
(上は異なる版のボトルの写真。ヘヴンヒル公式ウェブサイトより)

ヘヴンヒル・セレクト・ストックは、ヘヴンヒル蒸溜所のヴィジター・センターである「ヘヴンヒル・バーボン・エクスペリエンス(旧称バーボン・ヘリテッジ・センター)」およびケンタッキー州の一部の限られた小売店にて少量販売される、革新性とコレクション性の高いアメリカン・ウィスキーのラインです。これは基本的にヘヴンヒルの実験的ラインのため、マッシュビル、エイジング、フィニッシュ、プルーフはエディションによって異なります。そのバッチ・サイズはかなり小さく、5バレル未満であったり、最近の物でも26バレルとされていました。2022年後半期からは、ユー・ドゥ・バーボン・エクスペリエンスで提供されているようです。この「You Do Bourbon」と言うのは、ヘヴンヒル・バーボン・エクスペリエンスで行われる「ツアー」の選択オプションの一つで、75分で40ドルを払い、研究室のようなテイスティング・ルームに座ってエライジャクレイグ・バレルプルーフ、ラーセニー・バレルプルーフ、バーンハイム・オリジナル・ウィートウィスキー・バレルプルーフの3種とあればセレクト・ストックを試飲し、その中からお気に入りを選択して、自分でボトルに詰めてラベルの記入をするものです。購入したボトル毎に5ドルが地元の非営利団体に寄付されます。このテイスティング体験には、ラボの探索や1935蒸溜所劇場での上映が含まれているそう。
これまでに発売されたヘヴンヒル・セレクト・ストックの各エディションを以下に纏めておきます。左から順にリリース・デイト、プルーフ、熟成年数、どういうものかの説明です。
HEAVEN HILL SELECT STOCK EDITION LIST
1st Edition|Spring 2014|130.2|8 Years Old|Wheated Bourbon finished in Cognac barrels for two years.
2nd Edition|Summer 2014|128|8 Years Old|Wheated Bourbon finished in Cognac barrels for 27 months.
3rd Edition|Fall 2014|124.4|8 Years Old|Kentucky Straight Bourbon Whiskey finished in Cognac barrels for 21 months.
4th Edition|Fall 2014|127.6|14 Years Old|Bourbon finished in big barrels.
5th Edition|Fall 2015|127.6|8 Years Old|Wheated Bourbon finished in Cognac barrels for 19 months.
6th Edition|Fall 2016|96|20 Years Old|Four barrels of Small Batch Bourbon from before the fire at Heaven Hill in 1996. The barrels were aged 20 years in rickhouses that were adjacent to fire. Non-chill filtered.
7th Edition|Fall 2017|110|4 Years Old|Small Batch Bourbon that was aged for four years, then rebarreled in new charred oak barrels for an additional two years.
8th Edition|Winter 2017|97|14 Years Old|Corn Whiskey that was aged for 14 years, then rebarreled into new charred oak barrels for an additional year.
9th Edition|Spring 2019|94|18 Years Old|Two barrels of Wheated Bourbon from the first floor of different rickhouses mingled together, non-chill filtered.
10th Edition|Winter 2019|90|6 Years Old|Kentucky Straight Bourbon Whiskey that was aged for six years then finished in Good Folks Coffee Company's Bourbon barrel-aged cold brew coffee barrels for an additional two weeks.
11th Edition|Winter 2021|123.4|8 Years Old|Small Batch Bourbon finished for six months in a new oak barrel custom toasted to a unique taste profile defined by our Master Distiller. Bottled at barrel proof.
12th Edition|Spring 2022|110|13 Years Old|Small Batch Bourbon finished for two years in 36-month, air-dried Chinquapin barrels that were charred to a level 3.
13th Edition|Spring 2022|110|8 Years Old|Rye Whiskey finished for two years in 36-month, air-dried Chinquapin barrels that were charred to a level 3.
このデータはヘヴンヒルの公式ウェブサイトから採ったものですが、調べてみると他にストレートバーボン・ドットコムのためにハンド・セレクトされたプライヴェート・ピックが二つありました。これらはヘヴンヒル蒸溜所のマスター・ディスティラーでALSによって引退したパーカー・ビームのプロミス・オブ・ホープ基金への資金を集めるためのボトルでした。ボトリングされたものは、数本を覗いて全てコミュニティーのメンバーに譲渡され、各メンバーは販売しないことを誓約していたそうです。当時はボトル1本75ドルでした。ピック1は8年熟成のウィーテッド・バーボンをコニャック・バレルで19ヶ月フィニッシングしたもの。127.6プルーフで計366本。2003年9月24日蒸溜、2013年9月19日のボトリングです。確証はありませんが、ファースト・エディションより半年も早くボトリングされているところからすると、セレクト・ストックのラベルを使った最初の1本なのかも知れません。ピック2は8年熟成のウィーテッド・バーボンをコニャック・バレルで27ヶ月フィニッシングしたもの。124.6プルーフで計426本。2003年9月24日蒸溜、2014年5月2日のボトリングです。
それと、先述のユー・ドゥ・バーボンで2022年7月に提供されたものには、テーパード・ステイヴ・バレルで14年間熟成させたバーボンがあります。この樽はその名の通りステイヴの両端が先細りになっているためダイヤモンドのような形をしており、風変わりなバレル形状がバーボンの味にどのような影響を与えるかを見るための実験だったらしい。このバーボンのマッシュビルはヘヴンヒル蒸溜所のスタンダードな78%コーン/10%ライ/12%モルテッドバーリーで蒸溜され、パーカー・ビームのお気に入りとされるリックハウスYで熟成されました。26バレルからバッチングし、132.3プルーフでのボトリング、MSRPは200ドルです(ツアー代の他にこの金額を支払ってボトルを購入する)。その後はウィート・ウィスキーが提供された模様。
偖て、今回試飲するセレクト・ストックは、2017年にリリースされたセヴンス・エディションです。これは通常通り4年間熟成させた後、チャーしたオークの新樽で更に2年ほど再び熟成させたスモールバッチ・バーボン。つまり、他の酒などが入っていた樽で追熟を施しフレイヴァーをレイヤードさせるのではなく、ダブル・オークドと呼ばれるバーボンらしさをアンプリファイドする方向性のやつですね。
なかなか日本ではお目にかかれないこの貴重なバーボンは、とあるバーボンマニアの方からご提供頂きました。感謝の気持でいっぱいです。本当にありがとうございました! バーボン繋がりに乾杯! では、注ぐとしましょう。

HEAVEN HILL SELECT STOCK 110 Proof
2017年ボトリング。色は赤みを帯びたディープ・アンバー。焦げ樽、ベーキングスパイス、僅かにチェリー、ミルクチョコ、オレンジピール。ノーズは甘いナッツの香りがメインで柑橘類のヒントも感じられる。とろみのある口当たり。パレートは濃厚な穀物とシナモニーなスパイス。余韻はハイプルーフに期待するよりは短かいが、重厚なオークとさっぱりとしたシトラスが現れ悪くない。グラスの残り香はココア。パレートがハイライト。
Rating:85/100