タグ:ジムビーム

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今回は日本でのバーボン輸入がまだ華やかりし頃のジムビーム・ホワイトラベルを開栓してみました。個人的には今の物より古めかしいこのラベルの方が好みです。こちらはオークションで購入したもので、液体はグラスに注ぐとクリアに見えますが、ボトルのままだとほんの少し曇りがあるように見えます。

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JIM BEAM White Label 80 Proof
推定92年ボトリング。鉛筆の削りカス、キャラメル、オールドボトルファンク、チリパウダー、フルーティな接着剤、鰹節、クエン酸、タバコ、ドライクランベリー。口当たりは円やか。余韻はミディアムでスパイシー、あとちょっと薬草感。
Rating:72→82/100

Thought:開封したては、ただただ香りも味わいも余韻も鉛筆の削りカスそのものでした。単なる木屑ではなく、鉛筆の芯の香りもするんですよね(笑)。正直、飲むのが辛かったです。そのため、極く少量づつ飲みながら様子を見ていたのですが、半年くらいしたら不快な香りは上手いこと消えてくれました。そうなってみると、味わいには僅かにオールドファンクがあるものの不愉快なほどではなく、普通に美味しいと感じられました(*)。熟したアロマと深みのあるスパイスが現れる余韻は、これがオールドボトル故の経年変化もあるのでしょうが、現行のホワイトラベルとは全く別物な印象です。オールドボトル愛好家の方が昔のビームは優れていた、という意味合いのことを言っているのを耳にしたことがあります。オークションでそれほど高値がつくバーボンでもないので、多少のギャンブル性を覚悟の上なら購入するのもまた一興かと。


*但し、グレンケアンで飲むとオールドファンクが強く感じられて、余り美味しくはありませんでした。ショットグラスだと良い感じにオールド臭が薄らいだように思いました。また、夏場より冬場のほうが美味しく感じたので、私は試していませんが、もしかするとロックで冷やして飲むとより良いのかも知れません。

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今回はジムビーム・ブラックラベルの前身、ビームズ・ブラックラベルです。もともとビームの黒いラベルは「ジム・ビーム」ではなく「ビームズ」を名乗っていました。嘗ては白ラベルのフラッグシップ製品だけが「ジム・ビーム」の名を冠することが出来るという方針だったそうで、緑ラベルでお馴染みの「チョイス」なんかも昔は「ビームズ」でした。大手のビームからの製品であり、長期間販売されている割に、ブラック・ラベルの初登場がいつだったのかは、調べても分かりませんでした。有名なウィスキー・ブロガーのくりりんさんがビームの黒ラベルをレヴューしているのですが、それは75年ボトリングと推定され、なんとラベルは「チョイス」名義。これからするとブラック・ラベルというコンセプトが70年代半ばには既にあったのは間違いなさそうです。そして、それよりもボトルやラベルが古そうに見え、推定70年代ボトリングとされるビームズ・ブラックラベルがありました(参考)。ここら辺がオリジナルなのでしょうか。仔細ご存知の方はコメントよりお知らせ頂けると助かります。その起源は兎も角、ビームズ・ブラックラベルは、70年代後半から80年代半ば頃には広告にも力を入れられていたようです。
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上の画像のように、ビームズ・ブラックと言えば101ヶ月熟成の表記が印象的です。つまり8年5ヶ月熟成ですね。何時の頃からか一般的な8年熟成表記に変わりましたが、少なくとも70年代後半から80年代半ばまでは101ヶ月表記だと思われます。ところで、何故わざわざイヤー表記ではなくマンス表記なのでしょうか? もしかすると、わざとマンス表記にすることで、ワイルドターキーの象徴的な数字「101」を意識しているのではないか、と私は邪推しています。また、黒を基調としたラベルと「サワーマッシュ」や「チャコール・フィルタード」の記載はジャックダニエルズを意識してるようにも思えます。多分ライヴァルの二つのブランドへのあからさまな対抗心がある気が…。まあ、上で言及したビームズ・チョイス・ブラックラベルは100ヶ月熟成でしたし、これは何の根拠もない私の想像です。

現在ジムビーム・ブラックラベルと呼ばれるこのブランドは、長年に渡って名称もプルーフも熟成年数もボトル形状もころころ変わりました(2000年代以降の変遷は過去に投稿した記事に書きましたので参考にして下さい)。そのせいか、マーケティング戦略の犠牲者のように見えなくもないブラック・ラベルですが、そもそもはスタンダードなジムビーム・ホワイトの倍の熟成年数を誇るプレミアムな製品だった筈です。ブッカーズを筆頭とするスモールバッチ・コレクションが誕生する以前は間違いなくそうでしょう。今回、開封したボトルは推定82年ボトリングです。ボトリング年からすると、まだスモールバッチ・コレクション開始前なので、相当ハイクオリティなバレルがバッチングに使用されていてもおかしくはないのでは?という淡い期待があります。逆に年代からすると過剰供給時代なので、単なる過熟バレルが使われてる可能性も否定出来ませんが…。では、試してみましょう。

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BEAM'S BLACK LABEL 101 Months 90 Proof
推定82年ボトリング。やや赤みを帯びた濃いめのダークブラウン。黒蜜、キャラメル、レーズン、マスティオーク、湿った土、タバコ、胃腸薬。ノーズは濃密な甘い香りにウッド、チェリー、スパイスが交じり合う。アルコール刺激のないとても滑らかな舌ざわり。味わいは甘みもあるがそれ以上にウッディかつスパイシー。余韻はミディアムロングでほろ苦い。
Rating:85.5/100

Thought:前回まで開けていた99年ボトリングのジムビーム・ブラックラベルと較べると、焦樽フルーツ系統の方向性は一緒なのですが、こちらの方がよりスパイシーに感じました。また、単体だと熟したフルーツ感と思っていた99年ブラックラベルが案外とフレッシュなフルーツ感に感じてしまうほど、こちらの方がもっと濃いフルーツを感じます。そして強いスイートな香りも素晴らしく、ここら辺はオールドボトルの魅力と思います。多分、現行のノブクリークあたりと比較してすら、こちらの方がリッチなフレイヴァーが認められるかと。ただ一方で、このボトルは経年もあってか、開封から飲み切るまで常にオールドなファンキネスがありました。それは強過ぎるように感じる時もあったし、特に気にならない時もありました。そこで何か法則性があるのかと、例えば飲む前に何分も放置してみたり、飲む直前に食べる物を変えてみたり色々試したのですが、一貫した法則は見つけられませんでした。これって自分側の体調次第なのですかね? 同様な体験をしたことがある方は是非コメント頂けると幸いです。おそらく、私が感じているオールド臭と言うのか、古びた風味は、経年だけでなく、そもそもの熟成バレルからも由来していると思われます。だから評価が難しいのですが、私にとって過剰なオールドファンクはなくていいものなので、それが点数を抑える結果になっています。それさえもう少しだけ感じることがなければ、あと1点は高かったでしょう。オールドボトル・エフェクトを軽々とクリア出来るオールドボトル愛好家の方なら、もっと評価は高いのかも知れませんね。

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今回はジムビーム・ブラックがまだ8年熟成だった頃の物を取り上げます。ラベルに描かれた歴代のビーム家マスター・ディスティラーの中に、現在のフレッド・ノーがいません。まだブッカー・ノー存命中の物です。ブラック・ラベルのブランド紹介は過去投稿のこちらを、ブッカー・ノーについてはこちらを参照ください。

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JIM BEAM BLACK 8 Years 86 Proof
推定1999年ボトリング。濃密なキャラメル、香ばしい焦げ樽、コーン、サワークリーム、オールドファンク、サイダー、ビターヌガー、タバコ、レーズン。アロマは強いキャラメルと甘酸っぱいフルーツと地下室っぽいオールド臭が主、開封から暫くするとヒネ臭は消えフローラルが出てきた。口当たりは度数の割にはとろみがありつつサラッともしている。舌では甘味を、口蓋全体では甘酸っぱいベリー系の旨味を感じ易い。余韻は比較的さっぱりめだが、コーンの気配とビタネスは長続きする。
Rating:85/100

Thought:開封した途端、ああ懐かしい匂い…って思いました。90年代のジムビームやヘヴンヒルやエンシェントエイジのような安バーボンの「らしい」感じを想い起させたのです。2000年代後期や2010年代前期のブラック・ラベルと較べると、フレイヴァーの密度が高い?気がしました。オールド臭も過剰でなければ崇高性を高めてくれますから、このボトルに関しては全然アリな程度で美味しかったです。ボトリング・プルーフは低いので、それが余韻の物足りなさにも繋がっているのかなとは思いますが、まあジムビームのライト感と思えば…。

Value:現行のエクストラ・エイジドより遥かに旨いのは間違いありません。オークション等の二次流通市場で高騰している銘柄でもないので、案外狙い目かも?

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先日、Kazue Asaiさんの個展が開催されている「お酒の美術館」中野店へ行ってきました。只今絶賛開催中な訳ですが、早くも行った方々はだいたい写真付きで各種SNSにて紹介されています。そこで私も、距離的時間的に行きづらい人もいるかと思いますので、こちらでイラストの紹介をしておきます。お店については以前に投稿したこちらを参照下さい。

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これらのうち何点かは既に売約済みとなっています。欲しいものがある方はなるべく早めに行って即断することをオススメします。個人的にはアーリータイムズやオールドクロウのガールなんかイチ推し。

私が行ったのが平日でないこともあったでしょうか、或いは営業時間短縮の都合で人の出入りが集約したのか、お店は思っていた以上に大盛況でした。オープンからひっきりなしにお客さんが来店して、時間帯によってはお店に入れず「待ち」の人もいるほど。駅近の繁華街ど真ん中、しかも提供価格が安価、そこに来てアーティストさん目当ての方も来るとあっては当然なのかも知れませんね。

今回、私はkazueさんご本人に同行してもらっています。そのお陰で、彼女のお祝いに駆けつけた、私個人では普段出会うことのない作家さんたちお三方と同席することにもなり、刺激的なお話しや楽しい会話を聴くことが出来ました。出会った皆さん、そしてKazueさん、ありがとうございました!

そう言えば、Kazueさんが完成したイラストを手渡しているところや、新たに似顔絵イラスト作成の依頼をされている現場を直に目の当たりにしたりもしました。お酒の美術館にちなんで、そこに飾られているような人とお酒のイラスト、具体的には依頼者本人(もしくは写真があれば他人でも可)と指定の銘柄のお酒(好きなお酒、例えばアードベッグでも山崎でも)を描いてもらえるのです。誕生日プレゼントにするという方もいました。いくつか拝見させてもらいましたが、完全にKazueさんのタッチでありながらちゃんとご本人の特徴をよく捉えたイラストになっており、これは買って嬉しいもらって嬉しいイラストだと思います。とてつもなく薄いハイボールを飲んでいる方を見かけたら、それがKazueさん本人かも知れません(作家が自らの個展に在廊するように、開催期間中はKazueさんもよくお店に出没します)。もしお店に行かれることがあり、Kazueさんを見かけたら、貴方もイラストを依頼してみるのも一興ではないでしょうか?

さて、言うまでもなくここはバーでもありますから当然お酒を注文します。私としても何かしらオールドバーボンを飲むことは目的の一つでもありました。しかし、実は当日の私は湿気にやられたのか体調が思わしくなく、残念ながら結果的に一杯しか飲めませんでした。始まりの一杯が終わりの一杯となったのです…。あとはジンジャーエールだけ飲みました。軽いものから始めようと思い選んだのは、トップ画像で分かる通りビームズ・チョイス。では、飲んだ感想を少しばかり。

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BEAM'S CHOICE Green Label 86 Proof
店員さんによると88年ボトリングとのこと。ネックに「ウイスキー特級」の表記がありますね。ラベルに「8」とありますが、「Year」はないのでNAS扱いとなります。おそらく、この頃の物は熟成年数は5年くらいなのではないでしょうか。先ず、現行ビームの特徴とされるピーナッツ(またはダンボール風味)は全く感じません。また、現在自宅で開けている90年代のブラックラベル8年と比較してもかなり異なり、熟成年数の違いにもかかわらず、こちらの方がメロウかつ濃いダークフルーツを感じました。あまり酸味もなく、好ましい要素ばかりで、86プルーフにしてはフレイヴァーも強い。ここら辺に、特級表記に拘るウィスキー通の方や、或いは88年〜92年あたりのバーボンを至高と考えるマニアの方の、好ましいと感じる点がわかり易く現れているのかも知れません。状態も良かったのだと思います。これはオススメ。
Rating:86/100

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ジムビームのラインナップ中、長きに渡り最高の価値があると評されたブラック・ラベル。しかし、ここ十年ちょっとで最も弄くり回されたブランドかも知れません。
おそらく、もともとブラック・ラベルは101ヶ月(約8年半)熟成90プルーフで始まり、次第に8年熟成90プルーフ、7年熟成90プルーフ、8年熟成86プルーフへと時代に順応して変化したと思われます。多分、86プルーフに下がったのは90年代かと。ビームは大きな酒類会社なので、販売される国でボトリングするためにウィスキーをバルクにて輸出している可能性があり、バッチが異なるのは当然として、パッケージが少し異なったり、ボトリング・プルーフの異なるヴァージョンがあるようです。日本でも、今回レヴューするエクストラ・エイジドの前に流通していた正規輸入品は確か6年熟成80プルーフだったと思います。

基本的に2000年代のアメリカ国内流通品は8年熟成86プルーフでした。2007年から2008年頃、オーストラリアとカナダでジムビーム・ブラックは8年のエイジ・ステイトメントを失い、代わりに「AGED TO PERFECTION」と表ラベルに表記されます。ビームによれば、これは米国以外の市場でのブラック・ラベルの売上が予測を上回ったためだそうで、熟成樽の不足からラベルの変更を余儀なくされ、おそらく中身の原酒の熟成年数も変更されたのでしょう(6年へ?)。エイジド・トゥ・パーフェクションのラベルはアメリカ以外の市場(ヨーロッパとか)にも流通したと思いますが、アメリカ本国で販売された製品はラベルに年数表記があり、8年熟成は維持されました。
おそらくその後(2010年前後?)に、スタイリッシュなラベル・デザインのブラック・ラベルが登場したと思われ、ホワイト・ラベルの4年熟成に対して倍であるため「ダブル・エイジド」と表記されたアメリカ国内向けの8年熟成、ストレート・バーボン規格の最低熟成年数である2年の3倍であるため「トリプル・エイジド」と名付けられた国外向け6年熟成の物がありました。
2015年になると、アメリカ国内のブラック・ラベルからもエイジ・ステイトメントは削除され、ラベルには「XA Extra Aged」の文字が現れます。きっとこれは6年熟成なのでしょう。一般的に、生産者は以前よりも若い原酒を使用することを意図せずに、熟成年数の表示を取りやめることはありません。従来通りなら熟成年数を削除する必要がないからです。そして2016年半ば、ビーム社はジムビーム・ブランドのラベルとボトルのデザインを刷新しました。そこでブラック・ラベルは再び微調整が施され、「XA」を削除し、ハイフンを追加して「Extra-Aged」となります。これが現在販売されているブラックであり、トップ画像のデザインです。
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2000年以降、特に2010年代、アメリカのバーボン業界は劇的な変化を遂げました。あらゆるアメリカン・ウィスキーに対する記録的な需要は、新しいクラフト蒸留所の前例のない「爆誕」を齎し、また旧来の由緒正しき蒸留所からも新しい革新と実験が行われました。その他にもバーボンの高需要は、大手蒸留所が比較的「高齢」でありながらも大変お買い得だった銘柄を次々とNAS(No Age Statement)へと変更せざるを得ないか、或いはエイジ・ステイトメントを維持するなら値上げするしかない状況を与えました。ヘヴンヒルのエライジャ・クレイグ12年がNASになったのはその最たる例でしょう。以前は8年熟成だったジムビーム・ブラックがNASに切り替えられたのも、そうした一例な訳です。NASへの移行は既存のエイジ・ステイトメントを維持するのに十分な熟成原酒のストックがないのが主な理由ですが、一方でプレミアムな長熟製品のために一部の樽が抑制されているという噂は常にあり、それが真実である場合アメリカン・ウィスキーの基盤と言える「日常バーボン」の熟成年数やプルーフ(≒品質)を犠牲にしてまで金儲けに走るなよというバーボン愛好家の嘆きを生みます。まあ、それは偖て措き、現行のエクストラ・エイジドです。

この約6年熟成とされるブラックラベル・エクストラ・エイジドは、アメリカ流通の物は86プルーフ、日本市場の物は80プルーフでのボトリング。マッシュビルは77%コーン、13%ライ、10%モルテッドバーリーであろうと推定されています。ビームはクレアモントとボストンに大きな蒸留所を所有し、彼らはそこでメーカーズマークを除くあらゆるウィスキーを造ります。ボストン(通称ブッカー・ノー・プラント)は専らジムビーム・ホワイトラベルを製造し、クレアモントはホワイト・ラベルも含むその他の全てを製造するとされます。なのでブラックはクレアモント産ですかね。ビーム社の最高峰ブッカーズが中層階のバレルを主に使用するところから、ビーム倉庫のスイートスポットは中層階と考えられるので、おそらくブラック・ラベルに使用するバレルは上層階から来てるのかも知れません。上層階のバレルは他の場所のバレルよりも早く熟成することはよく知られています。そこで、若くても熟成感のある樽をピックアップすることで、8年に近いフレイヴァー・プロファイルをNASでも保つことが出来るだろうと推測している人がいました。

8年熟成のブラック・ラベルは割と長い期間販売され続け、味が良く安価、しかもどこでも労なく入手できるため非常に人気がありました。しかし、8年熟成も今は昔の話。個人的には現行のエクストラ・エイジドは飲む必要がないかなと思っていたのですが…。ジムビームが2019年に発表したPRニュースによると、アメリカン・ウィスキーを飲む人は世界で最も高価でレアなバーボンよりもジムビーム・ブラックを好むことを示す調査結果が出た、と言うのです。調査は独立した第三者機関のアルコール飲料研究会社であるビヴァレッジ・テイスティング・インスティテュート(BTI)が行いました。BTIはアメリカで最も古いアルコール飲料研究会社で、1981年以来、専門家によるテストや独自のデータや消費者調査を使用して、飲料会社が賢明な生産とマーケティング決定を下すのを支援しています。彼らはアメリカ全土の複数の市場でブラインド・テイスト・テストを実施。参加者には二つのサンプルが提供され、一つはジムビーム・ブラック(23ドル)で、もう一つは名前の伏せられた約3000ドルの限定生産の象徴的なバーボンとのこと。結果は、54%が超高額なバーボンよりもジムビーム・ブラックを好み、55%がジムビーム・ブラックの方が滑らかだと答えたそうな。ごく僅かではあってもテイスターの過半数が高価なスーパー・プレミアム・バーボンより安価なボトム・シェルファーを選んだと? おいおい、マジか…。この名前の伏せられたバーボンは価格から考えると、希望小売価格に上乗せ金が付いたパピー・ヴァン・ウィンクル20年でなければならないでしょう(ミクターズ・セレブレーション・サワーマッシュだともっと高いですし)。或いはパピーの23年の方かも知れませんが、どっちでも構いません。言うまでもなく、良いウイスキーは熟成年数が何年であろうとプルーフが幾つであろうと良いウイスキーだし、味わいの優劣なんて飲み手の好みに左右されるもの。熟成年数の長いバーボンはウッドの風味が強くなり過ぎるので、却って短熟の方が好みの人が半分近くを占めたっておかしくはない。実際、私にもその傾向はあります。…にしても、NASのジムビーム・ブラックラベルがパピーに勝った? これは是非とも確認のため現行のブラック・ラベルも飲んでみなければならない、という訳で、そろそろ注ぐ時間です。

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JIM BEAM BLACK EXTRA-AGED 80 Proof
推定2019年ボトリング。焦樽、プリンのカラメルソース、グレイン、ちょっとトロピカルフルーツ、胡椒、藁半紙。アロマは時間が経つとナッティ。水っぽい口当たり。軽くて飲み易い割に少しアルコールの刺激を感じる。余韻はあっさりして短く、穀物とスモークが主に出るが辛味もあって深みがない。
Rating:79/100

Thought:昔の6年とか8年とエイジ・ステイトメントがあったブラックと較べると、どうしても美味しくなくは感じてしまいました。なんか6年よりも熟成してなさそうな若い味わいと言うか、いや、アルコール感が目立ち過ぎると言うか。とは言え、現行ホワイト・ラベルよりは格段に甘さ、フルーツ、スパイス等の熟成感はあって悪くはなかったです。
それと、上で言及した「調査」の件ですが、そのブラインド・テストでテイスターが試したのは86プルーフであり、私が試したのは80プルーフ、この差はかなり大きいと思います。ただ、これが86プルーフだったとしても、いくら想像を膨らませてみても流石に「パピー」を打ち倒す程の物とは到底思えませんが…。

Pairing:軽めのテクスチャーにライトなフレイヴァーなので肉料理や濃厚な味付けの料理を欲しなかったです。しかし、逆にあっさりとした冷奴に合わせるとピッタリ。これは料理を引き立てる酒という視点ではなく、バーボンを引き立てる料理という視点です。

Value:アメリカでは大体18〜25ドルで販売されており、最安値なら所謂アンダー$20バーボン。日本でも1800〜2500円が相場で、概ね本場と感覚的に変わりはないでしょう。但し、上述のように日本版は80プルーフなので本国版に較べ割高ではあります。ロウワー・プルーフはコンテンツに水が多いことに他なりませんから。
ジムビーム・ブラック・エクストラ・エイジドは基本的に美味しいバーボンです。バーボンを飲むことの喜びは甘い炭の風味にありますが、これにはちゃんとそれがあります。しかし、安価なバーボンなので奇跡を期待してはいけません。3000円以上するバーボンと比べたら不味く感じるし、1000円のバーボンと較べたら遥かに美味しく感じる、ただそれだけ。ジムビームの意図通り、ホワイトには物足らず、デヴィルズ・カットやダブル・オークには少々割高さを感じる人向けには良い製品でしょう。私の個人的な嗜好では、現在のジムビームの安価なラインナップの中ならダブル・オーク一択。また、酒屋の棚で並行輸入の86プルーフ版ブラック・ラベルか熟成年数表記ありの売れ残りを発見し、それが数百円の違いしかなかったら、必ずそちらを購入するべきです。

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ジムビーム・デヴィルズ・カットは2011年に発売されました。2〜4年程度で廃止されるブランドも多い中で、今でもラインナップに残っているところを見ると人気があるか少なくとも利益率の悪くないバーボンと思われます。現在、日本で入手し易いジムビームの比較的廉価な物にはデヴィルズ・カット以外では、白のスタンダード、黒のエクストラ・エイジド、紺のダブルオーク、緑のライとありますが、この中では上から二番目に小売価格が高い。市場に出回っている殆どのバーボンウィスキーには、消費者の注意を引くためのラベルやギミック、関心を喚起するためのストーリーといったマーケティングの業があります。では、この「悪魔」までをも引き合いに出したブランディングのバーボンは一体どのようなものなのでしょうか?

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ウィスキーについて多少なりとも学んだことのある人は「エンジェルズ・シェア」という言葉を聞いたことがある筈です。これはスピリッツやワインを樽熟成する過程で蒸発によって失われる水分やアルコールに付けられた用語。お洒落な言い回しですよね。ウィスキーが閉じ込められているオーク樽はしっかりと密封されていますが、木材は多孔質のため蒸発が起こります。ウィスキーの熟成過程では毎年数%の液体がバレルから蒸発するのです。数%ならそれほど多くはないように思えますが、熟成期間が長ければ長いほど失われる量は多くなります。20年超の熟成ウィスキーは蒸発により内容物の半分以上が失われる可能性もあり、これが長期熟成酒の価格を押し上げる主な要因。熟成年数が長ければそれだけ美味しくなるとは限りませんが、熟成の過程に蒸発は付き物であり、謂わば蒸発なくしては木材から甘美なフレイヴァーを得れない、少なくとも古典的な製法では。そこで、ウィスキーを美味しくするために年会費を請求する天使への供物であると解釈するのが「エンジェルズ・シェア」という訳です。これは日本語では「天使の分け前」とか「天使の取り分」と翻訳されています。
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(AWZ作。天使はウィスキーがお好き)

ウィスキーを樽で熟成する過程で中身の液体が失われる理由は主に三つあり、一つが上のエンジェルズ・シェアでした。もう一つは味を確認するための定期的な試飲。そして、残るもう一つが樽の木材自体に染み込み吸収される分です。日々の、或いは年間を通しての高い温度と低い温度のサイクルによってウィスキーが樽の木材に押し込まれ、そして再び戻って来ることでそのフレイヴァーは増幅します。木材に入り込んだウィスキーの一部は、そこに残ったまま基本的には戻って来ません。そこでビーム社はこれを「エンジェルズ・シェア」の巧みな言葉遊びとして、天使に捧げたものに対する悪魔に奪われたもの、即ち「デヴィルズ・カット」と名付けました。
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(TP作。あくまでイメージですw)

中身をダンプして空になった樽には、かなりの量のバーボンが木材に染み込んだまま残っています。その量は約2ガロンとも、他説では約7ガロンともする情報がありました。ビームはこれを独自のプロセスを使って抽出すると言います。そのプロセスは完全には公開されていませんが、どうやら空になったバレルに水を入れ、それを高速で撹拌するだけらしい。ジムビームのマスターディスディラー、フレッド・ノーはペイント・シェイカーのように樽を振ると説明しています。また、もしかすると熱(蒸気)も加えているかも知れません。ともかく、そうして抽出した樽材の奥深くに閉じ込められていたタンニンやヴァニラやシャープなウッド・フレイヴァーを多く含むとされる液体を、6年熟成のバーボンとバランスを整えてブレンドし、90プルーフでボトリングしたら「ジムビーム・デヴィルズ・カット」の出来上りです。ちなみに抽出されたウィスキー残滓を含む液体と通常バーボンのブレンド比率については明かされていません。

ところで、スピリットが熟成されている樽に吸収されることをデヴィルズ・カットという用語で呼ぶのを「ジムビーム・デヴィルズ・カット」登場以前に聞いたことがある人は殆どいないでしょう。おそらくこの用語はビーム社によって発明された巧妙なマーケティング用語です。彼らは「独自のプロセス」と言いますが、実際には使用済みの樽からウィスキーを抽出する作業は古くから知られていました。ヒルビリーやムーンシャイナー、或いは嘗ての蒸留所の労働者達は、使用済みのウィスキーやラムのバレルに一定量の水(またはお湯)を注ぎ、その樽を横に置いて数日(または数ヶ月)おきに少しづつ回転させ、俗に「スウィッシュ」と呼ばれる非公式な使用のための酒を造ったと言います。それにはかなりのアルコールが含まれており、一部の人々はスウィッシュを「本物」と同じくらい優れていると考えたとか。ジムビームがしているのは基本的に同じことのように見えます。つまりジムビーム・デヴィルズ・カットは言葉を換えれば、6年熟成のバーボンをスウィッシュでカット(希釈)したバーボンだ、と。
ビーム家の現当主フレッド・ノーにしても、ケンタッキー州バーズタウンで蒸留一家の下に生まれ育ったからには「スウェッティング」として知られる地元の通過儀礼を経験していたと思われます。子供たちは地元の蒸留所から中身が投棄されたばかりの樽に数ガロンの水を入れ、バングホールをしっかり塞ぎ、暑い太陽の下で退屈するまで樽を転がしました。そうすると軽く酔うのに十分なアルコールが得られるのでした。これが製品化のヒントになったのでしょうか。「樽の発汗」は何も飲料用のみとも限りません。パブリカー/コンチネンタルの創始者ハリー・パブリカーは創業当初、フィラデルフィアのあらゆる小規模蒸留所に行き使用済みウィスキー・バレルを手に入れ、スウェッティングの技法を用いてウィスキー残滓を抽出し、工業用アルコールとして販売することで業界に参入しました。

「デヴィルズ・カット」はビームによって商標登録されていますが、一般的にダンプしたばかりの樽に数ガロンの水を入れ軽くリンスして残滓の一部を抽出することは多くのウィスキー蒸留所で行われていると聞きます。バレル・リンシングというプロセスです。他の大手酒類会社であるブラウン=フォーマンは、標準的な53ガロンの樽の1/3から1/2の間まで水を満たし、少なくとも三週間放置することで樽内部の木質繊維からより多くのウィスキーを抽出する独自のリンス・プロセスのパテントを持っているそう。ビームは攪拌を使用しますが、ブラウン=フォーマンは撹拌を使用しません。デヴィルズ・カットの発売より数年前、ジャックダニエルズはそうしたプログラムを開始しました。その手法はただのリンシングよりもアルコール含有量で測定すると約五倍多くのウィスキーを回収できるそうです。
ビームのプロセスがどれほど独創的であるかは偖て措き、ジムビーム・デヴィルズ・カットはバレル・リンシング・テクニックをブランディングに用い、主要製品の一つとして大衆市場へ向けて導入された初めてのバーボンだったと言ってよいでしょう。ビーム傘下にあるメーカーズマークは、供給不足解消のため2013年にそれまでの90プルーフから86プルーフにプルーフィング・ダウンする計画を発表したところ、ファンから猛反発を受けて瞬く間に前言を撤回し、その後、バレル・リンシングを導入することにより供給の問題に対応すると発表しました。これはデヴィルズ・カットの成功から来ているとみて間違いないように思います。この発表の後、新しいオーク樽で熟成されるバーボンとは異なり主に使用済みのバーボン樽で熟成させるスコッチの生産者、またバーボン・バレル熟成を行うクラフト・ビールの製造者やバーボン・バレル・フーズのような周辺産業の一部の関係者は懸念を表明しました。ビームやブラウン=フォーマンが行うようなディープ・バレル・リンシングは、自分達が使う中古樽から木材のフレイヴァーを奪い取ってしまうのではないか、という訳です。この問題がその後どうなったかは寡聞にして知りません。あくまでバーボンそのものではない数ガロンのスウィッシュを増産するに過ぎないことを考えると、全ての生産者がディープ・バレル・リンシングを行うとも思えませんし、2015年以降も増え続けるクラフト蒸留所や熟成倉庫を増設する大手蒸留所の存在もあります。どこかで需要と供給のバランスは上手く取れたのでしょうか? 少なくとも、大手企業にとってはバレルの再販とリンシングのどちらがより収益が大きいかは鍵になったのではないかとは思いますが…。ここら辺の事情に詳しい方はコメントよりご教示頂けると助かります。
ちなみに味わい的には、バレル・リンシングによって抽出されるウィスキーは非常に強いウッド・プロファイルを有し、それをブレンドすると実際よりも熟成年数の高い物に感じられるとされますが、同じような結果を齎す方法にスモール・バレル・エイジングがあります。小さい樽はウィスキーと木材の接触する表面積が増えるため、熟成が早く進むと言うか木材のフレイヴァーを取り込み易くなるのです。伝統を持たない小さなクラフト・ディスティラリーでは多く採用されています。リンシング対スモール・バレルの戦い?も興味深いですね。では、そろそろ悪魔のエキスが入ったバーボンを注ぐとしましょう。

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JIM BEAM DEVIL'S CUT 90 Proof
推定2015年ボトリング。石鹸、フローラル、生木、バターピーナッツ、ヴァニラ、ドライフルーツ入りクッキー、胡椒、煙、サイダー、僅かにプルーン。水っぽい中に少しだけとろみのあるテクスチャー、ピリリと刺激も。口の中ではビーム特有のフルーツ感もあるが、あまり甘くなくスパイシー。余韻はグレイン&スパイス中心でドライながら木炭の風味が尾を引く。液体を飲み込んだ直後がハイライト。
Rating:81/100 

Thought:少々キワモノ的なブランディングが好みではないので今まで敬遠していたデヴィルズ・カットなのですが、今回やっとこさ飲んでみました。悪くないですね。普通のジムビーム・ホワイトやブラックとは少し異なるキャラクターはあるように感じました。事前の予想通り、確かにスパイシネスと木材感が強まっています。開けたてはソーピーなアロマとアルコールの尖りを感じましたが、飲み進めて残量3分の1くらいになる頃にはビームらしいフルーツも顔を出して美味しくなりました。
現行のデヴィルズ・カットはラベルの字体が少し変わり、ボトル形状もその他のジムビームに合わせて変更されました。なので今回私の飲んだのは旧デザインということになります。私は現行を試してないので何とも言えませんが、日本の有名なウィスキーブロガーさんでデヴィルズ・カットの新旧比較を行っている方がいて、その記事には「旧」の方を高く評価する趣旨の発言が見られます。「新」の方が小売価格自体が下がっており、バーボン原酒の熟成年数も下がっているのではないか?と邪推できなくもありません。だって現行(新の方)はブラックと小売価格が殆ど変わらないですから。飲み比べたことのある方はどう思われたでしょうか? どしどしコメントよりご意見お寄せ下さい。

Pairing:敢えてスパイシー系ソース焼きそばに合わせると美味しかったです。私は食前酒にも食中酒にも食後酒にもバーボンを飲みますが、個人的にはデヴィルズ・カットは食後酒ではなく食中酒に適してるように思われました。食後にはより滑らかなバーボンか、もっと甘みのあるハイ・プルーファーが望ましく感じます。

Value:現行のデヴィルズ・カットは概ね1800〜2400円の間くらいが相場のようです。ホワイトが1200〜1500円、ブラックが1800〜2200円、ダブルオークが2500〜3000円なので、随分と狭い価格帯でのブランド展開となっています。上に述べたように、私は現行のデヴィルズ・カットを飲んでいないので、あくまで品質が今回飲んだ物とほぼ同等であると見做しての話になりますが、もしブラックと同じ価格かプラス数百円の違いなら個人的にはデヴィルズ・カットがオススメです。よりハイアー・プルーフですから確実にお得。しかし、バランスを重視するならライトなブラックの方がいいでしょう。おそらくブラックの方が甘さは感じ易いと思います。

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今宵の一曲はブッカー・リトルの「マイナー・スイート」です。TIME盤と言えばリトルがワンホーンで臨んだ名盤であり、彼お得意のマイナー調の曲が多い作品として知られますが、この作品の人気はもうひとりの夭折の天才、ベーシストのスコット・ラファロの存在にある、と言っても過言ではないでしょう。グイグイと強靭なベースを聴かせてくれてます。その他のバックも鉄壁の面子。さて、合わせたバーボンは、

JIM BEAM SIGNATURE CRAFT 12 YEARS 86 Proof
2013年にリリースされたシグネチャー・クラフト・シリーズの12年熟成物。ビームの製品はブッカーズで6〜7年、ノブクリークで9年程度と、長期熟成をあまりしない中で異例とも言える12年熟成なのがウリでしょうか。当然ながらマッシュビルはジムビームと同じ77%コーンのロウ・ライ・レシピ。そしてスモール・バッチでのボトリングです。では、飲んでみましょう。

焦がしたオーク、フレッシュフルーツ、ヴァニラビーンズ、ピーナッツ、ビターチョコ、紫蘇。思いの外、キャラメル系の甘い香りが薄め。飲み口はすっきり。余韻はやや苦めでナッティかつビール様、更にヨモギ。海外の有名なバーボンレビュワーの評価がなかなか良かったので期待しすぎたのか、少々拍子抜け。確かにジムビームらしい焦樽系のアロマは豊富なのだがテクスチャーが滑らか過ぎる。出来ればもう少し引っ掛かるものが欲しい。47度でボトリングしてもらいたかった。
Rating:84/100

Thought:これは単に私の好みなだけかも知れませんが、どうも現行のジムビームは音で喩えると、低音域と高音域が効いているのに中音域がすっぽりと抜けた音のようなバーボンに感じます。勿論、その音が好きな人もいるでしょう。けれども個人的には好きな音ではありません。またビームのスモールバッチシリーズのバーボンたちと比べると余韻が好みでなかったこともあり、値段を考慮するならもう一度購入したいお酒ではなく、同程度の価格ならばハイアープルーフのノブクリークを選びます。

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(ri)1  92 Proof
記号のような表記の名前は「ライワン」と発音します。2008年10月にビームグローバルから発売されたという情報を目にしました。熟成年数の異なるいくつかの原酒のブレンドで、最低でも4年半の熟成とされ、原酒構成はおそらく4.5〜6年程度ではないかと思われます。新世代のバーテンダーやミクソロジスト向けの製品企図があるようですが、ストレートで飲んでも美味しかったです。ジムビームらしいバーボン寄りのライウィスキーで、フルーティーなバーボンみたいな感じです。軽やかな口当たりに、ややスパイシーなトーンを維持しつつ甘味もあり、強いて言うと赤リンゴのフルーツ感を感じました。ジムビームライと較べると度数が高いので当たり前ですが味わいと余韻は強いです。ノブクリークライと較べるとスモーキーさやダスティなフィーリングに欠けていると言えます。
現在では終売になっているものの、プリプロヒビション・スタイルと銘打たれリニューアル(2015)したジムビーム・ライのアメリカ仕様?は90プルーフのようなので、そちらで代用する感じでしょうか。ましてやノブクリーク・ライもあっては終売も仕方なしかと。ちなみに上記のプリプロヒビション・スタイルは日本にも90プルーフの物が並行輸入で入って来てます。日本正規品とはボトル形状とラベルが少し違うやつを酒屋で見かけました。私は試していませんが、500円程度の違いでアルコール度数が5度も上がるのはお買い得な気がします。
Rating:84/100

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KNOB CREEK Small Batch 9 Years 100 Proof
ジムビームのスモールバッチコレクションの一つノブクリーク(現在では9年表記はなくなりました)。ビーム家6代目ブッカー・ノーが禁酒法以前の力強いバーボンへの回帰を目指して造り上げ、特徴的なボトルデザインと相俟って、92年の発売以来人気があります。その特徴的なデザインは禁酒法時代にルーツがあり、ブーツの中に酒を隠しやすいフラスクを模したレクタンギュラーボトル、またそれを新聞紙で包んで隠していたという故事に倣ったラベルデザイン、どちらも秀逸というしかありません。
あと、ノブクリークという名前の由来について、ケンタッキー州にある小川の名前であり、偉大なる大統領エイブラハム・リンカーンが幼少期を過ごした土地にちなむと説明されることが殆どですが、大昔にナショナル・ディスティラーズのブランドで「ノブクリーク」という名前のバーボンがあったという指摘があります。確かに他のスモールバッチラインナップの名前は、ブッカーズ、ベイカーズ、ベイゼル・ヘイデンズとどれも人名であり、ノブクリークだけ仲間外れな感じはします。まあ、余談ですが…。 
さて、お味の方はというと、アロマはキャラメルとオークが中心で、フレイヴァーにはナッティかつトースティなテイストがあります。個人的にはフルーティーさはブッカーズのほうがあるような気がしました。またジムビームのバーボンの中で最も樽の焦げた味がするように感じます。それをややスモーキーと言うのでしょう。これは好きな味です。ただし、私にはどうしてもジムビームのバーボンには、もう一つ何かが足りなく感じます。それを奥行きとか深みとかコクと言ってもいいですし、濁りと言ってもいい。とは言え、スモールバッチではない通常のジムビームラインと比較すれば遥かに香り高いのは間違いありません。本ボトルは推定2009年ボトリング。
Rating:85/100

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Booker's
BATCH No. C05-A-12
7YRS 5MO
128.5 PROOF
推定2012年6月ボトリング。高濃度なので全てがハイパワーで楽しめる。オーク、キャラメル、レザー等。但しそれほど長期熟成でないせいか、チョコレートやプルーンは出てこない。むしろビームらしいフレッシュフルーツの味わい。旨いと言えば旨いのだが、正直言って「特別」なフィーリングはない気がする。何よりも旨味を増して来たのが残り三分の一を切ってからだったのが痛かった。しかも、それでもブラントンズのSFTBには遠く及ばない。初期のロットやプライベートストックなどはもっと美味しいと聴くのだが…。
Rating:85.5/100

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