
ワイルドターキー13年ファーザー&サンは、トラヴェル・リテイル専用として2020年に限定リリースされた製品です。86プルーフで、1リットル瓶に入っています。日本では長期熟成のワイルドターキーというとWT12年101に取って代わった同じ13年熟成のディスティラーズ・リザーヴがある(あった)ので、あまり購買意欲をそそられないかも知れません。特に、そのボトリング・プルーフがディスティラーズ・リザーヴより低いのは懸念点でしょう。熟成年数が同じでプルーフが類似している二つを飲み比べた海外のレヴュアーの方々の感想を見ると、ディスティラーズ・リザーヴの方が良いとするものとファーザー&サンの方が良いとするものの両方があります。自分がどっちに転ぶかは実際飲んでみるしかない。と言う訳で、さっそく。

WILD TURKEY 13 Years Father & Son 86 Proof
推定2020年ボトリング。色はオレンジ寄りのブラウン。アップルサイダー、ヴァニラ、焦げ樽、ライスパイス、ビオフェルミン、アーモンドトフィー、パイナップル、タバコ、杏仁豆腐、チョコレート。アロマはフルーツをコアにお菓子のような甘い焦樽香とスパイス。口当たりは水っぽい。パレートはフルーティだがメディシナルノートも。余韻はミディアムショート、クローヴが強めに現れチャードオークのビター感と僅かにバターが残る。
Rating:86.5→84.5/100
Thought:アロマは凄く良いです。香りだけなら日本で流通しているディスティラーズ・リザーヴ13年よりファーザー&サンの方が良いと思います。ただ味わいはディスティラーズ・リザーヴ13年の方が旨味があった気がします。よって同点と言いたいところなのですが、こちらは開封してから暫くすると妙に渋みが強くなったのが個人的にマイナスでした。これが上記のレーティングの矢印の理由です。もしこの変化がなければ、ディスティラーズ・リザーヴ13年よりプルーフが低いのを考慮すると、こちらの方がリッチなフレイヴァーだったのかも知れない。とは言え、両者はかなり似ています。何ならダイアモンド・アニヴァーサリーから一連のマスターズ・キープに至る近年の長熟ワイルドターキーに共通の風味があります(いや、もっと昔のターキーでも少しはあったりするのですが…)。それは薬っぽいハーブ感とでも言うかクセのあるスパイス香とでも言うのか、とにかく私としてはバーボンに求める風味ではありません。それが少し香る程度なら崇高性を高めるのでアリなものの、他のフレイヴァーを圧倒するほどになると話は変わって来ます。これが私個人が近年の長熟ターキーをあまり評価しない理由です。アロマ以外でファーザー&サンの良い点としては、飲み終えた今にして思うと、飲む以前に気になっていたプルーフィングの低さ、即ち加水量の多さは、却ってフルーティさを引き出していたのかも知れず、飲み易さの一点に関しては功を奏していたように思います。また、ラベルの豪奢な雰囲気はなかなか良いのでは?
Value:メーカー希望小売価格は約70ドル程度のようです。日本での流通価格もそれに準じているでしょうか。13年物のワイルドターキー・バーボンが1リットルも入っているのだから、長期熟成酒の価格が高騰している現状を考慮すると、その値段に見合うだけの価値はあると思います。但し、8年101よりディスティラーズ・リザーヴ13年を好む方にのみオススメです。