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2020年6月、アーリータイムズを長年所有していたブラウン=フォーマン社はブランドと在庫をサゼラック社に売却すると発表しました。このニュースは日本のアメリカン・ウィスキー愛好家の間でも驚きをもって迎えられました。日本に於いてアーリータイムズは、ジムビームやI.W.ハーパー、フォアローゼズやワイルドターキーと並ぶバーボンの超々有名銘柄であり、ブラウン=フォーマン時代のイエロー及びブラウンのラベルは確実に日本に根付いていたからです。この売却により、先ずは2021年5月末で日本限定の製品であったブラウンラベルが終売となり、ファンからは悲しみの声が上がりました。同年4月にはサゼラックから今後アーリータイムズは傘下のバートン1792蒸溜所にて消費者が愛好していたのと同じオリジナルのレシピとマッシュビルを使用して製造すると発表されていました。2021年の末頃になると、ラベルのデザインはほぼ同じながら従来のボトルと少しだけ形状が異なりキャップが金属製のサゼラックが詰めた新しいボトルが市場に出たようです。私はその新しいボトルを直接見たことがないのですが、当ブログへのコメントで知り、またYouTubeで投稿されているのも見かけました。なんでもイエローラベルが澱のせいで全回収されたという情報もネット上で見かけ、そのせいなのか分かりませんが、確かにサゼラック版のイエローラベルは市場にそれほど出回ってない印象があります。だから私が実物を見たことがないのかも知れません。日本での販売元だったアサヒビールは2021年12月8日に、イエローラベルの全4規格のボトル(1750ml、1000ml、700ml、200ml)は商品供給が追い付かないため一時休売とし、再発売の日程に関しては現時点で未定、決まり次第、当社ホームページにてお知らせします、と既にアナウンスしていた模様。2022年2月頃になるとソーシャル・メディアでイエローラベルが自宅の近くの酒屋にないと報告されていました。実際、私も同じ頃、遠方の友人から「自分の住んでる地域だと長年愛飲してるイエローラベルが入荷しないみたいで今エヴァンウィリアムスのブラック飲んでるんですけど何か他にオススメのバーボンありませんか?」とLINEで直接相談されました。もともとタマ数の多かったイエローラベルはあるところにはあり、ないところにはたまたまない、といった状況だったのでしょう(これは今現在でもそうかも知れません)。戦争やコロナの影響もあって輸入が滞っているのだろうと思っていたら、数カ月後の6月22日、アサヒビールは公式にアーリータイムズの取り扱いが終了したことを発表します。えっ!?と驚いたのも束の間、翌23日には明治屋がサゼラック・カンパニーと日本市場に於けるアーリータイムズやバッファロートレース等の総代理店契約締結に向け合意に至り、上記ブランドを含む7ブランドの取り扱いを開始すると発表しました。へー、正規代理店が変わるのか、まあバートン産のアーリータイムズが安定して輸入されるならオッケーだよね、と思いつつ待つこと更に数カ月。明治屋は9月14日に、アーリータイムズ・ホワイトというアメリカン・ブレンデッド・ウィスキーを9月20日から順次全国の小売店へ出荷開始し、世界に先駆けて日本で先行発売するとのプレス・リリースを出しました。は?、ブレンデッド・ウィスキー!? よく知られるようにアメリカ国内流通のアーリータイムズのエントリー・クラスは、ウィスキーの一部を中古樽で熟成させているためバーボンを名乗れない「ケンタッキー・ウィスキー」です。それですらストレート・バーボンのアーリータイムズを飲み慣れた我々日本人にはおそらく不満足だろうと思われるのに、更にスペック的に劣るブレンデッド・ウィスキーになるだと? ウソ、やだ、もう何も信じられないわ!と驚いたのは私だけではなく、日本全土のバーボン好きがそうだったのではないでしょうか?

アメリカで「Blended whiskey」または「Whiskey a blend」と呼ばれるのは、少なくとも20%のストレート・ウィスキーを含み、残りはウィスキーまたはニュートラル・スピリッツで構成された製品のことです。その「残り」の部分(概ね75〜80%)には、ごく一部のケースではハイプルーフのライト・ウィスキーである場合もありますが、一般的にはグレイン・ニュートラル・スピリッツ(GNS)が使われることが殆ど。GNSはざっくり言うとウォッカのようなものです。そしてブレンデッド・ウィスキーは無害な着色料、香味料、またはブレンド材料を含むことが出来ます。
アメリカに於けるブレンデッド・ウィスキーの歴史はレクティファイアーが築きました。その起源はカラム・スティルの発明によってニュートラル・スピリッツの生産が可能になった19世紀初頭に遡ります。当時ウィスキーの品質は、蒸溜所間だけでなく、一つの蒸溜所内でもその操業毎に大きく異なっていました。品質は蒸溜所の職人のスキル、天候、その他多くの要因に左右され、おそらく最も重要なのは運だったとすら言われています。一貫性と品質の問題は、ジェイムズ・クロウ博士がサワーマッシュ・プロセスを標準化した後でも、まだ解決されずに残っていました。当時、蒸溜所で蒸溜されたウィスキーは直接消費者に届けられることはなく、先ずは流通業者に販売されました。彼らは自分達が購入した少し良いウィスキーとちょっと悪いウィスキーの品質を均一にするためにレクティファイアーになりました。「レクティファイ」は「修正する」という意味です。彼らには不出来な造りのウィスキーをレクティファイすることを通して市場価値のあるものに変化させる意図がありました。レクティファイアーの多くは1種か2種またはそれ以上のウィスキーを混合して自ら望むフレイヴァー・プロファイルを作成する一方で、出来の良くないウィスキーは再蒸溜してニュートラル・スピリッツに調整し、その後、熟成された良質のウィスキーと様々な割合で混ぜ、そこにカラメルや砂糖、シェリーやプルーンジュース等の雑多なフレイヴァーを加え、木炭または骨粉でフィルタリングを施したりして独自のブレンデッド・ブランドをクリエイトしました。これが今ブレンデッド・ウィスキーと呼ばれるもののルーツです。彼らの加えた着色料や香料の一部には身体に有害で危険なものも使用されていました。また、嘘の熟成年数の主張を含む汎ゆる種類の虚偽の主張を製品に対して行っていました。この慣習は今日のようなラベルには真実を記載しなければならないという法律がなかったため違法ではなかったのです。これらの問題が1897年のボトルド・イン・ボンド・アクトと1906年のピュア・フード・アンド・ドラッグ・アクト、そしてストレート・ウィスキーやブレンデッド・ウィスキーを規定する1909年のタフト・デシジョンへと繋がって行ったのは歴史の知るところでしょう。
後のブレンデッド・ウィスキーであるレクティファイド・ウィスキーの風味は一般にストレート・ウィスキーよりも軽くてキツくなく、上質なストレート・ウィスキーを除いてバッチ毎の一貫性が高いのも特徴で、何より典型的なブレンドには熟成ウィスキーが殆ど含まれていないか使用率が僅かだったためストレート・ウィスキーに較べ遥かに安価でした。1831年以前には殆ど知られていなかったレクティファイド・ウィスキーはカラム・スティルが業界に導入されると徐々に増え始め、アメリカでの内戦後の1870年代にウィスキー業界が飛躍的に成長するとレクティファイアーも同じく成長し、その人気は着実に高まりました。禁酒法前の数十年間、アメリカで消費される全てのスピリッツの75〜90%がレクティファイド・ウィスキーだったと言います。禁酒法と第二次世界大戦の直後には、ブレンデッド・ウィスキーは人気がありました。どちらの場合もストレート規格の熟成したウィスキーが不足し、限られた供給量を確保する方法としてブレンデッド・ウィスキーの販売促進に努めたので売り上げが大幅に伸びたのです。しかし、この売れ行きは長くは続きませんでした。ストレート・ウィスキーが利用可能になると、販売比率はそちらに有利にシフトしましたし、更に後にはバーボンやライのストレート・ウィスキーを愛飲する消費者からはブレンデッドは淡泊過ぎて詰まらないと思われ、逆に軽めのスピリッツを好む消費者は中途半端なブレンデッドよりはウォッカに移行したのです。古典的なブレンデッド・ウィスキー全般のここ数十年に渡る売上は減少傾向にあります。しかし、シーグラムズ・セヴンクラウンなどはベスト・セリングのブランドであり続けています。殆どのブレンデッドは非常に安価で酒屋の棚の最下段を飾りますが、優秀なものには数十種類のストレート・ウィスキーが使用され一貫した風味が保証されており悪い商品ではありません。そして近年では、現在のウィスキー・ブームの恩恵を受け、GNSを含まない新しいブレンデッド・ウィスキーをクリエイトする動きがあり、今後は注目に値するカテゴリーとなっています。

偖て、そろそろアーリータイムズ・ホワイトとはどんなものか見て行きましょう。明治屋のプレスリリースを引用します。
近年、健康意識の高まりに後押しされたハイボールの定着、家飲みでの需要増加により世帯毎のウイスキー消費支出は上昇傾向にあります。
 
日本だけでなく世界的に見ても、ウイスキーやその原料となるモルトまでもが不足するなど注目を集め続けるウイスキー市場に、「アーリー・タイムズ」が新たな歴史を刻みます。
 
【商品特徴】
 
1.際立つ “なめらかさ”
最大の特徴は、その“なめらか”な味わいです。レモンピールが爽やかに香るトップノーズ。柑橘系の花から集めたハチミツのような潤いのある旨味。穏やかで角のない魅力的な余韻が長く続きます。ソーダで割ってハイボールにした時でも繊細なバランスは崩れることなく、お食事と共に日々楽しむウイスキーとしておすすめです。
 
2.規定の枠にとらわれない新たなチャレンジ
飲みやすさ、親しみやすさの追求によるアルコール類の淡麗辛口化傾向は、ビールや日本酒等でも見受けられますが、ついにウイスキーにもその流れがやってきます。「アーリー・タイムズ」は親しみやすい味わいをもつウイスキーとして“なめらかさ”の追求にチャレンジし、これまでの枠を超えた「アメリカン・ブレンデッド・ウイスキー」として『ホワイト』をリリースします。

更には、おそらくサゼラックから何らかの資料を受け取って書かれているのでしょうが、バートン1792蒸溜所のマスター・ディスティラーであるダニー・カーンに「今までウイスキーを飲まれなかったお客様や新たなウイスキーを求めるお客様にもきっと満足頂ける味わいです」とか、サゼラックのマスター・ブレンダーであるドリュー・メイヴィルに「各ウイスキーの特徴を見極め、“驚くほどなめらかな味わい”に向かい綿密に調和させていきました」と両者の顔写真付きでコメントを紹介しています。おまけにカーンからのメッセージ動画までありました。


少々誇大宣伝が過ぎるような気もしますし、具体的な中身(ブレンドの構成)について一言もないのも仕方のないところでしょうか。中身に関しては、希望小売価格が1500円程度、実売価格が1250円前後と考えると、GNSが大部分を占めると予想されます。アメリカ流通のラベルだと、ニュートラル・スピリッツの割合を記載しなければならない筈なのですが、国外向けだからなのか記載はありませんでした。ラベルのデザインは、まだブラウン=フォーマンが所有していた時代に導入された青いラベルのアーリータイムズ・ボトルド・イン・ボンド(後述)に準じていますね。このホワイト・ラベルは日本を皮切りに2023年以降、順次世界各国でも発売される予定だそうです。
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(Early Times Bottled-in-Bond)

私は明治屋のアーリータイムズのニュースを聞いて、イエローラベルがなくなり、それに代わって新しいホワイトラベルが発売されるのだと思い込んでしまいました。ネット上でもバーボンをブレンデッドにするなんて改悪だという趣旨の発言を見かけましたので、私と同様に皆もそう思ったようです。しかし、ここにはイエローラベルの“代わりに”ホワイトラベルを発売するとは一言も書いてありません。飽くまで新しい物を発売するとだけ巧妙に言っています。同じように、イエローがホワイトに“変わった”のでもなく、バーボンではない別の物がリリースされただけなのです。ネット上では他にもアーリータイムズを名乗るべきではないという趣旨の発言も見かけました。しかし、それを言うならエズラブルックスにも白ラベルのブランデッドがあるので、それに対してエズラを名乗るなと言わなければならないでしょう。ここで問題になっているのは、ブレンデッドがあることではなく、エントリー・クラスの4年熟成程度で80プルーフの買い求め易い価格のバーボンがないことの方なのです。よくよく考えてみると、ブラウン=フォーマンがブランドを売却したのが2020年、バートンが蒸溜すると発表されたのが2021年、ということは従来のアーリータイムズのような4年熟成程度の物を販売できるようになるのは早くて2025年です。その時になってみないと「エントリー・クラスの4年熟成程度で80プルーフの買い求め易い価格のバーボン」がブレンデッドに取って代わってしまったのかどうかの答えは出ません。熟成ウィスキーは商品化に時間の掛るものなのです。その時になってなお、そういうバーボンが発売されず、或いは発売されても日本に大量輸入されないなら、日本人にとっての「我らのアーリータイムズ」が本当になくなったことになります。少し、私の希望的観測を述べましょう。
このアーリータイムズ・ホワイトラベル・アメリカン・ブレンデッド・ウィスキーが発売されたのが2022年です。ブレンデッドは少なくとも20%のストレート・ウィスキーを含む必要があります。ストレート規格というのは最低2年熟成の物を言います。バートンがアーリータイムズの蒸溜を始めたのがサゼラックの買収完了時の2020年夏からだとしたら、現在の2022年秋は最も早い段階でブレンドにバートン原酒の2年熟成バーボンを入れることが出来ます。もしバートンの蒸溜開始が2021年からだとしたら、ホワイトにブレンドされた原酒はブラウン=フォーマンが蒸溜した最後期の原酒になるでしょう。どちらにせよ、2022年の段階で新しいアーリータイムズをリリースするのは、かなり急いでいるということです。だから、もしかするとサゼラックは日本の消費者を切り捨てたのではなく、寧ろ大事に思って早々にアーリータイムズを復活させたのではないか、今できる最大限の努力の結果がブレンデッドだったのではないか、と。勿論、それがビジネスの観点からの判断だったとしてもです。そして、アメリカ国内流通のアーリータイムズにはボトムシェルファーのケンタッキー・ウィスキーの他にもう一つ、先に述べたボトルド・イン・ボンドがあります。それは2017年に発売された当初、限定生産の予定でしたが、手頃な価格(1リットル25ドル)でクラシック・バーボンの風味を味わえると評判となってすぐにヒットし、レギュラーでリリースされる人気商品となりました。サゼラックも買収後にこれを継続して販売したので、バーボン系ウェブサイトやYouTubeでは二つのボトルを比較する企画が見られたりします(現段階ではサゼラック版もブラウン=フォーマン原酒でしょう)。明治屋からアーリータイムズ復活の報があった時、これが輸入されるかと思ったとネット上で語っている人もいました。どうでしょう、ボトルド・イン・ボンド(新樽で最低4年熟成)、ケンタッキー・ウィスキー(中古樽で3年熟成)、ブレンデッド(推定大部分がGNS)と並べてみて、あまりにブランドとして弱くないですか? ブラウン=フォーマンが長年保持したブランドを売却したのは、バーボンに関してはプレミアム路線(オールド・フォレスターやウッドフォード・リザーヴを指す)に一本化するためと発表していました。これはアーリータイムズをプレミアム化することを諦めた、もっと言うと商売にならないブランドだから売ったのではないでしょうか? 企業が儲かるブランドをわざわざ売るとは思えません。逆にサゼラックはアーリータイムズを売れるブランドに出来る自信があったから購入した筈です。なのにこのラインナップは、ボトルド・イン・ボンドとその他の製品間にスペックの差があり過ぎて、市場のニーズに隙間が空いています。例えば、4年熟成80プルーフ、6年熟成90プルーフ等があった方がいいじゃないですか。それに、あの象徴的なイエローラベルをブランディングに用いないなんてどうかしてる。或るブランドにヴァリエーションがある場合、通常は同デザインで色違いのラベルを採用してグレードの差を明示したりします。白いラベルは、先に例に出したエズラブルックスのブレンデッドと同じ色なのからも判るように、バーボンよりもクリアなイメージのブレンデッドに相応しいでしょう。もし、このアーリータイムズ・アメリカン・ブレンデッド・ウィスキーが黄色のラベルで発売されていたとしたら、おそらく「我らのアーリータイムズ」は完全に終わりでした。あゝ、イエローラベルはもう“変わって”しまったんだな、と諦めるしかなかった。しかし、そうはなりませんでした。今回はホワイトという単にグレードの劣るヴァリエーションが増えただけの話。おかげでイエロー復活の余地は残った。もしやイエローは後々のために取って置かれたのではないか? だとしたら、ワンチャン、2025年あたりにイエローラベルの4年熟成のストレート・バーボンがリリースされるなんてこともあるのでは…と私は思っているのです。但し、サゼラックは他社から購入したブランドを上手くプレミアム化するのが得意な反面、何故かバートン蒸溜所の代表銘柄であるヴェリー・オールド・バートンのような伝統的なブランドをぞんざいに扱かっている実績があります。また、もう一つ気になる情報がありまして…。
アメリカのアルコール飲料のラベルは、承認のため財務省のアルコール・タックス・アンド・トレード・ビューロー(TTB)に生産者がラベルの図案および製品の必要な情報を提出しなければなりません。TTBはそれをチェックして承認または却下の判断をし、承認されるとTTBのウェブサイトに掲載されます。これがCOLA(Certificate of Label Approvalの略)と呼ばれるプロセスです。ラベルの承認は必ずしも製品の発売が差し迫っていることや確実にリリースされることを意味する訳ではありませんが、COLAトローラー(TTBのウェブサイトを検索して新製品を探す愛好家のこと)によって逸早く新製品の情報が得れたりするので面白いのです。で、アーリータイムズに関して、2021年の4月1日に新しいラベルが承認され、それは42プルーフだったと言います。はい、アルコール度数42%の間違いではなく、42プルーフのダリューテッド・ウィスキーです。ブレンデッドどころの騒ぎではないですよ? これが本当に販売されるのか、それともこれの代わりにアメリカン・ブレンデッドに変更したということなのか、今のところ判りません。どちらにせよ、昨今のバーボン・ブームにより愛飲家がハイアー・プルーフ及びバレル・プルーフのバーボンを求める世界で、どうしてサゼラック社はこれほど劇的な逆を行くのでしょうか? このダリューテッド・ウィスキーについては、もしかするとオフ・プロファイルのウィスキーを処分するための方法かも知れない、という憶測がありました。つまり、購入したバレルの一部が気に入らないけれど、二次熟成でフィニッシングしたりするよりも水で薄めたほうが簡単でコストも掛からないから、おそらくサゼラックはそれを上手く利用してバーボンへの入り口となるようなロウワー・スピリッツを提供しようとしているのではないだろうか、という訳です。これはエイプリルフールのネタ(4月1日という日付に注目)だろうとも見られますが、そもそもサゼラックが伝統的な銘柄を蔑ろにしていることを揶揄する心がなければ出てこないネタだと思います。それに上の憶測は図らずもブレンデッドの製造理由の説明になってしまっている気もします。と、まあそんなこんなでサゼラックにはアーリータイムズ・イエローラベルの復活など期待できない可能性も大きいので「希望的観測」と言いました。私や日本のアーリータイムズ・ファンの願いが叶うかどうかは、数年待ってみないとはっきりしません。成り行きを見守りましょう。では、そろそろ新しいアーリータイムズ・ホワイトを注ぐ時間です。

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EARLY TIMES WHITE LABEL American Blended Whiskey 80 Proof
推定2022年ボトリング。薄いブラウン。カラメル、ビール、蜂蜜、ピーナッツ、みかん。どこかしら人工的にも感じさせるカラメル香と甘い湿布薬のような清涼感。口当たりはけっこう円やかで、するりとした喉越し。味わいはグレインスピリッツの甘みが強いが、心地良いかと言えばそうでもない。余韻はショートでさっぱり切れ上がり、ほんのり焦樽らしい風味がする。
Rating:71(72)/100

Thought:多分、バーボンをGNSで薄めたものですかね。香りから余韻まで全てにニュートラル・スピリッツ感があります。バートンのGNSのみを飲んだことがないので、フレイヴァー剤が添加されてるかどうかまではよく分かりませんでした。確かに滑らかさは未熟成のスピリッツ、例えばジョージア・ムーンとかよりは遥かにありますし、ブラウンな風味もあるので意外と飲み易いです。滑らかにするためのブレンド剤が使われてるのでしょうか? 開けたてはフレイヴァーが脆弱と言うか未熟成なスピリッツの香りが強い印象をもちましたが、空気に触れさせておくと、一瞬プルーンのような香りも感じる時があり、それなりに飲めます。ただ、ニートで食後のシッピング・ウィスキーとしてよく味わって飲むものではないですね。レーティングの括弧はラッパ飲みした時の点数です。テイスティング・グラスやショットグラスで飲むより味が濃く感じました。YouTube等でイエローとホワイトの飲み比べがされていたりしますが、流石にバーボンとブレンデッドを較べるのは無理があります。カテゴリーの違いから勝負になってないという意味で。これはこれ、あれはあれ、と分けて考えた方が良いでしょう。

Value:バートン蒸溜所のストレート規格のバーボンであるケンタッキー・タヴァーンやケンタッキー・ジェントルマンやザッカリア・ハリスがこれ以下、又はほぼ同じ価格で買える現状を考慮すると、個人的には購入する価値はないと思いました。もし、昨今の物価上昇で上記のバーボンが2000円程度、ブレンデッドが1000円程度という状況になるのであれば、少しでもバーボンぽいものを安く飲みたい人にはオススメ出来ます。

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(このラベルは引き継がれるのか、刷新されるのか?)

以前お伝えしたブラウン=フォーマン所有のアーリータイムズがサゼラックに買収された件ですが、続報が入りました。

今後はバートン1792蒸留所にて、消費者が愛好していたのと同じオリジナルのレシピとマッシュビルを使用して製造するとのこと。それならケンタッキータヴァーンやケンタッキージェントルマンとは違うものになりそうですね。安心しました。切り替えは今年の夏から始まるそうです。味を想像しながら待ちましょう。

今のところブランド戦略までは明かされてないのですが、私はKTやKGのようなエントリークラスと1792スモールバッチのようなプレミアムの中間に位置するレヴェルの製品になるのではと予想します。もしそうならばブラウン=フォーマン社のエントリークラスであったアーリータイムズよりは美味しくなるだろうという期待。まあ、蒸留所が変わればいくらマッシュビルが同じでも確実に違う味にはなるでしょう。従来品のファンはどう思うのか…。

皆さんはどうお考えですか? コメントよりご意見お寄せ下さいね。

えっ、待って、こんな妄想以前に、ちゃんと日本に輸入されるんだよね?


※当ブログのニュース記事の投稿は時間的有効性と内容的有用性がなくなったと判断した時点で削除しようかと思っていたのですが、こんなこともあったね的な資料として残そうかと思い直しました。

※※その後の経過をまとめた記事を投稿しました。

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アーリータイムズ150周年記念ボトルは、その名の通りアーリータイムズの1860年の創業から数えて150年を迎えることを祝して2010年にリリースされました。3000ケース(各24ボトル)のみの数量限定で、375ml容量のボトルしかなく、アメリカでの当時の小売価格は約12ドルだったようです。

アーリータイムズは豊かな伝統とマイルドな味わいで知られるブランドです。創業当時の設立者ジャック・ビームは、業界が余りにも急速に近代化し過ぎていると考え、「古き良き時代」を捉えたブランドを求めて、その名をウィスキー造りの昔ながらの製法(アーリータイムズ・メソッド)から付けました。彼はマッシングを小さな桶で行い、ビアやウィスキーを直火式カッパー・スティルでボイリングする方法が最善と信じていたのです。アーリータイムズの伝統を匂わせるマーケティングは当り、順調に売上を伸ばしましたが、やがて禁酒法の訪れにより蒸留所は閉鎖されました。
一方でブラウン=フォーマン社の創業者ジョージ・ガーヴィン・ブラウンの跡を継いでいたオウズリー・ブラウン1世は、1920年、禁酒法下でも薬用ウィスキーをボトリングし販売するための連邦許可を取得しました。彼は既存の薬用ウィスキーの供給を拡大するために、1923年にアーリータイムズ蒸留所、ブランド、バレルの全在庫を買い取ります。1925年にオウズリーはアーリータイムズの全てのオペレーションをルイヴィルのブラウン=フォーマンの施設に移しました。禁酒法が発効すると1900年代初頭の多くの人気ブランドは姿を消しましたが、ブラウン=フォーマンによって買われていたアーリータイムズは絶滅から免れ、薬用ウィスキーとして販売され続けたことにより消費者から忘れ去られませんでした。1933年に禁酒法が終了した後、ブランドは黄金時代を迎えることになります。オウズリーのリーダーシップの下、ブラウン=フォーマンは1940年にルイヴィルの南にあったオールド・ケンタッキー蒸留所を買収し、そこをアーリータイムズの本拠地としました(DSP–354)。そして1953年頃には、アーリータイムズはアメリカで最も売れるバーボンとなりました。広告ではブランドを「ケンタッキー・ウィスキーを有名にしたウィスキー」とまでアピールしたほどです。1955年、ブラウン=フォーマンはプラントの全面的な見直しと近代化を行いました。まだまだバーボンは売れる商品だったのです。
しかし、70年代はバーボンにとって冬の時代でした。ブラウン=フォーマンは1979年になるとルイヴィルのオールド・フォレスター蒸留所(DSP-414)を閉鎖し、同バーボンの製造をアーリータイムズ・プラントに移管しました。その頃、二つのブランドの品質に影響を与える重要な決定が下されます。オールド・フォレスターは同社の看板製品なのでプレミアム・バーボンとして選ばれ、アーリータイムズは二種類の製品に分けられてしまいました。一つは輸出用の製品で「ケンタッキー・ストレート・バーボン・ウィスキー」規格を保持しましたが、もう一つのアメリカ国内流通品は80年代初頭に新樽ではない中古樽で熟成された原酒を含むため「バーボン」とも「ストレート」とも名乗れない「ケンタッキー・ウィスキー」となったのです。もしかすると、その時に熟成年数もまた短くしたかも知れません(3年熟成)。こうして、嘗て栄光を誇ったアーリータイムズはアメリカでは最高のブランドではなくなりましたが、ボトムシェルフ・カテゴリーの中では存在感は示したでしょうし、海外、特に日本ではバーボンの代名詞的存在であり続けました。
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この150周年記念ボトルは、1923年当時ブラウン=フォーマン・ディスティラーズ・コーポレーションの社長だったオウズリー・ブラウン1世が薬用ウィスキーとしてボトリングした時のアーリータイムズのフレイヴァー・プロファイルを見習って造られている、と同社の統括的なマスターディスディラーであるクリス・モリスは語っています。
禁酒法時代の薬用ウィスキーの殆どは時宜遅れのボトリングでした。それらには本来ディスティラーが意図していたより3倍長く熟成されたウィスキーが入っていたのです。1923年という初期禁酒法下で、ブラウン=フォーマンは5~6年程度の熟成のアーリータイムズを薬用ウィスキーとしてボトリングし始めました。それはライトな蜂蜜色で、メロウ・オークにブラウン・シュガーにヴァニラの香り、シンプルなスイート・コーンとヴァニラと仄かなバタースコッチの味わいをもち、過ぎ去りし最高のアーリータイムズを偲ばせると云います。つまり、そうした禁酒法の初期に販売されたであろうメディシナル・アーリータイムズ・プロファイルを模倣するために、「アーリータイムズ・ケンタッキー・ウィスキー」のプルーフを引き上げ、更に熟成年数を引き延ばすアプローチをした物が、この150周年アニヴァーサリー・エディションという訳です。また、ボトルと言うかパッケージングも禁酒法時代のウィスキーのデザインになっていますが、このデザインが実際あった物の復刻なのかどうか私には分かりません(※追記あり)。実情をご存知の方はコメント頂けると助かります。それは偖て措き、2011年になるとブラウン=フォーマンはアメリカ国内で「アーリータイムズ354バーボン」なるストレート・バーボン規格の製品を発売しました(レヴューはこちら)。私には何となく、発売時期からするとこのアニヴァーサリー・エディションには、従来のボトムシェルファーとは違う少しプレミアム感のある「354」の売り上げを伸ばすための地ならしと言うか「アーリータイムズの栄光よもう一度」的な?宣言の役割があったように思えてなりません。まあ、空想ですが…。 
では、そろそろ飲んでみましょう。

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EARLY TIMES KENTUCKY WHISKY 150TH ANNIVERSARY EDITION 100 Proof
2010年ボトリング。バターレーズンクッキー、フローラル、焦樽、焼いたコーン、ワカメ、ホワイトペッパー、微かなチェリー、藁。少しとろみのあるテクスチャー。口蓋ではアルコール刺激はまずまずありつつ、木材とスパイシーさが。余韻はミディアム・ショートで、豊かな穀物を主に感じながらビタネスとスパイスとフルーツと香ばしさがバランス良く混ざり合う。
Rating:83.5→82.5/100

Thought:通常のアーリータイムズとは一線を画す現代のプレミアム・レンジのバーボンに感じやすい香水のような樽の香ばしさがあります。これの前に開けていたアーリータイムズ・プレミアム(90年代)とも全然違うフィーリングで、連続性はなく感じました。とは言え、それが件のバーボンではないケンタッキー・ウィスキーだからなのか、熟成年数の追加とプルーフィングその他によるものなのかは分かりません。少なくとも私には「これバーボンです」と提供されればバーボンと思う味わいでした。基本的には、何というかそれほどコクのない香ばし系とでも言いますか、美味しいのですが、個人的にはもう少し甘みかフルーツ感が欲しいところです。メロウネスもあまり感じないので、熟成年数はいいとこ6年くらいかなという印象です。正直、クリス・モリスには申し訳ないですが、これは禁酒法時代の風味を再現してるとは思えず、完全に現代的な樽の風味だと感じました。
それと上の点数なのですが、残量3分の1を過ぎた頃から風味がかなり変わりまして、それゆえ矢印で対応した次第です。香りは甘さが消え、口の中では酸味が少し増え、余韻はドライになり、バランス的には穀物とスパイスに偏りました。劣化した味わいではないのですが、良い変化とは言えないし、私の好みではないです。

Value:この製品は通常ボトルの凡そ半分量ということもあり、オークションでもそれほど高値にならず、70年代のイエローラベルより安価で購入出来ると思います。味わい的に物凄くオススメという訳でもないのですが、パッケージングがカッコいいのでそれなりの価値があります。デザインを含めて考えると、個人的には3000円代なら購入してもよいかと。


追記:もしかするとラベルのデザインに関しては禁酒法時代より古い時代のものを再現しているのかも知れません。これが元ネタ?
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昨日、報道されご存知の方も多いと思いますが、なんと、あの日本では最高の知名度を誇るバーボンブランド、アーリータイムズがブラウン=フォーマンの手を離れサゼラックへ行くことになりました。このブランド売買は今年の夏の終わりに完了する予定です。

アーリータイムズは今年で160周年を迎えるビッグネームで、禁酒法期間中から今に至る長い間ブラウン=フォーマンが所有して来ました。しかし、現在のアメリカのバーボン市場に於いては決してプレミアムなブランドイメージを獲得出来ていませんでした(昨今リリースのブルーラベルのボトルド・イン・ボンドは比較的好評だったのですが…)。逆にサゼラックはオールドテイラーをビームから買収後プレミアムラインのバーボンにリニューアルした実績があります。

ブラウン=フォーマン社によれば、この売却は今後ウッドフォードリザーヴのようなプレミアム製品に焦点を絞るポートフォリオ戦略の継続的進化の一部とのこと。

現在のアメリカのバーボンブームは安価なバーボンではなく、プレミアム志向のバーボン人気に支えられています。となると、これってBFがアーリータイムズを切り捨てたように見えなくもないような…。COVID19のパンデミックが影響しているのか裏事情は分かりませんが、日本人にとってこれはビッグニュースですよね? 

おそらくサゼラックはアーリータイムズのブランド権の他、熟成樽の在庫も取得するでしょうし、日本での販売実績があるのも知ってるでしょうから、当面は変わりないとは思います。しかし、その後は? 

サゼラックがどういったブランド戦略をとるのか現段階では一切明らかではありません。プレミアムに一本化してバジェット・バーボンでなくするのか? それともプレミアムラインとバジェットラインの二本立てで販売するのか?

いや、そもそもどこの蒸留所で生産するつもりなのでしょう?

サゼラックはバーボンを製造する蒸留所を幾つか所有してますが、有名かつ生産量が多いのはバッファロートレース蒸留所とバートン蒸留所です。もしバッファロートレースで生産し、マッシュビルをコピーせず、酵母も引き継がず、なお安価なエントリークラスのバーボンとして存続するなら、エンシェントエイジかベンチマークとほぼ変わらないアーリタイムズになりますよね? 一方で、バートンで生産するなら、ケンタッキータヴァーンやケンタッキージェントルマンとほぼ同じになるでしょう。逆に、マッシュビルをコピーし、酵母も引き継ぐのであれば、蒸留所のレシピが増えますけれども。或いは別の蒸留所で生産する可能性だってあるのかなぁ…と、あれこれ考えると楽しいですよね。それはともかく、日本で流通するアーリータイムズは近年ラベルがリニューアルされたばかりだというのに、数年後には味わいも一新する可能性は大きそうだという話です。DSP-KY-354をまるごと購入して、なおかつ樽もブラウン=フォーマンのクーパレッジから調達するのでなければ…。
皆さんは今回のニュースやアーリータイムズの今後についてどう思うでしょうか? ご意見ご感想コメントよりどしどしお寄せ下さい。ではでは、バーボンで世界に平和を。


※当ブログのニュース記事の投稿は時間的有効性と内容的有用性がなくなったと判断した時点で削除しようかと思っていたのですが、あゝそんなこともあったね的な?資料として残そうかと思い直しました。

※※その後の経過をまとめた記事を投稿しました。

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2019年にラベルを一新したアーリータイムズ。そのラベルはアーリータイムズの創業者ジャック・ビームではなく、中興の祖サールズ・ルイス・ガスリーをフィーチャーしたものになっています。そのことも驚きでしたが、これだけ安価なブランドなのにラベルをただの色違いにせず、ほんの少しデザインを変更しているのも注目点。ブラウンの方はガスリーの横顔の絵がラベル正面に来ています。
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ガスリーについては以前投稿した新イエローラベルのレヴューで紹介してますのでご参照下さい。今回はブラウンラベルを試してみます。ブラウンラベルとイエローラベルの違いについてはこちらを。

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EARLY TIMES Brown Label 80 Proof
2019年ボトリング。ローストバナナのキャラメルソース掛け、焦樽、コーンチップス、接着剤、僅かにフローラル、ペッパー、ほんのりシャボン玉。水っぽく柔らかい口当たり。味わいはイエローよりややスパイシー寄りでさっぱりめ。余韻は短く、少しビター。
Rating:77/100

Thought:どうも昔飲んだブラウンラベルより美味しくない気がしました。私がイエローラベルに感じ易いと思っていたアーリータイムズ独特の嫌な風味を今回のボトルには感じます。また、私の記憶よりフルーティさも幾分か欠けるように感じましたし、余韻も苦いように思いました。以前に投稿したイエローとブラウンを比較する記事では、ブラウンの方を高く評価していたのですが、なぜか新しいラベルになってからのアーリータイムズに関してはイエローの方が美味しかったです。ここ数年で私の味覚が変わったのか、単なる気のせいなのか、それともアーリータイムズのバッチングの差なのか、謎。
ちなみに先日まで開封していたアーリータイムズ・プレミアムと比較すると、バカらしいほどにプレミアムの方が旨かったです…。

Value:否定的なことばかり書きましたが、価格の安さが最大の価値であるバーボンなので、 難癖をつけるつもりはありません。千円ちょっとでこれが飲めるのはありがたい話だと思います。ヘヴンヒルやジムビームの1000円代で購入できるバーボンより風味が濃いと評価する人もいますし、飲んだことのない方は迷わずトライしてみて下さい。しかも是非ストレートで。安いバーボンはハイボール専用などと思わずに。実際のところかなり美味しいですよ?

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アーリータイムズ・プレミアムは日本市場限定の製品です。調べてみると1993年から発売され、1997年に終売になったとの情報がありました。後の2011年リリースで2014年に製造停止となった「アーリータイムズ354バーボン」同様、このプレミアムも短命だった訳です(354の過去投稿はこちら)。どちらも3~4年で製造されなくなったところを見ると、あまり売れなかったのでしょう。

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(アメリカ流通のアーリータイムズ・ケンタッキーウィスキー)

アーリータイムズのアメリカ本国での流通品は、1983年にそれまでの「ストレートバーボン」規格から中古樽熟成原酒を含む「ケンタッキーウィスキー」への転換がありました。そう、我々日本人がバブル時代に大量のバーボンを輸入し、バーボンブームが到来していたあの頃、「バーボンと言えばやっぱりアーリータイムズだよね」と憧れていたバーボンは、既に本国ではバーボンではなくなっていたのです。アメリカに於けるアーリータイムズ・ケンタッキーウィスキーはボトムシェルフの王者だったかも知れませんが、そのブランド・イメージは「古臭くて安い酒」だったに違いありません。恐らくそうした負のイメージを刷新しようとしたのが354バーボンの発売だったと思われます。しかし、ほんのちょっと先走り過ぎたのか、単なるマーケティングの失敗なのか、とにかくその目論みは外れました。製造中止のアナウンスの際にブラウン=フォーマンのスポークスマンは、消費者はアーリータイムズにプレミアムを求めていなかった、という趣旨の発言を残した程です。
一方、アーリータイムズの輸出用製品はケンタッキー・ストレート・バーボンとして継続されました。世界的な知名度は絶大であり、特に日本では確固たる地位と販売量を誇るブランドだったからです。では、その日本ですらそれほど売れなかった(と思われる)アーリータイムズ・プレミアムとは一体何なのでしょうか?

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ラベルのサイドに書かれた文言はバーボンのありきたりの常套句ばかりで読む価値もないものです。はっきり言えば、ボトルのみから判断できる情報では度数が3%ほど高い43度ということだけ。このプレミアムについて調べていると、或るブロガーさんの記事で「当時価格で1500円」とありました。随分と安くありません? まあ、354バーボンもアメリカでは17ドル前後の販売だったので、「プレミアム」とは言ってもアーリータイムズ自体がバリュー・ブランドだし、ちょっと上位だよ程度の意味しかないのでしょう。1997年発行のバーボン本によると、イエローとブラウンが参考価格で2700円、プレミアムが4000円とあり、実売価格ではないけれどそれなりの差額があります。そして、その本の製品説明によれば、

「プレミアムは、品質へのこだわりをより徹底させた日本限定品。原料を独特の比率で組み合わせ、酵母も専用のものを使っている。熟成が、香りと色、味わいに深みをあたえている。」

とのこと。え? マジで!? 正直言って、この手の本に載っているインフォメーションは疑わしいものが多く、どこまで信憑性があるのか判りません。アーリータイムズ自体の紹介には比較的紙面が割かれてはいますが、97年発行という時期柄か、96年発売のブラウンラベルについて多く語られ、プレミアムに関しては上の引用文だけしか記述はないのです。取りあえずこの件は後で少し触れるとして、このプレミアムという製品、パッケージングがヒドくないですか? プレミアムを謳いながらラベルの色がブラウンとカーキの中間色? え、売る気あるの? スタンダードのイエローより地味になってますけど? プレミアムが販売されていた当時、熟成年数やボトリング・プルーフの違いによってラベルの色の違う2~3種類のヴァリエーションを揃えたバーボンが沢山ありました。その中で、アーリータイムズにも少し度数の高いヴァリエーションがあるのは自然の流れだろうし、ネームバリューだってずば抜けているのだから、プレミアムが売れる潜在能力は大いにあったと思うのです。いくら「水割り文化」の日本人に最も売れているブランドだったとしても、ハイアー・プルーファーが売れる素地はなくはない筈。通常、ボトルやラベル・デザインを変えずにより良質なヴァリエーションもリリースする場合には、上位の物に高価そうに見える派手な色のラベルを使う傾向にあります。スタンダードが白や黒なら、上位のクラスには赤や銀や金などを使うという具合に。ひとえにプレミアムが売れなかった原因はパッケージにあったのではないでしょうか? この渋すぎる色ラベルのアーリータイムズは、どう見てもイエローラベルの廉価版にしか見えず、プレミアム感の欠片もありません。これでは売れる訳がない……と、ここまではプレミアムが売れなかったから終売になったという前提で話を進めました。ですが、逆に順調に売れていたという可能性も考えられます。これについても後で述べることにし、先ずは飲んだ感想を書きましょう。

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Early Times Premium 86 Proof
1993年ボトリング。キャラメル、焦樽、ブラウンシュガー、ダークフルーツ、バナナ、米、ほんのりバター、絵の具。甘い香りにフルーティさが潜むアロマ。澄んだ酒質。口当たりは水っぽいものの風味はしっかりしている。香りにスパイシーなトーンは感じないが、液体を飲み込んだ後には穏やかなスパイスが現れる。余韻は43度にしてはやや長めで、緩やかな穀物の甘さとビタネスが同居。
Rating:84.5/100

Value:これ、美味しいです。ユニークな風味はありませんが、すっきりしつつコクのあるバランスの取れた味わい。スタンダードのイエローより幾分かフルーティで、イエローラベルに感じやすい嫌な風味も薄いように思いました。今でも2000円程度で販売されていれば常備酒としてもいいですね。ただ、残り三分の一で暫く放置していたら、甘味が弱くなって程よい接着剤が前面に来てしまいました。上のテイスティング・コメントはその前に書いたものです。オークションでのタマ数はそう多くありませんが、今のところ高騰してない銘柄なので、2500~3000円程度で落札出来る模様。

Thought:さて、プレミアムの中身に関してなのですが、飲んでみた感想が飲む前の予想をかなり越えていたこともあり、幾つかの可能性を考えてみました。先ずは、上記のバーボン本自体の信用性がなく、件の引用文もテキトーに書かれたデタラメなものだと仮定した場合、

①単純にイエローラベルよりボトリング・プルーフが高いだけ。だが、3度の違いが風味に及ぼす影響は大きい。
②使われている原酒の熟成年数が僅かに長い、もしくはイエローラベルよりクオリティの高い樽が選ばれている。
③イエローラベルとはトーストの具合が違う樽が使われている(*)。

と、考えるのが妥当だと思います。問題はその引用文が信頼できる真実の情報だと仮定した場合です。注目は「原料を独特の比率で組み合わせ、酵母も専用のものを使っている」という部分。酵母は一旦おいて、この前半の文を素直に解釈し、言葉を補うならば、「イエローラベルとは違うプレミアム独自のマッシュビルを使っている」と言っています。私は過去にイエローラベルとブラウンラベルの比較レヴュー(こちら)を投稿し、そこでブラウンラベルのマッシュビルについて紹介しましたが、このプレミアムまでもが全く別のマッシュビルを使ってるとは到底思えないのです。マッシュビル、特にフレイヴァー・グレインであるライ麦の比率は味わいに大きな影響を与えます。違うブランドにするならまだしも、同じブランド、同じラベルデザインの色違いで、通常そこまではしないでしょう。しかも日本だけのために、更には廉価な販売価格なのにです。しかし、今は引用文が正しいという仮定で話を進めています。そこで思い付いた解釈理論が、

④プレミアムはブラウンラベルの前身であり、中身はブラウンラベルのハイアー・プルーフ・ヴァージョンだった。

というものです。これは実際プレミアムを飲んでみてイエローラベルより私好みだったことから思い付きました。何となくイエローよりライ麦の影響を感じるような味の気がしたのです。ですが、私自身は味覚音痴ですし、それくらいの風味の違いはボトリング・プルーフの差や熟成の具合でどうとでもなりそうな気もし、また同時期のイエローとブラウンとプレミアムをサイド・バイ・サイドで飲み較べした訳でもないので自信はありません。あくまで珍説であり可能性の提供という意図しかないのです(飲んだことのある皆さんのご意見、どしどしコメントへお寄せ下さい)。そして、珍説ついでに妄想を膨らませてみると、実はプレミアムはよく売れていたのではないか?とまで思い直し、

⑤プレミアムは実験的に開発され、日本市場で好評だったが、のちに日本人の味覚に合わせて40度にプルーフィング・ダウンし、ブラウンラベルとしてリニューアルされた。

というストーリーまで考え付きました。プレミアムの中止が97年、ブラウンの発売が96年ですから、なくはない推論かなと。まあ、どれもバーボンファンのとりとめのない与太話と思って聞き流して頂ければ幸いです。暇潰しには最適でしょう?(笑)。それと、身も蓋もない言い方ですが、

⑥単に90年代のボトルは今よりレヴェルが高かった。

という説も付け加えておきます。
最後に酵母に関してですが、件のバーボン本によるイエローとブラウンの違いの説明では、イエローラベルは「熟成期間の異なる酵母を4種類混ぜ合わせて」あり、ブラウンラベルは「イエローラベルの4種類の酵母に、性質と熟成期間の異なる3種類の酵母をプラスして華やかさを醸し出す」とあります。これってまるでフォアローゼズ蒸留所のようですよね? ブラウン=フォーマンもこうしてバーボンを造ってるという話を私は他では聞いたことがないのですが、本当なのでしょうか? こちらもご存知の方はコメントよりご教示頂ければと思います。


*ここで何度も言及しているバーボン本のアーリータイムズ・ブラウンラベルの説明では、トーストの加減がイエローラベルとは違う旨が記されています。③はそこからの類推として、プレミアムもそうだった可能性を示唆しました。

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つい最近アーリータイムズの日本向けラベルが新しくなりしました(2019年4月から)。近所のスーパーにてリニューアル記念として少し安かったので、さっそく購入してみた次第です。一目で分かるように、従来品にあった掘っ建て小屋?のような古めかしい蒸留所の絵柄がなくなりました。SNS上での新ラベルの投稿をざっと眺めてみると、前の方が良かった、という意見が多い印象を受けます。また私の周囲の友人に尋ねても、概ね同じ結果でした。私としては初めて見た時、カッコよくなったなぁと思ったのですが、どうも少数意見のようで…。まあ、私の所感は措いて、このデザインなのですが、ネットで海外のアーリータイムズを検索してみると、どうやらヨーロッパでは数年前からこのラベル・デザインが採用されていたようです。それはラベルの文言に少々の違いがあり、名前も「EARLY TIMES OLD RESERVE」と言う名称になっています。で、これ、ラベルにストレートの記載がなく「KENTUCKY BOURBON WHISKEY」となっているので、バーボン規格ではあってもストレート規格ではないと思われます。もしかすると熟成期間が2年以下の原酒が混ぜられているのかも知れませんね。また、ロシアでは「EARLY TIMES OLD 1860」という名称のものが販売され、こちらはバーボン規格ではない「KENTUCKY WHISKEY」となっています。アメリカ本国と同じように中古樽で熟成した原酒が混ぜられているのでしょう。ともかくも、こうして世界のボトルを見てみると「KENTUCKY STRAIGHT BOURBON WHISKY」が販売され続けている日本でのアーリータイムズの絶対的な人気ぶりを改めて実感します。

さて、この新しいラベルデザインの注目点は、S. L. Guthrieを前面に押し出していることです。
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彼について、現在の取り扱いもとであるアサヒビールの公式ホームページではこう説明されています。

「アーリータイムズ蒸溜所は、1920年に禁酒法が施行されたことにより、その他の蒸溜所同様、存亡の危機に瀕する。しかし、従業員であったサールズ・ルイス・ガスリーがブランドを守るべく意を決して私財を投げ打ってアーリータイムズの商標権、在庫を買い取り、秘密の倉庫にウイスキーを隠すことで、伝統を途切れさせなかった。
その後、医師が処方する薬用ウイスキーとして認可されたことで、例外的に広く飲まれるようになり、アメリカ国内でも有数の販売数を誇るバーボンウイスキーとなった。」

それにしても、なぜ今頃になってから急にガスリーの名前を持ち出して来たのでしょうか? 創業者を差し置いて? 理由は分かりません。ですが、アーリータイムズの歴史を繙くとガスリーの名は確かにそこに記されています。

蒸留一家としてのビーム家の始租ジェイコブ・ビームの孫でありデイヴィッド・ビームの息子であるジャック・ビームにより、1860年に創設された蒸留所とその造り出すブランドは、前時代の伝統的な製法への敬意を表してアーリータイムズと名付けられました。バーボンが徐々に近代化して行く流れの中での、マーケティングとブランディングに於けるノスタルジアをウリにした初期の好例と言えるでしょう。アーリータイムズはその「古き良き時代」を思わせる名前にも拘わらず、バーズタウン近くのL&N鉄道の隣に、輸送の利便性を考慮して戦略的に設置された近代的な蒸留所でした。伝え聞くところでは非常に清潔な操業を行っていたとされています。
1880年代になるとパデューカ・ネイティブのB.H. ハートという有能なビジネスマンが企業パートナーとなって社長を務め、ジャックは副社長兼ディスティラーを務めました。この時代にブランドはより強固になって人気を得、需要の増加により1890年ま​​でにプラントは大幅な増産を見せました。世紀の変った直後にハートは自分の株式をビームに売却し、その頃ジャックの甥でゼネラルマネージャーだったジョン・ショーンティが3分の1の株を購入します。 サールズ・ルイス・ガスリーは1907年頃、見習いのオフィス・ワーカーとして入社し働き始めました。そして、後に蒸留所のアシスタント・マネージャーまで出世したようです。
1915年5月11日、創業者ジャック・ビームはこの世を去り、甥のジョン・W・ショーンティが会社を引き継ぎ社長になりました。ジャックの息子であるエドワードも会社と関係がありましたが、彼は父親の死の数ヶ月前に42歳で死亡しています。禁酒法の足音が聞こえてきた1918年頃に蒸留所の操業は停止され、1920年にガスリーが蒸留所と農場を買い取りました。1922年にジョンが亡くなった後、 1923年にガスリーはアーリータイムズのブランドとストックをブラウン=フォーマン社に売却。彼らは「薬用スピリット」を販売する許可を得ており、増加する処方箋の需要を満たすための新たなバーボンの供給を必要としていたからです。それ以来、今に至るまでアーリータイムズはブラウン=フォーマンが所有しています。

ガスリーはセンセーショナルなアイデアを持った起業家であり、豪胆なギャンブラーでもあったのでしょう。禁酒法が施行され始める直前に、彼は蒸留所を急稼働させ、その多くのウィスキーを自分の地下室に貯蔵したと言われます。元禁酒捜査官に銃口を突きつけられて樽が盗まれたこともありましたが、危険を顧みずに、ガスリーはバーズタウン警察へのコネを使って、何とか樽を家に持ち帰ったこともあったとか。ガスリーの報われたギャンブルは、アーリータイムズ・ウィスキーを守ったことだけが唯一のものではなく、彼は犀利なカード・プレイヤーでもあったので、ポーカー一つでキャデラックを勝ち獲ったこともあったと言います。
またこんなエピソードもあります。ジョン・ショーンティの死後、残されたその未亡人は暫く後にデズモンドという名の若い男性と交際しました。彼女は彼が結婚しようとしていると信じ込んでいて、二人連れたってアトランティック・シティへと旅行に出掛けましたが、そこで男はかなりの金額といくらかの宝石類を巻き上げ、すぐに彼女を見捨てました。男は結婚詐欺師だったのです。蒸留所オーナーの妻ともなれば身分やその資産は想像に難くありません。狙われたのでしょう。ショーンティ夫人は無一文ですっかり立ち往生したままだったので、ガスリーは彼女を迎えに行って家に帰してあげたそうな。
ガスリーが彼のウィスキーを守るために経験と知性と富の全てを投資しなかったとしたら、アーリータイムズは今日我々の口に入らなかったかも知れませんね。それでは、ありがたく現在のアーリータイムズを頂くとしましょう。

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EARLY TIMES Kentucky Straight Bourbon Whisky 80 Proof
推定2018年?ボトリング(瓶底に18のエンボス)。メープルシロップをかけたパンケーキ、キャラメルマキアート、焦がした木材、鼈甲飴、微かなフローラル、コーンチップス、ココア。円やかな口触り。基本的にグレイン・フォワードなフレイヴァーにたっぷりのブラウンシュガー。フルーツで言うとバナナ。余韻に延びはないが、軽くスパイシーさもあり悪くない。
Rating:77.5/100

Thought:以前のラベルの物と比較して、それほど大差はない印象を受けました。口にいれた瞬間、ああ、アーリータイムズの味だなぁ、と。しかし、そう感じたのに以前投稿した比較対決シリーズでイエローラベルをレーティングした時とは、点数を変更しました。その時はブラウンラベルとの飲み較べという状況が、イエローに不利に働いてしまったのかなと今では思ったのです。単体で飲むと全然美味しく感じてしまいました。
アーリータイムズは同程度の価格帯のバーボンと比較してかなり甘さが際立ち、そして80プルーフにしては風味も濃いめな気がします。もう少し価格帯が上位のバーボンにありがちなタニックなドライネスもなく、あるとすれば若さ故のアルコールの刺々しさの筈ですが、それも活性炭濾過のお陰か円やかさのほうが感じました。

Value:「結局はアーリータイムズが初歩にして究極なんだよね」と言う意見があったとしても、私には全く反論する気は起きません。これが一番美味しいバーボンとは思っていないにも拘わらず、1300円程度の値段でバーボンらしい甘さが味わえ、全国津々浦々どこでも手に入る流通範囲の広さも考慮すれば、それこそ究極と言うべきなのは理解出来るからです。日本に於けるアーリータイムズの受容の広がりと深みは、アーリータイムズを日本のバーボン飲みの「故郷(戻るべき場所)」にしてしまったとすら思います。これが価値でなくて何が価値でしょうか。

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EARLY TIMES 354 BOURBON
アーリータイムズ蒸留所の創業は1860年と言われており、ジム・ビームの叔父にあたるジャック・ビームがバーズタウン近くのアーリー・タイムズ・ステーションにて創始したとか。禁酒法の施行は小さな蒸留所に大きな打撃を与え、数多くの蒸留所が廃業に追い込まれました。アーリータイムズも例外ではなかったのでしょう、1923年からブラウン・フォーマンに買収され生き延びているブランドです。50年代にはアメリカで最も成功したブランドの一つでしたが、1983年以降アメリカ国内ではバーボン規格ではなくケンタッキーウィスキーとして販売され(*)、国外輸出向けにはストレート規格のバーボンとして人気を博してはいたものの、本国では最下層のアメリカンウィスキーの地位に甘んじているように見えます。ところが2011年に突如この354と名付けられたバーボン規格のアーリータイムズが発売されました。あまり売れ行きが芳しくなかったせいか、2014年に終売となりました(**)。

354という数字はアーリータイムズを造るプラントの連邦許可番号(DSP-KY-354)から由来しています。熟成年数はNAS(No Age Statement)ながら4年とされ、特別に選ばれた樽からボトリングされているようです。
通常のイエローラベルと較べるとフレッシュフルーツ感が強まっている印象。オレンジやリンゴっぽい。やや水っぽく、澄んだ酒質。確かにイエローラベルより高級なテイストは感じられるが、正直言って物足りない。おそらく43度でボトリングしてくれてればもう少し美味しかったに違いない。ボトルのデザインは古めかしくてカッコいいのだが…。
Rating:81/100


*古樽で3年熟成された原酒が混ぜられているためバーボンと名乗れない。

**今ではボトルド・イン・ボンド規格のアーリータイムズが発売されてます。

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「安酒を敬いたまえ」シリーズ第四弾、今回はブラウンフォーマン編です。

Brown-Forman Corporation◆ブラウンフォーマン社
BFのバーボンにはオールドフォレスター、ウッドフォードリザーヴ、ジャックダニエルズ等がありますが、当企画ではアーリータイムズのみ扱います。ETのマッシュビルについては過去投稿にて紹介してますのでご参照下さい。チャーリング・レヴェルは一説には# 3 、バレル・エントリー・プルーフはおそらく125だと思います。

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EARLY TIMES Yellow Label 80 Proof
1100〜1300円程度
Rating:76.5/100

EARLY TIMES Brown Label 80 Proof
1100〜1300円程度
Rating:78/100

申し訳ありませんが、これらのレヴューもこちらを参照してもらえればと思います、重複してしまうので…。

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アーリータイムズは日本では抜群の知名度を誇るバーボンですが、アメリカでは「バーボン」ではなく「ケンタッキーウィスキー」として販売されています(*)。古樽で熟成された原酒が20%使用されているためバーボンを名乗れないのです。ラベルも日本人に馴染みのあるあのイエローラベルではありません。どちらかと言えばブラウンラベルに似た色合いです。ブラウンラベルは日本限定の製品であり、96年から販売されました。当時のブラウン=フォーマンのマスターディスティラーで「アロマの神様」と謳われたリンカーン・ヘンダーソン(**)が製品開発に尽力したそうです。
では、この2つのラベルの違いというか中身の違いは何なのかと言うと、現在日本での販売を受け持つアサヒの公式サイトによれば、マッシュビル、イースト菌、サワーマッシュの配分、チャコールフィルターの回数と種類まで、かなりの違いがあります。個人的に注目したのはそのマッシュビルです。

イエローラベルはコーン79%、ライ麦11%、大麦モルト10%。
ブラウンラベルはコーン72%、ライ麦18%、大麦モルト10%。

これはロウ・ライ・マッシュビルとハイ・ライ・マッシュビルの違いに相当するほどの差です。フレイヴァー・グレインであるライ麦の比率がこれだけ違うのならば、アーリータイムズとは全く違う銘柄を造り上げてもおかしくはなかった。現にバッファロートレース蒸留所ではライ麦率のロウとハイの違いで幾つかのブランドを造り分けています。ましてやイースト菌とサワーマッシュとチャコールフィルターまで違いがあると言うのだからよっぽどです。しかし、別のブランドは産まれず、アーリータイムズの兄弟が産まれたのでした。ブラウンラベルの説明をアサヒのサイトから引用しましょう。

「ココナッツの皮をベースにし活性炭でろ過する過程はどちらも同じ。アーリータイムズの飲み口のよさはここから生まれます。さらに、私たちが飲んでいるブラウンラベルになるにはもう一工程足されます。
イエローラベルとして造られた原酒とブラウンラベルとして造られた原酒を混ぜ合わせ、味わいを軽く、香りを高く仕上げます。
その上でピートをベースにした活性炭で再度ろ過。味わいをさらに磨き上げることで、あのスムースでコクの深い味わいができあがるのです。」

ここで注目なのは「イエローラベルとして造られた原酒とブラウンラベルとして造られた原酒を混ぜ合わせ」というくだりです(その比率は一説にはイエロー70%ブラウン30%と聞きます)。アーリータイムズを造っているプラント(DSP-KY-354)では、ブラウン=フォーマンの誇るもう一方の銘酒オールドフォレスターも造っています。そのオールドフォレスターのマッシュビルがコーン72%/ライ麦18%/大麦モルト10%なのです。
これは私の想像なのですが、もしかするとブラウンラベルの正体はアーリータイムズ原酒にオールドフォレスター原酒をブレンドしたものなのではないでしょうか?  イエローラベルとブラウンラベルは日本での販売価格は共に同じであり、1200円前後で買えてしまう「良心的で安定のバーボン」です。なのにブラウンラベルは随分と手間暇がかかってるように見える。もう500円くらいは高くてもよさそうに感じる。しかし、そうはならなかった。これはビジネス上のサーヴィスと考えるよりは、ブラウンラベルを構成する諸要素がそれほどコストをかけずに出来る、と考えたほうが自然な気がするのです。何かの本かウェブサイトか忘れましたが、アーリータイムズとオールドフォレスターでは使用する酵母が違うという情報を目にしたことがあります。それが真実なら、イエローとブラウンの酵母は違うと言うのだから、ブラウンにオールドフォレスターの酵母を使ってる可能性もあるのではないでしょうか?  そしてマッシュビルもオールドフォレスターと同じなら、それはオールドフォレスターじゃないですか……と、あくまで私の想像というか妄想でしかないことを書き連ねてしまいました……そろそろイエロー対ブラウンの対決に移りましょう。

EARLY TIMES Yellow Label 80 Proof
80プルーフの割りに色が濃く、キャラメル香もオークの風味も効いている。ブラウンシュガーライクな甘み。口に含むと円やかではあるが、やや水っぽい印象を受ける。それほどフルーツ感はないが、強いて言えばバナナ。余韻に、個人的には好ましくない風味を感じる(***)。それが何なのかわからないが。
Rating:76/100

EARLY TIMES Brown Label 80 Proof
イエローに較べより華やいだ香り。キャラメルやオークの風味が効いてるのは同じだが、飲み口には明らかにライ麦の影響を感じさせる。ブラウンシュガーにフレッシュフルーツが少し混じる感じ。円やかで水っぽいのも同じ。余韻は短いが、イエローにあった嫌な風味は気にならない。
Rating:78/100

Verdict:個人的にはブラウンの圧勝でした。私がハイ・ライ・マッシュビルが好みなので当然と言えば当然かな。イエローが好みという意見も聞きますから、詰まるところコーンの甘さを取るかライのフルーティーさを取るかの選択なのかも知れません。どちらも価格の優れたバーボンです。


*近年では群青色のラベルでボトルド・イン・ボンドのアーリータイムズが本国で発売されました。遡ると「354」という上位ラインのストレートバーボンもありました。更に遡ればスタンダードな物もストレート規格でした。

**ヘンダーソン氏はウッドフォード・リザーヴの立ち上げやジェントルマン・ジャック(JDの親会社はBrown-Forman)の商品開発、昨今ではエンジェルズ・エンヴィを造り上げたバーボン業界の伝説の方で2013年に75歳で死去されました。

***この風味は開封から一年ぐらい放置しておくと消えます。

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