
ミルウォーキーズ・クラブさんでの始めの一杯は軽めのライにしました。マーティン・ミルズ・ライです。マーティン・ミルズと言うと24年物のプレミアム・バーボンが有名ですが、それは例外的であって、基本的にこのブランドはボト厶シェルファーのカテゴリーに入ります。ブランドの起源は良く分かりません。かろうじて、初期ヴァージョンは1959年に初めて発売され、ヘヴンヒルはその数年後に国内および輸出品として販売をした、と云う情報はありました。私はその初期の物は画像でも見たことがないです。画像検索で見つけられた比較的古い物では、上述の1999年にボトリングされた24年熟成の物以前、90年代と思しき輸出品の80プルーフでボトリングされたNASの物がありました。既にこの頃にはアメリカ国内では販売されておらず、輸出専用になっていたのではないかと思います。2000年以降でも小売価格の安い最下位のボトルは引き続き販売されていました。また、2010年頃にはアーティストのSHAGがデザインしたオリジナル・ラベルの物があり、ミッドセンチュリーのカルチャーが好きな人には好評でした。これは普通のラベルのマーティン・ミルズより100円ほど高かったらしいです。

で、このライですが、おそらく2000年代半ば頃に流通していたものと思われます。これまた画像検索しても海外物が発見できなかったところからすると、日本への輸出のみなのかも知れません。と言うか、(24年物を除外した)マーティン・ミルズというブランド自体、酒販店のやまやの専売なのかも? 仔細ご存知の方はコメントよりご教示下さい。偖て、次に中身に関してですが…、こういったマイナーなブランドと言うか最下層製品は、宣伝費用を掛けてもらえないため、バックストーリーは語られませんし、製品情報も朧げです。勝手に憶測するに、まだライ・ウィスキーの人気が爆発する前ですから、ヘヴンヒルが年に1日だけライを蒸溜していた当時の少量生産で、地域限定販売だったリッテンハウス・ライの80プルーフやパイクスヴィル・スプリームと大差ないのではないかと思われます。或いはそれらに選ばれなかった樽から造られてるのかも知れない。多分、熟成年数は3〜4年程度でしょう。ヘヴンヒルによると現在の彼らのスタンダードなライ・マッシュビルは51%ライ、35%コーン、14%モルテッドバーリーとのことですが、少し前の情報源だと51/39/10や51/37/12としているものもあるので、もしかすると時代による変遷があった可能性はあります。また、2000年代半ばのボトリングで熟成年数が3〜4年なのが正しいのならば、蒸溜時期は2000年代の初め頃となります。バーボニアンにはよく知られるように、1996年11月9日、アメリカン・ウィスキー史上最大最悪の火災が発生し、バーズタウンのヘヴンヒル蒸溜所は焼失しました。そこでヘヴンヒルは暫くの間、他の蒸溜会社を頼り、ジムビームやブラウン=フォーマンに契約蒸溜をしてもらいました。ヘヴンヒルは1999年にルイヴィルのバーンハイム蒸溜所をディアジオから購入して蒸溜を再開するのですが、生産調整のためかこの契約蒸溜は2008年まで続き、この間ヘヴンヒルのライ・ウィスキーは全てブラウン=フォーマンの元アーリータイムズ・プラントで製造されていたとされます。なので、このマーティン・ミルズ・ライもブラウン=フォーマンが蒸溜したものなのかも知れません。マッシュビルはヘヴンヒルが指定したものと思われるので、上記の何れかでしょう。
そして、なかなかに目立つイエローのラベル、個人的には好きですね。今ではライと言えばグリーンを使ったラベルが一般的となっていますが、マーティン・ミルズ・ライがリリースされた時分はまだそうではありませんでした。おそらく昔のジムビーム・ライのイエロー・ラベルに倣ったのではないでしょうか。そう言えばライに限らず、フォアローゼズも従来象徴的だったイエロー・ラベルが何時の間にかベージュに変化し、アーリータイムズのイエロー・ラベルは消滅しています。新しいアメリカン・ウィスキーが続々と誕生している昨今、イエローのラベルと言うとストラナハンズくらいしかパッとは思い付きません。現代のアメリカン・ウィスキー業界では何故こんなにもイエローの人気がないのでしょうか? 現代アメリカ人には古臭いか安っぽい印象を与える色なのかしら…。まあ、それは扨て措き、最後に飲んだ感想を少しばかり。

Martin Mills Rye 80 Proof
推定2007年ボトリング(瓶底)。ややミンティな香り。しかし、キャラウェイやフェンネルのようなハーブは感じることが出来ない。ドライな味わい。若くて穀物っぽいところが荒々しい印象を残す。新樽由来のバーボンに近しい香味の方が優勢な感じ。全体的にライ・フレイヴァーは希薄で口当たりも軽いが、それは始めの一杯としてこちらの意図通りなので不満はない。また、ハイボールには向いていそう。
Rating:78/100