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2019-02-11-22-14-15

当ブログでは烏滸がましくもレーティングなるものをやってますので、一応それについての注意点や私の見解をここに述べておきたいと思います。

先ずレーティングには大きく二つの考えがあるでしょう。一つは、とにかくその対象を飲み物としての味だけに焦点を絞り点数を付ける立場。こちらはテイスティングノートの延長線上の格付けであり、グルメ志向なノリであり、ストイックに味そのものを探知しようとする求道精神が感じられます。もう一つは、味以外の事柄も考慮し、その対象を飲み物という商品として捉える立場。こちらは味そのものもさることながら、市場に於ける製品の立ち位置やデザインやマーケティングを勘案し、ブランディングや歴史的な物語が味に影響を与える可能性を考慮する批評精神が感じられます。私はどちらかと言うと後者寄りの考えに基づいてレーティングしています。自分自身の経験から人間の味覚にとって思い込みは重要なファクターではないかと思うからです(*)。

点数は100点満点で0.5点刻みを基本とし、希にどうしても差を付けたい場合にのみ0.25点まで採点します。そして点数の付け方は、
香り30点
味わい30点
余韻30点
デザイン性とブランディング3点
コストパフォーマンス3点
稀少性3点
Xファクター1点
のような明確な内訳や枠組があって、その中で対象Aは「香り25点…コスパ2点…」などとやっている訳ではありません。上のような項目は全て考慮しはしますが、何と言うかもっとゆるやかな、伸び縮みのする、私の感覚に根差した得点となっています。そして当たり前ですが、それは私の好みの反映でしかありません。極端な話、点の付け手が異なれば全く逆の評価になることだってあるかも知れない。「レーティング」だ「格付け」だと大袈裟に言っても、一人のバーボン飲みの個人的嗜好を数値化する試みなだけで大した意味はないのです。

それと、点数は飲んだ「そのブランド」に付けたものではなく、あくまで私が飲んだ「そのボトル」に対する評価となります(**)。また申し訳ないのですが、点数はたまに変動します。と言うのも、点数は他との比較に於いて付けられていますので、「他」が増え、なお整合性がないと判断した場合には点数の見直しを図るからです。そのため、私が生きてバーボンを飲み続け、ブログを更新できる限りは、点数の微調整が行われると思って下さい。

考えようによっては、人が丹精を込めて造り上げた物に対し、人が点数を与え格付けすることは不遜な態度と言えるかもしれません。そう考える人はテイスティングノートや感想のみ採り、点数やら星やらABCやらのグレード評価を付けないレヴューをすることでしょう。私も本来それでいいのだと思います。「男は黙って飲め」、それが一番格好いい。「酒なんて楽しく飲めればいいじゃん」、その通り。しかし、人間は何であれ上下関係に過敏な生き物でもあり、多くの消費者にとって最も気になることは、「で、それとあれ、どっちが美味しいの? どっちが上でどっちが下なの?」という情報だと思います。そこのところを端的に数値や等級で表すのがレーティングと云うものかと。だからと言って私は別に消費者の味方を気取るつもりは毛頭なく、単純に他人のレヴューやレーティングを見るのが面白いと思うから自分もやってみてるだけです。或る一人のレヴュワーのテイスティングノートとレーティングの全貌を追って行くと、そのレヴュワーの嗜好や癖が何となく分かってきます。と同時に、知りたいバーボンについて様々なレヴュワーのレーティングも見てみます。そうすることで自分が感じている風味を他人は何と表現し、どう評価しているのか、または随分異なる風味を感じてはいないか、そこから中身のジュースが違う可能性はないのか、そしてそのバーボンは世の中でどのようなポジションにあるのか、そういったことが朧気ながら立ち昇って来ます。私のレーティングもそうしたデータの一つとしてなら利用価値はなくはないでしょう。

以上、私のレーティングを参考にされる場合の注意点と見解でした。


*高級そうな箱やボトルに入っているとありがたみが増し美味しく感じる、高い金を払うと美味しくなければならないと心理的に追い込まれる、ブランドのイメージが好きだと味も美味しく感じる等。

**これは、ブランド権が売買され、そのブランドを製造する蒸留所が変わった場合や、ラベルまたはボトルデザインの変更(リニューアル)があった場合は勿論のこと、それだけでなく同じ蒸留所が製造しラベルが一緒のロット違いでも、なお何かが異なる可能性を考えてのことです。この点に関しては少し説明しておきたいと思います。
バーボンは焦がした樽で熟成させることでフレイヴァーの大部分を得る飲み物です。それは言うなれば天然由来の風味であり、化学的に調合された飲み物ほどには、個々のバレルの風味は一定していません。ある程度はディスティラーがコントロール出来ても、最終的にどんな風味が実現されるかは「神に委ねられている」。もっと言うと熟成庫の立地場所や熟成庫内のバレルを置く位置によって風味に違いが出て来るのがバーボンなのです。そのため、シングルバレル(1樽)やヴェリー・スモールバッチ(10樽前後)のような味の一貫性を問われない製品は別として、大型蒸留所の旗艦ブランドは大抵まばらにピックした3桁から4桁の数のバレルを混ぜ合わせることで、味わいに一貫性を待たせています。例えば2015年のAロットとBロットを比較した時、おそらく私を含めた素人には両者の差は殆どないように感じられるでしょう。そして2~3年の生産ロット違いにしても、差は感じれないことが殆どだと思います。大きな蒸留所には各ロットのサンプルが保管され、マスターディスティラー以下テイスターやブレンダーの仕事により、同一線上の風味になるよう製品化されていますから。ある意味マスターディスティラーの一番の仕事はブランドの味を変えないことにあるのです。それがブランドにとって消費者のロイヤルティを獲得する主な道だからです。しかし、厳密に言ったらそれらは全く同じものではない。現に私の経験談ですが、ほぼ同時期流通品のブランドを別々の販売店から購入し飲み較べてみると、概ね同じだし点数としたら変わらないけれども、僅かに何かが違うと感じたことがありました。
では、同一ブランドの2015年と2005年の製品を較べたらどうでしょうか。十年一日何1つ仕様が変わらないのはビジネスとして稀です。ボトリングプルーフやバレルセレクトの基準が変更されたりでもしたら風味の変化率は大きい筈。高性能なフィルターや高速ボトリング設備が導入されたり、 施設が清潔になったことで何らかの細菌類がいなくなり味わいに変化をもたらすこともありそうな気がします。いや、仮に原材料の穀物を同じ農家から購入し、樽も同じクーパレッジから購入し、その他マッシュビルも酵母も仕込み水も同じ、蒸留器も当然同じ、熟成場所すらも全く同じだったとしても、おそらく微細な風味の変化があるのは容易に予想されます。それは微生物の数だったり、水質の変化だったり、完全同一の気候条件がないことだったり、色々な可能性は考えられますが、とにかく微妙に何かが違うのが当たり前だと思うのです。ブランドにとって守られているのはあくまで品質の同等性であって風味の同一性ではありません。そのため風味の僅かな異なりが点数に反映することを考慮して、レーティングはそのブランドに対するものではないとしておきたいのです。
また、上に縷々述べてきたこと以上に重大と思われるのはボトルコンディションです。ボトリングから10年以上を経過したオールドボトルに関しては、同一ロットかつ未開封であっても、保管状況で中身のコンディションはかなり違うような気がしています。或る店では直射日光や蛍光灯にさらされているかも知れない。或る店では湿度が高い場所に保管していたかも知れない。また何らかの理由でコルクやプラキャップの気密性に差があったかも知れない。テイスティングでスワリングしたり5分放置してから飲み始めるのは、酸化させることで香味を開かせる意味合いがあると思いますが、未開封のボトルも物凄く微妙ではあっても徐々に酸化している可能性はあると個人的には思っています。蒸留酒はワインほど繊細ではないかも知れませんが、それでも多少の風味変化はあるのではないでしょうか。それ故レーティングは、当の私が飲んだそのボトルに対する評価としておくのが無難だとの判断です。
更に付け加えると、開栓後の風味や香味の変化も考えるなら、バー飲みでのレーティングは「そのボトル」どころか、たまたま飲んだ「その一杯」ということにしておくのが順当でしょう。おまけに、バーでは家飲みと違ってハーフショットかショット一杯しか飲みませんので、私側の状態で味が捉えられないことも多く、レーティングはなおのこと信頼性に欠けると思って下さい。

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REDEMPTION RYE 92 Proof
Batch No:241
Bottle No:7099
アメリカで見事にライ人気が復活を遂げるなか、リデンプション・ライは確固たる地位を築いたブランドの一つです。名前のリデンプション(償還、救済、贖う、買い戻し)というのは、禁酒法以前にアメリカンウィスキーの主流だったライウィスキーの復権が製品コンセプトだから。と言っても、バーボンもリリースされてます。また、製品意図としてマンハッタンやオールドファッションドのベースとして提供されているようです。
現在では親会社がDeutsch Family Wine & Spiritsとなり、ボトルとラベルがリニューアルされてまして(おそらく2017年あたりから?)、画像の印象的なトールボトルは廃止となりました。中身のジュースは変わらずMGPの95%ライで、ケンタッキー州バーズタウンにあるDave SchmierとMichael Kanbarが運営するバーズタウン・バレル・セレクションズによってボトルリングされています。熟成年数は平均2.5年と言われていますが、ラベルにストレートライと書かれてないのと、裏ラベルに「Rye whiskey is less than one years」と書かれているところを見ると、おそらく1年熟成の原酒がかなり入っているのでしょう。では、テイスティングへ。

焦がした木、青リンゴ味のかき氷、芹、蜂蜜、洋梨、ライスパイス。全体に若草及びハーバルなアンダートーンが感じられる。余韻にはスパイス感と共に土っぽさも。口に含むと若い原酒のせいかピリピリするし、喉越しはかなりスパイシーだが、その刺激が心地よく、味わい的にも未熟感が却って好結果という印象。しかもビッグ・フレイヴァー。同じMGPの95%ライを使用し、似たようなスペックのエズラブルックス・ライ(※)と較べてアロマ/フレイヴァー/フィニッシュ全てに於いて強い。液体を光に透かして見ると、細かい粒子のような浮遊物がかなり見える。これはもしかするとフィルターをあまりかけていないのかも知れない。思うにアルコール度数もパーフェクト。

海外での評を見ると、ストレートで味わうには若すぎ、カクテルのベースにはオススメとする意見もありましたが、個人的にはガンガンとストレートで飲みたい味わいです。比較的安価にライ・フレイヴァーを楽しめるイチオシの一品。現行品と較べたことはありませんし、バッチ間の味の変動はあるでしょうが、少なくとも私の飲んだボトルはそうでした。
Rating:84.5/100


※ネットで調べるとエズラブルックス・ライはMGPの95%ライをソースとしているとの説明が多いのですが、当記事を書いた後にそうでない可能性が発覚しました。ですが、記録として記事内容を変更せず投稿しています。 

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Evan Williams Bottled in Bond White Label 100 Proof
ヘヴンヒルの看板製品と言えるエヴァンウィリアムスのボトルドインボンド。通称ホワイトラベルとも呼ばれ、2012年に市場へ導入されたと言います。でもこれって昔もありましたよね?  一旦終売になってからの再導入という意味でしょうか?  もしくはアメリカ国内では昔は販売されてなかったか、或いは地域限定販売だったのかも知れません。
マッシュビルは当然エヴァンブラックやエライジャクレイグと同じで、コーン/ライ/バーリーがそれぞれ75%/13%/12%(他説では78%/10%/12%)。また、熟成年数は実質5年だそうです。

ボトルドインボンド(またはボンデッド)というのは1897年に制定された主に商標と税収に関わる法律で、単一の蒸留所・単一の年・単一のシーズンに蒸留され、政府管理の連邦保税倉庫で最低4年以上熟成し、100プルーフ(50度)でボトリングされたスピリットのみ、そう称することが許されます。またラベルには蒸留所の連邦許可番号(DSPナンバー)の記載が義務づけられ、ボトリング施設も記載しなければなりません。上の条件を満たした物は緑の証紙で封がされ、謂わばその証紙が消費者にとって品質の目印となっていました。紛い物やラベルの虚偽表示が横行していた時代に、ラベルには真実を書きなさいよというアメリカ初の消費者保護法にあたり、結果的に蒸留酒の品質を政府が保証してしまうという画期的な法案だったのです。現在では廃止された法律ですが、バーボン業界では商売上の慣習と品質基準のイメージを活かして、一部の製品がその名残を使っています。このEW BIB White Labelもその一つ。では、レビュー行きましょう。

本ボトルは2015年ボトリング。一言、キャラメルボム。コーンフレークにキャラメルをかけてほんの少しスパイスを振りかけたような感じ。余韻はリンゴの皮の煮汁。複雑さのない単純で直線的な味わいながらも、それが却って好結果という典型例。開封直後から甘いキャラメル臭全開で美味しかった。ボトル半分の量になると甘い香りが減じてしまい、他の香味成分が開くのかと思いきやそうでもなく、全体的に穀物感の強い少々退屈なものへ。とは言え、相変わらず旨いは旨い。これは100プルーフの成せる業か。
同じヘヴンヒル産で、これより度数が高く熟成年数の長いファイティングコック6年と比べて、キャラメル香の豊富さと甘みで勝ってる(ただし、余韻の複雑さでは負ける)。このブランドによる差異を、熟成庫のロケーションの違いとバレルセレクトでしっかりと造り分け、尚且つどのロットも継続的にこのキャラクターで安定しているのだとしたら大したもの(他年度製品と比べた事がないので判らない)。
Rating:84.5/100

Value:上でファイティングコック6年を持ち出して比較しましたが、本来であれば較べたいのはヘヴンヒル・ボトルドインボンド・ホワイトラベル6年でした。ところがそのHH BIB 6yrはケンタッキー州限定の製品らしく、日本では購入しづらいときてます。そこで同蒸留所産でスペックと価格の似ているのが上述のFC 6yr(*)だったのです。で、それら二つはキャラクターは若干違えど私的には同点です。お好みの方を買えばいいでしょう。
さあ、ここからが問題なのですが、日本に於いて人気の高いエヴァンウィリアムスの一つに赤ラベル12年というのがあります。これは日本限定(**)の製品でして、約3000円で購入できてしまいます。そしてこの白ラベルは2500〜3000円で販売されているのです。赤ラベルのほうがフルーティーさと複雑さで勝りつつ、なおパワーも劣っていない格上のバーボン。アメリカ国内では安くて旨いという評判を誇るボトルドインボンドも、500円の差額、時には同額で格上の赤ラベルが買えてしまう日本の状況下では、正直言ってその存在意義は小さいと言わざるを得ません。かなり美味しいバーボンらしいバーボンだけに、もし2000円だったら大推薦なのですが…。いや、赤ラベルが4000円程度であれば、2500〜3000円の白ラベルも存在意義はあります。あとはお好み次第。


*現行のファイティングコックは熟成年数の表記がなくなりました。6年より若い原酒が入ってる可能性が高いです。例えば6年と4年のブレンドとか。

**アメリカでもヘヴンヒルのギフトショップでは販売されているようです。私が直に目で見た情報ではないのですが、Instagramで$140と言ってる方がいました。日本の恩恵に感謝するしかありませんね…。

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Branton's SINGLE BARREL BOURBON 93 Proof
Dumped 2-6-17
Barrel No. 343
Warehouse H
Rick No. 72
友人から開封直後の1ショットを頂いての試飲。並行ではなく正規です。ブラントンズのブランド紹介は過去投稿のこちらを参照下さい。

焦がしたオーク、エタノール、フルーティーな香り、僅かにフローラル。ウォータリーさとクリーミーさが同居したような口当たり。口中はヴァニラ〜キャラメル系の甘味とシナモン〜ナツメグ系の風味、ブラックペッパー的な刺激。フィニッシュはスパイスとバター。45度前後でここまでバタリーな風味はなかなかない。酸味や苦味があまり目立たず、バーボンの味わいを構成する各要素が突出しないマイルドなバランス型の味わいと思う。けれども、そのせいなのかセクシーさに欠ける。
Rating:85/100

Value:数年前に並行輸入品を飲んだ時も思ったのですが、現行製品のブラントンはどうも「硬い」ような気がします。おそらく、これから酸化することでもう少し香りが開き、味に深みが出ると予想されますが、どうも開けたてはパッとしない。正直に言うと、パッケージングの華やかさとブランド神話は「買い」であるものの、値段を考えると自分の選択肢からは外れます。ブラントンはゴールドエディション以上、できればストレートフロムザバレルなら買ってもいいですが、現行のスタンダード日本正規品を定価では買いたくありません。販売店により価格差がありますので一概に言えませんが、これは仮にスタンダードの最高値が6000円だとして、ストレートフロムザバレルの最安値が7500円だとすればの話です。ここには値段以上の「開き」があります。
また、ブラントンズはオークションでそれほどは高騰していないブランドの一つです。少なくとも私の口には90年代のブラントンズは現行より遥かに美味しく感じるので、現行品と大差ない価格であればセカンダリーマーケットでオールドボトルの購入をオススメします。80年代の物はもっと美味しいと聞き及びますが、90年代の物より少し高い値が付くでしょう。

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(ri)1  92 Proof
記号のような表記の名前は「ライワン」と発音します。2008年10月にビームグローバルから発売されたという情報を目にしました。熟成年数の異なるいくつかの原酒のブレンドで、最低でも4年半の熟成とされ、原酒構成はおそらく4.5〜6年程度ではないかと思われます。新世代のバーテンダーやミクソロジスト向けの製品企図があるようですが、ストレートで飲んでも美味しかったです。ジムビームらしいバーボン寄りのライウィスキーで、フルーティーなバーボンみたいな感じです。軽やかな口当たりに、ややスパイシーなトーンを維持しつつ甘味もあり、強いて言うと赤リンゴのフルーツ感を感じました。ジムビームライと較べると度数が高いので当たり前ですが味わいと余韻は強いです。ノブクリークライと較べるとスモーキーさやダスティなフィーリングに欠けていると言えます。
現在では終売になっているものの、プリプロヒビション・スタイルと銘打たれリニューアル(2015)したジムビーム・ライのアメリカ仕様?は90プルーフのようなので、そちらで代用する感じでしょうか。ましてやノブクリーク・ライもあっては終売も仕方なしかと。ちなみに上記のプリプロヒビション・スタイルは日本にも90プルーフの物が並行輸入で入って来てます。日本正規品とはボトル形状とラベルが少し違うやつを酒屋で見かけました。私は試していませんが、500円程度の違いでアルコール度数が5度も上がるのはお買い得な気がします。
Rating:84/100

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EARLY TIMES 354 BOURBON
アーリータイムズ蒸留所の創業は1860年と言われており、ジム・ビームの叔父にあたるジャック・ビームがバーズタウン近くのアーリー・タイムズ・ステーションにて創始したとか。禁酒法の施行は小さな蒸留所に大きな打撃を与え、数多くの蒸留所が廃業に追い込まれました。アーリータイムズも例外ではなかったのでしょう、1923年からブラウン・フォーマンに買収され生き延びているブランドです。50年代にはアメリカで最も成功したブランドの一つでしたが、1983年以降アメリカ国内ではバーボン規格ではなくケンタッキーウィスキーとして販売され(*)、国外輸出向けにはストレート規格のバーボンとして人気を博してはいたものの、本国では最下層のアメリカンウィスキーの地位に甘んじているように見えます。ところが2011年に突如この354と名付けられたバーボン規格のアーリータイムズが発売されました。あまり売れ行きが芳しくなかったせいか、2014年に終売となりました(**)。

354という数字はアーリータイムズを造るプラントの連邦許可番号(DSP-KY-354)から由来しています。熟成年数はNAS(No Age Statement)ながら4年とされ、特別に選ばれた樽からボトリングされているようです。
通常のイエローラベルと較べるとフレッシュフルーツ感が強まっている印象。オレンジやリンゴっぽい。やや水っぽく、澄んだ酒質。確かにイエローラベルより高級なテイストは感じられるが、正直言って物足りない。おそらく43度でボトリングしてくれてればもう少し美味しかったに違いない。ボトルのデザインは古めかしくてカッコいいのだが…。
Rating:81/100


*古樽で3年熟成された原酒が混ぜられているためバーボンと名乗れない。

**今ではボトルド・イン・ボンド規格のアーリータイムズが発売されてます。

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「安酒を敬いたまえ」シリーズ最終回、今回は総論とアウトロとなります。先ずはレーティングの一覧を。

①Four Roses Yellow Label─83 point
②Jim Bem Rye Pre-prohibition Style─82 point
③Old Taylor(not 6 year)─79.25 point
④Ancient Age─79 point
⑤Benchmark─79 point
⑥Old Virginia 6 year─78.75 point
⑦Old Crow─78.75 point
⑧Early Times Brown Label─78 point
⑨John Hamilton─77 point
⑩Heaven Hill White Label─77 point
⑪Early Times Yellow Label─76.5 point
⑫Jim Beam White Label─76.25 point
⑬Very Old Barton─76.25 point
⑭Kentucky Tavern─76 point
⑮Kentucky Gentleman─76 point

私のレーティングは通常0.5点以下を付けません。しかし今回は狭い枠内での採点ということもあり、似たり寄ったりの点数になってしまうので、今回に限り、敢えて0.25点も採点しました。従って以前投稿したものとはレーティングが少し異なります。また、エンシェントエイジに関しては私が当企画用に開けたものがプチオールドボトルだったため、数年前に飲んだ物の点数を採用し直しました。 おそらく現行製品はこれに準ずる筈です。

さて、当企画のため半年近くかけて現行の最低クラスのバーボン(一部ライも含む)を、時にはサイド・バイ・サイドで飲み比べしてみた訳ですが、やっぱりバーボンは美味しいなあ、という感想です。これらは皆1000円ちょっとで買えてしまうのですから、ありがたい話だと思いませんか? 私は安バーボンを敬わずにはいられません。
ただし、ただでさえバーボン全般味の傾向が似ているのに、現行の安いものは殊更そのような感が強い。個性がなく、AとBまたはCを較べた時に明確な差が感じられないのです。そういう中でも、頭ひとつ抜きん出ていたのがフォアローゼズ・イエローラベルでした。そして2位がジムビーム・ライであるところから、少なくともこのクラスでは私の好みがハイ・ライなのが判ると思います。この①②を別格として、それ以下は大差ないのが実情です。ある意味どれを買っても失敗しない、バーボン好きであれば。

それと、ちょっとした裏話があります。実はこのクラスのバーボンは、大のバーボン好きな私でもテイスティンググラスで飲むとあまり美味しく感じません。もしテイスティング・グラスのみで試飲していたら上記の得点は二点ほどマイナスになるところです。どうもテイスティング・グラスにはアルコール臭や溶剤系の香りを拾い過ぎる嫌いがあるような気がします。
更に言うと、このクラスはショットグラスで飲んですら少々味が落ちるように感じます。この場合は一点マイナスぐらいでしょうか。もちろん全ての銘柄がそうではないのですが、概ね味が薄く感じるのです。それが「ハイボール専用」などと揶揄される要因のひとつかも知れません。
じゃあどうやって飲んでいるのかというと、それはラッパ飲みです。下品ですって? 確かに品行方正とは言えないかも知れない。人前でするのは避けたほうが自己保身になるでしょう。けれども、この価格帯の酒はバーなどで飲むよりは自宅用が殆どだと思います。ならば人目を気にせずラッパ飲みもしやすい筈。安いバーボンが旨くないと思っているウィスキー飲みの方には是非試して頂きたい飲み方です。

補足として。実はこのクラスに入れてもいいのだけれど、敢えて入れなかった銘柄が4つほどあります。それはエヴァンウィリアムス・ブラックラベル、エズラブルックス・ブラックラベル、エンシェントエイジ10スター(6年熟成)、ヴェリーオールドバートン6年です。前二者は販売店によっては1500円で買えてしまうことがあるのですが、私にとってこの2つはもうひとつ上のクラスに入れたい銘柄なので、敢えて取り上げませんでした。後二者も1500円+アルファ程度で買えていたのですが、これらは現在の日本で急速に入手しにくくなっているため割愛しました。もしこの四者が当企画に参戦していたら、上位を占めていたかも知れません。

安いこと。それは大きな武器です。ここからバーボンに入門するのも良いでしょう。けれど、ここで終わってしまっては勿体ない。もっと芳醇で深みがありパワフルな素晴らしいバリューのバーボンが沢山あります。特にこのもうひとつ上のクラス(1500〜3000円)は激戦区。価格と味のバランスで言ったら一番「買い」なクラスです。そちらは数が多過ぎて今回のような企画で纏めてレビューするには私では力不足ですので、個別にコツコツやっていこうと思ってます。
情報はなるべく正確を期していますが、知らないことも多いので、間違いの指摘はコメントからお気軽にしてください。レーティングなどと言うのは所詮私の好みを数値化したものに過ぎません。他人の点数やテイスティングノートに惑わされず、ガンガンとバーボンを呑みましょう。特にこんなチープなやつは。でもね、だからこそ愛すべき、敬うべき存在なんです。安酒に乾杯。

追記:その後、本文中に述べたエンシェントエイジ10スターエヴァンウィリアムス・ブラックラベルとエズラブルックス・ブラックラベルのレヴューを投稿しました。興味のある方はご参考までに。

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ブラントンズは現在のプレミアムバーボンの魁として当時まだ珍しかったシングルバレルという形式で1984年から発売されました。当時のマスターディスティラー エルマー・T・リーが、先達のアルバート・B・ブラントンが特別に出来の良い樽を他の樽と混ぜずに招待客に振る舞っていたのをヒントに製品化したという伝説があります。
バッファロートレース蒸留所は、以前の名称をエンシェントエイジ蒸留所と言い、更に前はブラントン蒸留所とも知られていました。往年の親会社であるシェンリー社が同蒸留所に55年勤務したアルバートに敬意を表し蒸留所の名称をブラントン蒸留所としたと言います。ルーツを辿れば最初期はアルバートの父親ベンジャミン・H・ブラントンが建てたリーズタウン蒸留所に行き着き、エドモンド・H・テイラーJr.やジョージ・T・スタッグが辣腕を振るった時代がありました。バッファロートレース蒸留所のリリースするバーボンは同蒸留所のリーダーたる偉人の名前を冠したブランドが多いのです。

ブラントンズにはライ麦15%程度と言われる# 2 マッシュビルが使用されます。熟成年数の表記はありませんが、約8年とされ、全てウェアハウスHにて熟成されます。バッファロートレース蒸留所の熟成庫は殆どか煉瓦造りなのですが、H倉庫は唯一メタルの被覆で造られており、熟成が速く進むそうです。一説には4年ほど熟成した段階でマスターディスティラーを含む検査官がテイスティングをし、これは良い出来の樽だと判断されたものをH倉庫へと移して、更に3〜6年寝かせて熟成のピークに達したものをボトリングするのだとか。
またブラントンズと言えば特徴的なのは多面体のボトル形状とケンタッキーダービーのジョッキーを模したキャップでしょう。このデザインは秀逸という他ありません。キャップにはB・L・A・N・T・O・N2・Sのどれかの印があり、ゲートに佇む姿〜馬を疾駆する姿〜ガッツポーズで勝利する姿までの八種類があって、キャップを集めている人もいます。他のヴァリエーションとしては、度数の低いブラック、度数の高いゴールド、樽出し原酒のストレート・フロム・ザ・バレルなどがあります。この中でストレート・フロム・ザ・バレルだけがアンチルフィルタードで、他のはチルフィルタードとなっています。度数にせよフィルトレーションにせよ、かなりの違いを産み出しますよね。

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Blanton's Single Barrel Bourbon Whiskey 93 Proof
Dumped 6-15-12
Barrel No. 21
Warehouse H
Rick No. 24
こちらは並行輸入品です。並行輸入品は茶色っぽい紙の色で、正規輸入品はもっとクリームぽい紙の色をしています。で、どういう訳か並行輸入品よりも正規輸入品のほうが味が優れてるように感じるのです。このボトルに関しても、キャラメル香とスパイシーさの加減もよく、美味しいは美味しいのですが、そこまでの深みは感じれず…。シングルバレルという性格上、並行か正規かの違いに拘わらず、そもそも一樽一樽が違うのは当然なので、たまたまなのかも知れませんが、昔から「正規の方が味が良い」説は根強くあります。私の思い込みなのでしょうか?
また、もっと言えば90年代の物のほうが遥かに深みがあり美味しいと感じます。なので残念ながら得点は抑え気味になりました。  
Rating:85/100


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KNOB CREEK Small Batch 9 Years 100 Proof
ジムビームのスモールバッチコレクションの一つノブクリーク(現在では9年表記はなくなりました)。ビーム家6代目ブッカー・ノーが禁酒法以前の力強いバーボンへの回帰を目指して造り上げ、特徴的なボトルデザインと相俟って、92年の発売以来人気があります。その特徴的なデザインは禁酒法時代にルーツがあり、ブーツの中に酒を隠しやすいフラスクを模したレクタンギュラーボトル、またそれを新聞紙で包んで隠していたという故事に倣ったラベルデザイン、どちらも秀逸というしかありません。
あと、ノブクリークという名前の由来について、ケンタッキー州にある小川の名前であり、偉大なる大統領エイブラハム・リンカーンが幼少期を過ごした土地にちなむと説明されることが殆どですが、大昔にナショナル・ディスティラーズのブランドで「ノブクリーク」という名前のバーボンがあったという指摘があります。確かに他のスモールバッチラインナップの名前は、ブッカーズ、ベイカーズ、ベイゼル・ヘイデンズとどれも人名であり、ノブクリークだけ仲間外れな感じはします。まあ、余談ですが…。 
さて、お味の方はというと、アロマはキャラメルとオークが中心で、フレイヴァーにはナッティかつトースティなテイストがあります。個人的にはフルーティーさはブッカーズのほうがあるような気がしました。またジムビームのバーボンの中で最も樽の焦げた味がするように感じます。それをややスモーキーと言うのでしょう。これは好きな味です。ただし、私にはどうしてもジムビームのバーボンには、もう一つ何かが足りなく感じます。それを奥行きとか深みとかコクと言ってもいいですし、濁りと言ってもいい。とは言え、スモールバッチではない通常のジムビームラインと比較すれば遥かに香り高いのは間違いありません。本ボトルは推定2009年ボトリング。
Rating:85/100

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周知のようにフォアローゼスは他の蒸留所では見られない独自の方法でそのバーボンを造り出します。それは二つのマッシュビルとキャラクターの違う五つのイースト菌を使って10種類の原酒を造り、平屋のウェアハウスで熟成させ、それらをブレンドすることで品質と味を安定させるという方法です。フォアローゼスは1943年にシーグラムの傘下に入りましたが、その当時からシーグラムは酵母の研究をしていて、その影響を受けた造り方なのでしょう。またコックスクリークにある平屋の熟成庫も、元々はシーグラムが熟成の本拠地としていた歴史があるそうです。シーグラムという会社はなくなりましたが、フォアローゼスはその魂を受け継いでいると言ってもいいかも知れません。

10種類の原酒は4文字のアルファベットによって「O■S◆」というように表記され、「O」はフォアローゼス蒸留所で造られていることを意味し、「S」はストレートウィスキーであることを意味します。「S」はストレートの略と分かりやすいですが、なぜ「O」がフォアローゼズ蒸留所を表すかと言うと、それは昔フォアローゼズ蒸留所はオールドプレンティス蒸留所という名称だったからです。いくつもの蒸留所を抱えていたシーグラムは原酒の産出される蒸留所のバレルに各略号を与えており、その名残から「Old Prentice」の頭文字「O」でフォアローゼズ蒸留所を表すのです。
そして「■」の部分にはマッシュビルの種類を表す「E」もしくは「B」が入ります。「E」マッシュビルはコーン75%/ライ20%/モルテッドバーリー5%でライ麦少なめのレシピ、「B」マッシュビルはコーン60%/ライ35%/モルテッドバーリー5%でライ麦多めのレシピです。注意してほしいのはライ麦少なめのEマッシュビルでも、他社で言うとハイ・ライ・マッシュビルと呼ばれるライ麦含有率なところです。つまりフォアローゼスはライ麦率が凄く高いバーボンなのです。
そして末尾の「◆」にはイーストの種類を表す「V・K・O・Q・F」の何れかが入ります。左から順に、デリケート・フルーツ・クリーミー、ライト・スパイス・フルボディー、リッチ・フルーツ・フルボディー、フローラル・エッセンス、ハーバル・エッセンスというキャラクターを持っているとされ、それぞれに熟成のピークが違うそうです。この5種類のイーストは、上に述べたようにイーストの研究に余念のなかったシーグラムが、往時ケンタッキー州で所有していた五つの蒸留所にルーツがあるとの説がありました。どれがどの蒸留所のイーストなのか判りませんが、その五つの蒸留所とは、ルイヴィルのカルヴァート蒸留所、シンシアナのオールド・ルイス・ハンター蒸留所、ラルー郡のアサートンヴィル蒸留所、ネルソン郡のヘンリー・マッケンナ蒸留所、そして現在フォアローゼズの本拠地となっているローレンスバーグのオールド・プレンティス蒸留所です。
これら2×5の10種類のそれぞれの特徴は下記のようになるとのこと。

OESV─デリケートフルーティ、フレッシュ、クリーミー
OESK─スパイシー、フルボディ
OESO─フルーティ(レッドベリーズ)、ミディアムボディ
OESQ─フローラル(ローズ、アカシア)、バナナ、ミディアムボディ
OESF─ミント、フルーティ、フルボディ
OBSV─デリケートフルーティ(洋梨、アンズ)、スパイシー、クリーミー
OBSK─リッチスパイスネス、フルボディ
OBSO─ライトフルーティ、スパイシー、ミディアムボディ
OBSQ─フローラル(ローズ)、スパイシー、ミディアムボディ
OBSF─ミント、フルーティ、スパイシー、フルボディ

イエローラベルはこれらを全てブレンドしたもので
OESV+OESK+OESO+OESQ+OESF+OBSV+OBSK+OBSO+OBSQ+OBSF

スモールバッチは4種類のブレンドで
OESK+OESO+OBSK+OBSO

シングルバレルは当然1種類で
OBSV

と、されています。ちなみにリミテッドリリースの物はその都度、最も熟成の良いものが選ばれているようで、例として

2016年リミテッドリリース・スモールバッチは
OESK(16yr)+OBSV(12yr)+OESO(12yr)

エリオッツ・セレクトは
OESK

が、選ばれています。その他に現地では、プライベート・セレクションという或るお店や団体のためのシングルバレルがあり、それは任意の樽を選ぶことが出来るみたいで、お店の名前と「O■S◆の○年▲ヶ月熟成」というように記載されたシールがボトルの横に貼ってあります。それらはめちゃくちゃ旨いらしいです、バレルストレングスだし…。まあ、それは措いて、そろそろ通常品のシングルバレルの感想を。

Four Roses SINGLE BARREL 100 Proof
Warehouse No. RS
Barrel No. 80-6F
イエローやブラック、スモールバッチと比べると、ハイプルーフのせいか、だいぶオーキーな香り。飲むと、あぁフォアローゼスだなぁというフルーティさだし、濃いし、スウィーティーかつスパイシーで勿論おいしいのですが、どうも奥行に欠ける気がする。リッチではあるがコンプレックスではない印象を受けました。正直、スモールバッチの方が好みです。私とOBSVの愛称が悪いのか、ブレンドでないからそう感じるのか、他の樽だったらよかったのか、どうもわかりませんが、このボトルに関しては特別なフィーリングは感じませんでした。
Rating:86/100

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