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(画像提供Bar FIVE様)

ジュリアン・ヴァン・ウィンクル三世は様々な原酒を用いて自身のブランドを構築して来ました。その中で最も有名なのはスティッツェル=ウェラー原酒でしたが、ゴードン・ヒューJr.に依頼されてボトリングしたペンシルヴェニア1974原酒もよく知られています。旧ミクターズ(ペンコ)で蒸留されたそのバーボンについては過去にA.H.ハーシュ・リザーヴ16年の投稿で取り上げたのでそちらを参照下さい。

今回紹介するヴァン・ウィンクル・セレクション16年ロットHに入っているバーボンの出所については、実はジュリアン三世からの決定的な証言がありません。そのため海外ではその使われた原酒については可能性の指摘に留まっていますが、表ラベルに「Kentucky」表記がなく更に「Pot Stilled」とあること、ロットの「H」は「Hirsch」の略ではないかと推測されること、裏ラベルの「Kentucky」表記はインポーターのミスであろうこと、そしてハーシュ・リザーヴに同じボトリング・プルーフが存在することから、個人的にはほぼ間違いなくペンシルヴェニア1974原酒だと思います。恐らくこの16年のセレクションは、コニャック・タイプのボトルに入った「HIRSCH RESERVE 16 YEARS OLD 47.8% ABV」やスコッチ・タイプのボトルに入った「A.H. Hirsch RESERVE 16 YEARS OLD 47.8% ABV」のラベル(ブランド)違いではないかと。また、ヴァン・ウィンクル・セレクション・ロットHには17年熟成もありますが、A.H.ハーシュ・リザーヴにも17年があり、どちらも95.6プルーフと共通のボトリング・プルーフとなっています。これではペンシルヴェニア1974原酒でないことを疑うほうが難しいのでは…。まあ、それは措いて、さっそく注ぐとしましょう。

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VAN WINKLE SELECTION 16 Years Old Lot “H” 95.6 Proof
こちらは大宮Bar FIVEの会員限定ウイスキークラブにて提供された一つで、ハーフショットでの試飲。当方のリクエストに応えて頂いたかたちとなります。マスターの心意気に感謝しかありません。ありがとうございました!

推定90年もしくは91年ボトリング(AHハーシュの情報からの判断)。ハーブ、キャラメル、古い木材、オールスパイス、オレンジ・ティー、ミント。アロマは甘い香りとハーブ&スパイスが混在。パレートは果物で言うとオレンジが感じ易い。スムーズな喉越しだが、飲み込んだ直後のパンチはなかなか。余韻は長く、爽やかなハーブ香とメディシナル・ノートが少々。

サイド・バイ・サイドではないので不確かかも知れませんが、以前飲んだA.H.ハーシュ・リザーヴ16年ブルー・ワックスと同様、基本的にハービーな傾向はある気がしました。現行の4〜6年のバーボンが「子供」味だとすると、こちらは「大人」味と言ったところでしょうか。ペンシルヴェニア1974原酒は長期熟成酒にありがちなウッディ・ノートが出過ぎない完璧なバランスのバーボンと評されたりするのですが、私の個人的な意見では長熟の特徴的なタンニンはかなりあると思います。飲んだことのある皆さんはどう思われますか? ご意見ご感想コメントよりどしどしお寄せ下さい。
Rating:88.5/100

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ソサエティ・オブ・バーボン・コニサーズ・カスク・プルーフ(バーボン愛好家協会 樽出原酒、以下SOBCと略す)は、90年代半ばにジュリアン・ヴァン・ウィンクルが日本市場向けにボトリングした長期熟成酒で、今ではユニコーンの一つとされるバーボンです。当時の日本は既にバブル景気は終わっていたと思いますが、アメリカ市場と較べたらまだまだバーボンに大金を注ぎ込む余地があり、プレミアム・バーボンもしくは本品のようなスーパー・プレミアム・バーボンのいくつかは日本市場限定で販売されていました(スタンダードなバーボンでも今よりずっと多くの銘柄が90年代を通して発売されていた)。当時のアメリカではバーボンは下層階級のドリンクのイメージが一般的で、もし長期熟成のプレミアム価格のバーボンを販売しても、購入するのは極く一部の好事家のみだったでしょう。逆に日本ではアメリカへの憧れと共に長期熟成酒をありがたがる下地があったので、利益率の高い日本(や一部のヨーロッパ)向けに輸出していたのです。
このSOBCはスーパー・プレミアムに相応しいよう、コニャック・スタイルのボトルに入れられ、ラベルもワインの影響を感じさせる優雅な雰囲気を醸しています。ラベルにはバッチ・ナンバー、樽入れとボトリングの時期、そしてご丁寧にテイスティング・ノートまで書かれているのも高級感の演出でしょうか。中身のジュースはスティッツェル=ウェラー(オールド・フィッツジェラルド)の原酒を独自に熟成したものだと言われています。ボトリング名義のコモンウェルス・ディスティラリーは、80年代前半にジュリアンがケンタッキー州アンダーソン郡ローレンスバーグの旧ホフマン蒸留所を改名してボトリング施設とした会社です。おそらくスティッツェル=ウェラーで蒸留され眠っていた樽を、ある時そこまで運び、更に自社のウェアハウスで熟成させたのでしょう。

で、上に述べたローレンスバーグでのボトリングから時を経た2000年代の終わり頃には、今度はKBD(ウィレット蒸留所)からSOBCがリリースされました。この初めがジュリアンで後にKBDがボトリングという流れは、ヴェリー・オールド・セントニックやブラック・メイプル・ヒルなどに共通しています。こちらはスティッツェル=ウェラーの原酒ではないとされ、ヘヴンヒル蒸留所の原酒と目されますが、KBDのソースは基本的に秘匿なので、もしかしたら他の蒸留所の原酒かも知れません。こればかりは飲んだことのある方のご意見を伺いたいところです。少なくともローレンスバーグ瓶詰めの物と較べて、カスク・プルーフでのボトリング度数が違い過ぎますから、スティッツェル=ウェラー産を否定する根拠ではあるでしょう(*)。

取り敢えずネットで調べられる限りのSOBCのヴァリエーションを以下に纏めておきたいと思います。おそらく初期リリースの物は94年に発売され、4種類(樽違い)あるようです。

SOBC CP 20 years old
Batch No. 74-241
Date Barreled : April, 1974
Date Bottled : October, 1994
51.8% Alc.
Bottled by Commonwealth Distillery, Lawrenceburg, KY

SOBC CP 20 years old
Batch No. 74-327
Date Barreled : April, 1974
Date Bottled : October, 1994
55.0% Alc.
Bottled by Commonwealth Distillery, Lawrenceburg, KY

SOBC CP 20 years old
Batch No. 74-476
Date Barreled : April, 1974
Date Bottled : October, 1994
51.2% Alc.
Bottled by Commonwealth Distillery, Lawrenceburg, KY

SOBC CP 20 years old
Batch No. 74-706
Date Barreled : April, 1974
Date Bottled : October, 1994
53.5% Alc.
Bottled by Commonwealth Distillery, Lawrenceburg, KY

そして2001年には2種類が発売されたようです。ここまではスティッツェル=ウェラー原酒で間違いないでしょう。初期リリースに較べ味が落ちるという意見も聞き及びますが(**)、ラベルのテイスティング・ノートを担当したマイク・ヴィーチはその味わいを絶賛しています。

SOBC CP 20 years old
Batch No. 80-040
Date Barreled : December, 1980
Date Bottled : March, 2001
54.2% Alc.
Bottled by Commonwealth Distillery, Lawrenceburg, KY

SOBC CP 20 years old
Batch No. 80-045
Date Barreled : December, 1980
Date Bottled : March, 2001
56.1% Alc.
Bottled by Commonwealth Distillery, Lawrenceburg, KY

それから08年と09年にボトラーがKBDとなり、ウィレット蒸留所名義にて瓶詰めし、2種類発売されたようです。しかも熟成年数が20年ではなくなりました。ここまで来るとローレンスバーグ産とは別物と言ってよく、むしろ製品仕様としては現在のウィレット・ファミリー・エステートの祖先といった感があります。

SOBC CP 18 years old
Batch No. 08-74
Date Barreled : March, 1990
Date Bottled : July, 2008
59.7% Alc.
Bottled by The Willett Distillery, Bardstown, KY

SOBC CP 19 years old
Batch No. 09-82
Date Barreled : 3-26-1990
Date Bottled : 7-3-2009
59.4% Alc.
Bottled by The Willett Distillery, Bardstown, KY

以上がネットで把握できるSOBCの一覧です。他にもあるのをご存じの方は情報提供お願いします。

さて、前置きが長くなりましたが、そろそろ飲んだ感想を。今回は宅飲みではなく、バー飲みです。私が飲んだ物は店のマスターによると、その当時出回っていたSOBCを仲間うちで飲み比べて一番美味しかったやつなのだとか。マスターのコレクションされているアンティークグラスに注いでくれました。もはや崇高さが漂っていますね。

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Society of Bourbon Connoisseurs CASK PROOF 20 years old 55.0% Alc.
Batch No. 74-327
Barreled : April, 1974
Bottled : October, 1994
深く甘いキャラメル香と共に渋みのある香り。ブランデーのような芳香。口に含むと55度にしてはアルコール感を感じさせない柔らかさ。味わいはオーキーで湿った地下室を思わせる。ビターチョコとダークチェリーにハーブの余韻。現代バーボンとは異質の焦げ樽感で、なるほどこれが樽香か、という味。古の味がする。
私があまり長期熟成が好みでないのと、少々過大評価の嫌いがある気がするので、ユニコーンとか「聖杯」と言われるバーボンにしては得点は抑えめとなりました。
Rating:88.5/100


*カスク・プルーフ(バレル・プルーフ)の違いは熟成期間中の蒸発率も関係しますが、ローレンスバーグ産とバーズタウン産ほどボトリングの度数に違いがあるのであれば、そもそもバレル・エントリー・プルーフが違うことを示唆しています。おそらくスティッツェル=ウェラーは、130プルーフ程度で蒸留後、114プルーフで樽入れしていたと思われます。そして長期熟成酒はウェアハウスの下層階に保管されるのが一般的なので、そこでは上層階で熟成されたバーボンとは逆にプルーフアップせず、スコッチの熟成のようにプルーフダウンする筈です。そうなるとKBD版SOBCの120に近いプルーフは、125のバレル・エントリー・プルーフを実行する蒸留所の物と推測されるでしょう。

**個人的な味覚や好みを措いての話ですが、ジュリアンに限らず、またスティッツェル=ウェラーに限らず、蒸留所から樽を買う場面を想像してみると、その時に試飲した中で最も美味しいと判断したものを買うのが当たり前でしょう。そして良質な物には限りがあるのだとすれば、ある意味、良い物が早い者勝ちでなくなっていってもおかしくはありません。そう考えると、初期リリースの方が美味しかったという感想は、あながちない話ではないように思われます。

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