バーボン、ストレート、ノーチェイサー

バーボンの情報をシェアするブログ。

タグ:赤ラベル

2022-08-03-19-18-53-124
20240729_231122

今回は、日本では2022年初め頃から出回り始めた、リニューアルされたパッケージのエヴァンウィリアムス12年を開封してみました。従来までと違いゴールドのワックスで封されて高級感が出ましたね。EW12赤ラベルは輸出専用バーボンとして知られ、長きに渡り日本でのみ販売されていましたが、ヘヴンヒルが2013年にルイヴィルのダウンタウンにエヴァン・ウィリアムス・エクスペリエンス(バーボン体験が楽しめるテーマパークのような施設)をオープンすると、スタート時からあったのか或る段階(2015年あたり?)からなのか判りませんが、ギフト・ショップ専売品としてアメリカ国内でも販売されるようになりました。しかし、ヘヴンヒルは日本での一般的な価格よりも遥かに高い価格で販売しました。2017年頃で130ドル、その後150ドルに値上がりしたそうです。ヘヴンヒルはアメリカ国内で高く売るに際し、より高級に見せるため、見栄えを良くするため、安っぽいスクリュー・トップにワックスを掛けたのではないか、と勘繰るアメリカのバーボン愛好家の方もいます。また逆に、SNS上で見掛けたのですが、輸出版とアメリカ国内版を飲み比べ、アメリカ国内版の方が大分美味しかったという趣旨のことを言っている日本のバーボン飲みの方がいました。そこで裏読みすると、もしかしたらアメリカ国内版の方が値段が大幅に高い分、バッチングにクオリティの高いバレルが選ばれている可能性もあるのかも知れません。或いは単なるバッチ違いの差なのか、真相は藪の中です。まあそれは措いて、私としては一つ前のラベルの物とこのゴールドワックスの物とではどのように違うかを較べたいと思い開封しました。では、さっそく飲んでみましょう。ちなみにマッシュビルは78%コーン、10%ライ、12%モルテッドバーリーです。

2025-09-21-23-34-21-400
Evan Williams 12 Years 101 Proof
推定2021年ボトリング(瓶底)。色はダークアンバー。モダンな木材、ガレットブルトンヌ、薄いチェリーキャンディ、一瞬プルーン、フランボワーズ、マッシュルーム、ペッパー。ほんの少しフローラルな香りも。口当たりはややオイリー。口の中ではドライオークが感じ易い。余韻はミディアム・ロングでチャード・オークの香ばしさと僅かに柑橘の爽やかさと苦味が。
Rating:85.5→86.5/100

Thought:開けたてはフレイヴァーが殆ど感じられませんでした。開封から1週間くらい経つと、漸く熟成感のある土っぽい樽の味わいが出て来ました。私が飲んだ一つ前のラベルの物は過去にレヴューを投稿した2016年ボトリングなのですが、それと較べると12年という熟成感を思わせるものが少なくなった印象を受けます。アルコールの刺激や木材のエグみが強く、深みのあるチョコレート感が弱いと言いますか…。正直、2016年ボトリングの頃よりクオリティは少し低下したと思いました。しかし、開封から1年くらい経つと、アルコールのキツさのようなものは多少は和らぎ、味わいに甘酸っぱいフルーツが感じ易くなって美味しくなりました。上の矢印はその事を指しています。1年も待ってられないなら、少なくとも30分は空気に触れさせておくか、ロックで飲んだ方が良いのかも。どうも近年のヘヴンヒルは香りが開くのに時間が掛かるような気がします。参考までに言うと、このEW12と同時期に家で開封していたボトルに、ケンタッキー・アウル・コンフィスケイテッドとワイルドターキー12年があるのですが、実はその2つの方がリッチなフレイヴァーで美味しく感じていました。つまり、このEW12は香りが開いたとて私にとってはその程度だったと言うことです。まあ、バッチ間の差があり得ますので、一概には言えないでしょうが。ゴールドワックスの掛かったEW12赤ラベルを飲んだことのある皆様の感想を募りたいところです。

Value:エヴァンウィリアムス12年ゴールドワックスのアメリカのバーボン愛好家の評価としては、要約すると、これは本当に良いボトルだけれど130〜150ドルもするほど良いボトルではない、しかし日本での40ドルという価格ならバーボンの中で最もお買い得だろう、といった意見が多数を占めます。一方で、130〜150ドルという価格にしてはストーリーのなさや安っぽいボトルやギミックのなさを考えると高く感じるかも知れないが、エヴァンウィリアムズ12年101プルーフは単純にその味わいに基づいて然るべき価格が設定されている、と評している人もいました。では日本に住み、昔から赤エヴァンを享受して来た我々にとってはどうなのでしょう? 私はEW12が2000円代や3000円代で買えていた頃を知っている人間です。最近ではここ日本でも5000円を超えたりします。そして、私の印象としては近年に近ければ近いほど味わいのクオリティは少しづつ下がっているような気がしています。味が落ちたのに値が上がる、これは心理的に辛いことです。とは言え、味わいの面では現代の木材の風味とアルコール感に慣れてしまえば問題はないし、金額の面でもバーボンに限らず何でも値上がってる世の中ですから、EW12は今でも値打ちのあるバーボンに違いありません。昔の物と較べると流石に分が悪くはありますが、それらは二次流通市場で相応に値上がりしているので、現行ボトルも相対的には「安くて旨い」ままと言えます。文句と取られかねないことも書き連ねましたが、このEW12ゴールドワックスはそもそも美味しい範疇に入るので、個人的には購入をオススメします。アメリカでの価格を考えたら、買わなきゃバチが当たるってもんです。但し、日本に於いて予てより築かれてきたエヴァンウィリアムス12年レッドラベルの評価を、このボトルだけ飲んで知った気になるのは良くないと思います。昔の物、特に90年代までの物を飲んだことのないバーボン初心者の方は、何処かのバーで是非ともオールドボトルを飲んでみて下さい。きっとエヴァンウィリアムス12年の真髄を知ることになるでしょう。


追記:聞いたところでは終売なのを輸入元が認めたそうです。なんでもヘヴンヒルの意向だとか。残念ですねぇ…。

PhotoGrid_1544272228080
PhotoGrid_1544258762829

ヘヴンヒル蒸留所の旗艦ブランド、エヴァンウィリアムスの中でもレッドラベルは、バーボン好きは言うに及ばず、スコッチ中心で飲む方にも比較的評価の高い製品です。長らく輸出用の製品(ほぼ日本向け?) でしたが、2015年にアメリカ国内でもヘヴンヒルのギフトショップでは販売されるようになりました。日本人には驚きの120~130ドルぐらいで売られているとか…。日本では一昔前は2000円弱、今でも3000円前後で購入できますから、日本に住んでいながらこれを飲まなきゃバチが当たるってもんですね。

ところでこの赤ラベル12年、一体いつから発売されているのか、よく判りません。80年代後半には確実にありましたが、80年代半ばあたりに日本向けに商品化されたのが始まりなのですかね? 当時のアメリカのバーボンを取り巻く状況からすると、長期熟成原酒はゴロゴロ転がっていた筈です。その輸出先として、バブル経済の勢いに乗り、しかも長熟をありがたがる傾向の強い日本向けにボトリングされたのではないかと想像してるのですが…。誰かご存知の方はコメント頂けると助かります。
さて、今回は発売年代の違う赤ラベルを飲み較べしようという訳でして、画像左が現行、右が90年代の物です。赤の色合いがダークになり、古典的なデザインがモダン・クラシックと言うか、若干ネオいデザインになりましたよね。多分このリニューアルは、上述のギフトショップでの販売開始を契機にされたものかと思います。まあ、ラベルは措いて、バーボンマニアにとっては中身が重要でしょう。言うまでもなく、現行の方はルイヴィルのニュー・バーンハイム蒸留所、90年代の方はバーズタウンの旧ヘヴンヒル蒸留所の原酒となります。

DSC_1074
目視での色の違いは殆ど感じられません。強いて言えば旧の方が艶があるようにも見えますが、気のせいかも。

Evan Williams 12 Years Red label 101 Proof
2016年ボトリング。プリン、焦樽、ヴァニラ、バターピーナッツ、レーズン、莓ジャム、煙、足の裏。ほんのりフルーティなヴァニラ系アロマ。余韻はミディアムショートで、アルコールの辛味と穀物香に僅かなフローラルノート。
Rating:87/100

Evan Williams 12 Years Red Label 101 Proof
95年ボトリング。豪快なキャラメル、香ばしい樽香、プルーン、ナツメグ、チェリーコーク、チョコレート、ローストアーモンド、鉄。クラシックなバーボンノート。スパイシーキャラメルのアロマ。パレートはかなりスパイシー。余韻はロングで、ミントの気配と漢方薬、土。
Rating:87.5/100

Verdict:同じものを飲んでいる感覚もあるにはあるのですが、スパイシーさの加減が良く、風味が複雑なオールドボトルの方を勝ちと判定しました。現行も単品で飲む分には文句ありませんし、パレートではそこまで負けてはないものの、較べてしまうと香りと余韻があまりにも弱い。総論として言うと、現行の方は典型的な現行ヘヴンヒルの長期熟成のうち中程度クオリティの物といった印象。一方の旧ボトルも、バーズタウン・ヘヴンヒルの特徴とされる、海外の方が言うところのユーカリと樟脳が感じやすい典型的な90年代ヘヴンヒルのオールドボトルという印象でした。

Thought:全般的に現行品はクリアな傾向があり、対してオールドボトルは雑味があると感じます。その雑味が複雑さに繋がっていると思いますが、必ずしも雑味=良いものとは言い切れず、人の嗜好によってはなくてもよい香味成分と感じられることもあるでしょう。かく言う私も、実は旧ヘヴンヒルの雑味はそれほど好みではありません。両者の得点にそれほどの開きがない理由はそこです。

Value:エヴァン赤は日本のバーボンファンから絶大な信頼を寄せられている銘柄だと思います。確かに個人的にも、例えばメーカーズマークが2500円なら、もう500円足してエヴァン赤を買いたいです。またジムビームのシグネイチャー12年やノブクリークが同じ価格なら、エヴァン赤を選ぶでしょう。おまけにワイルドターキーのレアブリードよりコスパに優れているし。つまり、安くて旨い安定の一本としてオススメということです。もっとも、たまたま上に挙げたバーボンはどれも味わいの傾向は多少違うので、好みの物を買えばいいだけの話ではあります。参考までに個人的な味の印象を誇張して言うと、腰のソフトさと酸味を求めるならメーカーズマーク、香ばしさだけを追及するならノブクリーク、ドライな味わいが好きならレアブリード、甘味とスパイス感のバランスが良く更に赤い果実感が欲しいならエヴァン赤、と言った感じかと。
問題は旧ラベルと言うか、旧ヘヴンヒル蒸留所産の物のプレミアム価格の処遇です。個人的な感覚としては、上のThoughtで述べた理由から、仮に旧ボトルが現行の倍以上の値段なら、現行を選びます。確かに多くのバーボンマニアが言うように、旧ヘヴンヒル蒸留所産の方が美味しいとは感じますが、あくまで少しの差だと思うのです。それ故、私の金銭感覚では、稀少性への対価となる付加金額を、現行製品の市場価格の倍以上は払いたくないのです。ただし、その少しの差に気付き、その少しの差に拘り、その少しの差に大枚を叩くのがマニアという生き物。あなたがマニアなら、或いはマニアになりたいのなら、割り増し金を支払ってでも買う価値はあるでしょう。

IMG_20180210_224234_311

↑このページのトップヘ