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メーカーズマーク・プライヴェートセレクトは、メーカーズマーク・カスクストレングスのヴァリエーションとも、メーカーズ46のアップグレード・カスタム・ヴァージョンとも言える製品です。現在、アメリカの多くの蒸留所ではプライヴェート・バレル・プログラムが実施され人気を博していますが、それらはストア・ピックやバレル・ピックとも呼ばれ、酒類販売店、バーやレストラン、或いはバーボン・ソサエティ等が蒸留所の公式リリースとは違った独自の味わいのシングルバレルを顧客に販売することを可能にします。様々な味比べが出来るこの種の試みはバーボン人気を後押しするものと言えるでしょう。メーカーズのプライヴェートセレクトもそういった試みの一つ。しかしメーカーズはシングルバレル・プログラムに関しては他の蒸留所に遅れをとっていました。なぜならメーカーズマークでは熟成中に樽のローテーションを行うため、他の蒸留所のようには熟成庫のロケーションによる味の違いが明確ではないので、単純にシングルバレルを提供するだけではちょっと面白味に欠けるから。そこでメーカーズ46で培った技法を採り入れてバイヤーへ提供することになったのがプライヴェートセレクトです(※メーカーズ46についてはこちらの過去投稿をご参照下さい)。2016年に発表されるや瞬く間に人気となり、多くの小売店が独自のボトルを販売しています。

プライヴェートセレクトのプログラムは、ビル・サミュエルズJrの息子であるロブ・サミュエルズとディレクターであるジェイン・ボウイによって実現されました。先ずはテイスティング・チームを組織すると、メーカーズマーク・カスクストレングスのフレイヴァーをマッピングし、どのフレイヴァーを強調したいのかを決め、それからインディペンデント・ステイヴ・カンパニーに行き、46のようにメーカーズマークに存在する異なったキー・フレイヴァーを増幅するステイヴ作成の協力を仰ぎました。メーカーズマーク蒸留所はメーカーズ46の開発に費やした2年間で自社製品をコントロールする方法についてはかなりの量の知識を得ています。おそらく46での経験を活かし比較的短時間で完成に漕ぎ着けたでしょう。ボウイによると、もともとは8種類の風味増強ステイヴを用意していたそうですが、フレイヴァー・プロファイルの冗長性を最小限に抑えるために、最終的にそれらを五つに戻しました。これらのステイヴは既存のフレイヴァーを増幅すると同時に新しい何かを追加することになっています。プライヴェートセレクト・バレルの購入者は、メーカーズ46に使われているものを含む5種類のステイヴを自由に10枚選択して、1,001の可能な組み合わせの中から好みのフレイヴァー・プロファイルを作成、独自に大胆な味へとカスタマイズすることが出来ます。しかし、それでもその味わいは紛れもなくメーカーズマークに他ならないのでした。

プライヴェートセレクト・バレルを購入するバイヤーは、メーカーズ46の話が説明された後、オークについて、そしてフレイヴァーが木材のどこにあるのかについてレクチャーを受けます。ステイヴに施された加熱の時間や温度に基づいて、どのフレイヴァーを放出するかの概要が示され、オークの生理学的な細胞構造と熱が加えられるとどのような化学変化が起こるのか学ぶのだそう。それが終了したらテイスティングの時間です。
参加者の目前には、ベースラインとして味わうためのスタンダードなメーカーズマーク・カスクストレングスと共に、それぞれ異なるステイヴで仕上げられた五つのサンプルが置かれます。最終製品もバレルプルーフになるので、サンプルも全てバレルプルーフです。グラスの横には「Maker's Mark Private Select」というレクチャーを纏めたような小冊子もあり、有益な情報が後からでも確認出来るのでしょう。このバレルプログラムのために特別に開発された五つのステイヴは互いに非常に異なる香りと味がするとされ、その特徴は以下のようになっています。

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P2(Baked American Pure 2の略)
ベイクド・アメリカン・ピュア2は、五つのうち唯一アメリカン・オークで造られたクラシック・カットのステイヴ。ゆっくり時間をかけて低温にてコンヴェクション・オーヴンで焼かれています。このトリートメントは甘いブラウンシュガー、ヴァニラ、キャラメルなどの甘いノートを引き出すとされ、またシナモンやクローヴなどのスパイスの風味も高め、フィニッシュにドライなオークが現れるとも言います。

Cu(Seared French Cuvéeの略)
シアード・フレンチ・キュヴェは46と同じく赤外線オーヴンで焼かれたフレンチ・オークですが、カットが異なり、ステイヴには溝が切り込まれているためクラシック・カットより22%大きい表面積を持っています。それはジュースと木材の相互作用がより多いことを意味するでしょう。また、溝があるということは、上部(表面)と下部(谷間)では同じ量の熱変換を受けないため、焦がし具合の違いから風味のブレンドが期待されています。この特別なトリートメントはバタースコッチやキャラメル、ローストナッツやバター、若干の渋みを引き出すとされます。

46(Maker's 46の略)
メーカーズ46はもはやお馴染みとなった同ブランドの製造に使用されるステイヴです。Cuと同じく赤外線オーヴンで調理されますが、こちらは更に数分間長く加熱され、溝はありません。これらの違いがCuと46の味を全く異なるものにします。Cuはスイートなのに対し46はスパイシーさを追加するよう設計されました。このトリートメントはクリーミーな感触はなく、ヴァニラやスパイス、強いオーク、ドライフルーツ、若干の苦味を引き出すとされます。

Mo(Roasted French Mochaの略)
ローステッド・フレンチ・モカは、クラシック・カットのフレンチ・オークです。P2と同じくコンヴェクション・オーヴンで調理されますが、P2のような低い温度ではなく高い温度にてトーストされます。通常、華氏500度を超える高温に曝され、クーパーの観点からすると、これはオークが燃え始める前に処理できる最高温度なのだとか。
このトリートメントはダーク・チョコレート、焙煎されたコーヒー、メープル・シロップ、重いチャー・フレイヴァーを高めるとされます。また、通常のカスクストレングスと比較してドライになるが、非常に長いフィニッシュを有し、切れ上がりの味は甘いと言います。

Sp(Toasted French Spiceの略)
トーステッド・フレンチ・スパイスは、コンヴェクション・オーブンで高温と低温の両方で調理された(*)フレンチ・オークのクラシック・カット・ステイヴ。このトリートメントは、スモーク、シナモンやナツメグ、クマリンの風味を高め、味わいはフルーティかつスパイシーで少々渋いとされます。

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バイヤーはこれら五つのサンプルを慎重に試飲して、独自のカスタム・ブレンドを作成するよう奨励されます。例えば、チョコレートの風味が目立つメーカーズを欲するならMoを多く使用するとか、焦樽感がもっと欲しくスパイシーにしたいならSpを多くを使うとか、或いはバランスよく全てのステイヴを使うのも自由自在。とは言え、ヘンテコな物が出来上がらないように?脇には担当者の方がいて、味の方向性が決まれば適切なアドヴァイスをくれるようです。
視覚的に分かり易いようにテーブルにはステイヴの記号が描かれたチップも置かれており、それを並べてどのステイヴが何枚と決めて行きます。チップは一枚につき10mlを表し、選び抜いた十枚で100mlのカスタム・ブレンドのサンプルを造ってもらいます。こうすることで最終的なプライヴェートセレクトの仕上がりと想定されるものを試すことが出来るのでした。ロブ・サミュエルズによれば「皆さんは、最終製品が実験環境で行ったのと同じような味がするかどうかを尋ねますが、それはほぼ正確」で「マウスフィールは少し異なることがあっても、風味の特性は全く同じ」だと言います。
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ステイヴの組み合わせが決まったら、次はメーカーズマークの原酒をステイヴの挿入された樽へと満たす工程です。追加される10枚のステイヴは、バーボンと接触する木材の表面積を約33%増加させるとされ、実験を通じて最適な数として決定されました。典型的なバーボン樽は概ね32のステイヴで構成されていますが、プライヴェートセレクトの追加ステイヴはバレル・ステイヴよりは短くとも両面がトーストされているため、ジムビームの「ダブルオーク(トゥワイス・バレルド)」やウッドフォード・リザーヴの「ダブル・オークド」のような新樽で二度熟成させる製品と同じ位の効果があるのかも知れません。約6年ほど熟成した原酒でいっぱいに満たされた樽は、メーカーズ46の需要増への対応とプライヴェートセレクトのバレルを熟成させるために特別に設計されたライムストーン・セラーで、およそ9週間ほど眠りにつきます。そして熟成が終わると、通常のカスクストレングスと同じように、主にバレルのチャー残渣を除去する軽い濾過を経てボトリングされ完成です。言うまでもなく、カスクストレングスでのボトリングなので樽ごとに違いが出ますが、概ね55%前後のABVになります。各バレルは750mlのボトルをおよそ240本ほど産出し、同社は一本あたり約70ドルでの小売価格を提案。プライヴェートセレクト・バレルの費用は約13000ドルだとか。

蒸留所では自らのプライヴェートセレクトのボトリングもしています。代表的なそれは「Bill Samuels Jr.」と呼ばれ、メーカーズ46を産み出した当の本人でありメーカーズマークの前社長にちなんで名付けられました。故にそのシグネチャー・フレイヴァーを増幅するためステイヴのセレクトは46を10枚使用しています。つまりメーカーズ46のカスクストレングス・ヴァージョンという訳です。
また、メーカーズのウッド・フィニッシュ・シリーズはプライヴェートセレクト・プログラムだけに留まりません。2018年には「Maker's Seared Bu 1-3」というより実験的な「第二世代」のステイヴを使った製品が蒸留所限定で販売されました。これは375mlボトルで約40ドル、僅か1400本だけの提供です。そのステイヴは「virgin seared & Sous-Vide French oak」だと言います。「Sous-Vide(スゥヴィド)」はフランス語で「真空」の意。近年、料理の世界で真空調理法というのが注目されているようですが、木材を真空調理?って一体どんなことをしているのか、私には想像も付きません。実験の結果、このステイヴは美味しいバーボンを産み出したものの、プライヴェートセレクト・プログラムの他のステイヴを完全には補完しないため、蒸留所はこれを生産するプランはないけれど、メーカーズのDNAから生まれた愛するウィスキーを共有したいと考えて販売したそうです。
2019年9月からは、メーカーズマーク初となるアメリカ国内で全国配給される限定リリースのウッド・フィニッシング・シリーズが発売され始めました。第一段は「ステイヴ・プロファイル RC6」となっています。RCは「Research Center」の略で、そこの6番目のステイヴという意味です。リサーチ・センターというのは、メーカーズと共同して木材の実験を執り行うインディペンデント・ステイヴ・カンパニーの研究機関?か何かだと思います。RC6は屋外で一年半ほど乾燥させたアメリカン・オークをコンヴェクション・オーヴンでトーストしたステイヴで、主にスタンダードなメーカーズマークに存在するフルーツを引き立て、ベーキングスパイスやクラシックな甘さを向上させ、ブライトなフィニッシュになるそうな。正確なカウントではないらしいですが、だいたい255樽のスモール・クオンティティでの生産だそうです。おそらくこのシリーズは今後も、ワイルドターキーのマスターズキープのように年次リリースされて行くのでしょう。小売価格は約60ドルです。
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では、そろそろ今回レヴューするプライヴェートセレクトの出番です。こちらは「うきうきワインの玉手箱」という酒販店のセレクト。「玉手箱」という響きが気に入って買ってみました。スパイシーさを強調したセレクトになっているようです。

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Maker's Mark Private Select Stave Selection by Tamatebako 111.3 Proof
46 × 2
Mo × 4
Sp × 4
香ばしい焦げ樽、オールスパイス、タバコ、ドライクランベリー、レーズン、焦がし砂糖→プリンのカラメルソースの濃ゆいやつ、コーヒー、タバコ。焦樽の香りに僅かに酸っぱい香りが混じる。ややオイリーなマウスフィール、もしくはミルキー。パレートはメーカーズらしい酸味が感じられる。飲み込んだあとのスパイシーさはかなり強め。余韻には昆布も。テイスティング・グラスよりショット・グラスで飲むほうが美味しかった。
Rating:86.25/100

Thought:通常の46やカスクストレングスと較べて、よりねっとりとした舌触りであり、フレイヴァーが濃密な印象で、取り立ててオーヴァーオークな感じもせず、香ばしさが引き立てられていると思いました。パレートで感じる香味は確実に複雑ですが、反面、全体的にドライな傾向も強いのが個人的にはマイナス。口蓋で感じる強いスパイシーさや、余韻の苦味が退けた後にほんのり甘さが現れるあたりが、「大人な」メーカーズマークを目指したであろう本品の良さと言えます。ただ、もう少し分かりやすい甘味が余韻にあるほうが自分には好みなので、この評価でした。

Value:プライヴェートセレクトと言うか、ウッド・フィニッシュ・シリーズは、メーカーズ原酒の持つフレイヴァーをアンプリファイドした製品なので、例えば通常のカスクストレングスが6500円、プライヴートセレクトが7500円とすると、1000円が増幅代(手間賃)な訳です。ここに価値を見出だすかどうかが評価の分かれ道だと思います。もっと言うと、実際に飲んでみるまで通常のカスクストレングスより美味しいのか美味しくないのかが判らないギャンブル要素があるのに、少しだけ高い値段となるのがポイントなのです。1000円のギャンブルを安いと思うか高いと思うかはその人次第。結局のところ自分で飲むしか購入価値の判断が出来ないことがプライヴェートセレクトの欠点でもあり面白味でもあるでしょう。とは言え、概ね美味しくはなっていると思いますし、また幾つかのプライヴェートセレクトを飲んでみてステイヴ・セレクションが自分の好みに合ったリカー・ストアを見つけてしまえば、1000~1500円程度でのアップグレードは安いと言わざるを得ない「大きな価値」になります。


*一部の情報では、このステイヴのみ二つのトリートメントを組み合わせており、最初に高温の赤外線オーヴンで焼き、そして次にコンヴェクション・オーヴンへ移して低い温度で調理される、と説明されていました。真偽が判らなかったので、ここではメーカーズの公式ホームページでの説明がコンヴェクション・オーヴンの高温と低温とされていたため、そちらの説を採用しています。

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メーカーズマーク蒸留所の近代史は1953年にテイラー・ウィリアム(ビル)・サミュエルズSr.がバークス・スプリング蒸留所を購入した時に遡りますが、爾来、メーカーズマークは50年以上に渡って、一部地域への限定的なハイアー・プルーフのヴァリエーションを除いて、たった一つの製品しか造って来ませんでした。それが変わったのは2010年です。メーカーズはメーカーズマークのみを提供するという長き伝統を打ち破り、メーカーズ46をリリースしたのです。

メーカーズマークの特徴の最たるものは、苦味の少ないフレイヴァーと独特の滑らかな口当たりでした。ライ麦の代わりに冬小麦を使い、飲みやすいと評判のバーボンです。しかし、メーカーズの最大のファンであり忠実な消費者であるメーカーズマーク・アンバサダーでさえも、デラックス・ヴァージョンや、或いはもっと挑戦的なものを望んでいました。

メーカーズ46は四十年以上ものあいだ会社の顔として活躍したビル・サミュエルズJr.のヴィジョンに基づいています。引退を考えていた彼の最後の大仕事が46の開発にあったと言ってよいでしょう。2008年頃、彼と当時のマスターディスティラー、ケヴィン・スミスは新しいバーボンをどのような味にすべきか考えました。二人は既にメーカーズマークに存在しているキャラメルやヴァニラ、ベーキングスパイスやシナモンの風味を増幅することが目標であると見定めます。そこでこの実現に向けてケンタッキー州レバノンのバレルメーカー、インディペンデント・ステイヴ・カンパニー(ISC)を訪れ、その社長で「ウッドシェフ」を称するブラッド・ボズウェルに協力を仰ぎました。ボズウェルとスミスは、自らが望む結果を求めて木材と炭化プロセスの大規模な調査を始めます。約二年に渡り124回もの実験が繰り返された結果は、殆どの場合イライラするものでしたが、最終的に彼らの注目は「レシピ46」に集中しました。メーカーズ46の名はこの完璧な結果を達成するために行われた多くの異なる実験のプロファイル番号から由来しています。

46と呼ばれるステイヴは、厚さ1インチのフレンチオークを素材とし赤外線熱で板の両面をトーストしたものでした。メーカーズマークでは、通常ISCに依頼しているバレルは、タンニンを分解するために少なくとも1回の夏を含む凡そ9ヶ月間その断片を休ませることをリクエストしますが、このオークは標準的なバレル・ウッドより最長で3ヵ月長くマチュレーションさせているようです。この追加時間は過酷な風味を作り出すタンニンをより柔らかくするためだそうで、おそらく赤外線加熱で焦げすぎないようにトーストするのもタンニンを抑える処理なのでしょう。そしてボズウェルによればフレンチオークは、通常バーボン樽に使用される典型的なアメリカンオークよりもスパイス・プロファイルが強いと言います。これを、もともとメーカーズマークを収容していた樽に10枚セットして、5年半から6年ほど熟成させた通常のメーカーズマークとしては完成された原酒をカスク・ストレングスで再補充し、冬の間の約9週間ほど追加熟成させると46の出来上がり。

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スミスによると、最初、数週間のうちにサンプリングした時は失敗かと思ったそうです。しかし、ウィスキーのフレーバー・プロファイルは更なる数週間で劇的な変化を見せ、6週か7週までにタンニンは減退し、9週まで達する頃には十分に円やかになったとか。また熟成期間だけでなく温度(気温)も重要で、試行錯誤の実験によって寒い冬の数ヶ月間の仕上げが最高の結果を達成していました。暑い月にメーカーズ46のバレルが60ディグリー以上の熱に晒されると、バーボンが圧力によって内側に配置された10枚のフレンチオークのステイヴに深く押し込まれ、あまりにも多くの相互作用を強いられるためメーカーズが望んでいない苦い風味をもたらします。そのため46のバレルは50ディグリー以下の温度の冬場でしか仕上げることが出来ないのだそう。

メーカーズ46は2010年の発売以来人気を博しています。しかし、上に述べたように46のバレルは冬期しか仕上げることができないため、その人気こそが問題になっていました。そう、需要に供給が間に合わないのです。メーカーズはそれを解決する方法として、蒸留所から約100ヤード離れた大きな石灰岩の丘の中腹にダイナマイトで穴をあけ、そこに新たなエイジング施設を造り、2016年12月にオープンさせました。現COO(最高執行責任者)でビルJr.の息子ロブ・サミュエルズの弁によれば、これは世界初のライムストーンのウイスキー・セラーであり、彼のチームはワイン生産地のセラーからインスピレーションを得たと言います。

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メーカーズマーク・ウィスキー・セラーと呼ばれるこの施設は、石灰岩が後壁全体と側面を形成し、屋根は土壌を利用した「生きた屋根」で覆われています。建物の外観はドライス​​タック・ストーンウォールで造られ、美しい木製のドアがあり、世界的に有名なレキシントンのランドスケープ・アーティスト、ジョン・カーロフティスによる造園が施されました。建物の奥の方にあるエイジング・ルームは薄暗くて涼しく、露出した天然の石灰岩が見えており、正に「石灰岩の洞窟」のような雰囲気です。石灰岩と土壌の断熱効果で室温は一年中50ディグリーに自然と維持され、これにより寒い時期しか実行出来なかったウッド・フィニッシュのプロセスが年間を通して可能になりました。これは急増するメーカーズ46とそのプレミアム版であるプライベート・セレクトの需要を満たすために重要なことだったのです。ここにはそれらを最大2,000バレル収容できるとか。
また、この施設にはエイジング・セラーだけでなく、すぐ上に述べたプライベート・バレル・セレクト・プログラム用のテイスティング・ルームもあります。そこの壁には、ルイヴィルのフレイム・ラン・ギャラリーのオーナーであるガラス吹き職人ブルック・フォレスト・ホワイトJr.によるガラスアートが彩られ、試飲者をゴージャスな気分に盛り上げます。施設全体のデザインおよび設計はHubbuch&CompanyとKerr-Greulich Engineers Inc.が共同で担当しました。このウィスキー・セラーは、2017年にはAIA KentuckyからExcellence in Architecture Designを受賞しています。

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キャラメル、焦げ樽、ヴァニラ、シガー、焼いたパプリカ、ケチャップ。ややクリーミーな口当たり。香り味わい共にフルーティさはあまりなく、木質ノートが支配的。通常のメーカーズマークより確かに甘味もスパイス感も強くなり、かなりリッチなフレイヴァー。余韻にはスモークも。
Rating:86/100

Value:スタンダードなメーカーズマークと較べて確実に美味しいと思います。しかし、スタンダードの最安値が2000円で、46は店舗によっては5000円になることがあります。倍以上の価格差はちょっとコストパフォーマンスに欠ける気もしますが、カスクストレングスが7000円程度、プライベート・セレクトが7500円程度ですから、46が4000円で買えるのならば、価格も考慮すると四種の中では個人的には46一択です。どうも現行のスタンダードには物足りなさが残るんですよね。

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バーボンの空き瓶を活用して、プチプラリメイクでお洒落なインテリアにするこの企画、今回はクリスマスシーズンということもあり、メーカーズマークのカスクストレングスの瓶を使用して、クリスマス仕様にしてみました。

材料はいつものごとく百均で仕入れて来ました。先ずは瓶に浮き出た「Maker's Mark」の文字をガラスに書けるペンでなぞります。何度かやってるうちになぞるのが上手くなってきました(笑)。

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で、そうしたらポプリを瓶の中に詰め込みます。100均大手D社のポプリはいくつか色展開がありましたが、クリスマスカラーに合わせるためグリーンを選択。

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仕上げにサンタさんの帽子を被せたら完成です。これだけ家にあった物を使いましたが、百均でツリー用の飾りグッズに同じようなのがあるんじゃないかと思います。

メーカーズマークならではの垂れた蝋封とボトル形状のおかげで可愛いインテリアになりました。クリスマスが過ぎたら帽子を取れば一年中飾れます。皆様も是非~。

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Maker's Mark CASK STRENGTH 111.4 Proof
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メーカーズマークのカスクストレングスは2014年秋から蒸留所のみで375ml瓶が販売され、2015年春から販路を拡大していった製品です。カスクストレングスというのは、バーボン用語でより一般的なバレルプルーフと同じで、加水調整せず樽から出したままのアルコール強度という意味です。そのためバッチ毎にだいたい54〜57度の違いが出ます。バレルプルーフでありながら55度前後の低いアルコール度数なのは、他の多くの蒸留所のバレル・エントリー・プルーフ(樽入れ時の度数)が125なのに対し、メーカーズマークは110というかなり低めのエントリープルーフのため。それと、バッチごとに度数が違うからといっても、この製品はシングルバレルではなく、19樽のスモールバッチと言われています。またレシピ(70%コーン、16%ウィート、14%バーリー)と熟成年数(約6年)もスタンダードなメーカーズと同じだそうです。では、レヴューいきましょう。

キャラメル、焦がした木、ヨーグルト、干し柿、バナナ、あんずジャム。パレートはスパイスとチェリー、渋柿。余韻はややバタリー。当然ながらスタンダードなメーカーズと較べると全てが強く美味しい。強力な甘味よりもしっとりとした甘味に、酸味と苦味がバランスよく合わさる。きっとメーカーズマークがもつ本質が味わいやすいと思うが、反面、人によっては度数が高いぶん辛口にも感じるかも知れない。一、二滴の水を加えるとアルコールが弱まって甘味を感じやすくなる。正直言うと、開けたては美味しくなく、バレルプルーフでなくてもいいかなという印象をもった。なんなら45〜50度のほうがバランスがいいのでは?と思ったほどだったが、半分ほどに減ってからは、やや酸味が強くなったものの柿系のフルーティーさが増して美味しくなった。
Rating:87/100

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Maker's Mark Gold Wax Limited Edition 101 Proof
日本では通称ゴールドトップと呼ばれるこの限定版メーカーズマークは、元々はケンタッキー州のみで販売されていたものの、バーボンの販売において当時の日本市場がアメリカ本国よりも高い利益率を示したため、1996年頃にアメリカでの販売を停止され(83〜93年まで販売という説もある)、輸出専用となった製品と言われます。1999年頃には日本でも終売となりました。中身はスタンダードなレッドと同じジュースで、101プルーフでのボトリング。つまり単純にレッドのハイアープルーフ版と言うことです。当時のマスターディスティラー、デイヴ・ピッカレルがそう語っているらしいので間違いないでしょう。本ボトルはおそらく80年代後半から90年代初頭の物かと思われます。よく見かけるゴールドトップ101と違い、「Maker's Mark」の文字が金ではなく黒で、ラベルの質感自体も少し違うようです。ラベルに多少の違いがあっても中身はレッドのハイアープルーフ版に変わりはないとされています。
ゴールドトップはマスターのお気に入りでイチオシの銘柄だそう。そこで本品と下記のVIPを注文したところ、現行のスタンダード・レッドを味比べ用にサービスして頂きました(写真は撮ってません)。さて、飲んだ感想なのですが…、そこまでして貰いながらごめんなさい、個人的にはそれほど特別なフィーリングを感じませんでした。確かに現行レッドより柔らかいアルコール感や強めの焦樽感は感じられますし、プリンやココアぽさがこちらの方が断然あります。ただ、物凄く美味しいかと言うとそうでもなく、これなら現行のカスク・ストレングスの方がバタリーかつフルーティーで美味しく思いました。
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さて、いよいよ私にとってメーカーズマーク最大の謎がやってきました。それがVIPです。以前レッドトップVIPのレヴューを投稿した時に述べた事と被るのですが、その後得た情報もあるので、ここで再度整理してみようと思います。

ゴールドトップやブラックトップに関してはある程度信じてよさそうな情報が見つかります。ゴールドトップは上記の通り。ブラックトップはスタンダードよりも2年から2年半ほど熟成期間が長いとされ、デイヴ・ピッカレルによればウッドノートの多いものを幅広いシーズンからピックしたものだとか。それをスタンダードより5プルーフ高い95プルーフにてボトリングした日本限定の製品で、94年から発売されました。それらに対して、VIPの製品情報をネットで探ってみると、何となくあやふやな情報が蔓延してる印象を受けます。
例えば日本の或るお店のレッドトップVIPの商品紹介欄には、VIP独特のボトル形状に対する言及に際し「デキャンターは1980年代に使われていたボトルを復刻したもので、オリジナルはケンタッキー・バーボン博物館に収蔵されているそうです」と書かれています。これを初めて読んだ時、へえそうなんだ、と思うと同時に、ちょっと待て、80年代と言ったらそう遠くない昔だよ? その割りにそんなボトルの写真を見たことないよ?と思いました。おそらくなのですが、この一文の元ネタは次のビル・サミュエルズJr.の言葉にあるのではないかと勘繰っています。

「This special gift bottle was styled after an original circa 1870's bottle discovered in the Kentucky Bourbon Museum.(この特別なギフトボトルは、ケンタッキー・バーボン・ミュージアムで発見された1870年頃がオリジナルのボトルを模倣しています。)」

もし私の勘繰りが正しいのなら、年代を百年以上も間違えていることになります。1870年頃の物ならば、確かに博物館にありそうではないですか。それに、容易にその画像がネットに転がっていないのも頷けます。多分なにかの勘違いで「1980年代」としてしまったのではないでしょうか。
そしてまず何よりも、マイナーなブランドならいざ知らず、メーカーズマークというトップブランドの製品なのに、VIPが初めて発売された時期が特定出来ないのです。よく見かける説明によると、ビル・サミュエルズJr.が親しい友人や来客のために用意していた物を贈答用の製品として商品化したと言われ、また当初はメーカーズのクラブ会員のみが購入できた限定ボトルだったとも言われます。ネットで調べられる限りでは、60年代後期や70年代とされるクォート表記やタックス・ストリップの付いたVIPが僅かながら見つかります。ここら辺の物がクラブ会員限定なのでしょうか。それらの裏ラベルのサインは「Bill Samuels」となっており、「Jr.(ジュニア)」の表記がありません。と言うことは「Sr.(シニア)」の方、つまりお父さんが社長の時代に既にVIPは存在していたことになります。ジュニアが会社を手伝い始めたのが67年、社長に就任したのが75年とされますので、どちらの発案でVIPが造られたかは微妙なところですが、何となくJr.のような気はしますね。

で、問題はここからです。日本でもアメリカでも、VIPの中身はスタンダードなレッドと同じである、とされています。しかもその情報源は大概蒸留所で働いている人達からなのです。どうやらメーカーズが開催するセミナーで担当者の方が、メーカーズマークでは造っているバーボンは一種類であり、品質にバラつきはなく、レッドもゴールドもブラックも中身は一緒、と言って回っているようなのです。日本人の情報源の殆どはこのセミナーにあると思われます。ただし、私が参考にしたセミナー参加者のブログ記事には「VIPもスタンダードなレッドと同じ」だとは一言も書いてありません。アメリカ人の場合は有名なバーボン掲示板において、或る方が蒸留所で直に聴いたと言っていましたし、高名なライターの方もそう断言していました。それらが回り回っているのかも知れません。もしかすると日本人でもセミナーに関係なく、自分の飲んだ感想からか、またはアメリカから情報を仕入れているのかも知れません。
ともかくも、スタンダードとVIPの違いについては、いくつかの説が散見されます。整理すると、

①VIPとスタンダードの中身は全く同じであり、違いはボトルと化粧箱とオリジナルラベルが貰える仕組みだけで、価格の違いはそれらに由来する。
②スタンダードとゴールドトップVIPは違ったが、スタンダードとレッドトップVIPは同じである。
③スタンダードとVIPは確かに殆ど一緒だが、VIPには専用の樽が使われているから少し違う。
④VIPとスタンダードの中身は同じとされているが、飲んでみれば全く違うことが分かる。

以上の四つがネットで得れる主だった意見になります。私の意見は④です。だからこそVIPとは何なのかに拘っているのです。私がレッドトップVIPを飲んだ時は、スタンダードなレッドトップを飲み終えた直後にVIPを飲みました。そして断然美味しく感じたのです。勿論、私のバカ舌や腐れ鼻、また金額が高いことに因るただの思い込みの可能性は否定しません。ですが、それにしては旨すぎるように感じました。なのでVIPについて想像を交えながら少々私見を述べたいと思います(あくまで「想像」なのに注意して下さい)。

まず上の①〜④に触れる前にセミナーに関して一言。このセミナーというのは謂わばメーカーズマークの企業姿勢と製品の良さを広めるための宣伝活動であり、であればこそ伝統や歴史を語ったとしても、それはあくまで「今」を伝えるのが主目的だと思います。穿った見方をすれば、そのために過去のゴールドやブラックを良い物と思っている日本人に対して真っ向から否定をしたのではないか。スタンダードなレッドと同じですよ、と言うことによって。これは別にセミナーへの非難ではありません。マーケティングの一環としてそれは正しいでしょう。けれど、熟成年数の違うブラックまで同じだと言っている点で、その発言には信憑性がない気がします。
では①についてですが、実はこれは案外信憑性があるような気がしています。と言うのもアメリカのバーボン掲示板の2006年の投稿で、VIPは通常のレッドトップより$7ほど高い、と言っている方がいました。この程度の差額ならボトルと化粧箱しか違いはなくてもおかしくはないからです。ここで一つの可能性として、アメリカ流通品と輸出品で中身に違いがある疑いが出てきます。私には当時のゴールドトップVIPの日本での販売価格が判らないので憶測でしかありませんが、もし当時の輸入代理店が阿漕な商売をしてるのではなく、正当な価格付けをしていながらスタンダードとの差が3〜4倍もあったのなら、中身が違う可能性は十分あると思うのです。日本はブラックが限定販売されていた国であり、ゴールドトップ101のメイン購買国なのですから、特別な待遇を受けていたとしても不思議ではないでしょう。
次に②。これは私にはどうも信じがたい説です。ですが、バーボンを愛しバーボンを飲み、メーカーズを愛しメーカーズを飲む人がそう言っているのでしょうから、何か根拠があるものと思われますし、その意見は尊重すべきだと思います。
続いて③。これは正直判りません。その可能性はなくはないようにも思えますが、どちらかと言えば樽の違いよりは熟成場所の違いの方が可能性は高いような気がします。
最後に④。これが私の意見なのは前述の通りです。根拠は自分が飲んだ印象でしかないのですが、思うところもあります。
先に挙げた初期VIPと思われる60年代末と70年代とされるボトルは、実は86プルーフでボトリングされています。また、おそらくアメリカで最も有名なゴールドワックスVIPは下の画像の物と思われます。
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こちらはブラックと同じ95プルーフでのボトリングです。両者ともよくあるVIPとは度数が異なっていますね。思うにVIPとは、本来はこういった特別に造られるべきもの、或いはクラブ会員の「私」の楽しみのために個人的に選択されたもの、そういう特別性/唯一性こそが原義にあった筈です。しかし、何時しかVIPが準レギュラーのように製品ラインナップに組み込まれると、全てをそうはやっていられない。そこで出てきた代替案がスモールバッチなのではないか、というのが私の予想です。
上のVIPの裏ラベルには概ね以下のようなことが書かれています。

「メーカーズマークでは、それぞれ19バレルのロットでウイスキーを造ります。1983年と1984年に、我々は16ロットを残りのウイスキーとは別にして熟成するようにしました。私たちは定期的にそれを試飲し、味が独特でフルボディであると感じた時にのみボトリングしました。だから、各ロットは熟成年数とプルーフが異なります。それぞれの味は確かに微妙な違いがありますが、それらは明らかにメーカーズマークなのです。」

ここで言うロットは、より一般的にはバッチのことだと思われます(バッチとロットという言葉はメーカーによって差異があります)。そして件のセミナーに参加された方のブログ記事によると、メーカーズマークでは1バッチ最大で150樽をボトリングする、との情報が書かれています。いくらメーカーズマークでは熟成中に樽のローテーションを行うから品質にバラつきがないと言っても、1バッチ最小19樽と1バッチ最大150樽ではクオリティの差は歴然とあるのではないでしょうか? 150樽というのはどう考えてもスタンダードなレッドトップのことでしょう。そしてメーカーズのカスク・ストレングスは19樽のスモールバッチと言われています。だったらVIPもスモールバッチだった可能性が高いのではないか、もし味が断然違うと感じるのならば…。
私の持っている2000年発行のバーボン本に拠ると、スタンダード3900円、ブラック5400円、ゴールドトップ10000円とあります(VIPは載ってません)。97年発行の本には、スタンダード5000円、ブラック7000円、ゴールドトップ12000円とあります(こちらにもVIPは載ってません)。いささかゴールドトップが高すぎませんか、単なるハイアープルーフ版の割には。いくらゴールドで豪華さを演出したからといって。熟成期間が長いブラックが随分お買い得に思えるではないですか。勿論お酒の値段などあってないようなものかも知れません。ですが、仮にメーカーと輸入代理店の良心を信じるのならば、ゴールドトップが高い理由はハイアープルーフなだけでなく、スモールバッチだからなのではないでしょうか? リミテッド・エディションと謳っているところからしても、上記の本に「生産量が極めて少ない」と書かれているところからしても。そしてVIPの正体は、そのゴールドトップの低プルーフ版(加水、希釈版)なのではないか、というのが私の想像からの大胆な仮説です(笑)。では、長い前置きを終えて、そろそろゴールドトップVIPを飲んだ感想へ。

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Maker's Mark VIP Gold Wax 90 Proof
まず一目で判るのは、よく見かける角張ったボトルのVIPと違い、通常品に近い丸みのあるボトル形状。おそらくこれは角張った物よりも古いVIPだと思います。裏ラベルのデザインも古いVIPに見られるものです。画像で判ると思いますが、ラベルの著名に「Jr.」がありません。しかし、いくらなんでもシニアが社長時代の物とも思えないので、90年代初頭ぐらいの物ではないかと推測します。インポーターラベルに「特級」の文字もありませんし。
さて、飲んだ感想なのですが…、え〜、よく判りません(汗)。いや、現行とはアルコールのムードが違いますし、酸味が少ないようにも感じ、何と言うかまったりしているのは判ります。ですが、これと同じ時期のスタンダードなレッドトップの味を覚えていないので、VIPがスタンダードと同じなのかそうではないのかが分からないのです。正直言って特別なフィーリングも感じませんでした。101と比べると、私的には101の方が好みでしたが、これは単に私がハイプルーフ志向だからかも知れません。ここまで読んで、私の断定を期待していた方がいましたら申し訳なく思います…。
Rating:85.5/100

追記:少しだけ情報を追記しておきます。記事を書き上げたあと、再度ネットで調べていたらVIPの値段に関して気になる記事を発見しました。或る方は自身のブログの2004年の投稿でゴールドトップVIPについて、「一応メーカーズ・マークの最上級品。と言っても5000円しない。ふつうのレッドトップの倍の値段だが、にしても+2000円そこそこで最上級品が買えるのなら選ばない手はない」と語っています。また他の方も2005年の記事に価格は5000円程度としていました。洋酒の値段は変動しやすいですから、一概には言えないかも知れませんが、この程度の差額ならスタンダードとVIPの中身が一緒でもおかしくないように思えます。ここで、本文に挙げておいた①〜④の意見に、もう一つ第五の仮説を加えてみたいと思います。

⑤スタンダードとゴールドトップVIPは同じだったが、スタンダードとレッドトップVIPは違う。

つまり②の逆バージョンです。こんなどうでもいいことを言い出すのも、バーボンラヴァーの皆様が、宅飲みにしろバー飲みにしろ、なんやかんや言いながら味比べしたら面白いかなと思うからで、他意はありません。ご参考までに。

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Maker's Mark VIP Red Wax 90 Proof
スタンダードなメーカーズマークの上位に位置するこのVIPですが、日本で流布している一説に、中身はスタンダードと同じ、という説があります。個人のブログや有名掲示板のみならず、なんなら酒販店の商品説明でそう記載されてるのも見たことがあります。スタンダードは2500円程度で、VIPは当時の定価で10000円近くしました。箱と瓶代だけでこんなに違ったら消費者は怒りますよ。
私は自分が鋭敏な味覚を持ってるとは思いませんが、実際飲んでみたところ、VIPは特別なフィーリングを持ったバーボンだと思いました。スタンダードと同じ度数でありながら、インナーステイブで後熟されなおかつ2度もアルコール度数の高いメーカーズ46を凌駕する芳香と味わいとバランスです。

では、なぜ「中身はスタンダードと同じ」などという言説が出てきてしまったのか? これは私の憶測なのですが、メーカーズマークの販売を促進するためのセミナーにおいて、蒸留所で現に働く人がその製法について語る際、メーカーズマークではレシピ(トウモロコシ70%小麦16%大麦麦芽14%)は一つであり、熟成樽を三年に一度位置を入れ換える(ローテーション方式)から、味はどれも均一に仕上がっていて大差はない、と語ったことに由来するのではないかと思います。流れとしては、セミナーに参加した人がその事を自身のホームページやブログに書く、それを見た人がまた自身のホームページやブログに書く、或いは仲間やお客さんに口頭で伝えていく……こういう連鎖で自然と「中身はスタンダードと同じ」という言説が拡がったのではないかと。確かにメーカーズマーク関係者の語ることに嘘はないでしょう。なぜならメーカーズマークの販売戦略は創業当時から、エントリーレヴェルの安酒~ミドルクラスの定番品~熟成年数の長いプレミアムまで幅広く取り揃えるのではなく、手頃な価格だけど旨い酒1種類を少量生産で売る戦略を取ってきたからです。セミナーではそういう根本的な姿勢こそを強調して伝えるに違いありません。そしてセミナー受講者にも悪意はないでしょう。ただ聴いたことを素直に伝言しただけです。

さて、上に述べたことと少々矛盾しますが、メーカーズにも例外的なリミテッドリリースはありました。それは日本人にはよく知られた、ゴージャスなゴールドのラベルとワックスをもつ通称ゴールドトップと、男っぽいブラックのラベルとワックスをもつ通称ブラックトップです。
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ゴールドはスタンダードなレッドと同じジュースながら101プルーフでボトリングされたハイアープルーフ版。元々はケンタッキー州のみで販売されていたものの、バーボンの販売において当時の日本市場はアメリカ本国よりも高い利益率を示したため、1996年頃にアメリカでは廃止となり、輸出専用ボトルになりました。しかし、それも1999年には廃止されたと言います。一方のブラックは熟成年数がスタンダードなレッドよりも2年から2年半ほど長いとされ、なおかつプルーフも僅かに高い95プルーフでのボトリング。もともと日本市場限定の製品で94年に発売され、そしてこちらも2000年頃には販売停止となりました。

では、このVIPとは何なのでしょうか? 伝え聞くところでは、そもそもメーカーズの社長がVIPの人への贈答用として造ったものとされ、それをプレミアム商品として売り出したのだと言われています。昔はゴールドワックスで封がされており、ラベルも付いておらず、付属されたハガキをメーカーズマークへ送るとオリジナルのラベルが返送される仕組みになっていました。この「赤VIP」も個人用ラベルがもらえる仕組みがあります。
ここからはまたもや私の想像ですが、スタンダードとの違いがレシピにもなく、度数にもないとしたら、残された可能性は、
①樽に使用する木材の質が特別な物である。メーカーズは自社で樽を造ってるそうなのでそれも可能かと。
②スタンダードの熟成とは別の特別な場所で熟成された。どこの蒸留所もそういう「スイートスポット」を有しているものかと。
③熟成年数がスタンダードより長い。スタンダードは6年とされてますが、V.I.Pは8年はありそうな気配があるかと。
④ノンチルフィルタードである。旨味成分の多さからそれもありかと。
まあ勝手な空想ですが、それらのどれか、もしくは複数ではないでしょうか。或いはシングルバレルなのかも知れません。とにかくスタンダードより遥かに旨いです。
Rating:88/100

追記1:その後『ウイスキーの教科書』という本の中で、ゴールドワックスVIPの「MM1983 Vintage Bourbon」というボトルの紹介記事に、19樽を選び通常品とは切り離して貯蔵、と書かれているのを発見しました。それが事実なら赤VIPもそれに近い物である可能性は高いです。つまりスモールバッチで上の②③が正解だったのかも知れません。
また、このVIPの箱には©️2007と書かれています。そこから察するに、この赤VIPの発売が2007年だとすると、メーカーズ46の発売が2010年と言われてますので、新製品の46発売と同時期もしくは少し前にVIPは廃盤となったのかも知れません。そこで現行と対比してみると、まずスタンダードなレッドトップは不変として、ハイアープルーフであるゴールドの代わりがカスクストレングス、熟成年数の長いブラックの代わりがメーカーズ46、VIPの代わりがプライヴェートセレクトと言ってよいでしょう。と言うことは、ラインナップのヴァリエイションとしては大して変わってない訳で、ここらへんの伝統と革新のバランス感覚にこそメーカーズマークの経営美学の真髄を見る思いですね。

追記2:その更にあと、メーカーズマークVIPについて整理し直しました。興味のある方はこちらをご覧下さい。

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