タグ:8年

2023-02-03-19-59-16-351

ジョージディッケル・バーボン8年は継続的な全国リリースの製品として2021年夏にディッケルのコア・ラインナップへ追加されました。同年のナショナル・バーボン・デイに発表されたこの製品がユニークな理由は二つあります。一つは、言うまでもなくバーボンである点です。これはジョージ・ディッケル蒸溜所にとってラベルに「バーボン」の文字がある初めての製品でした。
ジョージディッケルとジャックダニエルズは共に、テネシー・ウィスキーとバーボンが同じものではないことを消費者に強調して来ました。彼らは「ストレート・バーボン」と商品ラインナップの大半に書いておしまいの大手バーボン蒸溜所とは違うのです。この二つのアメリカン・ウィスキーの違いは長年議論され、テネシー・ウィスキーは独自のカテゴリーだと強硬に主張する人もいれば、それは単にバーボンという大きなカテゴリーの一部だと穏和に主張する人もいます。ここでそうした議論を始める積りはありませんが、それまで自らの製品をテネシー・ウィスキーと呼んで来たディアジオ傘下のジョージ・ディッケル蒸溜所がバーボンをリリースしたのは何かしら示唆的でしょう。
そもそもテネシー・ウィスキーはバーボンとラベル付けするための法的要件を全て満たしています。つまり、ジョージディッケル・テネシーウィスキーはバーボンと表示されていませんが、しようと思えばいつでもバーボンとラベルに表示することは可能だった訳です。そして実際のところ、このジョージディッケル8年バーボンとNo.8テネシー・ウィスキーには、エイジ・ステイトメント以外に製法上の差はありません。どちらもコーン84%、ライ8%、モルテッドバーリー8%という同蒸溜所の古典的なマッシュビルで造られている上、バーボンとテネシー・ウィスキーを分けるポイントとして名高いチャコール・メロウイング製法、即ちリンカーン・カウンティ・プロセスも行われています。
では、なぜ著名なテネシー・ウィスキーのメーカーは、突如として自社リリースの一つをバーボンと呼び始めたのでしょう? シニカルな見方をするならば、これはただのマーケティングであって今バーボンが流行っているからバーボンのラベルを貼ってその恩恵に与かろうとしているだけだ、となります。しかし、ブランド側の回答としては、そのフレイヴァー・プロファイルに基づいてのことだと言います。近年そのブレンディングと樽選びの能力でアメリカン・ウィスキー界でスターとなっているカスケイド・ホロウ・ディスティリングのディスティラー兼ジェネラル・マネージャーのニコール・オースティンは、同蒸溜所から産出される特定のバレルは「より伝統的なバーボンの香りに傾いており、ジョージ・ディッケルの他の製品に見られるテネシー・ウィスキーのテイスティング特性を表現していない」と述べました。おそらくディッケル・バーボン8年の核となるアイデアは、古典的なテネシー・ウィスキーと言うかジョージディッケルのプロファイルが現れていないバレルは少なからずあり、寧ろバーボンに近いプロファイルになってしまったそれらに適切な居場所を与えることだったのでしょう。現在市場にはテネシー州で蒸溜された長熟バーボンが沢山あることが知られています。アメリカ以外の国も含む多くのボトラーがそれらをボトリングしているからです。そして、それらは殆どディッケルから供給されていると見られます。このディッケル・バーボン8年は、謂わばそれらの若年ヴァージョンと見ることも出来るかも知れませんね。まあ、それは措いて、オースティンは「バーボンはより親しみやすくバランスの取れたものであり、ディッケル・バーボンは私たちのポートフォリオ全体への素晴らしい入口です」と語っていました。

このディッケル・バーボンがユニークな理由の二つめは、ラベルに大きくあしらわれた「8」がレシピ番号ではなく、文字通りの熟成年数であることです。ジョージ・ディッケル蒸溜所の創業以来、彼らの代表的な銘柄と言えば、ブラック・ラベルの「オールドNo.8ブランド」とホワイト・ラベルの「オールドNo.12ブランド」でした。これらはここ10数年の間に、ラベルのデザインが段階的に少し変化したり、ラベルの色みが変わったり、微妙な名称の変更が施され、それぞれ「クラシックNo.8レシピ」、「スーペリアNo.12レシピ」となっていました。ディッケル・バーボン8年の発売以降のことだと思われますが、紛らわしかったその数字が削除され、これらは現在では単に「クラシック・レシピ」と「シグネチャー・レシピ」となったようです。
FotoGrid_20231116_111223398
その紛らわしい数字のせいで誤解している人も多いのですが、一部の熟成年数が明記されたジョージディッケル製品を除き、No.8と12は発売当初から現在に至るまで全てNAS(熟成年数表記なし)のウィスキーでした。それ故、ディッケル・バーボンはそのラインナップの中でエイジ・ステイトメントという際立つ特徴があるプロダクトになっています。では、そろそろこのテネシー産のバーボンを注いでみるとしましょう。

2023-06-09-20-32-22-531
George Dickel Bourbon Whisky Aged 8 Years 90 Proof
ボトリング年不明、レーザーコードはL1146R60011553。色は中庸なブラウン。焼いた木材、シリアル、シナモン、どら焼きの皮、ベリーソースをかけた杏仁豆腐、微かにグレープ味のガム。ノーズはトースティで清涼感のある香りから、ローストしたアーモンドも僅かに顔を出す。口当たりはサラッとしつつ円やか。パレートはややフルーティでグレイニー。余韻はドライながら香ばしい樽香とナッツが少々。全体的にスパイス感は弱め。
Rating:80→81.5→83.5/100

Thoughts:開封直後の第一印象は8年より若そうというものでした。焦がした樽の深みが感じられず、彼らにとって重要な筈のテネシー・ウィスキーとしてリリースするにはイマイチだったバレルをバーボンとしてリリースしてるのではないか、と邪推するほど薄っぺらい香りと味わいでした。しかもそれは暫く続きました。しかし、開封から3ヶ月くらいすると、アルコールの尖りが落ち着いたのか、香りは甘さを増し、味も甘みを感じ易くなりました。とは言え、フルーツのフレイヴァーは相変わらずそれほどでもなく、またディッケルらしさもさほど感じられず、悪いところも良いところもない無難なバーボンという印象はまだ拭えませんでした。ところが開封から10ヶ月経って残り3分の1くらいになった頃、ぐっとフルーツ・フレイヴァーが増し、アーシーなフィーリングも出て来て美味しくなりました。レーティングの矢印はそのことを指しています。但し、総評としては、主にオークと甘いお菓子が原動力になっていて、フルーツとスパイスは弱く、余韻は少しドライなバランスのミディアム・ボディのバーボンと言ったところかと。
で、件のテネシー・ウィスキーとバーボンがどれほど違うのかに就いては、強いて言うと他のテネシー・ウィスキーを名乗る製品より酸味と苦味が弱く、甘みが感じ易いような気はしました。ですが、飽くまでその程度であり、残念ながらこのジョージディッケル・バーボンは味わいに大きな独自性を発揮しているとは言い難いです。海外のレヴュワーさんのテイスティング・ノートを眺めてみると、ジョージ・ディッケル蒸溜所のウィスキーの特徴としてミネラルとかフリントストーンズ・チュアブル・ヴァイタミンと表現されるフレイヴァーを、このバーボンでもディッケルだと分かる位にあるとする人もいれば、確かに存在するが圧倒的ではないとする人もいます。個人的には後者に賛同です。また、甘さの側面についても意見が別れ、「フィニッシュは歯が痛くなりそうな甘さ」と表現している人もいれば、その感想に「ディッケル・バーボンが甘いのは認めるが、バーボンの平均以上の甘さとは言い難い」と反対している人もいました。私の感想はこれまた後者の方と同じでした。「ディッケル・バーボンは、8年間熟成させ、完璧にブレンドされた手作りのスモールバッチ・バーボン」とされているので、正確なバッチ・サイズまでは判りませんが、もしかするとスモールバッチ故のバッチ間での味わいの変動はあるのかも知れません。

Value:基本的にジョージディッケル・ブランドは「お買い得」で知られ、カスケイド・ホロウ・ディスティリングは比較的安価な価格帯への拘りを強くもっているように見えます。彼らの販売戦略なのでしょうか、旧来のNo.8は約20ドル前後、旧来のNo.12は約25ドル前後と、ほぼ同じ価格帯にフラッグシップ・ブランドが二つあります。そして、それらより上位のバレル・セレクトが45ドル前後、ボトルド・イン・ボンドが40〜50ドル。そこに30〜35ドルのジョージディッケル・バーボンが加わったのです。既に確立されたブランドの中に新たなミドル・クラス品が加わったことで、そのラインナップはますます細分化されました。No.8の20ドルからBiBの50ドルまで僅か30ドル内の間に幾つものウィスキーが犇めき合っている、と。これらの中にあってジョージディッケル・バーボンは、上で述べたように最終的に美味しくはなったものの、テネシー・ウィスキーとバーボンを棲み分けするだけの個性には聊か欠けているように思います。それに、どうせディッケルを飲むならテネシー・ウィスキーの方が良くないか?と思ってしまうのは私だけではないでしょう。日本での販売価格は8000円前後が相場です。味わいからするとちょっと高いなとは思うのですが、昔はもっと安かったNo.12も現在では7000円程度なので、順当なプライシングかな。「バーボン」という魔法の言葉に価値を感じる人、典型的なジョージ・ディッケルの風味に飽き飽きした人、テネシーだがバーボンという一風変わった物を嗜みたい人にはオススメです。

そう言えば、今年のホリデイ・シーズンにはディッケルからテネシー・"バーボン"の特別な18年物がリリースされるようですね。日本で飲めるのでしょうか…。

2023-02-03-01-34-14-802

周知のようにワイルドターキー101のラベルとボトルのデザインが一新されました。現地のアメリカでは、早くも2020年11月にエンボス・ターキーのハンドル・ボトルが登場し、通常のボトルも2021年1月からゆっくりと順次切り替わって行ったようです。しかし、公式なアナウンスは2022年3月に行われました。何らかの理由で新しいボトルが全ての市場に届くまで発表するのを待ったらしい。日本では2022年9月から発売されました。新たにデザインされたボトルのミニマムなラベルは、ウィスキー自体の色を直感的に理解されることを狙っているとされます。また、ブランドのアイコンであるターキーをボトル前面にエンボス加工したのは、洗練されたクラシックなスタイルの表現とプレミアムなイメージの視覚化だそうです。デザインの開発過程で行った日本の消費者を対象にした調査では、「高級感がある」、「現代的になり洗練されている」、「飲んでみたくなる」と言った高い評価を得たのだとか。ラベルに描かれたターキーの変遷だけ簡単に振り返っておくと、初期から長らく続いていたこちらを向いた正面ターキーが1999年まで、続いて登場した横向きターキーのフルカラーが1999〜2011年、同じく横向きターキーのセピア調が2011~2015年、モノクロのスケッチ・ターキーが2015〜2020年、そしてエンボス・ターキーの登場となります(以上の年数はアメリカ基準)。
FotoGrid_20230623_183803282

ワイルドターキー蒸溜所は、旧来のリピー・ブラザーズ、アンダーソン・カウンティ、JTSブラウン&サンズ、ブールヴァード等と呼ばれた蒸溜施設に代わる新しい施設が2011年に始動しています。以前このブログで取り上げた2019年10月ボトリングと推定されるスケッチ・ターキー8年101を買った時、熟成年数を単純計算すると新原酒かも知れないぞと思い、よし新しい味を試してみようじゃないかと意気込んだものの、実際に飲んでみるとどうも旧来のフレイヴァー・プロファイルとあまり変わらない印象を受け、あれ?となりました。そこで、確実を期すため、日本流通の物が新ラベルに切り替わるまで待つことにしました。で、漸く飲む時は訪れ、今回の投稿に至ったのです。このエンボス加工ボトルがリリースされる以前から、日本ではラベルのターキーの色が薄くなるにつれ味も薄くなったなどと揶揄されることもあったワイルドターキー8年101。この度のラベル/ボトル・チェンジにより、遂に紙ラベル上からターキーは居なくなり、色合いは透明になってしまった訳で、その理屈で行くと今ボトルの物が最も味が薄っぺらくなっていることになりますよね? 私はそうした旧来のラベルに対する段階的後退理論?の意見に必ずしも全面的には与しませんが、当ブログにも新しいワイルドターキー8年に対する否定的評価が寄せられていたこともあり、一抹の不安を感じながらの開封になりました。

2023-06-21-19-43-11-909
WILD TURKEY 8 Years 101 Proof
2021年ボトリング。ボトルコードはLL/JK220638(推定2021年11月22日)。チェリーキャンディ、焦げ樽、お菓子の砂糖コーティング、ブラウニー、若いプラム、ミルクココア、杏仁、穀物、胡椒、マッチの擦ったあと。トップノートは爽やかでフルーティ。少しとろみのある口当たりにするっとした喉越し。パレートは甘く、かつピリリと辛い。余韻はややあっさりめでコーンとナッツ。
Rating:85/100

Thoughts:初めての一口を恐る恐る飲んでみると…あれ? そんなに悪くない? もっと酷いのかと想定していたのですが、思っていたより美味しいです。香りも味わいも、中心となるのはオークとフルーツキャンディですかね。ワイルドターキー独特のチェリーノートが、旧来の物が生のフルーツもしくはドライフルーツを想起させるとしたら、新しい物はキャンディを彷彿させると言った感じですが、これはこれで…。強いて言うと、ダークなトーン、タバコ、レザー等の深みを与えるノートが減退して何だかのっぺりとしたような気がします。当ブログにコメントをくださる方が仰っていたのですが、確かにアーシーさが欠けた印象です。それにスパイスの奥行きもなくなり、アルコールの刺激が些かシャープになった感じもします。ただ、これらよりも面食らったのは、キャラメルやヴァニラの風味が希薄になって焦がしてないシュガーの味わいが強くなったところかも知れません。甘味は強く感じるものの、何故か深みのない甘さなのです。海外の方ならコットン・キャンディやアイシングとかグレイズと表現するやつでしょうか。悪い面ばかり論ってしまいましたが、ワイルドターキー特有の強い焦げ樽の風味は健在ですし、かなり甘く、フルーツ感もそれなりにあり、開封から暫らく放置しておくと幾分かフレイヴァーの密度も高まるし、飲み慣れると全然悪くはありません。何より、ワイルドターキーはバッチ間での味わいの変動が大きく(*)、旧ラベルのスパイシー&ドライな傾向のバッチよりかはこちらの方が個人的には美味しいぐらいで、そこは評価すべきかと。そう言えば、辛口のカレーや麻婆豆腐に合わせて食中酒として飲むと、甘味を強く感じる上にスパイスも増強されたようになり、大変美味しく飲めましたね。
比較表_00151203072023
偖て、ワイルドターキー8年がなぜここまで変わってしまったのか。いや、これは日本限定の8年に限った話ではなく、本国アメリカに於ける定番NAS101でも同じようなことが言われています。有名なバーボン系ユーチューバー達は動画のネタにワイルドターキーNAS101の新/旧ラベル比較を行っているのですが、概ね同じ意見になっていました。なので、先ずはNAS101について見ていきましょう。
ワイルドターキー愛好家の第一人者であるデイヴィッド・ジェニングス氏は、新しいワイルドターキーNAS101について2021年1月の段階では、2020年に開けたどのボトルよりも良いとは言えないまでも同じくらい良いものだと語っています。そこから数ヶ月後、「新しいボトル・デザインが小売店の棚にゆっくりと並ぶにつれ、ワイルドターキーNAS101の風味が変わったと言うウィスキー愛好家の声を耳にした」彼は、その主張を検証するために2021年6月に充填されたボトルを購入し、2017年ボトリングのNAS101と比較することにしました。結果は、両者の間には幾つかの細かい違いはあるもののワイルドターキーの味に変わりはなく、25ドルのバーボンが不満や文句を言われる筋合いは全くない、と述べています。2021年NASは「甘く、より"洗練"された」と表現するのが最適で、ワイルドターキーらしい味わいそれ以上でも以下でもない、と。結局のところプルーフ、価格、プロファイルに於いてワイルドターキー101は今でも最高のデイリー・バーボンである、と。
他方、新しいラベル・デザインを採用した2022年3月ボトリングの物に失望した或る方は、海外の有名な某掲示板にワイルドターキー101の年代別4本(2022年NAS、2020年NAS、2008年エクスポート8年、2006年NAS)の飲み比べを投稿しました。そこで「2020年の物には古いものから幾つかのキー・エレメンツが欠けているものの、まだ家族的類似性が見られ」、「2006年や2008年のボトルから2020年の物まで一直線の線を引くことが出来る」が、「2020年と2022年の物との間には紛れもない溝がある」と述べています。2020年と2022年はどちらも2011年に稼働した新しい設備で蒸溜されているにも拘らずです。そこで彼の最終的な推測は、蒸溜が悪くなったのではなく、若いものをボトリングしているからだと思う、と云うものでした。NAS101の裏ラベルには「6~8年まで」の熟成がなされている旨が示されていますが、これは法的拘束力のある記述ではないため、実際には4年程度の若いウィスキーをブレンドすることは可能であり、2022年のボトリングには6年未満のバレルがダンプされているのではないか、と。
お気付きのように、この両者の試飲しているボトルのロットには半年以上もの差があります。なので、両者の個人的な味覚や趣味嗜好は一旦措いて、取り敢えずその発言を信頼出来るものとして捉えると、味わいは2021年を通して徐々に変化して行ったか、或いは2021年後半辺りのボトリングから一気に変化したかのどちらかではないかと思います。件の某掲示板に「新しいラベルの最初の数本はそれなりに良かったので、この変化はラベルの変更と同時のものではないと思う」とのコメントがありました。ややこしいことに、どうやら中身が変わったのとラベルが変わったのは完全には一致しないようです。私はワイルドターキーの味わいの変化をシンプルに新しい蒸溜施設の原酒に切り替わったからだと思っていたのですが、どうも事はそう単純ではないらしい。NAS101が6〜8年熟成(数年前にエディ・ラッセルは平均7年半と言っていた)で、新施設の稼働が2011年と言うことは、2019年に新蒸溜所原酒100%になっていてもおかしくはなく、それなら2019年に不味いという評判が出てもいいのに、何故か2021年になってから味が落ちたようではないですか。だからこそ某掲示板のWT飲み比べスレッド投稿者さんは味の落ちた原因を新しい蒸溜施設に求めるのではなく、バッチングの平均熟成年数の低下に求めてる訳で…。昔からワイルドターキー蒸溜所はマッシュビルもその他の製造方法も何十年も変わっていないとしばしば主張して来ました。これは、長い年月の間には清掃のし易いファーメンターに変わったり、職人の勘に頼っていたパートがコンピューター制御に変わったり、高性能なフィルターが導入された等はあっても、穀物の粉砕や発酵時間や蒸溜メソッドなどの基本的なバーボンの製造方法は変わっていない、そういう意味でしょう。なので、取り敢えず穀物の選定、イースト、蒸溜プルーフやバレル・エントリー・プルーフ、チャー工程の時間などは変わっていないと推測されます。また、新ワイルドターキー蒸溜所へツアーに行った方々による内部の写真を閲覧すると、メインとなるビア・スティルの銅製部分などは年季が入ってるように見え、もしかすると以前の施設から引っ越しさせただけのようにも見えます(※ここら辺の事情を実際に見学ツアーへ行って知ってる方はコメントよりご教示下さい)。もしこれらの想定が正しいのであれば、新蒸溜所原酒のクオリティが著しく落ちるとは考え辛く、確かにバッチングに選ばれたバレルがヤンガーだから味が落ちたと思いたくなります。ワイルドターキー蒸溜所マスター・ディスティラーのエディ・ラッセルの息子ブルースが2018年頃に公にしたコメントでは、当時のNAS101の最新バッチには7~10年熟成のバーボンが含まれていたとされています。もしこれが数年に渡って続き、2021年頃になって、或いは新ボトルに切り替わる頃に、突如10年原酒をブレンドしなくなったとすれば、話の辻褄は合ってはいることになるでしょう。
しかし、日本限定の8年101は? これは文字通り最低8年熟成であり、それを飲んでもNAS101と同じような変化を感じるということは、若いウィスキーが原因ではなく、新蒸溜所由来のウィスキーそれ自体にあると考えるしかないのでは? 上述のように、私が2019年10月ボトリングと推定される旧ラベル8年101を飲んだ時、味わいが劣っているようには思えませんでした。ところが今回の新ボトル8年101は僅かに劣っているし、何よりフレイヴァー・プロファイルが異なります。今回のボトルは推定2021年11月ボトリングです。この二つの間の物を私は飲んでないので、一概には言い切れないかも知れませんが、先ほど取り上げたNASとほぼ一緒の軌跡を辿っているように見えます。では8年101に、NAS101についてのバッチングに使用されるバレルの平均熟成年数の低下という仮説を応用すると、8年101の味の落ちた原因は、昔のものは10年超の原酒がブレンドされていたが今は完全に8年原酒のみとなったから、とでもなりますよね。え、じゃあ旧来の8年101て、ちょうど良い熟成加減の8年にコクと崇高性を与える長熟原酒を少し混ぜた至高のバランスをもったバーボンで、しかも安いというお値打ち品だったの? いや、まさか…。
先程から言及しているWTを飲み比べるスレッドの投稿者さんは、スタンダードな101の衰退がより高級なワイルドターキーの表現に対する需要の高まりに関係している可能性を示唆しています。NAS101が品質を落としたと思われる一方で、少なくともレア・ブリードは優秀な状態を維持し続けているところから、彼の推測ではNAS101を犠牲にして、6年、8年、12年の大量のバレルを必要とするレア・ブリードに6〜8年熟成の良質なバレルを振り向けているのではないか、と。確かに、レア・ブリードに限らず、今はどこの蒸溜所もシングル・バレル・プログラムに力を注いでおり、ケンタッキー・スピリットやラッセルズ・リザーヴのストア・ピックのシングル・バレルに良質のバレルが振り分けられている可能性はあるかも知れません(**)。毎年リリースされるマスターズ・キープだって比較的高齢のバレルを使用し、それなりの数量が販売されています。近年ではラッセルズ・リザーヴ13年の導入もありました。或いはバーズタウン・バーボン・カンパニーがフュージョン・シリーズ等のブレンドにWTバレルを使っているとされ、そこに良い樽の一部が引き抜かれているかも知れないという推測もあったりします。日本でも新ボトルの切り替えと同時に12年101も復活していますよね。12年101は13年ディスティラーズ・リザーヴの後継な訳ですが、仮に生産量が同量だとすると、91プルーフと101プルーフの違いから、必要なバレル数は12年101の方が多くなります。ところで、私は自宅で様々なバーボンやライ・ウィスキーを混ぜたオリジナル・ブレンドのアメリカン・ウィスキーを作ったりして遊ぶのですが、短期熟成のちょっと物足りないバーボンに、長熟もしくはオールド・ボトルのバーボンをほんの少し加えるだけでもコクや敢えての雑味を与えることが出来、なかなか飲みごたえのあるバーボンになったりします(***)。そうした実体験から言うと、上で見たような、スタンダード101より高級な路線の拡大によって古いバレルの供給は大幅に減り、結果、NAS101と8年101に振り分けられていた長熟原酒が取り除かれ、その味わいは弱体化したという憶測は案外的を得ているようにも感じられます。とは言え、これは新しい蒸溜所が旧来と同等の品質のウィスキーを生産することが出来ると仮定した意見です。バーボンの製造方法に味の違いを生み出す変更があったのなら、私個人には知る術がありません。事情通からの何かしらの情報が入るのを待ちましょう。既に新しいボトルのワイルドターキー8年を飲んだ皆さんは、どういう感想や意見をもちましたか? どしどしコメントお寄せ下さい。

Value:一部のバーボン愛好家にとってワイルドターキー101は永遠の定番でした。人によっては毎日飲むバーボンでさえあったでしょう。いや、バーボンしか飲まない愛飲家もウィスキー全般を嗜む愛飲家も、淑女も紳士も、礼儀正しい人も無作法者も、老いも若きも、肉体労働者も知識労働者も、ジミー・ラッセルが何者であるか知ってる人も知らない人も、汎ゆる人々がワイルドターキー101を頼りになる相棒として購入し飲んで来た筈です。私とて、8年101とは限りませんが、何かしらワイルドターキー蒸溜所のボトルを開封済ボトルのローテーションに必ず組み込んで来ました。それが…確かに何かが変わってしまった、従来品のファンからすると良くない方向に。想い返せば、ラベルのターキーが正面から横を向いた時も、カラーがセピア調のモノクロームに変化した時も、味わいが劣化したと言う人がいました。今回の変化はその比ではない劣化だと考える人もいるでしょう。慣れ親しんだWT101のスパイスがないとか、失われたライのフレイヴァーを求めてフォアローゼズのSmBを飲まなければならなくなったとか、間違って81プルーフを買ってしまったのかと思ったとか、まるで別の蒸溜所で造られたような味わいだとか、もう買わないとまで言う人もいますから。ワイルドターキー蒸溜所のエントリー・レヴェルの製品は、価格以上の価値のある逸品から、もはや価格相応の品質になったのかも知れない。しかし、このボトルはジムビームでもフォアローゼズでもメーカーズマークでもジャックダニエルズでもない味がします。それはこのボトルを購入するのに十分な理由になるのではないでしょうか? ウィスキーの世界ではわりと一般的に、現行ボトルよりも古いボトルの方が味が良いと語られたりしますが、これは飽くまで古い味を知っている人にのみ起きる現象です。これからワイルドターキーを飲もうとする人には、きっと何の問題もない…と信じたい。
私? 勿論、定期的に買いますよ、今後のバッチで何か変わるかも知れませんから確認のためにもね。但し、買う頻度は少なくなると思います。それは味わいが変化したからではありません。殆どのウィスキー愛好家にとって最も重要なのはウィスキーの品質でしょうが、私にとってより重要なのはブランドのイメージを体現するボトルとラベルでした。2010年代に起こったアメリカのバーボン・ブームは、2020年代に入っても衰えるどころか益々活況を呈しており、その勢いは留まるところを知らず、様々なブランドが新しい潮流に棹さしてボトルやラベルを刷新しました。新しく誕生したブランドにはネオ・ヴィンテージ感と呼べるような肌触りがあるものも多いですが、古典的なバーボン・ブランドが刷新を図る場合、古色蒼然としたラベル・デザインを端正でシンプルに変える傾向にあると思います。おそらく新たに愛好家になった人は高級感のあるスタイリッシュな物を求めているのでしょう。エライジャクレイグの新ボトルやウェラーの新ラベルを初めて見た時にも思いましたが、どうもアメリカの一般消費者の感覚と私の感覚には大きな隔たりがあるようで…。私はスタイリッシュで洗練された高級感をワイルドターキーに求めていません。正直言うと新しいボトルは買いたくなくなるデザインなのです(****)。皆さんの新ボトルに対する印象はどうなのでしょう? これまたコメント頂けると幸いです。


*スタンダードな101のバッチングに使用されるバレルは1000以上とされ、非常に巨大なものですが、それでもバッチ間には多少のばらつきが生じます。バッチ毎に味が違う理由としてよく挙げられるのは、次の2点です。一つは、ワイルドターキーはウィスキーの熟成に伝統的な木材とメタル・クラッドの組み合わせによるリックハウスを使用していますが、その全てが毎年「旬」を迎える訳ではないこと。つまりその時々で良いと判断された特定のリックハウスからバッチングに使用されるバレルが引き出されるので、結果、フレイヴァー・プロファイルが異なってしまいます。もう一つがバレル・エントリー・プルーフの低さです。ワイルドターキーの115バレル・エントリー・プルーフは、熟成後のバレル・プルーフが凡そ110〜120の間に収まり、そこから101プルーフへ希釈されるので、より一般的な125バレル・エントリー・プルーフを使用するブランドと比べると水の量は少なめになります。水を増やせばプロファイルの再現性は高まり、逆に水が少なければより多くのフレイヴァーが得られる分ばらつきが生じ易い訳です。

**最近ボトリングされた通常の?ラッセルズ・リザーヴ10年とケンタッキー・スピリットはあまり良くないという発言も掲示板のコメントで見かけました。

***他にも、一般的なバーボンにライ・ウィスキーを少し混ぜると、ハイ・ライ・マッシュ・バーボンの味わいのようになったりして面白いです。よくフルーツ味のジュースとかで果汁1〜5%とかありますよね。あれって、それだけじゃ大した意味なくね?と思いがちですが、意外と効いてる可能性はあって、短熟バーボンに長熟バーボンを5%程度入れると、途端に飲み易くなったりします。ここで紹介したのは、言わばフレイヴァー剤のように長熟ウィスキーやライ・ウィスキーを使用するテクニック?です(笑)。皆さんも興味があれば試してみて下さい。

****勘違いされるといけないので念のため言っておくと、私はマスターズ・キープのボトルは大好きです。あれは本当に高級だからいいのです。そういう意味で言うと、12年101にエンボスト・ターキー・ボトルは何の不服もありませんでした。ただ、スタンダードなワイルドターキーにあのボトルは自分的にはピンとこないし、違和感を払拭できないだけなのです。

2022-01-17-09-11-27
(画像提供K氏)

ウィレット・ファミリー・エステート・シングルバレルのバーボンとライのリリースは、アメリカン・ウィスキー市場で最もカルト的な人気があり、「ユニコーン」と呼ばれるウィスキーの代名詞的存在です。パピー・ヴァン・ウィンクルやバッファロー・トレース・アンティーク・コレクションと同じか、或いはマニア筋にはそれ以上に評価されています。WFEはプライヴェート・バレル・セレクション・プログラムのラベルであるため、それぞれのストアや様々なウィスキー・ソサエティのピック、輸出のみのオファリング、チャリティー・ボトル、蒸溜所のギフト・ショップでのリリース等がありますが、当該のコミュニティに属しているか小売業者または個人とのコネがないと、法外な価格を支払わずにボトルを購入することは難しいです。一部のスモールバッチのWFEを除いて、シングル・バレルに関しては常に需要が供給を遥かに上回っており、今後もその傾向は続くと予想されます。
当のアメリカ、また世界的にそのような状況の中、日本でも一部の輸入業者や酒販店のストアピックが入荷され即完売となる現状に於いて、日本で最も数多くのウィレット・ファミリー・エステートが飲める場所と言えば、ウィレット蒸溜所と親交のある豊橋のバーボン・バー、ゲモーを措いて他にありません。ゲモーと言えばウィレット、ウィレットと言えばゲモーなのです。
2022-01-17-09-12-55
(画像提供K氏)

今回取り上げるのはお店の25周年を記念している「GEMOR 2021」です。ゲモーさんセレクトのWFEと言えば、名高いのは以前20周年記念の時にリリースした「C70A」でした。そちらはバーンハイム・ウィーターの20年熟成でしたが、こちらのバレル・ナンバー「2103」はウィレット蒸溜所の代表銘柄オールド・バーズタウンのシリーズで使用されるハイ・コーン・バーボン・マッシュビル(79%コーン、7%ライ、14%モルテッドバーリー)を使った自社蒸溜原酒となっています。バレル・エントリーは125プルーフだそう(「19xx-21xx(125p)」)。
WFEは導入された当初、全て調達されたバレルからボトリングされていました。1980〜90年代のアメリカン・ウィスキー低迷期には、オープン・マーケットへの需要は殆どなく、ハイ・クオリティなウィスキーが安く手に入りました。それらを購入するNDPは競争相手があまりいないので、基本的にどんな年数のバレルでも選ぶことが出来たと言います。このブランドの初期の評価を伝説的なものにした要因は、そうした優れたバレル(特に長熟の)を惜しげもなくバレルプルーフ、アンチルフィルタードにてボトリングしたことにあったでしょう。バーンハイム蒸溜所のウィーテッド・バーボンはそのうちの一つだった訳です。2012年からウィレット蒸溜所は再び蒸溜を再開し、彼らのオリジナル蒸溜液で満たされたバレルは熟成を続け、今日ではそれらを使った様々なレシピの4〜8年熟成のWFEシングルバレルが市場に出回って来ました。
この大変貴重なWFEを飲めるのは、例によってバーボン仲間のK氏よりサンプルを提供頂けたお陰。画像提供も含めてこの場でお礼申し上げます。こちらからは大したお返しも出来ないにも拘らず、本当にいつもありがとうございます、感謝の極みです! では、飲んだ感想を少しばかり。

PhotoGrid_Plus_1642445988109
(画像提供K氏)
WILLETT FAMILY ESTATE BOTTLED SINGLE BARREL BOURBON "GEMOR 2021" 25th ANNIVERSARY 8 Years 122.6 Proof
GEMOR 零号樽
Barrel No. 2103
2021年ボトリング。ややオレンジがかったアンバー。グレープ、マヌカハニー、スウィートグレイン、蜂蜜レモン、柑橘、木質の酸、ローストコーン、バターを塗ったトーストしたパン。バレルプルーフにしては刺激が少なく滑らかな口当たり。味わいはフレッシュフルーツ。余韻は豊かな穀物とビターチョコ。

オールド・バーズタウンのスタンダードやボトルド・イン・ボンド、エステート・ボトルドと同系統の頗るフルーティなアロマや味わいを感じました。それらと較べてプルーフィングや熟成年数の違いから、こちらの方がもっとダークな味わいかと予想していたのですが、むしろ溌剌としたブライトな樽感が印象的でした。おそらく開封からさほど時間が経ってない状態での試飲なので、今後もう少しフレイヴァーに変化はありそうな気はしますね。
Rating:89/100

2021-03-14-21-07-20
PhotoGrid_Plus_1640650607610

今回はジムビーム・ブラックがまだ8年熟成だった頃の物を取り上げます。ラベルに描かれた歴代のビーム家マスター・ディスティラーの中に、現在のフレッド・ノーがいません。まだブッカー・ノー存命中の物です。ブラック・ラベルのブランド紹介は過去投稿のこちらを、ブッカー・ノーについてはこちらを参照ください。

DSC_0276
JIM BEAM BLACK 8 Years 86 Proof
推定1999年ボトリング。濃密なキャラメル、香ばしい焦げ樽、コーン、サワークリーム、オールドファンク、サイダー、ビターヌガー、タバコ、レーズン。アロマは強いキャラメルと甘酸っぱいフルーツと地下室っぽいオールド臭が主、開封から暫くするとヒネ臭は消えフローラルが出てきた。口当たりは度数の割にはとろみがありつつサラッともしている。舌では甘味を、口蓋全体では甘酸っぱいベリー系の旨味を感じ易い。余韻は比較的さっぱりめだが、コーンの気配とビタネスは長続きする。
Rating:85/100

Thought:開封した途端、ああ懐かしい匂い…って思いました。90年代のジムビームやヘヴンヒルやエンシェントエイジのような安バーボンの「らしい」感じを想い起させたのです。2000年代後期や2010年代前期のブラック・ラベルと較べると、フレイヴァーの密度が高い?気がしました。オールド臭も過剰でなければ崇高性を高めてくれますから、このボトルに関しては全然アリな程度で美味しかったです。ボトリング・プルーフは低いので、それが余韻の物足りなさにも繋がっているのかなとは思いますが、まあジムビームのライト感と思えば…。

Value:現行のエクストラ・エイジドより遥かに旨いのは間違いありません。オークション等の二次流通市場で高騰している銘柄でもないので、案外狙い目かも?

2021-01-27-09-09-35

現在のバーボン・ブームは「プレミアム」なバーボンがその人気を助長しているように見えます。多くのブランドは長年の主力製品をプレミアム化しました。特殊な環境下で熟成させたり後熟を施したり、高価なボトルに入れたり新規のラベルを貼り付けたり、壮大なストーリーを宣伝して、数量限定や割り当て配給にすることにより、時には100ドル超の高価格帯の製品を追加しています。また、ここ10年の間に登場した多くの新しいバーボン・ブランドも、目新しいボトルや凝ったラベルを用いてプレミアム感を演出し、消費者へのアピールをしています。それらを首尾よく手に入れ、SNSで自慢気に披露するのはよく見る光景です。ワイルドターキーの製品にもプレミアムなマスターズ・キープというシリーズがあります。レアな物を手に入れたり飲むことは、我々の気分を高揚させ、魅惑的で貴重な経験をさせてくれるでしょう。しかし、バーボン愛好家はそのようなプレミアム製品だけでなく、絶対的なお気に入りの安くて旨いバーボンも同時に愛するものです。
そう、ワイルドターキー101のことを言っています。熱烈なターキー信者は、もしも貴方の残りの人生でバーボンを一種類だけしか飲めないとしたら何を選びますか?と訊ねられたら、必ずやワイルドターキー101と高らかに宣言するに違いありません。それは彼らがワイルドターキー101を否定できない価値のある素晴らしい製品であると知っており、他のアメリカン・ウィスキー製造業者には到達できない何かがあると信じているからです。60年以上前、19歳のジミー・ラッセルはケンタッキー州ローレンスバーグの蒸留所で働き始め、後にマスター・ディスティラーに昇進し、今日でも共同マスター・ディスティラーである息子のエディ・ラッセルと共にそこにいます。変転の多い世の中にあって、これは何の誇大宣伝も必要としない紛うことなき伝説と伝統です。過去にワイルドターキーの特別なボトリングは幾つか発売されていますが、バーボン・ブッダと称される男の魂を最も体現するのはワイルドターキー101に他なりません。長らく卓越性の基準であったボトルド・イン・ボンド規格を大幅に上回る熟成期間と、その法定プルーフを僅かに越える1プルーフの追加を行うことで、見た目にも美しい並びの「101」という象徴的な数字をもつバーボンは、常に信頼できる品質を誇りながら何時でも手頃な価格であり続けました。頑固だけど気さく、厳しいけど優しい、まるでジミーのように。

2021-02-18-05-31-03
(2015年の終わり頃から採用されたスケッチ・ターキー・ラベル)

日本人にとってワイルドターキーの定番中の定番と言えば今でも8年表記のある101。1992年以降、アメリカ国内の101からはエイジ・ステイトメントが削除されNASの6〜8年熟成となりましたが、輸出市場の日本では8年物が流通し続けているのです。その理由を或るインタヴューでエディは、日本の消費者は味の判る方が多いからというようなことを言っていました。本当かどうかは怪しいですが、日本向けの建前としてはそうなのでしょう。また或るバーのオウナーの方が宣伝のため来日していたエディに直接尋ねたところ、「日本人は熟成年数でボトルへの評価を変えるから」という趣旨の発言があったそうです。こちらが本音のような気がしますね。いずれにせよ、日本を特別扱いしてくれていることには感謝しかありません。

同時期のエクスポート8年とアメリカ国内流通NASを飲み比べた海外のターキー・マニアの方によると、味わいはどちらもモダン・ワイルドターキーのコア・フレイヴァーを共有し、明確な差はそれほど感じないとのこと。エイジ・ステイトメントの有り難みは確かにありますし、熟成年数の明確な違いはフレイヴァー・バランスを変えますが、寧ろ実際にはバッチングにどのようなバレルが選択されたかの方が重要なようです。ワイルドターキーでは毎年、全てのリックハウスから均等にバレルが選ばれる訳ではありません。各バッチに「収穫」されるバレルは、その時「旬」の限定された選りすぐりのリックハウスから、成熟度と味に基づいて引き出されることが知られています。或る時はタイロンのB、D、H、K倉庫から多く引き出され、別の年はG、M、O倉庫から、また或る年はキャンプ・ネルソンのAとF倉庫から多く引き出されるという具合に。ワイルドターキーは比較的バッチやロット間の味わいの変動が大きそうな印象がありますが、もしかするとここら辺がその理由の一端なのかも知れませんね。
エディ・ラッセルの息子でブランド・アンバサダーのブルースは某掲示板で、2018年のワイルドターキー101には通常の8年より10年原酒が多く含まれていると述べ、ターキー愛好家をざわつかせました。或る著名な愛好家は機会を待ってさっそく「仕事」に取り掛かりました。彼によると、2018年前期の物は2017年の物と比較してプロファイルに大きな違いは見つからなかったらしいですが、2018年後期の物(レーザーコードがLL / GG〜LL / GJの物)はとても優れていたそうです。そして2019年ボトルも概ね良さげな評価に見えます。逆に2020年2月のハンドル付リッター・ボトルは「オフ」バッチだったという報告もネット上で話題になりましたが、これは極めて稀な例でしょう。まあ、これらはNAS101の話。今回レヴューに取り上げるのは日本向け8年101の推定2019年ボトルです。

私はここ最近、ワイルドターキーの限定版やレアブリード等は飲んでいましたが、スタンダードな8年101を飲むのは約2年ぶり。実を言うと、敢えて飲むのを避けていたのです。その理由は、以前投稿したレアブリード116.8のレヴュー時に言及した件が関係しています。
ワイルドターキー蒸留所は旧来のブールヴァード蒸留所から2011年に新しい蒸留施設へと転換しました。新しい施設の生産能力は年間1100万ガロンで、旧蒸留所の2倍以上です。新しいビア・スティルとダブラーは古い物と全く同じ大きさであり、全体的な生産容量の増加はより大きなクッカーとファーメンターから由来しています。新原酒を含むNAS101を飲み比べたアメリカの方によると、どうやら旧原酒よりもナッティな傾向が強いらしい。レアブリード116.8を飲んだ時、フレイヴァー・プロファイルがそれまでのレアブリードとはかなり違う印象を受けました。それはおそらく新しい蒸留施設の6年原酒を多く含むからなのでは?と推測し、ならば日本限定の8年101も単純計算で2019年のロットから劇的に味わいが変わるかも!と楽しみに待っていたのです。で、たまたま近所のスーパーに並んでいたワイルドターキー8年101が2019年ボトリングぽい、じゃあ買ってみるか、と。なので、さっそく注いでみましょう。

2021-01-25-17-35-42
WILD TURKEY AGED 8 YEARS 101 Proof
推定2019年10月ボトリング。レーザーコードはLL/HJ。スパイシーヴァニラ、香ばしい焦げ樽、クレームブリュレ、ドライアプリコット、チョコチップクッキー。口当たりはオイリーではないがゆるくもない。味わいはかなりフルーティで、僅かなレーズンと微かなチェリー。液体を飲み込んだ直後のスパイシーなキックはなかなか。余韻はややドライなウッド・ノートと穀物が主で、ほんのりナッツが香る。
Rating:86.5/100

Thought:久しぶりに飲んだせいか、あれ?こんなに旨かったっけ!?というのが正直な感想です。熟成感も丁度いいし、バーボンの美味しい基本的なフレイヴァーが各々、実にバランス良く感じられます。ブラインドで試せばもう少し格上の物と間違えそう。唯一、余韻は深みに欠けるのがウィークポイントかな。日本では、ターキーの現行ボトルとオールドボトルを比較して、薄くなったとかコクがないとか、樽のえぐみが出てるとかアルコール感が強いとかよく聞く(見る)のですが、自分にはちょっと信じられません。凄く良く出来たバーボンという印象です。まあ、オールド派の言いたいことは分かりますし、確かに私もそのようなことを言ってしまう時があります。オールドボトルの方がダークチェリーや複雑なスパイス、アーシーなフィーリングの現れが感じ易く美味しい、とか。ですが、オールドボトルはそれらに加えてオールド臭と言うのか古びた風味が強過ぎることも多いです。それに較べると現行品はフレッシュ感が美味しいので、つまりは一長一短…。どっちも愛せばいいんじゃないの?と自戒の念を込めて言っておきましょう。
そして、上述の新原酒の件ですが…、うーん、どうでしょうね、2年前に飲んだ時より美味しくは感じたのですが、それはここ最近、私が自分の苦手な長期熟成の限定版ワイルドターキーを飲み続けていて、久しぶりにスタンダードな8年を味わったからなだけなのかも知れません。ただ、フレイヴァー・プロファイルはそれほど変わったとは感じませんでした。サイド・バイ・サイドで比べてる訳でもなく、記憶と比べてるので曖昧ですが。
このボトルはおそらく2019年10月のロットと思われます。となると、このボトルにはギリギリ新原酒が混和されていない可能性もあり得るでしょう。逆にこのボトルは新原酒で構成されているが、新原酒と旧原酒はそこまでの著しい大差がない可能性もあります。ここはもう一度、2020年か2021年のボトルを飲んでみるしかなさそうです。既にそれらを飲んだことのある皆さんはワイルドターキー新施設の蒸留原酒をどう思いましたか? コメントより感想をどしどしお知らせ下さい。そう言えば、2020年11月には、アメリカの或る州では早くも新ボトル・デザイン(エンボスト・ターキー)が流通し始めました。そのうち日本流通の物も切り替わって行くのでしょう。見た目が変わると味も変わったように感じ易いので、またその時に試すのもいいかも知れませんね。

Value:相場は大体2500〜3500円くらいでしょうか。間違いなく購入する価値はあると思います。と言うか、これを愛さず何を愛せと言うのか…(笑)。


追記:こちらを投稿後、知人よりLL/GDのレーザーコードを持ったフラスク・ボトルの物を頂きましたので、追記の形で少し感想を書いておきます。

推定2018年4月ボトリング。ややオレンジがかったアンバー。キャラメリゼ、香ばしい焦げ樽、炭、コーン、ペッパー、僅かにフローラル、栗、オレンジが少々。口当たりはややオイリー。パレートは甘みもあるが刺激的なスパイシーさも。余韻はミディアムショートでドライかつ最後に苦み。
Rating:84.5/100

ここで取り上げている推定2019年のボトルと比べると、ダークなフルーツ感が欠け、香ばしさに偏っている印象でした。サイド・バイ・サイドで較べてはいないのですが、明らかにフレイヴァーのバランスが異なります。私としては完全にLL/HJボトルの方がクオリティが高いと思いました。これ、アロマは心地良いのですが、味わいと余韻が平坦過ぎです。オールドボトルのワイルドターキーと比較して現行ボトルを異常に低く評価する人はこれと同等の物を飲んでいるのではないか?という疑念が湧きますね。

IMG_20200511_162756_668
PhotoGrid_1587820761949
WILD TURKEY 101 Proof
今回の投稿もバー飲みなのですが、こちらは偶然か故意か居合わせたバーの常連であり、Instagramで繋がりのあるTさんより自身のボトルキープをご馳走して頂きました。私と一緒に行ったツレの分まで頂戴しまして、Tさんの太っ腹に感謝です。このお方、バーボンをビールのように飲めてしまう酒豪で、お酒に弱い私からしたらバケモンのような人です(笑)。

推定80年代後半ボトリング。2000年以降とは異なるアーシーなフィーリングとパフューミーなアロマのある時代のターキー。以前、他のバーで同じくらいの年代の物を飲みましたが、こちらのほうがカビっぽさを感じなかったですね。ボトル・コンディションの差でしょうか。どちらにせよターキー好きにとっては「間違いない」代物です。
Rating:88/100

IMG_20180728_000231_339


今宵の一曲はウィリー・ハイタワーの「ウォーク・ア・マイル・イン・マイ・シューズ」。ジョー・サウス作曲の名曲で、エルヴィス・プレスリーの歌唱も有名ですが、私にとってはウィリーのヴァージョンこそがこの楽曲の最高傑作だと思ってます。もともとポップソウルぽいフィーリングのサザンロックと言えそうなオリジナルを、リック・ホールのフェイムスタジオが完璧なサザンソウルに仕立て上げてますね。

ジョーやエルヴィスのような白人シンガーにはない重厚な歌声と節回し、南部流儀のホーンアレンジとリズム隊が織り成すサウンド、歌詞のメッセージ、楽曲のキャッチーさ、全てを兼ね備えていると言っても過言ではないでしょう。

ウィリーはサム・クックに最も影響を受けたシンガーですが、持ち味はサムよりもう少しディープ。サムがシルクやビロードと形容されたなめらかな歌声なのに対し、ウィリーは少々ザラついたテイストがあり、喩えると麻?ですかね(笑)。そこがまたいいのですが。

DSC_1032_crop_378x379

で、上に述べた歌詞のメッセージと言うのは、一言で言えば「その人の事を判断(批判)する前に相手の立場に身を置いてみようよ」と言うこと。


"Walk a Mile in My Shoes"
『俺の靴で1マイル歩いてみろよ』

If I could be you and you could be me
もし俺がお前でお前が俺なら
For just one hour
たった1時間でも
If we could find a way to get inside
俺らの内側に潜り込むやり方が見つかれば
Each other's mind
互いの心に

If you could see you through my eyes
もしお前が俺の目を通して自分を見れたら
Instead of your ego
お前自身の代わりに
I believe you'd be, surprised to see
お前は見て驚くだろう
That you've been blind
今まで盲目だったって

Walk a mile in my shoes
俺の靴で1マイル歩いてみろよ
Walk a mile in my shoes
俺の靴で1マイル歩いてみろよ
Before you abuse, criticize, and accuse
誹謗中傷ばかり言って非難する前に
Walk a mile in my shoes
俺の靴で1マイル歩いてみろよ


さて、合わせたバーボンはジムビームブラック8年のちょっと古いやつです。やっぱりジムビームはこのラベルデザインがしっくりきますね。まだマスターディスティラーがブッカー・ノーの時代の物で、ラベルのサイドの肖像画にフレッド・ノーが描かれてません。現行のブラック、エクストラエイジよりも少し長い熟成期間の贅沢な(?)仕様は、まだバーボンブームがアメリカで巻き起こる前だから出来たのでしょう。

PhotoGrid_1532724212354

アメリカ南部産のケンタッキーバーボンと極上のサザンソウルの組合せは無敵ですよね。では、今宵はこれにて。

IMG_20180710_051019_736

値段が安いのに高いアルコール度数で人気のファイティングコック。エヴァンウィリアムスやエライジャクレイグと同じくヘヴンヒルディスティラリーが造っています。2015年には6年の表記は消え、現在ではNASとなりました。90年代までは6年ではなく8年が流通しており、クラシカルな紙ラベルがカッコよかったです。更に2000年代までは日本限定で15年物も流通していました。

このバーボンのオリジンは何処にあるのか知りたくて調べたのですが、全くその手のソースがヒットせず、ヘヴンヒルがそもそもオリジナルなのか他の蒸留所から取得したのか一向にわかりません(※追記あり)。ただ70年代物と言われるボトルの写真をみるとケンタッキー州ローレンスバーグと記載があります。一体何という蒸留所で造られていたのでしょうね。更に60年代と言われるボトルにはコネチカット州スタンフォードの記載があります。そこに蒸留所があったのか、それともただのボトリング施設の場所なのか判りません。また、ファイティングコックのラベルでメリーランド・ライ・ウイスキーがあるのも見つけまして、それにもコネチカット州スタンフォードと記載があります。こうなるとヘヴンヒルがオリジナルではないと考えていいような気がします。
あと余談ながら、ライ・クーダーがスライドギターで使うスライドバーの一つにファイティングコックの瓶を使っていたそうです。

さて、このバーボン、ネット検索にて日本語で書かれた何らかの情報を見ると、かなりの割合で「小麦バーボン」だと書かれているのを発見します。それは個人やバーのブログだったり、酒販店の商品説明だったりします。小麦バーボンというのは、メーカーズマークのような原料にライ麦を使わず小麦を使うバーボンのことです。海外のサイトで調べてみると、ファイティングコックを小麦バーボンだとしている情報は一つもありません。逆にハイ・ライ・マッシュビルだとしているものは少数ありました。 私が飲んでみた限り、ファイティングコックは小麦バーボンでもなければ、ハイ・ライ・マッシュビルでもなく、ロウ・ライ・マッシュビルのコーン多めのバーボンに感じました。はっきり言えばエヴァンウィリアムス等と同じマッシュビルに感じます。これはどういうことなのでしょうか?
ネットの情報はコピペの連鎖が殆どですから、或る一説がほぼ同じ文言で多く散見されるのは仕方ありません。しかしファイティングコックが小麦バーボンというのはちょっと信じがたい。あるバーのブログでは、6年は小麦バーボンで、15年はライ麦少なめコーン多めのマッシュビルだから味が違うのだという主旨の記述がありました。単発リリースのブランドやファミリーリザーブとかファミリーエステート、またはシングルバレルと言うならいざ知らず、いくら15年が日本限定の製品だとしても、量産されかつ継続性のあるブランドでそれをされたらアイデンティティーに欠ける気がします。そもそも熟成年数が倍も違えば味が違うのは当然でしょう。
また、ある酒販店の商品説明では、ファイティングコックのホームページに「キックを与えるために原料にライ麦ではなく、小麦を使ってるのだ」と書かれている、と述べられているのです。ええ!? 一般的に小麦はソフターな酒質になる特徴があるとされているのに?  普通キックを与えたいならライ麦を使うのでは?  慌ててヘヴンヒルや日本の輸入元のブランド紹介を調べるとそのような記述は現在では見られませんでした。可能性としては、昔は小麦バーボンだったが現在ではそうではない、というのも考えられます。けれど、それを本国のアメリカ人がまるで知らないというのはちょっと解せません。確かにヘヴンヒルのバーンハイム蒸留所では小麦バーボンも造っています。それはスティツェル=ウェラーから引き継いだオールドフィッツジェラルド系のどちらかというとマイルドなバーボンに使用されます。常識的に考えて荒々しい闘鶏がモチーフのバーボンにそれを使うのは意味が分からなくないでしょうか?

大事なことなので、もう一度繰り返します。ファイティングコックを小麦バーボンとしているのは日本人だけです。海外では、ファイティングコックはヘヴンヒルのスタンダード・マッシュビル(コーン75%/ライ13%/バーリー12%、また他説では78%/10%/12%)を使用して造られている、というのが一般的認知です。上に述べた60〜70年代のような古いものはどうか判りませんが、少なくとも近年のヘヴンヒル産の物は小麦は使われていないと思ってよいでしょう。では、そろそろテイスティングへ。

Fighting Cock 6 Years 103 Proof
2013年ボトリング。まずは強めのアルコール臭、弱めのキャラメル香、ややソーピー。クリーミーな口当たり。穀物感とコーンウィスキー感が強い。正直言ってマチュレーションピークの前なのは否めないが、ハイ・プルーフなので満足感は高く、お値段を考えればグッドバーボン。特に開封後しばらくして香りが開くと少しフルーティーになり、かなり美味しい。
Rating:84/100

Fighting Cock 8 Years 103 Proof
94年ボトリング。飲んだのが10年以上前なので細かいことが言えないが、ストロングかつウェルバランスだったように思う。俗に言う思い出補正はあるかも知れない。
Rating:86/100

追記1:その後、アバンテというファイティングコックの輸入元のホームページに「バーボンウイスキーとは一般的にトウモロコシ、ライ麦、大麦麦芽が原料だが、ファイティング・コックはトウモロコシと小麦を使った原酒を選んでいるので、コシの強さがある。」と書かれているのを発見しました。もしかするとこれが、日本での「ファイティングコック小麦バーボン説」の直接的な情報源であるのかも。と言うより、それが輸入元の記述であるからには、そもそも蒸留所から提出された情報に何か誤解を与えるような説明がされていたのではないか、と考えるのが自然な気がしてきました。というのも、有名なバーボン掲示板のファイティングコックのスレッドで見かけたのですが、或る方のコメントによるとファイティングコックのウェブサイトに「殆どのバーボンは小麦を使って造られるが、このバーボンにはキックを与えるためにライ麦を使っている」という主旨のことが記載されている、と言うのです。は? 殆どのバーボンは小麦で造られてませんけど? この投稿は2011年にされています。もしこのコメントが本当なら、少なくともその当時までは、ファイティングコックの公式ウェブサイトで不適切な表現がなされていた可能性があります。そして私が本文で取り上げたように、日本の或る酒販店はファイティングコックのホームページから「キックを与えるために原料にライ麦ではなく、小麦を使ってるのだ」と引用して商品説明をしています。これ、言ってることは反対ですが、文章の言い回しが似ていますよね。実際にはどちらも間違っているのですが、どうやら往年のファイティングコックの公式ウェブサイトに、そんな言い回しがあったのは間違いなさそうです。もしかするとヘヴンヒル蒸留所が当時雇っていたPR会社の担当者がバーボンのことをあまり知らなかったのかも知れません。

追記2:古いファイティングコックについて記事執筆時より少々明らかになった情報があります。こちらを参照下さい。

a82faa6f-01ca-413a-9e8e-0e4c3e24a8d7
JIM BEAM BLACK DOUBLE AGED 8years 86 Proof
ジムビームラインナップのホワイトラベルの上位に位置するブラックラベル。現在では「EXTRA-AGED」と書かれ、NAS(No Age Statement)ながら熟成期間は6年程度とされ、日本では80プルーフにてボトリングされています(アメリカでは86proofのようです)。
で、その少し前まで流通していたスタイリッシュなデザインのボトルですが、混乱を招くような表現が使われています。ホワイトの4年熟成に対してブラックは8年熟成だから「DOUBLE AGED」と2倍の意味であるのは話が分かりやすい。ところが同じデザインのボトルで6年熟成のブラックがあるのですが、それには「TRIPLE AGED」と書かれているのです。ダブルの要領でいけば3倍の12年熟成になりそうなのにそうではない。無理矢理解釈すれば、ストレートバーボンと名乗るために必要な最低熟成年数の2年の3倍という意味かな?とは思えますが、どっちかに統一しろよッという突っ込みは免れないでしょう。その声が聞こえたせいなのか、今は上に述べた「EXTRA-AGED」に落ち着いたみたいです。
さて、肝心のお味のほうですが、これは美味しい。ホワイトでは味わえないリッチなフレイヴァーとスイートネス。甘さに振れた味わいながらスパイシーさとフルーティーさとシリアル感のバランスが良く、これが2000円程度ならお買い得だったと言うしかありません。
Rating:84/100

DSC_0727

エヴァンカッパースティルDSC_0965
エヴァンカッパースティルDSC_0963
エヴァンカッパースティルDSC_0964
EVAN WILLIAMS COPPER STILL CERAMIC  7 Years 90 Proof
1981年に発売されたものと言われています。エヴァン・ウィリアムスが当時使っていた蒸留器を再現したものなのでしょうか。とは言え中身のジュースはポットスティルで蒸留したものではないです。甘いキャラメル香と、現行バーボンとは異質の雑味のある風味は、オールドボトルの醍醐味ではあるものの、どうもエグみが強くて苦手な味でした。もしかすると劣化してたのかも知れませんね。飾りに買ったのでいいですけど。
Rating:73/100


エヴァン黒8年DSC_0823
エヴァン黒8年PhotoGrid_1368531601859
エヴァンウィリアムズ黒3PhotoGrid_1368531016917
EVAN WILLIAMS Black Label 8 Years 90 Proof
94年ボトリング。なんか松脂っぽい風味のする今ではあまりないタイプのバーボンでした。古いお酒は保管状況により味がだいぶ異なる気がします。劣化とまでは言いませんが、どうも本来の味ではなかったのではないかと思います。
Rating:81/100


エヴァン赤12年DSC_0832
エヴァン赤12年PhotoGrid_1368531830434
エヴァン赤12年PhotoGrid_1368531685676
EVAN WILLIAMS Red Label 12 Years 101 Proof
2009年ボトリング。逆算するとバーズタウンにあったヘヴンヒル・ディスティラリーが火事で焼失して、ルイヴィルのバーンハイム・ディスティラリーを買い取る間に蒸留された計算になるので、中身はブラウン=フォーマンの所有するアーリータイムズのプラントで蒸留されたものかなと想像します。なんとなくいつものヘヴンヒルより幾分かフルーティな気がするのは気のせいでしょうか。これは旨いです。
Rating:87.5/100


エライジャクレイグ12年DSC_1093
ELIJAH CRAIG 12 Years 94 Proof
95年ボトリング。あっさりしつつコクのあるタイプで、穀物感とフルーツ感、甘味とスパイシーさの加減、度数どれをとってもバランス型かなと思います。2000年代後期から2010年代初頭の物を飲んだ時も、その印象は変わりませんでしたが、僅かに90年代の物の方が美味しかった気がします。
Rating:86.5/100

↑このページのトップヘ