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ワイルドターキー・ダイヤモンド・アニヴァーサリーは2014年8月にジミー・ラッセルの勤続60周年を祝うために、当時アソシエイト・ディスティラーだった息子のエディ・ラッセルによって作成されました。業界で最も任期の長いマスターディスティラーであるジミー・ラッセルは正に「生ける伝説」であり、「ブッダ・オブ・バーボン」或いは「マスターディスティラーズ・マスターディスティラー」と尊敬の念を込めて呼ばれたりします。アメリカのワイルドターキー愛好家デイヴィッド・ジェニングス氏は「ロックにはエルヴィスがいる。カントリーにはハンクがいる。ソウルにはマーヴィンがいる。バーボンにはジミーがいる」と述べました。アメリカン音楽好きにはピンとくる喩えでしょう。

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(上1984年、下1967年のジミー)

1954年9月10日、ジミーは後年ワイルドターキー蒸留所と呼ばれることになるアンダーソン・カウンティ蒸留所(以前のリピー・ブラザーズ蒸留所、一年後にJTSブラウン蒸留所と改名)で働き始めました。まだ二十歳になる前のことです。当時ローレンスバーグには幾つかの蒸留所があり、ジミーのお父さんはオールド・ジョー蒸留所、おじさんはホフマン蒸留所で働いていました。そのためジミーが仕事を探していた時、蒸留所で働くことにしたのは自然な流れでした。実際、今だにジミーはアンダーソン郡の生まれた場所から1マイル以内、ワイルドターキー蒸留所から6マイル以内に住んでいると言います。後に時として「バーボンのファーストレディ」と紹介されることにもなる妻ジョレッタもジミーが働き始める前から蒸留所に勤めていました。
彼のキャリアは床掃きや品質管理から始まり、おそらく蒸留所の全ての仕事をこなしたと思われます。蒸留所の二代目マスターディスティラーである伝説のビル・ヒューズや、蒸留所の創業者ジェイムス・リピーの甥の息子で三代目マスターディスティラーのアーネスト・W・リピー・ジュニアから蒸留技術を学んだジミーは次第に頭角を表し、1967年にはJTSブラウン蒸留所のマスターディスティラーへと昇格しました。彼が働き始めた頃の蒸留所は日産80バレル程度でしたが、現在では550バレル以上になっていると言います。その躍進の全てがジミーただ一人の功績ではないでしょうが、彼はキャリアをスタートして以来普通の人間にはあり得ないほど長い年月そこにいて、何十年も精力的に働き、先代から受け継いだ昔ながらのバーボン造りを固守することで現代のバーボン世界を形作り、内外に影響を与えて来ました。

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ワイルドターキー蒸留所で製造される製品の中で最も「ジミー・ラッセルらしい」バーボンはスタンダードなワイルドターキー101(8年にしろNASにしろ)です。それは標準的であり原型であるが故に「生ける伝説」の刻印が深い。周知のようにそのブランドはジミーが蒸留所で働き始める以前の1942年に始まり、ブルックリンかどこかの経営者が産み出したのかも知れません。また、最先端の設備によるコンピューターの自動化が行われる現代にあっては、誰がどうしようと同じものが出来上がるのかも知れません。しかし、それでもジミーの技能とテイスティング能力、長年に渡るブランド定義がなければ、今に至るワイルドターキー101の成立はなかったと言っていいでしょう。
そしてジミーは伝統を頑なに守るだけの男ではありませんでした。バーボン産業は70年代半ばに大きな波を受ます。俗に言う「白物」、ウォッカやジンの隆盛です。消費者の嗜好の変化もありました。昔ながらの「伝統」は「古臭い」と同義になり、バーボンを飲むことはクールでなくなったのです(今は流行っているのでクールと認識されています)。ジミーは多くの女性がバーボンを飲まないことに気づき、彼女たちにとって魅力的な製品を作りたいと思い、1976年にワイルドターキー・リキュールと呼ばれるフレイヴァー・バーボンを実験的に開発しました。それは「レッドスタッグ」や「ファイヤーボール」に先駆けること遥か前、バーボンが流行していなかった時代にジミーが模索した新しい消費者を引き付ける方法でした。今日、その製品は2006年以降ワイルドターキー・アメリカンハニーとしてリニューアルされ、多くの人のお気に入りとなっています。また、2000年代前半には、今や当たり前になりつつあるバーボン樽以外を用いた「後熟」の魁として、ワイルドターキー・シェリー・シグネチャーも造っていました。これはスコッチに親しんだヨーロッパ市場向けに試された変種のワイルドターキーで、10年熟成のターキーをスパニッシュ・シェリー・カスクでセカンド・マチュレーションした後、バーボンにオロロソ・シェリーを加えバランスを整えたものです。当時は斬新過ぎてウケませんでしたが、今こそ再評価すべき時ではないでしょうか。
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70年代後半からバーボン全体の売り上げは目に見えて減少し始めました。80年代から90年代にかけてアメリカのバーボン需要は底辺を迎えます。そこでバーボン業界のエグゼクティブたちが採った主な戦略は二つありました。一つはバーボンのプレミアム化。もう一つは現場監督の職人に過ぎなかったマスターディスティラーを外の世界にスターとして送り出し、バーボンがいかに優れているかを一般消費者へ啓蒙することでした。こうした動きが現在のバーボン人気の礎の一部となったのは疑うことが出来ません。
前者の好例は、エンシェントエイジ蒸留所(現在のバッファロートレース蒸留所)のマスターディスティラー、エルマー・T・リーが1984年にプロデュースした最初の大衆市場向けシングルバレル・バーボンであるブラントンズと、ジムビーム蒸留所のマスターディスティラー、ブッカー・ノーが1988年にプロデュースしたスモールバッチにしてバレルプルーフ・バーボンのブッカーズです。ジミー・ラッセルも負けじと、ブラントンズに対しては1994年にワイルドターキー初のシングルバレル・バーボンとなるケンタッキー・スピリットをリリースし、象徴的な101プルーフで満たしました。それはブラントンズを意識するような非常に華やかなボトル形状で、重厚なピューター製のキャップを備え、バレル情報が手書きで書かれたネックラベルが貼られました。まるでジミーが「私」のためにバレルを特別にハンド・ピックしたかのように。 そしてブッカーズに対しては1991年に6・8・12年熟成の原酒をジミーが独自に組み合わせたバレルプルーフ・バーボンのレアブリードをリリース。何の衒いもなくノー・ギミックのそのバーボンは、かつて盟友エルマー・リーに「ピュア・ジミー・ラッセル」と評されました。これらのプレミアムなワイルドターキーはかなりの成功を収め、蒸留所のポートフォリオの定番としての地位を確立し、現在でも販売され続けています。
後者に於いても、ブッカー、エルマー、ジミーらは国内外を旅してパブリック・テイスティングを行い、彼らの目を通してバーボンのストーリーを語ることによって、今日のバーボン人気の成長を促した最初の世代でした。今、ブッカーの息子フレッドやジミーの息子エディのような次世代、またその次の世代の旗手たちは彼らが切り拓いた道を歩んでいるのです。ちなみにジミーは自分が訪れたことのある国外のお気に入りの都市の一つに、ありがたいことに日本を挙げてくれています。
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ジミーは世界中でバーボンの王者のように扱われますが、本人は至って呑気に「あんたが見たまんまの、ケンタッキー州ローレンスバーグ出身のただのおっさんじゃよ(意訳)」と言います。そうした謙虚さは本物の人間が持つ特質であり、蒸留所への訪問客を迎えるジミーの柔和な笑顔は却って揺るぎない信念の証のように思えます。ジミーなしで現在のバーボンブームはなかったと言っても過言ではありません。彼はSNSのインフルエンサーではないかもしれませんが、もっと重要な羅針盤でした。バーボンの衰退期を乗り越え、アメリカが自らのネイティヴ・スピリットを再発見する過程の全てを見て来たのです。
去る2019年9月10日には、ジミーはワイルドターキー蒸留所での驚異の65周年記念日も既に迎えました。ケンタッキー州アンダーソン郡に長年住む人なら、彼が比類のない蒸留の専門知識だけでなく、驚くべき運動能力についても知っているだろう、と伝えられています。高校でのジミーは「ラッセル・ザ・マッスル」として知られており、彼に不得意とするスポーツはなく、バスケットボールやサッカーから陸上競技に至るまで数々の記録を破り(一部は40年間残っていたそうな)、アンダーソン郡高校を勝利から勝利へと導いたのだとか。こうしたアスリートさながらの基礎体力がジミーの頑固な職人気質や長年の勤務を可能にした源なのかも知れませんね。

さて、そろそろ今回のレヴュー対象に触れましょう。ダイアモンド・アニヴァーサリーはジミーの息子エディが父親へのオマージュとして厳選した13年と16年という長期熟成を経たバレルをブレンドして造られました。
よく知られた話に、ジミーは8年熟成程度のバーボンを好み、エディは12年以上の長期熟成も好む、というのがあります。ジミーは昔ながらの風味豊かなバーボンを愛し、オリジナルのワイルドターキー・プロファイルから遠く離れることを躊躇い、こう言います。「私たちは常に新しいものを試したいと思っていますが、ほとんどの場合は古い基準に戻ります」、と。彼の基準は明瞭でした。「バーボンは6~8年ほど熟成すると有効なマチュリングをしなくなると考えます。12年を過ぎる頃には多くのキャラメルやヴァニラなどのスウィートネスを失い、オーク材の風味が支配的になります。そして、私はウッディな味わいが多いのはあまり好きではありません」。これがジミーの個人的な好みであり、彼と同世代や上の世代のバーボン・ディスティラーの基準です。それにも拘わらず、エディが長期熟成のバーボンを混ぜて父親へのトリビュート・バーボンを作成したのは、そうするに十分な理由があったに違いありません。
ジミー自身が12年以下のバーボンが好きだと公言しているので、一部を除きワイルドターキーの提供する製品はそれより若いバーボンが殆どです。もしジミー好みの6~12年のバレルを選択してダイヤモンド・アニヴァーサリーを作成してしまうと、中核製品の一つであるラッセルズ・リザーヴから遠く離れた製品にするのは難しくなるでしょう。おそらくエディはワイルドターキーの標準ラインナップとは一線を画すバーボンを提供するために、長熟バレルにターゲットを絞ったのだと思われます。その意味で、このダイヤモンド・アニヴァーサリーは他のワイルドターキー製品とは対照的です。そして…。

エディは1981年からワイルドターキー蒸留所でアシスタントとして働き始めました。つまり、既に30年以上ものキャリアを誇る訳ですが、余りにも偉大なジミーと比較してしまうと「僅か」30年であり、自虐的?に「僕はニュー・ガイだよ」と笑います。また、エディは長い間自分の名前は「No」だと思っていたとも言います。なぜなら、ジミーに何か新しい提案をする度にそう言われたからだそう(笑)。エディ流の愛情あるジョークですね。
WMJのインタビューではダイヤモンド・アニヴァーサリーについて、「特別な原酒を探し出して、ジミーに内緒でブレンドしたものです。私自身が最高と思ったのは間違いないですが、ジミーが『よし』と言ってくれなければ製品化はできませんから(笑)、正直なところとてもドキドキしました」、と語っています。
そんなエディも2015年には正式にマスターディスティラーの称号を得ました。その年から限定リリースのマスターズ・キープ・シリーズも始まり、その他の中核製品でも主導的な立場となったことでしょう。こうした流れの前年にリリースされたダイヤモンド・アニヴァーサリーは、謂わばエディ・ラッセルが初めて世に出した自分自身のバーボン。エディによると、ブレンドに使われた13年原酒はまだ12年に十分近く、ジミーがあまり動揺しないよう逃げを打って選ばれたと言います。 そして後に16年のバーボンを加えることでワイルドターキー・スパイスをもっと与え、ユニークでありながら馴染みのあるワイルドターキーの表現に仕上がった自信作だと。これを飲む我々は、ジミーだけでなくエディにも祝杯を挙げない訳にはいきません。では、心して注ぐとします。

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WILD TURKEY DIAMOND ANNIVERSARY 91 Proof
BATCH NO. B14-0035
オレンジがかったブラウン色。黒糖、濃密なヴァニラ、ダークなドライフルーツ、接着剤、ハニーピーナッツ、古い木材、土。さらさらしつつなめらかな口当たり。ミディアム・ボディ。味わいはマジックインキと爽やかなフルーティさ(特にオレンジ)が同居。余韻はチャードオークとベーキングスパイスが支配的でややビター。
Rating:87.5/100

Thought:先日まで開けていたディスティラーズ・リザーヴ13年と較べることで、ダイヤモンド・アニヴァーサリーの個性は明確になった気がします。DAはDR13よりパンチのないテクスチャーですが、余韻のスパイス感は複雑でした。香りはDR13の方が甘いのに、口蓋ではDAの方が甘く感じました。そしてDAはDR13のような薬っぽいノートはなく、全体的に古びた木材のトーンを多く感じます。
101プルーフだったらもっと美味しかっただろうとはよく言われますが、エディ・ラッセルによればダイヤモンド・アニヴァーサリーはバレルプルーフに近いとのこと。ワイルドターキー蒸留所はバレル・エントリー・プルーフを2004年にそれまでの107プルーフから110プルーフへ、続いて2006年にも115プルーフへと変更しています。その理由が、そうしておかないと主力製品であるワイルドターキー101のプルーフと生産量を確保できないからとされるところからすると、ワイルドターキーの長期熟成原酒は案外プルーフ・ダウンする樽がけっこう多いのかも知れません。個人的にも、やはり101プルーフで飲みたかったとは思いますが、91プルーフでも特別なフィーリングは少なからずあるように思えました。

Value:ワイルドターキーの特別限定リリースの物は昔からパッケージングに拘った造りの物が多いです。本品もボトルや木箱などの包装のカッコ良さは画像でも伝わると思います。問題は価格ですよね。アメリカでは約125ドルで売られ始め、日本では発売当初17500円程度する販売店もありました。正直、定価では高過ぎるとは思います。ですが、今ではオークションを利用すれば10000円以下での購入も出来る時はあるでしょう。ただし、安定してその値段ではありませんので、仮にダイヤモンド・アニヴァーサリーが15000円、ディスティラーズ・リザーヴ13年が5000円なら、迷わずディスティラーズ・リザーヴ13を三本買うことをオススメします。私にはダイヤモンド・アニヴァーサリーの方が僅かに美味しいと感じましたが、飽くまで「僅か」だからです。ディスティラーズ・リザーヴ13年は長期熟成でありダイヤモンド・アニヴァーサリーと同じプルーフなので、日本人にとっては良い代替製品となり得るのです。また、疑似分割や単ラベルあたりの12年101がオークションで12000円位で購入出来るなら、そちらを買うほうがいいでしょう。味わいの満足度は上なので。とは言えダイヤモンド・アニヴァーサリーは、8年101やレアブリードとは異なるワイルドターキーの長期熟成の世界への入り口にするなら良いと思いますし、米国では36000本のリリースとされるのでタマ数も十二分にあり、また近年流通品なので限定品としては比較的入手が容易、そして何よりジミー・ラッセルへの愛情として購入するならアリだと思います。

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日本で長らく親しまれてきたワイルドターキー12年は2013年に終売となり、それに代わって日本市場でリリースされ始めたのがワイルドターキー13年ディスティラーズ・リザーヴです。熟成年数が一年増えましたが、ボトリング・プルーフが101から91へと下がりました。頑なにワイルドターキーを愛して来たファンからすると、熟成年数は偖て措いても、プルーフの変更に引っ掛かった方も多いのではないかと思います。ターキーは101(ワン・オー・ワン)だろ、と。斯くいう私がそうでした。とは言え、エイジ・ステイトメントを保った長熟のターキーが手軽に飲めるだけでも、ありがたい状況なのかも知れません。そもそも12年101の発売停止は供給維持が難しくなったためと見られ、長期熟成原酒の減少は何もワイルドターキー蒸留所に限った話ではなく、アメリカ国内でのバーボン需要が爆発している昨今では業界全体がそうでしょう。それに穿った見方をするなら、輸出専用だった12年が13年ディスティラーズ・リザーヴへと転換されたのと近い時期に、ダイヤモンド・アニヴァーサリーのリリースやマスターズ・キープ・シリーズのような長期熟成原酒をメインとした限定製品の年次リリース開始という出来事があり、要は長熟ウィスキーの割り当ての変化だと思えなくもない。そんな渦中にあってもなお、どれだけ要望があろうと12年101を国内リリースせず、日本へ向けて13年をアルコール度数が5%低いだけで継続してくれたワイルドターキー(の親会社?)には感謝すべきなのかも。宝物のような12年101は1999年にアメリカ国内での流通がストップした後も長きに渡って日本では容易に手に入りました(勿論、8年のエイジ・ステイトメントを保った101もそう)。それはアメリカでバーボン人気が復活する以前、彼の国の殆どの消費者がプレミアム・バーボンに見向きもしなかった80~90年代の暗黒時代(供給過剰時代)に、せっせと高額なバーボンを輸入してくれた日本に対する感謝の気持ちからだったのかも知れません。いや、そう思いたい。単なるビジネス上の判断だったと解釈するより、その方がロマンがありますから。

さて、そこで今回の13年ディスティラーズ・リザーヴですが、判りやすい熟成年数とプルーフの変更以外にもう一つ特徴的な注目点があります。箱およびバックラベルの文言を以下に引用しましょう。
ジミー&エディ・ラッセルという父と息子の本物の蒸留技術から生まれたワイルドターキー13年ディスティラーズ・リザーヴは、最高のキャラクターを備えたケンタッキー・ストレート・バーボンです。この特別リリースのバーボンは慎重に選択された蒸留者のお気に入りであり、低いプルーフで樽詰めされ、伝説的な「B」ウェアハウスの低層階でゆっくりと熟成されました。そこは卓越した品質のバーボンを造るのに適した涼しい温度、高い標高、大きな空気循環が組み合わさった場所です。メロウなオークのノート、リッチなヴァニラ、洋梨のヒントと長いスパイス・フィニッシュを備えたワイルドターキー13年ディスティラーズ・リザーヴは、ジミー&エディ・ラッセルの世界的に有名な職人気質のショーケースであり、ワイルドターキー・バーボンの力強さと特有のキャラクターを鮮やかに表しています。
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壮大な物言いはご愛敬として、注目はB倉庫の下の方の階で熟成させたと言い切っているところです(*)。これはシングルバレルのケンタッキー・スピリットやアメリカ国内で入手しやすいラッセルズ・リザーヴ・シングルバレルのストアピックのように、例えばG倉庫の4階の何番バレルとまでは場所や樽の特定は出来ないものの、流通量の少ないケンタッキー・スピリットや海外のストアピックが入手しにくい日本人にとって、13年ディスティラーズ・リザーヴはシングルバレルではないとは言え熟成場所による味わいの違いを手軽に経験する機会の提供と言えるでしょう。ワイルドターキー蒸留所のオンサイト(タイロン)とオフサイト(キャンプネルソン)を含めた29の熟成庫は、どれもワイルドターキーのコア・プロファイルは共有するかも知れませんが、それぞれスパイスやベーカリーやフルーツ等のプロファイルのバランスに違いが生じるとされます。またワイルドターキーの熟成庫では、一説には上層階で熟成されるとアーシーに、下層階で熟成されるとフルーティになりやすいという話もありました。Bウェアハウスは、おそらくAウェアハウスと共に1894年頃建てられたかなり古い倉庫の一つです。エディの息子で現在ブランド・アンバサダーのブルース・ラッセルの個人的なお気に入りの倉庫なのだとか。では、そろそろ飲んでみたいと思います。

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Wild Turkey 13 Years Distiller's Reserve 91 Proof
推定2014年ボトリング。ヴァニラ→クレームブリュレ→アーモンドキャラメル、香ばしい焦樽、熟したプラム、洋梨、ライスパイス、湿った木材、塩昆布、ラムネ菓子。基本的に甘い焦樽フルーツのアロマ。口当たりはサラッとしている。パレートはオレンジぽさとハニー。余韻は度数のわりには長めで、ほんのりフルーティな甘味もあるが少々渋く、芳醇とは言い難い。全体的に僅かに薬っぽいノートが感じられる。
Rating:87/100

Thought:正直言って、評価の難しいバーボンだと思いました。私には熟成庫の違いによるプロファイルを云々できる経験はありませんので、前回まで開けていた青12年との比較になりますが、何と言うか、従来までの12年101が有していた最も美味しい部分が欠落しているのに、それでもなお12年101と通低するものも感じ、短絡的に切り捨てられないのです。多分これが101プルーフのボトリングだったとしても、複雑さの点に於いて青12年には敵わなかったのではないかと思います。ですが「較べる脳」でなく単体で飲めば、ワイルドターキーの特徴的な濃厚な炭の香りはあるし、繊細なフルーツ感もあり悪くありません。強いて言うなら、旧来の12年はもっと濃密なヴァニラとダークフルーツを想起させるのに対し、13年は穀物とフレッシュフルーツを想起させます。これはプルーフィング・ダウンの結果であるような気もするし、熟成場所の影響のような気もします。皆さんはどう思うでしょうか? コメントよりご意見お待ちしております。

Value:販売価格は店舗により異なりますが、現行品で概ね5000~6500円程度。私はラベルの新しくなった物を飲んだことがないのですが、個人的にはこれに6500円出すのであれば、8年を2本買うかオークションで旧来の12年を買いたいです。または、クラフトディスティラリーの少々割高だけれど新しい味に挑戦することを選びます。けれども、現8年を3000円、旧12年を12000円とすると、13年の6500円はちょうど中間くらいの価格となり、存在意義のない製品ではないし、妥当なお値段にも思えます。アメリカ人にとっては13年にプレミアム(上乗せ価格)を支払うくらいならダイヤモンド・アニヴァーサリーを購入した方がいいと言われますが、日本人にとっては単純に好みで決めればいいこと。おそらく12年が好きだった人、或いはスコッチも嗜む人にとっては現行8年より購入価値のある製品だと思います。


*実を言うと、このラベルより新しい現行の13年ディスティラーズ・リザーヴの説明文からは、「B」の文字が抜けています。おそらく現在の物は、こちらと同じく倉庫の低層階で熟成されていますが、Bウェアハウス以外からも樽が選ばれるように変更されたものと推測されます。海外のターキーマニアで飲み較べした方によると、品質や基本プロファイルにそれほどの変化はなく、僅かに甘さとスパイスのバランスが異なる程度とのこと。

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WILD TURKEY Forgiven 91proof
BATCH NO. 302
ワイルドターキー蒸留所の従業員が誤って飲み頃のバーボンとライウィスキーを混ぜてしまう致命的なミスを犯したものの、エディ・ラッセルが味見するとけっこう美味しかったので結局はリリースすることに。それでミスは赦された、というのが名前の由来。78%の6年熟成バーボンと22%の4年熟成ライウィスキーのミクスチャーだそうです。
お味のほうは、正にバーボンとライウィスキーの中間の風味です。78%もバーボンが使われてるわりには、どうもあっさりした印象をもちます。日本人が飲み慣れてる8年熟成より若い原酒を使用しているのと、度数が低いのが原因でしょうか。正直言ってターキー8年101プルーフのほうが遥かに旨いです。とは言え大手蒸留所がこういうのをリリースしてくれるのが面白いですよね。
Rating:83/100

ワイルドターキーフォーギヴン2

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