タグ:84.5点

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2015年、ワイルドターキーはマスターズキープという名の特別な限定版のラインを始めました。その初めてのリリースが今回紹介する「17年」です。エディ・ラッセルはその年、生ける伝説の父ジミー・ラッセルと並んで正式にマスターディスティラーに就任しました。スタンダードなワイルドターキーとは異なる長期熟成の限定版はジミーのセレクトによって過去に幾つか発売され日本ではお馴染みでしたが、そのエディ版となるものがマスターズキープのシリーズということになるでしょう。エディ曰く、マスターズキープ17年はこれまでに製造したワイルドターキー・バーボンの中で最もユニークなバーボンだと言います。その理由の一つは、この17年という熟成期間はワイルドターキーがリリースしたバーボンの中で最も長い年月を経ていることでした。ワイルドターキーは過去(2001年)に日本限定の木箱に入った17年物の101プルーフのバーボンをリリースしていますが、アメリカ国内では15年物よりも長い熟成年数のバーボンをリリースしたことがありません。レジェンドであるジミーは、バーボンの味は8〜12年が最も良いと考えるため、長熟バーボンをあまり好まないという有名な話があって、そういう点からするとMK17にはエディらしさが強く出ています。そして、熟成年数以上にこの17年を特別なものとしたのは、それが造られたバーボンが三つの異なる熟成環境にあったことです。箱に記載されている「№1ウッド、№2ストーン、№3ウッド」というのがそのことを示しています。
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1996年にワイルドターキーはオンサイトの倉庫スペースが不足したため、オフサイトのストーン・キャッスル蒸留所の石造りのウェアハウス(オールドテイラー蒸留所とオールドクロウ蒸留所が一部共有する)で樽を保管し始めました。2010年になると保管されていた樽は再びワイルドターキーに移されました。1996年から2010年までストーン・キャッスルでは様々な熟成年数のワイルドターキー約80000バレルが熟成されていたと言います。つまり「№1ウッド、№2ストーン、№3ウッド」というのは、初めワイルドターキーの木材と金属の組み合わせで造られた熟成を加速する温度と湿度の変動にスピリッツを晒す倉庫で暫く過ごした後、それとは対称的なストーン・キャッスルの安定した室温と多湿により緩やかに熟成する比較的冷涼な倉庫に移され、最終的にまたワイルドターキーの木材/金属の倉庫に戻ったマスターズキープ17年の来歴なのです。

マスターズキープ17年のプロファイルは、17年の熟成期間のうち14年を過ごしたストーン・キャッスルによって大きく影響されたでしょう。それはプルーフにも端的に現われました。ワイルドターキーと言えば101プルーフ、101プルーフと言えばワイルドターキーです。なのにマスターズキープ17年は86.8プルーフしかありません。しかし、実はマスターズキープ17年は、ほぼバレルプルーフでボトリングされています。樽から取り出された時のバッチ・プルーフは、ケンタッキー・バーボンとしては異常に低い89(または88.4とも)プルーフでした。それが更に濾過中にプルーフが失われ、ボトリング時には86.8プルーフになったと言います。これは一般的な多くのバーボンよりも涼しく湿った環境で熟成された独特の貯蔵条件の結果であり、偶発的なエイジング・プロセスに起因すると考えられています。
石は木材よりも優れた断熱材です。そのため石造りの倉庫内は木製のリックハウスに較べて、温度は概ね低く、大きな変動もしません。ワイルドターキーのリックハウスはケンタッキー・リヴァーを見下ろす大きな断崖の上にあり空気循環も良好ですが、オールドクロウ(ストーン・キャッスル)は険しい谷の南側にあってワイルドターキーより数マイル北に位置するにも拘らず、比較的涼しい上に湿度が高く風もあまりないため一般的に気候安定性に優れ、その結果ウィスキーはゆっくりと穏やかに熟成し、熟成感がありながらも軽やかなプロフィァイルを有するとされます。涼しく湿った石造りの倉庫はバーボンよりもスコッチの典型的な熟成環境に近く、アルコールは水よりも早く蒸発し、ケンタッキーに典型的な木製倉庫とは逆にプルーフ・ダウンすることもあり得る、と。にしても、1996年に樽詰めされた時、おそらくは107のバレル・エントリー・プルーフだったバーボンが89プルーフに下がるとは…。何度もバレルを移動したことによる影響もあったのでしょうか。ともかく、熟成の神秘を感じさせる事例ですよね。では、その神秘の一端を頂いてみるとしましょう。ちなみに、マシュビルはその他のワイルドターキー・バーボンと同じ75%コーン、13%ライ、12%モルテッドバーリーです。

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WILD TURKEY MASTER'S KEEP AGED 17 YEARS 86.8 Proof
BATCH № : 0001
BOTTLE № : 67332
接着剤、香ばしい焦樽、古い木材、スパイシーヴァニラ、キャラメルマキアート、タバコ、ムギムギ、アーモンド、ジンジャー。パレートはシロップとオレンジ。口当たりは水っぽい。余韻は度数の割に恐ろしく長いが、過剰に渋い。
Rating:87.5→84.5/100

Thought:先日まで開封していたダイヤモンド・アニヴァーサリーと較べると、香りはこちらの方が甘くなく、接着剤が強すぎるように感じました。スイートな香りもあるのですが、接着剤が邪魔をして感じにくいと言うか…。それでも口に含んだ時はフレイヴァーフルでした。もう口に含んだ瞬間にDAより「あっ、旨っ」となる程に。しかし余韻はウッドに傾き過ぎた嫌いがあります。海外のレヴューを参照すると、最高の香りや味わいではないけれどクラシックなターキー・フレイヴァーとの評が多く、期待していたのですが自分にはマッチしませんでした。おそらくジミーの長熟バーボンに対する否定的な発言を聴く限り、これこそ彼の嫌いな味ではないかと思えるほどバーボンの魅力である甘い香味がウッドの渋味によって掻き消されているように感じます。
タイロンのターキーの熟成庫とストーン・キャッスルの熟成庫の違いが齎す「差」については、正直よく分かりません。確かにターキーらしさを感じる一方で、通常のターキーと違うフィーリングもあるのは分かりますが、それが熟成年数の長さから来るのか熟成庫のスタイルや環境の違いから来るのかが分からないのです。
上のレーティングで点数が下がっているのは、実は味わいの変化が大きかったためです。開封したては味も濃く感じて大変美味しかったものの、何故か一週間経つと余韻に渋さが急に目立ち出し、それは飲み切るまで変わりませんでした。私のボトルだけがそうだったのか分からないので、飲んだことのある方の意見を募りたいです。皆様、コメントより感想をお寄せ下さい(追記あり)。海外のレヴューでMK17を過剰に渋いと言ってる方は見当たらないんですよね…。私の舌がおかしいのでしょうか?

Value:このバーボン、アメリカでは150ドルのMSRPでして、日本でも当初17500円くらいの値札が付けられました。自分としてはマスターズキープ17年は一級のバーボンではありませんが、箱を含めターキーが施されたボトル形状や重厚な銅製のストッパー等はデザイン性と高級感に優れた素晴らしいパッケージングです。また興味深いストーリーもあります。味だけでないそういう側面を考慮するなら「買い」でしょう。ですが、お酒を味のみに対してお金を払っているという感覚の方にはスルーをオススメします。ちなみに私が味のみで評価するなら5000円の価値もありません。但しこれは、私が潜在的に90年代のワイルドターキー12年101と較べる脳を持っているから辛口の評価になってしまった可能性はありますし、基本的に長熟バーボンを好まない個人的傾向があるだけで、そもそも超長期熟成酒を好む方なら真逆の評価はあり得るとだけ付け加えておきます。

追記:私のバーボン仲間で、冷凍庫でキンキンに冷やした幾つかのワイルドターキーの限定版を飲み比べした方がいるのですが、その彼によるとこのMK17は甘かったとのこと。私は真夏でもストレートでしか飲まないので分からないですけど、もしかすると冷したりロックで飲むと渋味が感じにくくなって甘さが引き立つのかも知れません。

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今回紹介するテンプルトン・ライ6年はブランドが始まって10年を経た2016年から販売され始めました。ブランド自体の紹介は以前投稿したテンプルトン・ライ・スモールバッチの時にしているので、そちらを参照下さい。近代のテンプルトン・ライが2006年にスタートした当時はNAS(熟成年数表記なし)のみでしたが、現在ではそれは「4年」に置き換えられ、その上位互換として「6年」があり、更にリミテッド・リリースの「バレル・ストレングス」も発売されラインナップは拡張されています。10周年時にはその数字にちなんで10年熟成の特別版もありました。あと、流行りの後熟物もあります。
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周知のようにテンプルトン・ライ・スピリッツ社は創業当初NDP(非蒸留生産者)でしたが、2018年に漸く自社蒸留を開始し、その新しいオリジナルは2022年にリリースされる予定。なので、今のところ販売されているテンプルトン・ライは全てインディアナ州ローレンスバーグのMGPで生産されるライ95%/バーリーモルト5%のウィスキーをソースとしています。バレル(もしくはジュース)はインディアナからアイオワに送られ、同社はそこで独自の処方と地元の精製水を加えた後、自社施設でウィスキーをボトリングするのです。

ライウィスキーは2010年以降急激な人気の高まりを見せ、販売数を極端に伸ばしました。クラフト蒸留所が独自に造り出すライウィスキーもありましたが、生産量の大きさから言ってその多くはMGPに由来するものでした。MGPの運営するローレンスバーグのプラントはその昔ロスヴィル蒸留所として始まり、禁酒法後にシーグラム帝国の一翼を担った蒸留所です。そこでは主にブレンデッド・ウィスキーに使用するフレイヴァー成分としてライウィスキーを生産していました。シーグラム帝国が崩壊した時、本来はブレンドされることを意図したライウィスキーのバレルは大量に余り、何の目的もなく熟成されていました。誰かがそれを試してみると、それ自体でかなり良い味がすることに気付き、そこで当時の所有者はそれをバルク・ウィスキーのマーケットで販売することにしたのです。これがライウィスキー復興の震源地の一つとなったのは疑いありません。MGPも以前の所有者時代のLDIも、自社ブランドを殆どボトリングしないか全くしなかったため、その存在は近年まであまり知られていませんでしたが、多くの酒類企業の供給元となっていたし今もなっています。ブレットやジョージディッケルを傘下に置く大企業、KBD(ウィレット蒸留所)のようなボトラーやNDPは言うに及ばず、他にもエンジェルズ・エンヴィ、ベルミード、ハイウェスト、ジェイムズEペッパーなど多くの中小の新興蒸留所はMGPから調達することで、熟成酒を準備するための時間とコストを掛けることなく熟成ウィスキーの市場に足を踏み入れることが出来ました。そしてテンプルトン・ライ・スピリッツLLCもかなり早い時期からそうしていた一社だった訳です。

同社は2014年に欺瞞的なマーケティング手法の疑惑で集団訴訟の対象となった後、ウィスキー愛好家の間で議論を呼びました。アンチの急先鋒は著名なウィスキー・ブロガーのジョシュ・ピータースで、彼は「TEMPLETON RYE」を「TEMPLETON LIE」と皮肉った画像を自身のブログに載せました。彼はテンプルトン・ライ6年がリリースされた時にも、宣伝の謳い文句がさほど変わっていないことに腹を立てて、自分はテンプルトン・ライを購入しないし皆もそうすることを望む、とすら書いています。他国に住む我々日本人としては、殆ど嘘を並べた宣伝文句にはある程度距離が取れるので、それほど腹も立たないし、他人事感はあります。とは言え、ウィスキーの世界に限らず情報の透明性が昔より尊ばれる昨今ですから、地元テンプルトンを盛り上げたいばかりに誇大宣伝が過ぎて製品情報に靄が掛かっているのはテンプルトン・ライ自身にも不利益なのではないのかな?とは思います。
まあ、それは措いて、気になるのは以前のスモールバッチNASでも取り上げたフレイヴァーの添加の件です。この件は、集団訴訟への公式の発表でテンプルトン・ライ・スピリッツの会長ヴァーン・アンダーウッド自身が認めています。簡単に要約すると、メイド・イン・アイオワを謳っていたのは、確かにインディアナから調達したウィスキーを使ってはいるが、アイオワで独自の処方を施すことでアイオワ産になっているという認識だった、と釈明したのです。本来「隠れた立場」にいる会長が顔を表したのは創始者のスコット・ブッシュや共同創業者のキース・カーコフでは事態の収束が難しいと判断したからでしょう。
今回取り上げる6年もストレート表記のない「ライ・ウィスキー」。と言うことは、これがウィスキーの「クラス」を表しているのなら、フレイヴァー入りと見られますが…。では、飲んでみることにします。

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TEMPLETON RYE 6 Years 91.5 Proof
推定2019年ボトリング。ピクルス、焼いた木、青リンゴ、ミント、キャラメライズド・シュガー、シリアル、ライスパイス、若草。あまり甘くないスパイシーなアロマ。円やかでありながら水っぽい口当たり。余韻はあっさりめで芳醇とは言い難いが、穀物ぽい香りとハービーもしくはフルーティな苦味が鼻を抜けて行く。
Rating:84.5/100

Thought:私はMGP95ライのファンなので全然美味しく頂いたのですけれど、「あれ?」とちょっと肩透かしを食らった思いでした。過去に投稿した少し昔(2011年ボトリング)のNASと較べると甘い香りとフルーティなテイストが減退していると感じたのです。特徴的だったライチとバタースコッチの強い風味はどこへ? 同じMGP95ライがソースで熟成年数やプルーフィングの近いジョージディッケル・ライと較べても、ややメロウネスに欠けると言うか、円やかさと甘味が少し足りないような…。個人的には、テンプルトン・ライ6年は平均的なMGP95ライの味にしか思えず、どうもフレイヴァーは添加されてないような気がしました。と言うか、この程度でフレイヴァーが添加されてる風味だとしたらダメだろ、と。ちなみに、同時期ボトリングと推測されるストレート表記のある「バレル・ストレングス」を試しに飲んで較べてみると、この6年をそのまま濃くした風味プロファイルという印象を受けました。
これはどういうことなのでしょう? 熟成年数も長く、90プルーフ以上でボトリングされるこの「6年」が、何故たかだか80プルーフしかない「NAS」より劣るのか? 幾つかの可能性を考えてみました。言うまでもなく以下は全て仮説です。

①NASにはフレイヴァーが添加されていたが、年数表記ありの物にはフレイヴァーは添加されていない。もしくは2016〜17年頃はフレイヴァーが添加されていたが、最近の物にはフレイヴァーが添加されていない。
─これは話がややこしくなるですが、まず下の画像をご覧下さい。
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なんとストレート表記のあるシグネチャー・リザーヴなるテンプルトン・ライが存在するのです。これらは私がブログ以外にやっているInstagramの投稿で見つけました。そして、それを投稿している人達はおそらくアメリカ本国の人ではなく、東欧諸国と一部の国の人ではないかと思われるのです(ハンガリー、デンマーク、ポーランド、ロシア、オーストラリアの方々?)。輸出国によってその仕様に差異があるのはないことではありません。にしても、ストレートの4年や6年があるのなら、シグネチャー・リザーヴが発売された時期に「ストレート」なしのテンプルトン・ライも実は中身はストレートだった、なんてこともあるのかな?という想像です。

②ストレート表記のないものはフレイヴァーの添加はされてはいるが、それほど風味に影響はなく、初期のテンプルトン・ライNASは本当にスモールバッチだったので、単純にバレル・セレクトのクオリティが高いため美味しかった。
─ライの人気が上昇し、生産量が増えるということは、バッチングに使用される樽の数が増加するか、或いはバッチング自体の回数が増加することを意味します。ウィスキーが大量生産されると味が落ちるベーシックな理由の一つは、樽選びの基準が下がることでしょう。それだけ多くの樽を選ばなくてはならないのですから。スモールバッチ表記のNASのテンプルトン・ライには、裏ラベルに手書きのバッチ情報が書かれています。一方、最近の4年や6年の裏ラベルには何も手書きでは書かれていません。
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この変化はもしかすると、手書きが出来なくなるくらいの量が生産されているからなのでは? それに、ただでさえMGPの95ライは様々な企業が購入する訳ですから、ある意味、優良バレルが奪い合いなのだとしたら? この説はそれらを考慮して、単に初期のNASの方がハイ・クオリティだったのかも知れないという推測です。

③NASは概ね4年熟成と見られていたが、実は6〜8年の熟成原酒も混ぜられており、それが風味の良さに繋がっていた。
─これは②のバレル・セレクトとも関連しますが、熟成年数表記がない上に、原酒構成は明かされてないのですから、中身を明確に知ることが出来ないので、長熟バレルが混和されていた可能性もなくはないのかと。ある時から日本でのテンプルトン・ライの価格が大幅に下がりましたよね。これ、輸入業者が変わったからなのかと思っていたのですが、もし中身が若い原酒になったことによるプライスダウンだったとしたら?と思い付いた説です。

④私が前回飲んだNASが、2011年ボトリングを2018年に開封した物だったため、その間に「酸化の奇跡」か何かが起こり、たまたま強靭な風味になっていた。
─これは微妙な空気との接触がウィスキーの香味を開かせることもあるかも知れないというお話です。

⑤単に私の舌と鼻がぶっ壊れていた。もしくは脳がおかしくなっていたため壮大な勘違いをしている。
─これは十分あり得る…(笑)。

と、まあ妄想を書き連ねましたけれど、個人的には①番推しですかね。飲んだ印象がそうだったので、自分を信じて。②番は有り得そうな気もしますが、③番④番はないかな…。⑤番は完全にないことを祈ります。テンプルトン・ライ、飲んだことある皆さんはどう思われたでしょうか? ご意見、ご感想、他の説をコメントよりどしどしお寄せ下さい。

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アーリータイムズ・プレミアムは日本市場限定の製品です。調べてみると1993年から発売され、1997年に終売になったとの情報がありました。後の2011年リリースで2014年に製造停止となった「アーリータイムズ354バーボン」同様、このプレミアムも短命だった訳です(354の過去投稿はこちら)。どちらも3~4年で製造されなくなったところを見ると、あまり売れなかったのでしょう。

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(アメリカ流通のアーリータイムズ・ケンタッキーウィスキー)

アーリータイムズのアメリカ本国での流通品は、1983年にそれまでの「ストレートバーボン」規格から中古樽熟成原酒を含む「ケンタッキーウィスキー」への転換がありました。そう、我々日本人がバブル時代に大量のバーボンを輸入し、バーボンブームが到来していたあの頃、「バーボンと言えばやっぱりアーリータイムズだよね」と憧れていたバーボンは、既に本国ではバーボンではなくなっていたのです。アメリカに於けるアーリータイムズ・ケンタッキーウィスキーはボトムシェルフの王者だったかも知れませんが、そのブランド・イメージは「古臭くて安い酒」だったに違いありません。恐らくそうした負のイメージを刷新しようとしたのが354バーボンの発売だったと思われます。しかし、ほんのちょっと先走り過ぎたのか、単なるマーケティングの失敗なのか、とにかくその目論みは外れました。製造中止のアナウンスの際にブラウン=フォーマンのスポークスマンは、消費者はアーリータイムズにプレミアムを求めていなかった、という趣旨の発言を残した程です。
一方、アーリータイムズの輸出用製品はケンタッキー・ストレート・バーボンとして継続されました。世界的な知名度は絶大であり、特に日本では確固たる地位と販売量を誇るブランドだったからです。では、その日本ですらそれほど売れなかった(と思われる)アーリータイムズ・プレミアムとは一体何なのでしょうか?

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ラベルのサイドに書かれた文言はバーボンのありきたりの常套句ばかりで読む価値もないものです。はっきり言えば、ボトルのみから判断できる情報では度数が3%ほど高い43度ということだけ。このプレミアムについて調べていると、或るブロガーさんの記事で「当時価格で1500円」とありました。随分と安くありません? まあ、354バーボンもアメリカでは17ドル前後の販売だったので、「プレミアム」とは言ってもアーリータイムズ自体がバリュー・ブランドだし、ちょっと上位だよ程度の意味しかないのでしょう。1997年発行のバーボン本によると、イエローとブラウンが参考価格で2700円、プレミアムが4000円とあり、実売価格ではないけれどそれなりの差額があります。そして、その本の製品説明によれば、

「プレミアムは、品質へのこだわりをより徹底させた日本限定品。原料を独特の比率で組み合わせ、酵母も専用のものを使っている。熟成が、香りと色、味わいに深みをあたえている。」

とのこと。え? マジで!? 正直言って、この手の本に載っているインフォメーションは疑わしいものが多く、どこまで信憑性があるのか判りません。アーリータイムズ自体の紹介には比較的紙面が割かれてはいますが、97年発行という時期柄か、96年発売のブラウンラベルについて多く語られ、プレミアムに関しては上の引用文だけしか記述はないのです。取りあえずこの件は後で少し触れるとして、このプレミアムという製品、パッケージングがヒドくないですか? プレミアムを謳いながらラベルの色がブラウンとカーキの中間色? え、売る気あるの? スタンダードのイエローより地味になってますけど? プレミアムが販売されていた当時、熟成年数やボトリング・プルーフの違いによってラベルの色の違う2~3種類のヴァリエーションを揃えたバーボンが沢山ありました。その中で、アーリータイムズにも少し度数の高いヴァリエーションがあるのは自然の流れだろうし、ネームバリューだってずば抜けているのだから、プレミアムが売れる潜在能力は大いにあったと思うのです。いくら「水割り文化」の日本人に最も売れているブランドだったとしても、ハイアー・プルーファーが売れる素地はなくはない筈。通常、ボトルやラベル・デザインを変えずにより良質なヴァリエーションもリリースする場合には、上位の物に高価そうに見える派手な色のラベルを使う傾向にあります。スタンダードが白や黒なら、上位のクラスには赤や銀や金などを使うという具合に。ひとえにプレミアムが売れなかった原因はパッケージにあったのではないでしょうか? この渋すぎる色ラベルのアーリータイムズは、どう見てもイエローラベルの廉価版にしか見えず、プレミアム感の欠片もありません。これでは売れる訳がない……と、ここまではプレミアムが売れなかったから終売になったという前提で話を進めました。ですが、逆に順調に売れていたという可能性も考えられます。これについても後で述べることにし、先ずは飲んだ感想を書きましょう。

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1993年ボトリング。キャラメル、焦樽、ブラウンシュガー、ダークフルーツ、バナナ、米、ほんのりバター、絵の具。甘い香りにフルーティさが潜むアロマ。澄んだ酒質。口当たりは水っぽいものの風味はしっかりしている。香りにスパイシーなトーンは感じないが、液体を飲み込んだ後には穏やかなスパイスが現れる。余韻は43度にしてはやや長めで、緩やかな穀物の甘さとビタネスが同居。
Rating:84.5/100

Value:これ、美味しいです。ユニークな風味はありませんが、すっきりしつつコクのあるバランスの取れた味わい。スタンダードのイエローより幾分かフルーティで、イエローラベルに感じやすい嫌な風味も薄いように思いました。今でも2000円程度で販売されていれば常備酒としてもいいですね。ただ、残り三分の一で暫く放置していたら、甘味が弱くなって程よい接着剤が前面に来てしまいました。上のテイスティング・コメントはその前に書いたものです。オークションでのタマ数はそう多くありませんが、今のところ高騰してない銘柄なので、2500~3000円程度で落札出来る模様。

Thought:さて、プレミアムの中身に関してなのですが、飲んでみた感想が飲む前の予想をかなり越えていたこともあり、幾つかの可能性を考えてみました。先ずは、上記のバーボン本自体の信用性がなく、件の引用文もテキトーに書かれたデタラメなものだと仮定した場合、

①単純にイエローラベルよりボトリング・プルーフが高いだけ。だが、3度の違いが風味に及ぼす影響は大きい。
②使われている原酒の熟成年数が僅かに長い、もしくはイエローラベルよりクオリティの高い樽が選ばれている。
③イエローラベルとはトーストの具合が違う樽が使われている(*)。

と、考えるのが妥当だと思います。問題はその引用文が信頼できる真実の情報だと仮定した場合です。注目は「原料を独特の比率で組み合わせ、酵母も専用のものを使っている」という部分。酵母は一旦おいて、この前半の文を素直に解釈し、言葉を補うならば、「イエローラベルとは違うプレミアム独自のマッシュビルを使っている」と言っています。私は過去にイエローラベルとブラウンラベルの比較レヴュー(こちら)を投稿し、そこでブラウンラベルのマッシュビルについて紹介しましたが、このプレミアムまでもが全く別のマッシュビルを使ってるとは到底思えないのです。マッシュビル、特にフレイヴァー・グレインであるライ麦の比率は味わいに大きな影響を与えます。違うブランドにするならまだしも、同じブランド、同じラベルデザインの色違いで、通常そこまではしないでしょう。しかも日本だけのために、更には廉価な販売価格なのにです。しかし、今は引用文が正しいという仮定で話を進めています。そこで思い付いた解釈理論が、

④プレミアムはブラウンラベルの前身であり、中身はブラウンラベルのハイアー・プルーフ・ヴァージョンだった。

というものです。これは実際プレミアムを飲んでみてイエローラベルより私好みだったことから思い付きました。何となくイエローよりライ麦の影響を感じるような味の気がしたのです。ですが、私自身は味覚音痴ですし、それくらいの風味の違いはボトリング・プルーフの差や熟成の具合でどうとでもなりそうな気もし、また同時期のイエローとブラウンとプレミアムをサイド・バイ・サイドで飲み較べした訳でもないので自信はありません。あくまで珍説であり可能性の提供という意図しかないのです(飲んだことのある皆さんのご意見、どしどしコメントへお寄せ下さい)。そして、珍説ついでに妄想を膨らませてみると、実はプレミアムはよく売れていたのではないか?とまで思い直し、

⑤プレミアムは実験的に開発され、日本市場で好評だったが、のちに日本人の味覚に合わせて40度にプルーフィング・ダウンし、ブラウンラベルとしてリニューアルされた。

というストーリーまで考え付きました。プレミアムの中止が97年、ブラウンの発売が96年ですから、なくはない推論かなと。まあ、どれもバーボンファンのとりとめのない与太話と思って聞き流して頂ければ幸いです。暇潰しには最適でしょう?(笑)。それと、身も蓋もない言い方ですが、

⑥単に90年代のボトルは今よりレヴェルが高かった。

という説も付け加えておきます。
最後に酵母に関してですが、件のバーボン本によるイエローとブラウンの違いの説明では、イエローラベルは「熟成期間の異なる酵母を4種類混ぜ合わせて」あり、ブラウンラベルは「イエローラベルの4種類の酵母に、性質と熟成期間の異なる3種類の酵母をプラスして華やかさを醸し出す」とあります。これってまるでフォアローゼズ蒸留所のようですよね? ブラウン=フォーマンもこうしてバーボンを造ってるという話を私は他では聞いたことがないのですが、本当なのでしょうか? こちらもご存知の方はコメントよりご教示頂ければと思います。


*ここで何度も言及しているバーボン本のアーリータイムズ・ブラウンラベルの説明では、トーストの加減がイエローラベルとは違う旨が記されています。③はそこからの類推として、プレミアムもそうだった可能性を示唆しました。

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ベイカーズは、ジムビームの誇るスモールバッチ・コレクションの一つで、92年からコレクションの三番目として発売されました。その名はベイカー・ビームにちなんで付けられています。彼は、同じくスモールバッチ・コレクションの筆頭とも言えるブッカーズの名の由来であるブッカー・ノーのカズン(はとこ?)であり、ジム・ビームことジェイムス・ボーリガード・ビームの弟であるパーク・ビームの孫に当たります。父親はビーム蒸留所の伝説的マスターディスティラー、カール・"シャックス"・ビームです。
蒸留一家に生まれたベイカーは弟のデイヴィッドと共に、蒸留所の上の丘に建つ、現在ではジェレマイア・ハウスと呼ばれる「大きな白い家」で育ちました。子供の頃、彼らは後にヘヴンヒル蒸留所のマスターディスティラーとなるいとこのパーカー・ビームと一緒に、蒸留所の向かい側のバーンハイム・フォレストで自転車に乗って遊んでいたそうです。ビーム家の他の殆どの人と同じように、兄弟は自然と蒸留所で働くようになり、長年に渡りクレアモントで蒸留所の職務を分担しました。ベイカーが最初に蒸留所で働き始めたときは夜間警備員だったと云います。その後、整備から蒸留まで蒸留所の様々な仕事をこなし、最終的にクレアモント・プラントでヘッドディスティラーに登り詰めました。同じ頃、ブッカーはビーム・ファミリー第六世代マスターディスティラーになる前にボストン・プラントを監督していました。
バーボン史的に言うと、1980年代半ばから90年代初頭にかけてのシングルバレルやスモールバッチと言われるプレミアム・バーボンの誕生が、現在のバーボン人気の礎を築いたと見られています。当時、消費者(海外市場、特に日本市場の)はスコッチのシングルモルトのようなもう少し高級なバーボンを求めました。或いは逆に、酒類販売会社のPRが消費者をそのように育てた側面もあったでしょう。ブッカーはブランド・アンバサダーとして「スター性」を持った最初のマスターディスティラーでした。スモールバッチ・バーボンを世に広めた功績は計り知れません。しかし、ベイカーは知名度こそブッカーに劣るものの、ビーム蒸留所のメイン・ファシリティであるクレアモントでディスティラーをしていた人物です。ビームの二つの工場では、ベイカー、デイヴィッド、ブッカーが同時にディスティラーでした。ベイカーはクレアモントでデイ・シフトを、デイビッドはナイト・シフトを担当しました。ブッカーはボストンです。二つのプラントの相対的なステータスを考えると、ベイカーは蒸留技術者としては寧ろブッカーより重要だったと思われます。ベイカー・ビームとはそれほどの男なのです。では、そのバーボンはどのようなものなのでしょうか?

ベイカーズはベイカーの個人的嗜好にインスパイアされたバーボンだと言います。マッシュビルは通常のジムビームと同じ77%コーン/13%ライ/10%モルテッドバーリーで、酵母も同じ。そして最低7年熟成、107プルーフ(*)でのボトリング。ビームのスモールバッチ・シリーズは、一説によると通常のジムビーム・ラインより蒸留プルーフが低いともされていますが、公表されてはいないので真相は判りません。また、ベイカーズをクリエイトするためのバレルは、ラックハウスの上層フロアからのみ選ばれると伝えられることがあり、サントリーの公式サイトでもフレッド・ノーの言葉を引用する形で「ベイカーズは上段の8~9段(**)で7年超の熟成を経たもの。樽香の芳しい、最もパンチのあるフルボディタイプ」と書かれていますが、ベイカー本人によれば最上階を含む倉庫のあらゆるところから樽を引き出して、力強いフレイヴァーとベイカーズ自慢の絹のように滑らかなフィニッシュを持ったバランスの良いミディアムボディのバーボンを造る、とのこと。
余談ながら、ベイカーはベイカーズ以外のバーボンだったら何が好きですかという質問には、同じスモールバッチ・コレクションのベイゼル・ヘイデンズと答えています。

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ベイカーズは発売当初は上画像左のデザインでした。「B」の大きい現行のデザインになったのは97年頃と思われます。バッチナンバーの数字に熟成年数の7を足した推測です。ラベルにはバッチナンバーの記載はありますが、 手書きではないですし、ダミーというか、それっぽく見せただけのような気がします。おそらくラベルデザインの違いによる二種類しかないのではないでしょうか?  ご存知の方はご教示ください。
さて、今回は新旧対決と行きたかったんですが、旧ラベルのほうは数年前に飲み終えてしまい、サイド・バイ・サイドでの比較ではないのでオマケです。

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BAKER'S Aged 7 Years 107 Proof
batch no. B-90-001
ボトリング年不明、推定2017年。キャラメルマキアート、アーモンド、フルーツガム、焦げ樽、トーストブレッド、エナジードリンク、トマト。スイートなアロマ。イースト由来とされるビーム・ファンクも。ほんの少しバタリーな口当たりで、度数のわりにするりとした喉越し。余韻はハイプルーフから期待されるほど長くはない。基本的にはオーク、ナッツ、フルーツ、スパイスのどれもが突出しないバランスだが、残量が半分くらいになってからはキャラメル系の甘い香りがやや減じ、オレンジでもリンゴでも洋梨でもチェリーでもメロンでもない、あのビーム・フルーツとしか言い様のない独特のフルーティさが強く顔を覗かせた。また、一二滴の加水だとストレートとあまり変わらないが、四滴ほど加水すると味わい的には薄めたブッカーズに近いものを感じるようになった。
Rating:85/100

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BAKER'S SEVEN YEARS OLD 107 Proof
batch no. B-85-001
ボトリング年不明、推定90年代。飲んだのが数年前なので細かいことが言えないが、現行のものほど甘味がなかった気がする。ロット間、もしくはボトルコンディションの差なのだろうか? それなりに濃くはあるものの、あまり旨味も感じられなかった。そこがビームらしいと言えばらしいのだが…。
Rating:84.5/100

Thought:ジムビームのスモールバッチ・コレクションの中で、おそらく一番売れてないのがベイカーズだと思われます。他のコレクションのバーボンにはヴァリエーションや限定リリースがあるのに、ベイカーズだけないからです。人気がない理由は主に3つ思い付きます。
①製品仕様のキャラ立ち
ベイゼル・ヘイデンズは唯一マッシュビルが違い、尚且つ低プルーフ、そして独特の意匠のラベルデザイン。ノブクリークのボトルデザインも独特です。ブッカーズはバレルプルーフでアンフィルター。どれも個性が際立っています。それに比べてベイカーズは、ボトル形状はブッカーズと似ているし、プルーフもノブクリークとブッカーズの中間です。これではどうも中途半端な立ち位置の印象を与えかねません。
②人物の知名度
スモールバッチ・コレクションを創始したブッカー・ノーと較べると、どうしたってベイカー・ビームの知名度は劣ります。これは対外的なディスティラーと対内的なディスティラーという役割違いに由来するのでどうしようもないです。ベイゼル・ヘイデンにしてもオールド・グランダッド関連で名前が挙がる人だけに、知名度の差は埋めようもないでしょう。ノブクリークのみ小川の名前ですが、その説明の際にリンカーン大統領が持ち出されたりしては勝負になりません。
③ラベルのデザイン
そして①の延長線上の話ですが、個人的には何よりベイカーズのラベルデザインが一際悪いと思っています。他の3つと比較して余りに手抜き感が否めない。いや、そもそもなぜベイカーズだけがラベルのリニューアルをしたのかが不明です。ノブクリークとベイゼル・ヘイデンズは発売当初と殆ど変わらず、ブッカーズはマイナーチェンジぐらいに留まっている。なのにベイカーズだけ大幅にデザインが変更されているではないですか。個人的にはリニューアル前の方がよほどカッコいいと思います。
それとラベルではないですが、特に駄目なのはワックストップです。これでは、ただでさえボトル形状がブッカーズと似ているのに、ワックスシールドしたら余計に似て、安易なブッカーズの廉価版に見えてしまいます。そこに来て大きな「B」ですよ? ブッカーズだって頭文字はBですからね? そろそろデザインの刷新を図るべき時期が来ているのではないでしょうか。せっかく美味しいバーボンなのに勿体ないです。まあ、こんなところで文句を言ってもしょうがないのですが…。


*オールド・ウェラーなどにも見られる107というきりの悪い数字は、バーボン業界では伝統的な数値です。1962年以前、110プルーフがバレル・エントリー・プルーフだった時代には、107プルーフでのボトリングこそが今日言うところの「バレルプルーフ」に相当しました。

**括弧で囲った引用文はいわゆる「原文ママ」なので、ちょっと誤解を与えかねない表現になっています。解る人には解るかもしれませんが、「上段の8~9段」と云うのは「上層階の8~9階」という意味です。ジムビームのラックハウスは九階建てで、一つのフロアーに樽を三段積みが基本だからです。上段の8~9段」と表現されると、何だか一階建ての熟成庫にバレルが九段積み重なってるようなイメージがしませんか? そのため個人的には使いたくない表現なのですが、引用なのでそのままにしてます。

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テンプルトン・ライは日本でも酒販店やバーで取り扱う店が多く、ライウィスキーの中では比較的有名なブランドかと思います。ラベルに使われている写真は禁酒法下のスピークイージーでの一葉でしょうか? とても雰囲気あるラベルでカッコいいですよね。
伝説によればテンプルトン・ライは、元々はアイオワ州キャロル郡の小さな町テンプルトン(人口は2010年の国勢調査で362人だった)の農家の人々が収入を補う方法として禁酒法期間中に造られ、それが高品質であったことから「ザ・グッド・スタッフ」と知られるようになり、シカゴ、オマハ、カンザスシティのスピークイージーで人気があったと伝えられています。しかも、あの伝説的ギャングスター アル・カポーンのお気に入りであったと言われ、晩年アルカトラズ刑務所に投獄されたカポーンは刑務所の中にあの手この手でテンプルトンを持ち込ませ、独房(AZ-85)からはボトルが発見されているのだとか。まあ、この手の話はマーケティング上のバックストーリーなので、正直どこまで本当か判りません。

現代のテンプルトン・ライは、2001年頃(または02年とか05年という説もあった)、アイオワンのスコット・ブッシュがテンプルトンの復活を思い付き、禁酒法時代のレシピを知る人を探して、メリルとキースのカーコフ親子とパートナーシップを組み、テンプルトン・ライ・スピリッツLLCを立ち上げたのが始まりで、2006年に初めての製品が市場にリリースされました。アイオワ州以外での流通は2007年8月に開始され、2013年には全国的に流通するようになったと言います。日本語でテンプルトン・ライを検索すると、古い記事で2008年の日付が見られ、かなり早い時期から日本にも輸入されたうていたのが伺えます。

さて、トップ画像の物、つまり今回のレヴュー対象は、現行製品とは若干異なる旧いラベルの物です。このラベルの変更には、単なるリニューアルではない困った理由があります。テンプルトン・ライは2014年にラベルの虚偽表示に対する集団訴訟の対象としてシカゴの法律事務所から訴えられ、仕方なくラベル表記の変更をすることになったのです。おそらく訴えられていなければラベルはそのままだったのではないでしょうか。2015年には集団訴訟和解案に基づき、2006年以来製品を購入した顧客への払い戻しをするとも発表されました(*)。なぜこんなことになったかと言うと、テンプルトン・ライは発売当初から実際には違うにも拘わらず、禁酒法時代のレシピを再現してアイオワ州で少量生産されているかの如き体裁をとり、消費者のミスリーディングを誘発しかねないマーケティングを行っていたからです。そしてそれはラベルの表記にも端的に現れていました。
実際のテンプルトン・ライは、インディアナ州ローレンスバーグにある元シーグラムの大型蒸留所(現MGP)で蒸留され熟成されたバレル(95%ライ/5%バーリーのライウィスキー)を購入し、それをアイオワ州へと運んだ後、ケンタッキー州ルイヴィルにあるクラレンドン・フレイヴァーズ社のアルコール・フレイヴァリング・フォーミュレーションを添加してからボトリングして販売されています。訴えた人の主張は意訳して言えば「こっちはアイオワ州の手作りのウィスキーと思って買ってんだ、違うなら金返せ!」ということでしょう。そしてその根拠としてラベルの虚偽表示を突いた、と。
ウィスキー業界に精通してる人なら周知のように、創業したてのクラフト蒸留所は熟成されたウィスキーを持たないため、アンエイジドで売れるウォッカやジンやムーンシャインなどを生産し販売する一方で、大手の蒸留所から熟成したウィスキーを仕入れ、それを独自のブランド名のもとに販売したりします。また創業時には蒸留器を所有せず、すなわち自ら蒸留を行わず、お金を稼いでから蒸留所を建設し、自社蒸留を開始するNDP(非蒸留業者)の存在もあります。こうしたNDPの中にはウェブサイト上に蒸留器の写真を掲載し、恰かも現実に蒸留してるかのように見せかけるところもあったりしました。テンプルトン・ライ・スピリッツもご多分に漏れず、こうしたNDPの一つでした。他所から原酒を調達し、オリジナルのラベルを貼りつけてボトリングするウィスキーのことを「ソースド・ウィスキー」とか「ソーシング・ウィスキー」と言いますが、これ自体は悪いことではありません。テンプルトン・ライが問題だったのは、ウィスキーのソースを意図的に難読化し、ラベルの真実性を歪めてしまったことです。アメリカの連邦規則ではラベルには真実を書かねばなりません。ラベルの変更点は主に3つです。
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先ずバックラベルに「インディアナ州で蒸留」という言葉が追加されました。ウィスキーが当該ブランドの場所とは異なる州で蒸留された場合、蒸留された州をラベルに記載しなければならないという規定があるからです。そして「SMALL BATCH」が「THE GOOD STUFF」に。スモールバッチというのは、厳密に言わなければ少量生産のことと思っていい用語です。MGPは大きな蒸留施設ですから、当然少量生産ではないのでこれを変更しました。あと「PROHIBITION ERA RECIPE」が熟成年数表記へ。プロヒビション・エラ・レシピと言うのは「禁酒法時代のレシピ」の意です。これはテンプルトン・ライ・スピリッツの共同設立者メリルの父でありキースの祖父であるアルフォンス・カーコフのレシピを指します。そのレシピは公にはされていませんが、おそらく砂糖黍90%/ライ麦10%のような典型的なムーンシャインのレシピであった可能性が高いとされ(**)、ライウィスキーではありませんでした。つまり禁酒法時代のレシピとは違うのでこれも変更したのです。バックラベルの文言も段階的に変化しており、「produced from~」から「based on~」になり、最終的には「Kerkhoff」の名前も出てきました。
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「~から造ってる」と言い切っていたのが「~に基づいて」とやんわりした表現になっていますが、基づいてすらいないのでは?という疑問もなくはありません。有り体に言えば、MGPの95%ライウィスキーが買い付け易い材料だったからソースとしただけで、禁酒法時代のレシピとは何の関係もないでしょう。テンプルトン・ライには、ライウィスキー人気が爆発的成長を見せる前に先鞭をつけた先見の明はあったにしても、少々誇大宣伝が過ぎてしまった感があります。
とは言え、悪い話ばかりでもありません。2018年夏には、ついに蒸留所が完成し稼働し始めました。アイオワ産のテンプルトン・ライは計算上2022年あたりにリリースされると予想されます。テンプルトン・ライ・スピリッツの会長ヴァーン・アンダーウッド氏によると、従来のMGPウィスキーを出来るだけ複製するつもりだ、とのことです。どのようなものが出来上がるか楽しみですね。

さて、ラベルの件は現在では手直しされていますし、誇張表現はアメリカンウィスキー業界の宿痾とも言え、遠く日本に住む我々にはアメリカの消費者保護問題に深く立ち入る必要性はあまりないでしょう。まあ、そういうこともあったということです。寧ろウィスキー飲みにとって興味をそそられるのは、ラベルよりも中身、先に少し触れたフレイヴァリング製剤の添加の方です。アメリカの有名なウィスキー・レヴュワーは、フレイヴァーの添加(とキース・カーコフの顧客へのメッセージビデオの釈明)に怒り、彼のウェブサイトのレーティング史上初の00点をテンプルトン・ライに付けています。
もう一度だけ、ラベルをよく見て下さい。どこにも「ストレート」の文字がないでしょう。テンプルトン・ライはストレート・ライウィスキーではありません。TTBの規定では、ストレートを名乗るためにはフレイヴァーを加えてはならないからです。また容積の2.5%を越えるフレイヴァーを加えてしまってはライウィスキーすら名乗れなくなります。そして最も重要なのが、加えられるフレイヴァーはそのクラスまたはタイプの構成必須要素でなければならないという規定なのですが、ここまでくると素人に判断できるレヴェルを越えています。判ることは、もしテンプルトン・ライが規定を遵守しているのならば、必須成分をもつ香料を2.5%以内含んだライウィスキーである、と言うことだけです。
上に挙げたレヴュワーは、これではどの香味成分がMGP由来のものかケミカル・フレイヴァー由来のものか分からないという主旨のことを述べていますが、確かにその通りです。そもそもMGPの95%ライウィスキーはそれ自体で豊かなアロマとフレイヴァーを持っています。果たしてフレイヴァリング製剤を添加する必要があったのかどうか? テンプルトン側の公表している理由としては、創業者の先祖によって造られた禁酒法時代のオリジナル・レシピの風味プロファイルに近づけるため、だと言いますが…。とにかく飲んでみましょう。

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TEMPLETON RYE 80 Proof
BATCH:4
BARREL:239
BOTTLE:167
BOTTLED IN 02-11-2011
ライチ、バタースコッチ、ミント、トーストした木、洋梨のシャーベット、香草、ライスパイス、青リンゴ、若草、パセリ、漢方薬。40度にしては物凄く香りが強く、45度以上の物やもう少し熟成を経た物と同等かそれ以上。口の中では仄かな甘味と爽やかさ、苦味とスパイスが同居する。中身が残り三分の一くらいになってから、かなり余韻に苦味が目立つようになったが、ビターチョコ系の苦味ではなく、香草やスパイス系の苦味。飲んでも旨いが、香りがハイライトといった印象。
Rating:87(85.5)/100

Thought:私が初めてテンプルトン・ライを飲んだ時は衝撃を受けました。それまで飲んできたライ麦率51%程度と見られるライウィスキー(ジムビーム・ライやワイルドターキー・ライ等)とはまるで比べ物にならないフルーティさと香草の風味を感じたからです。こんな美味しいウィスキーがあったのか、と感動すら覚えました。以来MGP95ライのファンとなり、同じソースではあっても違うブランドのライウィスキーをいくつか飲みました。しかし、確かに同系統の風味を感じるものの、なぜかそこまでの感動はありませんでした。味であれ何であれ「初体験の衝撃」は脳裏に深く刻まれ、忘れ難く、時に誇大化するものです。また「慣れ」は脳への刺激を緩慢化するものでしょう。それがため、感動がなくなってしまったのかなと思っていたのですが、今回改めてテンプルトン・ライを飲んでみたところ、他のMGP95ライと較べて、やはり圧倒的に強いアロマ(ライチとバタースコッチ)を持っていると感じました。特にそれはテイスティング・グラスではなくボトルの口から直接匂いを嗅いだ時に顕著です(テイスティング・グラスだと他の香味成分を拾い易いようで、トースティなウッドと穀物感の方が前面に出ます)。もしかするとこの強いアロマの要因こそがフレイヴァリング製剤にあるのではないでしょうか? 実を言うと、テンプルトン・ライと並行して同じくMGP95ライであるブレット・ライとジョージディッケル・ライも比較のため開封して試飲していたのですが、テンプルトン・ライは80プルーフというロウワー・プルーフにしては強すぎるアロマが少し奇妙に感じなくもありませんでした。これは思ったより添加フレイヴァーが効いているような気がします。飲んだことのある皆さんのご意見を伺いたいところですね。
なお、上のレーティングで括弧をした点数は、フレイヴァーが入っていない状態を仮定した想像上の得点です。

Value:テンプルトン・ライの日本での販売価格は概ね4000~5000円です(追記あり)。他のMGP95%ライをソースとしたブランドに較べ、80プルーフであることを考慮すると、やや割高感は否めませんが一飲する価値は十二分にあると思います。もし安さを優先事項とするならブレット・ライという選択がベストでしょう。なによりブレットは流通量が多い=入手しやすいというメリットがあります。


*レシートがなくても一瓶につき3ドル、一人6本分まで。レシートがある場合は倍の6ドルが払い戻されたとか。

**2006年にテンプルトン・ライ・スピリッツがTTBに最初のラベル承認証明書を申請した折り、その1つは「Templeton Rye Kerkhoff Recipe」と呼ばれるものだったと言います。それは他の分類の対象とならない製品を包括する「特殊蒸留スピリット」に分類され、ラベルには「ケイン90%ライ10%から蒸留されたスピリッツ」と書かれていたそうな。これはホワイト・ラムのようなニュートラル・スピリッツとフレイヴァーに寄与するライ麦の蒸留物を少し混ぜたものと予想され、その製品がこれまでに製造されたのか判りませんが、唯一記録に残っているカーコフ・レシピがこれだそうです。

追記:現在販売されている現行の「テンプルトン・ライ4年」はもっと値下がって買い求めやすくなっています。このレヴューがNASであったこともあり、記事を修正せず追記にしました。

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Evan Williams Green Label 7 Years 86 Proof
エヴァンウィリアムスの緑ラベルは、現在では4年熟成で80プルーフとなってしまっていますが、80年代から90年代にかけて日本に流通していた物は7年熟成で86プルーフでした(*)。黒ラベルにしてもその当時は8年熟成90プルーフでした。現行の黒ラベルはNASの5〜7年熟成で86プルーフですから、昔の緑ラベルは現行の黒ラベルをスペック的に上回っています。そして、なにより蒸留された施設の違いもあります。バーズタウンにあったヘヴンヒル蒸留所は96年の悪夢のような大火災により消失。その後、I.W.ハーパー等を造っていたルイヴィルのバーンハイム蒸留所を購入して蒸留を再開しましたが、この火災前に蒸留された原酒のことを欧米ではプリ・ファイヤー・ジュースと言い、味わいは現行の物より香味成分が強いとされ、失われた蒸留所への憧憬と共にバーボンマニアには珍重されています。

さて、そこで今回のボトルは95年ボトリング、言うまでもなく火災前のジュースという訳です。では、飲んでみましょう。

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濃厚なキャラメル香、湿った木、チェリーコーク、ローストバナナのキャラメルソースがけ、ベーキングスパイス、あんずジャム→プルーン、ブラックコーヒー。口中は酸味が強め。余韻に胃腸薬と僅かなミント。現行製品とは異なるクラシックなバーボンノート。43度にしては余韻も長く濃密な風味。ただし、クリーミーな口当たりではない。見た目は少し濁りがあるが、味はそれほど劣化しておらず、これは当たりの一本。現在のブラックラベルより遥かに複雑な味わいで、90年代のスタンダードバーボンがハイレヴェルだったことを偲ばせる。ラッパ飲みやテイスティング・グラスで飲むよりもショット・グラスで飲むのが最も美味しかった。個人的にはもう少し酸味とえぐみがない方が好みなので点数は抑えめ。
Rating:84.5/100


*他にも6年や5年熟成の物もあったようです(もしかすると販売地域の違いなのかも。私自身、写真で見ただけなので詳細は分かりません)。

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REDEMPTION RYE 92 Proof
Batch No:241
Bottle No:7099
アメリカで見事にライ人気が復活を遂げるなか、リデンプション・ライは確固たる地位を築いたブランドの一つです。名前のリデンプション(償還、救済、贖う、買い戻し)というのは、禁酒法以前にアメリカンウィスキーの主流だったライウィスキーの復権が製品コンセプトだから。と言っても、バーボンもリリースされてます。また、製品意図としてマンハッタンやオールドファッションドのベースとして提供されているようです。
現在では親会社がDeutsch Family Wine & Spiritsとなり、ボトルとラベルがリニューアルされてまして(おそらく2017年あたりから?)、画像の印象的なトールボトルは廃止となりました。中身のジュースは変わらずMGPの95%ライで、ケンタッキー州バーズタウンにあるDave SchmierとMichael Kanbarが運営するバーズタウン・バレル・セレクションズによってボトルリングされています。熟成年数は平均2.5年と言われていますが、ラベルにストレートライと書かれてないのと、裏ラベルに「Rye whiskey is less than one years」と書かれているところを見ると、おそらく1年熟成の原酒がかなり入っているのでしょう。では、テイスティングへ。

焦がした木、青リンゴ味のかき氷、芹、蜂蜜、洋梨、ライスパイス。全体に若草及びハーバルなアンダートーンが感じられる。余韻にはスパイス感と共に土っぽさも。口に含むと若い原酒のせいかピリピリするし、喉越しはかなりスパイシーだが、その刺激が心地よく、味わい的にも未熟感が却って好結果という印象。しかもビッグ・フレイヴァー。同じMGPの95%ライを使用し、似たようなスペックのエズラブルックス・ライ(※)と較べてアロマ/フレイヴァー/フィニッシュ全てに於いて強い。液体を光に透かして見ると、細かい粒子のような浮遊物がかなり見える。これはもしかするとフィルターをあまりかけていないのかも知れない。思うにアルコール度数もパーフェクト。

海外での評を見ると、ストレートで味わうには若すぎ、カクテルのベースにはオススメとする意見もありましたが、個人的にはガンガンとストレートで飲みたい味わいです。比較的安価にライ・フレイヴァーを楽しめるイチオシの一品。現行品と較べたことはありませんし、バッチ間の味の変動はあるでしょうが、少なくとも私の飲んだボトルはそうでした。
Rating:84.5/100


※ネットで調べるとエズラブルックス・ライはMGPの95%ライをソースとしているとの説明が多いのですが、当記事を書いた後にそうでない可能性が発覚しました。ですが、記録として記事内容を変更せず投稿しています。 

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Evan Williams Bottled in Bond White Label 100 Proof
ヘヴンヒルの看板製品と言えるエヴァンウィリアムスのボトルドインボンド。通称ホワイトラベルとも呼ばれ、2012年に市場へ導入されたと言います。でもこれって昔もありましたよね?  一旦終売になってからの再導入という意味でしょうか?  もしくはアメリカ国内では昔は販売されてなかったか、或いは地域限定販売だったのかも知れません。
マッシュビルは当然エヴァンブラックやエライジャクレイグと同じで、コーン/ライ/バーリーがそれぞれ75%/13%/12%(他説では78%/10%/12%)。また、熟成年数は実質5年だそうです。

ボトルドインボンド(またはボンデッド)というのは1897年に制定された主に商標と税収に関わる法律で、単一の蒸留所・単一の年・単一のシーズンに蒸留され、政府管理の連邦保税倉庫で最低4年以上熟成し、100プルーフ(50度)でボトリングされたスピリットのみ、そう称することが許されます。またラベルには蒸留所の連邦許可番号(DSPナンバー)の記載が義務づけられ、ボトリング施設も記載しなければなりません。上の条件を満たした物は緑の証紙で封がされ、謂わばその証紙が消費者にとって品質の目印となっていました。紛い物やラベルの虚偽表示が横行していた時代に、ラベルには真実を書きなさいよというアメリカ初の消費者保護法にあたり、結果的に蒸留酒の品質を政府が保証してしまうという画期的な法案だったのです。現在では廃止された法律ですが、バーボン業界では商売上の慣習と品質基準のイメージを活かして、一部の製品がその名残を使っています。このEW BIB White Labelもその一つ。では、レビュー行きましょう。

本ボトルは2015年ボトリング。一言、キャラメルボム。コーンフレークにキャラメルをかけてほんの少しスパイスを振りかけたような感じ。余韻はリンゴの皮の煮汁。複雑さのない単純で直線的な味わいながらも、それが却って好結果という典型例。開封直後から甘いキャラメル臭全開で美味しかった。ボトル半分の量になると甘い香りが減じてしまい、他の香味成分が開くのかと思いきやそうでもなく、全体的に穀物感の強い少々退屈なものへ。とは言え、相変わらず旨いは旨い。これは100プルーフの成せる業か。
同じヘヴンヒル産で、これより度数が高く熟成年数の長いファイティングコック6年と比べて、キャラメル香の豊富さと甘みで勝ってる(ただし、余韻の複雑さでは負ける)。このブランドによる差異を、熟成庫のロケーションの違いとバレルセレクトでしっかりと造り分け、尚且つどのロットも継続的にこのキャラクターで安定しているのだとしたら大したもの(他年度製品と比べた事がないので判らない)。
Rating:84.5/100

Value:上でファイティングコック6年を持ち出して比較しましたが、本来であれば較べたいのはヘヴンヒル・ボトルドインボンド・ホワイトラベル6年でした。ところがそのHH BIB 6yrはケンタッキー州限定の製品らしく、日本では購入しづらいときてます。そこで同蒸留所産でスペックと価格の似ているのが上述のFC 6yr(*)だったのです。で、それら二つはキャラクターは若干違えど私的には同点です。お好みの方を買えばいいでしょう。
さあ、ここからが問題なのですが、日本に於いて人気の高いエヴァンウィリアムスの一つに赤ラベル12年というのがあります。これは日本限定(**)の製品でして、約3000円で購入できてしまいます。そしてこの白ラベルは2500〜3000円で販売されているのです。赤ラベルのほうがフルーティーさと複雑さで勝りつつ、なおパワーも劣っていない格上のバーボン。アメリカ国内では安くて旨いという評判を誇るボトルドインボンドも、500円の差額、時には同額で格上の赤ラベルが買えてしまう日本の状況下では、正直言ってその存在意義は小さいと言わざるを得ません。かなり美味しいバーボンらしいバーボンだけに、もし2000円だったら大推薦なのですが…。いや、赤ラベルが4000円程度であれば、2500〜3000円の白ラベルも存在意義はあります。あとはお好み次第。


*現行のファイティングコックは熟成年数の表記がなくなりました。6年より若い原酒が入ってる可能性が高いです。例えば6年と4年のブレンドとか。

**アメリカでもヘヴンヒルのギフトショップでは販売されているようです。私が直に目で見た情報ではないのですが、Instagramで$140と言ってる方がいました。日本の恩恵に感謝するしかありませんね…。

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