タグ:日本限定

2021-01-27-09-09-35

現在のバーボン・ブームは「プレミアム」なバーボンがその人気を助長しているように見えます。多くのブランドは長年の主力製品をプレミアム化しました。特殊な環境下で熟成させたり後熟を施したり、高価なボトルに入れたり新規のラベルを貼り付けたり、壮大なストーリーを宣伝して、数量限定や割り当て配給にすることにより、時には100ドル超の高価格帯の製品を追加しています。また、ここ10年の間に登場した多くの新しいバーボン・ブランドも、目新しいボトルや凝ったラベルを用いてプレミアム感を演出し、消費者へのアピールをしています。それらを首尾よく手に入れ、SNSで自慢気に披露するのはよく見る光景です。ワイルドターキーの製品にもプレミアムなマスターズ・キープというシリーズがあります。レアな物を手に入れたり飲むことは、我々の気分を高揚させ、魅惑的で貴重な経験をさせてくれるでしょう。しかし、バーボン愛好家はそのようなプレミアム製品だけでなく、絶対的なお気に入りの安くて旨いバーボンも同時に愛するものです。
そう、ワイルドターキー101のことを言っています。熱烈なターキー信者は、もしも貴方の残りの人生でバーボンを一種類だけしか飲めないとしたら何を選びますか?と訊ねられたら、必ずやワイルドターキー101と高らかに宣言するに違いありません。それは彼らがワイルドターキー101を否定できない価値のある素晴らしい製品であると知っており、他のアメリカン・ウィスキー製造業者には到達できない何かがあると信じているからです。60年以上前、19歳のジミー・ラッセルはケンタッキー州ローレンスバーグの蒸留所で働き始め、後にマスター・ディスティラーに昇進し、今日でも共同マスター・ディスティラーである息子のエディ・ラッセルと共にそこにいます。変転の多い世の中にあって、これは何の誇大宣伝も必要としない紛うことなき伝説と伝統です。過去にワイルドターキーの特別なボトリングは幾つか発売されていますが、バーボン・ブッダと称される男の魂を最も体現するのはワイルドターキー101に他なりません。長らく卓越性の基準であったボトルド・イン・ボンド規格を大幅に上回る熟成期間と、その法定プルーフを僅かに越える1プルーフの追加を行うことで、見た目にも美しい並びの「101」という象徴的な数字をもつバーボンは、常に信頼できる品質を誇りながら何時でも手頃な価格であり続けました。頑固だけど気さく、厳しいけど優しい、まるでジミーのように。

2021-02-18-05-31-03
(2015年の終わり頃から採用されたスケッチ・ターキー・ラベル)

日本人にとってワイルドターキーの定番中の定番と言えば今でも8年表記のある101。1992年以降、アメリカ国内の101からはエイジ・ステイトメントが削除されNASの6〜8年熟成となりましたが、輸出市場の日本では8年物が流通し続けているのです。その理由を或るインタヴューでエディは、日本の消費者は味の判る方が多いからというようなことを言っていました。本当かどうかは怪しいですが、日本向けの建前としてはそうなのでしょう。また或るバーのオウナーの方が宣伝のため来日していたエディに直接尋ねたところ、「日本人は熟成年数でボトルへの評価を変えるから」という趣旨の発言があったそうです。こちらが本音のような気がしますね。いずれにせよ、日本を特別扱いしてくれていることには感謝しかありません。

同時期のエクスポート8年とアメリカ流通NASを飲み比べた海外のターキーマニアの方によると、味わいはどちらもモダン・ワイルドターキーのコア・フレイヴァーを共有し、明確な差はそれほど感じないとのこと。エイジ・ステイトメントの有り難みは確かにありますし、熟成年数の明確な違いはフレイヴァー・バランスを変えますが、寧ろ実際にはバッチングにどのようなバレルが選択されたかの方が重要なようです。ワイルドターキーでは毎年、全てのリックハウスから均等にバレルが選ばれる訳ではありません。各バッチに「収穫」されるバレルは、その時「旬」の限定された選りすぐりのリックハウスから、成熟度と味に基づいて引き出されることが知られています。或る時はタイロンのB、D、H、K倉庫から多く引き出され、別の年はG、M、O倉庫から、また或る年はキャンプ・ネルソンのAとF倉庫から多く引き出されるという具合に。ワイルドターキーは比較的バッチやロット間の味わいの変動が大きそうな印象がありますが、もしかするとここら辺がその理由の一端なのかも知れませんね。
エディ・ラッセルの息子でブランド・アンバサダーのブルースは某掲示板で、2018年のワイルドターキー101には通常の8年より10年原酒が多く含まれていると述べ、ターキー愛好家をざわつかせました。或る著名な愛好家は機会を待ってさっそく「仕事」に取り掛かりました。彼によると、2018年前期の物は2017年の物と比較してプロファイルに大きな違いは見つからなかったらしいですが、2018年後期の物(レーザーコードがLL / GG〜LL / GJの物)はとても優れていたそうです。そして2019年ボトルも概ね良さげな評価に見えます。逆に2020年2月のハンドル付リッター・ボトルは「オフ」バッチだったという報告もネット上で話題になりましたが、これは極めて稀な例でしょう。まあ、これらはNAS101の話。今回レヴューに取り上げるのは日本向け8年101の推定2019年ボトルです。

私はここ最近、ワイルドターキーの限定版やレアブリード等は飲んでいましたが、スタンダードな8年101を飲むのは約2年ぶり。実を言うと、敢えて飲むのを避けていたのです。その理由は、以前投稿したレアブリード116.8のレヴュー時に言及した件が関係しています。
ワイルドターキー蒸留所は旧来のブールヴァード蒸留所から2011年に新しい蒸留施設へと転換しました。新しい施設の生産能力は年間1100万ガロンで、旧蒸留所の2倍以上です。新しいビア・スティルとダブラーは古い物と全く同じ大きさであり、全体的な生産容量の増加はより大きなクッカーとファーメンターから由来しています。新原酒を含むNAS101を飲み比べたアメリカの方によると、どうやら旧原酒よりもナッティな傾向が強いらしい。レアブリード116.8を飲んだ時、フレイヴァー・プロファイルがそれまでのレアブリードとはかなり違う印象を受けました。それはおそらく新しい蒸留施設の6年原酒を多く含むからなのでは?と推測し、ならば日本限定の8年101も単純計算で2019年のロットから劇的に味わいが変わるかも!と楽しみに待っていたのです。で、たまたま近所のスーパーに並んでいたワイルドターキー8年101が2019年ボトリングぽい、じゃあ買ってみるか、と。なので、さっそく注いでみましょう。

2021-01-25-17-35-42
WILD TURKEY AGED 8 YEARS 101 Proof
推定2019年ボトリング。レーザーコードはLL/HJ。スパイシーヴァニラ、香ばしい焦げ樽、クレームブリュレ、ドライアプリコット、チョコチップクッキー。口当たりはオイリーではないがゆるくもない。味わいはかなりフルーティで、僅かなレーズンと微かなチェリー。液体を飲み込んだ直後のスパイシーなキックはなかなか。余韻はややドライなウッド・ノートと穀物が主で、ほんのりナッツが香る。
Rating:86.5/100

Thought:久しぶりに飲んだせいか、あれ?こんなに旨かったっけ!?というのが正直な感想です。熟成感も丁度いいし、バーボンの美味しい基本的なフレイヴァーが各々、実にバランス良く感じられます。ブラインドで試せばもう少し格上の物と間違えそう。唯一、余韻は深みに欠けるのがウィークポイントかな。日本では、ターキーの現行ボトルとオールドボトルを比較して、薄くなったとかコクがないとか、樽のえぐみが出てるとかアルコール感が強いとかよく聞く(見る)のですが、自分にはちょっと信じられません。凄く良く出来たバーボンという印象です。まあ、オールド派の言いたいことは分かりますし、確かに私もそのようなことを言ってしまう時があります。オールドボトルの方がダークチェリーや複雑なスパイス、アーシーなフィーリングの現れが感じ易く美味しい、とか。ですが、オールドボトルはそれらに加えてオールド臭と言うのか古びた風味が強過ぎることも多いです。それに較べると現行品はフレッシュ感が美味しいので、つまりは一長一短…。どっちも愛せばいいんじゃないの?と自戒の念を込めて言っておきましょう。
そして、上述の新原酒の件ですが…、うーん、どうでしょうね、2年前に飲んだ時より美味しくは感じたのですが、それはここ最近、私が自分の苦手な長期熟成の限定版ワイルドターキーを飲み続けていて、久しぶりにスタンダードな8年を味わったからなだけなのかも知れません。ただ、フレイヴァー・プロファイルはそれほど変わったとは感じませんでした。サイド・バイ・サイドで比べてる訳でもなく、記憶と比べてるので曖昧ですが。
このボトルはおそらく2019年10月のロットと思われます。となると、このボトルにはギリギリ新原酒が混和されていない可能性もあり得るでしょう。逆にこのボトルは新原酒で構成されているが、新原酒と旧原酒はそこまでの著しい大差がない可能性もあります。ここはもう一度、2020年か2021年のボトルを飲んでみるしかなさそうです。既にそれらを飲んだことのある皆さんはワイルドターキー新施設の蒸留原酒をどう思いましたか? コメントより感想をどしどしお知らせ下さい。そう言えば、2020年11月には、アメリカの或る州では早くも新ボトル・デザイン(エンボス・ターキー)が流通し始めました。そのうち日本流通の物も切り替わって行くのでしょう。見た目が変わると味も変わったように感じ易いので、またその時に試すのもいいかも知れませんね。

Value:相場は大体2500〜3500円くらいでしょうか。間違いなく購入する価値はあると思います。と言うか、これを愛さず何を愛せと言うのか…(笑)。

2019-09-03-20-07-32

日本で長らく親しまれてきたワイルドターキー12年は2013年に終売となり、それに代わって日本市場でリリースされ始めたのがワイルドターキー13年ディスティラーズ・リザーヴです。熟成年数が一年増えましたが、ボトリング・プルーフが101から91へと下がりました。頑なにワイルドターキーを愛して来たファンからすると、熟成年数は偖て措いても、プルーフの変更に引っ掛かった方も多いのではないかと思います。ターキーは101(ワン・オー・ワン)だろ、と。斯くいう私がそうでした。とは言え、エイジ・ステイトメントを保った長熟のターキーが手軽に飲めるだけでも、ありがたい状況なのかも知れません。そもそも12年101の発売停止は供給維持が難しくなったためと見られ、長期熟成原酒の減少は何もワイルドターキー蒸留所に限った話ではなく、アメリカ国内でのバーボン需要が爆発している昨今では業界全体がそうでしょう。それに穿った見方をするなら、輸出専用だった12年が13年ディスティラーズ・リザーヴへと転換されたのと近い時期に、ダイヤモンド・アニヴァーサリーのリリースやマスターズ・キープ・シリーズのような長期熟成原酒をメインとした限定製品の年次リリース開始という出来事があり、要は長熟ウィスキーの割り当ての変化だと思えなくもない。そんな渦中にあってもなお、どれだけ要望があろうと12年101を国内リリースせず、日本へ向けて13年をアルコール度数が5%低いだけで継続してくれたワイルドターキー(の親会社?)には感謝すべきなのかも。宝物のような12年101は1999年にアメリカ国内での流通がストップした後も長きに渡って日本では容易に手に入りました(勿論、8年のエイジ・ステイトメントを保った101もそう)。それはアメリカでバーボン人気が復活する以前、彼の国の殆どの消費者がプレミアム・バーボンに見向きもしなかった80~90年代の暗黒時代(供給過剰時代)に、せっせと高額なバーボンを輸入してくれた日本に対する感謝の気持ちからだったのかも知れません。いや、そう思いたい。単なるビジネス上の判断だったと解釈するより、その方がロマンがありますから。

さて、そこで今回の13年ディスティラーズ・リザーヴですが、判りやすい熟成年数とプルーフの変更以外にもう一つ特徴的な注目点があります。箱およびバックラベルの文言を以下に引用しましょう。
ジミー&エディ・ラッセルという父と息子の本物の蒸留技術から生まれたワイルドターキー13年ディスティラーズ・リザーヴは、最高のキャラクターを備えたケンタッキー・ストレート・バーボンです。この特別リリースのバーボンは慎重に選択された蒸留者のお気に入りであり、低いプルーフで樽詰めされ、伝説的な「B」ウェアハウスの低層階でゆっくりと熟成されました。そこは卓越した品質のバーボンを造るのに適した涼しい温度、高い標高、大きな空気循環が組み合わさった場所です。メロウなオークのノート、リッチなヴァニラ、洋梨のヒントと長いスパイス・フィニッシュを備えたワイルドターキー13年ディスティラーズ・リザーヴは、ジミー&エディ・ラッセルの世界的に有名な職人気質のショーケースであり、ワイルドターキー・バーボンの力強さと特有のキャラクターを鮮やかに表しています。
2019-10-31-20-54-50

壮大な物言いはご愛敬として、注目はB倉庫の下の方の階で熟成させたと言い切っているところです(*)。これはシングルバレルのケンタッキー・スピリットやアメリカ国内で入手しやすいラッセルズ・リザーヴ・シングルバレルのストアピックのように、例えばG倉庫の4階の何番バレルとまでは場所や樽の特定は出来ないものの、流通量の少ないケンタッキー・スピリットや海外のストアピックが入手しにくい日本人にとって、13年ディスティラーズ・リザーヴはシングルバレルではないとは言え熟成場所による味わいの違いを手軽に経験する機会の提供と言えるでしょう。ワイルドターキー蒸留所のオンサイト(タイロン)とオフサイト(キャンプネルソン)を含めた29の熟成庫は、どれもワイルドターキーのコア・プロファイルは共有するかも知れませんが、それぞれスパイスやベーカリーやフルーツ等のプロファイルのバランスに違いが生じるとされます。またワイルドターキーの熟成庫では、一説には上層階で熟成されるとアーシーに、下層階で熟成されるとフルーティになりやすいという話もありました。Bウェアハウスは、おそらくAウェアハウスと共に1894年頃建てられたかなり古い倉庫の一つです。エディの息子で現在ブランド・アンバサダーのブルース・ラッセルの個人的なお気に入りの倉庫なのだとか。では、そろそろ飲んでみたいと思います。

IMG_20191102_164026_103
Wild Turkey 13 Years Distiller's Reserve 91 Proof
推定2014年ボトリング。ヴァニラ→クレームブリュレ→アーモンドキャラメル、香ばしい焦樽、熟したプラム、洋梨、ライスパイス、湿った木材、塩昆布、ラムネ菓子。基本的に甘い焦樽フルーツのアロマ。口当たりはサラッとしている。パレートはオレンジぽさとハニー。余韻は度数のわりには長めで、ほんのりフルーティな甘味もあるが少々渋く、芳醇とは言い難い。全体的に僅かに薬っぽいノートが感じられる。
Rating:87/100

Thought:正直言って、評価の難しいバーボンだと思いました。私には熟成庫の違いによるプロファイルを云々できる経験はありませんので、前回まで開けていた青12年との比較になりますが、何と言うか、従来までの12年101が有していた最も美味しい部分が欠落しているのに、それでもなお12年101と通低するものも感じ、短絡的に切り捨てられないのです。多分これが101プルーフのボトリングだったとしても、複雑さの点に於いて青12年には敵わなかったのではないかと思います。ですが「較べる脳」でなく単体で飲めば、ワイルドターキーの特徴的な濃厚な炭の香りはあるし、繊細なフルーツ感もあり悪くありません。強いて言うなら、旧来の12年はもっと濃密なヴァニラとダークフルーツを想起させるのに対し、13年は穀物とフレッシュフルーツを想起させます。これはプルーフィング・ダウンの結果であるような気もするし、熟成場所の影響のような気もします。皆さんはどう思うでしょうか? コメントよりご意見お待ちしております。

Value:販売価格は店舗により異なりますが、現行品で概ね5000~6500円程度。私はラベルの新しくなった物を飲んだことがないのですが、個人的にはこれに6500円出すのであれば、8年を2本買うかオークションで旧来の12年を買いたいです。または、クラフトディスティラリーの少々割高だけれど新しい味に挑戦することを選びます。けれども、現8年を3000円、旧12年を12000円とすると、13年の6500円はちょうど中間くらいの価格となり、存在意義のない製品ではないし、妥当なお値段にも思えます。アメリカ人にとっては13年にプレミアム(上乗せ価格)を支払うくらいならダイヤモンド・アニヴァーサリーを購入した方がいいと言われますが、日本人にとっては単純に好みで決めればいいこと。おそらく12年が好きだった人、或いはスコッチも嗜む人にとっては現行8年より購入価値のある製品だと思います。


*実を言うと、このラベルより新しい現行の13年ディスティラーズ・リザーヴの説明文からは、「B」の文字が抜けています。おそらく現在の物は、こちらと同じく倉庫の低層階で熟成されていますが、Bウェアハウス以外からも樽が選ばれるように変更されたものと推測されます。海外のターキーマニアで飲み較べした方によると、品質や基本プロファイルにそれほどの変化はなく、僅かに甘さとスパイスのバランスが異なる程度とのこと。

DSC_0887

アーリータイムズ・プレミアムは日本市場限定の製品です。調べてみると1993年から発売され、1997年に終売になったとの情報がありました。後の2011年リリースで2014年に製造停止となった「アーリータイムズ354バーボン」同様、このプレミアムも短命だった訳です(354の過去投稿はこちら)。どちらも3~4年で製造されなくなったところを見ると、あまり売れなかったのでしょう。

2019-10-25-06-12-23
(アメリカ流通のアーリータイムズ・ケンタッキーウィスキー)

アーリータイムズのアメリカ本国での流通品は、1983年にそれまでの「ストレートバーボン」規格から中古樽熟成原酒を含む「ケンタッキーウィスキー」への転換がありました。そう、我々日本人がバブル時代に大量のバーボンを輸入し、バーボンブームが到来していたあの頃、「バーボンと言えばやっぱりアーリータイムズだよね」と憧れていたバーボンは、既に本国ではバーボンではなくなっていたのです。アメリカに於けるアーリータイムズ・ケンタッキーウィスキーはボトムシェルフの王者だったかも知れませんが、そのブランド・イメージは「古臭くて安い酒」だったに違いありません。恐らくそうした負のイメージを刷新しようとしたのが354バーボンの発売だったと思われます。しかし、ほんのちょっと先走り過ぎたのか、単なるマーケティングの失敗なのか、とにかくその目論みは外れました。製造中止のアナウンスの際にブラウン=フォーマンのスポークスマンは、消費者はアーリータイムズにプレミアムを求めていなかった、という趣旨の発言を残した程です。
一方、アーリータイムズの輸出用製品はケンタッキー・ストレート・バーボンとして継続されました。世界的な知名度は絶大であり、特に日本では確固たる地位と販売量を誇るブランドだったからです。では、その日本ですらそれほど売れなかった(と思われる)アーリータイムズ・プレミアムとは一体何なのでしょうか?

PhotoGrid_1572176699501
ラベルのサイドに書かれた文言はバーボンのありきたりの常套句ばかりで読む価値もないものです。はっきり言えば、ボトルのみから判断できる情報では度数が3%ほど高い43度ということだけ。このプレミアムについて調べていると、或るブロガーさんの記事で「当時価格で1500円」とありました。随分と安くありません? まあ、354バーボンもアメリカでは17ドル前後の販売だったので、「プレミアム」とは言ってもアーリータイムズ自体がバリュー・ブランドだし、ちょっと上位だよ程度の意味しかないのでしょう。1997年発行のバーボン本によると、イエローとブラウンが参考価格で2700円、プレミアムが4000円とあり、実売価格ではないけれどそれなりの差額があります。そして、その本の製品説明によれば、

「プレミアムは、品質へのこだわりをより徹底させた日本限定品。原料を独特の比率で組み合わせ、酵母も専用のものを使っている。熟成が、香りと色、味わいに深みをあたえている。」

とのこと。え? マジで!? 正直言って、この手の本に載っているインフォメーションは疑わしいものが多く、どこまで信憑性があるのか判りません。アーリータイムズ自体の紹介には比較的紙面が割かれてはいますが、97年発行という時期柄か、96年発売のブラウンラベルについて多く語られ、プレミアムに関しては上の引用文だけしか記述はないのです。取りあえずこの件は後で少し触れるとして、このプレミアムという製品、パッケージングがヒドくないですか? プレミアムを謳いながらラベルの色がブラウンとカーキの中間色? え、売る気あるの? スタンダードのイエローより地味になってますけど? プレミアムが販売されていた当時、熟成年数やボトリング・プルーフの違いによってラベルの色の違う2~3種類のヴァリエーションを揃えたバーボンが沢山ありました。その中で、アーリータイムズにも少し度数の高いヴァリエーションがあるのは自然の流れだろうし、ネームバリューだってずば抜けているのだから、プレミアムが売れる潜在能力は大いにあったと思うのです。いくら「水割り文化」の日本人に最も売れているブランドだったとしても、ハイアー・プルーファーが売れる素地はなくはない筈。通常、ボトルやラベル・デザインを変えずにより良質なヴァリエーションもリリースする場合には、上位の物に高価そうに見える派手な色のラベルを使う傾向にあります。スタンダードが白や黒なら、上位のクラスには赤や銀や金などを使うという具合に。ひとえにプレミアムが売れなかった原因はパッケージにあったのではないでしょうか? この渋すぎる色ラベルのアーリータイムズは、どう見てもイエローラベルの廉価版にしか見えず、プレミアム感の欠片もありません。これでは売れる訳がない……と、ここまではプレミアムが売れなかったから終売になったという前提で話を進めました。ですが、逆に順調に売れていたという可能性も考えられます。これについても後で述べることにし、先ずは飲んだ感想を書きましょう。

2019-10-27-20-58-53
Early Times Premium 86 Proof
1993年ボトリング。キャラメル、焦樽、ブラウンシュガー、ダークフルーツ、バナナ、米、ほんのりバター、絵の具。甘い香りにフルーティさが潜むアロマ。澄んだ酒質。口当たりは水っぽいものの風味はしっかりしている。香りにスパイシーなトーンは感じないが、液体を飲み込んだ後には穏やかなスパイスが現れる。余韻は43度にしてはやや長めで、緩やかな穀物の甘さとビタネスが同居。
Rating:84.5/100

Value:これ、美味しいです。ユニークな風味はありませんが、すっきりしつつコクのあるバランスの取れた味わい。スタンダードのイエローより幾分かフルーティで、イエローラベルに感じやすい嫌な風味も薄いように思いました。今でも2000円程度で販売されていれば常備酒としてもいいですね。ただ、残り三分の一で暫く放置していたら、甘味が弱くなって程よい接着剤が前面に来てしまいました。上のテイスティング・コメントはその前に書いたものです。オークションでのタマ数はそう多くありませんが、今のところ高騰してない銘柄なので、2500~3000円程度で落札出来る模様。

Thought:さて、プレミアムの中身に関してなのですが、飲んでみた感想が飲む前の予想をかなり越えていたこともあり、幾つかの可能性を考えてみました。先ずは、上記のバーボン本自体の信用性がなく、件の引用文もテキトーに書かれたデタラメなものだと仮定した場合、

①単純にイエローラベルよりボトリング・プルーフが高いだけ。だが、3度の違いが風味に及ぼす影響は大きい。
②使われている原酒の熟成年数が僅かに長い、もしくはイエローラベルよりクオリティの高い樽が選ばれている。
③イエローラベルとはトーストの具合が違う樽が使われている(*)。

と、考えるのが妥当だと思います。問題はその引用文が信頼できる真実の情報だと仮定した場合です。注目は「原料を独特の比率で組み合わせ、酵母も専用のものを使っている」という部分。酵母は一旦おいて、この前半の文を素直に解釈し、言葉を補うならば、「イエローラベルとは違うプレミアム独自のマッシュビルを使っている」と言っています。私は過去にイエローラベルとブラウンラベルの比較レヴュー(こちら)を投稿し、そこでブラウンラベルのマッシュビルについて紹介しましたが、このプレミアムまでもが全く別のマッシュビルを使ってるとは到底思えないのです。マッシュビル、特にフレイヴァー・グレインであるライ麦の比率は味わいに大きな影響を与えます。違うブランドにするならまだしも、同じブランド、同じラベルデザインの色違いで、通常そこまではしないでしょう。しかも日本だけのために、更には廉価な販売価格なのにです。しかし、今は引用文が正しいという仮定で話を進めています。そこで思い付いた解釈理論が、

④プレミアムはブラウンラベルの前身であり、中身はブラウンラベルのハイアー・プルーフ・ヴァージョンだった。

というものです。これは実際プレミアムを飲んでみてイエローラベルより私好みだったことから思い付きました。何となくイエローよりライ麦の影響を感じるような味の気がしたのです。ですが、私自身は味覚音痴ですし、それくらいの風味の違いはボトリング・プルーフの差や熟成の具合でどうとでもなりそうな気もし、また同時期のイエローとブラウンとプレミアムをサイド・バイ・サイドで飲み較べした訳でもないので自信はありません。あくまで珍説であり可能性の提供という意図しかないのです(飲んだことのある皆さんのご意見、どしどしコメントへお寄せ下さい)。そして、珍説ついでに妄想を膨らませてみると、実はプレミアムはよく売れていたのではないか?とまで思い直し、

⑤プレミアムは実験的に開発され、日本市場で好評だったが、のちに日本人の味覚に合わせて40度にプルーフィング・ダウンし、ブラウンラベルとしてリニューアルされた。

というストーリーまで考え付きました。プレミアムの中止が97年、ブラウンの発売が96年ですから、なくはない推論かなと。まあ、どれもバーボンファンのとりとめのない与太話と思って聞き流して頂ければ幸いです。暇潰しには最適でしょう?(笑)。それと、身も蓋もない言い方ですが、

⑥単に90年代のボトルは今よりレヴェルが高かった。

という説も付け加えておきます。
最後に酵母に関してですが、件のバーボン本によるイエローとブラウンの違いの説明では、イエローラベルは「熟成期間の異なる酵母を4種類混ぜ合わせて」あり、ブラウンラベルは「イエローラベルの4種類の酵母に、性質と熟成期間の異なる3種類の酵母をプラスして華やかさを醸し出す」とあります。これってまるでフォアローゼズ蒸留所のようですよね? ブラウン=フォーマンもこうしてバーボンを造ってるという話を私は他では聞いたことがないのですが、本当なのでしょうか? こちらもご存知の方はコメントよりご教示頂ければと思います。


*ここで何度も言及しているバーボン本のアーリータイムズ・ブラウンラベルの説明では、トーストの加減がイエローラベルとは違う旨が記されています。③はそこからの類推として、プレミアムもそうだった可能性を示唆しました。

DSC_2357

ワイルドターキー12年の歴史は通称「ビヨンド・デュプリケーション(BDと略)」がリリースされた1980年代初頭まで遡ります。85年頃にアメリカ市場ではラベルが通称「チーズィー・ゴールド・フォイル(CGFと略)」に変わりましたが、輸出市場の物は少なくとも4年間ほどBDラベルが継続されました。92年にはアメリカ国内用の12年ラベルはCGFから通称「スプリット・ラベル(分割ラベル)」に変更、しかし、これまた海外用ボトルは90年代半ばまでCGFラベルが継続されています。1999年になるとワイルドターキー12年はアメリカ自国での流通は停止され、輸出市場のみでリリースされることになりました。この年、ターキーが横向きの絵柄になります。輸出用ラベルは、初期の通称「スードゥ・ラベル(疑似分割ラベル)」が1999~2005年、続いて通称「ユニ・ラベル(単ラベル)」が2005~2011年です。2011年からは中核製品全体のデザインのリニューアルを受け、12年もセピア調のラベルへと変更されました。この時に8年は赤、ライは緑、12年は青という色分けに。そして2013年になると遂にワイルドターキー12年101プルーフは製造中止となり、その代替製品として13年熟成91プルーフのディスティラーズ・リザーヴが日本市場限定で発売されています。
2019-06-06-20-41-07

今回のレヴューは、トップ画像と上述の駆け足で辿ったワイルドターキー12年の変遷で判る通り、今のところ12年101最後の物となっている「青12年」です。ターキー12年は今でも多くのボトルがオークションでは出品されていますが、オールドボトルを取り扱う一部の酒販店を除外すると、店頭で平常価格の12年101を見掛けることは皆無と言ってよいでしょう。日本のバーボンファンにとって長らく親しまれた最高品質のバーボンがなくなるのは悲しいことですよね。とは言え日本へ輸入された本数が大量だったのか、どの時代のラベルであれ、オークションでは今でも随時出品されています。ただし、古い時代の物はかなり高騰しており、それなりの出費を覚悟しなければなりません(落札相場は後述)。ターキーマニアによれば、その風味プロファイルは年ごと(もしくはバッチごと)に異なり、古い物ほどダスティなファンキネスが強いとされ評価が高いのですが、どの時代の物でもラベルに関係なく、ほぼ全ての12年101はグレートなクオリティだと言います。では、試してみましょう。

IMG_20190606_211957_672
WILD TURKEY 12 Years 101 Proof
推定2012年ボトリング。濃密なヴァニラ、胡桃、ワックス、干しブドウ、アンティークレザー、クレームブリュレ、鰹節。古びた木材を連想させるトーン。ややまったりした口当たり。液体を飲み込んだ後の程よいスパイス感。余韻はハーブっぽいような薬っぽいようなノートが強め。
Rating:88/100

Thought:甘味や熟したフルーツも感じるものの、ウッディな苦味や薬品のようなニュアンスがややもするとそれらを感じにくくしているような印象。もう少し古い12年に見られる私の好きなアーシーなノートも欠いているように思いました。確かに多くのターキーマニアが言うように古い物のほうが美味しくは感じます。それでも古典的なワイルドターキーのテイストは内包しており、同時期の8年やレアブリードとは比べ物にならないくらい深みのある味です。

Value:近年ワイルドターキー12年のセカンダリー・マーケットでの需要は益々高まっており、オークションを見ていると、2010年代、時々の上下動はあっても基本的には値上がりを続けていると感じます。 オークションでの落札価格には味の評価が如実に反映され、BDやCGFは最近では50000円まで行くときがあり、分割ラベルは20000~30000円程度、疑似分割と単ラベルは10000円前後します。
さて、そこで問題は、この最も「新しい」12年はどれくらいの価値があるのか、ということです。オークション相場は7500~10000円程度。結論から言うと、これはアリかも知れません。
私はバーボンは安くて旨いのが魅力と思っている人間なので、基本的に希少性への対価を支払うのが好きではないのですが、既に製造されていないバーボンに関しては当時の小売価格との比較は意味をなさないであろうことは理解できます。ですが参考までに言うと、私が今回飲んだのは、確か2013年頃に量販店の特売か何かで3500円位で買いました。まあ、そこまで安いのは稀だったかも知れませんが、当時はおよそ5000円程度では買えてたと思います。なので随分ふんだくられるなあ、とは思ってしまいますよ。しかし製造中止となれば仕方がないので、価格を較べるのであれば、現行の限定版であるマスターズキープの小売価格を基準に考えるのが筋でしょう。マスターズキープの方が全体的に12年以上の熟成年数の原酒を使ってはいますが、それらは大体15000円程度します。そこから対比して考えると7500~10000円というのは妥当な価格かなと思ったのです。そしてそれ以前の話として、今はまだオークションに豊富に出品されてるとはいえ、過去の遺産である壮大なワイルドターキー12年は減っていく一方なのですから、あるうちに買っとかなくちゃ、とも思う次第です。ただし、この青12年は流通期間が短かったため、新しめとは言っても案外オークションでのタマ数は多くありません。疑似分割や単ラベルが同程度の価格で買えるなら、敢えて青12年を買う必要はないでしょう。
また、ワイルドターキー12年のライバル?(と言っておきましょう)に、熟成年数とプルーフが同じバーボンのエヴァン・ウィリアムス赤ラベルがあります。人によってはこちらの方が美味しいと言うことはあり得ます。私としてはワイルドターキーの方が少しだけ美味しく感じますが、現行のエヴァン12年なら3500~4000円で購入できてしまいます。さて、この状況下で、なお青12年をプレミア値で買う価値があるのか自問してみると、答えはNoかも知れません。微妙なところです、迷います、迷った末にエヴァンかな…。
現行のエヴァンなら価格差があるので迷いましたが、仮に旧ボトル、つまりバーズタウン産のエヴァン赤とこのターキー青が共に10000円なのだとしたら、迷わずターキーを選びます。と言っても決して旧エヴァン赤を貶してる訳ではありません。両者ともに赤い果実感がありつつ、エヴァンの方がキャラメル香が豊富かつスパイシーで味わいに華やかなイメージがあり、一方のターキーは何と言うかもう少し枯れたような渋い味わいのイメージがあります。古典的なバーボンらしさを求める人なら旧エヴァン赤を選ぶのではないでしょうか。あくまで同じ価格という仮定の上での好みの話です。

13f80daf-bd8e-465c-b7c4-e9f03cd19d4d

Four Roses Super Premium 86 Proof
日本限定のフォアローゼズのトップクラス。ケンタッキー州立200年を記念して1992年から発売されました。スーパープレミアムと書かれているものの、なぜだか通称「プラチナ」と呼ばれています。使われるレシピは、おそらくイエローやブラック、スモールバッチとも異なるものと見られますが、公開されていません。しかし、熟成に関しては明確な指標があるようで、前マスターディスティラーのジム・ラトリッジによると、80%は最低8年以上で20%は10年以上の熟成でなければならない、とのこと。

さて、私はフォアローゼズを唯一無二のバーボンとして評価するのに吝かではありません。だから最上級とされるプラチナを飲むのをすごく楽しみにしていました。けれど、いざ飲んでみると少々拍子抜けという印象が拭えません。確かに美味しく、素晴らしい芳香のバーボンです。チェリー、プラム、青リンゴのフルーツ感にクローブ等のスパイシーさ、オークの力強さもあり、かつスムーズである。でもですよ、どうもスムーズ過ぎる。薄いんですよね、43度では。
プラチナは場合によっては7000円近い値札が付きます。正直な感想を言わせてもらうと、3000円あれば買えるブラックの出来が良すぎて、倍近い値段のプラチナが霞んでいると思います。またフォアローゼズ スモールバッチ45度が3000~4500円程度で買えることを考えると、個人的にはオススメ出来ないバーボンと言わざるを得ませんし、コスパをレーティングに考慮すると、得点を低く見積もらざるを得ません。どうせスーパープレミアムと語るぐらいなら100プルーフでボトリングしてもらいたいです。そうすればもっと旨かったに違いない。いや、せめて94プルーフでもいいのですが…。贅沢な注文なんですかね?
Rating:83/100

2018-09-19-20-07-04

Four Roses Black Label 80 Proof
日本人には馴染みあるフォアローゼズブラック。フォアローゼズのラインナップ中、このブラックとプラチナは日本限定の製品です。気になる中身の配合なのですが、フォアローゼズの誇る五種類のイーストのうち、もっともフルボディになると言われるK酵母を使ったOESKとOBSKの50/50のブレンドとされています。熟成年数は約6年と目されますが、おそらく想定されるフレイヴァープロファイルに達していれば熟成年数に拘ってないでしょう。それが当時のマスターディスティラー ジム・ラトリッジの考えなので。

こちらは、推定90年代後期、もしくは2000年代初頭のボトリングかと思います。プラム、焦がしたオーク、クローヴ、ハチミツ。イエローラベルとは比較にならないほど芳醇な香りと旨味、フレイヴァーの強さは破壊的な美味しさです。80プルーフという低プルーフながら樽香も充分ありスパイシー且つフルーティで値段も安いオススメのバーボン。
Rating:86/100

↑このページのトップヘ