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ラーセニーはヘヴンヒル蒸留所で造られるウィーテッド・バーボンで、2012年9月に歴史的なオールド・フィッツジェラルドの後継として市場に導入されました。ヘヴンヒルは1999年にオールド・フィッツジェラルド・ブランドを買収して以降、安価なボトムシェルファーとして販売していましたが、プレミアムな製品が現代のバーボン・ブームの人気を支える現状を捉えてブランドの大胆な刷新を図ったのでしょう。2018年には毎年春と秋の2回だけの限定リリースで、50年代に販売されていた豪華なダイヤモンド・デカンターを再現した「オールド・フィッツジェラルド・ボトルド・イン・ボンド」を復活させました。また2020年にはラーセニー・バレルプルーフを導入し、こちらは1月と5月と9月の年3回リリースとなっています。

私はバーボンの味は言うまでもなく、そのラベルやボトルのデザイン、ブランドの物語や蒸留所が背負う歴史なども大好きです。ラーセニーにもそれらがあります。先ず、腰をつまんだフラスク型のボトル形状や、鍵をデザイン・コンセプトにしたパッケージは極めてカッコ良い。今日語られるブランド・ストーリーの多くは必ずしも100%正確であるとは限りませんが、ラーセニー・バーボンのバック・ストーリーは興味をそそられる面白いものです。すぐ上でラーセニーはオールド・フィッツジェラルドの後継だと書きました。そしてラベルにはジョン・E・フィッツジェラルドの名がフィーチャーされています。「ラーセニー」とは「窃盗もしくは窃盗罪」を意味する言葉です。それが「鍵」のデザインやフィッツジェラルド氏とどのような関係にあるのでしょうか?

ラーセニー・バーボンのブランド基盤を形成するのは、故ジュリアン・"パピー"・ヴァン・ウィンクルによって有名になったオールド・フィッツジェラルドの歴史とジョン・E・フィッツジェラルドのやや物議を醸す物語です。
オールド・フィッツジェラルドというブランドは、ウィスコンシン州ミルウォーキーを拠点としたワインとスピリッツの卸売業者であるソロモン・チャールズ・ハーブストによって登録され、ケンタッキー州フランクフォートの近くにある彼の所有するオールド・ジャッジ蒸留所で造られました。ハーブストがブランドを作成した時、彼はそれに合わせて物語を紡ぎました。後年まで残った業界の伝承によると、ジョン・E・フィッツジェラルドは南北戦争が終わった直後にフランクフォートで蒸留所を設立し、1870年から鉄道や蒸気船のプライヴェート・クラブのみに販売する高級なバーボンとしてオールド・フィッツジェラルドを製造した、と。この物語は1880年代から禁酒法までブランドを所有していたハーブストと、禁酒法の間にブランドを購入してスティッツェル=ウェラー蒸留所を代表するバーボンにした「パピー」によって更に進められました。それは全てフィクションであり、ジョン・E・フィッツジェラルドは実在の人物ではあるもののディスティラーではなく、実際には倉庫の鍵​​を使って良質な樽からバーボンを盗み出す財務省のエージェントでした。当時から1980年代初頭まで保税倉庫への出入りは財務担当者が管理しており、税金が支払われ、ウィスキーが政府の基準で製造されていることを保証するためには、そうする方が確実だったのです。このため、地元に割り当てられた「政府の人」は非常に力のある立場となり、ハーブストのような蒸留所の経営者やオウナーはエージェントが時々味見をしても、気づかないか気づいても殆ど何も出来ませんでした。
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ランタンに火を灯すと夜な夜なウェアハウスへと近づき、自分が握る鍵を使ってリックハウスに侵入、最高のバレルを吟味するとウィスキーシーフを使って樽から中身をこっそり抜き取り、悠々とジャグを家へと持ち帰える…。現在のラーセニーのホームページでは、ジョン・フィッツジェラルドのそのような姿が再現映像で流れます。バーボンを瓶詰めする時が来ると、通常では考えられないほど軽い幾つかの樽が発見され、そこには極めて滑らかで良質なバーボンが入っていました。中身を盗まれた樽が殆どの場合模範的であることが判明すると、ハーブストの蒸留所の人々の間でフィッツジェラルドは優れた樽の裁判官であるという評判を得ます。すると彼が鋭敏な鼻と肥えた舌で選び出した特に優れた樽を「フィッツジェラルズ・バレル」と呼ぶのは蒸留所の人々の内輪のジョークとなりました。そしてハーブストがオールド・フィッツジェラルド・ブランドの架空のプロデューサーとしてジョン・E・フィッツジェラルドを採用した時、そのジョークは不滅のものとなったのです。この逸話は、パピーの孫娘であるサリー・ヴァン・ウィンクル・キャンベルと彼女の歴史コンサルタントであるサム・トーマスによって、1999年の著書『But Always Fine Bourbon』で明らかにされました。
今は簡単に纏めましたが、もっと詳しくオールド・フィッツジェラルドの歴史やジョン・E・フィッツジェラルドという謎の人物について知りたい方は、過去投稿のオールドフィッツのプライム・バーボンの時にもう少し込み入った話を紹介していますので参考にして下さい。

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ヘヴンヒルがラーセニーを立ち上げた頃のキャッチフレーズは「悪名高い行為によって有名になった味」でした。なかなか上手い言い回しですよね。では、そんなラーセニーの「味」に関わる部分を見て行きましょう。
ウィーテッド・バーボン(小麦バーボン)は、バーボンに於いて最も一般的なライを含むマッシュビルと違い、フレイヴァー・グレイン(セカンダリー・グレイン)にライの代わりにウィートを用いるマッシュビルで造られたバーボンを指す言葉です。ウィーターとも言ったりします。オールド・フィッツジェラルドやウェラーのような旧スティッツェル=ウェラーからのブランドや、メーカーズマーク、そしてヴァン・ウィンクル等が有名。冬小麦の使用は、ライ麦が供するスパイシーなキックがないため、柔らかで丸く甘いのが特徴とされています。とは言え、ブラインドで味わうと、そのバーボンにセカンダリー・グレインとして小麦を含むかどうかを実際に判別できる人はそういないとも言われています。実際、法律で定められたバーボンのマッシュビルの主成分であるトウモロコシや焦がした新樽は、それ自体でかなり甘いノートを提供するため、ライを含むバーボンであっても甘さを感じることは珍しいことではないからです。ちなみに、ヘヴンヒルの小麦バーボンのレシピは68%コーン、20%ウィート、12%モルテッドバーリー。
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ラベルにはヴェリー・スペシャル・スモールバッチとあります。ラーセニーが発売された頃のセールス・シートには「75樽もしくはそれ以下」と書かれていました。おそらくヘヴンヒルでは100樽以下をヴェリー・スモールバッチ、200樽以下をスモールバッチと呼んでいるように思われます。で、このラーセニー、海外のレヴューを色々読んでみると、バッチングのバレル数が100以下としていることもあれば200以下としていることもあるのです。それらは蒸留所からの情報提供であったり公式ウェブサイトからの引用なので、発売当初は75樽前後だったものが、次第に生産量を増やすにつれバッチングに使用するバレル数も増えたのかも知れません。それが正しい推測だとすると、じゃあヴェリー・スモールバッチじゃなくね?となりかねませんが、業界最大手のジムビームのスモールバッチが凡そ300樽なので、それよりは少ないことを考えればヴェリー・スモールバッチを称しても決して間違いではないかと…。まあ、それはともかく、ラーセニーのバレルは4、5、6階の上層階から選ぶと言います。これに関してはロバストなフレイヴァーのウィスキーを選んでいることが覗えるでしょう。そして熟成年数はNASですが、6〜12年(6~10年とする情報もある)の範囲とされます。多分6年熟成の原酒がメインと思われ、もし熟成年数を表記する場合は「6年」ということになりますけど、もう少し長熟のバレルをブレンドすることで、より熟成したプロファイルのバーボンになるように努めているのだそうです。ただし、ヘヴンヒルの公式ウェブサイトには「当社のマスターディスティラーは、ラーセニーのために、6年熟成のテイスト・プロファイルの、ピークに達した限られた数のバレルをリックハウスの特定のフロアの場所から選んでいます」という記述があり、もしかすると上のバレル数の件と同じように年々長熟バレルの混和率が下っている可能性もある気がします。と言うより、そもそも「75樽以下、6〜12年熟成」のスペック自体がラーセニー販売当初にパーカーとクレイグ・ビームが造り上げた仕様であって、2013年にパーカー・ビームが病気で引退した後は後任のデニー・ポッター(*)がNASの利点を活かしてある程度自由にバレルを選んで初期のラーセニーに近いプロファイルをクリエイトしてるだけの話なのかも知れません。初期物と近年物を飲み較べたことのある方は是非コメント頂けると嬉しいです。
では、そろそろラーセニーを注ぐとしましょう。

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LARCENY 92 PROOF
ボトリング年不明(2015年くらい?)。赤みを帯びたブラウン。香ばしい焦げ樽、バター、シナモン、ダークチェリー、レーズン、ナツメグ、焦がし砂糖、たっぷりベリーのパンケーキ。焦げ樽を中心としてスパイスと少し酸っぱい香り、しばらく置くと激しいピーナッツ・ノート。口当たりはさらりとして喉越しも滑らか。口中でもアロマと同じくシナモ二ーなウッディ・フレイヴァーが。余韻はミディアム・ショートでドライ気味ながら仄かに甘い木の香りとダークなフルーツが少し。
Rating:84/100

Thought:開封から約二分の一に減るまでパッとしないバーボンでした。焦がした樽の風味は強いのにそれだけと言うか。しかし、香りが開いてからは甘い香りも味もありました。特にアロマは良い感じです。ただ、味わいと余韻はやや深みに欠けるのは同じでした。
前回まで開けていた小麦バーボンであり元ネタは同じヘヴンヒルと見られるデイヴィッド・ニコルソン1843(NAS100プルーフ)と比べると全然違う熟成感。ラーセニーの方がより焦がした樽の風味やチェリー感が強く、口当たりが滑らかです。
寧ろ、口当たりや風味はバーンハイム・オリジナル・ウィート・ウィスキーに似てる気がしました。小麦繋がりで、取っておいた物をサイド・バイ・サイドで飲み較べたのですが、ラーセニーの方がオイリーさで上回るし余韻も強くて美味しく感じます。

Value:ラーセニーはアメリカでは25〜30ドルが相場です。この価格は以前のオールド・フィッツジェラルドのプライムやボトルド・イン・ボンドよりも高いのですが、デザイン性やスモールバッチならではのバレル・セレクションを考えれば、市場での価値は妥当でしょう。問題は日本での小売店の販売価格が大体5000円を超えてしまっていることです。これは痛い。本来、似たようなプルーフの小麦バーボンで25〜30ドルならメーカーズマークのスタンダードとウェラー・スペシャル・リザーヴが競合製品。或いはラクスコのレベル・イェールやデイヴィッド・ニコルソン1843も含めていいかも知れません。しかし、ウェラーのラインの人気がアメリカで高まり日本に入ってくる量が減ったこと、またラクスコの製品の生産量がMMやBTと比べて少ないことを考えると、ラーセニーと直接対決できる小麦バーボンは、実質的にはメーカーズマークだけとなります。両者はどちらも似たスペックであり、プルーフィングも熟成年数も近く、アメリカではほぼ同じ価格での販売。なのに日本ではラーセニーはメーカーズマーク・スタンダードの2倍かそれ以上…。まあ、割り切って競合するバーボンとは思わないようにしましょう。良い点を言うと、ラーセニーの方がメーカーズマークよりもバランスがいいとの評価があります。個人的にもメーカーズマークのスタンダードは酸味が強く、人を選ぶバーボンかなという気がしています。その酸味がなく、樽感が強いという意味で、寧ろラーセニーはメーカーズ46に似てると言えなくもない。46なら日本での販売価格もラーセニーと近いですし。そして何よりラーセニーはパッケージが凄くカッコいい。だから私は買いました。案外そんなところで価値が決まるものですよね。


*2013〜2018年までヘヴンヒルのマスターディスティラー兼ヴァイス・プレジデント。現在はメーカーズマークに移籍し、グレッグ・デイヴィスの後任としてジェネラル・マネージャー兼マスターディスティラーに就任しました。フォアローゼズのブレント・エリオットやバッファロー・トレースのハーレン・ウィートリーと同世代。

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FOUR ROSES SINGLE BARREL 43%alc/vol
BARREL No. 9-26-95A
DATE 12-7-04
現行の物とはボトル形状もラベルデザインも度数も異なる昔のフォアローゼズシングルバレル。おそらく90年代終わり頃から2000年代初頭にヨーロッパに流通していたものではないかと推測します(仔細ご存じの方はコメントからお知らせ下さると嬉しいです)。首に付いている小冊子によると、最低でも7年は熟成され、スパイシーなキャラクターとフローラルなノーズと僅かにドライでデリケートなフィニッシュを有したバレルを、当時のマスター・ディスティラー ジム・ラトリッジが自らセレクトし、一樽一樽の個性や熟成年数の違いを楽しむ機会を我々に提供するのがシングルバレルの意図だという旨が書かれています。
本ボトルはDATEによると9年熟成。10種のレシピのうちの何なのかは記載されてません。せめてEかBどちらのマッシュビルかぐらいは教えて欲しかったですが、それ以前に、フォアローゼズが2マッシュビル×5イーストで作り始めたのって何時のことなんでしょうか? これまたご存じの方はコメントから教えて下さると幸いです。まあそれは措いて、レビューへ。

樽香、穀物臭、ライ由来のスパイス香、蜂蜜、軽いシトラス、僅かにビターチョコ、余韻にややミンティな気配。だいたい同じ時期のブラックラベルと較べて、どうも甘い香りが少なくスパイシーなアロマに感じる。確かに味わいもドライ。大人味のフォアローゼズと言った感じ。味わいから察するにBマッシュビルだと思う。正直、私ごときではフローラルまでは嗅ぎ取れず、個人的にはブラックの甘くフルーティなアロマの方が好み。
Rating:84/100

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今宵の一曲はブッカー・リトルの「マイナー・スイート」です。TIME盤と言えばリトルがワンホーンで臨んだ名盤であり、彼お得意のマイナー調の曲が多い作品として知られますが、この作品の人気はもうひとりの夭折の天才、ベーシストのスコット・ラファロの存在にある、と言っても過言ではないでしょう。グイグイと強靭なベースを聴かせてくれてます。その他のバックも鉄壁の面子。さて、合わせたバーボンは、

JIM BEAM SIGNATURE CRAFT 12 YEARS 86 Proof
2013年にリリースされたシグネチャー・クラフト・シリーズの12年熟成物。ビームの製品はブッカーズで6〜7年、ノブクリークで9年程度と、長期熟成をあまりしない中で異例とも言える12年熟成なのがウリでしょうか。当然ながらマッシュビルはジムビームと同じ77%コーンのロウ・ライ・レシピ。そしてスモール・バッチでのボトリングです。では、飲んでみましょう。

焦がしたオーク、フレッシュフルーツ、ヴァニラビーンズ、ピーナッツ、ビターチョコ、紫蘇。思いの外、キャラメル系の甘い香りが薄め。飲み口はすっきり。余韻はやや苦めでナッティかつビール様、更にヨモギ。海外の有名なバーボンレビュワーの評価がなかなか良かったので期待しすぎたのか、少々拍子抜け。確かにジムビームらしい焦樽系のアロマは豊富なのだがテクスチャーが滑らか過ぎる。出来ればもう少し引っ掛かるものが欲しい。47度でボトリングしてもらいたかった。
Rating:84/100

Thought:これは単に私の好みなだけかも知れませんが、どうも現行のジムビームは音で喩えると、低音域と高音域が効いているのに中音域がすっぽりと抜けた音のようなバーボンに感じます。勿論、その音が好きな人もいるでしょう。けれども個人的には好きな音ではありません。またビームのスモールバッチシリーズのバーボンたちと比べると余韻が好みでなかったこともあり、値段を考慮するならもう一度購入したいお酒ではなく、同程度の価格ならばハイアープルーフのノブクリークを選びます。

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記号のような表記の名前は「ライワン」と発音します。2008年10月にビームグローバルから発売されたという情報を目にしました。熟成年数の異なるいくつかの原酒のブレンドで、最低でも4年半の熟成とされ、原酒構成はおそらく4.5〜6年程度ではないかと思われます。新世代のバーテンダーやミクソロジスト向けの製品企図があるようですが、ストレートで飲んでも美味しかったです。ジムビームらしいバーボン寄りのライウィスキーで、フルーティーなバーボンみたいな感じです。軽やかな口当たりに、ややスパイシーなトーンを維持しつつ甘味もあり、強いて言うと赤リンゴのフルーツ感を感じました。ジムビームライと較べると度数が高いので当たり前ですが味わいと余韻は強いです。ノブクリークライと較べるとスモーキーさやダスティなフィーリングに欠けていると言えます。
現在では終売になっているものの、プリプロヒビション・スタイルと銘打たれリニューアル(2015)したジムビーム・ライのアメリカ仕様?は90プルーフのようなので、そちらで代用する感じでしょうか。ましてやノブクリーク・ライもあっては終売も仕方なしかと。ちなみに上記のプリプロヒビション・スタイルは日本にも90プルーフの物が並行輸入で入って来てます。日本正規品とはボトル形状とラベルが少し違うやつを酒屋で見かけました。私は試していませんが、500円程度の違いでアルコール度数が5度も上がるのはお買い得な気がします。
Rating:84/100

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値段が安いのに高いアルコール度数で人気のファイティングコック。エヴァンウィリアムスやエライジャクレイグと同じくヘヴンヒルディスティラリーが造っています。2015年には6年の表記は消え、現在ではNASとなりました。90年代までは6年ではなく8年が流通しており、クラシカルな紙ラベルがカッコよかったです。更に2000年代までは日本限定で15年物も流通していました。

このバーボンのオリジンは何処にあるのか知りたくて調べたのですが、全くその手のソースがヒットせず、ヘヴンヒルがそもそもオリジナルなのか他の蒸留所から取得したのか一向にわかりません(※追記あり)。ただ70年代物と言われるボトルの写真をみるとケンタッキー州ローレンスバーグと記載があります。一体何という蒸留所で造られていたのでしょうね。更に60年代と言われるボトルにはコネチカット州スタンフォードの記載があります。そこに蒸留所があったのか、それともただのボトリング施設の場所なのか判りません。また、ファイティングコックのラベルでメリーランド・ライ・ウイスキーがあるのも見つけまして、それにもコネチカット州スタンフォードと記載があります。こうなるとヘヴンヒルがオリジナルではないと考えていいような気がします。
あと余談ながら、ライ・クーダーがスライドギターで使うスライドバーの一つにファイティングコックの瓶を使っていたそうです。

さて、このバーボン、ネット検索にて日本語で書かれた何らかの情報を見ると、かなりの割合で「小麦バーボン」だと書かれているのを発見します。それは個人やバーのブログだったり、酒販店の商品説明だったりします。小麦バーボンというのは、メーカーズマークのような原料にライ麦を使わず小麦を使うバーボンのことです。海外のサイトで調べてみると、ファイティングコックを小麦バーボンだとしている情報は一つもありません。逆にハイ・ライ・マッシュビルだとしているものは少数ありました。 私が飲んでみた限り、ファイティングコックは小麦バーボンでもなければ、ハイ・ライ・マッシュビルでもなく、ロウ・ライ・マッシュビルのコーン多めのバーボンに感じました。はっきり言えばエヴァンウィリアムス等と同じマッシュビルに感じます。これはどういうことなのでしょうか?
ネットの情報はコピペの連鎖が殆どですから、或る一説がほぼ同じ文言で多く散見されるのは仕方ありません。しかしファイティングコックが小麦バーボンというのはちょっと信じがたい。あるバーのブログでは、6年は小麦バーボンで、15年はライ麦少なめコーン多めのマッシュビルだから味が違うのだという主旨の記述がありました。単発リリースのブランドやファミリーリザーブとかファミリーエステート、またはシングルバレルと言うならいざ知らず、いくら15年が日本限定の製品だとしても、量産されかつ継続性のあるブランドでそれをされたらアイデンティティーに欠ける気がします。そもそも熟成年数が倍も違えば味が違うのは当然でしょう。
また、ある酒販店の商品説明では、ファイティングコックのホームページに「キックを与えるために原料にライ麦ではなく、小麦を使ってるのだ」と書かれている、と述べられているのです。ええ!? 一般的に小麦はソフターな酒質になる特徴があるとされているのに?  普通キックを与えたいならライ麦を使うのでは?  慌ててヘヴンヒルや日本の輸入元のブランド紹介を調べるとそのような記述は現在では見られませんでした。可能性としては、昔は小麦バーボンだったが現在ではそうではない、というのも考えられます。けれど、それを本国のアメリカ人がまるで知らないというのはちょっと解せません。確かにヘヴンヒルのバーンハイム蒸留所では小麦バーボンも造っています。それはスティツェル=ウェラーから引き継いだオールドフィッツジェラルド系のどちらかというとマイルドなバーボンに使用されます。常識的に考えて荒々しい闘鶏がモチーフのバーボンにそれを使うのは意味が分からなくないでしょうか?

大事なことなので、もう一度繰り返します。ファイティングコックを小麦バーボンとしているのは日本人だけです。海外では、ファイティングコックはヘヴンヒルのスタンダード・マッシュビル(コーン75%/ライ13%/バーリー12%、また他説では78%/10%/12%)を使用して造られている、というのが一般的認知です。上に述べた60〜70年代のような古いものはどうか判りませんが、少なくとも近年のヘヴンヒル産の物は小麦は使われていないと思ってよいでしょう。では、そろそろテイスティングへ。

Fighting Cock 6 Years 103 Proof
2013年ボトリング。まずは強めのアルコール臭、弱めのキャラメル香、ややソーピー。クリーミーな口当たり。穀物感とコーンウィスキー感が強い。正直言ってマチュレーションピークの前なのは否めないが、ハイ・プルーフなので満足感は高く、お値段を考えればグッドバーボン。特に開封後しばらくして香りが開くと少しフルーティーになり、かなり美味しい。
Rating:84/100

Fighting Cock 8 Years 103 Proof
94年ボトリング。飲んだのが10年以上前なので細かいことが言えないが、ストロングかつウェルバランスだったように思う。俗に言う思い出補正はあるかも知れない。
Rating:86/100

追記1:その後、アバンテというファイティングコックの輸入元のホームページに「バーボンウイスキーとは一般的にトウモロコシ、ライ麦、大麦麦芽が原料だが、ファイティング・コックはトウモロコシと小麦を使った原酒を選んでいるので、コシの強さがある。」と書かれているのを発見しました。もしかするとこれが、日本での「ファイティングコック小麦バーボン説」の直接的な情報源であるのかも。と言うより、それが輸入元の記述であるからには、そもそも蒸留所から提出された情報に何か誤解を与えるような説明がされていたのではないか、と考えるのが自然な気がしてきました。というのも、有名なバーボン掲示板のファイティングコックのスレッドで見かけたのですが、或る方のコメントによるとファイティングコックのウェブサイトに「殆どのバーボンは小麦を使って造られるが、このバーボンにはキックを与えるためにライ麦を使っている」という主旨のことが記載されている、と言うのです。は? 殆どのバーボンは小麦で造られてませんけど? この投稿は2011年にされています。もしこのコメントが本当なら、少なくともその当時までは、ファイティングコックの公式ウェブサイトで不適切な表現がなされていた可能性があります。そして私が本文で取り上げたように、日本の或る酒販店はファイティングコックのホームページから「キックを与えるために原料にライ麦ではなく、小麦を使ってるのだ」と引用して商品説明をしています。これ、言ってることは反対ですが、文章の言い回しが似ていますよね。実際にはどちらも間違っているのですが、どうやら往年のファイティングコックの公式ウェブサイトに、そんな言い回しがあったのは間違いなさそうです。もしかするとヘヴンヒル蒸留所が当時雇っていたPR会社の担当者がバーボンのことをあまり知らなかったのかも知れません。

追記2:古いファイティングコックについて記事執筆時より少々明らかになった情報があります。こちらを参照下さい。

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ジムビームラインナップのホワイトラベルの上位に位置するブラックラベル。現在では「EXTRA-AGED」と書かれ、NAS(No Age Statement)ながら熟成期間は6年程度とされ、日本では80プルーフにてボトリングされています(アメリカでは86proofのようです)。
で、その少し前まで流通していたスタイリッシュなデザインのボトルですが、混乱を招くような表現が使われています。ホワイトの4年熟成に対してブラックは8年熟成だから「DOUBLE AGED」と2倍の意味であるのは話が分かりやすい。ところが同じデザインのボトルで6年熟成のブラックがあるのですが、それには「TRIPLE AGED」と書かれているのです。ダブルの要領でいけば3倍の12年熟成になりそうなのにそうではない。無理矢理解釈すれば、ストレートバーボンと名乗るために必要な最低熟成年数の2年の3倍という意味かな?とは思えますが、どっちかに統一しろよッという突っ込みは免れないでしょう。その声が聞こえたせいなのか、今は上に述べた「EXTRA-AGED」に落ち着いたみたいです。
さて、肝心のお味のほうですが、これは美味しい。ホワイトでは味わえないリッチなフレイバーとスイートネス。甘さに振れた味わいながらスパイシーさとフルーティーさとシリアル感のバランスが良く、これが2000円程度ならお買い得だったと言うしかありません。
Rating:84/100

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テネシーウィスキーの特徴となるチャコール・メロウイングを、樽熟成の前と後の2回施すことで、通常のOld No.7よりも更にスムースにしたのがウリのジェントルマン・ジャック。一説には熟成後のメロウイングは、熟成前のメロウイングより短時間で行うらしい。個人的にはスムースさを求めてはないのですが、確かにシルキータッチとクリアネスは感じられ、これはこれで美味しいです。アロマや味わいはジャックダニエルズそのものですし。

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2009年ボトリング。開封直後はOld No.7に水を加えたのかと思うほど薄っぺらい風味だったが、時間の経過とともに風味は開いて美味しくなった。そこまで来ると、なぜかOld No.7より旨いように感じられる。仮に熟成年数などのスペックが全く同じで、メロウイングの回数しか違わないのだとしたら、雑味が更に取り除かれて甘味が引き立っているのがGJなのだろう。
Rating:83/100

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年式不明。開封直後から美味しかったし、味わいにやや深みがあるように感じた。新旧の比較としては大差ないという印象。味の深み云々は強いて言えばの話に過ぎない。個人的にはラベルのデザインは圧倒的に旧の方が好きで、それを理由に旧に軍配を上げた。
Rating:84/100

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OLD GRAND-DAD 114 (57% abv)
伝統あるブランドのオールドグランダッド。昔はナショナルディスティラーズの看板製品でした。今ではビーム社のジムビームラインのコーン多めのレシピとは違う、ハイ・ライ・レシピ(コーン63%、ライ麦27%、モルテッドバーリー10%)で造られています。熟成年数はNASですが、飲んだ感じは4〜6年程度の熟成感かなと思います。
まずトップノートは、流石にハイプルーフなのでアルコール臭がキツめ。奥にキャラメルとフルーツキャンディー。飲み口もアルコールのパワーが辛さを感じさせますが、十分に甘みがあります。余韻の芳香も焦げた樽の風味とスパイス感のマッチングがよい感じ。1、2滴加水するとフレッシュフルーツ感が増します。このオールドグランダッドのラインはライ麦が多い割にはドライな印象があまりなく、甘さが程良くて、個人的には好きです。そして、なによりコスパが高い。推定2011年ボトリング。
Rating:84/100

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