バーボン、ストレート、ノーチェイサー

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テンプルトン・ライは日本でも酒販店やバーで取り扱う店が多く、ライウィスキーの中では比較的有名なブランドかと思います。ラベルに使われている写真は禁酒法下のスピークイージーでの一葉でしょうか? とても雰囲気あるラベルでカッコいいですよね。
伝説によればテンプルトン・ライは、元々はアイオワ州キャロル郡の小さな町テンプルトン(人口は2010年の国勢調査で362人だった)の農家の人々が収入を補う方法として禁酒法期間中に造られ、それが高品質であったことから「ザ・グッド・スタッフ」と知られるようになり、シカゴ、オマハ、カンザスシティのスピークイージーで人気があったと伝えられています。しかも、あの伝説的ギャングスター アル・カポーンのお気に入りであったと言われ、晩年アルカトラズ刑務所に投獄されたカポーンは刑務所の中にあの手この手でテンプルトンを持ち込ませ、独房(AZ-85)からはボトルが発見されているのだとか。まあ、この手の話はマーケティング上のバックストーリーなので、正直どこまで本当か判りません。

現代のテンプルトン・ライは、2001年頃(または02年とか05年という説もあった)、アイオワンのスコット・ブッシュがテンプルトンの復活を思い付き、禁酒法時代のレシピを知る人を探して、メリルとキースのカーコフ親子とパートナーシップを組み、テンプルトン・ライ・スピリッツLLCを立ち上げたのが始まりで、2006年に初めての製品が市場にリリースされました。アイオワ州以外での流通は2007年8月に開始され、2013年には全国的に流通するようになったと言います。日本語でテンプルトン・ライを検索すると、古い記事で2008年の日付が見られ、かなり早い時期から日本にも輸入されていたのが伺えます。

さて、トップ画像の物、つまり今回のレヴュー対象は、現行製品とは若干異なる旧いラベルの物です。このラベルの変更には、単なるリニューアルではない困った理由があります。テンプルトン・ライは2014年にラベルの虚偽表示に対する集団訴訟の対象としてシカゴの法律事務所から訴えられ、仕方なくラベル表記の変更をすることになったのです。おそらく訴えられていなければラベルはそのままだったのではないでしょうか。2015年には集団訴訟和解案に基づき、2006年以来製品を購入した顧客への払い戻しをするとも発表されました(*)。なぜこんなことになったかと言うと、テンプルトン・ライは発売当初から実際には違うにも拘わらず、禁酒法時代のレシピを再現してアイオワ州で少量生産されているかの如き体裁をとり、消費者のミスリーディングを誘発しかねないマーケティングを行っていたからです。そしてそれはラベルの表記にも端的に現れていました。
実際のテンプルトン・ライは、インディアナ州ローレンスバーグにある元シーグラムの大型蒸留所(現MGP)で蒸留され熟成されたバレル(95%ライ/5%バーリーのライウィスキー)を購入し、それをアイオワ州へと運んだ後、ケンタッキー州ルイヴィルにあるクラレンドン・フレイヴァーズ社のアルコール・フレイヴァリング・フォーミュレーションを添加してからボトリングして販売されています。訴えた人の主張は意訳して言えば「こっちはアイオワ州の手作りのウィスキーと思って買ってんだ、違うなら金返せ!」ということでしょう。そしてその根拠としてラベルの虚偽表示を突いた、と。
ウィスキー業界に精通してる人なら周知のように、創業したてのクラフト蒸留所は熟成されたウィスキーを持たないため、アンエイジドで売れるウォッカやジンやムーンシャインなどを生産し販売する一方で、大手の蒸留所から熟成したウィスキーを仕入れ、それを独自のブランド名のもとに販売したりします。また創業時には蒸留器を所有せず、すなわち自ら蒸留を行わず、お金を稼いでから蒸留所を建設し、自社蒸留を開始するNDP(非蒸留業者)の存在もあります。こうしたNDPの中にはウェブサイト上に蒸留器の写真を掲載し、恰かも現実に蒸留してるかのように見せかけるところもあったりしました。テンプルトン・ライ・スピリッツもご多分に漏れず、こうしたNDPの一つでした。他所から原酒を調達し、オリジナルのラベルを貼りつけてボトリングするウィスキーのことを「ソースド・ウィスキー」とか「ソーシング・ウィスキー」と言いますが、これ自体は悪いことではありません。テンプルトン・ライが問題だったのは、ウィスキーのソースを意図的に難読化し、ラベルの真実性を歪めてしまったことです。アメリカの連邦規則ではラベルには真実を書かねばなりません。ラベルの変更点は主に3つです。
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先ずバックラベルに「インディアナ州で蒸留」という言葉が追加されました。ウィスキーが当該ブランドの場所とは異なる州で蒸留された場合、蒸留された州をラベルに記載しなければならないという規定があるからです。そして「SMALL BATCH」が「THE GOOD STUFF」に。スモールバッチというのは、厳密に言わなければ少量生産のことと思っていい用語です。MGPは大きな蒸留施設ですから、当然少量生産ではないのでこれを変更しました。あと「PROHIBITION ERA RECIPE」が熟成年数表記へ。プロヒビション・エラ・レシピと言うのは「禁酒法時代のレシピ」の意です。これはテンプルトン・ライ・スピリッツの共同設立者メリルの父でありキースの祖父であるアルフォンス・カーコフのレシピを指します。そのレシピは公にはされていませんが、おそらく砂糖黍90%/ライ麦10%のような典型的なムーンシャインのレシピであった可能性が高いとされ(**)、ライウィスキーではありませんでした。つまり禁酒法時代のレシピとは違うのでこれも変更したのです。バックラベルの文言も段階的に変化しており、「produced from~」から「based on~」になり、最終的には「Kerkhoff」の名前も出てきました。
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「~から造ってる」と言い切っていたのが「~に基づいて」とやんわりした表現になっていますが、基づいてすらいないのでは?という疑問もなくはありません。有り体に言えば、MGPの95%ライウィスキーが買い付け易い材料だったからソースとしただけで、禁酒法時代のレシピとは何の関係もないでしょう。テンプルトン・ライには、ライウィスキー人気が爆発的成長を見せる前に先鞭をつけた先見の明はあったにしても、少々誇大宣伝が過ぎてしまった感があります。
とは言え、悪い話ばかりでもありません。2018年夏には、ついに蒸留所が完成し稼働し始めました。アイオワ産のテンプルトン・ライは計算上2022年あたりにリリースされると予想されます。テンプルトン・ライ・スピリッツの会長ヴァーン・アンダーウッド氏によると、従来のMGPウィスキーを出来るだけ複製するつもりだ、とのことです。どのようなものが出来上がるか楽しみですね。

さて、ラベルの件は現在では手直しされていますし、誇張表現はアメリカンウィスキー業界の宿痾とも言え、遠く日本に住む我々にはアメリカの消費者保護問題に深く立ち入る必要性はあまりないでしょう。まあ、そういうこともあったということです。寧ろウィスキー飲みにとって興味をそそられるのは、ラベルよりも中身、先に少し触れたフレイヴァリング製剤の添加の方です。アメリカの有名なウィスキー・レヴュワーは、フレイヴァーの添加(とキース・カーコフの顧客へのメッセージビデオの釈明)に怒り、彼のウェブサイトのレーティング史上初の00点をテンプルトン・ライに付けています。
もう一度だけ、ラベルをよく見て下さい。どこにも「ストレート」の文字がないでしょう。テンプルトン・ライはストレート・ライウィスキーではありません。TTBの規定では、ストレートを名乗るためにはフレイヴァーを加えてはならないからです。また容積の2.5%を越えるフレイヴァーを加えてしまってはライウィスキーすら名乗れなくなります。そして最も重要なのが、加えられるフレイヴァーはそのクラスまたはタイプの構成必須要素でなければならないという規定なのですが、ここまでくると素人に判断できるレヴェルを越えています。判ることは、もしテンプルトン・ライが規定を遵守しているのならば、必須成分をもつ香料を2.5%以内含んだライウィスキーである、と言うことだけです。
上に挙げたレヴュワーは、これではどの香味成分がMGP由来のものかケミカル・フレイヴァー由来のものか分からないという主旨のことを述べていますが、確かにその通りです。そもそもMGPの95%ライウィスキーはそれ自体で豊かなアロマとフレイヴァーを持っています。果たしてフレイヴァリング製剤を添加する必要があったのかどうか? テンプルトン側の公表している理由としては、創業者の先祖によって造られた禁酒法時代のオリジナル・レシピの風味プロファイルに近づけるため、だと言いますが…。とにかく飲んでみましょう。

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TEMPLETON RYE 80 Proof
BATCH:4
BARREL:239
BOTTLE:167
BOTTLED IN 02-11-2011
ライチ、バタースコッチ、ミント、トーストした木、洋梨のシャーベット、香草、ライスパイス、青リンゴ、若草、パセリ、漢方薬。40度にしては物凄く香りが強く、45度以上の物やもう少し熟成を経た物と同等かそれ以上。口の中では仄かな甘味と爽やかさ、苦味とスパイスが同居する。中身が残り三分の一くらいになってから、かなり余韻に苦味が目立つようになったが、ビターチョコ系の苦味ではなく、香草やスパイス系の苦味。飲んでも旨いが、香りがハイライトといった印象。
Rating:87(85.5)/100

Thought:私が初めてテンプルトン・ライを飲んだ時は衝撃を受けました。それまで飲んできたライ麦率51%程度と見られるライウィスキー(ジムビーム・ライやワイルドターキー・ライ等)とはまるで比べ物にならないフルーティさと香草の風味を感じたからです。こんな美味しいウィスキーがあったのか、と感動すら覚えました。以来MGP95ライのファンとなり、同じソースではあっても違うブランドのライウィスキーをいくつか飲みました。しかし、確かに同系統の風味を感じるものの、なぜかそこまでの感動はありませんでした。味であれ何であれ「初体験の衝撃」は脳裏に深く刻まれ、忘れ難く、時に誇大化するものです。また「慣れ」は脳への刺激を緩慢化するものでしょう。それがため、感動がなくなってしまったのかなと思っていたのですが、今回改めてテンプルトン・ライを飲んでみたところ、他のMGP95ライと較べて、やはり圧倒的に強いアロマ(ライチとバタースコッチ)を持っていると感じました。特にそれはテイスティング・グラスではなくボトルの口から直接匂いを嗅いだ時に顕著です(テイスティング・グラスだと他の香味成分を拾い易いようで、トースティなウッドと穀物感の方が前面に出ます)。もしかするとこの強いアロマの要因こそがフレイヴァリング製剤にあるのではないでしょうか? 実を言うと、テンプルトン・ライと並行して同じくMGP95ライであるブレット・ライとジョージディッケル・ライも比較のため開封して試飲していたのですが、テンプルトン・ライは80プルーフというロウワー・プルーフにしては強すぎるアロマが少し奇妙に感じなくもありませんでした。これは思ったより添加フレイヴァーが効いているような気がします。飲んだことのある皆さんのご意見を伺いたいところですね。
なお、上のレーティングで括弧をした点数は、フレイヴァーが入っていない状態を仮定した想像上の得点です。

Value:テンプルトン・ライの日本での販売価格は概ね4000~5000円です(追記あり)。他のMGP95%ライをソースとしたブランドに較べ、80プルーフであることを考慮すると、やや割高感は否めませんが一飲する価値は十二分にあると思います。もし安さを優先事項とするならブレット・ライという選択がベストでしょう。なによりブレットは流通量が多い=入手しやすいというメリットがあります。


*レシートがなくても一瓶につき3ドル、一人6本分まで。レシートがある場合は倍の6ドルが払い戻されたとか。

**2006年にテンプルトン・ライ・スピリッツがTTBに最初のラベル承認証明書を申請した折り、その1つは「Templeton Rye Kerkhoff Recipe」と呼ばれるものだったと言います。それは他の分類の対象とならない製品を包括する「特殊蒸留スピリット」に分類され、ラベルには「ケイン90%ライ10%から蒸留されたスピリッツ」と書かれていたそうな。これはホワイト・ラムのようなニュートラル・スピリッツとフレイヴァーに寄与するライ麦の蒸留物を少し混ぜたものと予想され、その製品がこれまでに製造されたのか判りませんが、唯一記録に残っているカーコフ・レシピがこれだそうです。

追記:現在販売されている現行の「テンプルトン・ライ4年」はもっと値下がって買い求めやすくなっています。このレヴューがNASであったこともあり、記事を修正せず追記にしました。

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Maker's Mark CASK STRENGTH 111.4 Proof
BATCH NO. 15-03
メーカーズマークのカスクストレングスは2014年秋から蒸留所のみで375ml瓶が販売され、2015年春から販路を拡大していった製品です。カスクストレングスというのは、バーボン用語でより一般的なバレルプルーフと同じで、加水調整せず樽から出したままのアルコール強度という意味です。そのためバッチ毎にだいたい54〜57度の違いが出ます。バレルプルーフでありながら55度前後の低いアルコール度数なのは、他の多くの蒸留所のバレル・エントリー・プルーフ(樽入れ時の度数)が125なのに対し、メーカーズマークは110というかなり低めのエントリープルーフのため。それと、バッチごとに度数が違うからといっても、この製品はシングルバレルではなく、19樽のスモールバッチと言われています。またレシピ(70%コーン、16%ウィート、14%バーリー)と熟成年数(約6年)もスタンダードなメーカーズと同じだそうです。では、レヴューいきましょう。

キャラメル、焦がした木、ヨーグルト、干し柿、バナナ、あんずジャム。パレートはスパイスとチェリー、渋柿。余韻はややバタリー。当然ながらスタンダードなメーカーズと較べると全てが強く美味しい。強力な甘味よりもしっとりとした甘味に、酸味と苦味がバランスよく合わさる。きっとメーカーズマークがもつ本質が味わいやすいと思うが、反面、人によっては度数が高いぶん辛口にも感じるかも知れない。一、二滴の水を加えるとアルコールが弱まって甘味を感じやすくなる。正直言うと、開けたては美味しくなく、バレルプルーフでなくてもいいかなという印象をもった。なんなら45〜50度のほうがバランスがいいのでは?と思ったほどだったが、半分ほどに減ってからは、やや酸味が強くなったものの柿系のフルーティーさが増して美味しくなった。
Rating:87/100

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JACK DANIEL'S SILVER SELECT SIngle Barrel 100 Proof
シルヴァーセレクトは免税店向けの製品として開発され、通常のシングルバレルより少し度数が高いのが特徴で、ひと昔前まではジャックダニエルズで100プルーフと言えば、これ、というイメージがありました。調べてみると、1997年から発売され、それから2010年までが少し丸みのあるボトルデザインだったようです。その後、画像のような少し角ばったボトルデザインとなり、2015年には終売。2016年初頭からは通常のシングルバレルと同系デザインの100プルーフが発売されています。
中身については、箱には熟成庫の最上階で熟成されたと書かれています。ジャックダニエル蒸留所ではハニーバレル(特に出来の良い物)は大概上層階から選ばれますね。私が気になるのは、通常のシングルバレルと較べてシルヴァーセレクトがよりクオリティの高い物が選ばれているのかどうなのかというところなのですが、調べても判りませんでした。デザインに気合いが入ってる分、その可能性はなくはないと思います。逆に単に度数が高いだけの可能性もありますが。
飲んでみると、セメダイン、キャラメル、メープルシロップ、スモーク、ローストナッツ、バナナといったジャックの特徴が濃ゆく味わえ美味しいです。さほど特別ではないかも知れませんが、流石に50度のジャックは安定しているなという印象。ちなみに本ボトルは推定2011年のボトリング。
Rating:87/100

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オールドフォレスターは言わずと知れたブラウン=フォーマン社の看板製品。特にそのボトルド・イン・ボンド規格の物は銘酒の誉れ高くバーボンファンのお気に入りです。1920〜1933年の禁酒法の間も医薬目的のための販売を認められたブランドの1つで、1870年代に発売されてから現在まで継続している正にお手本のようなブランド。なのに日本での知名度はジムビームやファアローゼズ、アーリータイムズやIWハーパーに較べるとやや低いのが残念ですね。

オールドフォレスターは、それまで樽から直接ジャグ等の再利用容器に入れて販売されるのが一般的であったバーボンを、密封ボトルのみで販売した初めてのブランドであったと言われます。当時の多くのウィスキーは中間業者によって色々な混ぜ物が入れられていました。それを防ぐ手段としてガラス瓶(*)に入れ密封されたオールドフォレスターは当初薬局で薬品として販売されていたとか。その時代、ウィスキーは薬として認知されており、だからこそ密封された混じりっ気のないウィスキーは、品質を保証し、医師や薬剤師に好意的に迎えられたのです。これにはブラウン=フォーマン社の創業者ジョージ・ガーヴィン・ブラウンが、ウィスキービジネスを始める前の職業が薬剤販売員だったことと無関係ではないでしょう。おそらく実地に医師の意見でも聴いたのかも知れません。それをブラウンはビジネスチャンスと見、ウィスキー業界へと打って出た訳です。

もともとOld Foresterは「Old Forrester」と綴られ「r」が2つ付いたスペルでした。それはブラウンの友人である医師のウィリアム・フォレスター(William Forrester)から由来していると伝えられています。いつ「r」が1つになったのか定かではありませんが、一応ブラウン=フォーマン社が公にしているオールドフォレスターの語源は、この医師の名前説です。実はその他にオールドフォレスターの語源には二説ほど有名なのがあり、一つは南軍の騎兵隊長ネイサン・ベッドフォード・フォレスト(Nathan Bedford Forrest)に由来するというもの。ネイサンは南北戦争での残虐な戦いぶりで勇名を馳せ、しかもKKK(クー・クラックス・クラン)の設立者の一人と目される人物。このネイサン由来説は、社会史家ジェラルド・カーソンの『バーボンの社会史』に端を発するそうです。どうやらこの説は、1960年代という南北戦争から100年の節目、南部ナショナリズムが一種のブームであった時代に迎合したマーケティングのようで、今で言う黒歴史と言いますか、歴史の汚点のような説かも知れません。もう一つは森林を意味する「Forest」から来ていて、「Forester」で森の番人の意とするもの。こちらは穏やかではあるものの面白味に欠ける説ですね。

初期の頃のブラウン=フォーマン社は俗に言うNDP(非蒸留業者)でした。ジョージ・ガーヴィン・ブラウンが1870年にウィスキー・ロウと呼ばれるルイヴィルのメイン・ストリートでウィスキーの卸売ビジネスを開始した当時は、JMアサートン蒸留所とメルウッド蒸留所とBJマッティングリー蒸留所から購入した原酒を独自にブレンドして販売していたそうです。1902年になると主要な供給元であったマリオン郡セントメアリーのベン・マッティングリー蒸留所を購入。そこにはウェアハウスとボトリング施設がなかったので、蒸留を終えたウィスキーはルイヴィルへと運ばれました。1907年にはセントメアリーの蒸留所にもウェアハウスとボトリング施設が建てられます。禁酒法が訪れるとその蒸留所は閉鎖となり、ウィスキーのストックはルイヴィルのG・リー・レドモン社のウェアハウスに移されました。そこはホワイト・ミルズ・ディスティラリーと知られる薬用ウィスキーのための集中倉庫とボトリング施設です。ブラウン=フォーマンのウィスキー以外にも、テイラー&ウィリアムスのイエローストーンやマックス・セリガーのベルモント等のストックが保管されていました。ブラウン=フォーマン社は1924年にそこの資産と在庫を買い取り、禁酒法期間中、薬用ウィスキーのボトリングを続けます。禁酒法解禁後にその施設は再建され、ブラウン=フォーマン蒸留所として1980年頃までオールドフォレスターを生産しました。この蒸留所のプラント・ナンバーこそがオールドボトル愛好家に名高いDSP-KY-414です。1979年以降オールドフォレスターの生産はルイヴィル郊外のシャイヴリィにあるアーリータイムズ蒸留所(DSP-KY-354)へ移管されますが、バーボンマニアには#354より#414のほうが遥かに質が高いとされています。そして2018年6月には、かつてウィスキー・ロウと呼ばれたルイヴィルのダウンタウンにオールドフォレスター蒸留所がオープンしました。おそらく今後は、オールドフォレスターはこちらでも少量造られて行くことになるでしょう。

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OLD FORESTER BOTTLED IN BOND 86 PROOF?
さて、今回飲んだオールドフォレスターのボトルド・イン・ボンドですが、年代はいつ頃の物かよく判りません。マスターに質問し忘れたのか、答えを聞きそびれたのか、どうにも酔っぱらっていて記憶にないのです。見たところ50年代ぐらいでしょうか? 画像で判断できる方がいましたら教えて下さい。それよりもこのボトルで訳がわからないのは、フロントラベルにはボトルド・イン・ボンドと書かれているのに、バックラベルには86プルーフと書かれていることです。ボトルド・イン・ボンドなら100プルーフなのでは…。これはどういうことなのでしょうか? 「Bottled in Bond for Export」ともバックラベルには記載されていますが、この文言が何か関係してるのですかね? これまたご存じの方はコメントよりご教示いただければ幸いです(追記あり)。
とりあえず蒸留とボトリングは#414。この時代から現行オールドフォレスターの72%コーン/18%ライ/10%モルテッドバーリーと同じマッシュビルかどうかは判りませんが、同じである可能性は大いにあると思います。では、最後に飲んだ感想を少々。
一言、キャラメルラテ祭り。ただのキャラメルではありません、ラテです。非常にミルキーな味わいに感じました。欧米の方ならバタースコッチと表現する風味かも知れませんね。
Rating:87/100


*1800年代のガラス瓶は手吹きで造られる大変高価な物であり、下手をすると中身よりも貴重な存在でした。1903年にマイケル・ジョセフ・オーウェンズが自動製瓶機を発明したことにより、安価なガラス瓶がようやく市場へ出回り始め、後に主流となって行きます。

追記:「Bottled in Bond for Export」の件に関して、私からしたら神様のような存在のバーボン・バーGのマスターより教えを頂きました。これは本国流通品とは異なる輸出向けの低プルーフ版なのだそうです。ブラウン=フォーマンに限らず当時のボトルにはこういう物がけっこう存在するのだとか。よって、上で「?」を付けておきましたが、本ボトルは86プルーフで正解となります。

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エライジャクレイグ18年3DSC_0182
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Elijah Craig Single Barrel Aged 18 Years 90 Proof
BARRELED ON 2-23-90
BARREL NO. 3755
バーボンの父と称されるエライジャ・クレイグ牧師の名を冠したヘヴンヒルのプレミアムバーボン。12年物とは比較にならないほど複雑な芳香を持っています。様々なドライフルーツのアロマや味わいと、渋味を含んだオークの風味、それをアルコール度数45度でボトリングするバランス感覚は大変面白味があります。ピーチやパイナップルも出てきましたが、キャラメル感はそれほどでもなく、オーバーオークな感じもしません。いわゆるパンチやキックを求める人には向かない、長熟ならではの香味をきくバーボン。日本には殆ど輸入されていない21年や23年も本国ではリリースされており大変人気があります(と言うか18年も最近は日本に入ってこない)。
本ボトルは90年に蒸留されたもので、いわゆる旧ヘヴンヒルのジュース。現行と比較したことはないので味の違いは分かりません。
Rating:87/100

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I.W. HARPER BICENTENNIAL EDITION  Aged 130 Months 86 Proof
1976年はアメリカの建国200年(バイセンテニアル)記念の年。バーボン界でも各社から記念ボトルやデキャンターが色々発売されました。こちらはそのハーパー版。バーボン好きには堪らないデザインでインテリアにもいいですね。130ヶ月熟成ということなので、10年10ヶ月熟成となります。バーボンにしては比較的長熟の部類に入ると思いますが、なぜ200ヶ月熟成にしなかったのでしょうか? そのほうがバイセンテニアルにかけてビシッと決まったと思うのですが(笑)。当時においてさえ、そこまでの長期熟成原酒はなかったのですかね。それとも、そうすると高価になり過ぎるのか…。まあ、それは措いて、これは発売年代からして旧バーンハイム蒸溜所産、現行のハーパーとは別物と思っていいでしょう。
開封直後からオールドボトルらしい濃密なキャラメル~ココナッツ系のアロマが香り立つ。味わいに思ったほどのドライフルーツ感はないですが、43度にしては香りも味も濃厚に感じるし、余韻も長め。古いバーボンの醍醐味が詰まってます。この年代のオールド・ボトルとしてはセカンダリー・マーケットで比較的安く購入できるのでかなりオススメです。
Rating:87/100

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ワイルドターキー8年とライ、ラベルを遡って一言感想を。


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WILD TURKEY 8 Years 101 Proof
モノクロ チラ見ラベル
2015年から現在。昔のものよりフルーティな味わい。
Rating:86/100

2023-06-23-17-11-40-922
WILD TURKEY 8 Years 101 Proof
セピアトーン 横向きラベル
2011年から2015年。現行と同じほぼ風味プロファイル。
Rating:86/100

2023-06-23-17-13-07-171
WILD TURKEY RYE 81 Proof
セピアトーン 横向きラベル
アルコール度数が低すぎて少々退屈な味わいに。
Rating:78.5/100

2023-06-23-17-12-09-820
WILD TURKEY 8 Years 101 Proof
フルカラー 横向き
1999年から2011年。最近のものよりヴァニラ・フレイヴァーが強かったような気がする。
Rating:87/100

2023-06-23-17-13-43-443
WILD TURKEY RYE 101 Proof
フルカラー 横向き
スパイシーでパンチも充分。旨い。けれどもライ・ウィスキー感をあまり感じない。ブラインド・テイスティングで提供されたら、当てる自信がない。
Rating:85/100

2023-06-23-17-12-36-902
WILD TURKEY 8 Years 101 Proof
正面ターキー
〜1999年。アロマ、フレーバー、アフター、全てストロング。味わいが現行品より立体的に感じる。
Rating:88/100

2023-06-23-17-14-18-820
WILD TURKEY RYE 101 Proof
クリスマスライ 正面ターキー
未開栓。採点なし

※レアブリードのラベルの変遷はこちらこちらをご参照下さい。

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