タグ:82.5点

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2016年、ビーム社は彼らのフラッグシップ・ラインであるジムビーム・ブランドを新しいラベルとボトル・デザインに変更しました。ちょうどその年から発売され始めたのがジムビーム・ダブルオーク・トゥワイス・バレルドです。
その製品名にある言葉に注目すると、先ず「トゥワイス・バレルド」と言うのはダブル・マチュアードの言い換えだと思います。ダブル・バレルドと言っても同じで、要は語義的に見て2回樽で熟成させていると言うこと。一回目の樽熟成の後に追加でもう一回樽熟成させる手順を指しています。総称として「フィニッシング」と知られるこの熟成技法は、バーボン・ウィスキーの中で近年最も成長したカテゴリーかも知れません。日本では二段熟成とか後熟とか追熟と呼ばれます。スコッチ・ウィスキーではもっと前から定着しており、ウィスキー愛好家には説明不要でしょう。このバーボンで寧ろ注目すべきは「ダブル・オーク」の方です。バーボンのフィニッシングは、一般的にスタンダードなアメリカン・オーク樽で熟成させた後に別の種類の樽、概ねシェリー、ポート、ラム、もしくはビール樽などで熟成させることで、バーボンのフレイヴァー・プロファイルに複雑なレイヤーを加える手法ですが、このダブル・オークは同じ種類の樽でもう一度熟成させることで既に在るフレイヴァーを増幅させるのです。

バーボンは焦がしたホワイト・オークの新しい樽で熟成することで、少なくとも50%から多ければ70%程度の風味を獲得すると見られています。熟成中のウィスキーが木材から引き出すフレイヴァーは、樽の内部をどのようにトースティングしたりチャーリングするかである程度は決まるとされ、樽の調達先であるクーパレッジではマイルドなトーストからヘヴィなチャーまで加熱具合を制御して、顧客の蒸留所の望むフレイヴァーに微調整することが出来ます。それゆえチャー・レヴェルは蒸留所の特定のフレイヴァーに於ける特徴的な要素の一つとなるでしょう(但し、殆どのバーボンは#3〜#4のチャー・レヴェルであり、それ以上は限られた実験的なバレル・エイジングでしか使用されていない)。そこで誰かが考えつきました。新しい焦がしたオーク樽での熟成を2回行うのはどうだろうか、と。これはなかなか目新しい発想だったと思われます。
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アメリカで初めて公に新樽を2回使用したのはテネシー州のプリチャーズ・ディスティラリーではないかと見られています。この小さな蒸留所はクラフト・ウィスキーのブームが沸き起こる何年も前の1997年に開業し、早くも2002年頃にはダブル・バレルド・バーボンを限定発売していたようなのです。この手法のメジャーで継続的なリリースは、10年後の2012年に発売され始めたウッドフォード・リザーヴのダブル・オークドでした。このバーボンには、通常よりも時間を掛けてトースティングし、逆にチャーリングはごく軽くした特別に準備されたバレルが使用されています。また、ウッドフォード・リザーヴは2015年から、ディスティラリー・シリーズという蒸留所のギフト・ショップとケンタッキー州の一部小売店限定のダブル・ダブル・オークドまでリリースしています。こちらは名前の通りダブル・オークドを更にもう一度ヘヴィなトーストとライトなチャーを施した新樽で仕上げる製品。2014年にはミクターズからもウッドフォード・リザーヴに似たトーステッド・バレル・フィニッシュ・バーボンがリリースされました。これは限定版で、毎年リリースされるとは限らないようです。同年には、ヴァージニア州のA.スミス・ボウマン蒸留所からも限定版のエイブラハム・ボウマン・ダブル・バレル・バーボンがリリースされていました。考えようによっては、メーカーズマーク蒸留所によって2010年から発売されているメーカーズ46もバレル全体かその一部のステイヴかの違いはあっても、使い古しではない焦がした木材でフレイヴァーをアンプリファイドするという点に於いて発想の根幹は同じでしょう。とにかくこの10年、特に2015年以降にはマイクロ・ディスティラリーからも続々とこうしたウッド・フィニッシュのバーボンが追いきれないほど多く製造されています。で、冒頭に述べたように2016年からジム・ビームもこの潮流に乗り遅れないように参入した、と。日本では殆ど話題にならないか極端に流通量の少ないマイクロ・ディスティラリーの製品や、もう少し知名度はあってもセミ・レギュラーの限定品と違い、ウッドフォード・リザーヴのダブル・オークドと同様に大会社のビームからレギュラー・リリースされるダブルオークは店頭でお目にかかり易く、尚且お手頃価格で提供されるバーボン。このことは諸手を上げて歓迎です。

ジムビーム・ダブルオーク・トゥワイス・バレルドは、焦がしたアメリカン・オークの新樽で4年間熟成させた通常のジムビーム・ケンタッキー・ストレート・バーボン・ウィスキーを取り出し、それを再び焦がしたアメリカン・オークの新樽に移して仕上げます。こうすることで液体は更に深いレヴェルのスパイスの効いたオーキネスと濃厚なキャラメルを発達させ、通常よりもリッチでウッディなフレイヴァーを生み出すとされます。二度目の樽による熟成期間は公表されていませんが、倉庫の温度や味わいの熟成度に応じて、凡そ3〜6ヶ月程度と目されています。ちなみにジムビームのマッシュビルは現在の公式ホームページにはアナウンスがなく、バーボン系ウェブサイトを調べてみるとコーン77%/ライ13%/モルテッドバーリー10%とコーン75%/ライ13%/モルテッドバーリー12%の二説が見つかります。私にはどちらが新しい情報か判断がつきません。時代による変遷が考えられるので、お詳しい方はコメントよりご一報ください。では、ダブルオークがその名の通り「二倍」良いのかどうか試してみましょう。

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JIM BEAM DOUBLE OAK TWICE BARRELED 86 Proof
推定2018年ボトリング。色は度数の割に濃いめのブラウン。炭、カラメライズドシュガー、グレイン、胡椒、あんず、シナモン、絵の具。アロマは完全に焦樽アロマが主だが、酸を伴ったビーム・ファンクも。マイルドで水っぽい口当たり。パレートは名状しがたいダークなフルーツ感と接着剤。余韻はややビターと言うかドライで、焦がしたオークの香ばしさとナッティな風味が香る。
Rating:82.5/100

Thought:名前や製法からして、もっとオーキーなバーボンかと思いきや、意外とフルーティな仕上がりで美味しかったです。ジムビームの比較的安価なラインナップの中では一番好みでした。ダブルオークで気になるのはそのラインナップとの比較、特に同じ瓶形状であり色違いラベルとなるブラック・ラベル・エクストラ・エイジドとデヴィルズ・カットと、どのように異るのかですよね。
前回まで開けていたデヴィルズ・カットと較べると、製法の違いからかダブルオークの方が焦げた風味が強いものの、シャープなウッド・フレイヴァーやスパイス感は少なく、もう少し円やかでフルーティな印象です。エクストラ・エイジドと比較すると、樽に入っていた期間の総計はエクストラ・エイジドの方が長いようですが、やはりと言うかダブルオークの方がウッド・フレイヴァーは強く、甘みも苦味もフルーツ感も増している印象。ホワイト・ラベルとは違いすぎて比較の対象にし辛いのですが、セカンダリー・マチュレーションの効果は著しく、確かに「二倍」くらいは美味しいと思います。同社の上位ブランドであるノブクリークやベイカーズと較べると、同じ位に焦げ樽風味が効きながらもプルーフィングが低い分、軽くて飲みやすいのが利点でしょうか。ダブルオークに手放しで称賛できない点があるとすれば、2回も新樽で熟成してる割にヤンガー・ウィスキーの荒々しさがかなりあるところ。昔の8年表記のあったブラック・ラベルだと、もうちょっとメロウでバランスが良かった気がします。とは言え、ダブルオークの只のギミックに終わらない面白みとビーム原酒の個性の融合は楽しめました。

Value:アメリカでは大体20〜23ドル程度、日本での小売価格は大体2500〜3000円です。上に述べたように、個人的にはジムビーム・ブランドの比較的安価なシリーズの中でダブルオークはイチ推し。同社内で比べれば、これより価格の安い物よりは確実に旨く、価格の高い物よりは満足度が低いという適正価格でしょう。素晴らしいとまでは言わないけれど、ダブルオークはグッドなバーボンであり、価格に見合う価値はあると思います。

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アーリータイムズ150周年記念ボトルは、その名の通りアーリータイムズの1860年の創業から数えて150年を迎えることを祝して2010年にリリースされました。3000ケース(各24ボトル)のみの数量限定で、375ml容量のボトルしかなく、アメリカでの当時の小売価格は約12ドルだったようです。

アーリータイムズは豊かな伝統とマイルドな味わいで知られるブランドです。創業当時の設立者ジャック・ビームは、業界が余りにも急速に近代化し過ぎていると考え、「古き良き時代」を捉えたブランドを求めて、その名をウィスキー造りの昔ながらの製法(アーリータイムズ・メソッド)から付けました。彼はマッシングを小さな桶で行い、ビアやウィスキーを直火式カッパー・スティルでボイリングする方法が最善と信じていたのです。アーリータイムズの伝統を匂わせるマーケティングは当り、順調に売上を伸ばしましたが、やがて禁酒法の訪れにより蒸留所は閉鎖されました。
一方でブラウン=フォーマン社の創業者ジョージ・ガーヴィン・ブラウンの跡を継いでいたオウズリー・ブラウン1世は、1920年、禁酒法下でも薬用ウィスキーをボトリングし販売するための連邦許可を取得しました。彼は既存の薬用ウィスキーの供給を拡大するために、1923年にアーリータイムズ蒸留所、ブランド、バレルの全在庫を買い取ります。1925年にオウズリーはアーリータイムズの全てのオペレーションをルイヴィルのブラウン=フォーマンの施設に移しました。禁酒法が発効すると1900年代初頭の多くの人気ブランドは姿を消しましたが、ブラウン=フォーマンによって買われていたアーリータイムズは絶滅から免れ、薬用ウィスキーとして販売され続けたことにより消費者から忘れ去られませんでした。1933年に禁酒法が終了した後、ブランドは黄金時代を迎えることになります。オウズリーのリーダーシップの下、ブラウン=フォーマンは1940年にルイヴィルの南にあったオールド・ケンタッキー蒸留所を買収し、そこをアーリータイムズの本拠地としました(DSP–354)。そして1953年頃には、アーリータイムズはアメリカで最も売れるバーボンとなりました。広告ではブランドを「ケンタッキー・ウィスキーを有名にしたウィスキー」とまでアピールしたほどです。1955年、ブラウン=フォーマンはプラントの全面的な見直しと近代化を行いました。まだまだバーボンは売れる商品だったのです。
しかし、70年代はバーボンにとって冬の時代でした。ブラウン=フォーマンは1979年になるとルイヴィルのオールド・フォレスター蒸留所(DSP-414)を閉鎖し、同バーボンの製造をアーリータイムズ・プラントに移管しました。その頃、二つのブランドの品質に影響を与える重要な決定が下されます。オールド・フォレスターは同社の看板製品なのでプレミアム・バーボンとして選ばれ、アーリータイムズは二種類の製品に分けられてしまいました。一つは輸出用の製品で「ケンタッキー・ストレート・バーボン・ウィスキー」規格を保持しましたが、もう一つのアメリカ国内流通品は80年代初頭に新樽ではない中古樽で熟成された原酒を含むため「バーボン」とも「ストレート」とも名乗れない「ケンタッキー・ウィスキー」となったのです。もしかすると、その時に熟成年数もまた短くしたかも知れません(3年熟成)。こうして、嘗て栄光を誇ったアーリータイムズはアメリカでは最高のブランドではなくなりましたが、ボトムシェルフ・カテゴリーの中では存在感は示したでしょうし、海外、特に日本ではバーボンの代名詞的存在であり続けました。
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この150周年記念ボトルは、1923年当時ブラウン=フォーマン・ディスティラーズ・コーポレーションの社長だったオウズリー・ブラウン1世が薬用ウィスキーとしてボトリングした時のアーリータイムズのフレイヴァー・プロファイルを見習って造られている、と同社の統括的なマスターディスディラーであるクリス・モリスは語っています。
禁酒法時代の薬用ウィスキーの殆どは時宜遅れのボトリングでした。それらには本来ディスティラーが意図していたより3倍長く熟成されたウィスキーが入っていたのです。1923年という初期禁酒法下で、ブラウン=フォーマンは5~6年程度の熟成のアーリータイムズを薬用ウィスキーとしてボトリングし始めました。それはライトな蜂蜜色で、メロウ・オークにブラウン・シュガーにヴァニラの香り、シンプルなスイート・コーンとヴァニラと仄かなバタースコッチの味わいをもち、過ぎ去りし最高のアーリータイムズを偲ばせると云います。つまり、そうした禁酒法の初期に販売されたであろうメディシナル・アーリータイムズ・プロファイルを模倣するために、「アーリータイムズ・ケンタッキー・ウィスキー」のプルーフを引き上げ、更に熟成年数を引き延ばすアプローチをした物が、この150周年アニヴァーサリー・エディションという訳です。また、ボトルと言うかパッケージングも禁酒法時代のウィスキーのデザインになっていますが、このデザインが実際あった物の復刻なのかどうか私には分かりません。多分それ風にデザインした物ではないかと想像しますが、実情をご存知の方はコメント頂けると助かります。それは偖て措き、2011年になるとブラウン=フォーマンはアメリカ国内で「アーリータイムズ354バーボン」なるストレート・バーボン規格の製品を発売しました(レヴューはこちら)。私には何となく、発売時期からするとこのアニヴァーサリー・エディションには、従来のボトムシェルファーとは違う少しプレミアム感のある「354」の売り上げを伸ばすための地ならしと言うか「アーリータイムズの栄光よもう一度」的な?宣言の役割があったように思えてなりません。まあ、空想ですが…。 
では、そろそろ飲んでみましょう。

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EARLY TIMES KENTUCKY WHISKY 150TH ANNIVERSARY EDITION 100 Proof
2010年ボトリング。バターレーズンクッキー、フローラル、焦樽、焼いたコーン、ワカメ、ホワイトペッパー、微かなチェリー、藁。少しとろみのあるテクスチャー。口蓋ではアルコール刺激はまずまずありつつ、木材とスパイシーさが。余韻はミディアム・ショートで、豊かな穀物を主に感じながらビタネスとスパイスとフルーツと香ばしさがバランス良く混ざり合う。
Rating:83.5→82.5/100

Thought:通常のアーリータイムズとは一線を画す現代のプレミアム・レンジのバーボンに感じやすい香水のような樽の香ばしさがあります。これの前に開けていたアーリータイムズ・プレミアム(90年代)とも全然違うフィーリングで、連続性はなく感じました。とは言え、それが件のバーボンではないケンタッキー・ウィスキーだからなのか、熟成年数の追加とプルーフィングその他によるものなのかは分かりません。少なくとも私には「これバーボンです」と提供されればバーボンと思う味わいでした。基本的には、何というかそれほどコクのない香ばし系とでも言いますか、美味しいのですが、個人的にはもう少し甘みかフルーツ感が欲しいところです。メロウネスもあまり感じないので、熟成年数はいいとこ6年くらいかなという印象です。正直、クリス・モリスには申し訳ないですが、これは禁酒法時代の風味を再現してるとは思えず、完全に現代的な樽の風味だと感じました。
それと上の点数なのですが、残量3分の1を過ぎた頃から風味がかなり変わりまして、それゆえ矢印で対応した次第です。香りは甘さが消え、口の中では酸味が少し増え、余韻はドライになり、バランス的には穀物とスパイスに偏りました。劣化した味わいではないのですが、良い変化とは言えないし、私の好みではないです。

Value:この製品は通常ボトルの凡そ半分量ということもあり、オークションでもそれほど高値にならず、70年代のイエローラベルより安価で購入出来ると思います。味わい的に物凄くオススメという訳でもないのですが、パッケージングがカッコいいのでそれなりの価値があります。デザインを含めて考えると、個人的には3000円代なら購入してもよいかと。

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バーンハイム・オリジナルはヘヴンヒル蒸留所で生産される小麦ウィスキーで2005年から発売されました。発売当時はアメリカ国内で唯一の小麦ウィスキーであることをウリにしていましたが、現在では隆盛を極めるマイクロ・ディスティラリーの中には独自の小麦ウィスキーを造り出すところも少なからずあります。またアメリカ初の小麦ウィスキーでもなく、典型的なバーボンが確立される以前には、トウモロコシより小麦が良く育つ地域にはあったものと推測されます。小麦ウィスキー(ウィート・ウィスキー)というのは、ざっくり言えば原材料に小麦を51%以上使ったウィスキーのこと。似た用語に小麦バーボン(ウィーテッド・バーボン)というのがありますが、こちらはメーカーズマークのようにセカンド・グレインにライ麦を使用せず、代わりに小麦を使用したバーボンを指します。

バーンハイム・オリジナルは発売当初、熟成年数が約5年とされるNAS(ノー・エイジ・ステイトメント)でしたが、2014年にパッケージがリニューアルされると7年熟成のエイジ・ステイトメント・ウィスキーへと変わりました。近年それまであった熟成年数表記がなくなる傾向にあるウィスキー業界では珍しいパターンと言えるでしょう。旧ボトルは中央に銅板風ラベルが貼ってあり、そのブロンズ色が引き立つ魅力的なパッケージでした。マッシュビルは51%冬小麦/39%トウモロコシ/10%大麦麦芽とされ、本当かどうか判断しかねますが熟成は倉庫Yでなされているという情報がありました。そして「スモールバッチ」を名乗りますので、おそらく150樽以下(75樽くらい?)でのバッチングと思われます。

製品のバーンハイムという名称は、I.W.ハーパーでお馴染みのアイザック・ウォルフ・バーンハイム氏やその兄弟、また彼らが設立した蒸留会社、及びその名を冠する現代の蒸留所にちなみ命名されました。もともとヘヴンヒル社の蒸留所はバーズタウンにあったのですが、96年にアメリカンウィスキー史上最大規模の悪夢のような大火災によって焼失。そこで替わりの蒸留施設を必要としたので、火災から三年後の99年にバーンハイム蒸留所を購入したのです。この蒸留所は1992年にギネス傘下のユナイテッド・ディスティラーズによって、ルイヴィルのディキシー・ハイウェイ近くのウェスト・ブレッキンリッジ・ストリートに開設され、当時最先端の製造技術を備えた近代的で大きな蒸留所でした。購入した際に、当時ヘヴンヒルのマスターディスティラーだったパーカー・ビームは、コラムスティルの上部とダブラーの内側に銅のメッシュを追加するなど独自の改造を施したと言います。バーンハイム・オリジナルが初めて発売された年とその熟成年数を考えると、バーンハイム蒸留所を所有した比較的早い時期に小麦ウィスキーを仕込んだのでしょう。ところで「バーンハイム」と「小麦」って、私には特に結び付きがあるように感じないのですが、なにゆえわざわざバーンハイムの名を冠するウィスキーが小麦ウィスキーとなったのでしょうか? ご存知の方はコメント頂けると助かります。
それは偖て措き、買収以来ヘヴンヒル社のスピリッツの生産拠点となっており、今ではヘヴンヒル・バーンハイム蒸留所と呼ばれるこの蒸留所は、ニュー・バーンハイムとも呼び習わされているのですが、それは旧来のバーンハイムとは全く別の蒸留施設だからです。旧バーンハイムは、マックス・セリガーとそのビジネスパートナーが運営していたアスターとベルモントという同じサイトにあった二つの蒸留所をルーツとしています。1933年の禁酒法の終わりにシカゴのビジネスマンであるレオ・ジャングロスとエミル・シュワルツハプトは、アイザック・バーンハイムがルイヴィルに建てた蒸留所とブランド、マリオン・テイラーからはオールド・チャーターのブランド、マックス・セリガーからは蒸留所とブランドを購入し、全ての事業を統合してベルモントとアスター蒸留所で生産を始めました。そしてその際に名称を「バーンハイム・ディスティラリー」へと変更し、そこでI.W.ハーパー、ベルモント、アスター、オールド・チャーター等を製造したのです。1937年にジャングロスとシュワルツハプトは事業をシェンリー社に売却。以来長いことシェンリーがバーンハイム蒸留所を所有していましたが、1987年にユナイテッド・ディスティラーズがシェンリーを吸収すると、古い蒸留所は解体され、上に述べたように1992年に「新しい」バーンハイム蒸留所が建設されたのでした。このように所有者が変わり、施設も一新されたからこそ新旧のバーンハイムを区別する習慣があるのです。

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さて、話が小麦ウィスキーから蒸留所の件に逸れてしまいましたが、今回はNASと7年表記があるものを比較する企画です。目視での色の違いは感じられません。

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Bernheim Original Wheat Whiskey NAS 90 Proof
年式不明、2014年以前(推定2012年前後)。焦樽、ハニー、薄いキャラメル香、トーストしたパン、僅かにシトラス。とにかく香りのヴォリュームが低い。あまりフルーツを感じないオーク中心の少し酸味のある香り。口当たりはさらさらで軽い。味わいはほんのりした甘さ。液体を飲み込んだ後のスパイス感もソフト。余韻は短くドライ気味。
Rating:82.5/100

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Bernheim Original Wheat Whiskey 7 Years Aged 90 Proof
年式不明、購入は2019年(2016年くらいのボトリング?)。プリンのカラメルソース、接着剤、ハニー、サイダー、強いて言うとオレンジ。香りはこちらの方が僅かに甘いが、接着剤感も少し強まる。また、こちらの方が口当たりにほんの少し円やかさを感じる。飲み心地と味わいはほぼ同じ。余韻はミディアムショートで苦め。
Rating:83/100

Verdict:7年物の方がほんの僅かにアロマとパレートに甘さを感じやすいような気がしたので、そちらを勝ちと判定しましたが、私には両者にそれほどの差を感じれませんでした。2年の熟成年数の差がもっとあると思って比較対決を企画したものの、これほど差がないと企画倒れの感は否めません…。総評として言うと、小麦ウィスキーはバーボンに較べ、オイリーさの欠如からか、軽いテクスチャーと感じますし、甘味も弱い気がします。それでいてライウィスキーほどフレイヴァーフルでもなく、強いて言うと腰の柔らかさとビスケッティなテイストが良さなのかなぁと。

Value:現代のプレミアム・バーボンに共通する香ばしい焦樽感はあるとは言え、NASが5000円近く、7年が7000円近くするこのウィスキーは、率直に言って私にとっては二回目の購入はないです。半値でも買わないかも知れません。こればかりは好みと言うしかありませんが、私には普通のバーボンかライウィスキーのほうが美味しく感じます。
アメリカでの価格は、販売店に大きく依存しますが概ね30ドル前後です。またインスタグラムのフォロワーさんで、カナダではなかなか見つけにくいと仰ってる方がいました。販売地域によっては手に入りにくいようです。

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エンシェントエンシェントエイジ10スターPhotoGrid_1384686582040

Ancient Ancient Age 10 Star 90 Proof
スタンダードなエンシェント・エイジの上位に位置するこのエンシェント・エンシェント・エイジ10スターですが、紛らわしいことに10という数字は10年熟成を意味していません。10個の星が並んだデザインなだけで6年熟成と言われています。更にややこしいことに2013年もしくは14年あたりからネックに「少なくとも36ヶ月熟成」と書かれるようになり、推定3年熟成のバーボンとなったようです。と言うことはスタンダードなエンシェント・エイジの単なるハイアープルーフ版ということになり、そうなるとエンシェント(古の意)が二つ重なる意味が薄れませんか? 急速なバーボン高需要に対応する処置だとは思いますが、それにしても熟成年数を半分に減らすとは思いきったものです。
10スターの正確な発売年は判りませんが、2000年発行の本に載ってないところを見ると、それ以降であるのは間違いないと思います(追記あり)。おそらくエンシェント・エンシェント・エイジは10年熟成の製品として始まり、後に熟成年数表記のない10スターとなったのでしょう。調べてみると、エンシェント・エンシェント・エイジ10年は10スターの発売後、ある期間ケンタッキー州では入手可能であったものの、後に終売となったようです。
エンシェント・エイジの製品ラインは、かなり昔から現在のバッファロートレース蒸留所で造られています。マッシュビルはブラントンズと同じライ麦多めの#2 。このボトルはまだ6年熟成の時代の物です。飲んだのが数年前なので細かいことが言えませんが、スタンダードのエンシェント・エイジと較べて、甘みは力強くなり、コクも増し、キャラメルとフルーツ感のバランスの良いバーボンでした。なにより、いくらエンシェント・エイジが正規輸入、10スターが並行輸入という違いがあるとは言え、店頭価格で数百円の違いしかない10スターはお買い得以外の何物でもなかったです。現行の製品は飲んでないので較べられません。
Rating:82.5/100

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追記:コメントより情報頂きました(ありがとうございます!)。本文で10スターの発売時期を2000年以降と推測したのですが、どうやら90年代に既にボトル形状とラベルの違う物があったようです。よろしければコメント欄をご確認下さい。

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