
Georgia Moon Corn Whiskey 80 Proof
フルーツ・ジャーに入ったコーンウィスキー、ジョージアムーン。英語では密造酒のことをムーンシャインと言い、密造酒の造り手をムーンシャイナーと言います。違法な蒸留は夜陰に乗じて月明かりのもとに行われるところから由来している言葉です。このジョージアムーンはちゃんとした蒸留所で違法行為でも何でもなく造られたお酒ですが、そういうイメージを上手く活用したパッケージとなっています。ネーミングといい、瓶に使われるジャーといい、ペーパーバッグ的質感のラベルといい、密造酒文化へのオマージュとも言えそうな独特のカッコ良さ。ラベルには「Less than 30 days old(30日未満の熟成)」と書かれていますが、これはおそらく未熟成の意ではないかと思います。たかが30日以内に樽の出し入れをしてたら手間ですし、中途半端な中古樽が出来てしまいますから。
さて、現在ではヘヴンヒル蒸留所で造られているジョージアムーン、そのオリジンや来歴をネットで調べてみたのですが詳しい情報が見つかりませんでした。けれども、ジョージアムーン(ジョージアの月光)という名前と、年式の古いボトル(70年代あたり?)のラベルに記載された所在地から判断するに、ジョージア州オーバニーで蒸留されていたのではないでしょうか。おそらくそこに、現在でもラベルに書かれているジョンソン・ディスティリング社があったものと推測します(※追記あり)。そしてそれより年式の新しい物(おそらく70年代終わり頃から80年代)には、ケンタッキー州オーエンズボロの記載が見られ始めます。もしかするとメロウコーンを造っていたメドレー蒸留所にジョージアムーンのブランド権が移行してるのではないかと勘繰りました。そして80年代後半から90年代前半のバーボン業界を取り巻く買収劇の中で、メドレー蒸留所は閉鎖となり、どういう経緯か分かりませんが、90年代中頃にメロウコーンとジョージアムーンが一緒にヘヴンヒルのブランドになったのではないか、これが私のたいして根拠のない推理です。まあ、話し半分に聞いておいて下さい(ここら辺の事情に詳しい方はコメントから御教示頂けると幸いです)。
で、お味の方はと言いますと、30日以下の熟成なので……お世辞にも美味しいとは言えません。ストレートで飲むには、本当に酔うだけのためと言った感じです。しかも自家製カクテルのベースとしても少々荒削り過ぎる嫌いがあり、純度の高いウォッカのほうが素人には遥かに使いやすい。けれども、その荒々しさこそムーンシャインの真骨頂ですよね。本ボトルは推定06年ボトリング。
Rating:68/100
追記:どうやらジョンソン・ディスティラリーはヴァイキング・ディスティラリーという事業名を持っていたようです。自らアラバマ州で初めての合法的蒸留所と名乗っていました。ジョージアムーンのオリジナルはここで間違いないと思います。他にも海外のオークションでジョージアムーンと同じジャーに入ったバスタブ・ジンも見かけました(ヴァイキング・ディスティラリー名義)。また、ジョージアムーンで4年熟成100プルーフの画像も見かけました。こちらはマサチューセッツ州ボストンとオーエンズボロの記載があるやつです。そちらだったら、きっとメロウコーンに近い味わいだったろうなと想像しました。