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ワイルドターキー12年の歴史は通称「ビヨンド・デュプリケーション(BDと略)」がリリースされた1980年代初頭まで遡ります。85年頃にアメリカ市場ではラベルが通称「チーズィー・ゴールド・フォイル(CGFと略)」に変わりましたが、輸出市場の物は少なくとも4年間ほどBDラベルが継続されました。92年にはアメリカ国内用の12年ラベルはCGFから通称「スプリット・ラベル(分割ラベル)」に変更、しかし、これまた海外用ボトルは90年代半ばまでCGFラベルが継続されています。1999年になるとワイルドターキー12年はアメリカ自国での流通は停止され、輸出市場のみでリリースされることになりました。この年、ターキーが横向きの絵柄になります。輸出用ラベルは、初期の通称「スードゥ・ラベル(疑似分割ラベル)」が1999~2005年、続いて通称「ユニ・ラベル(単ラベル)」が2005~2011年です。2011年からは中核製品全体のデザインのリニューアルを受け、12年もセピア調のラベルへと変更されました。この時に8年は赤、ライは緑、12年は青という色分けに。そして2013年になると遂にワイルドターキー12年101プルーフは製造中止となり、その代替製品として13年熟成91プルーフのディスティラーズ・リザーヴが一部の国際市場のみで発売されています。
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今回のレヴューは、トップ画像と上述の駆け足で辿ったワイルドターキー12年の変遷で判る通り、今のところ12年101最後の物となっている「青12年」です。ターキー12年は今でも多くのボトルがオークションでは出品されていますが、オールドボトルを取り扱う一部の酒販店を除外すると、店頭で平常価格の12年101を見掛けることは皆無と言ってよいでしょう。日本のバーボンファンにとって長らく親しまれた最高品質のバーボンがなくなるのは悲しいことですよね。とは言え日本へ輸入された本数が大量だったのか、どの時代のラベルであれ、オークションでは今でも随時出品されています。ただし、古い時代の物はかなり高騰しており、それなりの出費を覚悟しなければなりません(落札相場は後述)。ターキーマニアによれば、その風味プロファイルは年ごと(もしくはバッチごと)に異なり、古い物ほどダスティなファンキネスが強いとされ評価が高いのですが、どの時代の物でもラベルに関係なく、ほぼ全ての12年101はグレートなクオリティだと言います。では、試してみましょう。

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WILD TURKEY 12 Years 101 Proof
推定2012年ボトリング。濃密なヴァニラ、胡桃、ワックス、干しブドウ、アンティークレザー、クレームブリュレ、鰹節。古びた木材を連想させるトーン。ややまったりした口当たり。液体を飲み込んだ後の程よいスパイス感。余韻はハーブっぽいような薬っぽいようなノートが強め。
Rating:88/100

Thought:甘味や熟したフルーツも感じるものの、ウッディな苦味や薬品のようなニュアンスがややもするとそれらを感じにくくしているような印象。もう少し古い12年に見られる私の好きなアーシーなノートも欠いているように思いました。確かに多くのターキーマニアが言うように古い物のほうが美味しくは感じます。それでも古典的なワイルドターキーのテイストは内包しており、同時期の8年やレアブリードとは比べ物にならないくらい深みのある味です。

Value:近年ワイルドターキー12年のセカンダリー・マーケットでの需要は益々高まっており、オークションを見ていると、2010年代、時々の上下動はあっても基本的には値上がりを続けていると感じます。 オークションでの落札価格には味の評価が如実に反映され、BDやCGFは最近では50000円まで行くときがあり、分割ラベルは20000~30000円程度、疑似分割と単ラベルは10000円前後します。
さて、そこで問題は、この最も「新しい」12年はどれくらいの価値があるのか、ということです。オークション相場は7500~10000円程度。結論から言うと、これはアリかも知れません。
私はバーボンは安くて旨いのが魅力と思っている人間なので、基本的に希少性への対価を支払うのが好きではないのですが、既に製造されていないバーボンに関しては当時の小売価格との比較は意味をなさないであろうことは理解できます。ですが参考までに言うと、私が今回飲んだのは、確か2013年頃に量販店の特売か何かで3500円位で買いました。まあ、そこまで安いのは稀だったかも知れませんが、当時はおよそ5000円程度では買えてたと思います。なので随分ふんだくられるなあ、とは思ってしまいますよ。しかし製造中止となれば仕方がないので、価格を較べるのであれば、現行の限定版であるマスターズキープの小売価格を基準に考えるのが筋でしょう。マスターズキープの方が全体的に12年以上の熟成年数の原酒を使ってはいますが、それらは大体15000円程度します。そこから対比して考えると7500~10000円というのは妥当な価格かなと思ったのです。そしてそれ以前の話として、今はまだオークションに豊富に出品されてるとはいえ、過去の遺産である壮大なワイルドターキー12年は減っていく一方なのですから、あるうちに買っとかなくちゃ、とも思う次第です。ただし、この青12年は流通期間が短かったため、新しめとは言っても案外オークションでのタマ数は多くありません。疑似分割や単ラベルが同程度の価格で買えるなら、敢えて青12年を買う必要はないでしょう。
また、ワイルドターキー12年のライバル?(と言っておきましょう)に、熟成年数とプルーフが同じバーボンのエヴァン・ウィリアムス赤ラベルがあります。人によってはこちらの方が美味しいと言うことはあり得ます。私としてはワイルドターキーの方が少しだけ美味しく感じますが、現行のエヴァン12年なら3500~4000円で購入できてしまいます。さて、この状況下で、なお青12年をプレミア値で買う価値があるのか自問してみると、答えはNoかも知れません。微妙なところです、迷います、迷った末にエヴァンかな…。
現行のエヴァンなら価格差があるので迷いましたが、仮に旧ボトル、つまりバーズタウン産のエヴァン赤とこのターキー青が共に10000円なのだとしたら、迷わずターキーを選びます。と言っても決して旧エヴァン赤を貶してる訳ではありません。両者ともに赤い果実感がありつつ、エヴァンの方がキャラメル香が豊富かつスパイシーで味わいに華やかなイメージがあり、一方のターキーは何と言うかもう少し枯れたような渋い味わいのイメージがあります。古典的なバーボンらしさを求める人なら旧エヴァン赤を選ぶのではないでしょうか。あくまで同じ価格という仮定の上での好みの話です。

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Wild Turkey 12 years 101 Proof
アメリカ国内では1999年あたりに終売となり、輸出用の製品となったワイルドターキー12年101プルーフ。日本では長らく親しまれたものの、現在では13年熟成91プルーフに取って替わられ、二次流通市場とバー以外ではお目にかからなくなりました。特別な思い入れのある方も多いバーボンが終売になるのは悲しいことですね。

本ボトルは、ちょっと自信はないんですが、推定2002年ボトリングじゃないかなと思います。もっと大きくラベルが分割された昔の12年に対して「擬似分割ラベル」と呼ばれているラベルデザインです。

干しブドウ、オーク、ヴァニラ、塩キャラメル。8年に較べるとだいぶパンチはなく、柔らかい口当たりで、すーっと喉に入っていく。ナツメグやシナモン、タバコの香ばしさが漂い、またラム酒もしくはワイン様のフレイバーが、別樽の後熟なしで出るあたりは圧巻です。余韻にはダスティ・ノートとターキーらしいスパイスネス。個人的には8年派ですが、深みや複雑さは確かに12年の方が上で、おそらくシェリーカスク好きなスコッチ党の方には飲みやすいバーボンでしょう。
Rating:90.5/100

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