
ワイルドターキー・ジェネレーションズはその名の通り、ラッセル家の3世代が初めて協力して造り上げたウィスキーであり、一族の素晴らしい伝統に敬意を表した製品です。現在、ワイルド・ターキー蒸溜所には三世代の一族が同時に在籍しています。ワイルドターキーというブランドがラッセル・ファミリーの影響によって形成されたものであることに議論の余地はありません。ケンタッキー・バーボンの生ける伝説ジミー・ラッセルは、1954年に後にワイルド・ターキー蒸溜所となる場所で働き始めてから70年近く経った今もなお出勤を続け(偶に顔を出す程度かな?)、世界最長の在籍年数を誇るマスター・ディスティラーになりました。その息子エディは1981年にリリーフ・オペレーターとして入社して以来、生産の汎ゆる面を担当して、2010年には父同様にバーボン殿堂入りを果たし、マスター・ディスティラーとして現在のワイルドターキーの運営の中核を担っています。そして、そのエディの息子ブルースは、ナショナル・アンバサダーを務め、シングルバレル・プログラムで日々働き、近年アソシエイト・ブレンダーに任命され、おそらくは将来マスター・ディスティラーとなる存在でしょう。ブルース・ラッセルは、祖父ジミーと異なりブルースはライウィスキーを好むが故に通称「ラッセルズ・ライ・ガイ」と呼ばれているそうで、マスターズキープでのライ・ウィスキーやレアブリード・ライのリリースも彼の熱意あってのことと言われています。このジェネレーションズが歴史的なリリースなのは、ブルースの名前がボトルに初めて記載されたからであり、彼がアソシエイト・ブレンダーとして初めて手掛けた作品であり、ラッセル3人の署名がボトルに刻まれた初のワイルドターキー製品だからでした。

ジェネレーションズは三人のラッセルそれぞれが自らの好みで厳選した四つの異なる原酒をブレンドしたものです。ジミーは自身が長年に渡って好みであり続け、彼の主張によればWT製品に於ける最適熟成期間である9年熟成のバレルを選びました(ジミーの年齢を考えると、エディとブルースが選定し、それをジミーが承認したものなのかも知れない)。エディはジミーよりも熟成ウィスキーを好むことで知られ、現代的なワイルドターキーとして成功を収めたラッセルズ・リザーヴやマスターズ・キープといった商品に近い15年熟成のバレルを選びました。ブルースは上述のようにライに力を入れますが、バーボンの好みはエディよりジミーに近いとされ、12年熟成のバレルを選びました。そしてエディとブルースで14年熟成のバレルを幾つか選びました。このブレンドはバレルプルーフ、ノンチルフィルタードでボトリングされ、120.8プルーフでのボトリングはブランド史上最高クラスの度数を誇ります。噂では、ブルースが選んだバレルはプルーフが高く、中には所謂ハズマット(140プルーフ以上)のものもあったらしいです。最終的に120.8プルーフとなったところからすると、三人が選んだ他のバレルの幾つかにはプルーフがかなり低いものもあったのかも。ワイルド・ターキーのバレル・エントリー・プルーフは115であり、バレル・プルーフで提供される一般製品で6〜12年熟成のレアブリードが116.8でのボトリングなのを考慮すると、ブルースの選んだハイアー・プルーフのバレルがブレンドに与えた影響は大きい可能性がありそうですね。これらが各々何バレルであるか、またどういう比率でブレンドされているかは公表されていません。また、ワイルドターキーには3つの異なるキャンパスがありますが、何処のリックハウスからかも明かされていないようです。販売された総ボトル数が4〜5000本とか約4400本とされているので、使用されたバレルは全部で25〜35くらいの数量ではないかと予想されます。ちなみに、ジェネレーションズのボトル・デザインは、コロナ禍によるサプライ・チェーンの問題で当初予定していたグラスのデザインが間に合わず、生産者にマスターズキープ・シリーズのボトルを改造してもらうことに急遽決定したものだそうです。

(ラッセルズの三人。ワイルドターキー公式ホームページより)
ワイルドターキー・ジェネレーションズに就いて三人それぞれは次のように語っています。ジミーは「キャリアを通じて数々の素晴らしいウィスキーを造ってきましたが、『ジェネレーションズ』は私の殿堂入り作品で」あり、「息子と孫と共に私達の家族と伝統を称えるブレンドを創り上げる経験は私のキャリアに於けるハイライトでした」と。エディは「 ジミー、ブルース、そして私がジェネレーションズについて話し始めた瞬間から、これは非常に特別なものになると確信していた」と言い、「私たちが生み出した豊かで複雑なウィスキーを誇りに思うだけでなく、息子がアソシエイト・ブレンダーとして初めて手掛けた製品に共に携われたことを光栄に思います。ボトルに刻まれた彼の名前を私たちの名前の隣に見るたび、この稀有な製品を創り上げた時の思い出が永遠に蘇るでしょう」と語りました。ブルースは「ジェネレーションズでは、家族と果敢な精神を真に称えるウイスキーを造ろうと試みました」。「父はいつも、私達はボトルに刻まれた名前以上の存在だと言っていました。そして今回、父と祖父から学んだ全てを活かしつつ、私自身の視点を取り入れる初めての機会を得たのです。私達はこのウィスキーを愛し、それが語るストーリーを心から誇りに思っています」と。
偖て、このジェネレーションズはその価格に就いて触れない訳にはいきません。ワイルド・ターキーと言うか親会社のカンパリなのでしょうか、2023年、彼らは限定版のリリースに大幅な値上げを実施しました。流れとしては、先ず発売当初は75ドルだったラッセルズ・リザーヴ13年を150ドルに値上げしました。続いて7月にマスターズキープ・シリーズのボヤッジ(ボヤージュ)を従来の200ドルから275ドルに値上げしました。更に、2022年にトレンドに乗じて発売された一つの倉庫のみのバレルから造られるラッセルズ・リザーヴ・シングル・リックハウス・キャンプ・ネルソンCは250ドルの価格設定でしたが、2023年版のキャンプ・ネルソンFの希望小売価格は300ドルまで値上がりしました。そして、2023年の秋に投入されたワイルドターキーの最高峰とも言えるこのジェネレーションズは、何と450ドルという驚異的な価格で発売されたのです。このため、海外のバーボン・レヴュワーは概ね、その味わいが高いお金を払ってまで買うだけの価値があるのかどうかに言及しています。私もその観点はどうしたって無視することは出来ないでしょう。では、さっそく注いでみます。あ、マッシュビルはいつもの75%コーン、13%ライ、12%モルテッドバーリーです。

WILD TURKEY GENERATIONS 120.8 Proof
2023年ボトリング。やや赤みのある濃いブラウン。トフィ、プルーン、焦げ樽、熟れた洋梨、グァバ、バター、ツナ、ピーカンナッツ、塩、ベーキングスパイス、熟れた桃、炭、レモン。豊富な果実とキャラメルと土の香り。思ったよりゆるい口当り。パレートは甘く且つスパイシーで、塩味も感じ易く、フルーツキャンディぽさも。余韻はミディアム・ロングで思ったよりは短いが、芳醇なスパイスと甘く香ばしい炭の香りが揺蕩う。グラスの残り香はナッツとコーン。余韻がハイライト。
Rating:89/100
Thought:近年飲んだ高級なワイルドターキーでアロマが最もフルーティに感じました。味わいにも幾つものフルーツが潜んでいます。通常の8年や12年だとチェリー中心のフルーツ感だと思うのですが、こちらは他にも多様なフルーツを感じると言ったところかと。とは言え、果実味が突出している訳ではなく、スパイス、甘み、樽の香りなどがバランス良く整っています。口の中で感じる味わいは、12〜15年のバーボンも入っている割に意外と若々しくもあり、私にとっては好印象でした。オールスパイスの爽やかなスパイス感とレモンのような爽快感のある余韻はかなり独特な気がします。勿論、そこに深みのある焦樽のニュアンスや、ドライになり過ぎず続く甘み、ハイアープルーフの熱さも折り重なって複雑になっているのですが。開封から1年くらい経つと少し長熟感が強くなった気がします。また、私には数滴の水を加えてもあまり変化を感じられませんでした。逆に加え過ぎると美味しくなくなったように思います(具体的には8滴以上)。
海外のレヴュワーの或る方はジェネレーションズに就いて、「この取り組みのユニークさは評価し、完成品の品質も高く称賛するが、この価格であればワイルドターキーがこれまでにボトリングした中で最高の表現の一つであるべき」なのに「シンプルにそのタスクは適えられていない」と言っていました。この方がラッセルズ・リザーヴの13年や15年、キャンプ・ネルソンのリックハウスからのシングル・バレル、或いはマスターズキープ・シリーズの好みに合ったどれかや、はたまたオールドボトルの銘品の何かを念頭に置いてそう言ってるのか分かりません。私は現代のワイルドターキーの上位ボトルを全部飲んだことはないので、この方のような比較は出来ませんが、ジェネレーションズはシンプルに素晴らしい出来栄えだと思いました。
Value:このジェネレーションズは日本では2024年5月14日に税込77000円で発売され、日本での販売数量は250本とされていました。まあ、バーボンとしてはかなり高いですよね。個人的にワイルドターキーは好きなブランドなので、随分と迷いましたが買ってみた次第です。飲んでみると、間違いなく美味しい。但し、70000円もするならもう少し美味しくあって欲しかった、と言うのが正直な感想です。ラッセル3世代全員がこのプロジェクトに携わったというバックストーリーに魅了され、ワイルドターキーの歴史を築いてきた彼らへの賛美として購入するのであれば、正に打って付けの製品なので大枚を叩いて買うべきでしょう。しかし、それなりのワイルドターキー・ファンなら誰もが買うべきかと言うとそうではありません。その理由は、個人的にはマスターズキープ・シリーズを35000円として考えて、その倍旨いとまでは感じないからです。物にもよりますが、体感としていいとこ1.25〜1.5倍旨いくらいですかね。だから、コスパを重視するバーボン飲みにはオススメ出来ないのです。そういう方はワイルドターキー8年を20本ほど買い込む方がいい。ワイルドターキー8年は十分に優れたバーボンですから。いや、もっと言うなら、ワイルドターキー8年はジェネレーションズよりも美味しい瞬間があるのです。その瞬間とは、言うまでもなく、ワイルドターキー8年を体が欲してる時です。ターキー飲みなら解かりますよね? 逆に言えば、コスパを度外視して、ワイルドターキー8年や12年やマスターズキープとは違う「体験」をどうしても求めるなら買うべきなのです。また、ワイルドターキーのオールドボトルの人気銘柄よりは少し(だいぶ?)安くはあるので、お金に余裕があるなら購入してみるのも良いかと。まだ買えるのならばですが…。出来れば、何処かのバーで試してみるのがいいかも知れません。これまた、まだ残っているのならばですが…。







