バーボン、ストレート、ノーチェイサー

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タグ:90点

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フォアローゼズ蒸溜所では2種類のマッシュビルと5種類のイースト・ストレインを組み合わせてそれぞれ味わいや香りの特徴が異なる10種類の原酒を造り、それらをミングリングすることで安定した品質を保つ独特のスタイルで知られています。そして、彼らは2023年に135周年を迎えるにあたりブランドの刷新を行いましたが、その際、10種類のレシピが50mlづつ入った「ザ・テン・レシピ・テイスティング・エクスペリエンス」という限定版キットをリリースしました。希望小売価格が約130ドルで、6月30日からケンタッキー州ローレンスバーグとコックス・クリークのフォアローゼズ・ヴィジター・センターで販売され、7月中旬からはジョージア州、イリノイ州、ケンタッキー州、カリフォルニア州の一部小売店でも販売されたみたいです。各レシピは同等になるように104プルーフにカットされ、熟成年数は全てほぼ同じ。それにより、酵母とマッシュビルがどのような影響を与えるかを体験できる非常に面白いキットでした。
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これはバーボン・ファンならば是非試してみたくなる代物です。しかし、ここ日本でこれを入手するのはなかなか難しいので、代わりと言っては何ですが、今回はその昔、フォアローゼズの販促品としてオマケで付いていた3種類の「心とろける香りの原酒」を開封してみました。この試供品(非売品)はネットで調べてみると2005年前後あたりのものらしいです。ラベルの細かい部分が若干異なるものや度数違いのものがあるところから、何年間かもしくは何回か提供されていたのかも知れませんが、私には詳細が分かりません。仔細ご存知の方はコメント欄よりご教示いただければ幸いです(※)。また、他にも種類があるかどうかですが、私はこの3タイプしか見たことがなく、おそらくフルーティ、スパイシー、フローラルの3つで全部と思います。ですが、本来なら5つのイーストの分だけ用意するか、フルーティを特徴とするイーストは2種類あるのでそれらは一つに纏めたとしても、もう一つハーバル・タイプはあって然るべきところでしょうから、この3つ以外にもあるのを知ってる方はコメントよりお知らせ下さい(※)。

情報を頂けましたのでコメント欄を参照下さい。また、少し追加の情報を得たので追記をご覧下さい。


注ぐ前にフォアローゼズの10レシピに就いて軽くおさらいしておきましょう。これらのレシピは4文字のアルファベットによって「O■S◆」というように表記されます。「O」と「S」は必ず付き、「O」はフォアローゼス蒸溜所で造られていることを意味し、「S」は「Straight whiskey」もしくは「distilled Spirit」を意味します。「S」の略は分かりやすいですが、なぜ「O」がフォアローゼズ蒸溜所を表すかと言うと、それは同蒸溜所が昔はオールド・プレンティス蒸溜所という名称だったからです。嘗てフォアローゼズ蒸溜所を所有していたシーグラムは、他に幾つもの蒸溜所を抱えていたため、原酒の産出される蒸溜所のバレルに各略号を与えており、その名残から「Old Prentice」の頭文字「O」でフォアローゼズ蒸溜所を指しているのです。そして「■」の部分にはマッシュビルの種類を表す「B」もしくは「E」が入ります。ライ麦の使用比率が多く、スパイシーな味わいが特徴とされるマッシュビルBは、

60%コーン、35%ライ、5%モルテッドバーリー

コーンの使用比率が多く、柔らかな甘みが特徴とされるマッシュビルEは、

75%コーン、20%ライ、5%モルテッドバーリー

となっています。末尾の「◆」には香りの個性が異なる5つの酵母の種類を表す「V・K・O・Q・F」の何れかが入ります。夫々の特徴は以下のよう。

V─デリケート・フルーツ
K─スライト・スパイシー
O─リッチ・フルーツ
Q─フローラル・エッセンス
F─ハーバル・ノーツ

これら2種類のマッシュビルと5種類のイーストによる10レシピは、日本のフォアローゼズ公式ホームページでは次のように説明されています。

OBSV
繊細な果実香とライ麦のスパイシ―さ
OBSK
ベーキングスパイス(微かなクローブ・シナモン様)とライ麦のスパイシーさ
OBSO
レッドベリー系の豊かな果実香
OBSQ
薔薇の花びらのようなフローラルさとライ麦のスパイシーさ
OBSF
繊細なハーブ香とライ麦のスパイシーさ
OESV
繊細な果実香とキャラメル様の甘く芳ばしい風味
OESK
ベーキングスパイス(微かなクローブ・シナモン様)で芳醇
OESO
レッドベリー系の果実香とバニラ
OESQ
薔薇の花びらのようなフローラルさとクッキー様のほのかに甘い芳ばしさ
OESF
繊細なハーブ香とクッキー様のほのかに甘い芳ばしさ

偖て、今回飲むフルーティ/スパイシー/フローラルの各タイプがこれらのうちどれなのかは名称からすると、フルーティ・タイプはOBSOかOESOかOBSVかOESVのどれか、スパイシー・タイプはOBSKかOESKのどちらか、フローラル・タイプはOBSQかOESQのどちらかなのではないでしょうか。え、待って、これシングルバレルって認識でいいんですよね? ラベルには取り立ててシングルバレルとは記載がないですけど…。私自身は実物を見たことがないのですが、この試供品に付いていたリーフレットには以下のようなことがタイプに拘らず共通で書かれていたようです。ネット上に引用している方がいたので孫引きさせて頂きます。
フォアローゼスの原酒のうち、フローラルなタイプのものを樽出しに近い度数でボトリングしたもので、日本国内での、フォアローゼスのおまけとして付けられた試供品(非売品)。別名、心とろける香りの原酒。
で、この後に各タイプの説明が続くのですが、それらを読む限りここで言う「原酒」は取り敢えずシングルバレルの意味と解釈しておいてよいのではないかと思います。その解釈が正しいとして、少量加水で度数を調整したほぼバレルプルーフという仕様は、先述の「ザ・テン・レシピ・テイスティング・エクスペリエンス」と殆ど同じであり、この試供品が10種類の中からかなり傾向の異なる3タイプを厳選したものなのだとしたら、物凄く贅沢な良い販促品ですよね? テン・レシピ・キットよりハイプルーフですよ? それに販売年を考えたら、もう二十年近く前な訳で、プチ・オールドボトルな価値もあって期待は膨らみます。では、そろそろ注いでみましょう。

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画像では判り難いと思われますが、ぱっと見でフルーティ・タイプが一際色濃く感じます。スパイシー・タイプとフローラル・タイプはそこまで差はありませんが、フローラル・タイプの方が僅かに薄い色に見えますね。今回はノーズ、パレート、フィニッシュの各々に順位を付けてみました。

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Fruity Type 108 Proof
少し濃いめのブラウン。林檎、キャラメル、熟したプラム、オールドオーク、ローストナッツ、シナモン、レザー。よく熟したバーボンの甘いアロマ。とろりとした口当たり。口の中では茶色いスパイスが感じ易い。余韻はミディアム・ロングで、焦がした木材のノート。残り香は僅かなベリーとブラウニー。
ノーズ─1
パレート─2
フィニッシュ─3
Rating:87.5/100

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Spicy Type 114 Proof
中庸なブラウン。青リンゴ、草、チョコレートのヒント、オレガノ、ローズマリー、メープルクッキー、炙った木材。あまり甘くない香り。とろりとしてオイリーな口当たり。ややドライな味わい。余韻は長く、甘いハーブと心地良い石鹸香。残り香はオレンジゼストとレモン、爽やかなハーブ。
ノーズ─3
パレート─1
フィニッシュ─1
Rating:90/100

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Floral Type 108 Proof
明るい琥珀色。スイートピー、マッシュルーム、ホワイトチョコレートのヒント、ローズペタル、ミント、蜂蜜、白桃、プリン。フローラルで仄かに甘い香り。ややとろりとした口当たり。味わいは酸味が強め。余韻はミディアム・ロングで、ライフレイヴァーが広がる。残り香は甘い花の蜜とピーナッツシェル。
ノーズ─2
パレート─3
フィニッシュ─2
Rating:87.5/100

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Thoughts:
三者三様でどれも美味しかったです。そしてフォアローゼズは自分の好みにぴったりのバーボンだと改めて感じました。ノーズ、パレート、フィニッシュに順位を付けたものの、3位だからと言って悪い訳でもないですし、そもそも単なる私の好みに過ぎません。飲んだ感じ、マッシュビルはどれもBなのではないかなという印象を受けました。どれもが共通してフォアローゼズらしいフルーティさはありつつ、ライの穀物感が強いような気がしたのです。その上で個別に感じたことを言います。
フルーティ・タイプは最も甘くウッディ。飲む前の予想ではもっとフルーティなのかと思っていたら、寧ろ意外とオーク・フォワードなバーボンでした。色通り、最も熟成感を感じます。試飲前はOBSOかなと思っていたのですが、上記の10レシピの説明文に当て嵌めるとOESVと一致している気も…。
スパイシー・タイプは、これまた飲む前の予想に反して、私にはスパイシーと言うよりハービーに感じました。10レシピの説明文に当て嵌めるとOBSFなのではないかと思われる程です。また、前回まで開けていたフォアローゼズ産の90年代ヘンリーマッケンナにあったソーピーな風味がこれにも感じられたのですが、そちらでは過剰過ぎて嫌悪を抱いたそのフレイヴァーはこちらでは絶妙な加減だったので好印象でした。全体として自分の好みに合っていて抜群に旨いです。
フローラル・タイプは最も繊細な風味。10レシピの説明文からすると、OBSQでもOESQでもどちらでも当て嵌まりそうな感じでした。私の嗅覚や味覚は平均的な日本人より下なので、スタンダードなフォアローゼズから花の香りを感知するのは難しいのですが、これは分かり易かったです。
どれも加水したらもっとフルーティさを引き出せたのかも知れません。けれどもミニボトルは少量なので私はニートでしか飲みませんでした。これらが10レシピのどれなのか、或いはシングルバレルではなく数レシピがミックスされたスモールバッチなのかは、答えが解らないので措くとして…、これらを飲んだことのある皆さんはどう思ったでしょうか? ご意見ご感想をどしどしコメントよりお寄せ下さい。そう言えば、私は基本的にバーボンはラッパ飲みかショットグラスで飲んだ方が美味しく感じるのですが、今回の3種のフォアローゼズはどれもテイスティンググラスで飲んだ方が香りが愉しめて美味しく感じました。


追記:とあるミニチュア・ボトルのコレクター様によると、この試供品は2004~2006年に配布されたもので、 ラベルの種類としては筆記体風、活字、活字+ウイスキーの3種があり、従ってFruity、Spicy、Floralの3風味×3ラベル=9つの種類が存在するそうです。
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オールド・グロームスは日本のバーボン好きには比較的知られていますが、本国アメリカでは一部のマニアを除いて殆どの人が知らない銘柄です。その理由はオールド・グロームスのラベルが日本市場向けなのと、生産量が少ないからだと思われます。そして、それを造っているのがNDP(非蒸留業者)なのは確かなのですが、原酒の調達先については、諸説あったり、製造年代による変遷があると見られ、また一部は別ソースの可能性もありそうで、あまり明らかではありません(*)。そんな謎のブランドにあって唯一そのソースが明確なのが、このオールド・グロームス・ヴェリー・ヴェリー・レア16年。
殆どのオールド・グロームスはラベルに「イリノイ州シカゴ」とありますが、このオールド・グロームス16年だけ「ケンタッキー州ローレンスバーグ」とあります。これはジュリアン・ヴァン・ウィンクル三世のオールド・コモンウェルス蒸留所でボトリングされたことを示しており、彼自身の証言からあの有名なA.H.ハーシュ・リザーヴと同じペンシルヴェニア1974原酒が使用されたと判明しているのです。ラベルにもちゃんとに「ケンタッキー」の文字はなく、「ストレート・バーボン・ウィスキー」としか書かれていません。それにラベル・デザインも他のオールド・グロームスとは少し趣が異なり、なんと珍しくラベルには日本語の文章も綴られています。
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「珍品」とか「殿方」という言葉や文体に時代を感じさせますよね。A.H.ハーシュ・リザーヴとペンシルヴェニア1974原酒に関しては前回の投稿で紹介しましたのでそちらを参照して頂くとして、A.H.ハーシュ・リザーヴ16年とオールド・グロームス16年の中身の差はボトリング・プルーフだけだと思います。そこで、飲み比べ用に両者を同時注文した次第。一体どれほどの違いがあるのでしょうか?

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(画像提供Bar FIVE様)
Old Grommes Very Very Rare 16 YEARS OLD 101 Proof
推定1990年もしくは91年ボトリング(**)。フレイヴァーに於いて同じものを飲んでる感じはかなりあります。ですが、こちらの方がアーモンドキャラメルのような焦樽の香りが強く、パレートでもより甘みを感じ易い印象。ハーシュ・リザーヴがスパイス&ハーブが前面に来るのに対し、オールド・グロームスはキャラメルが前面に来るので、全体としてバランスが優れていると言うか整っている気がします。まあ、好みではあるでしょうが、やはりプルーフィングによる違いは大きく感じました。個人的には100プルーフ(前後)はバーボンにとって完璧なプルーフだと考えているので当然かも知れません。世界的な知名度ではA.H.ハーシュ・リザーヴ16年に劣りますが、オールド・グロームス16年はそれよりも更に美味しいバーボンだと思います。海外の方に較べてこれを飲みやすい環境にある我々日本人としては「飲まなきゃ損損」であり、「あるうちに飲んどけッ!」と切に思う…。
Rating:90/100


*後期のオールド・グロームスは日本で流通している情報ではジムビーム原酒とされており、それは8割方そうかも知れませんが、ここでは初期を含めたブランド全般に言及しています。シリーズ全体の紹介や会社の概要、ブランドの名前の由来となっているヒューバート・グロームスについては、いづれ機会があれば書くこともあるでしょう。

**瓶底の数字は88とありますが、この時期のジュリアン・ヴァン・ウィンクル三世は少し古いボトルを使用しているという情報がある他、ペンシルヴェニア1974原酒の情報を基に考えると、この年数が妥当と思われます。

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Blanton's SINGLE BARREL BOURBON
93 Proof(abv 46.5%)
Dumped on 4-15-92
Barrel No.36
Warehouse H
On Rick No.32
ハイ・ライ・マッシュビルの割にスパイシーさはあまりなく、甘みに振れたバランス型の味わい。とろみのある口当たり。2010年代のボトルと比べると全然旨味があるように感じた。
Rating:87.5/100

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Blanton's Straight from the Barrel
132.4 Proof(abv 66.2%)
Dumped on 10-10-11
Barrel No.119
Warehouse H
On Rick No.33
基本オーキー。アップルブランデーのような風味も。そこにアセロラのアロマも出てびっくりする。とってもバタリーな口当たり。50度程度では感じない塩味も。余韻は長く、戻り香が楽しめる。ブラントンのラインナップ中、唯一ノンチルフィルタードなのが効を奏してると思う。
Rating:90/100

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Blaton's Gold Edition

Dumped on 9-2-97
Barrel No.62
Warehouse H on Rick No.11
103 Proof
ブラントンズ・ゴールドはアメリカ国内では一般流通しておらず、免税店と輸出向けの製品です。こちらはプチ・オールドボトルということもあるかも知れませんが、妙にとろりとした酒質とリッチなフレイヴァーはスタンダードを遥かに凌駕していました。
Rating:90/100

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