バーボン、ストレート、ノーチェイサー

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今回は、前回まで開けていたフォアローゼズ産ヘンリーマッケンナの近年ボトルと比べてみようと、90年代の同じくフォアローゼズ産の物を開けてみました。ヘンリーマッケンナにフォアローゼズ産とヘヴンヒル産があることについては以前投稿した記事を参照下さい。

見た目としては、液体の色は画像では伝わり難いと思いますが90年の方が若干濃いめです。ラベルのデザイン自体は変わりないものの、微妙に使われる言葉が違ったりしますね。近年物は「kentucky Straight Bourbon Whiskey」、90年の方は「Kentucky's Finest Table Whiskey」となっています。
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そして、これまた画像では判らないと思われますが、この90年は濁ってこそないものの少々曇りが見られます。それと、現行の安いバーボンには見られない微粒子感もあります。では、さっそく注いでみましょう。

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HENRY McKENNA 80 Proof
推定90年ボトリング(瓶底)。色はアンバー。石鹸、オールドファンク、キャラメル、オールスパイス、ヴァニラウエハース、クローヴ。開けたてはソーピーな香り。水っぽい口当たり。パレートはドライで微妙な収斂味も。余韻にも爽やかな清涼感と石鹸ぽいフローラルが。
Rating:77→83.5/100

Thoughts:初めに述べたように近年物と90年物を比較しようとしていた訳ですが、残念なことにこちらのボトル、石鹸の香りが強すぎて較べる対象としては適していませんでした。友達にも飲んでもらったところ「俺的にはそんな悪くないけどね」と言っていたので、大丈夫な人には大丈夫なんでしょうけど、私的には飲み物としてここまで石鹸の香りがするのは好みではありません。また、オールドなファンキネスも強過ぎました。そうした部分を抜きにして言うと、アルコール刺激は少なく、フレイヴァーの密度も近年物より優れていたとは思います。邪魔な臭いがあるとは言え、こちらの方が断然、熟成年数が長そうなダークなテイストは明らかに感じられたので。70〜90年代バーボンには、エントリー・クラスの物にも有り余っていた長熟バレルをブレンドしていたと聞き及ぶのですが、正にそんな感じのコクのある味わいです。但し、甘さとフルーティさはそれ程でもなく、ビターかつドライに傾いてはいます。

…と、ここまで否定的に書いていたのですが、開封から少しづつ飲み1年が経過すると石鹸臭が消えまして、急に美味しく感じるようになりました。上の点数の矢印はそれを示しています。

私が近年物と旧来物を比較したかった背景には、フォアローゼズ蒸溜所の製法が関わっています。周知のように同蒸溜所では現在、2つのマッシュビルとキャラクターの違う5つのイースト菌を使って10種類の原酒を造りますが、それは一体いつから始まったのでしょうか? フォアローゼスは1943年にシーグラムの傘下に入りましたが、シーグラムは酵母の研究に余念がなかったと言われるので、その当時から行われていた製法なのでしょうか? それらははっきりしません。けれど、近年物と90年物を比較することで何か見えることもあるのではないか、と考えていたのです。えー、結果は…よく分かりませんでした(笑)。すぐ上に書いたように長熟ぽさは感じたものの、マッシュビルが「E」なのか「B」なのか、はたまた混合なのか、イーストは何なのか、までは私には全く感じ取れませんでした。強いて言えば、この頃の物を飲んでもハイ・ライぽい印象は受けましたが…ただそれだけです。
以上のような訳で、昔のフォアローゼズ蒸溜所の事情に精通している方はコメント欄よりご教示頂けると幸いです。あと昔のボトルを飲んだことのある方はどういう感想をもったでしょうか、またバーボンの石鹸香についての体験談や考察なども、是非コメント欄よりどしどしお知らせ下さい。

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2019年にラベルを一新したアーリータイムズ。そのラベルはアーリータイムズの創業者ジャック・ビームではなく、中興の祖サールズ・ルイス・ガスリーをフィーチャーしたものになっています。そのことも驚きでしたが、これだけ安価なブランドなのにラベルをただの色違いにせず、ほんの少しデザインを変更しているのも注目点。ブラウンの方はガスリーの横顔の絵がラベル正面に来ています。
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ガスリーについては以前投稿した新イエローラベルのレヴューで紹介してますのでご参照下さい。今回はブラウンラベルを試してみます。ブラウンラベルとイエローラベルの違いについてはこちらを。

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EARLY TIMES Brown Label 80 Proof
2019年ボトリング。ローストバナナのキャラメルソース掛け、焦樽、コーンチップス、接着剤、僅かにフローラル、ペッパー、ほんのりシャボン玉。水っぽく柔らかい口当たり。味わいはイエローよりややスパイシー寄りでさっぱりめ。余韻は短く、少しビター。
Rating:77/100

Thought:どうも昔飲んだブラウンラベルより美味しくない気がしました。私がイエローラベルに感じ易いと思っていたアーリータイムズ独特の嫌な風味を今回のボトルには感じます。また、私の記憶よりフルーティさも幾分か欠けるように感じましたし、余韻も苦いように思いました。以前に投稿したイエローとブラウンを比較する記事では、ブラウンの方を高く評価していたのですが、なぜか新しいラベルになってからのアーリータイムズに関してはイエローの方が美味しかったです。ここ数年で私の味覚が変わったのか、単なる気のせいなのか、それともアーリータイムズのバッチングの差なのか、謎。
ちなみに先日まで開封していたアーリータイムズ・プレミアムと比較すると、バカらしいほどにプレミアムの方が旨かったです…。

Value:否定的なことばかり書きましたが、価格の安さが最大の価値であるバーボンなので、 難癖をつけるつもりはありません。千円ちょっとでこれが飲めるのはありがたい話だと思います。ヘヴンヒルやジムビームの1000円代で購入できるバーボンより風味が濃いと評価する人もいますし、飲んだことのない方は迷わずトライしてみて下さい。しかも是非ストレートで。安いバーボンはハイボール専用などと思わずに。実際のところかなり美味しいですよ?

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今回から数回に分けて「安酒を敬いたまえ」と題して、700〜750mlあたり1500円までのエントリークラスバーボンの飲み比べとレーティングの一覧を作ってみようと企画しました。正確には1500円を少し越える物も含む、1500円前後までと受け取って下さい。ここはジャックダニエルズもワイルドターキーもメーカーズマークもいないチープな世界。もう最低のラインですよ。ちょっと上物を飲んだ後では満足出来っこない。けれど、これも愛せてこそのバーボンマニアだと思うのです。高級品やレア物を飲むだけがマニアじゃない。あなたの口や脳や臓器がバーボンのために出来ているのなら、これらも愛せるはずだ(笑)。

では、蒸留所別に分けまして、今回はイントロダクションとヘヴンヒル蒸留所編となります。

Heaven Hill Distillery◆ヘヴンヒル蒸留所
ヘヴンヒルの通常のバーボンマッシュビルは、コーン/ライ/バーリーがそれぞれ78%/10%/12%と75%/13%/12%という二つの説があります。どちらが正しいのか判断がつきませんので並記させてもらいました。チャーリングレベルは# 3 と言われており、バレルエントリープルーフは125です。

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Heaven Hill 80 Proof
980〜1200円程度
ヘヴンヒル蒸留所はエヴァンウイリアムス黒ラベルをスタンダードなバーボンとして売り出しているようです。そこから考えるとこちらは、それよりも格下のバーボンと言えます。熟成年数はおそらく4年。或いは3年程度かも知れませんね。アメリカではヘヴンヒルのボトルド・イン・ボンド規格のものが売られているようです。昔は「オールド」のついた熟成年数の長いものもありました。
正直なにもコメントが思い浮かばないほど普通。いや、普通に旨いとは言えるのですが、それ以下でもそれ以上でもないと言うか…。うっすら甘く、さっぱりしていて、フルーティーと言うには果実感が足りない感じ。弱々しいキャラメル香は感じますが、穀物っぽさとケミカルなノートのほうが強く感じられます。と言って、くっさーい酒、クセのある酒とは言い難く、癖のないクリアでライトな如何にも現代の安バーボンです。しかし、値段からしたら十分美味しい。
Rating:77/100

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John Hamilton 80 Proof
980〜1300円程度
ジョン・ハミルトンという人はケンタッキーの初期蒸留家のようです。詳しくは調べてもよく分かりませんでした。もしかすると現行の物はアメリカでは売られてないエクスポートオンリーのブランドかも知れません。
これまた殆どヘヴンヒルと同じ印象です。全てがライト。バーボンらしいオーク臭や甘味や酸味があるけれども弱々しい。けれど値段からしたら満足というやつです。
Rating:77/100

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OLD VIRGINIA 6 Year 80 Proof
1300〜1500円程度
ヴァージニアと名付けられてはいるが、ケンタッキーストレートバーボン。ケンタッキー州はもともとヴァージニア州の一部だったので、ヴァージニア州で造られてなくてもこの名前はアリなのかも。日本には流通してませんが他国では同ラベルの8年熟成の物があるようです。原酒は明らかにされてませんが、香りからして典型的なヘヴンヒルのジュースだと思われます。
6年熟成ともなると40度とは言え、上記二つと較べだいぶ香りが豊かになります。スパイシーさも出てきました。しかし芳醇とは言い難く、やはりまだ穀物臭とケミカルな香りが強い。弱いヴァニラにコーン、ビオスリー。 フルーツ感も弱いけれど、安いのでけっこうお買い得感はあり。
Rating:79/100

他にもテンガロンハットという、日本にバーボンブームがあった時代に、日本酒類販売とナショナル・ディスティラーズが共同開発したブランドがあります。おそらく当時はND傘下の蒸留所、その後ジムビームの原酒を使っていたと思いますが、現在ではヘヴンヒルの原酒が使われています。なので、ここに並べても良かったのですが、価格的にみてヘヴンヒルやジョンハミルトンと大差ないと判断して割愛しました。値段は1000円ちょいです。是非お試しあれ。
更にはマークトゥエイン、マーティンミルズ、T.W.サミュエルズ等、ヘヴンヒルの若い原酒を使用したとおぼしきバーボンがありますが、同じ理由で割愛させて頂きます。
また、ヘヴンヒル蒸留所を代表する銘柄エヴァンウィリアムスのブラックラベルは1500円以内で購入できることもありますが、一つ上の価格帯と判断してここには載せてません。
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OLD FORESTER 86 Proof
オールドフォレスターのブランド紹介はこちらをご参照下さい。
このラベルは、比較的長年親しまれた側面に窪みのあるボトルからデザインチェンジされた時のものになります。正確な年数が判らないのですが、多分2000年前後ではないかと。このあとに紙ラベルを使わないモダンなデザインに変わり、現在ではまた古典的なデザインに回帰しています。
こちらのボトルは所謂ダスティとして購入しました。つまり酒屋さんで長期間売れずに埃を被った売れ残りのことです。そのせいだと思うのですが、開封直後は妙に甘味のない味わいで、安いブレンデッド・スコッチを飲んだかと思ったほどです。開封後しばらく経ってやっと甘味も出てきましたが、普通のバーボンに比べるとだいぶ甘味が少なかったように感じました。いくらライ麦比率の高いオールドフォレスターでも、いささかドライ過ぎる印象。上に述べた窪みのあるボトル時代の物はもっと甘味もあり香り高かったのですが…。なので、もしかすると経年劣化していた可能性もありますが一応レーティングしておきます。
Rating:77/100

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