「各ウイスキーの特徴を見極め、“驚くほどなめらかな味わい”に向かい綿密に調和させていきました」と両者の顔写真付きでコメントを紹介しています。おまけにカーンからのメッセージ動画までありました。


少々誇大宣伝が過ぎるような気もしますし、具体的な中身(ブレンドの構成)について一言もないのも仕方のないところでしょうか。中身に関しては、希望小売価格が1500円程度、実売価格が1250円前後と考えると、GNSが大部分を占めると予想されます。アメリカ流通のラベルだと、ニュートラル・スピリッツの割合を記載しなければならない筈なのですが、国外向けだからなのか記載はありませんでした。ラベルのデザインは、まだブラウン=フォーマンが所有していた時代に導入された青いラベルのアーリータイムズ・ボトルド・イン・ボンド(後述)に準じていますね。このホワイト・ラベルは日本を皮切りに2023年以降、順次世界各国でも発売される予定だそうです。
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(Early Times Bottled-in-Bond)

私は明治屋のアーリータイムズのニュースを聞いて、イエローラベルがなくなり、それに代わって新しいホワイトラベルが発売されるのだと思い込んでしまいました。ネット上でもバーボンをブレンデッドにするなんて改悪だという趣旨の発言を見かけましたので、私と同様に皆もそう思ったようです。しかし、ここにはイエローラベルの“代わりに”ホワイトラベルを発売するとは一言も書いてありません。飽くまで新しい物を発売するとだけ巧妙に言っています。同じように、イエローがホワイトに“変わった”のでもなく、バーボンではない別の物がリリースされただけなのです。ネット上では他にもアーリータイムズを名乗るべきではないという趣旨の発言も見かけました。しかし、それを言うならエズラブルックスにも白ラベルのブランデッドがあるので、それに対してエズラを名乗るなと言わなければならないでしょう。ここで問題になっているのは、ブレンデッドがあることではなく、エントリー・クラスの4年熟成程度で80プルーフの買い求め易い価格のバーボンがないことの方なのです。よくよく考えてみると、ブラウン=フォーマンがブランドを売却したのが2020年、バートンが蒸溜すると発表されたのが2021年、ということは従来のアーリータイムズのような4年熟成程度の物を販売できるようになるのは早くて2025年です。その時になってみないと「エントリー・クラスの4年熟成程度で80プルーフの買い求め易い価格のバーボン」がブレンデッドに取って代わってしまったのかどうかの答えは出ません。熟成ウィスキーは商品化に時間の掛るものなのです。その時になってなお、そういうバーボンが発売されず、或いは発売されても日本に大量輸入されないなら、日本人にとっての「我らのアーリータイムズ」が本当になくなったことになります。少し、私の希望的観測を述べましょう。

このアーリータイムズ・ホワイトラベル・アメリカン・ブレンデッド・ウィスキーが発売されたのが2022年です。ブレンデッドは少なくとも20%のストレート・ウィスキーを含む必要があります。ストレート規格というのは最低2年熟成の物を言います。バートンがアーリータイムズの蒸溜を始めたのがサゼラックの買収完了時の2020年夏からだとしたら、現在の2022年秋は最も早い段階でブレンドにバートン原酒の2年熟成バーボンを入れることが出来ます。もしバートンの蒸溜開始が2021年からだとしたら、ホワイトにブレンドされた原酒はブラウン=フォーマンが蒸溜した最後期の原酒になるでしょう。どちらにせよ、2022年の段階で新しいアーリータイムズをリリースするのは、かなり急いでいるということです。だから、もしかするとサゼラックは日本の消費者を切り捨てたのではなく、寧ろ大事に思って早々にアーリータイムズを復活させたのではないか、今できる最大限の努力の結果がブレンデッドだったのではないか、と。勿論、それがビジネスの観点からの判断だったとしてもです。そして、アメリカ国内流通のアーリータイムズにはボトムシェルファーのケンタッキー・ウィスキーの他にもう一つ、先に述べたボトルド・イン・ボンドがあります。それは2017年に発売された当初、限定生産の予定でしたが、手頃な価格(1リットル25ドル)でクラシック・バーボンの風味を味わえると評判となってすぐにヒットし、レギュラーでリリースされる人気商品となりました。サゼラックも買収後にこれを継続して販売したので、バーボン系ウェブサイトやYouTubeでは二つのボトルを比較する企画が見られたりします(現段階ではサゼラック版もブラウン=フォーマン原酒でしょう)。明治屋からアーリータイムズ復活の報があった時、これが輸入されるかと思ったとネット上で語っている人もいました。どうでしょう、ボトルド・イン・ボンド(新樽で最低4年熟成)、ケンタッキー・ウィスキー(中古樽で3年熟成)、ブレンデッド(推定大部分がGNS)と並べてみて、あまりにブランドとして弱くないですか? ブラウン=フォーマンが長年保持したブランドを売却したのは、バーボンに関してはプレミアム路線(オールド・フォレスターやウッドフォード・リザーヴを指す)に一本化するためと発表していました。これはアーリータイムズをプレミアム化することを諦めた、もっと言うと商売にならないブランドだから売ったのではないでしょうか? 企業が儲かるブランドをわざわざ売るとは思えません。逆にサゼラックはアーリータイムズを売れるブランドに出来る自信があったから購入した筈です。なのにこのラインナップは、ボトルド・イン・ボンドとその他の製品間にスペックの差があり過ぎて、市場のニーズに隙間が空いています。例えば、4年熟成80プルーフ、6年熟成90プルーフ等があった方がいいじゃないですか。それに、あの象徴的なイエローラベルをブランディングに用いないなんてどうかしてる。或るブランドにヴァリエーションがある場合、通常は同デザインで色違いのラベルを採用してグレードの差を明示したりします。白いラベルは、先に例に出したエズラブルックスのブレンデッドと同じ色なのからも判るように、バーボンよりもクリアなイメージのブレンデッドに相応しいでしょう。もし、このアーリータイムズ・アメリカン・ブレンデッド・ウィスキーが黄色のラベルで発売されていたとしたら、おそらく「我らのアーリータイムズ」は完全に終わりでした。あゝ、イエローラベルはもう“変わって”しまったんだな、と諦めるしかなかった。しかし、そうはなりませんでした。今回はホワイトという単にグレードの劣るヴァリエーションが増えただけの話。おかげでイエロー復活の余地は残った。もしやイエローは後々のために取って置かれたのではないか? だとしたら、ワンチャン、2025年あたりにイエローラベルの4年熟成のストレート・バーボンがリリースされるなんてこともあるのでは…と私は思っているのです。但し、サゼラックは他社から購入したブランドを上手くプレミアム化するのが得意な反面、何故かバートン蒸溜所の代表銘柄であるヴェリー・オールド・バートンのような伝統的なブランドをぞんざいに扱かっている実績があります。また、もう一つ気になる情報がありまして…。
アメリカのアルコール飲料のラベルは、承認のため財務省のアルコール・タックス・アンド・トレード・ビューロー(TTB)に生産者がラベルの図案および製品の必要な情報を提出しなければなりません。TTBはそれをチェックして承認または却下の判断をし、承認されるとTTBのウェブサイトに掲載されます。これがCOLA(Certificate of Label Approvalの略)と呼ばれるプロセスです。ラベルの承認は必ずしも製品の発売が差し迫っていることや確実にリリースされることを意味する訳ではありませんが、COLAトローラー(TTBのウェブサイトを検索して新製品を探す愛好家のこと)によって逸早く新製品の情報が得れたりするので面白いのです。で、アーリータイムズに関して、2021年の4月1日に新しいラベルが承認され、それは42プルーフだったと言います。はい、アルコール度数42%の間違いではなく、42プルーフのダリューテッド・ウィスキーです。ブレンデッドどころの騒ぎではないですよ? これが本当に販売されるのか、それともこれの代わりにアメリカン・ブレンデッドに変更したということなのか、今のところ判りません。どちらにせよ、昨今のバーボン・ブームにより愛飲家がハイアー・プルーフ及びバレル・プルーフのバーボンを求める世界で、どうしてサゼラック社はこれほど劇的な逆を行くのでしょうか? このダリューテッド・ウィスキーについては、もしかするとオフ・プロファイルのウィスキーを処分するための方法かも知れない、という憶測がありました。つまり、購入したバレルの一部が気に入らないけれど、二次熟成でフィニッシングしたりするよりも水で薄めたほうが簡単でコストも掛からないから、おそらくサゼラックはそれを上手く利用してバーボンへの入り口となるようなロウワー・スピリッツを提供しようとしているのではないだろうか、という訳です。これはエイプリルフールのネタ(4月1日という日付に注目)だろうとも見られますが、そもそもサゼラックが伝統的な銘柄を蔑ろにしていることを揶揄する心がなければ出てこないネタだと思います。それに上の憶測は図らずもブレンデッドの製造理由の説明になってしまっている気もします。と、まあそんなこんなでサゼラックにはアーリータイムズ・イエローラベルの復活など期待できない可能性も大きいので「希望的観測」と言いました。私や日本のアーリータイムズ・ファンの願いが叶うかどうかは、数年待ってみないとはっきりしません。成り行きを見守りましょう。では、そろそろ新しいアーリータイムズ・ホワイトを注ぐ時間です。

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EARLY TIMES WHITE LABEL American Blended Whiskey 80 Proof
推定2022年ボトリング。薄いブラウン。カラメル、ビール、蜂蜜、ピーナッツ、みかん。どこかしら人工的にも感じさせるカラメル香と甘い湿布薬のような清涼感。口当たりはけっこう円やかで、するりとした喉越し。味わいはグレインスピリッツの甘みが強いが、心地良いかと言えばそうでもない。余韻はショートでさっぱり切れ上がり、ほんのり焦樽らしい風味がする。
Rating:71(72)/100

Thought:多分、バーボンをGNSで薄めたものですかね。香りから余韻まで全てにニュートラル・スピリッツ感があります。バートンのGNSのみを飲んだことがないので、フレイヴァー剤が添加されてるかどうかまではよく分かりませんでした。確かに滑らかさは未熟成のスピリッツ、例えばジョージア・ムーンとかよりは遥かにありますし、ブラウンな風味もあるので意外と飲み易いです。滑らかにするためのブレンド剤が使われてるのでしょうか? 開けたてはフレイヴァーが脆弱と言うか未熟成なスピリッツの香りが強い印象をもちましたが、空気に触れさせておくと、一瞬プルーンのような香りも感じる時があり、それなりに飲めます。ただ、ニートで食後のシッピング・ウィスキーとしてよく味わって飲むものではないですね。レーティングの括弧はラッパ飲みした時の点数です。テイスティング・グラスやショットグラスで飲むより味が濃く感じました。YouTube等でイエローとホワイトの飲み比べがされていたりしますが、流石にバーボンとブレンデッドを較べるのは無理があります。カテゴリーの違いから勝負になってないという意味で。これはこれ、あれはあれ、と分けて考えた方が良いでしょう。

Value:バートン蒸溜所のストレート規格のバーボンであるケンタッキー・タヴァーンやケンタッキー・ジェントルマンやザッカリア・ハリスがこれ以下、又はほぼ同じ価格で買える現状を考慮すると、個人的には購入する価値はないと思いました(※追記あり)。もし、昨今の物価上昇で上記のバーボンが2000円程度、ブレンデッドが1000円程度という状況になるのであれば、少しでもバーボンぽいものを安く飲みたい人にはオススメ出来ます。


追記:しばらく輸入が滞っていたザッカリア・ハリスは、2023年2月下旬、イオンが大々的に取り扱いを開始すると発表されました。以前にイオン系列のスーパーで見かけた時は999円だったのですが、今回からは1500円程度に値上がりしていました。

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(このラベルは引き継がれるのか、刷新されるのか?)

以前お伝えしたブラウン=フォーマン所有のアーリータイムズがサゼラックに買収された件ですが、続報が入りました。

今後はバートン1792蒸留所にて、消費者が愛好していたのと同じオリジナルのレシピとマッシュビルを使用して製造するとのこと。それならケンタッキータヴァーンやケンタッキージェントルマンとは違うものになりそうですね。安心しました。切り替えは今年の夏から始まるそうです。味を想像しながら待ちましょう。

今のところブランド戦略までは明かされてないのですが、私はKTやKGのようなエントリークラスと1792スモールバッチのようなプレミアムの中間に位置するレヴェルの製品になるのではと予想します。もしそうならばブラウン=フォーマン社のエントリークラスであったアーリータイムズよりは美味しくなるだろうという期待。まあ、蒸留所が変わればいくらマッシュビルが同じでも確実に違う味にはなるでしょう。従来品のファンはどう思うのか…。

皆さんはどうお考えですか? コメントよりご意見お寄せ下さいね。

えっ、待って、こんな妄想以前に、ちゃんと日本に輸入されるんだよね?


※当ブログのニュース記事の投稿は時間的有効性と内容的有用性がなくなったと判断した時点で削除しようかと思っていたのですが、こんなこともあったね的な資料として残そうかと思い直しました。

※※その後の経過をまとめた記事を投稿しました。

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アーリータイムズ150周年記念ボトルは、その名の通りアーリータイムズの1860年の創業から数えて150年を迎えることを祝して2010年にリリースされました。3000ケース(各24ボトル)のみの数量限定で、375ml容量のボトルしかなく、アメリカでの当時の小売価格は約12ドルだったようです。

アーリータイムズは豊かな伝統とマイルドな味わいで知られるブランドです。創業当時の設立者ジャック・ビームは、業界が余りにも急速に近代化し過ぎていると考え、「古き良き時代」を捉えたブランドを求めて、その名をウィスキー造りの昔ながらの製法(アーリータイムズ・メソッド)から付けました。彼はマッシングを小さな桶で行い、ビアやウィスキーを直火式カッパー・スティルでボイリングする方法が最善と信じていたのです。アーリータイムズの伝統を匂わせるマーケティングは当り、順調に売上を伸ばしましたが、やがて禁酒法の訪れにより蒸留所は閉鎖されました。
一方でブラウン=フォーマン社の創業者ジョージ・ガーヴィン・ブラウンの跡を継いでいたオウズリー・ブラウン1世は、1920年、禁酒法下でも薬用ウィスキーをボトリングし販売するための連邦許可を取得しました。彼は既存の薬用ウィスキーの供給を拡大するために、1923年にアーリータイムズ蒸留所、ブランド、バレルの全在庫を買い取ります。1925年にオウズリーはアーリータイムズの全てのオペレーションをルイヴィルのブラウン=フォーマンの施設に移しました。禁酒法が発効すると1900年代初頭の多くの人気ブランドは姿を消しましたが、ブラウン=フォーマンによって買われていたアーリータイムズは絶滅から免れ、薬用ウィスキーとして販売され続けたことにより消費者から忘れ去られませんでした。1933年に禁酒法が終了した後、ブランドは黄金時代を迎えることになります。オウズリーのリーダーシップの下、ブラウン=フォーマンは1940年にルイヴィルの南にあったオールド・ケンタッキー蒸留所を買収し、そこをアーリータイムズの本拠地としました(DSP–354)。そして1953年頃には、アーリータイムズはアメリカで最も売れるバーボンとなりました。広告ではブランドを「ケンタッキー・ウィスキーを有名にしたウィスキー」とまでアピールしたほどです。1955年、ブラウン=フォーマンはプラントの全面的な見直しと近代化を行いました。まだまだバーボンは売れる商品だったのです。
しかし、70年代はバーボンにとって冬の時代でした。ブラウン=フォーマンは1979年になるとルイヴィルのオールド・フォレスター蒸留所(DSP-414)を閉鎖し、同バーボンの製造をアーリータイムズ・プラントに移管しました。その頃、二つのブランドの品質に影響を与える重要な決定が下されます。オールド・フォレスターは同社の看板製品なのでプレミアム・バーボンとして選ばれ、アーリータイムズは二種類の製品に分けられてしまいました。一つは輸出用の製品で「ケンタッキー・ストレート・バーボン・ウィスキー」規格を保持しましたが、もう一つのアメリカ国内流通品は80年代初頭に新樽ではない中古樽で熟成された原酒を含むため「バーボン」とも「ストレート」とも名乗れない「ケンタッキー・ウィスキー」となったのです。もしかすると、その時に熟成年数もまた短くしたかも知れません(3年熟成)。こうして、嘗て栄光を誇ったアーリータイムズはアメリカでは最高のブランドではなくなりましたが、ボトムシェルフ・カテゴリーの中では存在感は示したでしょうし、海外、特に日本ではバーボンの代名詞的存在であり続けました。
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この150周年記念ボトルは、1923年当時ブラウン=フォーマン・ディスティラーズ・コーポレーションの社長だったオウズリー・ブラウン1世が薬用ウィスキーとしてボトリングした時のアーリータイムズのフレイヴァー・プロファイルを見習って造られている、と同社の統括的なマスターディスディラーであるクリス・モリスは語っています。
禁酒法時代の薬用ウィスキーの殆どは時宜遅れのボトリングでした。それらには本来ディスティラーが意図していたより3倍長く熟成されたウィスキーが入っていたのです。1923年という初期禁酒法下で、ブラウン=フォーマンは5~6年程度の熟成のアーリータイムズを薬用ウィスキーとしてボトリングし始めました。それはライトな蜂蜜色で、メロウ・オークにブラウン・シュガーにヴァニラの香り、シンプルなスイート・コーンとヴァニラと仄かなバタースコッチの味わいをもち、過ぎ去りし最高のアーリータイムズを偲ばせると云います。つまり、そうした禁酒法の初期に販売されたであろうメディシナル・アーリータイムズ・プロファイルを模倣するために、「アーリータイムズ・ケンタッキー・ウィスキー」のプルーフを引き上げ、更に熟成年数を引き延ばすアプローチをした物が、この150周年アニヴァーサリー・エディションという訳です。また、ボトルと言うかパッケージングも禁酒法時代のウィスキーのデザインになっていますが、このラベルのデザインが実際あった物の復刻なのかどうか私には分かりません(※追記あり)。実情をご存知の方はコメント頂けると助かります。それは偖て措き、2011年になるとブラウン=フォーマンはアメリカ国内で「アーリータイムズ354バーボン」なるストレート・バーボン規格の製品を発売しました(レヴューはこちら)。私には何となく、発売時期からするとこのアニヴァーサリー・エディションには、従来のボトムシェルファーとは違う少しプレミアム感のある「354」の売り上げを伸ばすための地ならしと言うか「アーリータイムズの栄光よもう一度」的な?宣言の役割があったように思えてなりません。まあ、空想ですが…。 
では、そろそろ飲んでみましょう。

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EARLY TIMES KENTUCKY WHISKY 150TH ANNIVERSARY EDITION 100 Proof
2010年ボトリング。バターレーズンクッキー、フローラル、焦樽、焼いたコーン、ワカメ、ホワイトペッパー、微かなチェリー、藁。少しとろみのあるテクスチャー。口蓋ではアルコール刺激はまずまずありつつ、木材とスパイシーさが。余韻はミディアム・ショートで、豊かな穀物を主に感じながらビタネスとスパイスとフルーツと香ばしさがバランス良く混ざり合う。
Rating:83.5→82.5/100

Thought:通常のアーリータイムズとは一線を画す現代のプレミアム・レンジのバーボンに感じやすい香水のような樽の香ばしさがあります。これの前に開けていたアーリータイムズ・プレミアム(90年代)とも全然違うフィーリングで、連続性はなく感じました。とは言え、それが件のバーボンではないケンタッキー・ウィスキーだからなのか、熟成年数の追加とプルーフィングその他によるものなのかは分かりません。少なくとも私には「これバーボンです」と提供されればバーボンと思う味わいでした。基本的には、何というかそれほどコクのない香ばし系とでも言いますか、美味しいのですが、個人的にはもう少し甘みかフルーツ感が欲しいところ。メロウネスもあまり感じないので、熟成年数はいいとこ6年くらいかなという印象です。正直、クリス・モリスには申し訳ないですが、これは禁酒法時代の風味を再現してるとは思えず、完全に現代的な樽の風味だと感じました。
それと上の点数なのですが、残量3分の1を過ぎた頃から風味がかなり変わりまして、それゆえ矢印で対応した次第です。香りは甘さが消え、口の中では酸味が少し増え、余韻はドライになり、バランス的には穀物とスパイスに偏りました。劣化した味わいではないのですが、良い変化とは言えないし、私の好みではないです。

Value:この製品は通常ボトルの凡そ半分量ということもあり、オークションでもそれほど高値にならず、70年代のイエローラベルより安価で購入出来ると思います。味わい的に物凄くオススメという訳でもないのですが、パッケージングがカッコいいのでそれなりの価値があります。デザインを含めて考えると、個人的には3000円代なら購入してもよいかと。


追記:どうやらラベルのデザインに関しては禁酒法時代より古い時代のものを再現しているようです。これが元ネタ?
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この150周年記念ボトルより以前、120周年記念の時にリリースされたヘリテッジ・エディションもこれが元ネタで、それが30年後にも引き継がれたのかも知れませんね。

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昨日、報道されご存知の方も多いと思いますが、なんと、あの日本では最高の知名度を誇るバーボンブランド、アーリータイムズがブラウン=フォーマンの手を離れサゼラックへ行くことになりました。このブランド売買は今年の夏の終わりに完了する予定です。

アーリータイムズは今年で160周年を迎えるビッグネームで、禁酒法期間中から今に至る長い間ブラウン=フォーマンが所有して来ました。しかし、現在のアメリカのバーボン市場に於いては決してプレミアムなブランドイメージを獲得出来ていませんでした(昨今リリースのブルーラベルのボトルド・イン・ボンドは比較的好評だったのですが…)。逆にサゼラックはオールドテイラーをビームから買収後プレミアムラインのバーボンにリニューアルした実績があります。

ブラウン=フォーマン社によれば、この売却は今後ウッドフォードリザーヴのようなプレミアム製品に焦点を絞るポートフォリオ戦略の継続的進化の一部とのこと。

現在のアメリカのバーボンブームは安価なバーボンではなく、プレミアム志向のバーボン人気に支えられています。となると、これってBFがアーリータイムズを切り捨てたように見えなくもないような…。COVID19のパンデミックが影響しているのか裏事情は分かりませんが、日本人にとってこれはビッグニュースですよね? 

おそらくサゼラックはアーリータイムズのブランド権の他、熟成樽の在庫も取得するでしょうし、日本での販売実績があるのも知ってるでしょうから、当面は変わりないとは思います。しかし、その後は? 

サゼラックがどういったブランド戦略をとるのか現段階では一切明らかではありません。プレミアムに一本化してバジェット・バーボンでなくするのか? それともプレミアムラインとバジェットラインの二本立てで販売するのか?

いや、そもそもどこの蒸留所で生産するつもりなのでしょう?

サゼラックはバーボンを製造する蒸留所を幾つか所有してますが、有名かつ生産量が多いのはバッファロートレース蒸留所とバートン蒸留所です。もしバッファロートレースで生産し、マッシュビルをコピーせず、酵母も引き継がず、なお安価なエントリークラスのバーボンとして存続するなら、エンシェントエイジかベンチマークとほぼ変わらないアーリタイムズになりますよね? 一方で、バートンで生産するなら、ケンタッキータヴァーンやケンタッキージェントルマンとほぼ同じになるでしょう。逆に、マッシュビルをコピーし、酵母も引き継ぐのであれば、蒸留所のレシピが増えますけれども。或いは別の蒸留所で生産する可能性だってあるのかなぁ…と、あれこれ考えると楽しいですよね。それはともかく、日本で流通するアーリータイムズは近年ラベルがリニューアルされたばかりだというのに、数年後には味わいも一新する可能性は大きそうだという話です。DSP-KY-354をまるごと購入して、なおかつ樽もブラウン=フォーマンのクーパレッジから調達するのでなければ…。
皆さんは今回のニュースやアーリータイムズの今後についてどう思うでしょうか? ご意見ご感想コメントよりどしどしお寄せ下さい。ではでは、バーボンで世界に平和を。


※当ブログのニュース記事の投稿は時間的有効性と内容的有用性がなくなったと判断した時点で削除しようかと思っていたのですが、あゝそんなこともあったね的な?資料として残そうかと思い直しました。

※※その後の経過をまとめた記事を投稿しました。

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2019年にラベルを一新したアーリータイムズ。そのラベルはアーリータイムズの創業者ジャック・ビームではなく、中興の祖サールズ・ルイス・ガスリーをフィーチャーしたものになっています。そのことも驚きでしたが、これだけ安価なブランドなのにラベルをただの色違いにせず、ほんの少しデザインを変更しているのも注目点。ブラウンの方はガスリーの横顔の絵がラベル正面に来ています。
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ガスリーについては以前投稿した新イエローラベルのレヴューで紹介してますのでご参照下さい。今回はブラウンラベルを試してみます。ブラウンラベルとイエローラベルの違いについてはこちらを。

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EARLY TIMES Brown Label 80 Proof
2019年ボトリング。ローストバナナのキャラメルソース掛け、焦樽、コーンチップス、接着剤、僅かにフローラル、ペッパー、ほんのりシャボン玉。水っぽく柔らかい口当たり。味わいはイエローよりややスパイシー寄りでさっぱりめ。余韻は短く、少しビター。
Rating:77/100

Thought:どうも昔飲んだブラウンラベルより美味しくない気がしました。私がイエローラベルに感じ易いと思っていたアーリータイムズ独特の嫌な風味を今回のボトルには感じます。また、私の記憶よりフルーティさも幾分か欠けるように感じましたし、余韻も苦いように思いました。以前に投稿したイエローとブラウンを比較する記事では、ブラウンの方を高く評価していたのですが、なぜか新しいラベルになってからのアーリータイムズに関してはイエローの方が美味しかったです。ここ数年で私の味覚が変わったのか、単なる気のせいなのか、それともアーリータイムズのバッチングの差なのか、謎。
ちなみに先日まで開封していたアーリータイムズ・プレミアムと比較すると、バカらしいほどにプレミアムの方が旨かったです…。

Value:否定的なことばかり書きましたが、価格の安さが最大の価値であるバーボンなので、 難癖をつけるつもりはありません。千円ちょっとでこれが飲めるのはありがたい話だと思います。ヘヴンヒルやジムビームの1000円代で購入できるバーボンより風味が濃いと評価する人もいますし、飲んだことのない方は迷わずトライしてみて下さい。しかも是非ストレートで。安いバーボンはハイボール専用などと思わずに。実際のところかなり美味しいですよ?

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アーリータイムズ・プレミアムは日本市場限定の製品です。調べてみると1993年から発売され、1997年に終売になったとの情報がありました。後の2011年リリースで2014年に製造停止となった「アーリータイムズ354バーボン」同様、このプレミアムも短命だった訳です(354の過去投稿はこちら)。どちらも3~4年で製造されなくなったところを見ると、あまり売れなかったのでしょう。

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(アメリカ流通のアーリータイムズ・ケンタッキーウィスキー)

アーリータイムズのアメリカ本国での流通品は、1983年にそれまでの「ストレートバーボン」規格から中古樽熟成原酒を含む「ケンタッキーウィスキー」への転換がありました。そう、我々日本人がバブル時代に大量のバーボンを輸入し、バーボンブームが到来していたあの頃、「バーボンと言えばやっぱりアーリータイムズだよね」と憧れていたバーボンは、既に本国ではバーボンではなくなっていたのです。アメリカに於けるアーリータイムズ・ケンタッキーウィスキーはボトムシェルフの王者だったかも知れませんが、そのブランド・イメージは「古臭くて安い酒」だったに違いありません。恐らくそうした負のイメージを刷新しようとしたのが354バーボンの発売だったと思われます。しかし、ほんのちょっと先走り過ぎたのか、単なるマーケティングの失敗なのか、とにかくその目論みは外れました。製造中止のアナウンスの際にブラウン=フォーマンのスポークスマンは、消費者はアーリータイムズにプレミアムを求めていなかった、という趣旨の発言を残した程です。
一方、アーリータイムズの輸出用製品はケンタッキー・ストレート・バーボンとして継続されました。世界的な知名度は絶大であり、特に日本では確固たる地位と販売量を誇るブランドだったからです。では、その日本ですらそれほど売れなかった(と思われる)アーリータイムズ・プレミアムとは一体何なのでしょうか?

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ラベルのサイドに書かれた文言はバーボンのありきたりの常套句ばかりで読む価値もないものです。はっきり言えば、ボトルのみから判断できる情報では度数が3%ほど高い43度ということだけ。このプレミアムについて調べていると、或るブロガーさんの記事で「当時価格で1500円」とありました。随分と安くありません? まあ、354バーボンもアメリカでは17ドル前後の販売だったので、「プレミアム」とは言ってもアーリータイムズ自体がバリュー・ブランドだし、ちょっと上位だよ程度の意味しかないのでしょう。1997年発行のバーボン本によると、イエローとブラウンが参考価格で2700円、プレミアムが4000円とあり、実売価格ではないけれどそれなりの差額があります。そして、その本の製品説明によれば、

「プレミアムは、品質へのこだわりをより徹底させた日本限定品。原料を独特の比率で組み合わせ、酵母も専用のものを使っている。熟成が、香りと色、味わいに深みをあたえている。」

とのこと。え? マジで!? 正直言って、この手の本に載っているインフォメーションは疑わしいものが多く、どこまで信憑性があるのか判りません。アーリータイムズ自体の紹介には比較的紙面が割かれてはいますが、97年発行という時期柄か、96年発売のブラウンラベルについて多く語られ、プレミアムに関しては上の引用文だけしか記述はないのです。取りあえずこの件は後で少し触れるとして、このプレミアムという製品、パッケージングがヒドくないですか? プレミアムを謳いながらラベルの色がブラウンとカーキの中間色? え、売る気あるの? スタンダードのイエローより地味になってますけど? プレミアムが販売されていた当時、熟成年数やボトリング・プルーフの違いによってラベルの色の違う2~3種類のヴァリエーションを揃えたバーボンが沢山ありました。その中で、アーリータイムズにも少し度数の高いヴァリエーションがあるのは自然の流れだろうし、ネームバリューだってずば抜けているのだから、プレミアムが売れる潜在能力は大いにあったと思うのです。いくら「水割り文化」の日本人に最も売れているブランドだったとしても、ハイアー・プルーファーが売れる素地はなくはない筈。通常、ボトルやラベル・デザインを変えずにより良質なヴァリエーションもリリースする場合には、上位の物に高価そうに見える派手な色のラベルを使う傾向にあります。スタンダードが白や黒なら、上位のクラスには赤や銀や金などを使うという具合に。ひとえにプレミアムが売れなかった原因はパッケージにあったのではないでしょうか? この渋すぎる色ラベルのアーリータイムズは、どう見てもイエローラベルの廉価版にしか見えず、プレミアム感の欠片もありません。これでは売れる訳がない……と、ここまではプレミアムが売れなかったから終売になったという前提で話を進めました。ですが、逆に順調に売れていたという可能性も考えられます。これについても後で述べることにし、先ずは飲んだ感想を書きましょう。

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Early Times Premium 86 Proof
1993年ボトリング。キャラメル、焦樽、ブラウンシュガー、ダークフルーツ、バナナ、米、ほんのりバター、絵の具。甘い香りにフルーティさが潜むアロマ。澄んだ酒質。口当たりは水っぽいものの風味はしっかりしている。香りにスパイシーなトーンは感じないが、液体を飲み込んだ後には穏やかなスパイスが現れる。余韻は43度にしてはやや長めで、緩やかな穀物の甘さとビタネスが同居。
Rating:84.5/100

Value:これ、美味しいです。ユニークな風味はありませんが、すっきりしつつコクのあるバランスの取れた味わい。スタンダードのイエローより幾分かフルーティで、イエローラベルに感じやすい嫌な風味も薄いように思いました。今でも2000円程度で販売されていれば常備酒としてもいいですね。ただ、残り三分の一で暫く放置していたら、甘味が弱くなって程よい接着剤が前面に来てしまいました。上のテイスティング・コメントはその前に書いたものです。オークションでのタマ数はそう多くありませんが、今のところ高騰してない銘柄なので、2500~3000円程度で落札出来る模様。

Thought:さて、プレミアムの中身に関してなのですが、飲んでみた感想が飲む前の予想をかなり越えていたこともあり、幾つかの可能性を考えてみました。先ずは、上記のバーボン本自体の信用性がなく、件の引用文もテキトーに書かれたデタラメなものだと仮定した場合、

①単純にイエローラベルよりボトリング・プルーフが高いだけ。だが、3度の違いが風味に及ぼす影響は大きい。
②使われている原酒の熟成年数が僅かに長い、もしくはイエローラベルよりクオリティの高い樽が選ばれている。
③イエローラベルとはトーストの具合が違う樽が使われている(*)。

と、考えるのが妥当だと思います。問題はその引用文が信頼できる真実の情報だと仮定した場合です。注目は「原料を独特の比率で組み合わせ、酵母も専用のものを使っている」という部分。酵母は一旦おいて、この前半の文を素直に解釈し、言葉を補うならば、「イエローラベルとは違うプレミアム独自のマッシュビルを使っている」と言っています。私は過去にイエローラベルとブラウンラベルの比較レヴュー(こちら)を投稿し、そこでブラウンラベルのマッシュビルについて紹介しましたが、このプレミアムまでもが全く別のマッシュビルを使ってるとは到底思えないのです。マッシュビル、特にフレイヴァー・グレインであるライ麦の比率は味わいに大きな影響を与えます。違うブランドにするならまだしも、同じブランド、同じラベルデザインの色違いで、通常そこまではしないでしょう。しかも日本だけのために、更には廉価な販売価格なのにです。しかし、今は引用文が正しいという仮定で話を進めています。そこで思い付いた解釈理論が、

④プレミアムはブラウンラベルの前身であり、中身はブラウンラベルのハイアー・プルーフ・ヴァージョンだった。

というものです。これは実際プレミアムを飲んでみてイエローラベルより私好みだったことから思い付きました。何となくイエローよりライ麦の影響を感じるような味の気がしたのです。ですが、私自身は味覚音痴ですし、それくらいの風味の違いはボトリング・プルーフの差や熟成の具合でどうとでもなりそうな気もし、また同時期のイエローとブラウンとプレミアムをサイド・バイ・サイドで飲み較べした訳でもないので自信はありません。あくまで珍説であり可能性の提供という意図しかないのです(飲んだことのある皆さんのご意見、どしどしコメントへお寄せ下さい)。そして、珍説ついでに妄想を膨らませてみると、実はプレミアムはよく売れていたのではないか?とまで思い直し、

⑤プレミアムは実験的に開発され、日本市場で好評だったが、のちに日本人の味覚に合わせて40度にプルーフィング・ダウンし、ブラウンラベルとしてリニューアルされた。

というストーリーまで考え付きました。プレミアムの中止が97年、ブラウンの発売が96年ですから、なくはない推論かなと。まあ、どれもバーボンファンのとりとめのない与太話と思って聞き流して頂ければ幸いです。暇潰しには最適でしょう?(笑)。それと、身も蓋もない言い方ですが、

⑥単に90年代のボトルは今よりレヴェルが高かった。

という説も付け加えておきます。
最後に酵母に関してですが、件のバーボン本によるイエローとブラウンの違いの説明では、イエローラベルは「熟成期間の異なる酵母を4種類混ぜ合わせて」あり、ブラウンラベルは「イエローラベルの4種類の酵母に、性質と熟成期間の異なる3種類の酵母をプラスして華やかさを醸し出す」とあります。これってまるでフォアローゼズ蒸留所のようですよね? ブラウン=フォーマンもこうしてバーボンを造ってるという話を私は他では聞いたことがないのですが、本当なのでしょうか? こちらもご存知の方はコメントよりご教示頂ければと思います。


*ここで何度も言及しているバーボン本のアーリータイムズ・ブラウンラベルの説明では、トーストの加減がイエローラベルとは違う旨が記されています。③はそこからの類推として、プレミアムもそうだった可能性を示唆しました。

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つい最近アーリータイムズの日本向けラベルが新しくなりしました(2019年4月から)。近所のスーパーにてリニューアル記念として少し安かったので、さっそく購入してみた次第です。一目で分かるように、従来品にあった掘っ建て小屋?のような古めかしい蒸留所の絵柄がなくなりました。SNS上での新ラベルの投稿をざっと眺めてみると、前の方が良かった、という意見が多い印象を受けます。また私の周囲の友人に尋ねても、概ね同じ結果でした。私としては初めて見た時、カッコよくなったなぁと思ったのですが、どうも少数意見のようで…。まあ、私の所感は措いて、このデザインなのですが、ネットで海外のアーリータイムズを検索してみると、どうやらヨーロッパでは数年前からこのラベル・デザインが採用されていたようです。それはラベルの文言に少々の違いがあり、名前も「EARLY TIMES OLD RESERVE」と言う名称になっています。で、これ、ラベルにストレートの記載がなく「KENTUCKY BOURBON WHISKEY」となっているので、バーボン規格ではあってもストレート規格ではないと思われます。もしかすると熟成期間が2年以下の原酒が混ぜられているのかも知れませんね。また、ロシアでは「EARLY TIMES OLD 1860」という名称のものが販売され、こちらはバーボン規格ではない「KENTUCKY WHISKEY」となっています。アメリカ本国と同じように中古樽で熟成した原酒が混ぜられているのでしょう。ともかくも、こうして世界のボトルを見てみると「KENTUCKY STRAIGHT BOURBON WHISKY」が販売され続けている日本でのアーリータイムズの絶対的な人気ぶりを改めて実感します。

さて、この新しいラベルデザインの注目点は、S. L. Guthrieを前面に押し出していることです。
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彼について、現在の取り扱いもとであるアサヒビールの公式ホームページではこう説明されています。

「アーリータイムズ蒸溜所は、1920年に禁酒法が施行されたことにより、その他の蒸溜所同様、存亡の危機に瀕する。しかし、従業員であったサールズ・ルイス・ガスリーがブランドを守るべく意を決して私財を投げ打ってアーリータイムズの商標権、在庫を買い取り、秘密の倉庫にウイスキーを隠すことで、伝統を途切れさせなかった。
その後、医師が処方する薬用ウイスキーとして認可されたことで、例外的に広く飲まれるようになり、アメリカ国内でも有数の販売数を誇るバーボンウイスキーとなった。」

それにしても、なぜ今頃になってから急にガスリーの名前を持ち出して来たのでしょうか? 創業者を差し置いて? 理由は分かりません。ですが、アーリータイムズの歴史を繙くとガスリーの名は確かにそこに記されています。

蒸留一家としてのビーム家の始租ジェイコブ・ビームの孫でありデイヴィッド・ビームの息子であるジャック・ビームにより、1860年に創設された蒸留所とその造り出すブランドは、前時代の伝統的な製法への敬意を表してアーリータイムズと名付けられました。バーボンが徐々に近代化して行く流れの中での、マーケティングとブランディングに於けるノスタルジアをウリにした初期の好例と言えるでしょう。アーリータイムズはその「古き良き時代」を思わせる名前にも拘わらず、バーズタウン近くのL&N鉄道の隣に、輸送の利便性を考慮して戦略的に設置された近代的な蒸留所でした。伝え聞くところでは非常に清潔な操業を行っていたとされています。
1880年代になるとパデューカ・ネイティブのB.H. ハートという有能なビジネスマンが企業パートナーとなって社長を務め、ジャックは副社長兼ディスティラーを務めました。この時代にブランドはより強固になって人気を得、需要の増加により1890年ま​​でにプラントは大幅な増産を見せました。世紀の変った直後にハートは自分の株式をビームに売却し、その頃ジャックの甥でゼネラルマネージャーだったジョン・ショーンティが3分の1の株を購入します。 サールズ・ルイス・ガスリーは1907年頃、見習いのオフィス・ワーカーとして入社し働き始めました。そして、後に蒸留所のアシスタント・マネージャーまで出世したようです。
1915年5月11日、創業者ジャック・ビームはこの世を去り、甥のジョン・W・ショーンティが会社を引き継ぎ社長になりました。ジャックの息子であるエドワードも会社と関係がありましたが、彼は父親の死の数ヶ月前に42歳で死亡しています。禁酒法の足音が聞こえてきた1918年頃に蒸留所の操業は停止され、1920年にガスリーが蒸留所と農場を買い取りました。1922年にジョンが亡くなった後、 1923年にガスリーはアーリータイムズのブランドとストックをブラウン=フォーマン社に売却。彼らは「薬用スピリット」を販売する許可を得ており、増加する処方箋の需要を満たすための新たなバーボンの供給を必要としていたからです。それ以来、今に至るまでアーリータイムズはブラウン=フォーマンが所有しています。

ガスリーはセンセーショナルなアイデアを持った起業家であり、豪胆なギャンブラーでもあったのでしょう。禁酒法が施行され始める直前に、彼は蒸留所を急稼働させ、その多くのウィスキーを自分の地下室に貯蔵したと言われます。元禁酒捜査官に銃口を突きつけられて樽が盗まれたこともありましたが、危険を顧みずに、ガスリーはバーズタウン警察へのコネを使って、何とか樽を家に持ち帰ったこともあったとか。ガスリーの報われたギャンブルは、アーリータイムズ・ウィスキーを守ったことだけが唯一のものではなく、彼は犀利なカード・プレイヤーでもあったので、ポーカー一つでキャデラックを勝ち獲ったこともあったと言います。
またこんなエピソードもあります。ジョン・ショーンティの死後、残されたその未亡人は暫く後にデズモンドという名の若い男性と交際しました。彼女は彼が結婚しようとしていると信じ込んでいて、二人連れたってアトランティック・シティへと旅行に出掛けましたが、そこで男はかなりの金額といくらかの宝石類を巻き上げ、すぐに彼女を見捨てました。男は結婚詐欺師だったのです。蒸留所オーナーの妻ともなれば身分やその資産は想像に難くありません。狙われたのでしょう。ショーンティ夫人は無一文ですっかり立ち往生したままだったので、ガスリーは彼女を迎えに行って家に帰してあげたそうな。
ガスリーが彼のウィスキーを守るために経験と知性と富の全てを投資しなかったとしたら、アーリータイムズは今日我々の口に入らなかったかも知れませんね。それでは、ありがたく現在のアーリータイムズを頂くとしましょう。

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EARLY TIMES Kentucky Straight Bourbon Whisky 80 Proof
推定2018年?ボトリング(瓶底に18のエンボス)。メープルシロップをかけたパンケーキ、キャラメルマキアート、焦がした木材、鼈甲飴、微かなフローラル、コーンチップス、ココア。円やかな口触り。基本的にグレイン・フォワードなフレイヴァーにたっぷりのブラウンシュガー。フルーツで言うとバナナ。余韻に延びはないが、軽くスパイシーさもあり悪くない。
Rating:77.5/100

Thought:以前のラベルの物と比較して、それほど大差はない印象を受けました。口にいれた瞬間、ああ、アーリータイムズの味だなぁ、と。しかし、そう感じたのに以前投稿した比較対決シリーズでイエローラベルをレーティングした時とは、点数を変更しました。その時はブラウンラベルとの飲み較べという状況が、イエローに不利に働いてしまったのかなと今では思ったのです。単体で飲むと全然美味しく感じてしまいました。
アーリータイムズは同程度の価格帯のバーボンと比較してかなり甘さが際立ち、そして80プルーフにしては風味も濃いめな気がします。もう少し価格帯が上位のバーボンにありがちなタニックなドライネスもなく、あるとすれば若さ故のアルコールの刺々しさの筈ですが、それも活性炭濾過のお陰か円やかさのほうが感じました。

Value:「結局はアーリータイムズが初歩にして究極なんだよね」と言う意見があったとしても、私には全く反論する気は起きません。これが一番美味しいバーボンとは思っていないにも拘わらず、1300円程度の値段でバーボンらしい甘さが味わえ、全国津々浦々どこでも手に入る流通範囲の広さも考慮すれば、それこそ究極と言うべきなのは理解出来るからです。日本に於けるアーリータイムズの受容の広がりと深みは、アーリータイムズを日本のバーボン飲みの「故郷(戻るべき場所)」にしてしまったとすら思います。これが価値でなくて何が価値でしょうか。

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EARLY TIMES 354 BOURBON
アーリータイムズ蒸留所の創業は1860年と言われており、ジム・ビームの叔父にあたるジャック・ビームがバーズタウン近くのアーリー・タイムズ・ステーションにて創始したとか。禁酒法の施行は小さな蒸留所に大きな打撃を与え、数多くの蒸留所が廃業に追い込まれました。アーリータイムズも例外ではなかったのでしょう、1923年からブラウン・フォーマンに買収され生き延びているブランドです。50年代にはアメリカで最も成功したブランドの一つでしたが、1983年以降アメリカ国内ではバーボン規格ではなくケンタッキーウィスキーとして販売され(*)、国外輸出向けにはストレート規格のバーボンとして人気を博してはいたものの、本国では最下層のアメリカンウィスキーの地位に甘んじているように見えます。ところが2011年に突如この354と名付けられたバーボン規格のアーリータイムズが発売されました。あまり売れ行きが芳しくなかったせいか、2014年に終売となりました(**)。

354という数字はアーリータイムズを造るプラントの連邦許可番号(DSP-KY-354)から由来しています。熟成年数はNAS(No Age Statement)ながら4年とされ、特別に選ばれた樽からボトリングされているようです。
通常のイエローラベルと較べるとフレッシュフルーツ感が強まっている印象。オレンジやリンゴっぽい。やや水っぽく、澄んだ酒質。確かにイエローラベルより高級なテイストは感じられるが、正直言って物足りない。おそらく43度でボトリングしてくれてればもう少し美味しかったに違いない。ボトルのデザインは古めかしくてカッコいいのだが…。
Rating:81/100


*古樽で3年熟成された原酒が混ぜられているためバーボンと名乗れない。

**今ではボトルド・イン・ボンド規格のアーリータイムズが発売されてます。

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