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ケンタッキー・ヴィンテージはウィレット蒸留所(KBD)が現在リリースしているスモールバッチ・ブティック・バーボン・コレクションの四つのうちの一つです。そのうち最も安価なブランドで、その他のラインナップはピュア・ケンタッキーXO、ローワンズ・クリーク、ノアーズ・ミルとなっています。このコレクションの成立は、おそらく90年代後半ではないかと思いますが、ケンタッキー・ヴィンテージだけもう少し前から一部の国へ向けてボトリングされていました。その頃の物は、現在のような茶色系のラベルではなく、白地に青と赤のトリコロールが印象的なカラーリングでした。ケンタッキー・ヴィンテージの起源は明確ではないのですが、私の知っている限り最も古いのは、ラベルに艶のない「15年101プルーフ」です。これは80年代後半あたりに当時のKBD(プレミアム・ブランズLTD)の社長エヴァン・クルスヴィーンが日本向けに発売した一連のプレミアムな長期熟成原酒の一つかと思われます。多分その後に艶のあるラベルの「12年101プルーフ」と「13年94プルーフ」が90年代初頭に発売されたと推測しています。
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レギュラー製品としてケンタッキー・ヴィンテージが発売された後にも、2000年には、上記と同じ艶のある白青赤ラベルで、ネック部分には熟成年数の替わりに蒸留年ヴィンテージが示されつつ蒸留日とボトリングの日付を手書きで記したシールが貼られ、ブルゴーニュ・スタイルのワインボトルにブルーのワックスで封された「1974」が日本限定で発売されました。またその他に発売年代が判別できませんが、おそらくヨーロッパ向けと思われる薄紫色のバッグ付きの「1973」と「1974」というヴィンテージ表記の物もありました。両者ともにワイン・タイプではないボトルですし、デザイン的に90年代初頭ぽい気が…。ここら辺までの初期ケンタッキー・ヴィンテージに精通している方は是非ともコメントより情報提供お願いします。
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ケンタッキー・ヴィンテージのそもそもの製品コンセプトは、その名前からしてケンタッキーに長い間眠っていた長期熟成原酒をボトリングすることだったのだと思います。初期の物や限定リリースの物こそその名に相応しいとは思いますが、どういう訳かスモールバッチ・コレクションに再編されました。ウィレットのスモールバッチのバッチ・サイズはせいぜい12バレル程度とされ、選択を18〜20バレルから始めて絞り込むのだとか。そして初期の物と違いレギュラーのケンタッキー・ヴィンテージはNASです。熟成年数に関しては、2011年頃の情報では5〜10年、もう少し前の情報だと6年~12年とされていました。こうした極端に少ないバレル数のバッチングであること、NASであることを考え合わせると、バッチ毎の味の変動が大きい可能性はあるでしょう。バッチ毎は言い過ぎとしても、需要と供給の変化により選択する樽の構成を調整し易いのがNASの利点ですから、少なくとも生産年度に数年の違いがあれば、味わいの変動は十分考えられます。ちょっと明確な時期が判らないのですが、コレクションに編入された時から2000年代半ば(もしくは後半?)までは、色の付いた首の長い独特な瓶にボトリングされていました。その後の物も首は長めですが、もう少し一般的な形の透明の瓶に切り替わります。こうした外見の変化、パッケージのリニューアルは中身の大幅な違いをも表しているかも知れません。
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元ウィレット蒸留所のKBDことケンタッキー・バーボン・ディスティラーズ社は、80年代初頭に訳あって蒸留を停止してから長きに渡ってボトラーとして活動して来ました。そのため原酒を他所から調達しており、その殆どはヘヴンヒル蒸留所からと目されています。それが変わったのは2012年。長年の自社蒸留復活の夢が遂に叶い、蒸留を再開したのです。そして、それから数年を経て、自社蒸留原酒をボトリングし始めた、と。そこで新しいケンタッキー・ヴィンテージの登場です。
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(写真提供K氏)
画像で判る通り、ボトル形状が少し変わりました。新しい物は首が少し短くなり、肩周辺がより丸みを帯びたシェイプになっています。おそらく2017年もしくは2016年のバッチあたりから新しい物に切り替わっているのではないかと推察していますが、皆さんのお手持ちのバッチ情報があったらコメントよりお知らせ下さい。

さて、今回は私の手持ちの推定2017年ボトリングのケンタッキー・ヴィンテージをレヴューするのですが、親愛なるバーボン仲間でありウィレット信者のK氏から二種のサンプルを頂きまして、そのお陰でサイド・バイ・サイドによるちょっとした比較が可能になりました。男気溢れるK氏には掲載画像の件も含め、改めてこの場でお礼を言わせてもらいます。ありがとうございました。
で、その二種のサンプルは、一つが推定2018年ボトリングのもの。これにより半年~一年差のバッチ違いの比較が出来ると想定しています。もう一つは推定2010年ボトリングのもの。こちらでは原酒の違いを比較できるかと思います。では、飲み比べてみましょう。

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Kentucky Vintage 90 Proof
BATCH QBC No. 17-62
推定2017年ボトリング。蜂蜜、熟したプラム、トーストブレッド、チャードオーク、グレープ、コーン、パイナップル、梅干。さらりとした口当たり。パレートはモルティな風味とフレッシュフルーツ。余韻は豊かな穀物と穏やかなスパイスが割りと長く続く。
Rating:87/100

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Kentucky Vintage 90 Proof
BATCH QBC No. 18-10
推定2018年ボトリング。バッチ17-62とほぼ同様なフレイヴァー・プロファイル。強いて言うならポップコーンぽさが強いのと、オークのバランスがやや違うような気もするが、それは酸化の進行状況の違いかも知れず、概ね同じものと見做していいと思う。
Rating:87/100

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Kentucky Vintage 90 Proof
BATCH QBC No. 10-174
推定2010年ボトリング。上記2つより色は濃いめ。金属、薄いキャラメル、木材、コーンブレッド、ホワイトペッパー、クローヴ。ちょっとメタリックな匂い。味はビター感が強めで甘さが足りない。余韻はスパイシーでさっぱり切れ上がる。
Rating:81.5/100

Thought:現行のケンタッキー・ヴィンテージは、渋いラベルからは想像もつかないデリケートなフルーティさに満ち、なんと言うか原酒本来の穀物感が活きたバーボンだと思いました。現在のウィレット蒸留所には6種類のマッシュビルがあるとされ、その内訳は、

①クラシック・バーボン・レシピ
(72% Corn / 13% Rye / 15% Malted barley)
②ロウ・ライ・バーボン・レシピ
(79% Corn / 7% Rye / 14% Malted barley)
③ハイ・ライ・バーボン・レシピ
(52% Corn / 38% Rye / 10% Malted barley)
④ウィーテッド・バーボン・レシピ
(65% Corn / 20% Wheat / 15% Malted barley)
⑤ハイ・コーン・ライウィスキー・レシピ
(51% Rye / 34% Corn / 15% Malted barley)
⑥ロウ・コーン・ライウィスキー・レシピ
(74% Rye / 11% Corn / 15% Malted barley)

と、なっているようです。一瞥して気付くのはモルテッドバーリーの配合率の高さですよね。これはもしかすると商業用酵素剤を使用していないのかも。それは偖て措き、ケンタッキー・ヴィンテージです。KVのマッシュビルは公表されていませんが、個人的には③一種もしくは少なくとも③を中心としたブレンドではないかと感じました。飲んだことのある皆さんはどう感じたでしょうか? どしどしコメントをお寄せ下さい。
一方のヘヴンヒル原酒と目されるバッチ10-174は、フレイヴァー・プロファイルが全く異なります。異なるだけでなく、ウィレット原酒とは正直言ってレヴェルが違うと思いました。私の好みにウィレットの方が合っていたとは言えますが、そもそもアロマの強さと余韻の広がりが段違いなのです。それとバッチ17と18を飲み比べた結果、ここまで似ているのなら、今後も安定してこの味でリリースされると予想されるでしょう。ウィレット蒸留所に拍手を、 そしてブレンダーの腕に乾杯を。

Value:ケンタッキー・ヴィンテージの現行製品の日本での販売価格はだいたい3500円前後が相場でしょうか。その価格帯の製品としては、ハイエンド感を演出するワックス・スタンプとワックス・シールドが施された外見はとても魅力的です(ただし、スクリュー・キャップとラベルの質感は安っぽい)。そして外見に劣らず中身がこれまた素晴らしいときたらオススメでない訳がありません。個人的な印象としては、焦樽感で押し通すタイプのバーボンではないので、普段スコッチやジャパニーズウィスキーを飲まれる方にも好まれるのではないかと思います。そして何より、現行製品は旧来のヘヴンヒル原酒の物とあまりにも違いがありますので、昔飲んで印象に残らなかったという方には是非とも再チャレンジして頂きたい銘柄です。


追記:ウィレット蒸留所と縁の深いバーGのマスターより情報頂けました。最近の物はマスターブレンダーJ.O.氏による21樽のバッチングだそうです。
またマッシュビルは①との情報が入りました。

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M

Malt Whiskey─モルトウィスキー
51%以上のモルテッドバーリーをマッシュに含み、160プルーフ以下で蒸留し、125プルーフ以下でチャーした新しいオークコンテナーに入れたウィスキーのこと。

Malted Barley─モルテッドバーリー
麦芽大麦。部分的に発芽され、加熱または焙煎された大麦。麦芽大麦には澱粉を発酵性糖に変換する酵素が含まれている。バーボンのマッシュビルでは概ね5〜15%程度の割合で使われる。酵素は麦芽でないと存在しない。

Mariage(Marriage)─マリアージュ(マリッジ)
マリアージュはフランス読み、マリッジは英語読み。通常の意味としては結婚のこと。「幸福な巡り合わせ」のようなニュアンスを秘めて使い、ワイン業界に於て、ワインと料理の組み合わせや相性が希にみるほど良く、1+1が2にならず、それ以上になる場合に用いると云う。今ではワインに限らず、ウィスキーや日本酒等でも使われている。例、「ウィスキーとおつまみのマリアージュ」。上記の文脈でないウィスキー用語としては、ブレンドした原酒を調和させるために一定期間寝かせることを指す。
バーボン用語としてあまり使われないこの言葉を当用語集で取り上げた理由はただ一つ。フォアローゼズ蒸留所が毎年リリースし、現在スモールバッチ・リミテッドエディションとして知られるシリーズの最初期の二年間だけこの名称が使われていたから。スタンダードなスモールバッチでは10レシピのうち4つのレシピ(OESK, OESO, OBSK, OBSO)を使用するが、リミテッドエディションのレシピはその都度若干違う。ファーストリリースとなる「Four Roses Mariage 2008」は13年熟成と10年熟成のブレンドで、レシピはその時点では公開されていないものの、おそらくはEとBのマッシュビルを「マリアージュ」したものと思われる。そしてセカンドリリースの「Four Roses Mariage 2009」は、イーストの種類は定かではないものの、35%ライのBマッシュビル10年熟成と20%ライのEマッシュビル19年熟成のバーボンが選ばれていると言う。この後の2010年以降のリリースから3〜4種のブレンドとなり「Mariage」の名称はなくなった。
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Maryland Rye─メリーランドライ
ライウィスキーはアメリカンウィスキーの元祖と考えられ、メリーランド州は近隣のペンシルヴェニア州と並びその産地として名高い。同州は禁酒法に先立つ19世紀の大部分に渡って、ペンシルヴェニア州とケンタッキー州に次ぐ存在感を示していた。南北戦争でメリーランドにやって来た外部人が、ワシントンDCを保護するために駐屯している間、このスタイルを嗜んだ何千人ものユニオン・ソルジャーズによって内戦中に有名になり、彼らが故郷へ戻るとメリーランド・ライの評判は北部の州全体に広まった。メリーランドはウィスキーをスコットランドにまで輸出していたと言う。クラシックなメリーランド・ライのブランドとしては、ハンター・ピュア・ライ、メルヴェール、B. P. R.、マウント・ヴァーノン、パイクスヴィル等が比較的有名。このスタイルのマッシュビルの基準について明確な規定はないものの、強くスパイシーなペンシルヴェニア・ライ(モノンガヒーラ)よりも甘くて柔らかく、滑らかでバランスの取れた味わいは、マッシュビルにコーンが多く含まれていたと見られている。メリーランド・ライのボトラーの中には、1906年のPure Food and Drug Actが終止符を打つまで、ライウィスキーにフルーツジュースや他の甘味料や着色料を加えて高度に「整流」するものも多かったらしい。
ご多分に漏れず、禁酒法により同地の蒸留所は衰退した。「高貴なる実験」が終わりを告げてもケンタッキー・バーボンのように復活しなかった原因の一つとして、メリーランド州の蒸留所の多くが都市部にあったから、と言われる。これらのプロパティは貴重な場所にあり、禁酒法期間中に不動産を売却する必要に迫られた。それでも再開された蒸留所の多くは、禁酒法以前に運営していた人物とは異なる人物に経営された。メリーランド州のウィスキーの評判ですぐにお金を稼ぐことに興味を持った人々によって。その多くは10年以内に失敗に終わったと言う。また、第二次世界大戦の折り、非常に多くの蒸留所が戦争のためのエタノール製造に切り替えたことも衰退の要因と考えられている。最後まで生き残ったパイクスヴィル・ブランドも1972年には生産終了。1982年にヘヴンヒルに売却されるまで既存のウィスキーストックで生き残ったものの、メリーランド産のライウィスキーは一旦その歴史に幕を下ろし、それ以降はケンタッキー産のメリーランド・スタイル・ライが生産された。
ところが近年、クラフト蒸留所の勃興や、新世代バーテンダーやミクソロジストからの支持によりライウィスキー人気が復活し、メリーランド・ライの名声が戻って来た。ボルチモアのサガモア・スピリットやリヨン・ディスティリングを筆頭に地元のクラフト蒸留所は活況を呈し、他地域からもフィラデルフィアのニュー・リバティ蒸留所やコロラド州デンバーのレオポルド・ブラザース社がメリーランド・ライの伝統を受け継いだ独自のヴァージョンを産み出している。再びメリーランド・ライの黄金時代を目の当たりに出来るかもしれない。

Mash─マッシュ
粉砕した穀物とお湯の混合物。粥に似てとろりとしている。マッシュポテトの「マッシュ」と同じ言葉で、一般的にはすり潰してどろどろにすること、またそうした物の意。

Mash Bill─マッシュビル
マッシュに含まれる穀物の配合比率を指す用語。例えば、コーン72%/ライ18%/モルテッドバーリー10%、のような感じ。レシピ、またグレインレシピとも言う。伝統的には上記3種の穀物がバーボンの殆どを占めるが、近年では4種の穀物を使った「フォーグレイン」や、アメリカンウィスキー製造ではマイナーだった穀物もマッシュビルに使用されるようになってきた。

Mash Tub─マッシュタブ
穀物を水と混ぜてマッシュを調理し、ファーメンターに移す前に、澱粉を単糖に分解する糖化作業に用いる大型の桶。「バスタブ(浴槽)」と言うときの「タブ」で、つまりマッシュ用の槽のこと。クッカーとも言う。「Cooker」の項を参照。

Mashing─マッシング
マッシュを調理するプロセスのこと。糖化作業。イーストを加えるファーメンテーションの前に、イーストが穀物の澱粉を利用できるように、先ず麦芽の分解酵素(アミラーゼ)を働かせ、澱粉を発酵可能な糖に分解する工程。原料のグレインを粉砕したものに麦芽と共に湯に混ぜ、加熱することで糖化が行われる。バーボンの糖化で使用する大麦麦芽は酵素力の強い六条大麦だと聞く。また麦芽だけの力に頼らず商用酵素剤と併用する場合もあるとか。
ミルで別々に挽かれた材料はクッカーにトウモロコシ、ライ麦、麦芽の順で3段階に分けて投入。それぞれの投入温度は概ね100℃、84℃、65℃とされる(加圧するかしないかで温度は変わる)。この時、仕込水と共にバックセット(スティレージ)を加え、マッシュを酵素の働きやすいpHに整えるのがサワーマッシュ製法。麦芽の酵素はpH5.4~5.6程度の酸性下でよく働くため、ライムストーンウォーターのようなpH7程度の中性水では酵素が働き難いことから、pH4前後のバックセットを加える事でマッシュを適度な酸性にする。サワーマッシュはマッシングとファーメンテーションどちらにも適用するのが一般的だと言う。

Master Distiller─マスターディスティラー
蒸留酒のレシピを決定したり、熟成具合や製品品質をチェックしたり、酵母の増殖を含む生産工程の全てを監督するトップの人。どのような製品が造られ、どのようなものが瓶の中に入るのかに関する最終的な権限を持っている。ブランド・アンバサダーとして製品を広める役割も担ったりする。

Master Taster─マスターテイスター
マスターディスティラーの助手として生産の監督をし、バレルの味見や、バッチングのためのバレル選択を助ける人。

Maturation─マチュレーション
熟成。エイジング。

Maturation Peak─マチュレーションピーク
熟成の頂点。マスターディスティラーが最高の熟成度と見極めるポイント。

MGP(MGPI)
「Midwest Grain Products」の略。「MGPI」の場合は「MGP of Indiana」もしくは「MGP Ingredients」の略。MGPはカンザス州アッチソンに本社を置く、蒸留酒および小麦プロテインと澱粉の大手サプライヤー。スピリットはインディアナ州ローレンスバーグにある同社の施設で蒸留され熟成している。ウィスキーやバーボン以外にジンやウォッカ、GNSや工業用アルコールも生産される。この蒸留施設の歴史は古く、そもそもは1847年創業のロスヴィル・ユニオン蒸留所に端を発する。1933年、シーグラムは蒸留所を禁酒法期間中に購入し、廃止後に再建した。以来、蒸留所はシーグラムス・ローレンスバーグ・プラントとしてシーグラム帝国の一翼を担い、シーグラムス・セヴン・クラウンやシーグラムス・ジン等の様々な製品の製造に使用されていた。シーグラム解体によって2000年に酒類部門はディアジオとペルノ・リカールに分けて売却され、ローレンスバーグ蒸留所とシーグラムス・ジンはペルノ・リカールの所有となった。ペルノ・リカールは施設を望んでいなかったため、2008年までに売却できなかった場合、工場は閉鎖されると2006年4月にアナウンスされたが、2007年にはトリニダード・トバゴを拠点とするCLフィナンシャル(アンゴスチュラの親会社)が購入した。その際に改称して「LDI(Lawrenceburg Distillers Indiana)」と呼ばれるようになったものの、CLフィナンシャルはその後崩壊し、2011年10月にMGPイングリディエンツが蒸留所を購入し現在に至る。MGPが蒸留所を取得した折りにボトリング施設は購入されず、ボトリング施設とパッケージング事業はプロキシモ・スピリッツが2012年にCLフィナンシャルから取得した。
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アメリカ国内でも屈指の歴史と生産能力を誇る蒸留所を有しながら、MGPはオリジナル・ブランドを殆ど持っていない。伝説のブートレッガーの名にちなむジョージ・リーマス・バーボン、蒸留所の創業当時の名を冠したロスヴィル・ユニオン・ライウィスキー、時のマスターディスティラー グレッグ・メッツが選択した限定バーボンなど数えるほどしかなく、彼らのウィスキービジネスの大部分は他の会社(NDP、ボトラー)への販売にある。 2013年4月、MGPは顧客のためにウィスキーのマッシュビルを追加し、インディアナ施設の製品提供範囲を拡大すると発表した。そうして現在では以下のような種類のウィスキーレシピがある。

Bourbon - 75% Corn/21% Rye/4% Barley Malt
Bourbon - 60% Corn/36% Rye/4% Barley Malt
Bourbon - 51% Corn/45% Wheat/4% Barley Malt
Bourbon - 51% Corn/49% Barley Malt
Bourbon - 99% Corn/1% Barley Malt
Rye Whiskey - 95% Rye/5% Barley Malt
Rye Whiskey - 51% Rye/49% Barley Malt
Rye Whiskey - 51% Rye/45% corn/4% Barley Malt
Corn Whiskey - 81% Corn/15% Rye/4% Barley Malt
Wheat Whiskey - 95% Wheat/5% Barley Malt
Malt Whiskey - 100% Barley Malt

この中で著しく人気があり、MGPの主要製品となっているのが95%ライ・マッシュのストレート・ライウィスキー。大手酒類会社からクラフト蒸留所までこぞって買い求め、独自のブレンドやフィルタリング、時には後熟などを施し、様々なブランド名の下にボトリングして販売されている。有名どころを挙げると、ブレット、ジョージ・ディッケル、エンジェルズ・エンヴィ、ジェームズ・E・ペッパー、リデンプション、スムーズ・アンブラー、ハイ・ウェスト、テンプルトンなど枚挙に暇がない。
この95%ライ/5%バーリーモルトのレシピは、元々セヴン・クラウンのようなブレンデッド・ウィスキーのフレイヴァー成分を意図して開発され、1990年代に当時のマスターディスティラー、ラリー・エバソルドによって造られた。当初は51%のライとコーンとモルトの標準的なライウィスキーを造ったと云う。しかし、もっとライ麦のフレイヴァーが欲しかったので、今度は80%のライと20%のモルテッドライのレシピで実験した。テイスター皆がその結果を気に入ったものの、モルテッドライは高価なため会社の会計士はいい顔をしなかった。そこで次に比率を95%ライとわずか5%モルテッドライに変更したが、それでもまだ高いと会計士は言い、結局ライモルトを標準的なバーリーモルトに取り替えることで、今日のレシピが出来上がる。そのレシピは豊かなスパイスとフルーティさに満ち、会社の上層部もとても気に入り、クラウンロイヤルや他のカナディアン・ウィスキーで使用するためにマニトバ州のギムリ蒸留所で造ることを決めた。しかし、インディアナ原産の菌株はより厳しいカナダの気候の中で一世代を超えて生き残ることができず、最終的にローレンバーグで造るようになった。約10年の間にシーグラムからペルノ・リカール、LDI、MGPと激動の変遷を重ねたが、アメリカンウィスキーに於けるライ人気復権の震源地はインディアナ州ローレンスバーグのプラントだったと言っても過言ではないだろう。

Micro Distillery─マイクロディスティラリー
法的定義のない言葉なので、イメージとして大規模な蒸留所の対極にある小規模生産の蒸留所のことと思っておいてよい。クラフト蒸留所とほぼ同義でも使われる。

Milling─ミリング
製粉。マッシングの前に原材料の穀物を砕く(挽く)工程。

Mingling─ミングリング
混ぜること。ブレンド、またはバッチングとほぼ同じ意味で使われるあまり一般的ではない言葉。

Mint Julep─ミントジュレップ
ケンタッキーバーボン、シロップもしくは砂糖、水または炭酸水、新鮮なミントの葉、クラッシュドアイスで作られるカクテルで、ケンタッキーダービーの公式飲料。

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「Maker’s Mark」の略。赤い封蝋が目印の小麦バーボン。
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Monongahela─モノンガヒーラ
かつてペンシルヴェニア州に多くあったライウィスキー蒸溜所がモノンガヒーラ川を水源としていたことから、ライウィスキーのことを単にモノンガヒーラと言い、最高のライウィスキーはモノンガヒーラ産だとして尊ばれていた。ライウィスキーの歴史はバーボンよりも古く、モノンガヒーラ・ライはアメリカ国内で幅広い認知度を獲得した最初のウィスキース​​タイルだった。モノンガヒーラ川はウェストバージニア州からピッツバーグへ流れ、アレゲーニー川と合流してオハイオ川となる。その名称はこの地方の原住民の言葉で「急峻な河岸」から取られたそうな。
研究家によればモノンガヒーラ・ライのスタイルには5つの歴史的因子があると云う。
①ロケーション
モノンガヒーラ川及びその支流からの水源と気候条件。
②グレイン
コーンはその地域で豊富な作物ではなく、モノンガヒーラ・ライの一般的なマッシュビルはライ麦と大麦の2種類しか含んでおらず、概ね4対1の割合だった。もしかすると一部の蒸留所では麦芽ライ麦を使ったかも知れない。
③スウィートマッシュ
サワーマッシュ発酵はペンシルヴェニア州の商業蒸留所に知られていたが、前回からのスペント・スティレージの一部を含めるのではなく、発酵ごとに新鮮な酵母のみを使用するスウィートマッシュが全般的に受け入れられていた。
④スリー・チェンバー・スティル
19世紀後半、この地域の蒸留所はスリー・チェンバー・スティルと呼ばれるポットスティルとコラムスティルの中間様式のハイブリッド・スティルを広く採用していた。それはポットスティルを垂直に3つ配置し、一部の動作に人の手はかかるが、半連続式蒸留器と言える構造だった。このスティルで蒸留されたスピリットは、コラムスティルに較べオイリーで重いボディだったと言う。
⑤熟成
この地域のほぼ全ての大きなウィスキー倉庫は石造りまたはレンガ造り、或いは両者の組み合わせで造られていた。寒い時期にはスチームによる温度制御を実践し、庫内は常夏に保たれた。この環境は絶えずウィスキーを樽の内部に押し込み、木との相互作用を増やす。自然のダイナミクスに委ねるケンタッキーの哲学と違い、ペンシルヴェニア州の蒸留所はより高価なプラクティスに固執した。甘くて美味しい赤色の樽熟成バージョン「Old Monongahela」に造り手と顧客は誇りを持っていたのだろう。
このスタイルのライウィスキーは禁酒法によってほぼ絶滅し、禁酒法解禁後もケンタッキー・バーボンのようには復活しなかった。しかし、現在アメリカでのライウィスキー人気は著しく、大手蒸留所もマイクロ蒸留所もこぞってライウィスキーをリリースし、その流れの中からモノンガヒーラ・スタイル再生の動きがある。ユタ州のハイウェスト蒸留所が造る「OMG(Old MononGahela) Pure Rye」や、フィラデルフィア近郊のマウンテン・ローレル・スピリッツの「Dad’s Hat Pennsylvania Rye」、ピッツバーグのウィグル・ウィスキーの「Organic Monongahela Rye」等は、オールド・モノンガヒーラのピュア・ライ・スタイルに敬意を表した代表例。またコロラド州デンバーのレオポルド・ブラザース社は、ヴェンドーム・カッパー・アンド・ブラスにスリー・チェンバー・スティルの製作を依頼したとも聞く。モノンガヒーラ・ライはTTBによって定義されたスタイルではないものの、アメリカンウィスキーの歴史の一時代を築いた。クラフト蒸留ムーヴメントの中で、アメリカンウィスキーの伝説再生は近いのかも知れない。

Moonshine─ムーンシャイン
密造酒。税金を払わず不法に生産された蒸留酒。違法な蒸留は夜陰に乗じて月明かりのもとで行われたことから。または昔の英国で月夜に紛れて船で運ばれたことからとも。概ねマッシュはコーンがメイン。ホワイトリカー、ホワイトライトニング、マウンテンデュー等とも言われる。現代のマーケティング用語としては違法な蒸留でなくても、それっぽい雰囲気のボトルやラベルで一般流通している未熟成(ないしはそれに準ずる僅かな熟成期間)の無色透明のコーンウィスキーを指してそう呼ばれる。

Moonshiner─ムーンシャイナー
密造酒の造り手。

MSRP
「Manufacturer's Suggested Retail Price」の略。メーカー希望小売価格のこと。Mなしで「SRP」とされることもある。

MWND
「A Midwinter Night's Dram(Mid Winter Night's Dram)」の略。ユタ州パークシティのハイウェスト蒸留所がリリースするランデヴー・ライのスペシャル・エディション。ストレート・ライ・ウィスキーのブレンドをポートワインとフレンチオークの樽で後熟したもの。配合率はシークレットながら、ソースはMGPのライ95%/バーリーモルト5%、ハイウエスト蒸留所のライ80%/モルテッドライ20%、 バートン蒸留所のライ53%/コーン37%/バーリーモルト10%とライ80%/コーン10%/バーリーモルト10%だとアナウンスされている(初期リリースの物はMGPとバートンのみ)。その名前はウィリアム・シェイクスピアの著作「真夏の夜の夢(A Midsummer Night's Dream)」をもじって名付けられ、それに準えてラベルも普通ならバッチナンバーやボトルナンバーのところが「Act」と「Scene」になっている。真冬の雪景色を見ながら飲んだり、クリスマスにお誂え向きのウィスキー。
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周知のようにフォアローゼスは他の蒸留所では見られない独自の方法でそのバーボンを造り出します。それは二つのマッシュビルとキャラクターの違う五つのイースト菌を使って10種類の原酒を造り、平屋のウェアハウスで熟成させ、それらをブレンドすることで品質と味を安定させるという方法です。フォアローゼスは1943年にシーグラムの傘下に入りましたが、その当時からシーグラムは酵母の研究をしていて、その影響を受けた造り方なのでしょう。またコックスクリークにある平屋の熟成庫も、元々はシーグラムが熟成の本拠地としていた歴史があるそうです。シーグラムという会社はなくなりましたが、フォアローゼスはその魂を受け継いでいると言ってもいいかも知れません。

10種類の原酒は4文字のアルファベットによって「O■S◆」というように表記され、「O」はフォアローゼス蒸留所で造られていることを意味し、「S」はストレートウィスキーであることを意味します。「S」はストレートの略と分かりやすいですが、なぜ「O」がフォアローゼズ蒸留所を表すかと言うと、それは昔フォアローゼズ蒸留所はオールドプレンティス蒸留所という名称だったからです。いくつもの蒸留所を抱えていたシーグラムは原酒の産出される蒸留所のバレルに各略号を与えており、その名残から「Old Prentice」の頭文字「O」でフォアローゼズ蒸留所を表すのです。
そして「■」の部分にはマッシュビルの種類を表す「E」もしくは「B」が入ります。「E」マッシュビルはコーン75%/ライ20%/モルテッドバーリー5%でライ麦少なめのレシピ、「B」マッシュビルはコーン60%/ライ35%/モルテッドバーリー5%でライ麦多めのレシピです。注意してほしいのはライ麦少なめのEマッシュビルでも、他社で言うとハイ・ライ・マッシュビルと呼ばれるライ麦含有率なところです。つまりフォアローゼスはライ麦率が凄く高いバーボンなのです。
そして末尾の「◆」にはイーストの種類を表す「V・K・O・Q・F」の何れかが入ります。左から順に、デリケート・フルーツ・クリーミー、ライト・スパイス・フルボディー、リッチ・フルーツ・フルボディー、フローラル・エッセンス、ハーバル・エッセンスというキャラクターを持っているとされ、それぞれに熟成のピークが違うそうです。この5種類のイーストは、上に述べたようにイーストの研究に余念のなかったシーグラムが、往時ケンタッキー州で所有していた五つの蒸留所にルーツがあるとの説がありました。どれがどの蒸留所のイーストなのか判りませんが、その五つの蒸留所とは、ルイヴィルのカルヴァート蒸留所、シンシアナのオールド・ルイス・ハンター蒸留所、ラルー郡のアサートンヴィル蒸留所、ネルソン郡のヘンリー・マッケンナ蒸留所、そして現在フォアローゼズの本拠地となっているローレンスバーグのオールド・プレンティス蒸留所です。
これら2×5の10種類のそれぞれの特徴は下記のようになるとのこと。

OESV─デリケートフルーティ、フレッシュ、クリーミー
OESK─スパイシー、フルボディ
OESO─フルーティ(レッドベリーズ)、ミディアムボディ
OESQ─フローラル(ローズ、アカシア)、バナナ、ミディアムボディ
OESF─ミント、フルーティ、フルボディ
OBSV─デリケートフルーティ(洋梨、アンズ)、スパイシー、クリーミー
OBSK─リッチスパイスネス、フルボディ
OBSO─ライトフルーティ、スパイシー、ミディアムボディ
OBSQ─フローラル(ローズ)、スパイシー、ミディアムボディ
OBSF─ミント、フルーティ、スパイシー、フルボディ

イエローラベルはこれらを全てブレンドしたもので
OESV+OESK+OESO+OESQ+OESF+OBSV+OBSK+OBSO+OBSQ+OBSF

スモールバッチは4種類のブレンドで
OESK+OESO+OBSK+OBSO

シングルバレルは当然1種類で
OBSV

と、されています。ちなみにリミテッドリリースの物はその都度、最も熟成の良いものが選ばれているようで、例として

2016年リミテッドリリース・スモールバッチは
OESK(16yr)+OBSV(12yr)+OESO(12yr)

エリオッツ・セレクトは
OESK

が、選ばれています。その他に現地では、プライベート・セレクションという或るお店や団体のためのシングルバレルがあり、それは任意の樽を選ぶことが出来るみたいで、お店の名前と「O■S◆の○年▲ヶ月熟成」というように記載されたシールがボトルの横に貼ってあります。それらはめちゃくちゃ旨いらしいです、バレルストレングスだし…。まあ、それは措いて、そろそろ通常品のシングルバレルの感想を。

Four Roses SINGLE BARREL 100 Proof
Warehouse No. RS
Barrel No. 80-6F
イエローやブラック、スモールバッチと比べると、ハイプルーフのせいか、だいぶオーキーな香り。飲むと、あぁフォアローゼスだなぁというフルーティさだし、濃いし、スウィーティーかつスパイシーで勿論おいしいのですが、どうも奥行に欠ける気がする。リッチではあるがコンプレックスではない印象を受けました。正直、スモールバッチの方が好みです。私とOBSVの愛称が悪いのか、ブレンドでないからそう感じるのか、他の樽だったらよかったのか、どうもわかりませんが、このボトルに関しては特別なフィーリングは感じませんでした。
Rating:86/100

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