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KNOB CREEK Small Batch 9 Years 100 Proof
ジムビームのスモールバッチコレクションの一つノブクリーク(現在では9年表記はなくなりました)。ビーム家6代目ブッカー・ノーが禁酒法以前の力強いバーボンへの回帰を目指して造り上げ、特徴的なボトルデザインと相俟って、92年の発売以来人気があります。その特徴的なデザインは禁酒法時代にルーツがあり、ブーツの中に酒を隠しやすいフラスクを模したレクタンギュラーボトル、またそれを新聞紙で包んで隠していたという故事に倣ったラベルデザイン、どちらも秀逸というしかありません。
あと、ノブクリークという名前の由来について、ケンタッキー州にある小川の名前であり、偉大なる大統領エイブラハム・リンカーンが幼少期を過ごした土地にちなむと説明されることが殆どですが、大昔にナショナル・ディスティラーズのブランドで「ノブクリーク」という名前のバーボンがあったという指摘があります。確かに他のスモールバッチラインナップの名前は、ブッカーズ、ベイカーズ、ベイゼル・ヘイデンズとどれも人名であり、ノブクリークだけ仲間外れな感じはします。まあ、余談ですが…。 
さて、お味の方はというと、アロマはキャラメルとオークが中心で、フレイヴァーにはナッティかつトースティなテイストがあります。個人的にはフルーティーさはブッカーズのほうがあるような気がしました。またジムビームのバーボンの中で最も樽の焦げた味がするように感じます。それをややスモーキーと言うのでしょう。これは好きな味です。ただし、私にはどうしてもジムビームのバーボンには、もう一つ何かが足りなく感じます。それを奥行きとか深みとかコクと言ってもいいですし、濁りと言ってもいい。とは言え、スモールバッチではない通常のジムビームラインと比較すれば遥かに香り高いのは間違いありません。本ボトルは推定2009年ボトリング。
Rating:85/100

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値段が安いのに高いアルコール度数で人気のファイティングコック。エヴァンウィリアムスやエライジャクレイグと同じくヘヴンヒルディスティラリーが造っています。2015年には6年の表記は消え、現在ではNASとなりました。90年代までは6年ではなく8年が流通しており、クラシカルな紙ラベルがカッコよかったです。更に2000年代までは日本限定で15年物も流通していました。

このバーボンのオリジンは何処にあるのか知りたくて調べたのですが、全くその手のソースがヒットせず、ヘヴンヒルがそもそもオリジナルなのか他の蒸留所から取得したのか一向にわかりません(※追記あり)。ただ70年代物と言われるボトルの写真をみるとケンタッキー州ローレンスバーグと記載があります。一体何という蒸留所で造られていたのでしょうね。更に60年代と言われるボトルにはコネチカット州スタンフォードの記載があります。そこに蒸留所があったのか、それともただのボトリング施設の場所なのか判りません。また、ファイティングコックのラベルでメリーランド・ライ・ウイスキーがあるのも見つけまして、それにもコネチカット州スタンフォードと記載があります。こうなるとヘヴンヒルがオリジナルではないと考えていいような気がします。
あと余談ながら、ライ・クーダーがスライドギターで使うスライドバーの一つにファイティングコックの瓶を使っていたそうです。

さて、このバーボン、ネット検索にて日本語で書かれた何らかの情報を見ると、かなりの割合で「小麦バーボン」だと書かれているのを発見します。それは個人やバーのブログだったり、酒販店の商品説明だったりします。小麦バーボンというのは、メーカーズマークのような原料にライ麦を使わず小麦を使うバーボンのことです。海外のサイトで調べてみると、ファイティングコックを小麦バーボンだとしている情報は一つもありません。逆にハイ・ライ・マッシュビルだとしているものは少数ありました。 私が飲んでみた限り、ファイティングコックは小麦バーボンでもなければ、ハイ・ライ・マッシュビルでもなく、ロウ・ライ・マッシュビルのコーン多めのバーボンに感じました。はっきり言えばエヴァンウィリアムス等と同じマッシュビルに感じます。これはどういうことなのでしょうか?
ネットの情報はコピペの連鎖が殆どですから、或る一説がほぼ同じ文言で多く散見されるのは仕方ありません。しかしファイティングコックが小麦バーボンというのはちょっと信じがたい。あるバーのブログでは、6年は小麦バーボンで、15年はライ麦少なめコーン多めのマッシュビルだから味が違うのだという主旨の記述がありました。単発リリースのブランドやファミリーリザーブとかファミリーエステート、またはシングルバレルと言うならいざ知らず、いくら15年が日本限定の製品だとしても、量産されかつ継続性のあるブランドでそれをされたらアイデンティティーに欠ける気がします。そもそも熟成年数が倍も違えば味が違うのは当然でしょう。
また、ある酒販店の商品説明では、ファイティングコックのホームページに「キックを与えるために原料にライ麦ではなく、小麦を使ってるのだ」と書かれている、と述べられているのです。ええ!? 一般的に小麦はソフターな酒質になる特徴があるとされているのに?  普通キックを与えたいならライ麦を使うのでは?  慌ててヘヴンヒルや日本の輸入元のブランド紹介を調べるとそのような記述は現在では見られませんでした。可能性としては、昔は小麦バーボンだったが現在ではそうではない、というのも考えられます。けれど、それを本国のアメリカ人がまるで知らないというのはちょっと解せません。確かにヘヴンヒルのバーンハイム蒸留所では小麦バーボンも造っています。それはスティツェル=ウェラーから引き継いだオールドフィッツジェラルド系のどちらかというとマイルドなバーボンに使用されます。常識的に考えて荒々しい闘鶏がモチーフのバーボンにそれを使うのは意味が分からなくないでしょうか?

大事なことなので、もう一度繰り返します。ファイティングコックを小麦バーボンとしているのは日本人だけです。海外では、ファイティングコックはヘヴンヒルのスタンダード・マッシュビル(コーン75%/ライ13%/バーリー12%、また他説では78%/10%/12%)を使用して造られている、というのが一般的認知です。上に述べた60〜70年代のような古いものはどうか判りませんが、少なくとも近年のヘヴンヒル産の物は小麦は使われていないと思ってよいでしょう。では、そろそろテイスティングへ。

Fighting Cock 6 Years 103 Proof
2013年ボトリング。まずは強めのアルコール臭、弱めのキャラメル香、ややソーピー。クリーミーな口当たり。穀物感とコーンウィスキー感が強い。正直言ってマチュレーションピークの前なのは否めないが、ハイ・プルーフなので満足感は高く、お値段を考えればグッドバーボン。特に開封後しばらくして香りが開くと少しフルーティーになり、かなり美味しい。
Rating:84/100

Fighting Cock 8 Years 103 Proof
94年ボトリング。飲んだのが10年以上前なので細かいことが言えないが、ストロングかつウェルバランスだったように思う。俗に言う思い出補正はあるかも知れない。
Rating:86/100

追記1:その後、アバンテというファイティングコックの輸入元のホームページに「バーボンウイスキーとは一般的にトウモロコシ、ライ麦、大麦麦芽が原料だが、ファイティング・コックはトウモロコシと小麦を使った原酒を選んでいるので、コシの強さがある。」と書かれているのを発見しました。もしかするとこれが、日本での「ファイティングコック小麦バーボン説」の直接的な情報源であるのかも。と言うより、それが輸入元の記述であるからには、そもそも蒸留所から提出された情報に何か誤解を与えるような説明がされていたのではないか、と考えるのが自然な気がしてきました。というのも、有名なバーボン掲示板のファイティングコックのスレッドで見かけたのですが、或る方のコメントによるとファイティングコックのウェブサイトに「殆どのバーボンは小麦を使って造られるが、このバーボンにはキックを与えるためにライ麦を使っている」という主旨のことが記載されている、と言うのです。は? 殆どのバーボンは小麦で造られてませんけど? この投稿は2011年にされています。もしこのコメントが本当なら、少なくともその当時までは、ファイティングコックの公式ウェブサイトで不適切な表現がなされていた可能性があります。そして私が本文で取り上げたように、日本の或る酒販店はファイティングコックのホームページから「キックを与えるために原料にライ麦ではなく、小麦を使ってるのだ」と引用して商品説明をしています。これ、言ってることは反対ですが、文章の言い回しが似ていますよね。実際にはどちらも間違っているのですが、どうやら往年のファイティングコックの公式ウェブサイトに、そんな言い回しがあったのは間違いなさそうです。もしかするとヘヴンヒル蒸留所が当時雇っていたPR会社の担当者がバーボンのことをあまり知らなかったのかも知れません。

追記2:古いファイティングコックについて記事執筆時より少々明らかになった情報があります。こちらを参照下さい。

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周知のようにフォアローゼスは他の蒸留所では見られない独自の方法でそのバーボンを造り出します。それは二つのマッシュビルとキャラクターの違う五つのイースト菌を使って10種類の原酒を造り、平屋のウェアハウスで熟成させ、それらをブレンドすることで品質と味を安定させるという方法です。フォアローゼスは1943年にシーグラムの傘下に入りましたが、その当時からシーグラムは酵母の研究をしていて、その影響を受けた造り方なのでしょう。またコックスクリークにある平屋の熟成庫も、元々はシーグラムが熟成の本拠地としていた歴史があるそうです。シーグラムという会社はなくなりましたが、フォアローゼスはその魂を受け継いでいると言ってもいいかも知れません。

10種類の原酒は4文字のアルファベットによって「O■S◆」というように表記され、「O」はフォアローゼス蒸留所で造られていることを意味し、「S」はストレートウィスキーであることを意味します。「S」はストレートの略と分かりやすいですが、なぜ「O」がフォアローゼズ蒸留所を表すかと言うと、それは昔フォアローゼズ蒸留所はオールドプレンティス蒸留所という名称だったからです。いくつもの蒸留所を抱えていたシーグラムは原酒の産出される蒸留所のバレルに各略号を与えており、その名残から「Old Prentice」の頭文字「O」でフォアローゼズ蒸留所を表すのです。
そして「■」の部分にはマッシュビルの種類を表す「E」もしくは「B」が入ります。「E」マッシュビルはコーン75%/ライ20%/モルテッドバーリー5%でライ麦少なめのレシピ、「B」マッシュビルはコーン60%/ライ35%/モルテッドバーリー5%でライ麦多めのレシピです。注意してほしいのはライ麦少なめのEマッシュビルでも、他社で言うとハイ・ライ・マッシュビルと呼ばれるライ麦含有率なところです。つまりフォアローゼスはライ麦率が凄く高いバーボンなのです。
そして末尾の「◆」にはイーストの種類を表す「V・K・O・Q・F」の何れかが入ります。左から順に、デリケート・フルーツ・クリーミー、ライト・スパイス・フルボディー、リッチ・フルーツ・フルボディー、フローラル・エッセンス、ハーバル・エッセンスというキャラクターを持っているとされ、それぞれに熟成のピークが違うそうです。この5種類のイーストは、上に述べたようにイーストの研究に余念のなかったシーグラムが、往時ケンタッキー州で所有していた五つの蒸留所にルーツがあるとの説がありました。どれがどの蒸留所のイーストなのか判りませんが、その五つの蒸留所とは、ルイヴィルのカルヴァート蒸留所、シンシアナのオールド・ルイス・ハンター蒸留所、ラルー郡のアサートンヴィル蒸留所、ネルソン郡のヘンリー・マッケンナ蒸留所、そして現在フォアローゼズの本拠地となっているローレンスバーグのオールド・プレンティス蒸留所です。
これら2×5の10種類のそれぞれの特徴は下記のようになるとのこと。

OESV─デリケートフルーティ、フレッシュ、クリーミー
OESK─スパイシー、フルボディ
OESO─フルーティ(レッドベリーズ)、ミディアムボディ
OESQ─フローラル(ローズ、アカシア)、バナナ、ミディアムボディ
OESF─ミント、フルーティ、フルボディ
OBSV─デリケートフルーティ(洋梨、アンズ)、スパイシー、クリーミー
OBSK─リッチスパイスネス、フルボディ
OBSO─ライトフルーティ、スパイシー、ミディアムボディ
OBSQ─フローラル(ローズ)、スパイシー、ミディアムボディ
OBSF─ミント、フルーティ、スパイシー、フルボディ

イエローラベルはこれらを全てブレンドしたもので
OESV+OESK+OESO+OESQ+OESF+OBSV+OBSK+OBSO+OBSQ+OBSF

スモールバッチは4種類のブレンドで
OESK+OESO+OBSK+OBSO

シングルバレルは当然1種類で
OBSV

と、されています。ちなみにリミテッドリリースの物はその都度、最も熟成の良いものが選ばれているようで、例として

2016年リミテッドリリース・スモールバッチは
OESK(16yr)+OBSV(12yr)+OESO(12yr)

エリオッツ・セレクトは
OESK

が、選ばれています。その他に現地では、プライベート・セレクションという或るお店や団体のためのシングルバレルがあり、それは任意の樽を選ぶことが出来るみたいで、お店の名前と「O■S◆の○年▲ヶ月熟成」というように記載されたシールがボトルの横に貼ってあります。それらはめちゃくちゃ旨いらしいです、バレルストレングスだし…。まあ、それは措いて、そろそろ通常品のシングルバレルの感想を。

Four Roses SINGLE BARREL 100 Proof
Warehouse No. RS
Barrel No. 80-6F
イエローやブラック、スモールバッチと比べると、ハイプルーフのせいか、だいぶオーキーな香り。飲むと、あぁフォアローゼスだなぁというフルーティさだし、濃いし、スウィーティーかつスパイシーで勿論おいしいのですが、どうも奥行に欠ける気がする。リッチではあるがコンプレックスではない印象を受けました。正直、スモールバッチの方が好みです。私とOBSVの愛称が悪いのか、ブレンドでないからそう感じるのか、他の樽だったらよかったのか、どうもわかりませんが、このボトルに関しては特別なフィーリングは感じませんでした。
Rating:86/100

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OLD FORESTER 86 Proof
オールドフォレスターのブランド紹介はこちらをご参照下さい。
このラベルは、比較的長年親しまれた側面に窪みのあるボトルからデザインチェンジされた時のものになります。正確な年数が判らないのですが、多分2000年前後ではないかと。このあとに紙ラベルを使わないモダンなデザインに変わり、現在ではまた古典的なデザインに回帰しています。
こちらのボトルは所謂ダスティとして購入しました。つまり酒屋さんで長期間売れずに埃を被った売れ残りのことです。そのせいだと思うのですが、開封直後は妙に甘味のない味わいで、安いブレンデッド・スコッチを飲んだかと思ったほどです。開封後しばらく経ってやっと甘味も出てきましたが、普通のバーボンに比べるとだいぶ甘味が少なかったように感じました。いくらライ麦比率の高いオールドフォレスターでも、いささかドライ過ぎる印象。上に述べた窪みのあるボトル時代の物はもっと甘味もあり香り高かったのですが…。なので、もしかすると経年劣化していた可能性もありますが一応レーティングしておきます。
Rating:77/100

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BUFFALO TRACE 90 Proof
バッファロートレース蒸留所がその名を冠したバーボン。ということは同蒸留所を代表する銘柄とみてよいでしょう。1999年6月、長らく親しまれたエンシェントエイジ蒸留所から名称をバッファロートレース蒸留所へと変更し、その二ヶ月後に発売されたのが始まりです。
使用されるレシピは# 1 のロウ・ライ・マッシュビルで、コーン80%/ライ麦10%(もしくはそれ以下)/大麦麦芽10%と噂されています。この# 1 マッシュを使う他の銘柄には、ベンチマーク、イーグルレア、コロネルEHテイラー、ジョージTスタッグなどがあります。もう1つの# 2 はハイ・ライ・マッシュビルで、ライ麦が12〜15%と噂されており、エンシェントエイジ、ブラントン、エルマーTリー、ロックヒルファーム、ハンコックリザーヴなどに使用されています。
バッファロートレースバーボンには熟成年数の表記はありませんが、色々調べてみると、8〜12年、8〜10年、7〜9年という三つの説がありました。まあ、だいたいそんなところと思っておけばよいでしょう。またウェアハウスのC、I、Kの中層階の樽からのみ選ばれ、35〜40樽をワンバッチとしてボトリングされているとの情報もありました。
このボトルは45度なのですが、並行輸入品でたまに40度ボトリングの物を見かけます。おそらくどこかの国では40度でボトリングされたものが普及しているのでしょう。見た目が殆ど変わらないので購入の際は気を付けたほうが良いですね。では前置きはこれくらいにしてテイスティングに行きましょう。

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推定2007年ボトリング。アーモンド、キャラメル、シトラス、オレンジ、米、アプリコットジャム。やや酸味のあるすっきり感。焼樽の香ばしさと柑橘系のフルーティーさ、概ね甘く僅かにスパイシーなバランス感覚。度数も、40度でもなく、50度でもない、ちょうど中間の45度、ここが肝かも。ラベルのワイルドさとは裏腹にモダンな味わいで、非常にバランスが良くレベルの高いバーボン。これが3000円以下で買えるならかなりオススメだと思います。現代バーボンの入門にぴったり。
Rating:85/100

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Elijah Craig Single Barrel Aged 18 Years 90 Proof
BARRELED ON 2-23-90
BARREL NO. 3755
バーボンの父と称されるエライジャ・クレイグ牧師の名を冠したヘヴンヒルのプレミアムバーボン。12年物とは比較にならないほど複雑な芳香を持っています。様々なドライフルーツのアロマや味わいと、渋味を含んだオークの風味、それをアルコール度数45度でボトリングするバランス感覚は大変面白味があります。ピーチやパイナップルも出てきましたが、キャラメル感はそれほどでもなく、オーバーオークな感じもしません。いわゆるパンチやキックを求める人には向かない、長熟ならではの香味をきくバーボン。日本には殆ど輸入されていない21年や23年も本国ではリリースされており大変人気があります(と言うか18年も最近は日本に入ってこない)。
本ボトルは90年に蒸留されたもので、いわゆる旧ヘヴンヒルのジュース。現行と比較したことはないので味の違いは分かりません。
Rating:87/100

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JIM BEAM BLACK DOUBLE AGED 8years 86 Proof
ジムビームラインナップのホワイトラベルの上位に位置するブラックラベル。現在では「EXTRA-AGED」と書かれ、NAS(No Age Statement)ながら熟成期間は6年程度とされ、日本では80プルーフにてボトリングされています(アメリカでは86proofのようです)。
で、その少し前まで流通していたスタイリッシュなデザインのボトルですが、混乱を招くような表現が使われています。ホワイトの4年熟成に対してブラックは8年熟成だから「DOUBLE AGED」と2倍の意味であるのは話が分かりやすい。ところが同じデザインのボトルで6年熟成のブラックがあるのですが、それには「TRIPLE AGED」と書かれているのです。ダブルの要領でいけば3倍の12年熟成になりそうなのにそうではない。無理矢理解釈すれば、ストレートバーボンと名乗るために必要な最低熟成年数の2年の3倍という意味かな?とは思えますが、どっちかに統一しろよッという突っ込みは免れないでしょう。その声が聞こえたせいなのか、今は上に述べた「EXTRA-AGED」に落ち着いたみたいです。
さて、肝心のお味のほうですが、これは美味しい。ホワイトでは味わえないリッチなフレイバーとスイートネス。甘さに振れた味わいながらスパイシーさとフルーティーさとシリアル感のバランスが良く、これが2000円程度ならお買い得だったと言うしかありません。
Rating:84/100

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Four Roses Super Premium 86 Proof
日本限定のフォアローゼズのトップクラス。ケンタッキー州立200年を記念して1992年から発売されました。スーパープレミアムと書かれているものの、なぜだか通称「プラチナ」と呼ばれています。使われるレシピは、おそらくイエローやブラック、スモールバッチとも異なるものと見られますが、公開されていません。しかし、熟成に関しては明確な指標があるようで、前マスターディスティラーのジム・ラトリッジによると、80%は最低8年以上で20%は10年以上の熟成でなければならない、とのこと。

さて、私はフォアローゼズを唯一無二のバーボンとして評価するのに吝かではありません。だから最上級とされるプラチナを飲むのをすごく楽しみにしていました。けれど、いざ飲んでみると少々拍子抜けという印象が拭えません。確かに美味しく、素晴らしい芳香のバーボンです。チェリー、プラム、青リンゴのフルーツ感にクローブ等のスパイシーさ、オークの力強さもあり、かつスムーズである。でもですよ、どうもスムーズ過ぎる。薄いんですよね、43度では。
プラチナは場合によっては7000円近い値札が付きます。正直な感想を言わせてもらうと、3000円あれば買えるブラックの出来が良すぎて、倍近い値段のプラチナが霞んでいると思います。またフォアローゼズ スモールバッチ45度が3000~4500円程度で買えることを考えると、個人的にはオススメ出来ないバーボンと言わざるを得ませんし、コスパをレーティングに考慮すると、得点を低く見積もらざるを得ません。どうせスーパープレミアムと語るぐらいなら100プルーフでボトリングしてもらいたいです。そうすればもっと旨かったに違いない。いや、せめて94プルーフでもいいのですが…。贅沢な注文なんですかね?
Rating:83/100

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Georgia Moon Corn Whiskey 80 Proof
フルーツ・ジャーに入ったコーンウィスキー、ジョージアムーン。英語では密造酒のことをムーンシャインと言い、密造酒の造り手をムーンシャイナーと言います。違法な蒸留は夜陰に乗じて月明かりのもとに行われるところから由来している言葉です。このジョージアムーンはちゃんとした蒸留所で違法行為でも何でもなく造られたお酒ですが、そういうイメージを上手く活用したパッケージとなっています。ネーミングといい、瓶に使われるジャーといい、ペーパーバッグ的質感のラベルといい、密造酒文化へのオマージュとも言えそうな独特のカッコ良さ。ラベルには「Less than 30 days old(30日未満の熟成)」と書かれていますが、これはおそらく未熟成の意ではないかと思います。たかが30日以内に樽の出し入れをしてたら手間ですし、中途半端な中古樽が出来てしまいますから。

さて、現在ではヘヴンヒル蒸留所で造られているジョージアムーン、そのオリジンや来歴をネットで調べてみたのですが詳しい情報が見つかりませんでした。けれども、ジョージアムーン(ジョージアの月光)という名前と、年式の古いボトル(70年代あたり?)のラベルに記載された所在地から判断するに、ジョージア州オーバニーで蒸留されていたのではないでしょうか。おそらくそこに、現在でもラベルに書かれているジョンソン・ディスティリング社があったものと推測します(追記あり)。そしてそれより年式の新しい物(おそらく70年代終わり頃から80年代)には、ケンタッキー州オーエンズボロの記載が見られ始めます。もしかするとメロウコーンを造っていたメドレー蒸留所にジョージアムーンのブランド権が移行してるのではないかと勘繰りました。そして80年代後半から90年代前半のバーボン業界を取り巻く買収劇の中で、メドレー蒸留所は閉鎖となり、どういう経緯か分かりませんが、90年代中頃にメロウコーンとジョージアムーンが一緒にヘヴンヒルのブランドになったのではないか、これが私のたいして根拠のない推理です。まあ、話し半分に聞いておいて下さい(ここら辺の事情に詳しい方はコメントから御教示頂けると幸いです)。

で、お味の方はと言いますと、30日以下の熟成なので……お世辞にも美味しいとは言えません。ストレートで飲むには、本当に酔うだけのためと言った感じです。しかも自家製カクテルのベースとしても少々荒削り過ぎる嫌いがあり、純度の高いウォッカのほうが素人には遥かに使いやすい。けれども、その荒々しさこそムーンシャインの真骨頂ですよね。本ボトルは推定06年ボトリング。
Rating:68/100

追記:どうやらジョンソン・ディスティラリーはヴァイキング・ディスティラリーという事業名を持っていたようです。自らアラバマ州で初めての合法的蒸留所と名乗っていました。ジョージアムーンのオリジナルはここで間違いないと思います。他にも海外のオークションでジョージアムーンと同じジャーに入ったバスタブ・ジンも見かけました(ヴァイキング・ディスティラリー名義)。また、ジョージアムーンで4年熟成100プルーフの画像も見かけました。こちらはマサチューセッツ州ボストンとオーエンズボロの記載があるやつです。そちらだったら、きっとメロウコーンに近い味わいだったろうなと想像しました。

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I.W.ハーパーは歴史のあるブランドであり、日本ではジムビームやフォアローゼスに並ぶ有名な銘柄ですが、本国アメリカでは20年近く販売されていませんでした。長らくブランドを所有していたシェンリー社が87年にギネス(ユナイテッド・ディスティラーズ)に買収され、90年代半ばにはハーパーを輸出用のブランドにするという戦略がとられたのです。それには日本も少なからず関与しています。当時の日本では、ハーパーと言えばバーボンの代名詞と言っても過言ではないほど人気があり、そのため正規のルートを通さず現地で安く買ったハーパーを日本で高値で売るというグレーマーケットが存在してしまった。その問題を解決する方法が、アメリカ国内でのハーパーの販売を停止し、輸出専用のブランドとすることでした。それが現在ブランドを所有するディアジオによって、アメリカのバーボンブームに後押しされるかたちで2015年に復活を果たしたのです。
日本でお馴染みとなるゴールドメダルと12年のラインナップではなく、グレーのラベルのNAS(No Age Statement)と15年熟成(限定生産)の二本立てです。最近になって日本でも並行輸入でちらほら見かけ初めました。正規販売では従来どおりの物が流通しているようです。ではテイスティングに移りましょう。

I.W.HARPER AGED 12 YEARS 43%abv
推定2014年ボトリング。キャラメル、ブラウンシュガー、ココナッツオイル、やや接着剤。円やかというよりはライトな酒質。余韻は軽くビターチョコ。フルーティさとスパイシーさのあまりないタイプ。それなりに旨いのだが、正直言って軽いし、特別なフィーリングも感じない。ボトルの華やかさに中身が負けている印象。
Rating:83/100

Thoughts:アメリカ流通の物と日本流通の物を熟成年数の違いやラベルの違いのみと考えると、おそらく蒸留はニューバーンハイム、エイジングは元スティツェル=ウェラーのレンガ造りの熟成庫、ボトリングがディアジオ所有のどこかの施設とみるのが順当だと思います。問題はマッシュビルなのですが、私の飲んだ感覚としては、どうも昔の80%を越えるコーン多めのマッシュビルではないような気がします。私にはヘヴンヒルのスタンダード・バーボン・マッシュビルに近い味わいに感じました。とあるバーボンに詳しい方は、ハーパー12年をフォアローゼスで蒸留した可能性が高い、と自身のホームページの記事に書いていました。それはディアジオがフォアローゼスと契約蒸留を結んでいることからの予想ではあるのですが、味もフォアローゼスの特徴と同じ風味プロファイルに感じると言うのです。その方の書く他の記事を読む限り、かなり確かな舌を持っているように思えるので、もし彼の舌も信んじて尚且つ自分の舌も信んじるなら一つの可能性として、ハーパー12年の中身のジュースは年代によって大幅に入れ替わっている、というのも考えられます。飲んだことのある皆さんのご意見を伺いたいところですね。

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